説明

車両用フレーム構造

【課題】重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる車両用フレーム構造を提供する。
【解決手段】フレーム本体10に補強体20を内蔵した車両用フレーム構造1において、フレーム本体10は、外部から曲げ荷重が作用した時に、圧縮方向の力が作用する第1面部11aと、引張方向の力が作用する第2面部12aと、第1面部11aと第2面部12aとの間でそれぞれ角部10a、10bを形成する両側の第3面部11bとを有し、補強体20は、第1面部11aと両側の第3面部11bとの間に形成される角部10aに合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部20aと、第2面部12aの中央側に合致して当接される第2当接部20bと、第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部20cとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管状の金属製フレーム本体に該フレーム本体を補強するための補強体を内蔵した車両用フレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両における車体の一部を構成するサイドシルやピラーなどの車両用フレーム(車体フレーム)は一般に、金属製の板状素材を閉断面状に形成した閉断面部材として構成されている。また、車体フレームとして、金属製の閉断面部材の内部に補強部材を取り付けて該閉断面部材を補強するようにしたものも知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、アウタパネルとインナパネルとを接合して閉断面状に形成したピラーの内部に複数のバルクヘッドを配設するとともに、これら複数のバルクヘッドを補強部材で連結することにより、ピラーの外力に対する強度を向上させるようにしたものが開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、閉断面状に形成した車両骨格部材の内部に、少なくとも2組の互いに対向する角部方向に向かって延び、該角部にそれぞれ結合される補強部材を取り付けることにより、車両骨格部材のねじり剛性を高めるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−20267号公報
【特許文献2】特開2009−173109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1及び前記特許文献2に開示されるように、閉断面部材の内部に補強部材を取り付けて補強する場合は、補強部材によって重量の増加を招くこととなるので、サイドシルやピラーなどの車体フレームにおいては、如何に重量の増加を抑制しつつ補強するかが重要な課題となっている。
【0007】
また、自動車等の車両においては、走行時に、車輪を懸架するサスペンション装置と車体との取付部から車体に荷重が入力され、かかる荷重が、サイドシルやピラーなどの車体フレームに伝達されている。このように、車体フレームは、走行時に荷重が入力されて曲げ変形され得ることから、車体フレームの曲げ剛性を高めることが望まれている。
【0008】
具体的には後述するが、略矩形閉断面状に形成した閉断面部材に外部から曲げ荷重が作用する場合、圧縮方向の力が作用する第1面部が閉断面部材の内方側へへこんで、該第1面部と該面部に隣接する側面部との間に形成される角部が曲げ荷重の入力方向に変位するとともに該側面部が閉断面部材の外方側へ膨らむように該角部が回転移動し、且つ、引張方向の力が作用する第2面部の中央側が閉断面部材の内方側へへこむことにより、閉断面部材の断面崩れが生じて閉断面部材が曲げ変形されることとなる。
【0009】
かかる知見によれば、車体フレームとしての閉断面部材に外部から曲げ荷重が作用する場合に生じ得る第1面部と該面部に隣接する側面部との間に形成される角部の変形と第2面部の中央側の変形とを抑制することができれば、車体フレームの曲げ変形を有効に抑制することができ、重量の増加を抑制しつつ車体フレームの曲げ剛性を効率的に高めることができると考えられる。
【0010】
そこで、この発明は、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる車両用フレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本願の請求項1に係る発明は、管状の金属製フレーム本体に該フレーム本体を補強するための補強体を内蔵した車両用フレーム構造であって、前記フレーム本体は、外部から曲げ荷重が作用した時に、圧縮方向の力が作用する第1面部と、該第1面部と対向し、引張方向の力が作用する第2面部と、該フレーム本体の第1面部と第2面部との間に位置し、該第1面部と該第2面部との間でそれぞれ角部を形成する両側の第3面部とを有し、前記補強体は、前記フレーム本体の第1面部と両側の第3面部との間に形成される角部に合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部と、前記フレーム本体の第2面部の中央側に合致して当接される第2当接部と、前記フレーム本体の第3面部と離間して該第3面部と当接しない両側の非当接部とを有している、ことを特徴としたものである。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1当接部は、前記フレーム本体の長手方向と直交する方向における前記第3面部の長さの三分の一以上の長さで前記第3面部と当接している、ことを特徴としたものである。
【0013】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記第1当接部は、前記フレーム本体の第1面部と第3面部との間に形成される角部内面に接着結合されている、ことを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明において、前記補強体は、前記第1面部側における両側の第3面部の間の略中央部に該補強体の内方側へ凹状に窪む第1の凹部を有している、ことを特徴としたものである。
【0015】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に係る発明において、前記補強体は、前記フレーム本体の第2面部と両側の第3面部との間に形成される角部に合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第3当接部を有すると共に、前記第3面部側における第1面部と第2面部との間の略中央部に該補強体の内方側へ凹状に窪む第2の凹部を有し、前記非当接部は、前記第2の凹部により形成されている、ことを特徴としたものである。
【0016】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に係る発明において、前記補強体は、前記フレーム本体の第3面部に沿って平行に前記フレーム本体の長手方向に延在する複数の板状のリブを有し、該複数のリブは、前記第3面部側に近づくにつれて、隣り合うリブの間隔が狭く形成されている、あるいは該リブの肉厚が厚く形成されている、ことを特徴としたものである。
【0017】
また更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に係る発明において、前記フレーム本体の内部に複数の前記補強体が該フレーム本体の長手方向に離間して配設され、該複数の補強体を連結する連結部を有している、ことを特徴としたものである。
【0018】
また更に、本願の請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明において、前記連結部は、前記フレーム本体の第1面部と第3面部とそれぞれ離間するように設けられている、ことを特徴としたものである。
【0019】
また更に、本願の請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8の何れか1項に係る発明において、前記補強体は、前記フレーム本体の長手方向における少なくとも前記荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられている、ことを特徴としたものである。
【0020】
また更に、本願の請求項10に係る発明は、請求項6から請求項9の何れか1項に係る発明において、前記補強体は、前記第1面部に沿って延在する底面部と、前記両側の第3面部に沿ってそれぞれ延在する両側の側面部とを有し、前記底面部に、前記両側の側面部及び前記リブが結合されている、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0021】
本願の請求項1に係る発明によれば、フレーム本体に内蔵した補強体は、フレーム本体の第1面部と両側の第3面部との間に形成される角部に合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部と、フレーム本体の第2面部の少なくとも中央側に合致して当接される第2当接部と、フレーム本体の第3面部と離間して該第3面部と当接しない両側の非当接部とを有している。
【0022】
これにより、フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用する場合に、補強体の第1当接部と第2当接部によってフレーム本体を支持し、圧縮方向の力が作用する第1面部と該面部に隣接する第3面部との間に形成される角部が曲げ荷重の入力方向に変位するとともに該第3面部がフレーム本体の外方側へ膨らむように該角部が回転移動して変形することを抑制することができるとともに、引張方向の力が作用する第2面部がフレーム本体の内方側へへこんで変形することを抑制することができるので、フレーム本体の曲げ剛性を効果的に高めることができる。また、補強体の非当接部によってフレーム本体の曲げ剛性の向上に余り寄与しない部分を肉抜きして重量の増加を抑制することができ、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0023】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、第1当接部は、フレーム本体の長手方向と直交する方向における第3面部の長さの三分の一以上の長さで第3面部と当接していることにより、フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用する場合に、応力が高くなり得る部分を有効に補強することができ、前記効果をより具体的に実現することができる。
【0024】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、第1当接部は、フレーム本体の第1面部と第3面部との間に形成される角部内面に接着結合されていることにより、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の性能を向上させることができるとともに、補強体が倒れることを抑制することができ、前記効果を有効に得ることができる。
【0025】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、補強体は、第1面部側における両側の第3面部の間の略中央部に該補強体の内方側へ凹状に窪む第1の凹部を有していることにより、フレーム本体の曲げ剛性の向上に余り寄与しない部分を肉抜きして重量の増加を抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0026】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、補強体は、フレーム本体の第2面部と両側の第3面部との間に形成される角部に合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第3当接部を有することにより、フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用する場合に、第2面部と該面部に隣接する第3面部との間に形成される角部を有効に補強することができ、フレーム本体の曲げ剛性をさらに高めることができる。
【0027】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、補強体は、フレーム本体の第3面部に沿って平行に延在する複数の板状のリブを有し、該複数のリブは、第3面部側に近づくにつれてリブの間隔が狭く形成されている、あるいはリブの肉厚が厚く形成されていることにより、重量の増加を抑制しつつ、フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用する場合に、第1面部と該面部に隣接する第3面部との間に形成される角部の変形を効果的に抑制することができる。
【0028】
また更に、本願の請求項7に係る発明によれば、フレーム本体の内部に複数の補強体が該フレーム本体の長手方向に離間して配設され、該複数の補強体を連結する連結部を有していることにより、補強体が倒れることを有効に抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。また、複数の補強体のフレーム本体への取り付けを容易に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0029】
また更に、本願の請求項8に係る発明によれば、連結部は、フレーム本体の第1面部と第3面部とそれぞれ離間するように設けられていることにより、重量の増加を抑制しつつ、前記効果を有効に奏することができる。
【0030】
また更に、本願の請求項9に係る発明によれば、補強体は、フレーム本体の長手方向における少なくとも荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられていることにより、重量の増加を抑制しつつフレーム本体の曲げ剛性を効率的に高めることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0031】
また更に、本願の請求項10に係る発明によれば、補強体は、第1面部に沿って延在する底面部と、両側の第3面部に沿ってそれぞれ延在する両側の側面部とを有し、底面部に、両側の側面部及びリブが結合されていることにより、フレーム本体に入力される荷重を補強体の底面部を通じて側面部及びリブに伝達して分散させることができ、フレーム本体の第3面部がフレーム本体の外方側に膨らんで座屈することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図である。
【図2】図1におけるY2a−Y2a線及びY2b−Y2b線に沿った車体フレームの断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図である。
【図4】図3におけるY4a−Y4a線及びY4b−Y4b線に沿った車体フレームの断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図である。
【図6】図5におけるY6a−Y6a線及びY6b−Y6b線に沿った車体フレームの断面図である。
【図7】図5におけるY7−Y7線に沿った車体フレームの断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図である。
【図9】図8に示す車体フレームをY9−Y9線に沿った断面で切断した図である。
【図10】図8におけるY10a−Y10a線及びY10b−Y10b線に沿った車体フレームの断面図である。
【図11】図9におけるY11−Y11線に沿った車体フレームの断面図である。
【図12】サイドシルに外部から荷重が作用するときに該サイドシルに生じる応力を示す図である。
【図13】図12におけるY13−Y13線に沿ったサイドシルの断面図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造のサイドシルへの適用を説明するための説明図である。
【図15】図14におけるY15−Y15線に沿ったサイドシルの断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造のサイドシルへの適用を説明するための説明図である。
【図17】閉断面状に形成したフレーム本体に外部から曲げ荷重が作用するときのフレーム本体の変形を説明するための説明図である。
【図18】フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用するときに該フレーム本体に内蔵させた補強体に生じる応力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0034】
本願発明者等は、管状の金属製フレーム本体に補強体を内蔵した車両用フレーム構造において、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる車両用フレーム構造の開発にあたり、先ず、略矩形閉断面状に形成した閉断面部材として管状の金属製フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用して曲げ変形する際の変形挙動についてシミュレーション解析を行った。
【0035】
図17は、閉断面状に形成したフレーム本体に外部から曲げ荷重が作用するときのフレーム本体の変形を説明するための説明図であり、図17では、シミュレーション解析による外部から曲げ荷重が作用したときのフレーム本体の断面を示すとともに、外部から曲げ荷重が作用する前のフレーム本体の断面を二点鎖線で示している。なお、図17では、フレーム本体の長手方向中央部の断面について、その断面変形を分かり易くするために変形を誇張して示している。
【0036】
図17の二点鎖線で示すように、フレーム本体200として、略平面状に形成される底面部201a、該底面部201aの両側において該底面部201aから略垂直方向に延びる両側の側面部201b、及び該両側の側面部201bからそれぞれ略直角方向に外側に延びる両側のフランジ部201cを備えて断面ハット状に形成された第1の板状部材201と、略平面状に形成される平面部202aを備えた平板状の第2の板状部材202とから構成され、第1の板状部材201の両側のフランジ部201cを第2の板状部材202の平面部202aに接合することにより略矩形閉断面状に形成したモデルを用い、このフレーム本体200の長手方向両端部近傍をそれぞれ支持した状態でフレーム本体200の長手方向中央部に外部(図17では上部)から曲げ荷重Fを作用させて解析を行った。
【0037】
かかる解析によれば、フレーム本体200に外部から曲げ荷重Fが作用する場合、フレーム本体200は該フレーム本体200の長手方向において下側に凸状に湾曲して変形し、第1の板状部材201の底面部201aではフレーム本体200の長手方向両端から圧縮方向の力が作用して圧縮応力が生じ、第2の板状部材202の平面部202aではフレーム本体200の長手方向両端から引張方向の力が作用して引張応力が生じ、第1の板状部材201の側面部201bでは、中立軸より第1の板状部材201の底面部201a側では圧縮応力が生じ、中立軸より第2の板状部材202の平面部202a側では引張応力が生じることとなる。
【0038】
なお、以下では、フレーム本体200に外部から曲げ荷重Fが作用した時に、圧縮方向の力が作用する第1の板状部材201の底面部201aを第1面部201aとして表し、第2の板状部材202の平面部202aを第2面部202aとして表し、第1の板状部材201の側面部201bを第3面部201bとして表す。
【0039】
フレーム本体200に外部から曲げ荷重Fが作用する場合にはまた、図17に示すように、第1面部201aがフレーム本体200の内方側へへこんで、該第1面部201aと該面部201aに隣接する第3面部201bとの間に形成される角部200aが曲げ荷重Fの入力方向に変位するとともに該第3面部201bがフレーム本体200の外方側へ膨らむように該角部200aが矢印aで示す方向に(図17では、右側の角部200aが反時計回り方向に、左側の角部200aが時計回り方向に)回転移動し、且つ、第2面部202aがフレーム本体200の内方側へへこむことにより、フレーム本体200の断面崩れが生じてフレーム本体200が曲げ変形されることとなる。
【0040】
また、本願発明者等は、略矩形閉断面状に形成した閉断面部材として管状の金属製フレーム本体に樹脂製補強体を内蔵させ、該フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用するときに該フレーム本体に内蔵させた補強体に生じる応力についてシミュレーション解析を行った。
【0041】
図18は、フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用するときに該フレーム本体に内蔵させた補強体に生じる応力を示す図であり、図18では、シミュレーション解析によって得られた補強体に生じる応力分布を、フレーム本体の長手方向中央部の断面について示している。
【0042】
図18に示すように、フレーム本体300として、図17に示すフレーム本体200と同様に、底面部301a、両側の側面部301b及び両側のフランジ部301cを備えた第1の板状部材301と、平面部302aを備えた第2の板状部材302とから構成され、第1の板状部材301と第2の板状部材302を接合して略矩形閉断面状に形成したモデルを用いた。
【0043】
なお、フレーム本体300についても、該フレーム本体300に外部から曲げ荷重Fが作用した時に、圧縮方向の力が作用する第1の板状部材301の底面部301aを第1面部301aとして表し、第2の板状部材302の平面部302aを第2面部302aとして表し、第1の板状部材301の側面部301bを第3面部301bとして表す。
【0044】
一方、補強体320としては、第1面部301bに沿って延在する底面部321と、底面部321に結合されて底面部321の両側から略垂直方向に第2面部302aまで延び、第3面部301bに沿って延在する両側の側面部322と、底面部321に結合されて底面部321から略垂直方向に第2面部302aまで延び、格子状に配設された板状のリブ323、具体的には、第3面部301bに平行に延びる縦リブ323a(図18の二点鎖線参照)及びフレーム本体300の長手方向と直交する方向に延びる横リブ323bとを有するモデルを用いた。なお、補強体320には、フレーム本体300の長手方向両側にも側面部が設けられている。
【0045】
そして、フレーム本体300に接着材329を介して補強体320を内蔵させ、このフレーム本体300の長手方向両端部近傍をそれぞれ支持した状態でフレーム本体300の長手方向中央部に外部(図18では上部)から曲げ荷重Fを作用させて解析を行った。なお、補強体320は、フレーム本体300の長手方向中央部に横リブ323bが配置されるようにフレーム本体300に内蔵させ、図18では、補強体320の横リブ323bに生じる応力分布を示している。
【0046】
図18に示すように、かかる解析によれば、補強体320を内蔵したフレーム本体300に外部から曲げ荷重Fが作用する場合、補強体320は、第1面部301a側においては、第1面部301aと該面部301aに隣接する第3面部301bとの間に形成される角部300aの変形に伴って、矢印P1で示すように、該角部300aの内面に接着結合される部分において応力が高くなっている。特に、補強体320では、角部300a近傍の応力の高い部分(クロスハッチングを施した領域)の底面部321aからの長さH1は、フレーム本体300の長手方向と直交する方向における第3面部301bの長さH2の三分の一程度の長さとなるような応力分布を示している。
【0047】
また、補強体320は、第2面部302a側においては、第2面部302aの中央側の変形に伴って、矢印P2で示すように、該第2面部302aの中央側に当接する部分において応力が高くなっている。
【0048】
そこで、これらシミュレーション解析結果から、略矩形断面状に形成した管状の金属製フレーム本体に補強体を内蔵した車両用フレーム構造において、フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用する場合に生じ得るフレーム本体の第1面部と該面部に隣接する第3面部との間に形成される角部の変形とフレーム本体の第2面部の中央側の変形を抑制することができれば、フレーム本体の曲げ変形を有効に抑制することができ、重量の増加を抑制しつつフレーム本体の曲げ剛性を効率的に高めることができるものと考えられる。
【0049】
以下、本発明の実施形態に係る車両用フレーム構造について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図、図2は、図1におけるY2a−Y2a線及びY2b−Y2b線に沿った車体フレームの断面図であり、図2(a)は、Y2a−Y2a線に沿った車体フレームの断面図、図2(b)は、Y2b−Y2b線に沿った車体フレームの断面図である。なお、図1、並びに後述する図3、図5、図8及び図9では、フレーム本体内の補強体を明瞭に図示するため、フレーム本体を二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
【0050】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム1は、略矩形閉断面状に形成した管状のフレーム本体10と、該フレーム本体10の内部に取り付けられ、該フレーム本体10を補強するための補強体20とを有している。
【0051】
フレーム本体10は、鋼板などの金属製の板状素材を断面ハット状にプレス加工して得られる第1の板状部材11と、鋼板などの金属製の板状素材でなる第2の板状部材12とから構成されている。第1の板状部材11は、略平面状に形成される底面部11aと、底面部11aの両側において該底面部11aからそれぞれ略垂直方向に延びる両側の側面部11bと、両側の側面部11bからそれぞれ略直角方向に外側に延びる両側のフランジ部11cとを備え、第2の板状部材12は、略平面状に形成される平面部12aを備えている。そして、第1の板状部材11のフランジ部11cを第2の板状部材12の平面部12aに当接させてスポット溶接等で接合することにより、フレーム本体10が略矩形閉断面状に形成されている。
【0052】
本実施形態に係る車体フレーム1は、外部から曲げ荷重が作用することが想定される方向にフレーム本体10の第1の板状部材11の底面部11aが配置される。これにより、フレーム本体10に外部から曲げ荷重が作用する時には、第1の板状部材11の底面部11aに圧縮方向の力が作用して圧縮応力が生じ、該底面部11aに対向する第2の板状部材12の平面部12aに引張方向の力が作用して引張応力が生じることとなる。
【0053】
なお、フレーム本体10に外部から曲げ荷重が作用した時に、圧縮方向の力が作用する第1の板状部材11の底面部11aを第1面部11aとして表し、該底面部11aに対向し、引張方向の力が作用する第2の板状部材12の平面部12aを第2面部12aとして表し、該底面部11aと該平面部12aとの間に位置し、該底面部11aと該平面部12aとの間でそれぞれ角部10a、10bを形成する両側の第1の板状部材11の側面部11bを第3面部11bとして表す。
【0054】
補強体20は、樹脂材料を射出成形等によって成形して得られるものであり、フレーム本体10の第1面部11aと両側の第3面部11bとの間に形成される角部10aに合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部20aと、フレーム本体10の第2面部12aの中央側に合致して当接される第2当接部20bと、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部と20cを有している。
【0055】
また、補強体20は、図2に示すように、フレーム本体10の第1面部11aに沿って延在する底面部21と、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における底面部21の両側から略垂直方向にフレーム本体10の第3面部11bに沿って延在する両側の第1側面部22と、フレーム本体10の長手方向における底面部21の両側から略垂直方向にフレーム本体10の長手方向と直交する方向に延在する両側の第2側面部23と、底面部21から略垂直方向にフレーム本体10の第2面部12aに向かって延びる複数の板状のリブ24と、を有している。
【0056】
補強体20の底面部21は、フレーム本体10の両側の第3面部11bの間の略中央部が補強体20の内方側へ窪んで形成されており、補強体20は、第1面部11a側における両側の第3面部11bの間の略中央部に該補強体20の内方側へ凹状に窪む凹部(第1の凹部)21aを有している。これにより、フレーム本体10の曲げ剛性の向上に余り寄与しない部分を肉抜きして重量の増加を抑制することができる。
【0057】
補強体20の第1側面部22は、底面部21に結合され、該底面部21からフレーム本体10の第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部まで延びている。また、第1側面部22は、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における第3面部11bの長さの三分の一以上の長さで形成されている。
【0058】
一方、補強体20の第2側面部23は、底面部21に結合され、フレーム本体10の角部10aに合致して該角部内面に当接するように形成されるとともに、フレーム本体10の第2面部12aの中央側に合致して該第2面部12aの中央側に当接するように形成されている。
【0059】
また、第2側面部23は、第3面部11b側が、第1面部11a側ではフレーム本体10の第3面部11bに当接するように形成されるとともに該第2側面部23に結合される第1側面部22と底面部21からの長さが同一になるように形成され、第2面部12a側ではフレーム本体10の第3面部11bと離間して当接しないように形成され、第2面部12a側に近づくにつれて第3面部11bとの離間距離が大きくなるように形成されている。
【0060】
補強体20のリブ24は、底面部21及び第2側面部23に結合され、図2に示すように、フレーム本体10の第3面部11bに沿って平行にフレーム本体10の長手方向に延在している。補強体20では、両側の第1側面部22の間の空間がリブ24によって区画され、フレーム本体10の第1面部11aから第2面部12aに向かう方向に開口する四角形状の開口部25が形成されている。
【0061】
これら複数のリブ24は、フレーム本体10の長手方向と直交する方向においてフレーム本体10の中央部にリブ24が設けられるとともに、フレーム本体10の中央側から第3面部11b側に近づくにつれて隣り合うリブ24の間隔が狭く形成され、フレーム本体10の中央側から第3面部11b側に近づくにつれて開口部25の大きさが小さく形成されている。
【0062】
また、複数のリブ24は、フレーム本体10の長手方向と直交する方向においてフレーム本体10の中央側では、第2面部12aに当接するように形成されているが、フレーム本体10の長手方向と直交する方向においてフレーム本体10の第3面部11b側では、該第3面部11bと離間して当接しないように形成され、リブ24の長さが短く形成されている。なお、リブ24は、図2(a)に示すように、該リブ24に結合される第2側面部23と底面部21からの長さが同一となるように形成されている。
【0063】
そして、補強体20は、底面部21がフレーム本体10の第1面部11aに沿って配設されて該第1面部11aに接着材29によって接着結合されるとともに、第1側面部22がフレーム本体10の第3面部11bに沿って配設されて該第3面部11bに接着材29によって接着結合されている。
【0064】
このようにして、車体フレーム1では、補強体20は、フレーム本体10の角部10aに合致して該角部内面に接着材29を介してそれぞれ当接される両側の第1当接部20aが底面部21と第1側面部22と第2側面部23によって構成され、フレーム本体10の第2面部11aの中央側に合致して当接される第2当接部20bが第2側面部23とリブ24によって構成され、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部20cが第2側面部23とリブ24によって構成され、第1当接部20aは、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における第3面部11bの長さの三分の一以上の長さで第3面部11bと当接している。
【0065】
本実施形態では、車体フレーム1において、フレーム本体10に内蔵した補強体20は、両側の第2側面部23の間に複数のリブ24が配設されることにより開口部25を備えて中空状に形成されているが、両側の第2側面部23の間の空間を充填して中実状に形成することも可能である。
【0066】
また、本実施形態では、複数のリブ24は、第3面部11b側に近づくにつれてリブ24の間隔が狭く形成されているが、リブ24の間隔を略一定にするようにしてもよい。また、リブ24の間隔とは別に、第3面部11b側に近づくにつれてリブ24の肉厚を厚く形成するようにしてもよい。
【0067】
このように、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造1では、フレーム本体10に内蔵した補強体20は、フレーム本体10の第1面部11aと両側の第3面部11bとの間に形成される角部10aに合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部20aと、フレーム本体10の第2面部12aの中央側に合致して当接される第2当接部20bと、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部20cとを有している。
【0068】
これにより、フレーム本体10に外部から曲げ荷重が作用する場合に、補強体20の第1当接部20aと第2当接部20bによってフレーム本体10を支持し、第1面部11aと該面部11aに隣接する第3面部11bとの間に形成される角部10aが曲げ荷重の入力方向に変位するとともに該第3面部11bがフレーム本体10の外方側へ膨らむように該角部10aが回転移動して変形することを抑制することができるとともに、第2面部12aがフレーム本体10の内方側へへこんで変形することを抑制することができるので、フレーム本体10の曲げ剛性を効果的に高めることができる。また、補強体20の非当接部20cによってフレーム本体10の曲げ剛性の向上に余り寄与しない部分を肉抜きして重量の増加を抑制することができ、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0069】
また、第1当接部20aは、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における第3面部11bの長さの三分の一以上の長さで第3面部11bと当接していることにより、フレーム本体10に外部から曲げ荷重が作用する場合に、応力が高くなり得る部分を有効に補強することができる。
【0070】
更に、第1当接部20aは、フレーム本体10の第1面部11aと第3面部11bとの間に形成される角部内面に接着結合されていることにより、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の性能を向上させることができるとともに、補強体が倒れることを抑制することができる。
【0071】
また更に、補強体20は、フレーム本体10の第3面部11bに沿って平行に延在する複数の板状のリブ24を有し、該複数のリブ24は、第3面部11b側に近づくにつれて、リブの間隔が狭く形成されている、あるいはリブの肉厚が厚く形成されていることにより、重量の増加を抑制しつつ、フレーム本体10に外部から曲げ荷重が作用する場合に、第1面部11aと該面部11aに隣接する第3面部11bとの間に形成される角部10aの変形を効果的に抑制することができる。
【0072】
また、補強体20は、第1面部11aに沿って延在する底面部21と、両側の第3面部11bに沿ってそれぞれ延在する両側の側面部22とを有し、底面部21に、両側の側面部21及びリブ23が結合されていることにより、フレーム本体10に入力される荷重を補強体20の底面部21を通じて側面部22及びリブ23に伝達して分散させることができ、フレーム本体10の第3面部11bがフレーム本体10の外方側に膨らんで座屈することを抑制することができる。
【0073】
本実施形態に係る車体フレーム1では、補強体20は、好ましくは、フレーム本体10の長手方向における少なくとも外部から曲げ荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられる。これにより、重量の増加を抑制しつつフレーム本体10の曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0074】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図、図4は、図3におけるY4a−Y4a線及びY4b−Y4b線に沿った車体フレームの断面図であり、図4(a)は、Y4a−Y4a線に沿った車体フレームの断面図、図4(b)は、Y4b−Y4b線に沿った車体フレームの断面図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
図3及び図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム31は、車体フレーム1と同様に、フレーム本体10に補強体40が内蔵され、補強体40は、フレーム本体10の第1面部11aと両側の第3面部11bとの間に形成される角部10aに合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部40aと、フレーム本体10の第2面部12aの中央側に合致して当接される第2当接部40bと、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部と40cを有し、車体フレーム31ではさらに、フレーム本体10の第2面部12aと両側の第3面部11bとの間に形成される角部10bに合致して該角部10b内面にそれぞれ当接される両側の第3当接部40dを有している。
【0076】
補強体40は、フレーム本体10の第1面部11aに沿って延在する底面部41と、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における底面部41の両側から略垂直方向にフレーム本体10の第3面部11bに沿って延在する両側の第1側面部42と、フレーム本体10の長手方向における底面部41の両側から略垂直方向にフレーム本体10の長手方向と直交する方向に延在する両側の第2側面部43と、底面部41から略垂直方向にフレーム本体10の第2面部12aまで延びる複数の板状のリブ44とを有している。
【0077】
補強体40の底面部41は、フレーム本体10の両側の第3面部11bの間の略中央部の肉厚が薄く形成されることによりフレーム本体10の両側の第3面部11bの間の略中央部が補強体20の内方側へ窪んで形成されている。このようにして、補強体40においても、第1面部11a側における両側の第3面部11bの間の略中央部に該補強体40の内方側へ凹状に窪む凹部(第1の凹部)41aが設けられている。
【0078】
底面部41に結合される第1側面部42は、フレーム本体10の第2面部12aまで延び、図4(a)に示すように、フレーム本体10の第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部の肉厚が薄く形成され、補強体40は、第3面部11b側におけるフレーム本体10の第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部に補強体40の内方側へ凹状に窪む凹部(第2の凹部)42aを有している。
【0079】
補強体40の第2側面部43は、底面部41に結合され、フレーム本体10の角部10aに合致して該角部内面に当接するように形成されるとともに、フレーム本体10の第2面部12aの中央側に合致して該第2面部12aの中央側に当接するように形成され、且つ、フレーム本体10の角部10bに合致して該角部10b内面に当接するように形成されている。
【0080】
また、第2側面部43は、第3面部11b側が、第1面部11a側及び第2面部12a側ではフレーム本体10の第3面部11bに当接するように形成されているが、第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部では、補強体40の内方側へ凹状に窪んで形成されている。
【0081】
補強体40のリブ44は、底面部41及び第2側面部43に結合され、図4に示すように、フレーム本体10の第3面部11bに沿って平行にフレーム本体10の長手方向に延在している。補強体40においても、リブ44によって四角形状の開口部45が形成されているが、補強体40では、隣り合うリブ24の間隔が等しく形成され、等しい大きさの開口部45が形成されている。
【0082】
そして、補強体40についても、底面部41がフレーム本体10の第1面部11aに沿って配設されて該第1面部11aに接着材29によって接着結合されるとともに、第1側面部42がフレーム本体10の第3面部11bに沿って配設されて該第3面部11bに接着材29によって接着結合されている。
【0083】
このようにして、車体フレーム31では、補強体40は、フレーム本体10の角部10に合致して該角部内面に接着材29を介してそれぞれ当接される両側の第1当接部40aが底面部41と第1側面部42と第2側面部43によって構成され、フレーム本体10の第2面部11aの中央側に合致して当接される第2当接部40bが第2側面部43とリブ44によって構成され、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部40cが第1側面部42と第2側面部43によって構成され、フレーム本体10の角部10bに合致して該角部内面に接着材29を介して当接される両側の第3当接部40dが第1側面部42と第2側面部43によって構成され、非当接部40cは、第2の凹部42aにより形成されている。
【0084】
車体フレーム31では、フレーム本体10に内蔵した補強体40は、両側の第2側面部43の間に複数のリブ44が配設されることにより開口部45を備えて中空状に形成されているが、両側の第2側面部43の間の空間を充填して中実状に形成することも可能である。また、複数のリブ44を、第3面部11b側に近づくにつれてリブ44の間隔が狭くしたり、第3面部11b側に近づくにつれてリブ44の肉厚を厚く形成したりするようにしてもよい。
【0085】
このようにして構成される車両用フレーム構造31においても、フレーム本体10に内蔵した補強体40は、両側の第1当接部40aと第2当接部40bを有していることによりフレーム本体10の角部10aの変形を抑制することができるとともに第2面部12aの変形を抑制することができ、また、両側の非当接部40cを有していることによりフレーム本体10の曲げ剛性の向上に余り寄与しない部分を肉抜きして重量の増加を抑制することができるので、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0086】
また、車両用フレーム構造31では、補強体40は、フレーム本体10の第2面部12aと両側の第3面部11bとの間に形成される角部10bに合致して該角部10b内面にそれぞれ当接される両側の第3当接部40dを有することにより、フレーム本体10に外部から曲げ荷重が作用する場合に、第2面部12aと該面部12aに隣接する第3面部11bとの間に形成される角部10bを有効に補強することができ、フレーム本体10の曲げ剛性をさらに高めることができる。
【0087】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図,図6は、図5におけるY6a−Y6a線及びY6b−Y6b線に沿った車体フレームの断面図であり、図6(a)は、Y6a−Y6a線に沿った車体フレームの断面図、図6(b)は、Y6b−Y6b線に沿った車体フレームの断面図、図7は、図5におけるY7−Y7線に沿った車体フレームの断面図である。なお、第3の実施形態において、第2の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
図5から図7に示すように、本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム51は、車体フレーム31と同様に、フレーム本体10に補強体60が内蔵され、補強体60は、フレーム本体10の角部10aに合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部60aと、フレーム本体10の第2面部12aの中央側に合致して当接される第2当接部60bと、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部60cと、フレーム本体10の角部10bに合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第3当接部60dを有しているが、補強体60では、フレーム本体10の第3面部11bに平行に延びるリブが設けられておらず、補強体60が中実状に形成されている。
【0089】
補強体60はまた、フレーム本体10の長手方向と直交する方向に延在し、フレーム本体10の第1面部11aに沿って延在する上面部61と、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における上面部61の両側から略垂直方向にフレーム本体10の第3面部11bに沿って延在する両側の第1側面部62と、フレーム本体10の長手方向における上面部61の両側から略垂直方向にフレーム本体10の長手方向と直交する方向に延在する両側の第2側面部63と、フレーム本体10の第2面部12aに沿って延在する下面部64とを有している。
【0090】
補強体60では、上面部61は、フレーム本体10の両側の第3面部11bの間の略中央部が補強体60の内方側へ窪んで形成され、補強体60は、第1面部11a側における両側の第3面部11bの間の略中央部に該補強体60の内方側へ凹状に窪む凹部(第1の凹部)61aを有している。
【0091】
また、両側の第1側面部62は、フレーム本体10の第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部が補強体60の内方側に窪んで形成され、補強体60は、第3面部11b側におけるフレーム本体10の第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部に該補強体60の内方側へ凹状に窪む凹部(第2の凹部)62aを有している。
【0092】
そして、補強体60についても、上面部61がフレーム本体10の第1面部11aに沿って配設されて該第1面部11aに接着材29によって接着結合されるとともに、第1側面部62がフレーム本体10の第3面部11bに沿って配設されて該第3面部11bに接着材29によって接着結合され、下面部64がフレーム本体10の第2面部12aに合致して該第2面部12aに当接するように配設されている。
【0093】
このようにして、車体フレーム51では、補強体60は、フレーム本体10の角部10aに合致して該角部内面に接着材29を介してそれぞれ当接される両側の第1当接部60aが上面部61と第1側面部62と第2側面部63とによって構成され、フレーム本体10の第2面部11aの中央側に当接される第2当接部60bが第2側面部63と下面部64とによって構成され、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部60cが第1側面部62と第2側面部63によって構成され、フレーム本体10の角部10bに合致して該角部内面に接着材29を介してそれぞれ当接される両側の第3当接部60dが第1側面部62と第2側面部63と下面部64によって構成され、非当接部60cは、第2の凹部62aにより形成されている。
【0094】
また、車体フレーム51では、図5に示すように、フレーム本体10の内部に複数の補強体60がフレーム本体10の長手方向に離間して配設され、車体フレーム51は、複数の補強体60を連結する連結部70を有している。なお、補強体60と連結部70とは一体的に形成され、複数の補強体60と連結部70からなる補強部材65が一体的に形成されている。
【0095】
連結部70は、フレーム本体10の長手方向に隣り合う補強体60を連結するものであり、図6(b)に示すように、フレーム本体10の第1面部11aに沿って延在する底面部71と、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における底面部71の両側から略垂直方向にフレーム本体10の第3面部11bに沿って延在する両側の側面部72と、底面部71から略垂直方向にフレーム本体10の第2面部12aまで延びる複数の板状のリブ74とを有している。
【0096】
連結部70の底面部71は、フレーム本体10の第1面部11aと離間して設けられ、連結部70の側面部72は、フレーム本体10の第3面部11bと離間して設けられ、連結部70は、フレーム本体10の第1面部11aと第3面部11bとそれぞれ離間するように設けられている。
【0097】
また、連結部70のリブ74は、図6(b)及び図7に示すように、フレーム本体10の第3面部11bに沿って平行にフレーム本体10の長手方向に延在し、フレーム本体10の中央側に設けられるとともに隣り合うリブ74の間隔が等しく形成され、リブ74によって等しい大きさの開口部75が形成されている。
【0098】
このようにして構成される車両用フレーム構造51においても、補強体60は、両側の第1当接部60aと第2当接部60bを有していることによりフレーム本体10の角部10aの変形を抑制することができるとともに第2面部12aの変形を抑制することができ、また、両側の非当接部60cを有していることによりフレーム本体10の曲げ剛性の向上に余り寄与しない部分を肉抜きして重量の増加を抑制することができるので、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0099】
また、車両用フレーム構造51では、フレーム本体10の内部に複数の補強体60が該フレーム本体10の長手方向に離間して配設され、該複数の補強体60を連結する連結部70を有していることにより、補強体60が倒れることを有効に抑制することができ、前記効果をより有効に奏することができる。また、複数の補強体60のフレーム本体10への取り付けを容易に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0100】
更に、連結部70は、フレーム本体10の第1面部11aと第3面部11bとそれぞれ離間するように設けられていることにより、重量の増加を抑制しつつ、前記効果を有効に奏することができる。
【0101】
図8は、本発明の第4の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレームの斜視図、図9は、図8に示す車体フレームをY9−Y9線に沿った断面で切断した図、図10は、図8におけるY10a−Y10a線及びY10b−Y10b線に沿った車体フレームの断面図であり、図10(a)は、Y10a−Y10a線に沿った車体フレームの断面図、図10(b)は、Y10b−Y10b線に沿った車体フレームの断面図、図11は、図9におけるY11−Y11線に沿った車体フレームの断面図である。なお、第4の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明を省略する。
【0102】
図8から図11に示すように、本発明の第4の実施形態に係る車両用フレーム構造を適用した車体フレーム81は、車体フレーム1と同様に、フレーム本体10に補強体90が内蔵され、補強体90は、フレーム本体10の長手方向に所定長さを有して形成されているが、フレーム本体10の長手方向において断面形状が変化するように形成されている。
【0103】
補強体90は、フレーム本体10の長手方向中央側では、図9及び図10(b)に示すように、フレーム本体10の角部10aに合致して該角部10a内面に当接される両側の第1当接部90aと、フレーム本体10の第2面部12aの中央側に合致して当接される第2当接部90bと、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部90cとを有している。
【0104】
一方、補強体90は、フレーム本体10の長手方向端部側では、図8及び図10(a)に示すように、フレーム本体10の角部10aに合致して該角部10a内面に当接される両側の第1当接部90aと、フレーム本体10の角部10bに合致して該角部10b内面にそれぞれ当接される両側の第3当接部90dとを有しているが、フレーム本体10の第3面部11b側における第1面部11aと第2面部12aの間の略中央部が補強体90の内方側に凹状に窪んで形成されるとともに、フレーム本体10の第2面部12a側における両側の第3面部11bの間の略中央部が補強体90の内方側に凹状に窪んで形成されている。
【0105】
補強体90はまた、フレーム本体10の第1面部11aに沿って延在する底面部91と、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における底面部91の両側から略垂直方向にフレーム本体10の第3面部11bに沿って延在する両側の第1側面部92と、フレーム本体10の長手方向における底面部91の両側から略垂直方向にフレーム本体10の長手方向と直交する方向に延在する両側の第2側面部93と、底面部91から略垂直方向にフレーム本体10の第2面部12aに向かって延びる複数の板状のリブ94と、を有している。
【0106】
補強体90についても、底面部91は、フレーム本体10の両側の第3面部11bの間の略中央部が補強体90の内方側へ窪んで形成され、補強体90は、第1面部11a側における両側の第3面部11bの間の略中央部に該補強体90の内方側へ凹状に窪む凹部(第1の凹部)91aを有している。
【0107】
また、底面部91に結合される第1側面部92は、フレーム本体10の長手方向中央側では、フレーム本体10の第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部まで延び、フレーム本体10の長手方向端部側では、フレーム本体10の第2面部12aまで延びて形成されているが、フレーム本体10の第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部で分断されて形成されている。
【0108】
一方、第2側面部93は、フレーム本体10の角部10a内面に当接されるように形成されるとともにフレーム本体10の角部10b内面に当接するように形成されるが、フレーム本体10の第3面部11b側における第1面部11aと第2面部12aの間の略中央部が補強体90の内方側に凹状に窪んで形成されるとともに、フレーム本体10の第2面部12a側における両側の第3面部11bの間の略中央部が補強体90の内方側に凹状に窪んで形成されている。
【0109】
また、補強体90のリブ94は、格子状に配設され、第3面部11bに沿って平行にフレーム本体10の長手方向に延びる複数の板状の縦リブ94aと、フレーム本体10の長手方向と直交し、フレーム本体10を横切る方向に延びる横リブ94bとを有し、縦リブ94aと横リブ94bによってフレーム本体10の第1面部11aから第2面部12aに向かう方向に開口する四角形状の開口部95が形成されている。
【0110】
図11に示すように、縦リブ94aは、第3面部11b側に近づくにつれて隣り合うリブ94aの間隔が狭く形成されている。これにより、縦リブ94aと横リブ94bによって形成される開口部95は、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における中央側では略正方形状に形成され、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における第3面部11b側では略矩形状に形成され、開口部95の大きさが小さく形成されている。
【0111】
また、リブ94は、具体的には縦リブ94a及び横リブ94bは、図10(b)に示すように、フレーム本体10の長手方向中央側において、フレーム本体10の長手方向と直交する方向におけるフレーム本体10の中央側では第2面部12aに当接するように形成され、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における第3面部11b側では第2面部12aと離間するように形成され、第3面部11bに近づくにつれてリブ94の長さが短く形成されている。
【0112】
一方、リブ94は、図10(a)に示すように、フレーム本体10の長手方向端部側において、フレーム本体10の長手方向と直交する方向における第3面部11b側では、第2面部12aに当接するように形成されているが、フレーム本体10の第1面部11aと第2面部11bとの間の略中央部で分断されて形成され、フレーム本体10の長手方向と直交する方向におけるフレーム本体10の中央側では第2面部12aと離間するように形成され、フレーム本体10の中央部に近づくにつれてリブ94の長さが短く形成されている。
【0113】
そして、補強体90についても、底面部91がフレーム本体10の第1面部11aに沿って配設されて該第1面部11aに接着材29によって接着結合されるとともに、第1側面部92がフレーム本体10の第3面部11bに沿って配設されて該第3面部11bに接着材29によって接着結合されている。
【0114】
このようにして、車体フレーム81では、補強体90は、フレーム本体10の角部10に合致して該角部内面に接着材29を介してそれぞれ当接される両側の第1当接部90aが底面部91と第1側面部92によって構成され、フレーム本体10の第2面部11aの中央側に合致して当接される第2当接部90bがリブ94によって構成され、フレーム本体10の第3面部11bと離間して該第3面部11bと当接しない両側の非当接部90cがリブ94によって構成されている。
【0115】
このようにして構成される車両用フレーム構造81においても、フレーム本体10に内蔵した補強体90は、両側の第1当接部90aと第2当接部90bを有していることによりフレーム本体10の角部10aの変形を抑制することができるとともに第2面部12aの変形を抑制することができ、また、両側の非当接部90cを有していることによりフレーム本体10の曲げ剛性の向上に余り寄与しない部分を肉抜きして重量の増加を抑制することができるので、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0116】
本実施形態に係る車体フレーム81では、補強体90は、好ましくは、フレーム本体10の長手方向における外部から曲げ荷重が作用し得る部分に補強体90のフレーム本体10の長手方向中央側が対応するようにして、フレーム本体10の長手方向における外部から曲げ荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられる。これにより、重量の増加を抑制しつつフレーム本体10の曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0117】
また、フレーム本体10の長手方向における外部から曲げ荷重が作用し得る部分に補強体90のフレーム本体10の長手方向中央側が対応するように設けた車体フレーム81では、フレーム本体10に外部から曲げ荷重が作用する場合に、補強体90に入力される荷重をフレーム本体10の長手方向に伝達してフレーム本体10の角部10a、10bに伝達することができるので、フレーム本体10の曲げ剛性をさらに向上させることができる。
【0118】
以上のように、本実施形態に係る車両用フレーム構造では、フレーム本体に内蔵した補強体は、フレーム本体の第1面部と両側の第3面部との間に形成される角部に合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部と、フレーム本体の第2面部の中央側に合致して当接される第2当接部と、フレーム本体の第3面部と離間して該第3面部と当接しない両側の非当接部とを有している。
【0119】
これにより、フレーム本体に外部から曲げ荷重が作用する場合に、両側の第1当接部と第2当接部によってフレーム本体の角部の変形を抑制することができるとともに第2面部の変形を抑制することができ、また、両側の非当接部によってフレーム本体の曲げ剛性の向上に余り寄与しない部分を肉抜きして重量の増加を抑制することができるので、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0120】
前述した本実施形態に係る車両用フレーム構造は、例えばサイドシルやピラーなどの車体フレームに適用することができ、本願発明者等は、サイドシルに適用するに際して、サイドシルに外部から曲げ荷重が作用するときに該サイドシルに生じる応力についてシミュレーション解析を行った。
【0121】
図12は、サイドシルに外部から荷重が作用するときに該サイドシルに生じる応力を示す図であり、図12では、シミュレーション解析によって得られたサイドシルに生じる応力分布を、サイドシルの車体前方側について示している。また、図13は、図12におけるY13−Y13線に沿ったサイドシルの断面図である。
【0122】
サイドシル101として、図12に示すように、車体前後方向に延びて車体前方側が車体上下方向に延びるフロントピラー110に結合され、図13に示すように、車体の内面の一部を構成するサイドシルインナ102と、車体の外面の一部を構成するサイドシルアウタ103と、サイドシルインナ102とサイドシルアウタ103との間に配設されるサイドシルレイン104とを備えたモデルを用いた。
【0123】
具体的には、サイドシルインナ102は、略水平方向に延びる上面部102aと、上面部102aに対向して略水平方向に延びる下面部102bと、上面部102aと下面部102bの車内側を連結して車体上下方向に延びる側壁部102cとを備えて断面ハット状に形成され、車内側に側壁部102cが膨出するように配設されている。また、サイドシルインナ102は、上面部102aに上方向に延びる上フランジ部102dを備えるとともに、下面部102bに下方向に延びる下フランジ部102eを備えている。
【0124】
一方、サイドシルアウタ103は、略水平方向に延びる上面部103aと、上面部103aに対向して略水平方向に延びる下面部103bと、上面部103aと下面部103bの車外側を連結して車体上下方向に延びる側壁部103cとを備えて断面ハット状に形成され、車外側に側壁部103cが膨出するように配設されている。また、サイドシルアウタ103は、上面部103aに上方向に延びる上フランジ部103dを備えるとともに、下面部103bに下方向に延びる下フランジ部103eを備えている。
【0125】
これらサイドシルインナ102とサイドシルアウタ103とは、サイドシルレイン104を介して上フランジ部102d、103d及び下フランジ部102e、103eがそれぞれ接合され、これにより、サイドシル101は、サイドシルインナ102とサイドシルアウタ103とによって略矩形閉断面状に形成されている。なお、サイドシルレイン104は、サイドシル101内において車体上下方向に延びるように形成されている。
【0126】
このようにして形成されたサイドシル101を備えた車体のモデルを用いて、図示しないサスペンション装置から該車体に走行時に入力される荷重を模擬した荷重を入力させて、フロントピラー110を通じてサイドシル101の上部から該荷重を作用させ、サイドシル101に生じる応力について解析を行った。
【0127】
図12に示すように、かかる解析によれば、サイドシル101に生じる応力は、サイドシル101の上面部については、具体的にはサイドシルインナ102の上面部102a及びサイドシルアウタ103の上面部103aについてはフロントピラー110との結合部近傍において高くなっており、サイドシル101の下面部についても、具体的にはサイドシルインナ102の下面部102b及びサイドシルアウタ103の下面部103bについてもフロントピラー110との結合部近傍において高くなっている。
【0128】
そこで、このシミュレーション解析結果から、本実施形態に係る車両用フレーム構造をサイドシル101に適用する際には、フロントピラー110との結合部近傍の応力の高い領域(図12において矢印A1及びA2で示す部分)を含むように、本実施形態に係る車両用フレーム構造に用いた補強体を設けることが有効であると考えられる。
【0129】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造のサイドシルへの適用を説明するための説明図、図15は、図14におけるY15−Y15線に沿ったサイドシルの断面図である。本発明の第1の実施形態に係る車両用フレーム構造をサイドシルへ適用する際には、サイドシル101内に配設されたサイドシルレイン104に代えて、図14に示すように、第1の実施形態に係る車両用フレーム構造に用いた補強体20’をサイドシル101に内蔵させる。なお、補強体20’は、補強体20において両側の第2側面部23の間の空間を充填して中実状に形成したものである。
【0130】
補強体20’は、サイドシル101に外部から曲げ荷重が作用する場合に応力が高くなり得るフロントピラー110との結合部近傍に内蔵され、図15に示すように、接着材29を介してサイドシルインナ102の上面部102aと側壁部102cとの間に形成される角部101aに合致して該角部内面に当接される第1当接部20aと、接着材29を介してサイドシルアウタ103の上面部103aと側壁部103cとの間に形成される角部101aに合致して該角部内面に当接される第1当接部20aと、サイドシル101の下面部の中央側に、具体的にはサイドシルインナ102の下面部102bの車外側とサイドシルアウタ103の下面部103bの車内側に合致して当接される第2当接部20bと、サイドシルインナ102の側壁部102c、サイドシルアウタ103の側壁部103cと離間して該側壁部102c、103cと当接しない両側の非当接部と20cとを有している。
【0131】
このように、サイドシル101に内蔵させる補強体20’が、両側の第1当接部20aと第2当接部20bと両側の非当接部20cとを有していることにより、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる。また、補強体20’を、応力が高くなり得るフロントピラー110との結合部近傍に設けることにより、重量の増加を抑制しつつサイドシル101の曲げ剛性を効率的に高めることができる。
【0132】
図16は、本発明の第3の実施形態に係る車両用フレーム構造のサイドシルへの適用を説明するための説明図である。図16に示すように、サイドシル101に、第1の実施形態に係る車両用フレーム構造に用いた補強体20’に代えて、第3の実施形態に係る車両用フレーム構造に用いた複数の補強体60と連結部70からなる補強部材65を、サイドシル101に外部から曲げ荷重が作用する場合に応力が高くなり得るフロントピラー110との結合部近傍に内蔵させるようにしてもよい。
【0133】
なお、本実施形態では、金属製フレーム本体に樹脂製の補強体を内蔵させて該フレーム本体を補強するようにしているが、本実施形態に係る車両用フレーム構造に用いる補強体は、樹脂製に限定されるものでなく、その他の材料で形成するようにしてもよい。
【0134】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、重量の増加を抑制しつつ曲げ剛性を効率的に高めることができる車両用フレーム構造を提供することができ、例えばサイドシルやピラーなどの車体の一部を構成する車体フレームに広く利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0136】
1、31、51、81 車体フレーム
10 フレーム本体
10a、10b 角部
11a 第1面部
11b 第3面部
12a 第2面部
20、40、60、90 補強体
20a、40a、60a、90a 第1当接部
20b、40b、60b、90b 第2当接部
20c、40c、60c、90c 非当接部
21、41、61、91 補強体の底面部
21a、41a、61a、91a 第1の凹部
22、42、62、92 補強体の側面部
24、44、74、94 リブ
40d、60d 第3当接部
42a、62a 第2の凹部
70 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の金属製フレーム本体に該フレーム本体を補強するための補強体を内蔵した車両用フレーム構造であって、
前記フレーム本体は、外部から曲げ荷重が作用した時に、圧縮方向の力が作用する第1面部と、該第1面部と対向し、引張方向の力が作用する第2面部と、該フレーム本体の第1面部と第2面部との間に位置し、該第1面部と該第2面部との間でそれぞれ角部を形成する両側の第3面部とを有し、
前記補強体は、前記フレーム本体の第1面部と両側の第3面部との間に形成される角部に合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第1当接部と、前記フレーム本体の第2面部の中央側に合致して当接される第2当接部と、前記フレーム本体の第3面部と離間して該第3面部と当接しない両側の非当接部とを有している、
ことを特徴とする車両用フレーム構造。
【請求項2】
前記第1当接部は、前記フレーム本体の長手方向と直交する方向における前記第3面部の長さの三分の一以上の長さで前記第3面部と当接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用フレーム構造。
【請求項3】
前記第1当接部は、前記フレーム本体の第1面部と第3面部との間に形成される角部内面に接着結合されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用フレーム構造。
【請求項4】
前記補強体は、前記第1面部側における両側の第3面部の間の略中央部に該補強体の内方側へ凹状に窪む第1の凹部を有している、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項5】
前記補強体は、前記フレーム本体の第2面部と両側の第3面部との間に形成される角部に合致して該角部内面にそれぞれ当接される両側の第3当接部を有すると共に、前記第3面部側における第1面部と第2面部との間の略中央部に該補強体の内方側へ凹状に窪む第2の凹部を有し、
前記非当接部は、前記第2の凹部により形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項6】
前記補強体は、前記フレーム本体の第3面部に沿って平行に前記フレーム本体の長手方向に延在する複数の板状のリブを有し、
該複数のリブは、前記第3面部側に近づくにつれて、隣り合うリブの間隔が狭く形成されている、あるいは該リブの肉厚が厚く形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項7】
前記フレーム本体の内部に複数の前記補強体が該フレーム本体の長手方向に離間して配設され、該複数の補強体を連結する連結部を有している、
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項8】
前記連結部は、前記フレーム本体の第1面部と第3面部とそれぞれ離間するように設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の車両用フレーム構造。
【請求項9】
前記補強体は、前記フレーム本体の長手方向における少なくとも前記荷重が作用し得る部分を含む所定範囲に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。
【請求項10】
前記補強体は、前記第1面部に沿って延在する底面部と、前記両側の第3面部に沿ってそれぞれ延在する両側の側面部とを有し、
前記底面部に、前記両側の側面部及び前記リブが結合されている、
ことを特徴とする請求項6から請求項9の何れか1項に記載の車両用フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−66649(P2012−66649A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211818(P2010−211818)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】