説明

車両用プロテクタパネル

【課題】射出成形時にショートショットやエアタイトといった成形不良を発生させることなく、所要部位の剛性や強度が効果的に高められているとともに、好適な可撓性を有するフェンダプロテクタ等の車両用プロテクタパネルを提供する。
【解決手段】端縁の少なくとも一部に厚肉端縁部(8)を有する薄肉板状のパネル本体の一面に、前記厚肉端縁部(8)に沿って配設される突条の第1リブ(11)と、同第1リブ(11)から前記厚肉端縁部(8)に向けて延設される複数の第2リブ(12)とを備えてなり、車両保護等のために車体に取り付けられる合成樹脂製の車両用プロテクタパネルが、前記パネル本体の一面に、前記厚肉端縁部(8)と前記第1リブ(11)と前記第2リブ(12)とにより囲まれる領域(20)に向けて、前記厚肉端縁部(8)、前記第1リブ(11)、及び前記第2リブ(12)のいずれかから延設された第3リブ(13)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に取り付けて車体を保護するフェンダプロテクタやアンダーカバー等のような合成樹脂製の車両用プロテクタパネルに関し、特に、破損や変形が生じやすい部位の剛性や強度が向上し、且つ、車両への取付作業性が良好であり、しかも、射出成形時にエアタイトやショートショット等の成形不良が発生することのない車両用プロテクタパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車には、走行時に泥水の飛散や小石の跳ね上げ等から車体やその他構成部品を保護するために、例えばタイヤの上部を覆うホイールハウスの内側には、フェンダプロテクタが取り付けられており、また、エンジンルームの底部にはアンダーカバーが取り付けられている。このようなフェンダプロテクタやアンダーカバー等のプロテクタパネルは、合成樹脂の射出成形によって所望の形状に作製されている。例えばフェンダプロテクタは、タイヤの一部を上方から覆うようにアーチ形状に成形されており、また、軽量化を図るために0.8〜1.3mm程度の薄肉板状に形成されている。
【0003】
フェンダプロテクタは、所定形状を維持してフェンダパネル等を保護するという機能上、ある程度の剛性や強度を確保することが必要とされる。しかし、フェンダプロテクタが軽量化のために薄肉に成形された場合、その剛性が低くなるという問題があった。また、射出成形時には、金型のキャビティ内で樹脂流路の断面が必然的に狭くなり、合成樹脂の流動抵抗が大きくなる。このため、合成樹脂がキャビティ内に完全に充填されずに冷却固化し、ショートショット(充填不良)と呼ばれる成形不良が生じやすいという問題もあった。
【0004】
そこで、従来では、上述のような問題を解消するため、フェンダプロテクタの一方の面に長手方向に沿って突条のリブを形成している。このようなリブの形成により、フェンダプロテクタを補強して剛性を向上させるとともに、射出成形時には、リブを形成する部位(空間)が流路となって合成樹脂の流動が支援される。このため、合成樹脂の充填が安定して行われ、ショートショットの発生を防いでいる。
【0005】
このようなリブが形成されているフェンダプロテクタの一例が、特開2001−260944号公報(特許文献1)に記載されている。この特許文献1に記載されているフェンダプロテクタは、例えば図4及び図5に示すように、0.8〜1.3mmの薄肉板状でアーチ型の形状を有しており、その表面側には長手方向に沿ってリブ36が形成されている。また、このリブ36は、フェンダプロテクタ31を射出成形する際の合成樹脂の注入ゲート35上を通るように設けられている。
【0006】
この特許文献1に記載のフェンダプロテクタ31は、リブ36がフェンダプロテクタ31の表面側に形成されているため、例えばリブが裏面側に形成されている場合に比べて、射出成形時に金型内で合成樹脂を流動させる流路の容量を大きくして、合成樹脂の流動を支援する性能を向上させている。また、リブ36はフェンダプロテクタ31の表面側に配されていることにより、フェンダプロテクタ31を車両に取り付けた場合、車両走行時にタイヤが高くバウンドしても、タイヤとリブ36とが干渉しづらいとしている。
【0007】
なお、特許文献1のフェンダプロテクタ31は、図5に示したように、車両への取り付けを安定して行うために、その端縁の所定位置にプロテクタ本体よりも肉厚が厚い取付部38,38aが形成されており、車両への取付剛性を確保している。更に、3つの取付部38aには、合成樹脂の流動を支援するリブ36が連続して形成されている。これにより、プロテクタ本体の端縁に配設される厚肉の取付部38aにも射出成形時に合成樹脂を確実に流し込むことができるとしている。
【0008】
ところで、フェンダプロテクタ31は、図4に示したように、アーチ状の湾曲部32と、湾曲部32の前端に屈曲して延設される平板状の延設部33とを備えている。しかし、このようなフェンダプロテクタ31を車両に取り付けた場合、延設部33には、取付部としての荷重がかかるだけでなく、車両走行時には地面付近を流れる空気の作用によってフェンダパネルから剥離する方向に力が働くため、変形が生じ易くなる。従って、フェンダプロテクタ31の延設部33に対しては、フェンダパネルへの取り付け状態を安定して維持するために、その剛性や強度を他の部位よりも高めることが求められている。
【0009】
また、湾曲部32の湾曲面(特に、車体後方側の湾曲面)では、車両の走行時にタイヤからの風圧を受け易く、更にタイヤによって跳ね上げられた小石等も衝突する。従って、湾曲部32でも、風圧による撓みや飛び石による破損を防ぐために、その剛性や強度を高めることが必要とされる。このため、上記のような湾曲部32や延設部33では、例えばエンボス部34を設け、更に、リブ36の配置を複雑にしたり、密集させたりする等の工夫がなされている。しかし、フェンダプロテクタ31の剛性や強度を高めるために、エンボス部34やリブ36を多く配設し過ぎると、却ってフェンダプロテクタ31の可撓性の低下を招いてしまい、フェンダプロテクタ31を車両へ取り付けるときの取付作業性が悪くなる等の弊害が生じる。従って、剛性や強度と、取付作業性とを同時に向上させることは難しかった。
【0010】
そこで、近年では、フェンダプロテクタの変形や破損が生じやすい部位で剛性や強度を効果的に向上させるとともに、良好な取付作業性を確保するために、例えば図6に示すようなフェンダプロテクタ41の構造が提案されている。この図6に示したフェンダプロテクタ41では、アーチ状の湾曲部42と、略扇形状の延設部43と、湾曲部42の前方内側において延設部43に対して直角に配される側壁部44とによりパネル本体が構成されている。なお、図6では、フェンダプロテクタ41を自動車に取り付けた際に、自動車の進行方向を前方方向とし、後退方向を後方方向としている。また、フェンダプロテクタ41のエンジンルームを向く側を内側とし、外部を向く側を外側としている。
【0011】
このフェンダプロテクタ41において、湾曲部42と延設部43の外側端縁には段差を有する段差端縁部46が設けられており、湾曲部42における段差端縁部46の一部と延設部43の段差端縁部46とが、プロテクタ本体よりも厚い厚肉端縁部45として形成されている。この場合、プロテクタ本体の薄肉板状部の厚さは、例えば0.8mm以上1.3mm以下程度であるのに対し、厚肉端縁部45の厚さは2.5mm程度に設定されている。なお、湾曲部42の頂部内側の部分には、車両のサスペンション(不図示)が挿入される切欠き53が形成されている。また、湾曲部42の内側には、切欠き53が形成されている部位から後端に渡ってフランジ47が配設されている。
【0012】
更に、湾曲部42と延設部43とには、フェンダプロテクタ41の長手方向に形成されるリブ48と、この長手方向のリブ48からプロテクタ本体の内側及び外側端縁に向けて枝状に延設される複数の幅方向のリブ49とが配されている。このような長手方向と幅方向に配されるリブ48,49は、プロテクタ本体の表面からの高さが3.5mm、幅が2.5mmの寸法で形成されており、フェンダプロテクタ41の剛性を高めるとともに、射出成形時に合成樹脂の流動を支援する。更にまた、長手方向のリブ48上には合成樹脂の注入ゲートが配されていたことにより、その注入ゲートの跡50が残存しており、またプロテクタ本体の周囲には、クリップ等の固着具により不図示のフェンダパネルに固定される複数の固定部51,51aが形成されている。なお、これらの固定部51,51aのうち、段差端縁部46に形成されている固定部51aは何れも厚肉に形成されており、フェンダパネルへの取付状態を安定化させている。
【0013】
上述のような構成を有する図6のフェンダプロテクタ41は、前記厚肉端縁部45が形成されていることにより、延設部43や湾曲部42の湾曲面で所要の性能を十分に満たすような剛性や強度が安定して得られるとともに、フェンダプロテクタ41の好適な可撓性を維持し、良好な取付作業性を得ることが可能となった。更には、図6のフェンダプロテクタ41では、例えば前記特許文献1のフェンダプロテクタに比べて、フェンダプロテクタに形成するリブの配置を簡略化することができるため、フェンダプロテクタの射出成形工程において、金型設計の簡素化、作業工程の効率化等を図ることも可能となる。
【特許文献1】特開2001−260944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図6に示したようなフェンダプロテクタ41においては、剛性を効果的に向上させるために前記厚肉端縁部45を設けたことにより、射出成形時に以下のような成形不良が生じるという問題があった。
【0015】
即ち、フェンダプロテクタ41の射出成形を行う際に、プロテクタ本体の薄肉の部位(領域)では合成樹脂の流動抵抗が大きいため合成樹脂が流れにくく、注入ゲートから射出された溶融樹脂は、長手方向及び幅方向に配されるリブ48,49や厚肉端縁部45が形成されるような流路断面が大きな空間(通路)に優先的に流れていく。このため、合成樹脂は、リブ48,49や厚肉端縁部45に先に充填されていき、その後、リブ48,49や厚肉端縁部45から、プロテクタ本体の薄肉領域に徐々に流れ込むことになる。その結果、薄肉領域では合成樹脂の充填が遅れてしまい、特にリブ48,49と厚肉端縁部45とに囲まれている薄肉領域では、ショートショットが生じ易いという問題があった。
【0016】
また、溶融樹脂がプロテクタ本体のリブ48,49や厚肉端縁部45に優先的に充填されるために、例えばリブ48,49と厚肉端縁部45とに囲まれている薄肉領域では、合成樹脂がその周囲から内側に向けて徐々に流れ込み、特に厚肉端縁部45からは長手方向のリブ48に向けて戻るようにして充填されることになる。これにより、当該薄肉領域内の空気が合成樹脂に包囲されてしまい、ガス抜きを行うことができなくなる。その結果、リブ48,49及び厚肉端縁部45に囲まれている薄肉領域では空気が残存して空気溜まりが生ずるため、成形品の外観を損ねるエアタイト52といった成形不良が発生するという問題もあった。
【0017】
なお、上記のようなショートショットやエアタイトといった成形不良の発生を防ぐためには、例えばプロテクタ本体の薄肉部位を前述の肉厚よりも厚くしたり、またガス抜きの設定を工夫する等の対策を講じることが考えられる。しかし、例えばプロテクタ本体の薄肉部位を成形不良の防止のために必要以上に厚くしてしまうと、フェンダプロテクタの重量が大幅に増えるとともに樹脂量増加によるコストアップに繋がる。更に、射出成形時に成形収縮が大きくなって変形が生じる等の不具合が生じるという問題もあった。また、ガス抜きの設定を変更する場合には、射出成形機や金型の構造が複雑になるという欠点があった。
【0018】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、射出成形時にショートショットやエアタイトといった成形不良を発生させることなく、所要部位の剛性や強度が効果的に高められているとともに、好適な可撓性を有するフェンダプロテクタ等の車両用プロテクタパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明により提供される車両用プロテクタパネルは、基本的な構成として、端縁の少なくとも一部に厚肉端縁部を有する薄肉板状のパネル本体の一面に、前記厚肉端縁部に沿って配設される突条の第1リブと、同第1リブから前記厚肉端縁部に向けて延設される複数の第2リブとを備えてなり、車両保護等のために車体に取り付けられる合成樹脂製の車両用プロテクタパネルであって、前記パネル本体の一面に、前記厚肉端縁部と前記第1リブと前記第2リブとにより囲まれる領域に向けて、前記厚肉端縁部、前記第1リブ、及び前記第2リブのいずれかから延設された第3リブを有していることを最も主要な特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る車両用プロテクタパネルにおいて、前記第3リブが前記第1リブから延設されていることが好ましく、更に、前記第3リブの長さは、前記第2リブの長さの1/2以上2/3以下であることが好ましい。
【0021】
また、本発明において、前記パネル本体の薄肉部の厚さが0.8mm以上1.3mm以下であり、前記厚肉端縁部の厚さが2.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。更に、前記第1リブ〜第3リブの高さが3.0mm以上4.5mm以下であり、幅が2.5mm以上4.5mm以下であることが好ましい。
この場合、前記第2リブと前記厚肉端縁部との間に間隔が設けられていることが好ましい。
【0022】
そして、本発明に係る前記車両用プロテクタパネルは、フェンダプロテクタとして用いられることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車両用プロテクタパネルは、パネル本体の一面に、厚肉端縁部と第1リブと第2リブとにより囲まれる領域に向けて、厚肉端縁部、第1リブ、及び第2リブのいずれかから延設された第3リブを有している。
【0024】
本発明者等は、薄肉板状のパネル本体の一面に前記厚肉端縁部、第1リブ、及び複数の第2リブを備える車両用プロテクタパネルを射出成形する際に、ショートショットやエアタイトといった成形不良の発生を防止するためには、厚肉端縁部と第1リブと第2リブとにより囲まれる領域への合成樹脂の流動を促進し、同領域に合成樹脂の充填をより迅速に安定して行うことができれば良いと考えて、鋭意実験及び検討を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
【0025】
即ち、厚肉端縁部と第1リブと第2リブとにより囲まれる薄肉の領域に向けて前記第3リブを延設することにより、射出成形時に厚肉端縁部、第1リブ、及び第2リブの空間に溶融した合成樹脂を流し込むとともに、第3リブを介してこれらの部位によって囲まれている薄肉の領域にも合成樹脂を円滑に流し込んで充填することができる。特に、当該囲まれている薄肉領域では、従来のような合成樹脂が厚肉端縁部から第1リブに向けて戻るように流れ込むことを抑制することができる。これにより、厚肉端縁部に合成樹脂を充填しながら、当該囲まれている薄肉領域内への合成樹脂の充填も迅速に安定して行うことが可能となり、また、当該薄肉領域内のガス抜きを容易に行うことも可能となる。従って、プロテクタパネルにおいて、ショートショットやエアタイトといった成形不良の発生を防止することができる。
【0026】
また、前記第3リブを配設することにより、その配設された領域の剛性を更に高めることができる。その一方で、プロテクタパネルの可撓性が殆ど損なわれず、適度にねじる(撓ませる)ことができるため、プロテクタパネルを車体に取り付ける際の取付作業も容易に行うことが可能となる。
【0027】
特に、本発明では、前記第3リブが第1リブから延設されていることにより、第1リブ、第3リブを介して、溶融した合成樹脂を第1リブ側から厚肉端縁部側に向けて円滑に流し込んで、前記囲まれている薄肉領域内に迅速に充填することができるため、ショートショットやエアタイトの発生をより確実に防止することができる。
【0028】
本発明において、前記第3リブの長さが前記第2リブの長さの1/2以上であることにより、前記囲まれている薄肉領域内への合成樹脂の充填を効率的に行うことが可能となり、また、パネル本体の剛性を効果的に向上させることができる。一方、前記第3リブの長さが前記第2リブの長さの2/3以下であれば、プロテクタパネルの可撓性がより好適となり、プロテクタパネルの車両への取付作業性を更に向上させることができる。
【0029】
また、前記パネル本体の薄肉部の厚さは0.8mm以上1.3mm以下であることが好ましい。これにより、プロテクタパネルの軽量化とプロテクタパネルのコストダウンとを図ることができる。一方、前記厚肉端縁部の厚さは2.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。これにより、プロテクタパネルの所要部位での剛性や強度を効果的に向上させることができる。また、この厚肉端縁部に車両と固定させる固定部が形成される場合、厚肉端縁部が上記範囲の肉厚で形成されていれば、プロテクタパネルを固着具でしっかりと確実に車両に固定することができ、プロテクタパネルの取付状態を安定させることができる。
【0030】
更に、前記第1リブ〜第3リブは、高さが3.0mm以上4.5mm以下、幅が2.5mm以上4.5mm以下であることが好ましい。第1リブ〜第3リブがこのような寸法で配設されていることにより、プロテクタパネルの剛性を確実に向上させることができ、また、射出成形時には良好な合成樹脂の流動支援性能を得ることができる。
【0031】
この場合、本発明のプロテクタパネルでは、前記第2リブと前記厚肉端縁部との間に間隔が設けられている。また、この間隔の大きさは20mm以上30mm以下であることが好ましい。これにより、前記囲まれている薄肉領域内への合成樹脂の充填を一層確実に行うことができるため、成形不良の発生を確実に防ぐことができる。それとともに、プロテクタパネルの可撓性の向上を図ることができ、プロテクタパネルの取付作業性も向上させることができる。
【0032】
そして、このような本発明の車両用プロテクタパネルは、フェンダプロテクタとして特に好適に用いることができる。即ち、本発明によれば、延設部や湾曲部の湾曲面における剛性や強度が効果的に高められており、好適な可撓性を備え、更に、ショートショットやエアタイトが発生していないフェンダプロテクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏するものであれば、多様な変更が可能である。
【0034】
例えば、以下の実施形態では、本発明に係る車両用プロテクタパネルの一例としてフェンダプロテクタについての説明を行っている。しかし、本発明は、例えばアンダーカバー、インストルメントパネル、ドアトリム等のような部材(成形品)にも同様に適用することが可能である。また、下記実施形態のフェンダプロテクタにおける形状等も単なる一例に過ぎず、取り付ける車種等に応じて適宜変更することができる。
【0035】
ここで、図1は、本実施形態のフェンダプロテクタの後方側を斜め上方から見た概略的な斜視図であり、図2は、同フェンダプロテクタの前方側を斜め上方から見た概略的な斜視図である。また、図3は、同フェンダプロテクタを車両に取り付けた際における図1のIII−III線の矢視断面図である。なお、これらの図面は、本発明の特徴が理解し易くなるように実際のものとは異なる寸法で一部記載しているが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。また、本実施形態では、フェンダプロテクタを自動車に取り付けた際における、自動車の進行方向を前方方向とし、後退方向を後方方向とする。また、フェンダプロテクタのエンジンルームを向く側を内側とし、外部を向く側を外側とする。
【0036】
図1及び図2に示した本実施形態のフェンダプロテクタ1は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系熱可塑性樹脂を射出成形して得られる一体成形品であり、図3に示したように自動車のフェンダパネル2のホイールハウス内側に取り付けられて、タイヤ3の上部を覆うものである。このフェンダプロテクタ1は、アーチ状の湾曲部4と、湾曲部4の前端で屈曲して延設される略扇形状の延設部5と、湾曲部4の前方内側部において延設部5に対して直角に配される側壁部6とによりパネル本体が構成されている。
【0037】
このフェンダプロテクタ1のパネル本体は、肉厚tが0.8mm以上1.3mm以下、好ましくは約1.0mmである薄肉板状に形成されており、軽量化が図られている。パネル本体の肉厚tが0.8mm未満の場合、パネル本体の肉厚が薄過ぎて、所要の剛性や強度を得ることが難しくなる恐れがあり、また、肉厚tが1.3mmを越えると、フェンダプロテクタの重量が大幅に増加し、また樹脂量増加によるコストアップにも繋がる。
【0038】
また、パネル本体には、その外側端縁に沿って段差を有する段差端縁部7が設けられており、湾曲部4における段差端縁部7の一部と延設部5における略円弧状の段差端縁部7とは、肉厚Tが2.0mm以上3.0mm以下、好ましくは約2.5mmである厚肉端縁部8として形成されている。この肉厚Tが2.0mm未満の場合、フェンダプロテクタ1における剛性や強度を効果的に向上させることが難しくなる恐れがあり、一方、肉厚Tが3.0mmを越えると、フェンダプロテクタ1の可撓性を低下させる恐れがある。従って、上記のような大きさの肉厚Tを有する厚肉端縁部8を形成することにより、フェンダプロテクタ1の可撓性を維持して、湾曲部4の後方側の湾曲面や延設部5における剛性及び強度を効果的に向上させている。
【0039】
また、前記湾曲部4には、その頂部内側の部分にサスペンション(不図示)を挿入するための切欠き9が形成されており、その後端に屈曲部15が形成されている。更に、湾曲部4の内側端縁には、切欠き9が設けられている部位から屈曲部15に渡ってフランジ10が形成されている。
【0040】
更にまた、湾曲部4及び延設部5の段差端縁部7には、クリップ等の固着具によりフェンダパネル2に固定される複数の固定部16が形成されている。湾曲部4のフランジ10及び屈曲部15と、前記側壁部6とには、フェンダパネル2との固定部17がそれぞれ所定箇所に形成されている。
【0041】
湾曲部4のフランジ10及び屈曲部15、並びに側壁部6は、いずれも車両の内側に配置されており、車両の他部材(車体パネル等)との関係において空間的に余裕がある。従って、フランジ10、屈曲部15、及び側壁部6は、それぞれ湾曲部4の湾曲面と交差する方向に配設することが可能であり、固着具による強固な固定部の形成が容易で、更にフェンダプロテクタ1の安定した取付状態が確保される。
【0042】
一方、車両の外側に配置されるとともに、人目に触れやすい段差端縁部7は、車両の他部材(フェンダパネル)との関係において隙間を生じることなく強固な固定部を形成しなければならないため、厚肉端縁部8の厚さが2.0mm以上3.0mm以下となるようにしている。また、段差端縁部7に形成されている固定部16が何れも厚肉に形成されていることにより、フェンダプロテクタ1をフェンダパネル2に取り付けた際に、より安定した取付状態が確保される。
【0043】
なお、前記固定部16,17は、段差端縁部7やフランジ10等の所定の部位に取付孔を直接穿設することにより形成されているが、例えば、段差端縁部7やフランジ10等の所定箇所に小片状の取付部を別途に形成し、同取付部に取付孔を穿設することによって、フェンダパネル2との固定部を形成することも可能である。
【0044】
本実施形態のフェンダプロテクタ1において、湾曲部4と延設部5の表面(上面)には、段差端縁部7に沿うとともに、前記切欠き9を迂回するようにしてパネル本体の長手方向に配設される突条の第1リブ11と、その第1リブ11から段差端縁部7に向けて延設される複数の第2リブ12と、厚肉端縁部8と第1リブ11と第2リブ12とにより囲まれる各領域20(以下、この領域を「囲まれ領域20」と記載する)に向けて、第1リブ11から延設される複数の第3リブ13と、第1リブ11から内側端縁に向けて延設される複数の第4リブ14とが形成されている。
【0045】
また、本実施形態のフェンダプロテクタ1では、前記第1リブ11上に、フェンダプロテクタ1の射出成形において合成樹脂を注入する注入ゲートの跡18が2箇所残っている。本実施形態では、注入ゲートが第1リブ11上に形成されているため、合成樹脂の流動がより効果的に支援されて、合成樹脂のキャビティ内への射出を安定して行うことができる。なお、この注入ゲートの跡18は、成形品の外観や機能を損なう場合には、その後に仕上加工等を行うことにより除去することが可能である。
【0046】
前記第2リブ12は、第1リブ11から段差端縁部7に向けて延設されているものの、段差端縁部7とは接触しておらず、第2リブ12と段差端縁部7との間には間隔が設けられている。特に、第2リブ12のうち、厚肉端縁部8に向けて延設されているものは、同厚肉端縁部8との間に20mm以上30mm以下の間隔19が設けられている。この間隔19の大きさは、厚肉端縁部8及び第1リブ11〜第4リブ14の寸法等によって適切な値が異なるが、本実施形態の場合では20mm以上30mm以下の間隔19が設けられていることにより、以下で詳述するように、フェンダプロテクタ1の射出成形時にショートショットやエアタイトの発生を効果的に防止することができ、更に、フェンダプロテクタ1の可撓性が適度に得られるため、自動車への取付作業性を向上させることができる。なお、本発明においては、このような間隔19は必ずしも設ける必要はなく、例えばリブの幅や高さを下記に示した範囲よりも小さくした場合等では、剛性や強度を確保するために第2リブ12を段差端縁部7に直接接続することも可能である。
【0047】
前記第3リブ13は、第1リブ11から各囲まれ領域20に向けてそれぞれ1つずつ延設されており、各第3リブ13の長さは、その囲まれ領域20を形成する第2リブ12の長さの1/2以上2/3以下となるように設定されている。第3リブ13が、第2リブ12に対して1/2以上となるように設定されていることにより、フェンダプロテクタ1の延設部5及び湾曲部4の後方側湾曲面における剛性を効果的に向上させることができる。また、第3リブ13が、第2リブ12に対して2/3以下となるように設定されていることにより、フェンダプロテクタ1の好適な可撓性を確保することができる。
【0048】
なお、ここで言う第2リブ12の長さとは、囲まれ領域20を形成する第2リブ12が同領域の前方と後方とに存在する場合は、その2つの長さの平均値を意味しており、また、前記延設部5の前端部に形成される囲まれ領域20のように第2リブ12が1つしかない場合には、その第2リブ12の長さを意味する。
【0049】
また、フェンダプロテクタ1に形成される第1リブ11〜第4リブ14は、その断面が略矩形状、又はパネル本体との付け根部分が広がっている略山形状となるように形成されている。これらの第1リブ11〜第4リブ14における断面のサイズは、何れのリブも略同様であり、パネル本体表面からの高さが3.0mm以上4.5mm以下、好ましくは約3.5mmに設定されており、また、幅(特に、リブの高さが半分の位置における幅)が2.5mm以上4.5mm以下、好ましくは約2.5mmに設定されている。
【0050】
第1リブ11〜第4リブ14の高さが3.0mm以上、幅が2.5mm以上であることにより、フェンダプロテクタ1の剛性を確実に向上させることができ、更に、フェンダプロテクタ1を射出成形する際に良好な合成樹脂の流動支援性能を得ることができる。また、第1リブ11〜第4リブ14の高さ及び幅が4.5mm以下であれば、合成樹脂の使用量の増加による大幅なコストアップを招くこともない。
【0051】
なお、本発明においては、前記第2リブ12及び第4リブ14の配設数は、フェンダプロテクタ1の寸法や形状等に応じて任意に選択することができる。また、本実施形態において、第1リブ11〜第4リブ14は何れもパネル本体の表面に形成されているが、必要に応じてパネル本体の裏面に形成したり、また、表裏両面に形成することも可能である。
【0052】
以上のような構成を有する本実施形態のフェンダプロテクタ1は、射出成形方法を用いて、型締めした上型と下型との間に形成されるキャビティ内に、第1リブ11を形成する空間(流路)上に配された2箇所の注入ゲートからオレフィン系熱可塑性樹脂を射出することにより容易に作製することができる。
【0053】
このとき、注入ゲートから射出された合成樹脂は、第1リブ11〜第4リブ14及び厚肉端縁部8を形成する空間(流路)によって流動が支援され、キャビティ内に安定して充填される。更に、本実施形態では、従来のフェンダプロテクタ(図6を参照)では設けられていなかった第3リブ13を各囲まれ領域20に形成するため、第1リブ11〜第4リブ14及び厚肉端縁部8に合成樹脂を充填する際に、各囲まれ領域20の薄肉部位にも第3リブ13を介して合成樹脂を迅速に且つ円滑に充填していくことができる。
【0054】
即ち、従来では厚肉端縁部に合成樹脂が先に充填され、囲まれ領域のガス抜きを行うことができないためにエアタイトが生じていたが、本実施形態によれば、厚肉端縁部8に合成樹脂を充填すると同時に、囲まれ領域20にも合成樹脂を円滑に充填できるため、当該囲まれ領域20のガス抜きを適切に行うことができ、エアタイトやショートショットの発生を防止することができる。
【0055】
特に、本実施形態のフェンダプロテクタ1では、前述のように、各第3リブ13の長さがその囲まれ領域20を形成する第2リブ12の長さの1/2以上であるため、第3リブ13から囲まれ領域20へ流れ込む合成樹脂の流動が促進される。また、第2リブ12と厚肉端縁部8との間には間隔19が設けられるため、射出成形時に第2リブ12から厚肉端縁部8へ流れる合成樹脂の流動抵抗が僅かに高められる。これにより、厚肉端縁部8への合成樹脂の充填と、囲まれ領域20への合成樹脂の充填のタイミングが適切に制御され、エアタイトやショートショットの発生がより確実に防止される。
【0056】
更に、第3リブ13は、湾曲部4の後方側湾曲面と延設部5とに適切な長さで形成されているため、フェンダプロテクタ1の好適な可撓性を維持しながら、これらの部位の剛性や強度をより一層高めることができる。従って、本実施形態のフェンダプロテクタ1は、成形不良の発生が防止されるという利点が得られるだけでなく、自動車への取付作業性に優れており、更に、湾曲部4の後方側湾曲面及び延設部5が補強されて、自動車の走行時に損傷や変形を受け難くなるといった利点も得られる。
【0057】
なお、例えば厚肉端縁部8でない段差端縁部7や内側端縁によって形成されている薄肉の領域では、合成樹脂は第1リブ11側から端縁側に向けて徐々に充填されていくので、第3リブ13を配設しなくても、エアタイトやショートショットは生じない。なお、本発明では、前記囲まれ領域20以外の薄肉領域にも、第3リブ13を設けることは当然に可能である。
【0058】
また、本発明において、第3リブ13は、厚肉端縁部8、第1リブ11、及び第2リブ12のうちのいずれからでも前記囲まれ領域20に向けて延設させることが可能であるが、本実施形態のように第1リブ11から延設されていることにより、射出成形時に溶融した合成樹脂をより迅速に囲まれ領域20に充填することができるため、ショートショットやエアタイトの発生をより確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の車両用プロテクタパネルは、破損や変形が生じやすい部位の剛性や強度が高く、また車両への取付作業性が良好であることが求められるフェンダプロテクタやアンダーカバー等に有効に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のフェンダプロテクタの後方側を斜め上方から見た概略的な斜視図である。
【図2】同フェンダプロテクタの前方側を斜め上方から見た概略的な斜視図である。
【図3】同フェンダプロテクタを車両に取り付けた際における図1のIII−III線の矢視断面図である。
【図4】従来のフェンダプロテクタの一例を示す斜視図である。
【図5】同フェンダプロテクタの上面図である。
【図6】変形や破損が生じやすい部位の剛性を効果的に向上させた従来のフェンダプロテクタの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 フェンダプロテクタ
2 フェンダパネル
3 タイヤ
4 湾曲部
5 延設部
6 側壁部
7 段差端縁部
8 厚肉端縁部
9 切欠き
10 フランジ
11 第1リブ
12 第2リブ
13 第3リブ
14 第4リブ
15 屈曲部
16,17 固定部
18 注入ゲートの跡
19 間隔
20 囲まれ領域
31 フェンダプロテクタ
32 湾曲部
33 延設部
34 エンボス部
35 注入ゲート
36 リブ
38,38a 取付部
41 フェンダプロテクタ
42 湾曲部
43 延設部
44 側壁部
45 厚肉端縁部
46 段差端縁部
47 フランジ
48 長手方向のリブ
49 幅方向のリブ
50 注入ゲートの跡
51,51a 固定部
52 エアタイト
53 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端縁の少なくとも一部に厚肉端縁部(8)を有する薄肉板状のパネル本体の一面に、前記厚肉端縁部(8)に沿って配設される突条の第1リブ(11)と、同第1リブ(11)から前記厚肉端縁部(8)に向けて延設される複数の第2リブ(12)とを備えてなり、車両保護等のために車体に取り付けられる合成樹脂製の車両用プロテクタパネルであって、
前記パネル本体の一面に、前記厚肉端縁部(8)と前記第1リブ(11)と前記第2リブ(12)とにより囲まれる領域(20)に向けて、前記厚肉端縁部(8)、前記第1リブ(11)、及び前記第2リブ(12)のいずれかから延設された第3リブ(13)を有してなることを特徴とする車両用プロテクタパネル。
【請求項2】
前記第3リブ(13)が前記第1リブ(11)から延設されてなることを特徴とする請求項1記載の車両用プロテクタパネル。
【請求項3】
前記第3リブ(13)の長さが、前記第2リブ(12)の長さの1/2以上2/3以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用プロテクタパネル。
【請求項4】
前記パネル本体の薄肉部の厚さが0.8mm以上1.3mm以下であり、前記厚肉端縁部(8)の厚さが2.0mm以上3.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用プロテクタパネル。
【請求項5】
前記第1リブ(11)〜第3リブ(13)の高さが3.0mm以上4.5mm以下であり、幅が2.5mm以上4.5mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用プロテクタパネル。
【請求項6】
前記第2リブ(12)と前記厚肉端縁部(8)との間に間隔(19)が設けられてなることを特徴とする請求項4又は5記載の車両用プロテクタパネル。
【請求項7】
前記車両用プロテクタパネルがフェンダプロテクタとして用いられてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用プロテクタパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−223397(P2007−223397A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44828(P2006−44828)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】