説明

車両用ドア構造

【課題】コストを上昇させることなく、シールリップの反転を抑制することができる車両用ドア構造を得る。
【解決手段】車両用ドア構造28が適用されたフロントサイドドア10は、ウィンドガラス18を昇降可能に支持するドア本体12にインナウェザーストリップ30が設けられている。インナウェザーストリップ30は、ドアインナパネル14の上端部に取り付けられる基材部32と、基材部32のウィンドガラス18側の縦壁32Aから車両斜め上方に延び、先端がウィンドガラス18に摺接するように配置された弾性変形可能なシールリップ36とを備えている。さらに、インナウェザーストリップ30における縦壁32Aとシールリップ36の上面との間には、車両正面視にて縦壁32Aからシールリップ36側に向けて下降するように橋渡しされた支持部38が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、上部シールリップと下部シールリップとの間に、上部シールリップの反転防止用のストッパ部材を設けたウェザーストリップが開示されている。このウェザーストリップでは、車両背面視にて断面L字状のストッパ部材をリベットによりウェザーストリップの取付基部に埋設された芯金に固着し、ドアガラスが下降したときに下方へ押された上部シールリップをストッパ部材の突出面で支えることで、上部シールリップの反転を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−2724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1による場合、上部シールリップと下部シールリップとの間にストッパ部材を追加することで、上部シールリップの反転を抑制することができるが、部品点数が増え、また、ストッパ部材をウェザーストリップ本体に取り付けるためのリベット等の部品も必要となり、コストアップの原因となる。また、特許文献1では、下部シールリップの反転を防止することはできず、下部シールリップの下方側に反転を防止するためのストッパ部材を設けると、ウェザーストリップが大型化すると共にコストが更に上昇する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、コストを上昇させることなく、シールリップの反転を抑制することができる車両用ドア構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両用ドア構造は、ドアガラスを昇降可能に支持するドア本体と、前記ドア本体の一部を構成するパネル部材の上端部に取り付けられる基材部と、前記基材部の前記ドアガラス側の縦壁から車両斜め上方に延び、先端が前記ドアガラスに摺接するように配置された弾性変形可能なシールリップと、を備えたシール部材と、前記シール部材における前記基材部と前記シールリップの上面との間に設けられ、車両正面視にて前記基材部から前記シールリップ側に向けて水平から下降する範囲で橋渡しされることにより、前記シールリップを支持する支持部と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用ドア構造において、前記シール部材は、前記基材部の上端部から車両上方側に突出し、かつ前記支持部の一端が繋がれる突出部を有するものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両用ドア構造において、前記パネル部材がドアインナパネルであり、前記ドアインナパネルの上方から車両幅方向内側を覆うように取り付けられるドアトリムと、前記ドアトリムの内面に形成され、前記突出部が係合される凹溝と、を有するものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用ドア構造において、前記シールリップの内部に、前記シールリップを形成する弾性部材よりも硬い材料で形成された補強材が設けられているものである。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、ドア本体には、ドアガラスが昇降可能に支持されており、ドア本体の一部を構成するパネル部材の上端部には、シール部材の基材部が取り付けられている。シール部材は、基材部のドアガラス側の縦壁から車両斜め上方に延びたシールリップを備えており、弾性変形可能なシールリップの先端がドアガラスに摺接するように配置されている。さらに、シール部材における基材部とシールリップの上面との間には、車両正面視にて支持部が基材部からシールリップ側に向けて水平から下降する範囲で橋渡しされることにより、シールリップが支持されている。これによって、ドアガラスが下降したときにシールリップがドアガラスとの摩擦力で車両下方側に引っ張られても、基材部からシールリップ側に向けて水平から下降する範囲で橋渡しされた支持部がシールリップを引っ張るため、シールリップの反転を抑制することができる。すなわち、シールリップが車両下方側に引っ張られたときに、支持部には圧縮ではなく引っ張りが作用するため、シールリップの反転をより効果的に抑制することができる。
また、支持部とシールリップと基材部とを一体成形、接着又は嵌合等により一体化することで、部品点数の増加を抑えることができる。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、シール部材は、基材部の上端部から車両上方側に突出する突出部を備えており、突出部に支持部の一端が繋がれている。これにより、突出部とシールリップの上面との間に、車両正面視にて突出部からシールリップ側に向けて水平から下降する範囲で支持部を容易に橋渡しすることができ、支持部を配置する自由度が向上する。
【0012】
請求項3記載の本発明によれば、ドアインナパネルの上方から車両幅方向内側を覆うようにドアトリムが取り付けられており、ドアトリムの内面に形成された凹溝にシール部材の突出部が係合されている。これにより、ドアガラスの下降時に突出部に支持部からの引っ張り力が作用しても、突出部がドアトリムの凹溝に係合されていることで、突出部のドアガラス方向への撓み変形を抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の本発明によれば、シールリップの内部に、シールリップを形成する弾性部材よりも硬い材料で形成された補強材を設けることで、シールリップの剛性が上がり、シールリップ自体に反転を抑制するための機能を付加することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用ドア構造によれば、コストを上昇させることなく、シールリップの反転を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る車両用ドア構造が適用されたフロントサイドドアの車両内側を示す構成図である。
【図2】図1中の2−2線に沿った車両用ドア構造の構成を示す縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係る車両用ドア構造に用いられるインナウェザーストリップを示す斜視図である。
【図4】第2実施形態に係る車両用ドア構造の構成を示す縦断面図である。
【図5】第3実施形態に係る車両用ドア構造の構成を示す縦断面図である。
【図6】第4実施形態に係る車両用ドア構造の構成を示す縦断面図である。
【図7】比較例に係る車両用ドア構造の構成を示す縦断面図である。
【図8】図7に示す比較例に係る車両用ドア構造において、ドアガラスの下降時にシールリップが反転した状態を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0017】
図1には、本実施形態に係る車両用ドア構造が適用されたフロントサイドドアが車両内側から見た状態で示されている。また、図2には、図1中の2−2線におけるフロントサイドドアの縦断面図が示されている。これらの図に示されるように、車両の側部(図示省略)には車両用ドアとしてのフロントサイドドア10が設けられており、フロントサイドドア10は、車両の側部に設けられたフロントドア開口部(図示省略)に開閉可能に取り付けられている。フロントサイドドア10は、車両幅方向外側に配置されるドアアウタパネル(図示省略)と、車両幅方向内側に配置されるドアインナパネル14と、を含んで構成されたドア本体12を備えている。ドアインナパネル14の上縁部14Aを除く端縁部14Bが、ドアアウタパネル(図示省略)の上縁部を除く端縁部とヘミング加工によって一体化されることで、ドアインナパネル14とドアアウタパネルとが閉断面構造に形成されている。フロントサイドドア10には、本実施形態の車両用ドア構造28が適用されている。
【0018】
また、フロントサイドドア10は、ドアインナパネル14の上縁部14Aとドアアウタパネル(図示省略)の上縁部との対向部の隙間からドア本体12の内部に挿入されて車両上下方向に昇降可能に配置されたウィンドガラス(ドアガラス)18を備えている。ドア本体12の車両上部側には、ウィンドガラス18を昇降時に案内するためのドアフレーム20が車両側面視にて門形に取付けられている。すなわち、ドア本体12は、車両側面視にてドアフレーム20の内側に配置されたウィンドガラス18を開閉可能に支持している。
【0019】
図2に示されるように、ドアインナパネル14の上部の車両幅方向内側にはドアインナリインフォース24が配置されており、ドアインナパネル14の上縁部14Aとドアインナリインフォース24の上端に形成された縦壁部24Aとが面接触された状態で溶接等により接合されている。ドアインナリインフォース24の縦壁部24Aの車両上下方向中間部には、車両幅方向内側に突出する湾曲面状の突出部24Bが形成されている。
【0020】
車両用ドア構造28では、ドアインナパネル14の上縁部14Aとドアインナリインフォース24の縦壁部24Aとの接合部に、シール部材の一例としてのインナウェザーストリップ30が取り付けられている。また、ドア本体12における車両幅方向内側(車室26側)には、ドアインナパネル14とドアインナリインフォース24とインナウェザーストリップ30の上端部からドアインナパネル14とドアインナリインフォース24の車両内側面を覆うように樹脂製のドアトリム46が取り付けられている。
【0021】
図2及び図3に示されるように、インナウェザーストリップ30は、ドアインナパネル14の上部に車両前後方向に沿って設けられる長尺状の部材である。インナウェザーストリップ30は、車両下方側に開口部31を備えた断面が略U字状の基材部32を備えている。基材部32は、車両幅方向外側に車両上下方向に沿って延びた縦壁32Aと、縦壁32Aの上端部から車両幅方向内側に延びた上壁32Bと、上壁32Bの車両内側端部から車両下方側に延びた縦壁32Cと、を備えている。車両幅方向外側に配置された縦壁32Aは、ウィンドガラス18と対向するように配置されており、縦壁32Aの下端部は、車両幅方向内側に配置された縦壁32Cの下端部よりも車両下方側に延在されている。
【0022】
また、インナウェザーストリップ30は、基材部32の縦壁32Aの外側面からウィンドガラス18側に突出するように延びた弾性変形可能な2枚のシールリップ36と、縦壁32Aとそれぞれのシールリップ36の上面との間に橋渡しされることによりシールリップ36を支持する支持部38と、を備えている。
【0023】
インナウェザーストリップ30の基材部32は、車両下方側の開口部31がドアインナパネル14の上縁部14Aとドアインナリインフォース24の縦壁部24Aとの接合部に外挿されて複数のクリップ(図示省略)により固定されている。
【0024】
2枚のシールリップ36は、縦壁32Aの車両上下に並列に形成されている。シールリップ36は、車両正面視にて縦壁32Aの外側面から車両斜め上方に延びている。縦壁32A及び2枚のシールリップ36は、ドア本体12の車両前後方向に沿って配置されている。図示を省略するが、シールリップ36の下面及び先端には、ウィンドガラス18との滑性処理を目的とした多数の短い毛からなる植毛が施されている。2枚のシールリップ36は、ウィンドガラス18が昇降する軌道と交差する方向に延びており、シールリップ36の先端がウィンドガラス18に摺接することで、ウィンドガラス18とのシール性が確保されている。
【0025】
支持部38は、車両正面視(車両背面視)にて基材部32の縦壁32Aからシールリップ36側に向けて下降するように橋渡しされており、シールリップ36の上面を斜め上方から吊るように支持している。支持部38は、縦壁32Aと各シールリップ36の上面との間にドア本体12の車両前後方向に沿って配置されている。車両正面視にて上側のシールリップ36を支持する支持部38の一端は、縦壁32Aの上端に繋がれており、支持部38の他端は上側のシールリップ36の突出方向の中間部(突出方向の中央部よりもやや先端寄り)に繋がれている。車両正面視にて下側のシールリップ36を支持する支持部38の一端は、縦壁32Aにおける2枚のシールリップ36の間(上側のシールリップ36の根元付近)に繋がれており、支持部38の他端は下側のシールリップ36の突出方向の中間部(突出方向の中央部よりもやや先端寄り)に繋がれている。
【0026】
支持部38がそれぞれのシールリップ36を斜め上方から吊るように支持していることで、ウィンドガラス18が下降するときに、シールリップ36がウィンドガラス18との摩擦力により車両下方側に引っ張られても、支持部38がシールリップ36を引っ張るため、シールリップ36の反転が抑制されるようになっている。
【0027】
また、インナウェザーストリップ30には、上壁32Bの上面にドアトリム46の上端部46Aの内面(裏面)に当接するリップ34Aが形成されている。さらに、インナウェザーストリップ30の縦壁32Aの内側面には、ドアインナパネル14側に延びた2枚のリップ34B、34Cと、2枚のリップ34B、34Cの下方側でドアインナパネル14に当接するように延びたリップ34Dと、が形成されている。
【0028】
インナウェザーストリップ30におけるシールリップ36及び支持部38は、樹脂又はゴム等の弾性部材により形成されている。インナウェザーストリップ30は、押し出し成形により形成されている。本実施形態では、基材部32は、シールリップ36及び支持部38の材料よりも硬質の樹脂等の材料で形成されており、基材部32とシールリップ36と支持部38とが2色成形により一体成形されている。ここで、2色成形とは、例えば色の異なる2つの同種材料、又は材質の異なる2種類の材料を成形工程で接着させることにより、互いに異なる2色の材料又は2種類の材料を1つの成形品に共存させる成形法をいう。基材部32とシールリップ36と支持部38とを2色成形により一体化することで、別部品の支持部38の両端部を基材部32の縦壁32Aとシールリップ36の上面に接着し、又はクリップ等により固定する場合と比較して、部品点数の増加や、固定のための後工程が不要となり、低コスト化が可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、基材部32とシールリップ36と支持部38とを2色成形により一体化しているが、これに限定するものではない。例えば、別部品の支持部38の両端部を基材部32の縦壁32Aとシールリップ36の上面に接着したり、また、別部品の支持部38の両端部を基材部32の縦壁32Aとシールリップ36の上面に係合部を設けて係合させる構成でもよい。
【0030】
ドアトリム46は、上端部46Aがインナウェザーストリップ30の車両上方側から車両幅方向内側に回り込むように配置されている。ドアトリム46の車室26側の表面は、図示しない表皮で被覆されている。インナウェザーストリップ30の上壁32Bのリップ34Aがドアトリム46の上端部46Aの内面(裏面)に当接することで、インナウェザーストリップ30とドアトリム46とのシール性が確保されている。また、インナウェザーストリップ30のリップ34Dがドアインナパネル14に当接することで、インナウェザーストリップ30とドアインナパネル14とのシール性が確保されている。
【0031】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0032】
インナウェザーストリップ30は、基材部32の縦壁32Aから車両斜め上方に延びた弾性変形可能なシールリップ36を備えており、シールリップ36の先端がウィンドガラス18に摺接するように配置されている。また、インナウェザーストリップ30における縦壁32Aとシールリップ36の上面との間には、車両正面視(車両背面視)にて縦壁32Aからシールリップ36側に向けて下降するように橋渡しされた支持部38が設けられている。これによって、ウィンドガラス18の下降時にシールリップ36の先端とウィンドガラス18との摩擦力によりシールリップ36が車両下方側に引っ張られても、シールリップ36を斜め上方から吊った支持部38がシールリップ36を引っ張ることで、シールリップ36の反転を抑制することができる。すなわち、シールリップ36が車両下方側に引っ張られたときに、支持部38には圧縮ではなく引っ張りが作用するため、シールリップ36の反転をより効果的に抑制することができる。また、支持部38を設けることで、インナウェザーストリップ30自体の強度を向上することができる。
【0033】
また、インナウェザーストリップ30の基材部32とシールリップ36と支持部38とを一体成形(2色成形)することで、部品点数の増加が無く、低コスト化が可能となる。
【0034】
これに対して、図7には、比較例の車両用ドア構造100が縦断面図にて示されている。図7に示されるように、比較例の車両用ドア構造100では、インナウェザーストリップ102は、基材部32の縦壁32Aの外側面から車両斜め上方に延びた2枚のシールリップ36を備えており、シールリップ36の先端がウィンドガラス18に接触している。このインナウェザーストリップ102には、縦壁32Aとそれぞれのシールリップ36の上面との間に本実施形態のような支持部は設けられていない。
【0035】
図8に示されるように、車両用ドア構造100では、ウィンドガラス18が矢印A方向に下降すると、シールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部分の摩擦力によりシールリップ36の先端が車両下方側に引っ張られ、シールリップ36が反転する(シールリップ36が下に捲れる)可能性がある。シールリップ36が反転する際には、異音が生じる可能性がある。また、シールリップ36の下面及び先端には植毛(図示省略)が施されているが、シールリップ36が反転することにより、シールリップ36の植毛の無い部分がウィンドガラス18に接して異音を生じたり、ウィンドガラス18に傷や汚れが発生する可能性がある。
【0036】
これに対して、図2に示されるように、本実施形態のインナウェザーストリップ30では、縦壁32Aとシールリップ36の上面との間に、車両正面視(車両背面視)にて縦壁32Aからシールリップ36側に向けて下降するように橋渡しされた支持部38が設けられているので、ウィンドガラス18の下降時に支持部38はシールリップ36が反転しようとする荷重に耐えることができ、シールリップ36の反転を抑制することができる。
【0037】
次に、図4を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0038】
図4に示されるように、車両用ドア構造50に用いられるインナウェザーストリップ52は、基材部32の上壁32Bの上面に縦壁32Aに沿って車両上方側に突出した突片(突出部)54が設けられている。突片54の上端は、ドアトリム46の上端部46Aの内面と近接する位置まで延びている。突片54は、車両前後方向に沿って基材部32のほぼ全長に設けられている。突片54の外側面と上側のシールリップ36の上面との間には支持部38が橋渡しされている。すなわち、支持部38の一端が突片54の外側面に繋がれていることで、車両正面視(車両背面視)にて支持部38が突片54の外側面からシールリップ36側に向けて下降するように配置されている。
【0039】
本実施形態では、基材部32及び突片54は、硬質PP(ポリプロピレン)などの樹脂からなる非弾性体で形成されており、シールリップ36と支持部38はゴムなどの弾性体で形成されている。基材部32及び突片54とシールリップ36と支持部38とは、2色成形により一体化されている。
【0040】
このような車両用ドア構造50では、基材部32の上壁32Bの上面に縦壁32Aに沿って突片54を設け、突片54の外側面と上側のシールリップ36の上面との間に支持部38を橋渡しすることで、支持部38により上側のシールリップ36を上方から吊った構成とすることができる。このため、基材部32の上壁32Bの上面に突片54を設けない場合に比べて、車両正面視にて支持部38を突片54の外側面からシールリップ36側に向けて下降するように容易に橋渡しするができ、支持部38を配置する自由度が向上する。
【0041】
次に、図5を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0042】
図5に示されるように、車両用ドア構造60に用いられるインナウェザーストリップ62は、基材部32の上壁32Bの上面に縦壁32Aに沿って車両上方側に突出した突片(突出部)64が設けられている。突片64は、車両前後方向に沿って基材部32のほぼ全長に設けられている。ドアトリム46の上端部46Aの内面(裏面)には、突片64の上端が係合される凹溝68が設けられている。
【0043】
インナウェザーストリップ62は、基材部32がドアインナパネル14の上縁部14Aとドアインナリインフォース24の縦壁部24Aとの接合部に外挿されて複数のクリップ(図示省略)により取り付けられた状態で、突片64の上端がドアトリム46の凹溝68に係合されている。
【0044】
本実施形態では、基材部32及び突片64は、硬質PP(ポリプロピレン)などの樹脂からなる非弾性体で形成されており、シールリップ36と支持部38はゴムなどの弾性体で形成されている。基材部32及び突片64とシールリップ36と支持部38とは、2色成形により一体化されている。
【0045】
このような車両用ドア構造60では、インナウェザーストリップ62の基材部32の上壁32Bから突出した突片64が、ドアトリム46の凹溝68に係合されていることで、ウィンドガラス18の下降時に、突片64が支持部38からの引っ張り力に耐え、突片64がウィンドガラス18方向へ撓み変形することを抑制することができる。これにより、支持部38からの引っ張り力による突片64の破損を防止又は抑制することができる。
【0046】
次に、図6を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0047】
図6に示されるように、車両用ドア構造70に用いられるインナウェザーストリップ72は、2枚のシールリップ36の内部にそれぞれ板状の補強材74が設けられている。補強材74は、シールリップ36を形成するゴム等の弾性体よりも硬い材料で形成されており、例えば、鉄、樹脂などが用いられる。
【0048】
このようなインナウェザーストリップ72では、シールリップ36の内部にそれぞれ板状の補強材74を設けることで、シールリップ36の剛性が上がり、ウィンドガラス18の下降時にシールリップ36の接触部分との摩擦力によりシールリップ36が反転することを抑制することができる。すなわち、シールリップ36の内部に補強材74を設けることで、シールリップ36自体に反転を抑制するための機能を付加することができる。
【0049】
なお、第1〜第4実施形態の車両用ドア構造では、シールリップ36は2枚であるが、シールリップ36を3枚以上に増やし、それぞれのシールリップ36と基材部32の縦壁32A(又は突片)との間に支持部38を設けてもよい。
【0050】
また、第2〜第4実施形態では、突片54、64は、基材部32の上壁32Bの上面に縦壁32Aに沿って設けられているが、必ずしも縦壁32Aの延長線上に設ける必要はなく、基材部32の上壁32Bの上面に車両上方側に突出するように設けられていればよい。
【0051】
また、第1〜第4実施形態の車両用ドア構造では、インナウェザーストリップにおける縦壁32Aとシールリップ36の上面との間に橋渡しされた支持部38は、車両正面視にて縦壁32Aからシールリップ36側に向けて下降するように配置されているが、これに限定されず、車両正面視にて支持部を縦壁32Aからシールリップ36側に向けてほぼ水平に設けてもよい。すなわち、車両正面視にて支持部は、基材部からシールリップ側に向けて水平から下降する範囲で橋渡しされてシールリップを支持する構成であればよい。
【0052】
また、上述した第1〜第4実施形態では、シール部材としてインナウェザーストリップを用いて本発明の車両用ドア構造を適用したが、ウィンドガラス18よりも車両幅方向外側のドアアウタパネル(パネル部材)に取り付けられるベルトモール(シール部材)に本発明の車両用ドア構造を適用してもよい。
【0053】
また、上述した第1〜第4実施形態では、車両用ドア構造をフロントサイドドアに設けたが、これに限定されず、リアサイドドアなど他の車両用ドアに適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 フロントサイドドア(車両用ドア)
12 ドア本体
14 ドアインナパネル(パネル部材)
18 ウィンドガラス(ドアガラス)
28 車両用ドア構造
30 インナウェザーストリップ(シール部材)
32 基材部
32A 縦壁
36 シールリップ
38 支持部
46 ドアトリム
50 車両用ドア構造
52 インナウェザーストリップ(シール部材)
54 突片(突出部)
60 車両用ドア構造
62 インナウェザーストリップ(シール部材)
64 突片(突出部)
68 凹溝
70 車両用ドア構造
72 インナウェザーストリップ(シール部材)
74 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアガラスを昇降可能に支持するドア本体と、
前記ドア本体の一部を構成するパネル部材の上端部に取り付けられる基材部と、前記基材部の前記ドアガラス側の縦壁から車両斜め上方に延び、先端が前記ドアガラスに摺接するように配置された弾性変形可能なシールリップと、を備えたシール部材と、
前記シール部材における前記基材部と前記シールリップの上面との間に設けられ、車両正面視にて前記基材部から前記シールリップ側に向けて水平から下降する範囲で橋渡しされることにより、前記シールリップを支持する支持部と、
を有する車両用ドア構造。
【請求項2】
前記シール部材は、前記基材部の上端部から車両上方側に突出し、かつ前記支持部の一端が繋がれる突出部を有する請求項1に記載の車両用ドア構造。
【請求項3】
前記パネル部材がドアインナパネルであり、
前記ドアインナパネルの上方から車両幅方向内側を覆うように取り付けられるドアトリムと、
前記ドアトリムの内面に形成され、前記突出部が係合される凹溝と、
を有する請求項2に記載の車両用ドア構造。
【請求項4】
前記シールリップの内部に、前記シールリップを形成する弾性部材よりも硬い材料で形成された補強材が設けられている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107608(P2013−107608A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256634(P2011−256634)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】