説明

車両用ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】 安価且つ簡便な構成でもって表示位置の十分な移動量と良好な表示を実現できる車両用ヘッドアップディスプレイ装置の提供。
【解決手段】 表示器1の表示像をフロントウインドシールドに反射させると共に、この反射した表示像の虚像7を前方視界である背景と重ねた状態で運転者6に見えるようにした車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、表示器1の表示像を第1ミラーM1及び第2ミラーM2を介してフロントウインドシールド3に反射させて表示し、第1ミラーM1及び第2ミラーM2を表示器1からフロントウインドシールド3までの光路長を維持する軌跡上で移動させることにより、虚像7の表示位置を移動可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントウインドシールドの前方下方のインストルメントパネルに表示器を設けると共に、この表示器の表示像をフロントウインドシールド(またはコンバイナ)に直接反射した表示像の虚像を前方視界である背景と重ねた状態で運転者に見せるようにした車両用ヘッドアップディスプレイ装置の技術が公知になっている(特許文献1参照)。
また、フロントウインドシールドに反射させた表示位置を車両旋回方向に移動させて運転者の視野有効エリア内に移動可能にしたものもある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−264410号公報
【特許文献2】特開2001−301486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、表示器の画面上で表示像を移動させることにより表示位置を移動させていたため、その移動量は画面サイズによって制限されてしまい、十分な移動量を確保できないという問題点があった。
そこで、画面サイズを大きくして小さな表示像を移動させることが考えられるが、この場合、表示に使用されない画面エリアが大幅に増えて無駄となる上、表示器の大型化とコストアップを招くという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、安価且つ簡便な構成でもって表示位置の十分な移動量と良好な表示を実現できる車両用ヘッドアップディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明では、表示器の表示像をフロントウインドシールドに反射させると共に、この反射した表示像の虚像を前方視界である背景と重ねた状態で運転者に見えるようにした車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、前記表示器の表示像を複数のミラーを介してフロントウインドシールドに反射させて表示し、前記複数のミラーを表示器からフロントウインドシールドまでの光路長を維持する軌跡上で移動させることにより、前記虚像の表示位置を移動可能にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、表示器の表示像をフロントウインドシールドに反射させると共に、この反射した表示像の虚像を前方視界である背景と重ねた状態で運転者に見えるようにした車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、前記表示器の表示像を複数のミラーを介してフロントウインドシールドに反射させて表示し、前記複数のミラーを表示器からフロントウインドシールドまでの光路長を維持する軌跡上で移動させることにより、前記虚像の表示位置を移動可能にしたため、安価且つ簡便な構成でもって表示位置の十分な移動量と良好な表示を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1の車両用ヘッドアップディスプレイ装置を示す図、図2〜5は作用を説明する図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、本実施例1の車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、表示器1と、それぞれ平板状の第1ミラーM1及び第2ミラーM2と、制御部2が備えられ、これらは全て車両のフロントウインドシールド3の前方下方に配置されたインストルメントパネル4(図2(b)参照)に設けられている。
【0010】
表示器1は、その上面に設けられたLCD5の表示像をその下面側に設けられた図示を省略する光源を用いて第1ミラーM1へ投影するものである。
なお、表示器1のLCD5は、制御部2に格納されるVRAMの画像データの設定に応じた画像を多数のドット表示により表示するようになっている。
【0011】
また、第2ミラーM2は、第1ミラーM1によって投影された表示像をフロントウインドシールド3の反射点へ反射させ、これによって、運転者6にフロントウインドシールド3に反射された表示像の虚像7を前方視界である背景と重ねた状態で見せるようになっている。
なお、フロントウインドシールド3の反射点にハーフミラーで構成される別体のコンバイナを設けても良い。
【0012】
さらに、両ミラーM1,M2は図示を省略する駆動手段により後述する軌跡に従って移動可能に設けられている。
【0013】
制御部2は、表示器1の表示像の出力を制御する他、車両情報として少なくともカーナビゲーション装置による車両位置及び車両方向、操舵角センサによるステアリング8(図2(b)参照)の操作状態等が入力され、この車両情報に基づいて駆動手段に両ミラーM1,M2の移動の命令を行うようになっている。
【0014】
次に、作用を説明する。
このように構成された車両用ヘッドアップディスプレイ装置では、制御部2が車両情報から車両が直進中と判断した場合には、図2(a)に示すように、第1ミラーM1を表示器1のLCD5に対して傾斜した状態(本実施例1ではα=45°)で配置する一方、第2ミラーM2を第1ミラーM1と同じ傾斜角度で図中右側に離間して配置する。
【0015】
これにより、表示器1の表示像は、第1ミラーM1、第2ミラーM2の順番に一点鎖線で示す光路を経てフロントウインドシールド3の反射点に反射し、この結果、図2(b)に示すように、運転者6にフロントウインドシールド3に反射した表示像の虚像7を前方視界である背景と重ねた状態で見せる。
【0016】
また、この際、虚像7の表示位置を運転者6の有効視野エリア9内の下方中央に表示させることで、運転者6は運転を妨げることなく様々な情報を確実に視認することができるようになっている。
なお、表示位置は有効視野エリア9内であればその位置は任意である。
【0017】
また、制御部2が車両情報から車両が左側に旋回中と判断した場合には、両ミラーM1,M2を図3(a)に示す位置へ移動させることにより、フロントウインドシールド3に反射した表示像の表示位置を左側に移動させ、この結果、図3(b)に示すように、車両が左側に旋回している際における運転者6の有効視野エリア9内に常に虚像7の表示位置を移動させて表示できるようになっている。
この際、両ミラーM1,M2は移動前における表示器1からフロントウインドシールド3までの光路長、詳細には表示器1のLCD5からフロントウインドシールド3の反射点までの光路長を維持する軌跡上(図3(a)の二点鎖線で図示)、即ち、表示器1の中央部と両端部を用いて説明するとA1+A2+A3(図2(a)参照)=A4+A5+A6、B1+B2+B3(図2(a)参照)=B4+B5+B6、C1+C2+C3(図2(a)参照)=C4+C5+C6が常に維持される軌跡上を移動し、これによって、虚像7に奥行きの歪みが生じるのを防止でき、運転者6に見栄えの良い良好な表示をできるようになっている。
【0018】
一方、制御部2が車両情報から右側に旋回中と判断した場合には、両ミラーM1,M2を図4(a)に示す位置へ移動させることにより、フロントウインドシールド3に反射した表示像の表示位置を右側に移動させ、この結果、図4(b)に示すように、車両が右側に旋回している際における運転者6の有効視野エリア9内に常に虚像7の表示位置を移動させて表示できるようになっている。
この際、両ミラーM1,M2は移動前における表示器1からフロントウインドシールド3までの光路長、詳細には表示器1のLCD5からフロントウインドシールド3の反射点までの光路長を維持する軌跡上(図4(a)の二点鎖線で図示)、即ち、表示器1の中央部と両端部を用いて説明するとA1+A2+A3(図2(a)参照)=A7+A8+A9、B1+B2+B3(図2(a)参照)=B7+B8+B9、C1+C2+C3(図2(a)参照)=C7+C8+C9が常に維持される軌跡上を移動し、これによって、虚像7に奥行きの歪みが生じるのを防止でき、運転者6に見栄えの良い良好な表示をできるようになっている。
【0019】
即ち、本実施例1では、図5に示すように、表示器1からフロントウインドシールド3までの光路長を維持する軌跡上(二点鎖線で図示)で両ミラーM1,M2を移動させることとなり、これによって、虚像7の奥行きに歪みが生じるのを防止しつつ、虚像7を移動させることができ、運転者6に様々な情報を良好に伝達することができる。
【0020】
また、両ミラーM1,M2を移動させるという安価且つ簡便な方法でもって虚像7の表示位置を移動できる上、その移動量を十分に確保できる。
【0021】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1の車両用ヘッドアップディスプレイ装置にあっては、表示器1の表示像をフロントウインドシールドに反射させると共に、この反射した表示像の虚像7を前方視界である背景と重ねた状態で運転者6に見えるようにした車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、表示器1の表示像を第1ミラーM1及び第2ミラーM2を介してフロントウインドシールド3に反射させて表示し、第1ミラーM1及び第2ミラーM2を表示器1からフロントウインドシールド3までの光路長を維持する軌跡上で移動させることにより、虚像7の表示位置を移動可能にしたため、安価且つ簡便な構成でもって表示位置の十分な移動量と良好な表示を実現できる。
【0022】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、表示器1の表示像の内容、表示のタイミング、移動のタイミング、移動方向、移動量、及び移動速度等は適宜設定できる。
同様に、ミラーの設置数や形状、駆動手段の構成も適宜設定でき、例えば、駆動手段のミラーの移動方法としてはミラーの一部をその移動軌跡に合致する摺動溝に摺動させながらアクチュエータ等を用いて移動させる。
【0023】
また、第2ミラーM2とフロントウインドシールド3との間に凹凸鏡を介在させて虚像6の更なる遠方、拡大表示を行えるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の車両用ヘッドアップディスプレイ装置を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の作用を説明する図である。
【図3】本発明の実施例1の作用を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1の作用を説明する図である。
【図5】本発明の実施例1の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
M1 第1ミラー
M2 第2ミラー
1 表示器
2 制御部
3 フロントウインドシールド
4 インストルメントパネル
5 LCD
6 運転者
7 虚像
8 ステアリング
9 有効視野エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示器の表示像をフロントウインドシールドに反射させると共に、この反射した表示像の虚像を前方視界である背景と重ねた状態で運転者に見せるようにした車両用ヘッドアップディスプレイ装置において、
前記表示器の表示像を複数のミラーを介してフロントウインドシールドに反射させて表示し、
前記複数のミラーを表示器からフロントウインドシールドまでの光路長を維持する軌跡上で移動させることにより、前記虚像の表示位置を移動可能にしたことを特徴とする車両用ヘッドアップディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−203441(P2008−203441A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38247(P2007−38247)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】