説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】
ドライバーの技能等に応じてナビゲーションから発声される誘導音声を変化させることによって、運転を好適にならしめると共に、運転技術の向上をもたらすことのできる機能を有したナビゲーション装置を開発しようとするものである。
【解決手段】
スピーカシステムより発せられる誘導音声の周波数と当該誘導音声に該当する音声年齢とが対応して記録されている周波数記録媒体を備え、音声年齢が走行距離に応じて加算されると共に、制御手段に設けられた運転者の運転技能履歴を記録する運転技能記録媒体の情報により前記誘導音声の音声年齢から運転者の運転技能レベルに応じて算出された音声年齢を差し引くことによって誘導音声の音声年齢を決定し、当該音声年齢に対応する音声の周波数を用いて誘導音声を合成することを特徴とする車両用ナビゲーション装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に積載され、目的地まで視覚や音声によってドライバーを誘導するナビゲーション装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置の中には、特許文献1に示すように、ドライバーの運転技能レベルを車両運転中に継続的に判断して、その結果に基き最適な経路を決定し、ドライバーを目的地まで誘導するという発明が記載されている。具体的には、自分の現在位置と進行方向を検出する現在位置検出部と、地図情報を得る地図情報読出し部と、ドライバーと運転技能のレベルを判断する運転者判断部と、経路の渋滞状況を判断する道路状況予測・判断部と、所望経路と過去の交通情報や経路上の施設等の情報を読出し、実際の走行状況を記録するユーザ情報記録・読出し部と、以上の各情報でドライバーの運転技能のレベルに好適した渋滞のない最適経路を案内する最適経路決定部と、で構成される。
【0003】
上記運転技能レベルを判定する手段としては、具体的には速度制御、ハンドル操作、変速ギアのシフトチェンジ、アクセル、ブレーキ、クラッチ等の操作の技能程度によって判断することとなる。
【0004】
また、現在ではドライバーが誘導音声について標準語だけでなく方言や英語等の誘導音声で案内を楽しめるよう、適宜設定変更することにより、ドライバーの好みに合わせた音声とすることができるナビゲーション装置が市販されている。
【0005】
また、近年、人気を博しているゲームおもちゃの中には、遊技者がある対象を育成することをコンセプトとするものがある。例えばビデオゲームについていえば、登場する動物やキャラクター、あるいは都市等を育成していくものがある。これら育成型シミュレーションゲームは、想像力や独創力を育むとともに、ペットを育てるような疑似体験ができることから様々な種類の育成型ゲームおもちゃが開発されている。
【0006】
しかしながらナビゲーション装置においては、その車両を誘導するという機能性の面からして、育成型シミュレーションを組合せた誘導方法をナビゲーション装置に応用した例はなかった。
【0007】
ところが、ナビゲーション装置において育成型シュミレーション機能を付加するならば、ドライバーと車との親密性が向上し、運転者の運転時間を好適にするとともに、快適走行を促すことにもなる。
【0008】
【特許文献1】特開平6−76003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明ではドライバーの技能等に応じてナビゲーションから発声される誘導音声を走行距離に応じて変化させるようにしたナビゲーション装置を提供しようとするものである。
【0010】
特に誘導音声の変化は誘導音声の周波数を変化させることによって行なうが、音声年齢に応じた周波数に変化させることによって、例えば幼児の声から成人の声に次第に誘導音声を変化させることにより、ドライバーがナビゲーション内にいるかのようなキャラクターを育成する疑似体験をもたらすことができ、これにより運転を好適にならしめると共に、運転技術の向上をもたらすことのできる機能を有したナビゲーション装置を開発しようとするものである。
【0011】
さらに本発明では、運転技能を判定する手段として、リルート機能をカウントすることによってドライバーの運転技能を判定することとしている。尚、リルート機能とは、目的地設定後に推奨進路を案内する際、当該推奨進路を車が通過しない場合において、制御手段において自動的に再度推奨進路を算出する機能をいう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
車室内に積載された表示手段と、前記表示手段の表示に基いて乗員が入力操作する入力手段と、前記入力手段に応じて表示手段の制御を行なう制御手段と、前記制御手段に基き音声にて誘導案内を行なうスピーカシステムと、を備えたナビゲーション装置において、走行距離に応じて前記スピーカシステムより発せられる誘導音声が変化するようにしたことを特徴とする車両用ナビゲーション装置を提供することによって、前記課題を解決する。
【0013】
とりわけ、車両の走行距離が増すにつれて、前記スピーカシステムより発せられる誘導音声を幼児の音声から次第に成人の音声となるようにした車両用ナビゲーション装置を提供することによって、ドライバーがナビゲーション内にいるかのようなキャラクターを育成する疑似体験をもたらすことができる。
【0014】
具体的には、前記スピーカシステムより発せられる誘導音声の周波数と当該音声に該当する音声年齢とが対応して記録されている周波数記録媒体を備え、音声年齢が走行距離に応じて加算されると共に、前記制御手段に設けられた運転者の運転技能履歴を記録する運転技能記録媒体の情報により前記誘導音声の音声年齢から運転者の運転技能レベルに応じて算出された音声年齢を差し引くことによって誘導音声の音声年齢を決定し、前記周波数記録媒体から読み込まれる当該音声年齢に対応する音声の周波数を用いて誘導音声が合成されて出力されることとなる。
【0015】
また、前記運転技能記録媒体に記録される情報が、リルート機能が作動した回数であって、走行距離に応じて加算される誘導音声の音声年齢から該リルート回数に応じた音声年齢を差し引くことによってナビゲーションの誘導音声年齢を変更することを特徴とする車両用ナビゲーション装置を提供することによって、前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0016】
走行距離に応じて誘導音声が変更するので、長期にわたりドライバーの関心を引き付けるため、ナビゲーションの誘導がマンネリ化することなく、飽きずに楽しむことができる。
【0017】
カーナビゲーション装置の誘導案内にゲーム性を持たせ、育成型のシミュレーション機能を付加することによって、ドライバーと車との関係を密接なものとすることができるとともに、ドライバーにとって運転時間が楽しくなるという効果がある。
【0018】
さらにドライバーの運転レベルと誘導音声の年齢を対応させることによって、ドライバーの運転技能のレベルが向上しないと誘導音声の年齢は加算されないこととするため、ナビゲーションの育成を楽しむには、自己の運転技術を上げることが必要不可欠となり、運転技能の向上にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るカーナビゲーション装置について図を用いて説明する。図1は本発明のブロック図を示したものである。そして図2は本発明の好適な実施例のフローチャートを示し、図3は本発明の好適な実施例のブロック図を示している。
【0020】
カーナビゲーション装置1には図1に示すように、GPS(Grobal Positioning Sistem)により現在の場所を検出する現在位置検出部8と、ドライバーの運転技術を記録するための運転者技能記録媒体7と、誘導音声を合成する上で必要となる周波数記録媒体9と、車室内に積載された表示手段2と、前記表示手段2の表示に基いて乗員が入力操作する入力手段3と、前記入力手段3に応じて表示手段2の制御を行なう制御手段4と、前記制御手段4に基き音声にて誘導案内を行なうスピーカシステム5と、を備えている。
【0021】
前記制御手段4は、ナビゲーション装置1の制御処理を行なう部分であるが、現在位置検出部8からの情報、運転者技能記録媒体7からの情報、車速パルス回路6からの情報、及び周波数記録媒体9の情報等に基き、制御を行い、表示手段2及びスピーカシステム5に出力する。
【0022】
まず、表示手段2の表示に従い、ドライバー等が入力手段3によって目的地を設定すると、制御手段4において経路を選択し、目的地までのルートを表示手段2に表示する。当該表示に従ってドライバーは走行を開始する。
【0023】
車速度パルス回路6では、走行を開始した時点から目的地に到着した時点まで、その走行距離に応じた車速パルス数をカウントすることとなる。走行距離が増えるごとに当該車速パルス数は増加するが、これに応じてナビゲーション装置1の誘導音声の音声年齢は増加することとなる。
【0024】
誘導音声の音声年齢とは、スピーカシステム5から出力される音声の該当年齢を意味しており、本発明では車速度パルス量と運転者技能記録媒体7との情報から決定される音声周波数のデータに対応する年齢のことをいう。各音声年齢に対応する周波数は周波数記録媒体9に記録されており、スピーカシステム5では当該音声年齢に該当する周波数を用いて音声を合成する。
【0025】
この音声年齢の合成はスピーカシステム5内のDSP11によって周波数を変化させることによって行なう。音声の合成は、通常行なわれている音声の合成方法によってなされるが、例えば周波数記録媒体9に年齢毎の周波数や基本振動数、高周波成分等のパラメータが記憶されており、該パラメータを付加して音声を合成し、AMP12により増幅し、スピーカ13から出力することによって行なう。
【0026】
車速パルス数のカウントはある規定回数まで達すると、初期値に戻ることが望ましい。車速パルスは走行速度や走行距離を知る手段の一つであるが、例えば1千キロ走行した場合に、車速パルス数のカウントを初期値に戻すことによって、ナビゲーションの誘導音声の音声年齢がリセットされ、初期状態、例えば幼児の声の周波数を用いた誘導音声等に戻すことによって、何度でも育成シミュレーションを楽しむことができる。
【0027】
スピーカシステム5より発せられる誘導音声の音声年齢は、上述したとおり走行距離に応じて加算されるが、前記制御手段4に設けられた運転者の運転技能履歴を記録する記録媒体7の情報に応じて、差し引かれることとなる。つまり、ドライバーの運転技能によってナビゲーションの誘導音声の音声年齢の加算が阻害されることとなり、スピーカシステム5から出力される音声の変化が乏しくなるため、あたかもナビゲーション内に存在するかのようなキャラクターの育成が阻害されるといった感覚をドライバーにもたらす。これにより、ナビゲーション装置においてキャラクターを育成する疑似体験をすることができるのである。
【0028】
走行距離に応じて音声年齢が加算されるのは、ナビゲーション装置の誘導機能が作動しているときに限ることができる。ナビゲーション装置の誘導機能が作動していない時の車速パルスをカウントし、誘導音声の音声年齢を加算させるなら、誘導機能を作動させた場合の方がナビゲーション装置の誘導音声の音声年齢の育成が阻害される可能性が生じるため、運転技能に連動したナビゲーションの音声年齢の育成という本来の機能の意味を没却することとなりかねず、不合理だからである。
【0029】
尚、ドライバーの運転技能を判別する手段としては、リルート機能、速度制御、ハンドル操作、変速ギアのシフトチェンジ、アクセル、ブレーキ、クラッチ等の操作の技能程度を判定してもよく、この場合は、判定手段を設けて、当該運転技能に相当するパラメータを設定し、走行距離に伴って加算されていく音声年齢から差し引く年齢を決定することによって、スピーカから発声される誘導音声の音声年齢を決定することができる。
【0030】
誘導音声の音声年齢を変化させるだけでなく、誘導する際の語句や語調などを年齢とともに変化させることも可能である。例えば、誘導音声の音声年齢が幼児期の場合においては、赤ちゃん言葉で誘導していたものの、走行距離が伸びるにつれて音声年齢が増加し、十代の音声年齢に達すると若者言葉で誘導することもできる。又、音声年齢が上がるにつれて中年言葉で、さらには高齢者の言葉で誘導することも可能である。このように誘導の音声だけでなく語調や語句にも変化をもたらすことによって、ドライバーにとっての運転時間を快適にならしめる。
【0031】
このような語句や語調の選択はすべて制御手段4であるマイクロコンピュータで行なうことが好ましい。無論、CD−ROM等に記憶された情報を適宜読込み、出力するようにしても良いし、可能であればRAM等の書き込み可能な記録媒体や、その他のメモリ機能を付加することによって、大容量の情報を記録でき、ナビゲーションの誘導のパターンに変化をもたらすことを可能にする。
【0032】
又、音声年齢にこだわらず、走行距離ごとに音声の合成に係るパラメータを設定したり、既に合成済みの音声を出力することにより、走行距離が増すにつれて様々な音声に変更し、ゲーム性を持たせることもできることは言うまでもない。
【0033】
また、音声による案内だけでなく、表示手段にキャラクターを表示させることによって視覚によっても育成シミュレーションを楽しむようにすることもできる。つまり、音声年齢に応じたキャラクターを誘導案内の際に、表示手段に表示することによって、ビデオゲーム等の育成型シミュレーションと同様の娯楽性を持たせることができる。
【0034】
例えば、音声年齢が小さい場合は表示手段に現れるキャラクターは幼児であるが、走行距離が伸びるとともに年齢が加算されるにつれ、当該キャラクターも成長した姿で表示され、ドライバーは毎日成長の過程を楽しむことができる。
【実施例1】
【0035】
ドライバーの運転技能を判別する手段として、リルート機能が作動した回数をカウントする回路を設けることによって、ナビゲーションの誘導音声の音声年齢の加算を阻害し、育成を阻むこととする実施例を説明する。
【0036】
本実施例について図2のフローチャート及び図3のブロック図を用いて説明する。まずドライバー等が入力手段3によって目的地を設定する(A)。すると、制御手段4において経路を選択し、目的地までのルートを表示手段2に表示することとなる。当該表示に従ってドライバーは走行を開始する(B)。
【0037】
尚、目的地を設定しない場合は、誘導機能は作動しないため、ナビゲーションの誘導音声の音声年齢を変更することなく、維持する設定とすることも可能である。
【0038】
車速度パルス回路6では、走行距離メータ10を用いて、走行を開始した時点から目的地に到着した時点まで、その走行距離に応じた車速パルス数をカウント(C)することとなる。走行距離が増えるごとに当該車速パルス数は増加するが、これに応じてナビゲーション装置1の誘導音声の音声年齢は増加することとなる。つまり、走行距離に応じて、ナビゲーションの音声年齢を上げることにより、いわばナビゲーションの誘導音声を育成させるのである。尚、車速パルス数に対応する音声年齢はあらかじめ規定しておき、制御手段において対応する音声年齢に換算されるようにしている。
【0039】
その地点に到着するまでに、誘導経路を外れて再度経路を計算させるリルート機能が作動した場合にはその回数が運転者技能記録媒体7としてのリルート回数カウンタ回路11に記録される。
【0040】
その後目的地に到着すると(D)、運転者技能記録媒体7にリルート回数がカウントされているかを判別する(E)。リルート回数が記録されていなかった場合は、前記走行距離に応じた音声年齢が加算され(F)、周波数記録媒体9から得られる当該音声年齢に対応する周波数データを用いて誘導音声が合成されることとなる(I)。その後、その周波数データは保存されることとなり(J)、例えば再度誘導機能が作動するまで同じ音声で誘導することも可能である。
【0041】
一方、リルート回数が記録されていた場合は、当該カウント数が規定量を満たすか判別し(G)、一定の規定量を満たす場合には、ナビゲーションの音声年齢の差し引き年齢を決定し、前記走行距離に応じた音声年齢から当該差し引き年齢を減じ、誘導音声の音声年齢を決定する(H)。そして、周波数記録媒体9から得られる当該音声年齢に対応する周波数データを用いて誘導音声が合成されることとなる(I)。その後、その周波数データは保存されることとなる(J)。
【0042】
つまり、リルート回数が作動すれば作動するほど、言い換えれば、道を間違えれば間違えるほど、ナビゲーションの誘導音声の音声年齢の育成は阻害されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ブロック図
【図2】フローチャート
【図3】本発明の実施例に係るブロック図
【符号の説明】
【0044】
1 カーナビゲーション装置
2 表示手段
3 入力手段
4 制御手段(マイクロコンピュータ)
5 スピーカシステム
6 車速パルス回路
7 運転技能記録媒体
8 現在位置検出手段
9 周波数記録媒体
10 走行距離メータ
11 DSP
12 AMP
13 スピーカ
14 リルート回数カウンタ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に積載された表示手段と、前記表示手段の表示に基いて乗員が入力操作する入力手段と、前記入力手段に応じて表示手段の制御を行なう制御手段と、前記制御手段に基き音声にて誘導案内を行なうスピーカシステムと、を備えたナビゲーション装置において、走行距離に応じて前記スピーカシステムより発せられる誘導音声の周波数を変化させることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
車両の走行距離が増すにつれて、前記スピーカシステムより発せられる誘導音声の周波数を幼児の音声の周波数から次第に成人の音声の周波数に変化させることを特徴とする請求項1記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記スピーカシステムより発せられる誘導音声の周波数と当該誘導音声に該当する音声年齢とが対応して記録されている周波数記録媒体を備え、音声年齢が走行距離に応じて加算されると共に、前記制御手段に設けられた運転者の運転技能履歴を記録する運転技能記録媒体の情報により前記誘導音声の音声年齢から運転者の運転技能レベルに応じて算出された音声年齢を差し引くことによって誘導音声の音声年齢を決定し、前記周波数記録媒体に記録されている当該音声年齢に対応する音声の周波数を用いて誘導音声を合成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記運転技能記録媒体に記録される情報が、リルート機能が作動した回数であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の車両用ナビゲーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−47231(P2006−47231A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231772(P2004−231772)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(391043815)サンヨー・オートメディア・センディリアン・バハド (36)
【住所又は居所原語表記】Plot 10,Phase 4,Prai Industrial Estate,13600 Prai,Penag.Malasya
【Fターム(参考)】