説明

車両用フレーム構造

【課題】重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板の端部近傍でフレーム本体が曲げ変形することを抑制することができる車体用フレーム構造を提供する。
【解決手段】車両用フレーム構造において、フレーム本体10は、外部から荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部と、引張方向の力が作用する第2面部と、第1面部と第2面部との間に位置する第3面部とを有し、補強板20は、第3面部から離間した基部と、該基部から第3面部に向けて突出して第3面部と当接する複数の凸部と、を有し、第3面部に沿ってフレーム本体の長手方向における荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、フレーム本体の長手方向における補強板の端部においてその中央部に比べて強度が低くなるようにフレーム本体に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両における車体の一部を構成する車両用フレームの構造に関し、より詳しく言えば、外部から荷重が作用し得る管状のフレーム本体の内部に補強板が取り付けられた車両用フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車等の車両における車体の一部を構成するセンターピラーやサイドシルなどの車両用フレーム(車体フレーム)には、高強度及び高剛性が求められるとともに、燃費性能の向上を図るため軽量化が求められている。このため、車体フレームは、多くの場合、金属製の板状素材を管状に形成して構成されている。
【0003】
また、サイドシルなどの車体フレームでは、例えば車体側方からの衝突(所謂側突)を受けた際に乗員の安全性を確保するため、車両の衝突時に外部から荷重が作用しても曲げ変形しないよう十分な曲げ抗力を確保することが求められており、管状のフレーム本体の内部に補強板を取り付けて補強するようにしたものが一般に知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、サイドシルの内部のアウタパネル側に、該サイドシルのアウタパネルに沿って縦向きに延びる下方側の縦壁と、該下方側の縦壁の上端から内方側に向かって斜めに立ち上がって延びる上方側の傾斜壁とを有する補強板を取り付け、サイドシルの上角部を該上方側の傾斜壁によって突っ張るようにして補強したものが開示されている。
【0005】
また、例えば特許文献2には、サイドシルの内部のインナパネルの上角部付近に、インナパネルとの間にサイドシルの長手方向に延びる複数の閉断面部を形成する補強板を設けて、該閉断面部によってサイドシルの曲げ剛性を高めるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−191008号公報
【特許文献2】特開2009−113766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1及び前記特許文献2に開示されるような補強板をサイドシルなどの車体フレームに取り付けることで、確かに車体フレームの曲げ抗力を高めることができるものの、車体フレームにおいては燃費性能の向上のために更なる軽量化が要求されており、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を如何に効率的に高めるかが重要な課題となっている。
【0008】
本願発明者等は、種々の試験研究を重ねた結果、具体的には後述するが、矩形管状のフレーム本体に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合、荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部が荷重の入力方向に沿ってフレーム本体の内方側へ変形し始め、この変形に伴って該第1面部に隣接する第3面部がフレーム本体の外方側に膨らんで面外変形を生じるとともに、荷重が作用した時に引張方向の力が作用する第2面部がフレーム本体の内方側へ変形し、フレーム本体が曲げ変形して座屈することを見出した。
【0009】
かかる知見に基づいて、フレーム本体の内方側への第1面部の曲げ変形に伴って変形する第3面部の面外変形を抑制することができれば、フレーム本体全体の曲げ変形を有効に抑制することができ、フレーム本体の曲げ抗力を高めることができると考えられる。
【0010】
また、フレーム本体に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合、荷重が作用する方向に沿ってフレーム本体の内方側へ変形し始める部分を曲げ変形の起点としてフレーム本体が曲げ変形することから、外部から荷重が作用する部分を含むフレーム本体の長手方向の所定範囲を有効に補強することで、重量の増加を抑制しつつフレーム本体の曲げ抗力を効率的に高めることができると考えられる。
【0011】
しかしながら、フレーム本体の内部に取り付ける補強板を、外部から荷重が作用する部分を含む所定範囲にのみ取り付けると、外部から荷重が作用した時に、剛性が急激に変化する補強板の端部近傍でフレーム本体に新たな曲げ変形が生じることが考えられる。
【0012】
図15は、外部から荷重が作用する部分を含む所定範囲にのみ補強板を取り付けた車体フレームが曲げ変形する状態を説明するための説明図である。なお、図15(a)では、フレーム本体内の補強板を明瞭に図示するため、フレーム本体を一点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
【0013】
図15(a)に示す車体フレーム301は、上面部300aと、下面部300bと、上面部300aと下面部300bとの間に位置し、上面部300aと下面部300bとの間にそれぞれ角部300dと300eとを形成する側面部300cとを有し、矩形閉断面状に形成した管状のフレーム本体300の内部において、外部から荷重が作用する部分を含むフレーム本体300の長手方向中央側の所定範囲の側面部300cにのみ補強板320が取り付けられている。
【0014】
この車体フレーム301の長手方向両端部を図示しない固定点で支持した状態で、図15(b)に示すように、車体フレーム301の上面部300aの長手方向の中央部分に上方から圧子302を介して荷重Fを付加した場合、補強板320の端部近傍でフレーム本体300の曲げ変形の起点303が生じ、補強板320の端部近傍でフレーム本体300が曲げ変形する場合がある。
【0015】
そこで、この発明は、管状のフレーム本体の内部に補強板が取り付けられた車両用フレーム構造において、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板の端部近傍でフレーム本体が曲げ変形することを抑制することができる車体用フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このため、本願の請求項1に係る車体用フレーム構造は、外部から荷重が作用し得る管状のフレーム本体の内部に補強板が取り付けられた車両用フレーム構造であって、前記フレーム本体は、外部から荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部と、引張方向の力が作用する第2面部と、該第1面部と第2面部との間に位置し、該第1面部と該第2面部との間でそれぞれ角部を形成する第3面部と、を有し、前記補強板は、前記第3面部から離間した状態で該第3面部に沿って延在する基部と、該基部と一体的に形成されて前記フレーム本体の長手方向及び長手方向に直交する方向に複数配置され、該基部から前記第3面部に向けて突出して前記第3面部と当接し、少なくとも一部が前記第3面部と結合される複数の凸部と、を有し、前記第3面部に沿って前記フレーム本体の長手方向における前記荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて強度が低くなるように前記フレーム本体に取り付けられている、ことを特徴としたものである。
【0017】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記補強板は、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて前記第3面部との結合力が小さくなるように前記フレーム本体に取り付けられている、ことを特徴としたものである。
【0018】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記補強板は、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて前記凸部と前記第3面部とを結合する結合数が少なくなるように前記フレーム本体に取り付けられている、ことを特徴としたものである。
【0019】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明において、前記補強板は、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて前記凸部の高さが低く形成されている、ことを特徴としたものである。
【0020】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に係る発明において、前記補強板は、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて前記フレーム本体の長手方向に直交する方向における前記第3面部に沿って設けられる該補強板の幅が小さく形成されている、ことを特徴としたものである。
【0021】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に係る発明において、前記補強板は、前記フレーム本体の第1面部側における前記フレーム本体の長手方向長さが、前記フレーム本体の第2面部側における前記フレーム本体の長手方向長さよりも長く形成され、前記フレーム本体の第1面部側から前記フレーム本体の第2面部側に向けて下すぼまり形状に形成されている、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0022】
本願の請求項1に係る車体用フレーム構造によれば、フレーム本体の内部に取り付けられた補強板は、フレーム本体の第3面部から離間した状態で第3面部に沿って延在する基部と、フレーム本体の長手方向及び長手方向に直交する方向に複数配置され、基部から第3面部に向けて突出して第3面部と当接し、少なくとも一部が第3面部と結合される複数の凸部とを有していることにより、フレーム本体の長手方向及び長手方向に直交する方向において第3面部と基部との間に閉断面部を形成し、フレーム本体の第3面部の剛性を高めて第3面部が外方側に膨らんで面外変形することを効果的に抑制することができ、フレーム本体の曲げ抗力を高めることができる。また、補強板は、フレーム本体の長手方向における荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、フレーム本体の長手方向における補強板の端部においてその中央部に比べて強度が低くなるようにフレーム本体に取り付けられていることにより、曲げ変形が生じやすい部分のみを補強することで、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板の端部近傍でフレーム本体が曲げ変形することを抑制することができる。
【0023】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、補強板は、フレーム本体の長手方向における補強板の端部においてその中央部に比べて第3面部との結合力が小さくなるようにフレーム本体に取り付けられていることにより、補強板の端部において補強板による補強効果を小さくすることができ、補強板の端部近傍でフレーム本体が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0024】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、補強板は、フレーム本体の長手方向における補強板の端部においてその中央部に比べて凸部と第3面部とを結合する結合数が少なくなるようにフレーム本体に取り付けられていることにより、比較的簡単な構造によって、前記効果をより具体的に実現することができる。
【0025】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、補強板は、フレーム本体の長手方向における補強板の端部においてその中央部に比べて凸部の高さが低く形成されていることにより、補強板の端部において補強板による補強効果を小さくすることができ、補強板の端部近傍でフレーム本体が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0026】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、補強板は、フレーム本体の長手方向における補強板の端部においてその中央部に比べてフレーム本体の長手方向に直交する方向における第3面部に沿って設けられる補強板の幅が小さく形成されていることにより、補強板の端部において補強板による補強効果を小さくすることができ、補強板の端部近傍でフレーム本体が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0027】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、補強板は、フレーム本体の第1面部側におけるフレーム本体の長手方向長さが、フレーム本体の第2面部側におけるフレーム本体の長手方向長さよりも長く形成され、フレーム本体の第1面部側からフレーム本体の第2面部側に向けて下すぼまり形状に形成されていることにより、フレーム本体の曲げ変形初期に生じ得るフレーム本体の内方側への第1面部の曲げ変形を有効に抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームを示す斜視図である。
【図2】図1に示す車体フレームの要部拡大図である。
【図3】図2におけるY3−Y3線に沿った車体フレームの断面図である。
【図4】図2におけるY4−Y4線に沿った車体フレームの断面図である。
【図5】補強板の凸部の配列を説明するための説明図である。
【図6】フレーム本体と補強板とにより構成された構造体を説明するための説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの要部を示す斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの要部を示す斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの要部を示す斜視図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの要部を示す斜視図である。
【図11】車体フレームの曲げ変形挙動を解析するためのシミュレーションについて説明するための説明図である。
【図12】車体フレームの曲げ変形挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図である。
【図13】図12における車体フレームの屈曲部の断面を示す断面図である。
【図14】車体フレームに荷重を負荷する圧子の下降ストロークと該荷重に対する反力との関係、及び圧子の下降ストロークとエネルギー吸収量との関係を示すグラフである。
【図15】外部から荷重が作用する部分を含む所定範囲にのみ補強板を取り付けた車体フレームが曲げ変形する状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語など特定の方向を意味する用語を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0030】
本願発明者等は、管状のフレーム本体の内部に補強板が取り付けられた車両用フレーム構造において、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板の端部近傍でフレーム本体が曲げ変形することを抑制することができる車両用フレーム構造の開発にあたり、先ず、管状の車体フレームに外部から曲げ荷重を入力して車体フレームが曲げ変形する際の変形挙動について、CAE(Computer Aided Enginnering)によるシミュレーション解析を行った。
【0031】
図11は、管状の車体フレームの曲げ変形挙動を解析するためのシミュレーションについて説明するための説明図であり、図11(a)は、車体フレームの曲げ変形挙動を解析するのに用いたモデルを示す図、図11(b)は、車体フレームに荷重が付加されて車体フレームが湾曲した状態を示す図、図12は、車体フレームの曲げ変形挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図、図13は、図12における車体フレームの屈曲部の断面を示す断面図である。なお、図12では、車体フレームの各部の変形量の大小を色の濃淡で表し、変形量が大きいほど濃い色で表している。また、図12及び図13では、車体フレームの曲げ変形の進行状態を(a)、(b)、(c)、(d)の順に表しており、後述する図14に示す圧子の下降ストロークがS、S、S、Sの場合を順に示している。
【0032】
このシミュレーションでは、管状の車体フレームとして、図12及び図13に示すように、上面部200aと、上面部200aと離間した状態で上面部200aと平行に設けられる下面部200bと、上面部200aと下面部200bとに隣接し上面部200aと下面部200bとの間に位置する両側の側面部200c、すなわち図12及び図13において上面部200aの右側端部と下面部200bの右側端部との間に位置する右側面部200c及び上面部200aの左側端部と下面部200bの左側端部との間に位置する左側面部200cとを有し、略矩形閉断面状に形成した管状のフレーム本体200をモデルとして用い、この車体フレームに外部から曲げ荷重を付加して車体フレームが曲げ変形する際の変形挙動をシミュレーション解析した。
【0033】
具体的には、図11(a)に示すように、所定長さX1を有するフレーム本体200を、この長さX1より短い所定距離X2だけ離間させた2つの固定点201で支持させ、2つの固定点201の中間位置に対応するフレーム本体200の上面部200aの長手方向における中央部分P1に上方から圧子202を一定速度で下降させ、圧子202を介して、車両の衝突時に外部から作用される荷重を模擬した荷重Fをフレーム本体200に付加して、車体フレームの曲げ変形挙動を調べた。
【0034】
このようにして車体フレームに外部から曲げ荷重Fが付加される場合、図11(b)に示すように、フレーム本体200は下側に凸状に湾曲して変形し、フレーム本体200は、上面部200aでは長手方向両端から圧縮方向の力が作用して圧縮応力が生じ、下面部200bでは長手方向両端から引張方向の力が作用して引張応力が生じることとなる。また、側面部200cには、中立軸210より上面部200a側では圧縮応力が生じ、中立軸210より下面部200b側では引張応力が生じることとなる。
【0035】
図14は、車体フレームに荷重を付加する圧子の下降ストロークと該荷重に対する反力との関係、及び圧子の下降ストロークとエネルギー吸収量との関係を示すグラフであり、図14では、圧子202がフレーム本体200の上面部200aに接触した位置からフレーム本体200の曲げ変形とともに下降する圧子202の下降ストロークを横軸にとり、荷重Fに対する反力F’を左側縦軸にとって表示し、エネルギー吸収量EAを右側縦軸にとって表示している。エネルギー吸収量EAは、フレーム本体200が曲げ変形されることにより吸収できるエネルギーであり、荷重Fに対する反力F’と圧子202の下降ストロークとの積で表されるものである。
【0036】
図12から図14を参照して、シミュレーション解析による車体フレームの曲げ変形挙動について説明する。
【0037】
図12及び図13の(a)に示すように、圧子202がフレーム本体200の上方から下降し、圧子202が上面部200aに接触した位置である圧子の下降ストロークがSの場合、フレーム本体200において、上面部200aと側面部200cとの間に形成される角部200dの頂点P2は、下面部200bと側面部200cとの間に形成される角部200eの頂点P3の略垂直方向上方側に位置している。なお、これら頂点P2、P3は、フレーム本体200が曲げ変形する際の屈曲部、すなわち中央部分P1を有する断面における角部200d、200eの頂点を表している。
【0038】
この状態から圧子202を下方へ移動し、フレーム本体200に荷重Fを付加すると、図14に示すように、圧子202の下降ストロークが大きくなるにつれて荷重Fに対する反力F’が大きくなり、フレーム本体200が下側に凸状に湾曲して変形され、フレーム本体200は、上面部200aで圧縮方向の力が作用し、下面部200bで引張方向の力が作用し、荷重Fが付加される中央部分P1から曲げ変形される。
【0039】
そして、圧子202の下降ストロークがSの場合に荷重Fに対する反力F’が最大となり、図12及び図13の(b)に示すように、フレーム本体200は下側に凸状に湾曲して変形されるとともに管状のフレーム本体200の内方側へ変形され、この変形に伴って上面部200aに隣接する側面部200cが断面方向における外方側に膨らんで面外変形を生じ、角部200eの頂点P3に対して角部200dの頂点P2が略垂直方向から外方側に傾斜し、図12における変形箇所αで示すように、角部200dに変形量の大きい部分が生じる。また、図13(b)に示すように、この変形に伴って下面部200bがフレーム本体200の内方側に変位している。なお、荷重Fに対する反力F’が最大となる最大荷重F’maxが曲げ抗力の程度を表すものである。
【0040】
さらに圧子202の下降ストロークが大きくなると、図14に示すように、圧子202の下降ストロークに伴って荷重Fに対する反力F’が小さくなり、図12及び図13の(c)及び(d)に示すように、フレーム本体200はさらに曲げ変形され、上面部200aがフレーム本体200の内方側へさらに変形され、この変形に伴って側面部200cがフレーム本体200の長手方向と直交する直交断面方向における外方側へさらに膨らんで面外変形を生じるとともに、下面部200dがフレーム本体200の内方側へさらに変位し、フレーム本体200が曲げ変形して座屈している。
【0041】
このシミュレーション解析結果から、本願発明者等は、管状のフレーム本体に外部から曲げ荷重が作用して曲げ変形する場合、曲げ荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部(上面部)が荷重の入力方向に沿ってフレーム本体の内方側へ変形し始め、この変形に伴って該第1面部に隣接する第3面部(側面部)がフレーム本体の外方側に膨らんで面外変形を生じるとともに、荷重が作用した時に引張方向の力が作用する第2面部(下面部)がフレーム本体の内方側へ変形し、フレーム本体が曲げ変形して座屈することを見出した。
【0042】
なお、本願発明者等は、前述したシミュレーション解析に加えて、矩形管状に形成した実際の車体フレームについても同様に、車体フレームに外部から曲げ荷重を作用して曲げ変形する際の変形挙動を調べる実験を行ったが、かかる実験においても、前述したシミュレーション解析結果と略同様の結果が得られた。
【0043】
そこで、これらシミュレーション解析結果及び実験結果に基づいて、管状のフレーム本体の内方側への第1面部の曲げ変形に伴って変形する第3面部の面外変形を抑制することができれば、フレーム本体全体の曲げ変形を有効に抑制することができ、フレーム本体の曲げ抗力を高めることができると考えられる。
【0044】
また、フレーム本体に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合には、荷重が作用する方向に沿ってフレーム本体の内方側へ変形し始める部分を曲げ変形の起点としてフレーム本体が曲げ変形されることから、外部から荷重が作用する部分を含むフレーム本体の長手方向の所定範囲を有効に補強することで、重量の増加を抑制しつつ車体フレームの曲げ抗力を効率的に高めることができると考えられる。
【0045】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームを示す斜視図、図2は、図1に示す車体フレームの要部拡大図、図3は、図2におけるY3−Y3線に沿った車体フレームの断面図、図4は、図2におけるY4−Y4線に沿った車体フレームの断面図である。なお、図1、図2、及び後述する図7から図10では、フレーム本体内の補強板を明瞭に図示するため、フレーム本体を一点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
【0046】
図1から図4に示すように、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム1は、略矩形閉断面状に形成した管状のフレーム本体10と、フレーム本体10の長手方向に沿ってフレーム本体10の内部に取り付けられるフレーム本体10を補強するための補強板20とを有している。
【0047】
フレーム本体10は、鋼板などの金属製の板状素材を断面ハット状にプレス加工して得られる第1の板状部材11と、鋼板などの金属製の板状素材でなる第2の板状部材12とから構成され、第1の板状部材11は、略平面状に形成される底面部11aと、底面部11aの両側において該底面部11aから略垂直方向に延びる側面部11bと、側面部11bから略直角方向に外側に延びるフランジ部11cとを備え、第2の板状部材12は、略平面状に形成される平面部12aを備えている。
【0048】
フレーム本体10は、第1の板状部材11と第2の板状部材12とが、第1の板状部材11のフランジ部11cを第2の板状部材12の平面部12aに重ね合わせてスポット溶接で接合することにより接合され、略矩形閉断面状に形成されている。これにより、フレーム本体10では、第1の板状部材11の底面部11aと側面部11bとの間に略直角をなす角部10aが形成され、第1の板状部材11の側面部11bと第2の板状部材12の平面部12aとの間に略直角をなす角部10bが形成されている。
【0049】
フレーム本体10の内部に取り付けられる補強板20もまた、鋼板などの金属製の板状素材をプレス加工して得られるものであり、フレーム本体10の第1の板状部材11の両側の側面部11bに沿ってそれぞれ設けられ、フレーム本体10の長手方向に直交する方向(直交断面方向)においてフレーム本体10の上方側の角部10aから下方側の角部10bにわたって延び、フレーム本体10の第1の板状部材11の側面部11bの内周側を覆うように配設されている。
【0050】
各補強板20は、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用することが想定される部分を含む所定範囲、本実施形態ではフレーム本体10の長手方向中央部分に荷重が作用することを想定しフレーム本体10の長手方向中央側にフレーム本体10の半分の長さを有するように設けられ、フレーム本体10の第1の板状部材11の側面部11bから離間した状態で側面部11bに沿って延在する基部21と、基部21と一体的に形成され、基部21から側面部11bに向けて突出して四角錐台状に形成される複数の凸部22とを有している。
【0051】
図5は、補強板の凸部の配列を説明するための説明図であり、補強板の要部を示す正面図である。図5に示すように、複数の凸部22は、該凸部22の頂面部22aが四角形である四角錐台状に形成され、フレーム本体10の長手方向及び直交断面方向において周期的に配列されている。
【0052】
本実施形態では、複数の凸部22はそれぞれ、頂面部22aの四角形の対角線がフレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向と平行になるように配置され、フレーム本体10の長手方向に隣接する凸部22が互いにフレーム本体10の直交断面方向に重なりL1を有するとともに、フレーム本体10の直交断面方向に隣接する凸部22が互いにフレーム本体10の長手方向に重なりL2を有している。図5に示すように、符号22を付した凸部について、該凸部22にフレーム本体10の長手方向に隣接する凸部22Aが互いにフレーム本体10の直交断面方向に重なりL1を有し、フレーム本体10の直交断面方向に隣接する凸部22Bが互いにフレーム本体10の長手方向に重なりL2を有している。
【0053】
このようにして、複数の凸部22は、フレーム本体10の長手方向に配列されるとともにフレーム本体10の直交断面方向に配列され、補強板22は、図1及び図2に示すように、フレーム本体10の長手方向及び直交断面方向に直線状に連続した基部21が形成されないように構成されている。
【0054】
また、複数の凸部22は、図4に示すように、基部21からの凸部22の高さHが、フレーム本体10の長手方向における補強板20の中央部からフレーム本体10の長手方向における補強板の端部に近づくにつれて低く形成され、フレーム本体10の長手方向における補強板20の端部においてフレーム本体10の長手方向における補強板20の中央部に比べて基部21からの凸部22の高さHが低く形成されている。
【0055】
本実施形態では、複数の凸部22はすべて、図示しない接着材を介して頂面部22aがフレーム本体10の第1の板状部材11の側面部11bと当接されて接着結合され、補強板20は、フレーム本体10に取り付けられている。補強板20の凸部22は、側面部11bと当接する頂面部22aが四角形状である四角錐台状に形成されていることにより、補強板20の凸部22を側面部11bに確実に当接させて結合することができる。
【0056】
基部21からの凸部22の高さHが、フレーム本体10の長手方向における補強板20の中央部からフレーム本体10の長手方向における補強板の端部に近づくにつれて低く形成されていることにより、基部21は、フレーム本体10の長手方向における補強板20の中央部からフレーム本体10の長手方向における補強板の端部に近づくにつれて該側面部11bとの距離が短くなっている。
【0057】
また、補強板20には、フレーム本体10の直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部23、24が形成されており、フランジ部23が、フレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11aに沿って該底面部11aに、図示しない接着材によって接着結合されて取り付けられ、フランジ部24が、フレーム本体10の第1の板状部材11のフランジ部11cと第2の板状部材12の平面部12aとの間に挟まれた状態でスポット溶接によって取り付けられている。これにより、外部から荷重が作用する時に補強板20がフレーム本体10から外れることを防止することができる。
【0058】
このようにして構成される車体フレーム1は、荷重が作用することが想定される方向に第1の板状部材11の底面部11aが対向するように配置されるとともに、補強板20がフレーム本体10の長手方向における荷重が作用することが想定される部分を含むように配置される。これにより、外部から荷重が作用する時には、第1の板状部材11の底面部11aに圧縮方向の力が作用して圧縮応力が生じ、第2の板状部材12の平面部12aに引張方向の力が作用して引張応力が生じることとなる。
【0059】
このように、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造では、フレーム本体10の内部に取り付けられる補強板20は、フレーム本体10の側面部11bから離間した状態で側面部11bに沿って延在する基部21と、フレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向に複数配置され、基部21から側面部11bに向けて突出して側面部11bと当接し、側面部11bと結合される複数の凸部22とを有している。これにより、フレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向において側面部11bと基部21との間に閉断面部を形成し、フレーム本体10の側面部11bの剛性を高めて側面部11bが外方側に膨らんで面外変形することを効果的に抑制することができ、フレーム本体10の曲げ抗力を高めることができる。
【0060】
図6は、フレーム本体と補強板とにより構成された構造体を説明するための説明図であり、図4に示すフレーム本体の内部に補強板が取り付けられた車体フレームの要部断面図を示している。図6に示すように、フレーム本体10と該フレーム本体10の第1の板状部材11の側面部11bに取り付けられた補強板20とによって、フレーム本体10と補強板20との間には複数の閉断面部25aを有する構造体25が形成されている。
【0061】
構造体25では、図6に示すように、フレーム本体10と補強板20とが曲げの中立軸26から離間して配置されることにより、構造体25によって、フレーム本体10はその断面二次モーメントが高められた構造となっている。なお、図6では、フレーム本体10の長手方向における断面について説明しているが、フレーム本体10の直交断面方向においても同様に、フレーム本体10と補強板20との間には複数の閉断面部を有する構造体が形成され、フレーム本体10はその断面二次モーメントが高められた構造となっている。
【0062】
車体フレーム1に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合、フレーム本体10の第1の板状部材11の側面部11bが車体フレーム1の外方側に膨らんで面外変形を生じ、構造体25には、図6に示すような曲げ変形がフレーム本体10の長手方向及び直交断面方向に生じることとなるが、閉断面部25aを有する構造体25によってフレーム本体10の側面部11bの剛性を高めて側面部11bが外方側に膨らんで面外変形することを効果的に抑制することができ、フレーム本体10の曲げ抗力を高めることができる。
【0063】
また、補強板20は、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、フレーム本体の長手方向における補強板20の端部においてその中央部に比べて基部21からの凸部22の高さが低く形成され、補強板20による補強強度が低くなるようにフレーム本体10に取り付けられていることにより、曲げ変形が生じやすい部分のみを補強することで、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板20の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを抑制することができる。
【0064】
更に、補強板20は、フレーム本体10の長手方向における補強板20の端部においてその中央部に比べて凸部22の高さHが低く形成されていることにより、補強板20の端部において補強板20による補強効果を小さくすることができ、補強板20の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0065】
加えて、補強板20は、複数の凸部22がフレーム本体10に取り付けられていることにより、凸部22とフレーム本体10の結合部どうしを結ぶ線によって区画される仮想領域25b(図5においてハッチングを施した領域)が複数形成されることとなる。車体フレーム1に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合には、フレーム本体10と補強板20とからなる仮想領域25bの各結合部で荷重を受け止めることができ、フレーム本体10の側面部11bの面外変形をより有効に抑制することができる。
【0066】
また、補強板20の凸部22は、フレーム本体10の長手方向に隣接する凸部22が互いにフレーム本体10の直交断面方向の重なりL1を有するとともに、フレーム本体10の直交断面方向に隣接する凸部22が互いにフレーム本体10の長手方向の重なりL2を有するように形成されていることにより、フレーム本体10の長手方向及び直交断面方向に直線状に連続した基部21が形成されないので、荷重が作用して曲げ変形される場合においても、フレーム本体10の長手方向及び直交断面方向に補強板20の基部21による折れ目が形成され、側面部11bの面外変形が促進されることを防止することができる。
【0067】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの要部を示す斜視図である。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と補強板の形状が異なるのみであるので、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては、同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
図7に示すように、本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム31は、第1の実施形態に係る車体フレーム31と同様に、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用することが想定される部分を含む所定範囲に補強板40が設けられている。
【0069】
各補強板40は、側面部11bから離間した状態で側面部11bに沿って延在する基部41と、基部41と一体的に形成されてフレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向に複数配置され、基部41から側面部11bに向けて突出して側面部11bと当接する複数の凸部42とを有し、複数の凸部42は、頂面部42aが四角形である四角錐台状に形成されているが、フレーム本体10の長手方向における補強板40の端部ではその中央部に比べて凸部42の数が少なく形成されている。
【0070】
補強板40においても、凸部42がすべて図示しない接着材を介して側面部11bと当接され、該接着材によって側面部11bに接着結合されているが、フレーム本体10の長手方向における補強板40の端部においてその中央部に比べて凸部42の数が少なく形成されているので、凸部42と側面部11bとを結合する結合数が少なく、側面部11bとの結合力が小さくなるようにフレーム本体10に取り付けられている。このようにして、補強板40は、フレーム本体10の長手方向における補強板40の端部においてその中央部に比べて補強板40による補強強度が低くなるように取りつけられている。
【0071】
また、車体フレーム31では、基部41からの凸部42の高さが、フレーム本体10の長手方向において一定の高さで形成され、凸部42が側面部11bと当接しているので、基部41は、フレーム本体10の長手方向において側面部11bと一定の距離に設けられている。なお、補強板40においても、フレーム本体10の直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部23、24が形成されている。
【0072】
このように構成される車体フレーム31においても、フレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向において側面部11bと基部41との間に閉断面部を形成し、フレーム本体10の側面部11bの剛性を高めて側面部11bが外方側に膨らんで面外変形することを効果的に抑制することができ、フレーム本体10の曲げ抗力を高めることができる。
【0073】
また、補強板40は、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、フレーム本体10の長手方向における補強板40の端部においてその中央部に比べて強度が低くなるようにフレーム本体10に取り付けられていることにより、曲げ変形が生じやすい部分のみを補強することで、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板40の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを抑制することができる。
【0074】
補強板40は、フレーム本体10の長手方向における補強板40の端部においてその中央部に比べて凸部42の数が少なく形成され、側面部11bとの結合力が小さくなるようにフレーム本体10に取り付けられていることにより、補強板40の端部において補強板40による補強効果を小さくすることができ、補強板40の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0075】
また、補強板40は、フレーム本体10の長手方向における補強板40の端部においてその中央部に比べて側面部11bと基部41との間に形成される閉断面部の数が少なく、補強板40による補強効果を小さくすることができ、前記効果をさらに有効に抑制することができる。
【0076】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの要部を示す斜視図である。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態と補強板の形状が異なるのみであるので、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては、同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
図8に示すように、本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム51は、第1の実施形態に係る車体フレーム31と同様に、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用することが想定される部分を含む所定範囲に補強板60が設けられている。
【0078】
各補強板60は、側面部11bから離間した状態で側面部11bに沿って延在する基部61と、基部61と一体的に形成されてフレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向に複数配置され、基部61から側面部11bに向けて突出して側面部11bと当接する複数の凸部62とを有し、複数の凸部62は、頂面部62aが四角形である四角錐台状に形成されているが、フレーム本体10の長手方向における補強板60の端部においてその中央部に比べてフレーム本体10の長手方向に直交する方向における側面部11bに沿って設けられる補強板60の幅が小さく形成されている。
【0079】
補強板60は、フレーム本体10の第2の板状部材12の平面部12a側におけるフレーム本体10の長手方向長さが、フレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11a側におけるフレーム本体10の長手方向長さよりも長く形成され、該平面部12a側から該底面部11a側に向けて上すぼまり形状に形成されている。
【0080】
補強板60においても、凸部62がすべて図示しない接着材を介して側面部11bと当接され、該接着材によって側面部11bに接着結合されているが、フレーム本体10の長手方向における補強板60の端部においてその中央部に比べて凸部62の数が少なく形成されているので、凸部62と側面部11bとを結合する結合数が少なく、側面部11bとの結合力が小さくなるようにフレーム本体10に取り付けられている。このようにして、補強板60は、フレーム本体10の長手方向における補強板60の端部においてその中央部に比べて補強板60による補強強度が低くなるように取りつけられている。
【0081】
また、車体フレーム51では、基部61からの凸部62の高さが、フレーム本体10の長手方向において一定の高さで形成され、凸部62が側面部11bと当接しているので、基部61は、フレーム本体10の長手方向において側面部11bと一定の距離に設けられている。なお、補強板60においても、フレーム本体10の直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部23、24が形成されている。
【0082】
このように構成される車体フレーム51においても、フレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向において側面部11bと基部61との間に閉断面部を形成し、フレーム本体10の側面部11bの剛性を高めて側面部11bが外方側に膨らんで面外変形することを効果的に抑制することができ、フレーム本体10の曲げ抗力を高めることができる。
【0083】
また、補強板60は、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、フレーム本体10の長手方向における補強板60の端部においてその中央部に比べて強度が低くなるようにフレーム本体10に取り付けられていることにより、曲げ変形が生じやすい部分のみを補強することで、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板60の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを抑制することができる。
【0084】
車体フレーム51では、補強板60は、フレーム本体10の長手方向における補強板60の端部においてその中央部に比べてフレーム本体10の長手方向に直交する方向における側面部11bに沿って設けられる補強板60の幅が小さく形成されていることにより、補強板60の端部において補強板60による補強効果を小さくすることができ、補強板60の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0085】
補強板60は、フレーム本体10の長手方向における補強板60の端部においてその中央部に比べて凸部62の数が少なく形成され、側面部11bとの結合力が小さくなるようにフレーム本体10に取り付けられていることにより、補強板60の端部において補強板60による補強効果を小さくすることができ、補強板60の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0086】
また フレーム本体10の長手方向における補強板60の端部においてその中央部に比べて側面部11bと基部61との間に形成される閉断面部の数が少なく、補強板60による補強効果を小さくすることができ、前記効果をさらに有効に抑制することができる。
【0087】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの要部を示す斜視図である。なお、第4の実施形態は、第1の実施形態と補強板の形状が異なるのみであるので、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては、同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
図9に示すように、本発明の第4の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム71は、第1の実施形態に係る車体フレーム31と同様に、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用することが想定される部分を含む所定範囲に補強板80が設けられている。
【0089】
各補強板80は、側面部11bから離間した状態で側面部11bに沿って延在する基部81と、基部81と一体的に形成されてフレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向に複数配置され、基部81から側面部11bに向けて突出して側面部11bと当接する複数の凸部82とを有し、複数の凸部82は、頂面部82aが四角形である四角錐台状に形成されているが、フレーム本体10の長手方向における補強板80の端部においてその中央部に比べてフレーム本体10の長手方向に直交する方向における側面部11bに沿って設けられる補強板80の幅が小さく形成されている。
【0090】
補強板80は、フレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11a側におけるフレーム本体10の長手方向長さが、フレーム本体10の第2の板状部材12の平面部12a側におけるフレーム本体10の長手方向長さよりも長く形成され、該底面部11a側から該平面部12a側に向けて下すぼまり形状に形成されている。
【0091】
補強板80においても、凸部82がすべて図示しない接着材を介して側面部11bと当接され、該接着材によって側面部11bに接着結合されているが、フレーム本体10の長手方向における補強板80の端部においてその中央部に比べて凸部82の数が少なく形成されているので、凸部82と側面部11bとを結合する結合数が少なく、側面部11bとの結合力が小さくなるようにフレーム本体10に取り付けられている。このようにして、補強板80は、フレーム本体10の長手方向における補強板80の端部においてその中央部に比べて補強板80による補強強度が低くなるように取りつけられている。
【0092】
また、車体フレーム71では、基部81からの凸部82の高さが、フレーム本体10の長手方向において一定の高さで形成され、凸部82が側面部11bと当接しているので、基部81は、フレーム本体10の長手方向において側面部11bと一定の距離に設けられている。なお、補強板80においても、フレーム本体10の直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部23、24が形成されている。
【0093】
このように構成される車体フレーム71においても、フレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向において側面部11bと基部81との間に閉断面部を形成し、フレーム本体10の側面部11bの剛性を高めて側面部11bが外方側に膨らんで面外変形することを効果的に抑制することができ、フレーム本体10の曲げ抗力を高めることができる。
【0094】
また、補強板80は、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、フレーム本体10の長手方向における補強板80の端部においてその中央部に比べて強度が低くなるようにフレーム本体10に取り付けられていることにより、曲げ変形が生じやすい部分のみを補強することで、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板80の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを抑制することができる。
【0095】
車体フレーム71においても、車体フレーム51と同様に、補強板80は、フレーム本体10の長手方向における補強板80の端部においてその中央部に比べてフレーム本体10の長手方向に直交する方向における側面部11bに沿って設けられる補強板80の幅が小さく形成されていることにより、補強板80の端部において補強板80による補強効果を小さくすることができ、補強板80の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0096】
また、補強板80は、フレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11a側におけるフレーム本体10の長手方向長さが、フレーム本体10の第2の板状部材12の平面部12a側におけるフレーム本体10の長手方向長さよりも長く形成され、底面部11a側から平面部12a側に向けて下すぼまり形状に形成されていることにより、フレーム本体10の曲げ変形初期に生じ得るフレーム本体10の内方側への底面部11aの曲げ変形を有効に抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0097】
図10は、本発明の第5の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの要部を示す斜視図である。なお、第5の実施形態は、第1の実施形態と補強板の形状及び側面部との結合部が異なるのみであるので、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
図10に示すように、本発明の第5の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム91は、第1の実施形態に係る車体フレーム1と同様に、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用することが想定される部分を含む所定範囲に補強板100が設けられている。
【0099】
各補強板100は、側面部11bから離間した状態で側面部11bに沿って延在する基部101と、基部101と一体的に形成されてフレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向に複数配置され、基部101から側面部11bに向けて突出して側面部11bと当接する複数の凸部102とを有し、複数の凸部102は、頂面部102aが四角形である四角錐台状に形成されているが、フレーム本体10の長手方向における補強板80の端部においてその中央部に比べて凸部102と側面部11bとを結合する結合数が少なくなっている。
【0100】
前述した第1の実施形態から第4の実施形態では、補強板20、40、60、80の凸部22、42、62、82がすべて図示しない接着材によって側面部11bに接着結合されているが、車体フレーム91では、複数の凸部102はすべて側面部11bと当接するものの、図10に示すように、一部の凸部102にのみ接着材105が塗られ、凸部102と側面部11bとを結合する結合数が、フレーム本体10の長手方向における補強板100の端部においてその中央部に比べて少なくなるようにフレーム本体10に取り付けられている。このようにして、補強板100は、フレーム本体10の長手方向における補強板100の端部においてその中央部に比べて補強板100による補強強度が低くなるように取りつけられている。
【0101】
また、車体フレーム91では、基部101からの凸部102の高さが、フレーム本体10の長手方向において一定の高さで形成され、凸部102が側面部11bと当接しているので、基部101は、フレーム本体10の長手方向において側面部11bと一定の距離に設けられている。なお、補強板100においても、フレーム本体10の直交断面方向の両端部に平面状のフランジ部23、24が形成されている。
【0102】
このように構成される車体フレーム91においても、フレーム本体10の長手方向及び長手方向に直交する方向において側面部11bと基部101との間に閉断面部を形成し、フレーム本体10の側面部11bの剛性を高めて側面部11bが外方側に膨らんで面外変形することを効果的に抑制することができ、フレーム本体10の曲げ抗力を高めることができる。
【0103】
また、補強板100は、フレーム本体10の長手方向における荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、フレーム本体10の長手方向における補強板100の端部においてその中央部に比べて強度が低くなるようにフレーム本体10に取り付けられていることにより、曲げ変形が生じやすい部分のみを補強することで、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板100の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを抑制することができる。
【0104】
さらに、補強板100は、フレーム本体10の長手方向における補強板100の端部においてその中央部に比べて凸部102と側面部11bとを結合する結合数が少なく形成され、側面部11bとの結合力が小さくなるようにフレーム本体10に取り付けられていることにより、補強板100の端部において補強板100による補強効果を小さくすることができ、補強板100の端部近傍でフレーム本体10が曲げ変形することを有効に抑制することができる。
【0105】
本実施形態では、補強板20、40、60、80、100は、接着材105によって凸部22、42、62、82、102と側面部11bとを接着結合しているが、スポット溶接によって結合するようにしてよい。また、第1の実施形態から第5の実施形態では、補強板20、40、60、80、100の凸部22、42、62、82、102は、四角錐台状に形成されているが、その他の角錐台状に形成してもよく、あるいは円錐台状に形成するようにしてもよい。
【0106】
なお、車体フレーム1、31、51、71、91に外部から荷重が作用する時に、圧縮方向の力が作用する第1の板状部材11の底面部11aが本願請求項に記載される第1面部に相当し、引張方向の力が作用する第2の板状部材12の平面部12aが本願請求項に記載される第2面部に相当し、該底面部11aと該平面部12aとの間に位置する第1の板状部材11の側面部11bが本願請求項に記載される第3面部に相当する。
【0107】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、第2の実施形態と第4の実施形態とを組み合わせて第2の実施形態に係る補強板40を底面部11a側から平面部12a側に向けて下すぼまり形状に形成したり、あるいは第2の実施形態と第4の実施形態と第5の実施形態とを組み合わせて第2の実施形態に係る補強板40を底面部11a側から平面部12a側に向けて下すぼまり形状に形成するとともにフレーム本体の長手方向における補強材の端部においてその中央部に比べて凸部42と側面部11bとを結合する結合数を少なくしたりするなど、第1の実施形態から第5の実施形態に係る車両用フレーム構造を適宜組み合わせて構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、管状のフレーム本体の内部に補強板が取り付けられた車両用フレーム構造において、重量の増加を抑制しつつ曲げ抗力を効率的に高めることができるとともに、外部から荷重が作用する時に補強板の端部近傍でフレーム本体が曲げ変形することを抑制することができる車体用フレーム構造を提供することができ、例えばセンターピラーやサイドシルなどの車体の一部を構成する車体フレームに広く利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0109】
1、31、51、71、91 車体フレーム
10 フレーム本体
10a、10b 角部
11 第1の板状部材
11a 第1の板状部材の底面部(第1面部)
11b 第1の板状部材の側面部(第3面部)
12 第2の板状部材
12a 第2の板状部材の平面部(第2面部)
20、40、60、80、100 補強板
21、41、61、81、101 基部
22、42、62、82、102 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から荷重が作用し得る管状のフレーム本体の内部に補強板が取り付けられた車両用フレーム構造であって、
前記フレーム本体は、外部から荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部と、引張方向の力が作用する第2面部と、該第1面部と第2面部との間に位置し、該第1面部と該第2面部との間でそれぞれ角部を形成する第3面部と、を有し、
前記補強板は、前記第3面部から離間した状態で該第3面部に沿って延在する基部と、該基部と一体的に形成されて前記フレーム本体の長手方向及び長手方向に直交する方向に複数配置され、該基部から前記第3面部に向けて突出して前記第3面部と当接し、少なくとも一部が前記第3面部と結合される複数の凸部と、を有し、前記第3面部に沿って前記フレーム本体の長手方向における前記荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられ、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて強度が低くなるように前記フレーム本体に取り付けられている、
ことを特徴とする車両用フレーム構造。
【請求項2】
前記補強板は、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて前記第3面部との結合力が小さくなるように前記フレーム本体に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用フレーム構造。
【請求項3】
前記補強板は、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて前記凸部と前記第3面部とを結合する結合数が少なくなるように前記フレーム本体に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用フレーム構造。
【請求項4】
前記補強板は、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて前記凸部の高さが低く形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項5】
前記補強板は、前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の端部において前記フレーム本体の長手方向における前記補強板の中央部に比べて前記フレーム本体の長手方向に直交する方向における前記第3面部に沿って設けられる該補強板の幅が小さく形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項6】
前記補強板は、前記フレーム本体の第1面部側における前記フレーム本体の長手方向長さが、前記フレーム本体の第2面部側における前記フレーム本体の長手方向長さよりも長く形成され、前記フレーム本体の第1面部側から前記フレーム本体の第2面部側に向けて下すぼまり形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−131791(P2011−131791A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294314(P2009−294314)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】