説明

車両用フレーム構造

【課題】センタピラーとサイドシルとの結合部において、サイドシルの曲げ抗力を高めることができる車両用フレーム構造を提供する。
【解決手段】センタピラー20とサイドシル10とが結合された結合部6を有する車両用フレーム構造は、センタピラーインナ21の下部とサイドシルレイン12とによって形成された閉断面部10c内に第1の補強板40が取り付けられ、該第1の補強板40は、サイドシルレイン12の下面部12bから離間した状態で下面部12bに沿って車体前後方向に延びる基部41と、車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、基部41から下面部12bに向けて突出して下面部12bと当接して結合される複数の凸部42と、を有し、サイドシルレイン12の下面部12bに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両における車体の一部を構成する車両用フレームの構造に関し、より詳しく言えば、センタピラーとサイドシルとが結合された結合部を有する車両用フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車等の車両における車体の一部を構成するセンタピラーやサイドシルなどの車両用フレーム(車体フレーム)には、高強度及び高剛性が求められるとともに、燃費性能の向上を図るため軽量化が求められている。このため、車体フレームは、多くの場合、金属製の板状素材を管状に形成して構成されている。また、車体フレームとして、管状のフレーム本体の内部に補強板を取り付けて補強するようにしたものも一般に知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、サイドシルの内部のアウタパネル側に、該サイドシルのアウタパネルに沿って縦向きに延びる下方側の縦壁と、該下方側の縦壁の上端から内方側に向かって斜めに立ち上がって延びる上方側の傾斜壁とを有する補強板を取り付け、サイドシルの上角部を該上方側の傾斜壁によって突っ張るようにして補強したものが開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、サイドシルの内部のインナパネルの上角部付近に、インナパネルとの間にサイドシルの長手方向に延びる複数の閉断面部を形成する補強板を設けて、該閉断面部によってサイドシルの曲げ剛性を高めるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−191008号公報
【特許文献2】特開2009−113766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体側面部に設けられた前後のドア開口部の間に位置して車体上下方向に延びるセンタピラーと車体下部において車体前後方向に延びるサイドシルとが結合された結合部を有する車体フレームにおいては、例えば車体側方からの衝突(所謂側突)を受けた際に乗員の安全性を確保するため、側突時に外部から荷重が作用してもセンタピラーとの結合部においてサイドシルが曲げ変形しないよう十分な曲げ抗力を確保することが求められている。
【0007】
本願発明者等は、種々の試験研究を重ねた結果、具体的には後述するが、管状の車体フレームに外部から荷重が作用して曲げ変形する場合、荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部が荷重の入力方向に沿って車体フレームの内方側へ変形し始め、この変形に伴って該第1面部に隣接する第3面部が車体フレームの外方側に膨らんで面外変形を生じるとともに、荷重が作用した時に引張方向の力が作用する第2面部が車体フレームの内方側へ変位し、車体フレームが曲げ変形して座屈することを見出した。
【0008】
かかる知見によれば、側突時にサイドシルの側面部からサイドシルに荷重が作用して曲げ変形する場合、サイドシルの側面部の内方側への曲げ変形に伴ってサイドシルの上面部及び下面部が外方側に膨らんで面外変形することとなるが、サイドシルの側面部の曲げ変形に伴って変形するサイドシルの上面部及び下面部の面外変形を抑制することができれば、サイドシルの曲げ変形を有効に抑制することができ、サイドシルの曲げ抗力を高めることができると考えられる。
【0009】
特に、センタピラーとサイドシルとの結合部においては、サイドシルの上面部はセンタピラーと結合されて該上面部の面外変形が抑制されていることから、サイドシルの下面部の面外変形を抑制することができれば、サイドシルの曲げ変形を有効に抑制することができ、サイドシルの曲げ抗力を高めることができると考えられる。
【0010】
そこで、この発明は、センタピラーとサイドシルとの結合部において、サイドシルの下面部の面外変形を抑制することができ、サイドシルの曲げ抗力を高めることができる車両用フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本願の請求項1に係る車両用フレーム構造は、車体側面部に設けられた前後のドア開口部の間に位置して車体上下方向に延び、センタピラーインナとセンタピラーレインとによって形成された第1の閉断面部を有するセンタピラーと、車体下部において車体前後方向に延び、サイドシルインナとサイドシルレインとによって形成された第2の閉断面部を有するサイドシルと、が結合された結合部を有する車両用フレーム構造であって、前記センタピラーインナの下部が前記サイドシル内に延長されて前記第2の閉断面部を車内側と車外側とに区切ることにより、該センタピラーインナの下部と前記サイドシルレインとによって第3の閉断面部が形成されていると共に、該第3の閉断面部内に、第1の補強板が取り付けられており、該第1の補強板は、前記サイドシルレインの下面部から離間した状態で該下面部に沿って車体前後方向に延びる基部と、該基部と一体的に形成されて車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、該基部から前記下面部に向けて突出して前記下面部と当接して結合される複数の凸部と、を有し、前記サイドシルレインの下面部に取り付けられている、ことを特徴としたものである。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1の補強板は、該第1の補強板の車幅方向外方端部に上方向に延びる上フランジ部を有し、該第1の補強板の上フランジ部は、前記サイドシルレインの下面部から上方向に延びる前記サイドシルレインの側壁部に結合されている、ことを特徴としたものである。
【0013】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記第1の補強板は、該第1の補強板の車幅方向内方端部に下方向に延びる下フランジ部を有し、該第1の補強板の下フランジ部は、前記サイドシルレインの下面部から下方向に延びる前記サイドシルレインの下フランジ部に結合されている、ことを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明において、前記第3の閉断面部内に、第2の補強板が取り付けられ、該第2の補強板は、前記サイドシルレインの上面部から離間した状態で該上面部に沿って車体前後方向に延びる基部と、該基部と一体的に形成されて車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、該基部から前記上面部に向けて突出して前記上面部と当接して結合される複数の凸部と、を有し、前記サイドシルレインの上面部に取り付けられている、ことを特徴としたものである。
【0015】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記第2の補強板は、該第2の補強板の車幅方向内方端部に上方向に延びる上フランジ部を有し、該第2の補強板の上フランジ部は、前記サイドシルレインの上面部から上方向に延びる前記サイドシルレインの上フランジ部に結合されている、ことを特徴としたものである。
【0016】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5に係る発明において、前記第2の補強板は、車体前後方向に前記結合部から離れるにつれて前記上面部との結合力が小さくなるように前記サイドシルレインの上面部に取り付けられている、ことを特徴としたものである。
【0017】
また更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項4から請求項6の何れか1項に係る発明において、前記第2の補強板は、車体前後方向に前記結合部から離れるにつれて該第2の補強板の強度が小さく形成されている、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本願の請求項1に係る車両用フレーム構造によれば、センタピラーインナの下部とサイドシルレインとによって形成された第3の閉断面部内に第1の補強板が取り付けられ、該第1の補強板は、サイドシルレインの下面部から離間した状態で該下面部に沿って車体前後方向に延びる基部と、車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、基部から下面部に向けて突出して下面部と当接して結合される複数の凸部とを有し、サイドシルレインの下面部に取り付けられていることにより、車体前後方向及び車幅方向においてサイドシルレインの下面部と基部との間に閉断面部を形成し、サイドシルレインの下面部の剛性を高めて下面部が外方側に膨らんで面外変形することを抑制できるので、センタピラーとサイドシルとの結合部において、サイドシルの下面部の面外変形を抑制することができ、サイドシルの曲げ抗力を高めることができる。
【0019】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、第1の補強板は、該第1の補強板の車幅方向外方端部に上方向に延びる上フランジ部を有し、該上フランジ部は、サイドシルレインの下面部から上方向に延びるサイドシルレインの側壁部に結合されていることにより、第1の補強板がサイドシルレインから外れることを防止することができ、前記効果を安定して得ることができる。
【0020】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、第1の補強板は、該第1の補強板の車幅方向内方端部に下方向に延びる下フランジ部を有し、該下フランジ部は、サイドシルレインの下面部から下方向に延びるサイドシルレインの下フランジ部に結合されていることにより、第1の補強板がサイドシルレインから外れることを防止することができ、前記効果を安定して得ることができる。
【0021】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、第3の閉断面部内に第2の補強板が取り付けられ、該第2の補強板は、サイドシルレインの上面部から離間した状態で上面部に沿って車体前後方向に延びる基部と、車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、基部から上面部に向けて突出して上面部と当接して結合される複数の凸部と、を有し、サイドシルレインの上面部に取り付けられていることにより、車体前後方向及び車幅方向においてサイドシルレインの上面部と基部との間に閉断面部を形成し、サイドシルレインの上面部の剛性を高めて上面部が外方側に膨らんで面外変形することを抑制できるので、センタピラーとサイドシルとの結合部において、サイドシルの上面部の面外変形を抑制することができ、サイドシルの曲げ抗力をさらに高めることができる。
【0022】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、第2の補強板は、該第2の補強板の車幅方向内方端部に上方向に延びる上フランジ部を有し、該上フランジ部は、サイドシルレインの上面部から上方向に延びるサイドシルレインの上フランジ部に結合されていることにより、第2の補強板がサイドシルレインから外れることを防止することができ、前記効果を安定して得ることができる。
【0023】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、第2の補強板は、車体前後方向に結合部から離れるにつれて上面部との結合力が小さくなるように取り付けられていることにより、外部から荷重が作用する時に第2の補強板の端部近傍でサイドシルが曲げ変形することを抑制することができる。
【0024】
また更に、本願の請求項7に係る発明によれば、第2の補強板は、車体前後方向に結合部から離れるにつれて第2の補強板の強度が小さく形成されていることにより、外部から荷重が作用する時に第2の補強板の端部近傍でサイドシルが曲げ変形することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの車体側面部を概略的に示す概略図である。
【図2】図1におけるY2−Y2線に沿った車体側面部の断面図である。
【図3】図1におけるY3−Y3線に沿った車体側面部の断面図である。
【図4】図1におけるY3−Y3線に沿った断面から車体後方側の車体を概略的に示す概略図である。
【図5】センタピラーとサイドシルとの結合部近傍の車体側面部を車体外方側から見た斜視図である。
【図6】センタピラーとサイドシルとの結合部近傍の車体側面部を車体内方側から見た斜視図である。
【図7】サイドシルレインと補強板とを車体上方側から見た上面図である。
【図8】サイドシルレインと補強板とを車体下方側から見た底面図である。
【図9】補強板の凸部の配列を説明するための説明図である。
【図10】サイドシルレインと補強板とにより構成された構造体を説明するための説明図である。
【図11】車体フレームの曲げ変形挙動を解析するためのシミュレーションについて説明するための説明図である。
【図12】車体フレームの曲げ変形挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図である。
【図13】図12における車体フレームの屈曲部の断面を示す断面図である。
【図14】車体フレームに荷重を負荷する圧子の下降ストロークと該荷重に対する反力との関係、及び圧子の下降ストロークとエネルギー吸収量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語など特定の方向を意味する用語を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0027】
本願発明者等は、センタピラーとサイドシルとの結合部において、サイドシルの曲げ抗力を高めることができる車両用フレーム構造の開発にあたり、先ず、管状の車体フレームに外部から曲げ荷重を入力して曲げ変形する際の変形挙動について、CAE(Computer Aided Enginnering)によるシミュレーション解析を行った。
【0028】
図11は、管状の車体フレームの曲げ変形挙動を解析するためのシミュレーションについて説明するための説明図であり、図11(a)は、車体フレームの曲げ変形挙動を解析するのに用いたモデルを示す図、図11(b)は、車体フレームに荷重が付加されて車体フレームが湾曲した状態を示す図、図12は、車体フレームの曲げ変形挙動をシミュレーション解析した結果を示す斜視図、図13は、図12における車体フレームの屈曲部の断面を示す断面図である。なお、図12では、車体フレームの各部の変形量の大小を色の濃淡で表し、変形量が大きいほど濃い色で表している。また、図12及び図13では、車体フレームの曲げ変形の進行状態を(a)、(b)、(c)、(d)の順に表しており、後述する図14に示す圧子の下降ストロークがS、S、S、Sの場合を順に示している。
【0029】
このシミュレーションでは、管状の車体フレーム200として、図12及び図13に示すように、上面部200aと、上面部200aと離間した状態で上面部200aと平行に設けられる下面部200bと、上面部200aと下面部200bとに隣接し上面部200aと下面部200bとの間に位置する両側の側面部200c、すなわち図12及び図13において上面部200aの右側端部と下面部200bの右側端部との間に位置する右側面部200c及び上面部200aの左側端部と下面部200bの左側端部との間に位置する左側面部200cとを有し、略矩形閉断面状に形成したモデルを用いて、この車体フレーム200に外部から曲げ荷重を付加して車体フレームが曲げ変形する際の変形挙動をシミュレーション解析した。
【0030】
具体的には、図11(a)に示すように、所定長さX1を有する車体フレーム200を、この長さX1より短い所定距離X2だけ離間させた2つの固定点201で支持させ、2つの固定点201の中間位置に対応する車体フレーム200の上面部200aの長手方向における中央部P1に上方から圧子202を一定速度で下降させ、圧子202を介して、車両の衝突時に外部から作用される荷重を模擬した荷重Fを車体フレーム200に付加して、車体フレームの曲げ変形挙動を調べた。
【0031】
このようにして車体フレーム200に外部から曲げ荷重Fが付加される場合、図11(b)に示すように、車体フレーム200は下側に凸状に湾曲して変形し、車体フレーム200は、上面部200aでは長手方向両端から圧縮方向の力が作用して圧縮応力が生じ、下面部200bでは長手方向両端から引張方向の力が作用して引張応力が生じることとなる。また、側面部200cには、中立軸210より上面部200a側では圧縮応力が生じ、中立軸210より下面部200b側では引張応力が生じることとなる。
【0032】
図14は、車体フレームに荷重を付加する圧子の下降ストロークと該荷重に対する反力との関係、及び圧子の下降ストロークとエネルギー吸収量との関係を示すグラフであり、図14では、圧子202が車体フレーム200の上面部200aに接触した位置から車体フレーム200の曲げ変形とともに下降する圧子202の下降ストロークを横軸にとり、荷重Fに対する反力F’を左側縦軸にとって表示し、エネルギー吸収量EAを右側縦軸にとって表示している。エネルギー吸収量EAは、車体フレーム200が曲げ変形されることにより吸収できるエネルギーであり、荷重Fに対する反力F’と圧子202の下降ストロークとの積で表されるものである。
【0033】
図12から図14を参照して、シミュレーション解析による車体フレームの曲げ変形挙動について説明する。
【0034】
図12及び図13の(a)に示すように、圧子202が車体フレーム200の上方から下降し、圧子202が上面部200aに接触した位置である圧子の下降ストロークがSの場合、車体フレーム200において、上面部200aと側面部200cとの間に形成される角部200dの頂点P2は、下面部200bと側面部200cとの間に形成される角部200eの頂点P3の略垂直方向上方側に位置している。なお、これら頂点P2、P3は、車体フレーム200が曲げ変形する際の屈曲部、すなわち中央部P1を有する断面における角部200d、200eの頂点を表している。
【0035】
この状態から圧子202を下方へ移動し、車体フレーム200に荷重Fを付加すると、図14に示すように、圧子202の下降ストロークが大きくなるにつれて荷重Fに対する反力F’が大きくなり、車体フレーム200が下側に凸状に湾曲して変形され、車体フレーム200は、上面部200aで圧縮方向の力が作用し、下面部200bで引張方向の力が作用し、荷重Fが付加される中央部P1から曲げ変形される。
【0036】
そして、圧子202の下降ストロークがSの場合に荷重Fに対する反力F’が最大となり、図12及び図13の(b)に示すように、車体フレーム200は下側に凸状に湾曲して変形されるとともに管状の車体フレーム200の内方側へ変形され、この変形に伴って上面部200aに隣接する側面部200cが断面方向における外方側に膨らんで面外変形を生じ、角部200eの頂点P3に対して角部200dの頂点P2が略垂直方向から外方側に傾斜し、図12における変形箇所αで示すように、角部200dに変形量の大きい部分が生じる。また、図13(b)に示すように、この変形に伴って下面部200bが車体フレーム200の内方側に変位している。なお、荷重Fに対する反力F’が最大となる最大荷重F’maxが曲げ抗力の程度を表すものである。
【0037】
さらに圧子202の下降ストロークが大きくなると、図14に示すように、圧子202の下降ストロークに伴って荷重Fに対する反力F’が小さくなり、図12及び図13の(c)及び(d)に示すように、車体フレーム200はさらに曲げ変形され、上面部200aが車体フレーム200の内方側へさらに変形され、この変形に伴って側面部200cが車体フレーム200の長手方向と直交する方向における外方側へさらに膨らんで面外変形を生じるとともに、下面部200dが車体フレーム200の内方側へさらに変位し、車体フレーム200が曲げ変形して座屈している。
【0038】
このシミュレーション解析結果から、本願発明者等は、管状の車体フレームに外部から曲げ荷重が作用して曲げ変形する場合、曲げ荷重が作用した時に圧縮方向の力が作用する第1面部(上面部)が荷重の入力方向に沿って車体フレームの内方側へ変形し始め、この変形に伴って該第1面部に隣接する第3面部(側面部)が車体フレームの外方側に膨らんで面外変形を生じるとともに、荷重が作用した時に引張方向の力が作用する第2面部(下面部)が車体フレームの内方側へ変位し、車体フレームが曲げ変形して座屈することを見出した。
【0039】
なお、本願発明者等は、前述したシミュレーション解析に加えて、管状に形成した実際の車体フレームについても同様に、車体フレームに外部から曲げ荷重を作用して曲げ変形する際の変形挙動を調べる実験を行ったが、かかる実験においても、前述したシミュレーション解析結果と略同様の結果が得られた。
【0040】
そこで、これらシミュレーション解析結果及び実験結果によれば、管状の車体フレームとしてのサイドシルにおいて、側突時にサイドシルの側面部からサイドシルに荷重が作用して曲げ変形する場合には、サイドシルの側面部の内方側への曲げ変形に伴ってサイドシルの上面部及び下面部が外方側に膨らんで面外変形することとなるが、サイドシルの側面部の曲げ変形に伴って変形するサイドシルの上面部及び下面部の面外変形を抑制することができれば、サイドシルの曲げ変形を有効に抑制することができ、サイドシルの曲げ抗力を高めることができると考えられる。
【0041】
特に、センタピラーとサイドシルとの結合部においては、サイドシルの上面部はセンタピラーと結合されて該上面部の面外変形が抑制されていることから、サイドシルの下面部の面外変形を抑制することができれば、サイドシルの曲げ変形を有効に抑制することができ、サイドシルの曲げ抗力を高めることができると考えられる。
【0042】
以下に、本発明の実施形態に係る、センタピラーとサイドシルとが結合された結合部を有する車両用フレーム構造について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの車体側面部を概略的に示す概略図、図2は、図1におけるY2−Y2線に沿った車体側面部の断面図、図3は、図1におけるY3−Y3線に沿った車体側面部の断面図、図4は、図1におけるY3−Y3線に沿った断面から車体後方側の車体を概略的に示す概略図、図5は、センタピラーとサイドシルとの結合部近傍の車体側面部を車体外方側から見た斜視図、図6は、センタピラーとサイドシルとの結合部近傍の車体側面部を車体内方側から見た斜視図、図7は、サイドシルレインと補強板とを車体上方側から見た上面図、図8は、サイドシルレインと補強板とを車体下方側から見た底面図である。なお、図4では、サイドシル内に取り付けられた補強板を簡略化して示し、図5及び図6では、サイドシルアウタとセンタピラーアウタとを取り除して示し、図5から図8では、補強板以外の部材を一点鎖線で示している。
【0043】
本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム1は、図1に示すように、車体の側面を構成する車体側面部2が、車体上部において車体前後方向に延びるルーフサイドレール3と、車体下部において車体前後方向に延びるサイドシル10と、車体側面部2に設けられた前後のドア開口部4、5の間に位置して車体上下方向に延びるセンタピラー20とを備えている。車体フレーム1では、センタピラー20がその上部においてルーフサイドレール3に結合されるとともにその下部においてサイドシル10に結合されており、車体フレーム1は、車体側面部2にセンタピラー20とサイドシル10とが結合された結合部6を有している。
【0044】
センタピラー20は、図2に示すように、車体の内面の一部を構成する略平面状のセンタピラーインナ21と、車体の外面の一部を構成する断面ハット状のセンタピラーアウタ22と、センタピラーインナ21とセンタピラーアウタ22との間に配設された断面ハット状のセンタピラーレイン23とを備えており、センタピラーレイン23の両端部23aとセンタピラーアウタ22の両端部22aとがともにセンタピラーインナ21に重ね合わせられて接合されることにより組み立てられている。
【0045】
このようにして、センタピラー20では、センタピラーインナ21とセンタピラーアウタ22とによって形成された閉断面部20aがセンタピラーレイン23によって車内側と車外側とに区切られることにより、センタピラー20は、センタピラーインナ21とセンタピラーレイン23とによって形成された閉断面部20bと、センタピラーレイン23とセンタピラーアウタ22とによって形成された閉断面部20cとを有している。
【0046】
一方、サイドシル10は、図3及び図4に示すように、車体の内面の一部を構成し車体前後方向に延びるサイドシルインナ11と、車体の外面の一部を構成し車体前後方向に延びるサイドシルアウタ13と、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ13との間に配設されて車体前後方向に延びるサイドシルレイン12とを備えている。
【0047】
サイドシルインナ11は、略水平方向に延びる上面部11aと、上面部11aの下方に位置して略水平方向に延びる下面部11bと、下面部11bから上方向に上面部11aまで略垂直方向に延びる側壁部11cとを備えており、車内側に側壁部11cが膨出するように配設されている。
【0048】
サイドシルインナ11にはまた、上面部11aの車幅方向外方端部に上面部11aから上方向に延びる上フランジ部11dが形成されるとともに、下面部11bの車幅方向外方端部に下面部11bから下方向に延びる下フランジ部11eが形成され、サイドシルインナ11は、略断面ハット状に形成されている。
【0049】
一方、サイドシルレイン12は、略水平方向に延びる上面部12aと、上面部12aの下方に位置して略水平方向に延びる下面部12bと、下面部12bから上方向に上面部12aまで略垂直方向に延びる側壁部12cとを備え、車外側に側壁部12cが膨出するように配設されている。
【0050】
サイドシルレイン12においても、上面部12aの車幅方向内方端部に上面部12aから上方向に延びる上フランジ部12dが形成されるとともに、下面部12bの車幅方向内方端部に下面部12bから下方向に延びる下フランジ部12eが形成され、サイドシルレイン12が略断面ハット状に形成されている。
【0051】
これらサイドシルインナ11とサイドシルレイン12とは、サイドシルインナ11の上フランジ部11dとサイドシルレイン12の上フランジ部12dとが重ね合わせられて接合されるとともに、サイドシルインナ11の下フランジ部11eとサイドシルレイン12の下フランジ部12eとが重ね合わせられて接合され、サイドシル10では、サイドシルレイン11とサイドシルレイン12とによって、車体下部において車体前後方向に延びる断面略矩形状の閉断面部10aが形成されている。
【0052】
サイドシルアウタ13は、サイドシルレイン12の上面部12a及び側壁部12cの車外側を覆うように設けられ、その下部に形成された下フランジ部13aがサイドシルレイン12の側壁部12cに接合され、その上部に形成された図示しない上フランジ部がサイドシルレイン12の上フランジ部12dに接合されている。なお、図3に示すように、センタピラー20とサイドシル10との結合部6では、サイドシルアウタ13は、センタピラーアウタ22の下部と一体的に形成されている。
【0053】
また、センタピラー20とサイドシル10との結合部6においては、センタピラーインナ21の下部がサイドシル10内に、具体的にはサイドシルインナ11とサイドシルレイン12とによって形成された閉断面部10a内に延長されて、閉断面部10aを車内側と車外側に区切るようにサイドシルインナ11とサイドシルレイン12との間に配設されている。
【0054】
このように、センタピラーインナ21の下部が閉断面部10aを車内側と車外側とに区切ることにより、センタピラーインナ21の下部とサイドシルインナ11とによって略断面矩形状の閉断面部10bが形成されるとともに、センタピラーインナ21の下部とサイドシルレイン12とによって略断面矩形状の閉断面部10cが形成されている。
【0055】
センタピラーインナ21の下部はまた、サイドシルインナ11の上フランジ部11dとサイドシルレイン12の上フランジ部12dとの間に挟まれて接合されるとともに、サイドシルインナ11の下フランジ部11eとサイドシルレイン12の下フランジ部12eとの間に挟まれて接合されている。
【0056】
本実施形態に係る車体フレーム1では、センタピラー20とサイドシル10との結合部6において、センタピラーインナ21の下部とサイドシルレイン12とによって形成される閉断面部10c内に、サイドシル10を補強するための2つの補強板30、40が取り付けられ、サイドシルレイン12の下面部12bに第1の補強板40が取り付けられており、サイドシルレイン12の上面部12aに第2の補強板30が取り付けられている。
【0057】
第1の補強板40は、サイドシルレイン12の下面部12bに沿って車体前後方向に延び、センタピラー20とサイドシル10との結合部6を含む車体前後方向の所定範囲に設けられ、サイドシルレイン12の下面部12bから離間した状態で車体前後方向に延び下面部12bに沿って延在する基部41と、基部41と一体的に形成され、基部41から下面部12bに向けて突出して四角錐台状に形成される複数の凸部42とを有している。
【0058】
図9は、補強板の凸部の配列を説明するための説明図であり、第1の補強板40の要部を示す正面図である。図9に示すように、第1の補強板40の複数の凸部42は、該凸部42の頂面部42aが四角形である四角錐台状に形成され、車体前後方向及び車幅方向において周期的に配列されている。
【0059】
複数の凸部42はそれぞれ、頂面部42aの四角形の対角線が車体前後方向及び車幅方向と平行になるように配置され、車体前後方向に隣接する凸部42が互いに車幅方向に重なりL1を有するとともに、車幅方向に隣接する凸部42が互いに車体前後方向に重なりL2を有している。図9に示すように、符号42を付した凸部について、該凸部42に車体前後方向に隣接する凸部42Aが互いに車幅方向に重なりL1を有し、車幅方向に隣接する凸部42Bが互いに車体前後方向に重なりL2を有している。
【0060】
このようにして、複数の凸部42は、車体前後方向に配置されるとともに車幅方向に配置され、第1の補強板42は、図5から図8に示すように、車体前後方向の両端部を除いて、車体前後方向及び車幅方向に直線状に連続した基部41が形成されないように構成されている。
【0061】
また、複数の凸部42は、基部41からの凸部42の高さH1が車体前後方向において一定の高さで形成されるとともに、凸部42の頂面部42aがサイドシルレイン12の下面部12bと当接されている。これにより、基部41は、車体前後方向において下面部12bと一定の距離に設けられている。
【0062】
複数の凸部42は、図示しない接着材を介して頂面部42aがサイドシルレイン12の下面部12bに結合されているが、図8に示すように、車体前後方向における第1の補強板40の端部ではその中央部に比べて凸部42とサイドシルレイン12の下面部12bとを結合する結合数が少なく、下面部12bとの結合力が小さくなるようにサイドシルレイン12の下面部12bに取り付けられている。なお、図8では、下面部12bと結合する凸部42に×印(符号45)を付して示している。
【0063】
第1の補強板40はまた、その車幅方向外方端部に上方向に延びる平面状の上フランジ部43を有し、第1の補強板40の上フランジ部43は、サイドシルレイン12の側壁部12cに沿って該側壁部12cに、図示しない接着材によって結合されている。これにより、第1の補強板40がサイドシルレイン12から外れることを防止することができる。
【0064】
また、第1の補強板40は、その車幅方向内方端部に下方向に延びる平面状の下フランジ部44を有しており、第1の補強板40の下フランジ部44は、センタピラーインナ21の下部とサイドシルレイン12の下フランジ部12eとの間に挟まれて該下フランジ部12eに結合されている。これにより、第1の補強板40がサイドシルレイン12から外れることをさらに防止することができる。
【0065】
一方、第2の補強板30は、サイドシルレイン12の上面部12aに沿って車体前後方向に延び、センタピラー20とサイドシル10との結合部6を含む車体前後方向の所定範囲に設けられている。この第2の補強板30は、サイドシルレイン12の上面部12aから離間した状態で車体前後方向に延び上面部12aに沿って延在する基部31と、基部31と一体的に形成され、基部31から上面部12aに向けて突出して四角錐台状に形成される複数の凸部32とを有している。
【0066】
第2の補強板30においても、第1の補強板40と同様に、複数の凸部32は、該凸部32の頂面部32aが四角形である四角錐台状に形成され、車体前後方向及び車幅方向において周期的に配列されている。また、複数の凸部32はそれぞれ、頂面部32aの四角形の対角線が車体前後方向及び車幅方向と平行になるように配置され、車体前後方向に隣接する凸部32が互いに車幅方向に重なりを有するとともに、車幅方向に隣接する凸部3
2が互いに車体前後方向に重なりを有している。
【0067】
このようにして、複数の凸部32は、車体前後方向に配列されるとともに車幅方向に配列され、第2の補強板32においても、図5から図7に示すように、車体前後方向の両端部を除いて、車体前後方向及び車幅方向に直線状に連続した基部31が形成されないように構成されている。
【0068】
また、複数の凸部32は、基部31からの凸部32の高さH2が車体前後方向において一定の高さで形成されるとともに、凸部32の頂面部32aがサイドシルレイン12の上面部12aと当接されている。これにより、基部31は、車体前後方向において上面部12aと一定の距離に設けられている。
【0069】
第2の補強板30においても、複数の凸部32は、図示しない接着材を介して頂面部32aがサイドシルレイン12の上面部12aに結合されているが、図7に示すように、車体前後方向における第1の補強板30の端部ではその中央部に比べて凸部32とサイドシルレイン12の上面部12aとを結合する結合数が少なく、上面部12aとの結合力が小さくなるようにサイドシルレイン12の上面部12aに取り付けられている。なお、図7では、上面部12aと結合する凸部32に×印(符号35)を付して示している。
【0070】
第2の補強板30はまた、その車幅方向外方端部に下方向に延びる平面状の下フランジ部33を有し、第2の補強板30の下フランジ部33は、サイドシルレイン12の側壁部12cに沿って該側壁部12cに、図示しない接着材によって結合されている。これにより、第2の補強板30がサイドシルレイン12から外れることを防止することができる。
【0071】
また、第2補強板30は、その車幅方向内方端部に上方向に延びる平面状の上フランジ部34を有しており、第2の補強板30の上フランジ部34は、センタピラーインナ21の下部とサイドシルレイン12の上フランジ部12dとの間に挟まれて該上フランジ部12dに結合されている。これにより、第2の補強板30がサイドシルレイン12から外れることをさらに防止することができる。
【0072】
このように、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造では、センタピラーインナ21の下部とサイドシルレイン12とによって形成された閉断面部10c内に第1の補強板40が取り付けられ、該第1の補強板40は、サイドシルレイン12の下面部12bから離間した状態で該下面部12bに沿って車体前後方向に延びる基部41と、車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、基部41から下面部12bに向けて突出して下面部12bと当接して結合される複数の凸部42とを有し、サイドシルレイン12の下面部12bに取り付けられている。
【0073】
これにより、車体前後方向及び車幅方向においてサイドシルレイン12の下面部12bと基部41との間に閉断面部を形成し、サイドシルレイン12の下面部12bの剛性を高めて下面部12bが外方側に膨らんで面外変形することを抑制できるので、センタピラー20とサイドシル10との結合部6において、サイドシル10の下面部の面外変形を抑制することができ、サイドシル10の曲げ抗力を高めることができる。
【0074】
図10は、サイドシルレインと補強板とにより構成された構造体を説明するための説明図であり、図10では、サイドシルレイン12の下面部12bに第1の補強板40が取り付けられたサイドシル10の車体前後方向における要部断面図を示すとともに、サイドシルレイン12の上面部12aに第2の補強板30が取り付けられたサイドシル10の車体前後方向における要部断面図を示している。図10に示すように、サイドシルレイン12と該サイドシルレイン12の下面部12bに取り付けられた第1の補強板40とによって、サイドシルレイン12と第1の補強板40との間には複数の閉断面部47aを有する構造体47が形成されている。
【0075】
構造体47では、図10に示すように、サイドシルレイン12と第1の補強板40とが曲げの中立軸46から離間して配置されることにより、構造体47によって、サイドシルレイン12はその断面二次モーメントが高められた構造となっている。なお、車幅方向においても同様に、サイドシルレイン12と第1の補強板40との間には複数の閉断面部を有する構造体が形成され、サイドシルレイン12はその断面二次モーメントが高められた構造となっている。
【0076】
サイドシル10に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合、サイドシルレイン12の下面部12bが外方側に膨らんで面外変形を生じ、構造体47には、図10に示すような曲げ変形が車体前後方向及び車幅方向に生じ得るが、閉断面部47aを有する構造体47によってサイドシルレイン12の下面部12bの剛性を高めて下面部12bが外方側に膨らんで面外変形することを抑制することができるので、センタピラー20とサイドシル10との結合部6において、サイドシル10の下面部の面外変形を抑制することができ、サイドシル10の曲げ抗力を高めることができる。
【0077】
特に、センタピラー20とサイドシル10との結合部6においては、サイドシル10の上面部はセンタピラー20と結合されて該上面部の面外変形が抑制されていることから、サイドシル10の下面部の面外変形を抑制することで、サイドシル10の曲げ変形を有効に抑制することができ、サイドシル10の曲げ抗力を高めることができる。
【0078】
また、第1の補強板40は、複数の凸部42がサイドシルレイン12の下面部12bに取り付けられていることにより、凸部42とサイドシルレイン12の下面部12bの結合部どうしを結ぶ線によって区画される仮想領域47b(図9においてハッチングを施した領域)が複数形成されることとなる。サイドシル10に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合には、サイドシルレイン12の下面部12bと第1の補強板40とからなる仮想領域47bの各結合部で荷重を受け止めることができ、サイドシルレイン12の下面部12bの面外変形をより有効に抑制することができる。
【0079】
加えて、第1の補強板40の凸部42は、車体前後方向に隣接する凸部42が互いに車幅方向の重なりL1を有するとともに、車幅方向に隣接する凸部42が互いに車体前後方向の重なりL2を有するように形成されていることにより、車体前後方向及び車幅方向に直線状に連続した基部41が形成されないので、荷重が作用して曲げ変形する場合に、車体前後方向及び車幅方向に第1の補強板40の基部41による折れ目が形成され、サイドシルレイン12の下面部12bの面外変形が促進されることを防止することができる。
【0080】
また、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造では、センタピラーインナ21の下部とサイドシルレイン12とによって形成された閉断面部10c内に第2の補強板30が取り付けられ、該第2の補強板30は、サイドシルレイン12の上面部12aから離間した状態で上面部12aに沿って車体前後方向に延びる基部31と、車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、基部31から上面部12aに向けて突出して上面部12aと当接して結合される複数の凸部32と、を有し、サイドシルレイン12の上面部12aに取り付けられている。
【0081】
これにより、車体前後方向及び車幅方向においてサイドシルレイン12の上面部12aと基部31との間に閉断面部を形成し、サイドシルレイン12の上面部12aの剛性を高めて上面部12aが外方側に膨らんで面外変形することを抑制できるので、センタピラー20とサイドシル10との結合部6において、サイドシル10の上面部の面外変形を抑制することができ、サイドシル10の曲げ抗力をさらに高めることができる。
【0082】
第2の補強板30についても、第1の補強板40と同様に、図10に示すように、サイドシルレイン12と該サイドシルレイン12の上面部12aに取り付けられた第2の補強板30とによって、サイドシルレイン12と第2の補強板30との間には複数の閉断面部37aを有する構造体37が形成されている。
【0083】
構造体37では、図10に示すように、サイドシルレイン12と第2の補強板30とが曲げの中立軸36から離間して配置されることにより、構造体37によって、サイドシルレイン12はその断面二次モーメントが高められた構造となっている。なお、車幅方向においても同様に、サイドシルレイン12と第2の補強板30との間には複数の閉断面部を有する構造体が形成され、サイドシルレイン12はその断面二次モーメントが高められた構造となっている。
【0084】
サイドシル10に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合、サイドシル10のサイドシルレイン12の上面部12aが外方側に膨らんで面外変形を生じ、構造体37には、図10に示すような曲げ変形が車体前後方向及び車幅方向に生じ得るが、閉断面部37aを有する構造体37によってサイドシルレイン12の上面部12aの剛性を高めて上面部12aが外方側に膨らんで面外変形することを抑制することができるので、センタピラー20とサイドシル10との結合部6において、サイドシル10の上面部の面外変形を抑制することができ、サイドシル10の曲げ抗力をさらに高めることができる。
【0085】
また、第2の補強板30においても、第1の補強板40と同様に、複数の凸部32がサイドシルレイン12の上面部12aに取り付けられていることにより、凸部32とサイドシルレイン12の下面部12bの結合部どうしを結ぶ線によって区画される仮想領域が複数形成され、サイドシル10に外部から荷重が作用して曲げ変形する場合に、サイドシルレイン12の上面部12aと第2の補強板30とからなる仮想領域の各結合部で荷重を受け止めることができ、サイドシルレイン12の上面部12aの面外変形をより有効に抑制することができる。
【0086】
加えて、第2の補強板30の凸部32においても、車体前後方向に隣接する凸部32が互いに車幅方向の重なりを有するとともに、車幅方向に隣接する凸部32が互いに車体前後方向の重なりを有するように形成されていることにより、車体前後方向及び車幅方向に直線状に連続した基部31が形成されないので、荷重が作用して曲げ変形する場合に、車体前後方向及び車幅方向に第2の補強板30の基部31による折れ目が形成され、サイドシルレイン12の上面部12aの面外変形が促進されることを防止することができる。
【0087】
また、第2の補強板30は、車体前後方向にセンタピラー20とサイドシル10との結合部6から離れるにつれてサイドシルレイン12の上面部12bとの結合力が小さくなるように取り付けられていることにより、第2の補強板30の端部において該補強板30による補強効果を小さくすることができ、外部から荷重が作用する時に第2の補強板30の端部近傍でサイドシル10が曲げ変形することを抑制することができる。
【0088】
本実施形態では、第2の補強板30は、基部31からの凸部32の高さH2が車体前後方向において一定の高さで形成されているが、車体前後方向にセンタピラー20とサイドシル10との結合部6から離れるにつれて凸部32の高さH2を低く形成し、第2の補強板30による補強強度が低くなるようにすることも可能である。
【0089】
このように、第2の補強板30を、車体前後方向にセンタピラー20とサイドシル10との結合部6から離れるにつれて第2の補強板30の強度を小さく形成することにより、第2の補強板30の端部において該補強板30による補強効果を小さくすることができ、外部から荷重が作用する時に第2の補強板30の端部近傍でサイドシル10が曲げ変形することを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、補強板30、40は、図示しない接着材によって凸部32、42とサイドシルレイン12とを接着結合しているが、スポット溶接等によって結合するようにしてもよい。また、補強板30、40の凸部32、42は、四角錐台状に形成されているが、その他の角錐台状に形成してもよく、あるいは円錐台状に形成するようにしてもよい。
【0091】
なお、センタピラーインナ21とセンタピラーレイン23とによって形成された閉断面部20bが、本願請求項に記載される第1の閉断面部に相当し、サイドシルインナ11とサイドシルレイン12とによって形成された閉断面部10aが、本願請求項に記載される第2の閉断面部に相当し、センタピラーインナ21の下部とサイドシルレイン12とによって形成される閉断面部10cが、本願請求項に記載される第3の閉断面部に相当する。
【0092】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、センタピラーとサイドシルとの結合部において、サイドシルの曲げ抗力を高めることができる車両用フレーム構造を提供することができ、センタピラーとサイドシルとの結合部を有する車体フレームに広く利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0094】
1 車体フレーム
2 車体側面部
4、5 ドア開口部
6 結合部
10 サイドシル
10a 第2の閉断面部
10c 第3の閉断面部
11 サイドシルインナ
12 サイドシルレイン
12a サイドシルレインの上面部
12b サイドシルレインの下面部
12c サイドシルレインの側壁部
12d サイドシルレインの上フランジ部
12e サイドシルレインの下フランジ部
20 センタピラー
20b 第1の閉断面部
21 センタピラーインナ
23 センタピラーレイン
30 第2の補強板
31 第2の補強板の基部
32 第2の補強板の凸部
34 第2の補強板の上フランジ部
40 第1の補強板
41 第1の補強板の基部
42 第1の補強板の凸部
43 第1の補強板の上フランジ部
44 第1の補強板の下フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側面部に設けられた前後のドア開口部の間に位置して車体上下方向に延び、センタピラーインナとセンタピラーレインとによって形成された第1の閉断面部を有するセンタピラーと、車体下部において車体前後方向に延び、サイドシルインナとサイドシルレインとによって形成された第2の閉断面部を有するサイドシルと、が結合された結合部を有する車両用フレーム構造であって、
前記センタピラーインナの下部が前記サイドシル内に延長されて前記第2の閉断面部を車内側と車外側とに区切ることにより、該センタピラーインナの下部と前記サイドシルレインとによって第3の閉断面部が形成されていると共に、該第3の閉断面部内に、第1の補強板が取り付けられており、
該第1の補強板は、前記サイドシルレインの下面部から離間した状態で該下面部に沿って車体前後方向に延びる基部と、該基部と一体的に形成されて車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、該基部から前記下面部に向けて突出して前記下面部と当接して結合される複数の凸部と、を有し、前記サイドシルレインの下面部に取り付けられている、
ことを特徴とする車両用フレーム構造。
【請求項2】
前記第1の補強板は、該第1の補強板の車幅方向外方端部に上方向に延びる上フランジ部を有し、
該第1の補強板の上フランジ部は、前記サイドシルレインの下面部から上方向に延びる前記サイドシルレインの側壁部に結合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用フレーム構造。
【請求項3】
前記第1の補強板は、該第1の補強板の車幅方向内方端部に下方向に延びる下フランジ部を有し、
該第1の補強板の下フランジ部は、前記サイドシルレインの下面部から下方向に延びる前記サイドシルレインの下フランジ部に結合されている、
ことを特徴とする請求項1叉は請求項2に記載の車両用フレーム構造。
【請求項4】
前記第3の閉断面部内に、第2の補強板が取り付けられ、
該第2の補強板は、前記サイドシルレインの上面部から離間した状態で該上面部に沿って車体前後方向に延びる基部と、該基部と一体的に形成されて車体前後方向及び車幅方向に複数配置され、該基部から前記上面部に向けて突出して前記上面部と当接して結合される複数の凸部と、を有し、前記サイドシルレインの上面部に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項5】
前記第2の補強板は、該第2の補強板の車幅方向内方端部に上方向に延びる上フランジ部を有し、
該第2の補強板の上フランジ部は、前記サイドシルレインの上面部から上方向に延びる前記サイドシルレインの上フランジ部に結合されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用フレーム構造。
【請求項6】
前記第2の補強板は、車体前後方向に前記結合部から離れるにつれて前記上面部との結合力が小さくなるように前記サイドシルレインの上面部に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項4叉は請求項5に記載の車両用フレーム構造。
【請求項7】
前記第2の補強板は、車体前後方向に前記結合部から離れるにつれて該第2の補強板の強度が小さく形成されている、
ことを特徴とする請求項4から請求項6の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−131792(P2011−131792A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294316(P2009−294316)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】