説明

車両用ブレーキ倍力装置

【課題】 ブレーキペダルストローク検出値のずれを、車両の走行終了後にストロークセンサのストローク全域に亘って補正するための車両用ブレーキ倍力装置を提供すること
【解決手段】 ブレーキ倍力装置において、車両の走行終了を検出する走行終了検出手段108〜111と、その走行終了検出手段の信号により電磁アクチュエータ105を作動させるアクチュエータ強制作動手段と、電磁アクチュエータ105の作動量とストロークセンサ103の出力値の関係を検出する作動量/出力値相互関係検出手段と、その作動量/出力値相互関係検出手段の検出値に応じて、電磁アクチュエータ105の作動量を補正するアクチュエータ出力補正手段を備え、走行終了後に電磁アクチュエータ105を強制的に作動させながらアクチュエータ作動量とストロークセンサ出力値を検出して、ストロークセンサ出力値の基準値に対する変化量を算出することにより、ストロークセンサのストローク全体に亘って正確にアクチュエータの出力特性を補正した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ倍力装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気的に制御される油圧アクチュエータや電動アクチュエータの駆動力により、摩擦材を車輪とともに回転する回転体に押し付けて車輪に制動力を発生させるブレーキ装置がある。このようなブレーキ装置は、推力センサなどの押圧力検出手段の検出値を基に押圧力を制御しているが、この検出値が変化してしまう、いわゆる温度ドリフトや、停止や駐車時の環境変化および機器の誤差等で発生する基準点(ゼロ点)の変化が発生するため、このずれ量を車両の発進直前に補正して、発進直後の制動力制御に影響を与えないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2007-230274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来は、押圧力検出手段の検出力値のゼロ点に対する変化分のみを補正しているので、例えばブレーキペダルのストロークをストロークセンサで検出し、この検出値に基づきブレーキを制御するようなブレーキ倍力装置では、前記ストロークセンサの出力値のゼロ点に対する変化だけでなく、ストロークセンサのストローク中の基準出力値に対して、変化量がストローク毎に異なる場合は、従来のゼロ点だけの補正では正確に補正できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のブレーキ倍力装置は、車両が走行を終了したことを検出後、前記電磁アクチュエータを作動させて前記ストロークセンサの出力値と前記電磁アクチュエータの作動量との相互関係を検出し、その検出値と基準値の変化量を算出することにより、前記電磁アクチュエータ作動量の出力値を補正する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、走行終了後に電磁アクチュエータを強制的に作動させながらアクチュエータ作動量とストロークセンサ出力値を連続的に検出して、ストロークセンサの基準出力値に対する変化量を算出することにより、ストロークセンサのストローク全域に亘って正確に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例が適用される車両用ブレーキ倍力装置の構成図である
【図2】実施例が適用される電磁アクチュエータと周辺の構造図である。
【図3】実施例が適用されるブレーキ制御特性線図である
【図4】実施例が適用されるブレーキ制御および補正作動で用いるマップである
【図5】実施例が適用されるメインルーチンである。
【図6】走行終了判断手段を示すフローである。
【図7】実施例が適用されるサブルーチン(補正作動フロー)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明におけるブレーキ倍力装置を実現する実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0009】
本発明の実施形態による車両用ブレーキ倍力装置について、図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、第1実施例の車両用ブレーキ倍力装置の構成図であり、第1実施例は、運転者のブレーキ操作を入力するブレーキペダル101と、ブレーキペダルのアーム部に係止し、ペダル入力を伝達するインプットロッド102と、ブレーキペダル101のストローク量を検出するストロークセンサ103と、そのストローク量から必要なブレーキアシスト力を制御するコントロールユニット104と、そのコントロールユニット104の制御指令を受けてアシスト力を発生する電磁アクチュエータ105と、この電磁アクチュエータ105を作動するモーターの回転角を検出する回転角センサ(レゾルバ)106と、電磁アクチュエータ105のアシスト力をブレーキ配管を通じブレーキ液を媒体にしてブレーキ力を発生するブレーキ液圧発生装置107と、車両の走行終了検出手段として、乗員の走行状態を検出する車速センサ108と、車両の停車状態を検出するパーキングブレーキスイッチ109と、車両の電源入力状態を検出するイグニッションスイッチ110と、乗員の乗降状態を検出するドア開閉スイッチ111とを備えている。
【0011】
コントロールユニット104は、ペダルストローク量に対して電磁アクチュエータ105の出力を制御するもので、ブレーキペダルのストロークに対応した制動力を発生させるためのものである。更に本実施例にあっては、当該コントロールユニット104が、電磁アクチュエータ105の出力を補正するために、車両走行終了を判断したらアクチュエータを強制的に作動させるアクチュエータ強制作動手段と、ストロークセンサ103の出力値とレゾルバ106の両出力値をアクチュエータ強制作動と同期させて記憶する作動量/出力値相互関係記憶手段と、ブレーキ制御用として記憶している基準の相互関係と、補正作動による補正した相互関係を比較する作動量/出力値相互関係比較手段と、比較した相互関係から電磁アクチュエータ出力値を補正するアクチュエータ出力補正手段と、補正したブレーキ制御特性を基準のブレーキ制御特性に書き換えて次回のブレーキを制御するアクチュエータ作動量設定手段を内蔵した制御回路112と、作動量/出力値相互関係とアクチュエータ作動量を記憶するメモリ113を備えている。コントロールユニット104は、ストロークセンサ103の出力値に基づいて電磁アクチュエータ105内のモーター回転角をフィードバック制御する。コントロールユニット104がブレーキ制御するために使用する制御特性値は、ストロークセンサ103の出力値とレゾルバ106の出力値の相互関係として、後述するメモリ113に記憶されている。
【0012】
図2は、電磁アクチュエータ105を初めとしたブレーキ倍力装置の詳細構造を示したもので、まずその構造を説明する。
【0013】
ストロークセンサ103は、センサケース103aがペダルブラケットを介して車体側ブラケットに固定され、そのセンサケース103aの内部には、抵抗体がプリントされた基板が固定されている。センサアーム103bは、一端がブレーキペダル101に係止され、ブレーキペダル101の作動に応じて円弧運動する。センサアーム103bの逆端にはブラシが設けられ前記抵抗体に接触している。このブラシがセンサアーム103bの円弧運動と共に抵抗体上をストロークすることで抵抗の変化を検出する。この検出値はコントロールユニット104に伝送される。この結果、乗員のブレーキ操作の入力をペダルストロークとしてストロークセンサ103が計測しコントロールユニット104に出力する。
【0014】
電磁アクチュエータ105は、ケーシング105a内に設けたモーター114と、モーター114の中心軸にはピストン115と、その外周にローター114bがボールネジ機構を介して構成され、さらにその外周にステータ114aが構成している。ステータ114aはコントロールユニット104の制御指令により通電して電磁力を発生し、ローター114bを回転させる。この回転角をレゾルバ106が計測してコントローユニット104に出力する。
【0015】
インプットロッド102とピストン115の間には隙間が設けらている。この隙間は、ブレーキ回生時に、コントロールユニット104がピストン115を戻す方向に制御しても、そのピストン115の戻り作動をブレーキペダル101に伝達させないようにして、乗員に違和感を与えないように調整する機能を有する。
【0016】
図3は、ストロークセンサ103の出力値とレゾルバ106の出力値の相互関係を規定するブレーキ制御特性線図を示す。図示の曲線Aはブレーキ制御時に使用する基準曲線で、通常ブレーキペダルを踏み込むとストローク量に応じた特性曲線に基づき制動力を発生する。すなわち、コントロールユニット104は、ペダルストローク量を入力として電磁アクチュエータ105の発生するアシスト力を制御するために、この基準曲線(曲線A)に基づいて電磁アクチュエータ105内のモーター回転角をレゾルバ106の出力値でフィードバック制御している。
【0017】
次に、本実施例の作動について、フローチャートを交えて説明する。
【0018】
まず図6から説明する。ステップ100では、イグニッションスイッチのON/OFFを判断し、ONであればステップ150のメインルーチンにてブレーキ制御を行う。このブレーキ制御は前述した図3のブレーキ制御特性に基づきストロークに応じた制動力を発生する制御を行う。一方、電源がOFFであれば、補正作動フローへの遷移可否を判断するステップ200以降のフローに移行する。
【0019】
ステップ200では、時間カウンタをリセットする。
【0020】
ステップ210〜250では、乗員が走行を停止し降車する一連の動作を確認することで走行終了と判断する。具体的には、ステップ210では車速ゼロを確認することで車両を停止させたこと、ステップ220ではパーキングブレーキを引いた(パーキングブレーキスイッチONを認識した)ことで駐車の意思があること、ステップ230ではドアをロックしたことで降車して車両を離れようとしていることをそれぞれ判断した後、ステップ240でタイマをカウントし、ステップ250で、ステップ210〜240の作動状態が一定時間(T分)継続したら、乗員が走行を終了したと判断する。
【0021】
尚、ステップ260では、車両走行用電源からバックアップ電源に切り替える。以後、バックアップ電源を用いることができる。
【0022】
次に図5に示すよう補正を行う。前述したようイグニッションONでは、図3に示すよう基準曲線Aを用いたブレーキ制御を実施する。次にイグニッションOFFになったら、ステップ10で走行終了検出手段として、作動状態信号である車速センサ108、パーキングブレーキスイッチ109、イグニッションスイッチ110、ドア開閉スイッチ111のONを判断し、乗員が走行を終了し降車したと判断して補正作動を実施する。
【0023】
ステップ20では、走行終了と判断したら、車両用ブレーキ倍力装置のフェールセーフ用として使用しているバックアップ電源に切り替え、イグニッションOFFでも電磁アクチュエータ105を強制作動可能にする。(これらの説明は、前述したステップ200から260に示すものである)。
【0024】
ステップ30以降は補正の具体的なもので、ステップ30では、アクチュエータを強制作動手段が、電磁アクチュエータ105を強制的に作動させるブロックである。電磁アクチュエータ105を最大ストローク量まで強制的に作動させ、そして作動前のストロークに戻す指令を出す。これは前述の図3のA’に示す曲線にあるようストロークセンサ103の位置に対するレゾルバ106の出力値を連続的に計測したもので、補正曲線となる。
【0025】
前述の基準曲線Aと補正曲線A’は、コントロールユニット104のメモリ113にマップとして記憶される。
【0026】
第1実施例では、レゾルバもしくはストロークセンサ出力値の分解能ごとに両出力値を計測し、同一のレゾルバ106の出力値m1における基準曲線Aと補正曲線A’の変化量ΔSを検出し、基準曲線A上のストローク値S01にΔS1を付加する。これを分解能ごとにスライスした計測値毎に実施する。
【0027】
図4は、後述するコントロールユニット104が図3の基準曲線Aから補正曲線A’へ補正するために、ストロークセンサ105出力値、レゾルバ106出力値、変化量ΔSを記憶するためのマップである。補正作動を行い、基準マップAに対して補正マップA’を作成し、AからA’に書き換え後、これを基準マップAとして使用する。
【0028】
ステップ40は、作動量/出力値相互関係記憶手段が、電磁アクチュエータ105の強制作動と同期してレゾルバ106の出力値とストロークセンサ105の出力値を取得し、両検出値の相互関係として記憶するブロックである。この両検出値の相互関係を補正した相互関係と定義する。
【0029】
ステップ50は、作動量/出力値相互関係比較手段が、ステップ40で記憶した補正した相互関係と、基準の相互関係から、同一のレゾルバ出力値に対するストロークセンサのストローク出力値を比較して変化量ΔSを算出するブロックである。
【0030】
ステップ60は、アクチュエータ出力補正手段が、ステップ50で算出したストローク量の変化量ΔSを用いて、補正前の基準のブレーキ制御特性のストロークセンサ105のストローク出力値に付加して補正し、これを新たなストロークセンサのストロークとしてメモリ113に記憶するブロックである。
【0031】
ステップ70は、アクチュエータ作動量設定手段が、メモリ113記憶した補正後のブレーキ制御特性に基づき、次回のイグニッションスイッチ110のONから、ストロークセンサ103のストローク出力値に応じたレゾルバ106の出力値を制御する。
【0032】
これらステップ40からステップ70までの補正の詳細を図7を用いて説明する。
ステップ300はブレーキ制御特性の表す代用特性である、レゾルバ出力値mとストロークセンサ出力値sを計測する。
【0033】
ステップ305では、電磁アクチュエータ105が走行終了時のストローク量になっていることを、レゾルバ出力値mがゼロとなっていることで判断する。ゼロでない場合は、ゼロになるように電磁アクチュエータを作動させる。
【0034】
ステップ310では、電磁アクチュエータ105を電磁アクチュエータの実使用する最大ストローク量(レゾルバ目標出力値M)になるまで強制作動させる。
【0035】
ステップ320では、ブレーキ制御特性線図を比較するために、電磁アクチュエータ105の強制作動と共にストロークセンサ103の出力値とレゾルバ106の出力値を同期させて取得し、両検出値を相互関係として記憶する。
【0036】
ステップ330では、電磁アクチュエータ105がレゾルバ目標値Mまでストロークしたことを確認したら作動を停止する。レゾルバ目標値Mに達してない場合は、ステップ310に移行して再びレゾルバ出力値Mになるまで作動させる。
【0037】
ステップ340では、電磁アクチュエータ105を戻し、レゾルバ値mがゼロになったら停止させる。
【0038】
ステップ350では、基準線と補正線に対し、同一のレゾルバ出力値に対するストロークセンサ出力値の差分ΔSを算出する。
【0039】
ステップ360では、ステップ350で算出した所定ストローク量での差分ΔSが故障と診断する所定値Seよりも小さいか確認する。Seは基本ストローク量に対して一定率で決められた値である。Seよりも小さい値であれば、ステップ370に進む。Seと同じもしくは大きい値を算出すればストロークセンサの故障の可能性があると判断して過去(基準の)の相互関係を継続して使用する。その際、故障履歴を残すか、次回のイグニッションON時にインストルメントパネル内のワーニングランプを点灯することができる。
【0040】
ステップ370では、ステップ350で算出した現在と過去のストロークの差分ΔSを用いて過去のブレーキペダルストローク量を補正する。
【0041】
以上のような補正ステップの実行により、本実施例では乗員が降車するたびに基準曲線Aが補正曲線A’に書き換えられる。そかもその書き換えは、基準曲線として電磁アクチュエータの全ての領域に渡って書き換えられる。この結果、ブレーキペダルストロークに応じた最新の出力特性に応じて制御がなされ、たとえブレーキペダルの位置が経時劣化により多少ずれたとしても、その変化に追従して電磁アクチュエータが作動する。この結果、ストロークに応じた制動力が確実に発生し乗員に違和感が発生することはない。
【0042】
最後に本実施例の効果を説明する。
【0043】
実施例の車両用ブレーキ倍力装置にあたっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0044】
(1)本発明のブレーキ倍力装置は、電磁アクチュエータ105を強制的に作動させると同時にレゾルバ106の出力値とストロークセンサ105の出力値を同時にする作動量/出力値相互関係検出手段を備え、更にストロークセンサ105の出力値を過去と現在の差分で算出して補正するアクチュエータ出力補正手段を備えているため、電磁アクチュエータを強制的に作動させながらアクチュエータ作動量とストロークセンサ出力値を同時検出し、ストロークセンサ出力値の基準値に対する変化量をストロークセンサの分解能で細かく算出するので、ストロークセンサ出力基準値からのずれ量がストローク毎に異なっても正確に補正が実行できる。
【0045】
(2)ブレーキペダル101を走行終了時のストロークから電磁アクチュエータ105の最大ストローク量までストロークさせるアクチュエータ強制作動手段と、前記アクチュエータ作動量に対する前記ストロークセンサ出力値の相互関係を記憶して比較する作動量/出力値相互関係記憶手段、作動量/出力値相互関係比較手段を備えており、ピストン115とインプットロッド102が当接した時点からピストン115を介してインプットロッド102とモータ114 が同期して動作するため、ストロークセンサ103 とレゾルバ106を電磁アクチュエータ105の最大ストローク量まで同期して計測することができる。
【0046】
(3)補正作動によって求めたストロークセンサ出力値の過去と現在の差分で、ブレーキ制御で使用する電磁アクチュエータの出力を補正するアクチュエータ出力値補正手段を備えているため、ストロークセンサ103の出力値のばらつきを考慮する必要がなく、ピストン115とインプットロッド102の有効な隙間を広くとれるので、回生時のブレーキ力の調整範囲が広くできる。
【0047】
(4)ストロークセンサ103のストローク量を基準値に対するずれ量を検出して所定値と比較する手段を備えているため、所定値以上のずれ量が検出されれば故障と判断して、ストロークセンサの故障を補正作動中に検出できる。
【0048】
(5)車両の走行終了を検出する走行終了検出手段と、走行終了を判断する走行終了判断手段を備え、走行終了と判断してから電磁アクチュエータ105を強制作動させるアクチュエータ強制作動手段を備えているため、乗員が走行を終了し車両から離れていることを認識した後に自動的に補正作動を行い、補正作動によるブレーキペダル101の作動や、電磁アクチュエータ105の作動音が発生しても乗員に違和感を感じさせないで実行し終了できる。
【0049】
(6)車両走行状態からバックアップ状態の電源回路に切り替えるバックアップ電源切替手段を備えているため、走行時にバックアップ電源に回生した電力を利用して電磁アクチュエータ105を作動させることができるため補正作動に要する新たな電力が必要なく、電源の重量増を抑えることができる。
【0050】
(7)電磁アクチュエータ105は、ブレーキペダル101の直線変位をボールネジ機構によってモーター114の回転角度に変換し、これをレゾルバ106で検出するという手段を備えているため、ボールネジ1ピッチ分のストロークを1回転の角度に拡大して検出するので、補正作動によるストロークセンサのずれ量の補正を細かくできて補正後のブレーキ制御特性が滑らかにできる。
【0051】
以上、本発明のブレーキ倍力装置と制御方法を第1実施例に基づき説明してきた。
尚、図7において、取得したレゾルバ出力値とストロークセンサ出力値の信頼性を上げるために電磁アクチュエータ105の強制作動を複数回往復させて取得データを平均化することができる。また、走行終了後毎回補正作動させるのではなく、走行終了の回数をカウントして作動回数を減少させることもできる。尚、ここでは4つの信号の作動状態の時間変化を判断しているが、シート着座センサやルームランプ信号を用いることもできる。また、少なくとも1つの信号の状態変化を判断することもできる。
【符号の説明】
【0052】
101 ブレーキペダル
102 インプットロッド
103 ストロークセンサ
103a センサケース
103b センサアーム
104 コントロールユニット
105 電磁アクチュエータ
105a ケーシング
106 回転角センサ(レゾルバ)
107 ブレーキ液圧発生装置
108 車速センサ
109 パーキングブレーキスイッチ
110 イグニッションスイッチ
111 ドア開閉スイッチ
112 制御回路(アクチュエータ作動量設定手段・アクチュエータ強制作動手段・作動量/出力値相互関係記憶手段・作動量/出力値相互関係記憶手段・アクチュエータ出力補正手段を含む)
113 メモリ
114 モーター
114a ステータ
114b ローター
114c ナット
115 ピストン
ΔS 基準曲線Aと補正曲線A’における同一レゾルバ値に対するストローク値の変位量
Se ΔSの故障検出判断のための閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルのストローク量を検出するストロークセンサと、そのストロークセンサの出力信号に応じて押圧力を発生させる電磁アクチュエータと、前記ブレーキペダルストローク量に応じて前記電磁アクチュエータの作動量を設定するアクチュエータ作動量設定手段と、車両の走行終了を検出する走行終了検出手段と、
その走行終了検出手段の信号により前記電磁アクチュエータを作動させるアクチュエータ強制作動手段と、
その強制作動と同時に、前記電磁アクチュエータの作動量と前記ストロークセンサの出力値の関係を検出する作動量/出力値相互関係検出手段と、その作動量/出力値相互関係検出手段の検出値に応じて、前記電磁アクチュエータ作動量を補正するアクチュエータ出力補正手段とを備えたことを特徴とする車両用ブレーキ倍力装置。
【請求項2】
前記作動量/出力値相互関係検出手段は、前記電磁アクチュエータの作動量と前記ストロークセンサ出力値の、過去と現在の関係を記憶する作動量/出力値相互関係記憶手段と、その作動量/出力値相互関係記憶手段で記憶した関係から、同一の電磁アクチュエータ作動量でのブレーキペダルストローク量同士の出力値を比較する作動量/出力値相互関係比較手段で構成し、前記ブレーキペダルを走行終了時のストローク量から電磁アクチュエータの最大ストローク量まで前記電磁アクチュエータを作動させたときの前記電磁アクチュエータ作動量に対する前記ストロークセンサ出力値の相互関係を検出することを特徴とした請求項1記載のブレーキ倍力装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ出力補正手段は、前記作動量/出力値相互関係検出手段によって比較し算出した現在と過去のブレーキペダルストローク量の差分で、過去のブレーキペダルストローク量を補正することにより、前記アクチュエータ作動量設定手段の電磁アクチュエータ作動量を補正することを特徴とした請求項1に記載のブレーキ倍力装置
【請求項4】
前記走行終了検出手段は、車両走行用電源、ドア開閉スイッチ、シート着座センサ、ルームランプの作動状態信号の少なくとも一つの作動状態の時間変化から走行終了を判断することを特徴とした請求項1に記載のブレーキ倍力装置
【請求項5】
ブレーキ倍力用の電源は、車両走行用の電源と独立したバックアップ用電源を備え、前記走行終了検出手段で走行終了を検出すると、バックアップ電源に切り替え、前記電磁アクチュエータを強制作動させることを特徴とした請求項1に記載のブレーキ倍力装置。
【請求項6】
前記電磁アクチュエータは、電動モーターと電動モーターの回転運動を直線運動に変換する機構を備え、
前記作動量/出力値相互関係検出手段は、電動モーター位置(角度)と、前記ストロークセンサ出力値の相互関係を求めることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ倍力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−73492(P2011−73492A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224641(P2009−224641)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】