説明

車両用ドアのウェザストリップの取付構造

【課題】ドアアウタパネルにウェザストリップを作業性良く、しかも曲げ変形させることなく、スムーズに組み付け可能とし、加えて、ウェザストリップの係止用の爪部を低コストで形成させる。
【解決手段】車両のドアの窓ガラス挿通口の周縁に装着されて、ドアアウタパネル8と窓ガラスとの間をシールすると共に、ドアのサッシュ部5の車両外方を通過してドアの前後方向の端縁まで延長配置される車両用ドアのウェザストリップ4の取付構造であって、ウェザストリップにおけるサッシュ部5の車両外方に配置される延設部に、爪部18を下向きに突出して設け、ドアアウタパネル8におけるサッシュ部5の根元部分に、切り起こし部11を車両外方向に突出して設け、切り起こし部11の内側に、上下方向に貫通した隙間を形成し、爪部18を上方から隙間に挿入して切り起こし部11の下端に係止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサイドドアのドアアウタパネルにおけるサッシュ部の根元部分にシール用のウェザストリップの端末部を係止手段で固定させる車両用ドアのウェザストリップの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のフロント側やリア側のヒンジ開閉式の各サイドドアは、金属製のドアパネル本体部と、ドアパネル本体部の上部に一体ないし別体に形成された金属製のドアサッシュ(窓枠部)とを備え、ドアパネル本体部は、ドアアウタパネル本体部と不図示のドアインナパネル本体部とで構成されている。
【0003】
ドアアウタパネル本体部とドアインナパネル本体部との間に窓ガラスが昇降自在に配置され、ドアアウタパネル本体部とドアインナパネル本体部との上縁に窓ガラス挿通口が形成され、窓ガラスはドア(ドアサッシュを含む)の前後両側のガラスランに沿ってドアパネル内部の不図示のレギュレータで昇降駆動される。
【0004】
窓ガラス挿通口の周縁となるドアアウタパネル本体部の上縁(ベルトライン)にゴム製等のドアアウタウェザストリップが装着されて、ドアアウタパネルと窓ガラスの外側面との間の防水、防塵、防音、装飾が行われ、ドアインナパネル本体部の上縁に不図示のドアインナウェザストリップが装着されて、ドアインナパネルと窓ガラスの内側面との間の防水や防塵や防音が行われる。一般にドアアウタウェザストリップは窓ガラス挿通口よりも長く、車両ボディの車両前後方向の略中央に位置するBピラー(センターピラー)に対応するドアのサッシュ部の外面側まで延長された部分を有している。
【0005】
例えば特許文献1には、自動車のフロントドアのアウタパネル本体部とピラー部(後部サッシュ)とを一体にプレス成形して成るドアアウタパネルにおいて、アウタパネル本体部とピラー部との連結部分(ピラー部の根元部分)に孔部を設け、ドアベルトモール(ドアアウタウェザストリップ)の端末部に別体のクリップを設け、車室内側に向けて横方向に移動させてクリップを孔部に嵌合することで、ドアベルトモールの端末部をドアアウタパネルに固定することが記載されている。
【0006】
上記特許文献1に類似する形態の車両用ドアのウェザストリップの取付構造を図12,図13に示す(特許文献2参照)。図12では自動車の右側のフロントドアを用いて説明する。
【0007】
図12(a)(b)の如く、フロントドアのアウタパネル本体部52の上縁(ドアベルトライン)にフランジ部23が立ち上げ形成され、フランジ部23のほぼ延長線上において、後部サッシュ53の根元部53aに孔部54が設けられている。図12(b)では後部サッシュ53の根元部53aを除く部分を鎖線で示している。ドアアウタパネル55の内側に不図示のドアインナパネルが配置され、フランジ部23とドアインナパネルとの間に窓ガラス挿通口56が位置する。
【0008】
ウェザストリップ57は、後部サッシュ53に対応する端末部(延設部)58の内側部分が切欠され(切欠部を符号59で示す)、端末部58の外側部分の内面側に別体の固定用のクリップ51(図12(b))を有し、端末部58の終端に蓋部60を有し、端末部58を除く長手部分20の断面略逆U字状の取付基部の内側壁20aの上端及び下端にそれぞれシールリップ部21,22を一体に有している。取付基部はフランジ部23に組み付けられる(フランジ部23が取付基部内に挿入されて取付基部内の不図示の保持リップで保持される)。
【0009】
図13(図12(b)のE−E相当断面図)の如く、ウェザストリップ57の端末部58は、外側のモール部分61と、モール部分61の内側に形成されたインジェクション(射出)成型部62と、インジェクション成型部62の内側に設けられた(後付けされた)別体のクリップ51とを有している。
【0010】
図12において、上下のシールリップ部21,22は、モール部分61の内側の合成ゴム製(弾性)の長手部分20に一体形成され、端末58のモール部分61の内側にインジェクション成型部62が設けられ、インジェクション成型部62の長手方向中間部にクリップ51が配設されている。モール部分61やその内側の弾性の長手部分20は押出成形にて形成される。
【0011】
取り付けられた状態では図13の如く、クリップ51はドアアウタパネル55の孔部54に係合して内向きに(車室内側に向けて)突出し、突出部分の下側のリップ部63がドアアウタパネル55の内面に接触し、リップ部63とインジェクション成型部62側との間の溝部64に孔部54の下端縁54bが進入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−23737号公報(図1,図2)
【特許文献2】特許第4156549号公報(図1,図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の図12〜図13に示した車両用ドアのウェザストリップの取付構造にあっては、ウェザストリップ57の長手部分20の断面逆U字状の取付基部をドアアウタパネル55の窓ガラス挿通口56の上縁のフランジ部23に上から下向きに組み付けると共に、ウェザストリップ57の端末(延設部)58のクリップ(爪部)51をドアサッシュ部53の根元部分の孔部54に、車室外側から車室内側に向けて横方向に挿入係合させるというように、ドアアウタパネル55に対するウェザストリップ57の長手部分20と端末部分58との取付方向が異なる(90°方向にずれている)ために、ドアアウタパネル55へのウェザストリップ57の取付作業性が悪いという懸念があった。
【0014】
また、ドアアウタパネル55へのウェザストリップ57の取付作業時に、例えばウェザストリップ57の長手部分20の断面逆U字状の取付基部をドアアウタパネル55の窓ガラス挿通口56の上縁のフランジ部23に上から下向きに組み付けた後、ウェザストリップ57の端末(延設部)58のクリップ51をドアサッシュ部53の根元部分の孔部54に、車室外側から車室内側に向けて挿入係合させる際に、ウェザストリップ57の端末部58が車室外側に屈曲した状態から、端末部58のクリップ51を車室内側に向けてドアサッシュ53の孔部54に挿入するために、ウェザストリップ57の端末部58の曲がり変形(反り)を生じたり、それに伴ってウェザストリップ57の端末部58の内面とドアサッシュ53の外面との密着シール性が低下し兼ねないという懸念があった。
【0015】
また、係止用のクリップ(爪部)51をウェザストリップ57の長手部分20と一体の延長部分58に樹脂押出成形で形成するのではなく、ウェザストリップ57の端末部58にインジェクション成型部62を別途形成し、さらにそのインジェクション成型部62にクリップ51を溶着等で固定して設けるというように、クリップ51の形成と固定に多くの手間とコストがかかるという懸念があった。
【0016】
これらの懸念は、自動車のフロントサイドドアに限らずリアサイドドアにおけるウェザストリップにおいても同様に生じ得るものである。
【0017】
本発明は、上記した点に鑑み、ドアアウタパネルにウェザストリップを作業性良く、しかも曲げ変形させることなく、スムーズに組み付ける(係止させる)ことができ、それに加えて、ウェザストリップの係止用の爪部を低コストで形成することのできる車両用ドアのウェザストリップの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用ドアのウェザストリップの取付構造は、車両のドアの窓ガラス挿通口の周縁に装着されて、ドアアウタパネルと窓ガラスとの間をシールすると共に、該ドアのサッシュ部の車両外方を通過して該ドアの前後方向の端縁まで延長配置される車両用ドアのウェザストリップの取付構造であって、前記ウェザストリップにおける前記サッシュ部の車両外方に配置される延設部に、爪部が下向きに突出して設けられ、前記ドアアウタパネルにおける前記サッシュ部の根元部分に、切り起こし部が車両外方向に突出して設けられ、該切り起こし部の内側に、上下方向に貫通した隙間が形成され、前記爪部が上方から該隙間に挿入されて該切り起こし部の下端に係止されることを特徴とする。
【0019】
上記構成により、ウェザストリップにおけるドアの窓ガラス挿通口の周縁に装着される部分すなわちウェザストリップの長手部分と、ウェザストリップにおけるドアのサッシュ部の車両外方を通過してドアの前後方向の端縁まで延長配置される部分すなわちウェザストリップの端末部分(延設部)とが、作業者によって上方から下向きに同一方向への動きでドアアウタパネルに組み付けられる。これにより、ドアアウタパネルへのウェザストリップの組付作業性が向上する。また、ウェザストリップの長手部分と端末部分とで組付方向が同一であり、ウェザストリップは組付時に長手方向(前後方向)に対して直交する上下方向にのみ移動するから、左右方向(車両幅方向)すなわちウェザストリップの厚み方向の屈曲が起こらず、ウェザストリップの屈曲変形に伴う不具合が防止される。また、ドアアウタパネルから車両外方向に突出して設けられた切り起こし部に、上から下向きにウェザストリップの爪部が貫通して係合するので、爪部がドアアウタパネルの内側(ドア内部)に侵入することがなく、ドア内部の構成部品等との干渉の心配がなく、ドア内部の構成部品等のレイアウトの自由度が高まる。
【0020】
請求項2に係る車両用ドアのウェザストリップの取付構造は、請求項1記載の車両用ドアのウェザストリップの取付構造において、前記切り起こし部は前記サッシュ部のパネル部分と平行な真直壁を有し、該真直壁は前端及び後端において交差方向の壁部で該サッシュ部のパネル部分に連結され、前記隙間は前記爪部よりも車両前後方向に長く形成されていることを特徴とする。
【0021】
上記構成により、ウェザストリップの爪部がドアアウタパネルの切り起こし部の真直壁の内面に沿って隙間内に上から下向きに挿入され、真直壁の内面とドアアウタパネルの外面とで爪部が左右方向(車両幅方向)に位置決めされる。また、爪部よりも前後方向に長い隙間内に爪部が作業性良く容易に挿入される。さらに、交差方向の壁部にて爪部の車両の前後方向の位置が規定される。そして、ドアアウタパネルに対してウェザストリップの前後端の取付位置がずれている場合は、爪部を隙間内で前後に移動させることで、ウェザストリップの前後端の位置を調整可能とすることができる。
【0022】
請求項3に係る車両用ドアのウェザストリップの取付構造は、請求項1記載の車両用ドアのウェザストリップの取付構造において、前記切り起こし部は前記サッシュ部のパネル部分と平行な真直壁を有し、該真直壁は前端又は後端において交差方向の壁部で該サッシュ部のパネル部分に連結され、前記隙間は該真直壁の後端側又は前端側において外部に開放されていることを特徴とする。
【0023】
上記構成により、ウェザストリップの爪部がドアアウタパネルの切り起こし部の真直壁の内面に沿って隙間内に上から下向きに挿入され、真直壁の内面とドアアウタパネルの外面とで爪部が左右方向(車両幅方向)に位置決めされる。また、後端側又は前端側において外部に開放された隙間内に爪部が上から下向きに作業性良く容易に挿入される。さらに、交差方向の壁部にて爪部の車両の前後方向の位置が規定される。そして、ドアアウタパネルに対してウェザストリップの前後端の取付位置がずれている場合は、爪部を隙間内で前後に移動させることで、ウェザストリップの前後端の位置を調整可能とすることができる。
【0024】
請求項4に係る車両用ドアのウェザストリップの取付構造は、請求項1〜3の何れかに記載の車両用ドアのウェザストリップの取付構造において、前記爪部は、前記ウェザストリップの一般断面部から切り出し形成されたものであることを特徴とする。
【0025】
上記構成により、ウェザストリップの一般断面部が樹脂押出成形でウェザストリップ長手方向に連続的に形成され、一般断面部から爪部がプレス打ち抜き加工やカッタによる切断加工等によって切り出し形成される。爪部は一般断面部と一体であるので、従来の爪部(クリップ)をウェザストリップに溶着等で固定する手間が省けると共に、従来の爪部の固定時の位置ずれや、従来の爪部とウェザストリップの爪部取付部分の寸法公差(誤差)の増大による爪部の位置精度の低下が防止される。
【0026】
請求項5に係る車両用ドアのウェザストリップの取付構造は、請求項1〜3の何れかに記載の車両用ドアのウェザストリップの取付構造において、前記爪部は金属材で形成されて、前記ウェザストリップの延設部に固定手段で固定されたことを特徴とする。
【0027】
上記構成により、合成樹脂製の爪部に較べて爪部の強度が高まり、金属製のドアアウタパネルの切り起こし部にウェザストリップの金属製の爪部が係合することで、車両の振動等に対する切り起こし部と爪部の係止の信頼性が高まると共に、メンテナンス時等における爪部の損傷が防止される。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載の発明によれば、ウェザストリップにおけるドアの窓ガラス挿通口の周縁に装着される部分すなわちウェザストリップの長手部分と、ウェザストリップにおけるドアのサッシュ部の車両外方を通過してドアの前後方向の端縁まで延長配置される部分すなわちウェザストリップの端末部分とを上方から下向きに同一方向にドアアウタパネルに組み付けることで、従来、ウェザストリップの長手部分を上方から下向きに組み付け、ウェザストリップの端末部分を左右方向(車幅方向)に組み付けていることに較べて、ウェザストリップの組付作業性を向上させることができる。また、組付に際してウェザストリップの端末部分を従来のように左右方向(ウェザストリップ厚み方向)に屈曲させる必要がないので、ウェザストリップの曲がり変形とそれに伴う防水性・防塵性の低下や、車室内への外部騒音の侵入を防ぐことができる。また、ドアアウタパネルから車両外方向に突出した切り起こし部にウェザストリップの爪部を上から下向きに貫通係合させるので、爪部をドアアウタパネルの内側に侵入させることがなく、ドア内部の構成部品等のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0029】
請求項2記載の発明によれば、ウェザストリップの爪部をドアアウタパネルの切り起こし部の真直壁の内面とドアアウタパネルの外面とに沿って切り起こし部内の隙間に挿入することで、爪部すなわちウェザストリップの端末部の位置を車両幅方向に正確に位置決めして、ウェザストリップの端末部の転びやそれに伴う防水性や防塵性の低下等を防ぐことができる。また、切り起こし部の前後方向に長い隙間内に爪部を作業性良く容易に挿入して、ウェザストリップの組付性を高めることができると共に、ウェザストリップの前後端の取付位置がずれている場合は、爪部を隙間内で前後に移動させて(微調整して)ウェザストリップの前後端の位置精度を高めることができる。
【0030】
請求項3記載の発明によれば、ウェザストリップの爪部をドアアウタパネルの切り起こし部の真直壁の内面とドアアウタパネルの外面とに沿って切り起こし部内の隙間に挿入することで、爪部すなわちウェザストリップの端末部の位置を車両幅方向に正確に位置決めして、ウェザストリップの端末部の転びやそれに伴う防水性や防塵性の低下等を防ぐことができる。また、切り起こし部の後端側又は前端側において外部に開放された隙間内に爪部を上から下向きに作業性良く容易に挿入して、ウェザストリップの組付性を高めることができると共に、ウェザストリップの前後端の取付位置がずれている場合は、爪部を隙間内で前後に移動させて(微調整して)ウェザストリップの前後端の位置精度を高めることができる。
【0031】
請求項4記載の発明によれば、ウェザストリップの一般断面部から爪部を一体に切り出し形成することで、従来の爪部(クリップ)をウェザストリップに溶着等で固定する手間をなくしてウェザストリップの生産性を高めることができると共に、従来の爪部(クリップ)をウェザストリップに溶着等で固定する際の位置ずれや、従来の爪部とウェザストリップの爪部取付部分の寸法公差の増大による位置精度の低下を防いで、爪部の位置精度を高めることができる。
【0032】
請求項5記載の発明によれば、金属製の爪部で強度を高めて、車両の振動等に対する爪部とドアアウタパネルの切り起こし部との係止の信頼性を高めると共に、ウェザストリップのメンテナンス時等における爪部の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の車両用ドアのウェザストリップの取付構造の一実施形態における外観を示す斜視図である。
【図2】同じく車両用ドアのアウタパネル側のウェザストリップ取付構造を示す、(a)は側面図、(b)は(a)の矢視A図である。
【図3】図2のアウタパネル側の切り起こし部の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】車両用ドアのウェザストリップの端末構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】ウェザストリップの長手部分の取付構造を示す図1のB−B断面図である。
【図6】ウェザストリップの端末部分の取付構造を示す図1のC−C断面図(図3のC−C相当断面図)である。
【図7】同じく端末部分の取付構造を示す図3のD−D相当断面図である。
【図8】(a)(b)はドアアウタパネル側の切り起こし部の各変形例を示す斜視図である。
【図9】ウェザストリップの端末構造の他の実施形態を示す、(a)は分解斜視図、(b)は固定手段を示す断面図、(c)は固定状態を示す斜視図である。
【図10】同じくウェザストリップの端末構造の変形例を示す、(a)は分解斜視図、(b)は固定状態を示す斜視図である。
【図11】同じくウェザストリップの端末構造のその他の変形例を示す、(a)は分解斜視図、(b)は固定状態を示す断面図である。
【図12】従来の車両用ドアのウェザストリップの取付構造の一形態を示す、(a)は車外側から見た分解斜視図、(b)は車内側から見た分解斜視図である。
【図13】従来の車両用ドアのウェザストリップの取付構造の組付状態を示す、図12(b)のE−E相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1〜図5は、本発明に係る車両用ドアのウェザストリップの取付構造の一実施形態を示すものである。図1〜図3では自動車の左側のフロントドアを用いて説明する。図4,図5は同じくフロントドアに組み付けられるドアアウタウェザストリップを示している。なお、前後、左右、上下、内外等の方向の説明は、それぞれ車両の前後方向、車両の左右方向、車両の上下方向、車両の内外方向を示すものとする。
【0035】
図1の如く、自動車のフロントドア1のドアアウタパネル本体2の上縁(ベルトライン)3において、ドアアウタウェザストリップ(以下ウェザストリップと言う)4が上縁3の前端からドアサッシュ5の根元部6の後端6aにかけて延設配置されている。ドアサッシュ5にかかるウェザストリップ4の端末部(延設部)15は内側半部を切欠されている(切欠部を符号16で示す)。詳細には、ドアサッシュ5の車室外側に配置される端末部(延設部)15は、ドアアウタパネル本体2の上縁に立ち上げられたフランジ部23(図2)に組み付けられる断面略逆U字状の取付基部の車室内側の半部を切り欠かれている。
【0036】
図1のドアサッシュ部分5は、窓開口の後側の窓枠を構成する部分であって、不図示の車両ボディにおけるフロントサイドドア1とリアサイドドアの間に位置する中央のBピラー(センターピラー)に対応する部分である。ドアサッシュ部分5の厚み方向中央にガラスラン7が組み付けられる。ドアサッシュ5は一枚の金属板からドアアウタパネル本体2と一体にプレス加工されてドアアウタパネル8の一部を成している。ウェザストリップ4の車室内側に窓ガラス挿通口9が位置する。図1は従来の図12とは左右対称に示している。
【0037】
図1のドアアウタパネル8にウェザストリップ4を組み付ける前の状態を図2(a)(b)に示す如く(図2(b)は図2(a)の矢視A図である)、ドアアウタパネル8における後部ドアサッシュ5の根元側(ベルトライン)の略垂直なパネル部分10に、上下幅Wを有する切り起こし部(切り起こし片)11がプレス加工等で内側から外向きに突出するように切り起こし形成されている。本例において切り起こし部11は後部ドアサッシュ5の前後方向略中央位置に一つ配置されている。ドアアウタパネル本体2の上縁に立ち上げ形成されたフランジ部23の略延長線上(後方)に切り起こし部11が配置されている。つまり、フランジ部23と切り起こし部11は、車両の上下方向でほぼ同じ高さに配置されている。
【0038】
図3にも示す如く、切り起こし部11は、ウェザストリップ4(図1)に沿って車両の上下方向よりも前後方向に長く形成され、且つウェザストリップ4の後述する爪部18(図4)の横幅寸法L’(爪部18のウェザストリップ4に沿った車両前後方向の長さ)よりも前後方向に長く形成されている。切り起こし部11は、前後の短い同じ長さの矩形状の傾斜壁(交差方向の壁部)12と、中間の長い長方形状の真直壁13とで平面視略台形状にパネル部分10から突出するように構成されている。詳細には、前後の傾斜壁12の各基端はドアサッシュ5のパネル部分10から鋭角的な内角で切り起こして立ち上げ形成され、前側の傾斜壁12はパネル部分10から車外側の斜め後方に向けて傾斜し、後側の傾斜壁12はパネル部分10から車外側の斜め前方に向けて傾斜し、各傾斜壁12の先端は真直壁13の前後端に鈍角的な内角で交差して一体に続いている。前後傾斜壁12の間の真直壁13の前後方向長さL(図2)は後述のウェザストリップ4(図4)の爪部18の横幅寸法L’よりも少し長くなっている。
【0039】
切り起こし部11の真直壁13は車室外側においてパネル部分10と平行に位置し、真直壁13に対向してパネル部分10に、切り起こし部11を切り起こした際に生じる横長矩形状の孔部14が形成されている。孔部14の前後方向長さは前後の傾斜壁12と中央の真直壁13との総和長さよりも短い。横長(車両の前後方向に長い)矩形状の孔部14は、孔部14の上端14aと下端14bとが長辺部をなし、孔部14の前後端すなわち各傾斜壁12の基端12cが短辺部をなしている。平面視略台形状の切り起こし部11の上下端には、前後の傾斜壁12の平行な上下端12a,12bと中央の真直壁13の平行な上下端13a,13bと孔部14の平行な上下端14a,14b部分によって、上下方向に開口する上下の開口(隙間)17a,17bが平面視で台形状に形成され、上下の開口17a,17bはパネル部分10の孔部14に直交して連通している。切り起こし部11の内側(切り起こし片の孔部14側)で上下の開口(隙間)17a,17bは上下方向に貫通した隙間17を成している。
【0040】
図4に、ウェザストリップ4の一実施形態を示す如く、ウェザストリップ4の端末部(延設部)15は、係止用の爪部18を含めてウェザストリップ4の長手部分20と一体に形成され、爪部18はウェザストリップ4の一般断面部に一般断面部の形状を利用して形成されている。一般断面部とは、ウェザストリップ4を合成樹脂材(ゴム材を含む)の押出成形で長手方向に連続的に形成した部分のことであり、本例では長手部分20の内側の壁部(一般断面部)20aを端末部15まで延長した部分20a’である。ウェザストリップ4の長手部分20は図12の従来例と概ね同様の構成を有している。
【0041】
すなわち、図5(図1のB−B断面図)の如く、ウェザストリップ4の長手部分20の一般断面形状の断面逆U字状の取付基部33の外側の壁部20bが利用されて、図4のウェザストリップ4の端末部15における外側の壁部20b’を成し、図5のウェザストリップ4の長手部分20の断面逆U字状の取付基部33の内側の壁部20aが利用されると共に、端末部15における内側の壁部20a’が爪部18の形状を残すように所要形状(略凹字状)に切欠されて爪部18が形成されている。詳細には、爪部18の前方側の壁部20aを切り欠いて開口34aを形成し、爪部18の後方側の壁部20aを切り欠いて開口34bを形成し、爪部18の下方側の壁部20aを切り欠いて開口34cを形成し、これら開口34(34a〜34c)に囲まれて残った内側の壁部20aが爪部18となっている。そして、切欠部34の長手方向略中央に係止用の爪部18が下向きに突出形成されている。
【0042】
ウェザストリップ4の長手部分20は樹脂材の押出成形で形成されるので、ウェザストリップ4の長手部分20に続く端末部15も爪部18を含めて樹脂材の押出成形で長手部分20と一体に形成されている。樹脂材はゴム材でもよく弾性のプラスチック等であってもよい。押出成形で爪部18を含む端末部15と長手部分20とが金型等を用いずに低コストで形成される。
【0043】
図4の如く、爪部18は、長手部分20の内側の壁部20aに連続した端末部15における内側の壁部(延長壁部)20a’をプレス加工やカッタによる切断加工等で所要形状に切断除去して、延長壁部20a’の一部を残存させる方法で切り出し形成されている(延長壁部の残存部分を符号20a’で示している)。爪部18は、垂直な板部18aと、板部18aの下端において端末部15の内側(断面逆U字状の取付基部33の内側、車室外側)に突出した断面三角形状の爪本体(引っ掛け部)18bとで成る。板部18aは長手部分20の内側の壁部20aと連続して押出し成形されており同一平面上に位置し、爪本体18bは、長手部分20の内側の壁部20aの高さ方向中間部において長手部分20の内側(車室外側)に突出して前後方向に連続して押出し成形された断面三角形状のリブ状の突起部35の部分であり、突起部35と一体に押出し成形されている。
【0044】
突起部35は内側の壁部20aの一部であり、突起部35は爪部18の爪本体18bと同じ断面形状で、上側の略水平な面35a(図5)と下側の傾斜面35b(図5)とを有している。突起部35の形状は図12の従来例にはないものである。
【0045】
長手部分20の内側の壁部20aの上端部分が端末15まで延長され、その上部延長壁20a’の下端から下向きに爪部18が突出形成され、本例の爪部18の上下(突出)方向長さは内側の壁部20aの略半分程度であり、爪部18の前後及び下側に、略凹字状に切欠された開口34が位置している。内側の壁部20aの下端には中間の突起部35よりも大きな爪状の突起部36が長手部分20の内側(断面逆U字状の取付基部33の内側、車室外側)に向けて突出形成されている。本例の下端の突起部36は中間の突起部35よりも長手方向前方で終端し、突起部36の後端の突起終端部の後方に小さな矩形状の開口34dが切欠形成されて、爪部18の周囲(前後及び下側)の開口34(34a〜34c)に続いている。
【0046】
図4のウェザストリップ4の端末部15の後端には別部材の蓋壁37が例えば接着や溶着等で固定して設けられている。端末15の内側の上部延長壁20a’の上端には、車室内側に向けて斜め上向きの小さなリップ部38が長手部分20の上端から長手方向にかけてリブ状に延長して押出成形で設けられ、長手部分20の内側の壁部20aには車室内側に向けて斜め上向きの上下二段の防塵・防水用のリップ部39がリブ状に延長して押出成形で設けられている。リップ部39は上下二段でなく上側のみの一段であってもよい。
【0047】
図5,図6(図1(図3)のC−C相当断面図)の如く、ウェザストリップ4の長手部分20及び端末部分15の外側の壁部20b,20b’は、外側に向かうにつれて下向きに傾斜した傾斜状の上壁20b1と、略垂直な外側壁部20b2とで構成され、長手部分20の外側壁部20bと端末部分15の外側壁部20b’は同一面上に延長形成されている。長手部分20及び端末部分15の外側の壁部20b,20b’の外面には薄肉硬質のモール部16が設けられ、同じく外側の壁部20b,20b’の下端には、ドアアウタパネル8の外側の傾斜壁8aに当接する小さなリップ部19(図5,図6)が長手方向に延長形成され、図5の長手部分20の外側の壁部20bの内面には、ドアアウタパネル8の外側の傾斜壁8aに続く上向きのフランジ部23の外面に当接する中位の大きさのリップ部40が形成されている。
【0048】
図5の如く、ドアアウタパネル本体2の上縁はヘミング加工で補強パネル41と結合されており、ドアアウタパネル8のフランジ部23は上端において折り返されて内側と外側の二重壁で成り、二重壁の内部に補強パネル41の上端部(フランジ部)41aが差し込まれた状態で固定されている。ウェザストリップ4は、フランジ部23を逆U字状の取付基部内に収容するようにフランジ部23に上から下向きに組み付けられ、ウェザストリップ4の長手部分20の高さ方向中間の突起部35が外側のリップ部40と対向してドアアウタパネル8のフランジ部23を挟持して、ウェザストリップ4の車両内外方向(車両幅方向ないし左右方向)の姿勢を安定させている。
【0049】
また、ウェザストリップ4の内側壁20aの下端の突起部36がフランジ部23の折り返し部23aの下端に当接係合して、フランジ部23からのウェザストリップ4の上向きの抜け出しを阻止し、外側壁20bの下端の小リップ19がドアアウタパネル8の傾斜壁8aに当接して、内側壁20aの中間の突起部35と協働してウェザストリップ4の反時計回り(矢印F方向)の倒れ(転び)を阻止している。上下二段のリップ部39は不図示の窓ガラスの外面に接触して、ドアパネル(ドアアウタパネル8とドアインナパネルとの間)の窓ガラス挿通口9への水や塵や車外騒音の侵入を防ぐ。
【0050】
図6に図1(図3)のC−C相当断面図を示す如く、図4のウェザストリップ4の端末部15を図1(図3)のドアサッシュ5の根元部に取り付ける際には、図5のウェザストリップ4の長手部分20をドアアウタパネル8のフランジ部23に上方から下向きに組み付けると同時ないしほぼ同時に、ウェザストリップ4の端末部15の下向きの爪部18を、図6の如くドアサッシュ5の根元部分に形成した切り起こし部11の上側の開口17aから下側の開口17bにかけて下向きに貫通させて、爪部18の下端の爪本体18bの上側の略水平な係止面18b1を切り起こし部11の中央の真直壁13の下端面13bに当接係止させる。この当接係止によって、爪部18の切り起こし部11からの抜け出しを防止することができる。
【0051】
ドアアウタパネル8へのウェザストリップ4の長手部分20と端末部分15との組付方向が上から下向きで同一であるので、ドアアウタパネル8へのウェザストリップ4の取付作業が容易で取付作業性が良い。また、従来においては、ウェザストリップ57(図12)の端末のクリップ51をドアサッシュ53の孔部54に横方向に挿入する際にウェザストリップ57の端末部58を厚み方向(左右方向)に屈曲させたが、本実施形態においては、ドアアウタパネル8へのウェザストリップ4の長手部分20と端末部分15との組付方向が同一であるので、端末部分15を厚み方向(左右方向)に屈曲させる必要がなく、端末部分15の不要な曲がり変形やそれに伴うドアサッシュ5の外面との密着シール性の低下の心配がない。図6では図4の端末部15の上端の小リップ38の図示を省略している。
【0052】
図6の如く、ウェザストリップ4の端末部15の外側の壁部20b’の下端ないし下端の小リップ19がドアアウタパネル8の傾斜壁8aに当接して、端末部15の下端位置を規定する(端末部15のそれ以上の下向きの移動を阻止する)。あるいは、図4のウェザストリップ4の端末15の爪部18の前後両側における上部内側壁20a’の下端面20a1’(図4)が図3のドアサッシュ5の切り起こし部11における前後の傾斜壁12の上端面12aに当接して、端末部15の下端位置を規定してもよい。
【0053】
また、ウェザストリップ4の端末部15の下向きの爪部18の外面(車室外側を向く面)18a1がドアサッシュ5の切り起こし部11の真直壁13の内面(車室内側を向く面)13cに当接し、切り起こし部11よりも上方において、爪部18に一体に同一面上に続く端末部15の内側の壁部20a’の内面(車室内側を向く面)20a2’や上端の小リップ38がドアサッシュ5の外側のパネル面(車室外側を向く面)10に当接することで、ウェザストリップ4の端末部15が車両内外方向に正確に位置決めされる。
【0054】
また、ウェザストリップ4の端末部15の外側の壁部20b’の下端ないし下端の小リップ19がドアアウタパネル8の傾斜壁8aに当接し、外側の壁部20b’の下端ないし小リップ19よりも上方において、端末部15の内側の壁部20a’に続く爪部18の下端部の内面(車室内側を向く面)18a2がドアサッシュ5の孔部14の下側の外面(車室外側を向く面)10aに当接することで、ウェザストリップ4の端末部14の反時計回り(矢印F方向)の倒れ(転び)が阻止される。
【0055】
図7に図3のD−D相当断面図(爪部18a)が切り起こし部11内に嵌合した状態)を示す如く、爪部18の垂直な板部分18aの厚み方向の外面18a1が切り起こし部11の真直壁13の内面13cに沿って接触する(切り起こし部11内の空間17の前後方向長さと爪部18の板部分18aの前後方向幅との間の隙間の範囲で矢印Gの如く前後方向摺接自在に接触する)と共に、爪部18の板部分18aの前端の角部(車室外側の角部)18a3が切り起こし部11の前側の傾斜壁12の内側面に当接し、それとは別に、爪部18の板部分18aの後端の角部(車室外側の角部)18a4が切り起こし部1の後側の傾斜壁12の内側面に当接することで、爪部18が車両前後方向に位置規制され、ウェザストリップ4が切り起こし部11の内側の隙間17の範囲内で車両前後方向(ウェザストリップ長手方向)に位置規定される(ウェザストリップ4の取付位置の前後方向の微調整が可能である)。図7で符号14bはドアサッシュ5の孔部14の下端を示している。
【0056】
図8(a)(b)は、図3の切り起こし部11に対する各変形例を示すものであり、図8(a)の切り起こし部42は、ドアサッシュ5の根元部分にあけられた孔部14の前端から車室外側に向けて斜め後方に突出した傾斜壁12と、傾斜壁12の突出端から孔部14に沿って(対向して)平行に配置された真直壁13とで構成されている。切り起こし部42の内側の空間(隙間)17’は上下方向に貫通し、且つ真直壁13の後端側に続く後部開口17c’を経て外部に連通している(開放されている)。傾斜壁12の長さは図3の傾斜壁12の長さと同じであり、真直壁13の長さは図3の傾斜壁13の長さと同じかそれよりも長くあるいは短く設定可能である。隙間17’は上下の開口17a’,17b’と後部開口17c’とを有する。この切り起こし部42は、切り起こしの形成が容易であり、爪部18の挿入が容易となる。また、傾斜壁12の内側面に爪部18が当接することで、ウェザストリップ4の位置決めを行うことができる。
【0057】
図8(b)の切り起こし部43は、図8(a)の切り起こし部42を前後対称に形成したもので、ドアサッシュ5の根元部分にあけられた孔部14の後端から車室外側に向けて斜め前方に突出した傾斜壁12と、傾斜壁12の突出端から孔部14に沿って(対向して)平行に配置された真直壁13とで構成されている。切り起こし部43の内側の空間(隙間)17’は上下方向に貫通し、且つ前部開口17d’を経て外部に連通している(開放されている)。傾斜壁12の長さは図3の傾斜壁12の長さと同じであり、真直壁13の長さは図3の傾斜壁13の長さと同じかそれよりも長くあるいは短く設定可能である。隙間17’は上下の開口17a’,17b’と前部開口17d’とを有する。この変形例でも切り起こし部43は、切り起こしの形成が容易であり、爪部18の挿入が容易となる。また、傾斜壁12の内側面に爪部18が当接することで、ウェザストリップ4の位置決めを行うことができる。
【0058】
図8(a)(b)の各切り起こし部42,43にウェザストリップ4(図4)の端末15の爪部18を上から下向きに挿入係止させる。図8(a)の切り起こし部42に後部開口17c’から前向きに爪部18(図4)を挿入したり、図8(b)の切り起こし部43に前部開口17d’から後向きに爪部18を挿入することも可能である。何れの場合も爪部18の下端の爪本体18bは切り起こし部42,43の真直壁13の下端13bに当接係合する。図8(a)(b)の各切り起こし部42,43に爪部18を係止させた状態(図8(a)(b)のC−C断面)は、図3の実施形態のC−C断面である図6と同様であるので説明を省略する。
【0059】
図9〜図11は、ウェザストリップの端末の爪部の他の各実施形態例を示すものであり、図4の爪部18がウェザストリップ4の一般断面の形状を利用して形成したものであるのに対し、図9〜図11の各爪部はウェザストリップの樹脂部分とは別体に金属材で形成したものである。図9〜図11の各爪部は、図4の爪部18におけると同様に、図3,図8(a)(b)の各切り起こし部11,42,43に図6,図7と同様の形態で係合する。
【0060】
図9(a)に示す爪部(爪部材)44は、縦方向の板部44aと、縦方向の板部44aの上端に直交した横方向の板部44bと、縦方向の板部44aの下端側において断面略V字状に突出形成された爪本体44cと、横方向の板部44bに設けられた一対のピン挿入用の円孔44dとを備えたものである。爪本体44cは上側の略水平な係止面44c1と下側の傾斜面44c2を有している。合成樹脂製の台座45に突設された一対のピン45aに爪部44の各円孔44dを挿通させ、図9(b)の如くピン45aを不図示の溶着機の熱プレスで押し潰して(ピン潰し部を符号45a’で示す)、図9(c)の如く台座45に爪部44を固定する。
【0061】
台座45は、図12の従来例のようにウェザストリップ57の端末58に予めインジェクション成型部62として設けてもよく、あるいは台座45に爪部44を固定した図9(c)の爪部組立体46の状態でウェザストリップ57の端末58の内側に溶着等で固定してもよい。爪部44の爪本体44cの突出方向は図4の爪部18におけると同様に車室外側に向けて突出する。図9の例では台座45とピン45aと円孔44dとで固定手段が構成される。
【0062】
図10(a)に示す爪部(爪部材)44は図9(a)におけると同様のものであり(以下同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する)、合成樹脂製の台座47はピン45aではなく一対の雌ねじ挿通孔(タップねじ用の小径の孔)47aを有している。図10(b)の如く、爪部44の円孔44dに雄ねじ48を挿通して、台座47の雌ねじ挿通孔47aに雄ねじ48を螺挿して、爪部44を台座47にねじ止め固定する。図9の例における溶着機は不要である。図10の例では台座47と雌ねじ挿通孔47aと円孔44dと雄ねじ48とで固定手段が構成される。
【0063】
図11(a)に示す爪部(爪部材)49は、爪本体49cを有する縦方向の板部49aと、係止用のスリット状の孔49dを有する横方向の板部49bとで構成されている。合成樹脂製の台座50は外側壁50aと内側壁50bとで断面略逆U字状ないし逆凹字状に形成され、外側壁50aと内側壁50bとの間に爪部挿入用の隙間50cが設けられ、隙間50c内において内側壁50bの下端にリブ状の突起部50dが設けられ、突起部50dは上側の略水平な係止面と下側の傾斜面とを有している。爪部49の横方向の板部49bを隙間50c内に下から上向きに挿入することで、図11(b)の如く、突起部50dがスリット孔49dに係合して爪部49が台座50にワンタッチで固定される。
【0064】
なお、台座50をウェザストリップの端末部の略逆U字状の壁部として押出成形で一体に設けると同時に、略逆U字状の壁部の内側壁部に突起部50dを押出成形で一体に設けることも可能である。図11(a)の例の台座50は単体の状態であるいは図11(b)の爪部組立体51の状態で、ウェザストリップの端末の内側に溶着等で予め固定される。図11の例では台座50と突起部50dとスリット孔49dとで固定手段が構成される。
【0065】
図9〜図11の各実施形態においては、金属製の爪部44,49によって爪部44,49の強度が高まり、爪部44,49の不意な欠けや割れ等の損傷の心配がなくなると共に、爪部44,49の寸法精度出しが容易となる。なお、爪部44,49を金属材ではなく硬質で丈夫な樹脂材で形成することも可能である。
【0066】
なお、上記実施形態においては、ドアアウタパネル8のサッシュ部5の幅(前後)方向のほぼ中央に切り起こし部11と爪部18を配置したが、切り起こし部11と爪部18をサッシュ部5の幅方向の前後二箇所に並列に配置することも可能である。また、上記したウェザストリップ4の取付構造は、サッシュ部5の車両外方に配置される延設部15を有するウェザストリップ4に使用することが可能であって、フロントサイドドア1に限らず不図示のリアサイドドアやスライド構造のサイドドアにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る車両用ドアのウェザストリップの取付構造は、ドアアウタパネルにウェザストリップを作業性良く、しかも曲げ変形させることなく、スムーズに組み付ける(係止させる)と共に、ウェザストリップの係止用の爪部を低コストで形成するために利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ドア
4 ウェザストリップ
5 サッシュ部
8 ドアアウタパネル
9 窓ガラス挿通口
10 パネル部分
11,42,43 切り起こし部
12 傾斜壁(交差方向の壁部)
13 真直壁
15 端末部(延設部)
17,17’ 隙間
18 爪部
20a 内側の壁部(一般断面部)
44,49 金属製の爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの窓ガラス挿通口の周縁に装着されて、ドアアウタパネルと窓ガラスとの間をシールすると共に、該ドアのサッシュ部の車両外方を通過して該ドアの前後方向の端縁まで延長配置される車両用ドアのウェザストリップの取付構造であって、
前記ウェザストリップにおける前記サッシュ部の車両外方に配置される延設部に、爪部が下向きに突出して設けられ、前記ドアアウタパネルにおける前記サッシュ部の根元部分に、切り起こし部が車両外方向に突出して設けられ、該切り起こし部の内側に、上下方向に貫通した隙間が形成され、前記爪部が上方から該隙間に挿入されて該切り起こし部の下端に係止されることを特徴とする車両用ドアのウェザストリップの取付構造。
【請求項2】
前記切り起こし部は前記サッシュ部のパネル部分と平行な真直壁を有し、該真直壁は前端及び後端において交差方向の壁部で該サッシュ部のパネル部分に連結され、前記隙間は前記爪部よりも車両前後方向に長く形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ドアのウェザストリップの取付構造。
【請求項3】
前記切り起こし部は前記サッシュ部のパネル部分と平行な真直壁を有し、該真直壁は前端又は後端において交差方向の壁部で該サッシュ部のパネル部分に連結され、前記隙間は該真直壁の後端側又は前端側において外部に開放されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ドアのウェザストリップの取付構造。
【請求項4】
前記爪部は、前記ウェザストリップの一般断面部から切り出し形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用ドアのウェザストリップの取付構造。
【請求項5】
前記爪部は金属材で形成されて、前記ウェザストリップの延設部に固定手段で固定されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用ドアのウェザストリップの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−107521(P2013−107521A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254734(P2011−254734)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】