説明

車両用ポップアップフード装置

【課題】衝突体との衝突時にアクチュエータの作動によりロッドを伸長させてフードを押し上げる車両用ポップアップフード装置において、フード押し上げ位置付近に所定値以上の衝突荷重が入力された場合に効率良く衝突エネルギーを吸収する。
【解決手段】アクチュエータ18が作動してロッド20がフード上方側へ軸方向移動し、フード12の後端側を押し上げてその位置に保持した状態において、押し上げ位置付近にフード上方側から所定値以上の衝突荷重が作用すると、押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38上を車両後方側へ摺動し、それに伴ってロッド30が曲げ変形されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ポップアップフード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者保護等の観点から、車両が歩行者等の衝突体に衝突した際にフードの後端部を持ち上げて衝突体をフードで受け止めて衝撃を緩和する車両用ポップアップフード装置が開発されている。例えば、下記特許文献1に開示された車両用ポップアップフード装置では、フードの後端部両サイドに左右一対のフードヒンジが配設されており、衝突体との衝突時になると、フードヒンジ近傍に配設されたアクチュエータが作動し、突き上げロッドでフードヒンジのフード側リンクを突き上げるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記フードの後端部を持ち上げただけでは、衝突体がフードの突き上げ位置付近に衝突した場合に、突き上げロッドが突っ張り、衝突体に作用する荷重反力が大きくなる可能性がある。このため、車両用ポップアップフード装置に別途エネルギー吸収機構を付加して、このような場合には所定の荷重反力以下で所定のエネルギー吸収がなされるようにすることが望ましい。
【0004】
一方、下記特許文献2には、衝突時に自動車用安全装置を作動させるアクチュエータにエネルギー吸収機構を付加した技術が開示されている。簡単に説明すると、ピストンロッドの先端部に所定値以上の軸方向荷重が入力されると、ピストンロッドに設けられた塑性変形部が圧壊し、これによりピストンロッドがシリンダ内に収縮(相対移動)される、というものである。従って、特許文献2に開示されたアクチュエータを特許文献1に開示された車両用ポップアップフード装置に適用することにより、上記ニーズに応えることができるとも考えられる。
【特許文献1】特開2005−225392号公報
【特許文献2】特開2004−308785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ピストンロッドとシリンダとの間で塑性変形させることでエネルギー吸収する機構の場合、寸法精度のバラツキからエネルギー吸収性能にもバラツキが生じる(ロスが生じる)。また、ピストンロッドに入力される荷重の作用方向がピストンロッドの軸方向からずれると、ピストンロッドがシリンダ内に円滑に収縮されず、塑性変形によるエネルギー吸収効果が充分に得られないということも考えられる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、衝突体との衝突時にアクチュエータの作動によりロッドを伸長させてフードを押し上げる構成において、フード押し上げ位置付近に所定値以上の衝突荷重が入力された場合に効率良く衝突エネルギーを吸収することができる車両用ポップアップフード装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、フード後部側をフードヒンジを介して車体側に開閉可能に支持する一方、車両に搭載されたアクチュエータが作動することによりロッドがフード上方側へ伸長してフード後部側をフード上方側へ押し上げかつその押し上げ位置にフードを保持する車両用ポップアップフード装置であって、前記フードの押し上げ状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重がロッドによるフードの押し上げ部位付近に作用した場合に、ロッドの先端部をフード後部側の押し上げ面に沿って車両後方側へ摺動させながらロッドを曲げ変形させることにより、衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収機構部を設けた、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用ポップアップフード装置において、前記フードの押し上げ状態を車両側方から見た場合に、フード後部側を押し上げているロッドの軸線とロッドの先端部が当接するフード後部側の押し上げ面とのなす角度θが95°以上140°以下の範囲に設定されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用ポップアップフード装置において、前記ロッドの先端部は、アクチュエータの非作動時における前記フード後部側の押し上げ面の傾斜角度と略同一の角度となる傾斜面を備えている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用ポップアップフード装置において、前記フード後部側におけるロッドの先端部が当接する部位には、当該当接部位を補強する補強部材が配設されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4記載の車両用ポップアップフード装置において、前記補強部材は、フード後部側に一端がヒンジボルトで固定されるフードヒンジのヒンジアームであり、前記ロッドの先端部によるフード後部側の押し上げ位置は、ヒンジボルトに対してフード幅方向に重ならないようにずれた位置に設定されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4記載の車両用ポップアップフード装置において、前記補強部材は、フードヒンジとは別体で構成されると共に補強板固定ボルトでフード後部側に固定された補強板であり、前記ロッドの先端部によるフード後部側の押し上げ位置は、補強板固定ボルトに対してフード幅方向に重ならないようにずれた位置に設定されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置において、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面の全部又は一部は、前記ロッドの先端部が当該押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際に、ロッドの先端部が請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトから離れる方向へ滑るように、予めフード幅方向に傾斜されている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置において、前記押し上げ面は、前記ロッドの先端部が当該押し上げ面を押し上げた際の押し上げ力が作用することにより所定の折れ線に沿って折れ曲がり、当該折り曲げ面上をロッドの先端部が車両後方側へ摺動することにより、ロッドの先端部が請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトから離れる、ことを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8記載の車両用ポップアップフード装置において、前記押し上げ面は、請求項5記載のヒンジアームの押し上げ面であり、前記折れ線は、車両平面視で前記ヒンジアームの回転軸線に対して非平行となるように設定されている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項7に記載の車両用ポップアップフード装置において、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面には、請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトの配置側と反対側のフード幅方向の端部に、フード前後方向に延在するフランジが設けられている、ことを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項8又は請求項9記載の車両用ポップアップフード装置において、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面には、請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトの配置側と反対側のフード幅方向の端部に、フード前後方向に延在するフランジが設けられている、ことを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明は、請求項11記載の車両用ポップアップフード装置において、前記フランジの途中部分には、当該フランジを弱体化させる低剛性部が設定されている、ことを特徴とする。
【0019】
請求項13の発明は、請求項12記載の車両用ポップアップフード装置において、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面には、請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトの配置側となるフード幅方向の端部にも、フード前後方向に延在する第2のフランジが設けられている、ことを特徴とする。
【0020】
請求項14の発明は、請求項12又は請求項13記載の車両用ポップアップフード装置において、前記低剛性部は切欠であり、当該切欠を挟んだ前後のフランジをフード幅方向にオフセットして配置し、或いは一方のフランジが他方のフランジに対して交差するように配置した、ことを特徴とする。
【0021】
請求項15の発明は、請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置において、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面に、前記ロッドの先端部が当該押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際に、ロッドの先端部が請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトに干渉しないようにロッドの先端部の移動をガイドするガイド手段を設けた、ことを特徴とする。
【0022】
請求項16の発明は、請求項15記載の車両用ポップアップフード装置において、前記ガイド手段は、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板とは別体とされ、かつ請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトを用いてフードに共締めされると共にフード上下方向に沿って延在してヒンジボルト又は補強板固定ボルトとロッドの先端部の軌道とを隔てる縦壁を有するガイドプレートである、ことを特徴とする。
【0023】
請求項17の発明は、請求項15記載の車両用ポップアップフード装置において、前記ガイド手段は、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板と一体に形成され、かつフード下方へ向けて突出してヒンジボルト又は補強板固定ボルトとロッドの先端部の軌道とを隔てる突出部である、ことを特徴とする。
【0024】
請求項18の発明は、請求項15記載の車両用ポップアップフード装置において、前記ガイド手段は、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の下面に固定されかつロッドの先端部が摺動可能なガイド溝を有する樹脂製のガイドプレートである、ことを特徴とする。
【0025】
請求項19の発明は、請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置において、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板には、請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトのボルト締結方向に凹む凹部が形成されており、ボルト締結後の状態では、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面と前記凹部に収容されたボルト頭部の端面とが略面一になるように設定されている、ことを特徴とする。
【0026】
請求項20の発明は、請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置において、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板は、フード幅方向をボルト締結方向としてフード後部側に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0027】
請求項21の発明は、請求項20記載の車両用ポップアップフード装置において、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板は、フード後部側の下面に対して略平行に配置されかつロッドの先端部が摺動する横壁と、フード後部側の下面に対して略垂直に配置されかつボルト締結部とされる縦壁と、を含んで構成されている、ことを特徴とする。
【0028】
請求項22の発明は、請求項4記載の車両用ポップアップフード装置において、前記補強部材はフードヒンジのヒンジアーム又はフードヒンジとは別体で構成された補強板であり、当該ヒンジアーム又は補強板はフード前後方向に所定の間隔を隔てて配置された複数のヒンジボルト又は補強板固定ボルトによってフード後部側に固定されており、前記ロッドの先端部はフード前後方向に隣り合うボルト締結点間に位置する部位に当接しかつ当該フード前後方向に隣り合うボルト締結点間に当該ロッドの先端部の移動ストロークが含まれている、ことを特徴とする。
【0029】
請求項23の発明は、請求項22記載の車両用ポップアップフード装置において、前記複数のボルト締結点は、フード前後方向に略一直線上に配置されている、ことを特徴とする。
【0030】
請求項24の発明は、請求項4記載の車両用ポップアップフード装置において、前記補強部材はフードヒンジのヒンジアーム又はフードヒンジとは別体で構成された補強板であり、当該ヒンジアーム又は補強板はフード前後方向に所定の間隔を隔てて配置された複数のヒンジボルト又は補強板固定ボルトによってフード後部側に固定されており、前記ロッドの先端部は前側のボルト締結点と後側のボルト締結点との間に位置する部位に当接しかつ後側のボルト締結点を越えて車両後方側へ摺動し、さらに、後側のボルト締結点を前側のボルト締結点に対してフード幅方向にずらして配置した、ことを特徴とする。
【0031】
請求項1記載の本発明によれば、車両に搭載されたアクチュエータが作動すると、ロッドがフード上方側へ伸長してフード後部側がフード上方側へ押し上げられて、その位置に保持される。
【0032】
このフードの押し上げ状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重がロッドによるフードの押し上げ部位付近に作用した場合、エネルギー吸収機構部によって所定の衝突エネルギーが吸収される。すなわち、ロッドの先端部がフード後部側の押し上げ面に沿って車両後方側へ摺動されながら、ロッドが曲げ変形されていく。これにより、衝突エネルギーが吸収される。すなわち、本発明では、ロッドの先端部をフード後部側の押し上げ面に沿って車両後方側へ摺動させ、その摺動動作を利用してロッドを曲げ変形させてエネルギー吸収する構成を採っているため、従来のように寸法精度によって塑性変形の仕方が変動したり、荷重入力方向によってピストンロッドがシリンダ内へ円滑に相対移動しないことによるエネルギー吸収ロスが大幅に削減される。
【0033】
請求項2記載の本発明によれば、フードの押し上げ位置保持状態を車両側方から見た場合に、フード後部側を押し上げているロッドの軸線とロッドの先端部が当接するフード後部側の押し上げ面とのなす角度θを95°以上140°以下の範囲に設定したので、ロッドによるフードの押し上げ部位付近に作用する衝撃力の方向が多少変動しても、ロッドの先端部はフード後部側の押し上げ面上を車両後方側へ摺動していく。すなわち、ロッドに曲げ変形を高い確度で生じさせることができる。
【0034】
請求項3記載の本発明によれば、ロッドの先端部が、アクチュエータの非作動時におけるフード後部側の押し上げ面の傾斜角度と略同一の角度となる傾斜面を備えているので、ロッドの先端部がフード後部側の押し上げ面を押し上げた際に、ロッドの先端部がフード後部側の押し上げ面に面接触状態で当接する。このため、両者間に作用する面圧が低くなり、フード後部側の押し上げ面の変形が抑制又は防止される。
【0035】
請求項4記載の本発明によれば、フード後部側におけるロッドの先端部が当接する部位に、当該当接部位を補強する補強部材が配設されているので、フード後部側にロッドの先端部が当接してもフード自体にロッドの先端部が直接当接することはない。
【0036】
請求項5記載の本発明によれば、フード後部側に一端がヒンジボルトで固定されるフードヒンジのヒンジアームによって補強部材が構成される。かかる構成を前提として、本発明では、ロッドの先端部によるフード後部側の押し上げ位置がヒンジボルトに対してフード幅方向に重ならないようにずれた位置に設定されているので、ロッドの先端部がフード後部側の押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際に、ロッドの先端部がヒンジボルトに引っ掛かることなく車両後方側へ滑っていく。すなわち、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。
【0037】
請求項6記載の本発明によれば、フードヒンジとは別体で構成されると共に補強板固定ボルトでフード後部側に固定された補強板によって補強部材が構成される。かかる構成を前提として、本発明では、ロッドの先端部によるフード後部側の押し上げ位置がヒンジボルトに対してフード幅方向に重ならないようにずれた位置に設定されているので、ロッドの先端部がフード後部側の押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際に、ロッドの先端部が補強板固定ボルトに引っ掛かることなく車両後方側へ滑っていく。すなわち、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。
【0038】
請求項7記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面の全部又は一部が予めフード幅方向に傾斜されており、この傾斜に起因してロッドの先端部は当該押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際に、ヒンジボルト又は補強板固定ボルトから離れる方向へ滑っていく。
【0039】
請求項8記載の本発明によれば、ロッドの先端部がヒンジアーム又は補強板の押し上げ面に当接しフード後部側を押し上げると、その際の押し上げ力によってヒンジアーム又は補強板の押し上げ面が所定の折れ線に沿って折れ曲がる。そして、折り曲げ面上をロッドの先端部が車両後方側へ摺動することにより、ロッドの先端部がヒンジボルト又は補強板固定ボルトから離れていく。
【0040】
請求項9記載の本発明によれば、ヒンジアームの押し上げ面にヒンジアームの回転軸線に対して非平行な折れ線が形成されるので、ヒンジアームの強度を上げることができる。すなわち、フードを過度に開けようとしたり、強閉したりする場合、ヒンジアームの押し上げ面はヒンジアームの回転軸線に対して平行な線を折れ線として折れ曲がろうとする。これに対し、本発明では、ヒンジアームの押し上げ面に設定された折れ線が車両平面視でヒンジアームの回転軸線に対して非平行とされるので、前記折れ曲がろうとする線(回転軸線に対して平行な線)と折れ線が交差する関係に立つ。このため、回転軸線に対して非平行な折れ線が、回転軸線に対して平行な折れ線の形成に対して抵抗となり、ヒンジアームの押し上げ面は回転軸線に対して平行な線で折れ曲がり難くなる。
【0041】
請求項10記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面におけるヒンジボルト又は補強板固定ボルトの配置側と反対側のフード幅方向の端部に、フード前後方向に延在するフランジを設けたので、ロッドの先端部が、予め形成された傾斜面(請求項7の場合)上を、ヒンジボルト又は補強板固定ボルトと離間する方向へ摺動していく際に、仮にこの傾斜面に起因して、ロッドの先端部がヒンジボルト及び補強板固定ボルトから離間し過ぎても、フランジによってロッドの先端部が摺動面である傾斜面から脱落するのが阻止される。
【0042】
請求項11記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面におけるヒンジボルト又は補強板固定ボルトの配置側と反対側のフード幅方向の端部に、フード前後方向に延在するフランジを設けたので、ロッドの先端部が、ロッドの先端部の押し上げ時に押し上げ面の折れ曲がりにより形成される傾斜面(請求項8、請求項9の場合)上を、ヒンジボルト又は補強板固定ボルトと離間する方向へ摺動していく際に、仮にこの傾斜面に起因して、ロッドの先端部がヒンジボルト及び補強板固定ボルトから離間し過ぎても、フランジによってロッドの先端部が摺動面である傾斜面から脱落するのが阻止される。
【0043】
請求項12記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面のヒンジボルト又は補強板固定ボルトと反対側のフード幅方向の端部にフランジを立てると、その分、ヒンジアーム又は補強板におけるフランジの形成範囲の剛性が高くなるが、本発明では、フランジの途中部分に低剛性部を設定したので、フランジは必ず低剛性部から折れる。つまり、低剛性部が折れ起点となって所定の折れ線が狙い通りに形成される。
【0044】
請求項13記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面にはヒンジボルト又は補強板取付ボルトの配置側となるフード幅方向の端部にも第2のフランジが形成されているので、フランジに低剛性部を設けたことによるヒンジアーム又は補強板の剛性低下分を第2フランジで補うことができる。
【0045】
請求項14記載の本発明によれば、低剛性部が切欠によって構成されているので、板厚を薄くする等の構成に比べれば、製作が容易である。但し、フランジに切欠を形成すると、切欠を挟む前後のフランジが対向して配置されるため、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面が折れ線に沿って折れ曲がる際に前後のフランジの切欠側の角部同士が(早い段階で)相互に干渉して折れ曲がりを阻害することも考えられる。そこで、本発明では、切欠を挟んだ前後のフランジをフード幅方向にオフセットして配置し、或いは一方のフランジが他方のフランジに対して交差するように配置したので、前後のフランジの切欠側の端部同士が(早い段階で)相互に干渉するのを避けることができる。
【0046】
請求項15記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面にガイド手段が設けられており、ロッドの先端部が当該押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際には、このガイド手段によってロッドの先端部がヒンジボルト又は補強板固定ボルトに干渉しないように、ロッドの先端部の移動がガイドされる。このため、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。
【0047】
請求項16記載の本発明によれば、ガイド手段がフード上下方向に沿って延在してヒンジボルト又は補強板固定ボルトとロッドの先端部の軌道とを隔てる縦壁を有するガイドプレートによって構成されているため、ロッドの先端部がヒンジアーム又は補強板の押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際には、縦壁によってヒンジボルト又は補強板固定ボルトとの干渉が防止される。
【0048】
ここで、上記ガイドプレートはヒンジアームとは別体とされているため、ロッドの先端部が摺動する軌道の幅や長さ、形状といった事項を任意に設定することができる。従って、設計の自由度が増す。さらに、ガイドプレートはヒンジボルト又は補強板固定ボルトを用いてフードに共締めされるため、別個独立にヒンジアーム又は補強板に固定される場合に比べて、部品点数が少なくて済む。
【0049】
請求項17記載の本発明によれば、ガイド手段がヒンジアーム又は補強板と一体に形成されかつフード下方へ向けて突出してヒンジボルト又は補強板固定ボルトとロッドの先端部の軌道とを隔てる突出部によって構成されているため、ロッドの先端部がヒンジアーム又は補強板の押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際には、突出部によってヒンジボルト又は補強板固定ボルトとの干渉が防止される。
【0050】
ここで、上記突出部はヒンジアーム又は補強板と一体に形成されるため、ガイド手段を別体で構成する場合に比べて、部品点数が少なくて済みかつ重量増加を抑制することができると共に取付作業が不要である。
【0051】
請求項18記載の本発明によれば、ガイド手段がロッドの先端部が摺動可能なガイド溝を有する樹脂製のガイドプレートによって構成されているため、ロッドの先端部はガイド溝に沿って車両後方側へ摺動することにより、ヒンジボルト又は補強板固定ボルトとの干渉が防止される。
【0052】
ここで、上記ガイドプレートはヒンジアーム又は補強板とは別体とされてヒンジアーム又は補強板の下面に固定されているため、ロッドの先端部が摺動するガイド溝の溝幅や溝長さ、溝深さ、溝形状、ガイドプレートの重さといった事項を任意に設定することができる。従って、設計の自由度が増す。さらに、ガイドプレートは樹脂製とされているので、別部品化してもそれほど重量は増えない。
【0053】
請求項19記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面にヒンジボルト又は補強板固定ボルトのボルト締結方向に凹む凹部が形成されており、ボルト締結後の状態では、ヒンジボルト又は補強板固定ボルトの押し上げ面と凹部に収容されたボルト頭部の端面とが略面一になるように設定されているので、ロッドの先端部が当該押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際には、ロッドの先端部がヒンジボルト又は補強板固定ボルトの頭部に引っ掛かることはない。このため、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。
【0054】
請求項20記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板がフード幅方向をボルト締結方向としてフード後部側に取り付けられているので、ロッドの先端部が車両後方側へ摺動する際にロッドの先端部がヒンジボルト又は補強板固定ボルトと干渉しない位置関係にすることができる。このため、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。
【0055】
請求項21記載の本発明によれば、ヒンジアーム又は補強板がフード後部側の下面に対して略平行に配置される横壁と、フード後部側の下面に対して略垂直に配置される縦壁とを含んで構成されており、横壁をロッドの先端部の摺動用に用い、縦壁をヒンジアーム又は補強板のフード後部側への取付部として用いることができる。すなわち、壁ごとに用途を一つに絞って利用することができる。このため、同一の壁にロッドの先端部の摺動面としての機能とボルト締結面としての機能とを設定する場合に比べて、設計が容易である。
【0056】
請求項22記載の本発明によれば、補強部材はフードヒンジのヒンジアーム又はフードヒンジとは別体で構成された補強板であり、当該ヒンジアーム又は補強板はフード前後方向に所定の間隔を隔てて配置された複数のヒンジボルト又は補強板固定ボルトによってフード後部側に固定されており、ロッドの先端部はフード前後方向に隣り合うボルト締結点間に位置する部位に当接される。そして、ロッドの先端部は当接部位から車両後方側へ摺動していくが、本発明では、フード前後方向に隣り合うボルト締結点間にロッドの先端部の移動ストロークが含まれているため、フードの先端部は最低でもロッドを曲げ変形させるのに必要なストローク摺動することができる。このため、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。
【0057】
請求項23記載の本発明によれば、複数のボルト締結点がフード前後方向に略一直線上に配置されているため、ヒンジアームのフード幅方向寸法を小さくすることができる。
【0058】
請求項24記載の本発明によれば、補強部材はフードヒンジのヒンジアーム又はフードヒンジとは別体で構成された補強板であり、当該ヒンジアーム又は補強板はフード前後方向に所定の間隔を隔てて配置された複数のヒンジボルト又は補強板固定ボルトによってフード後部側に固定されており、ロッドの先端部は前側のボルト締結点と後側のボルト締結点との間に位置する部位に当接される。そして、ロッドの先端部は当該部位から車両後方側へ摺動していくが、本発明では、後側のボルト締結点が前側のボルト締結点に対してフード幅方向にずらして配置されているため、ロッドの先端部は後側のボルト締結点に干渉することなく通り過ぎることができる。
【発明の効果】
【0059】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、衝突体との衝突時にアクチュエータの作動によりロッドを伸長させてフードを押し上げる構成において、フード押し上げ位置付近に所定値以上の衝突荷重が入力された場合に効率良く衝突エネルギーを吸収することができるという優れた効果を有する。
【0060】
請求項2記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドが座屈モードとなって反力が高くなるのを抑制し、エネルギー吸収性能に対する信頼性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0061】
請求項3記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部がフード後部側の押し上げ面を押し上げた際の押し上げ力によってフード後部側の押し上げ面が変形するのを抑制又は防止できるので、衝突荷重が作用した際に、ロッドの先端部をフード後部側の押し上げ面に沿って車両後方側へ円滑に摺動させることができるという優れた効果を有する。
【0062】
請求項4記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部によってフード自体が損傷を受けるのを抑制又は防止することができるという優れた効果を有する。
【0063】
請求項5記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができるので、狙い通りにロッドを曲げ変形させることができ、その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができるという優れた効果を有する。
【0064】
請求項6記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができるので、狙い通りにロッドを曲げ変形させることができ、その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができるという優れた効果を有する。
【0065】
請求項7記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部がヒンジボルト又は補強板固定ボルトに引っ掛かるのをより確実に抑制又は防止することができるという優れた効果を有する。
【0066】
請求項8記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面が所定の折れ線に沿って折れ曲がるようにするという簡単な構成で、ロッドの先端部がヒンジボルト又は補強板固定ボルトに引っ掛かるのをより確実に抑制又は防止することができるという優れた効果を有する。
【0067】
請求項9記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、フードの過開き等に対する強度を上げることができるという優れた効果を有する。
【0068】
請求項10記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部を予め設定した摺動ストロークの最後又はその近傍まで摺動させることができ、ひいてはエネルギー吸収量のバラツキを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0069】
請求項11記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、請求項10記載の発明と同様に、ロッドの先端部を予め設定した摺動ストロークの最後又はその近傍まで摺動させることができ、ひいてはエネルギー吸収量のバラツキを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0070】
請求項12記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、折れ起点が明確になり、ヒンジアーム又は補強板の押し上げ面を所定の折れ線に沿って折り曲げることに対する精度を高めることができるという優れた効果を有する。
【0071】
請求項13記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、正確な折れ線の形成とヒンジアーム又は補強板の剛性確保の両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【0072】
請求項14記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、低コストで低剛性部を設定することができると共にフードヒンジ又は補強板の押し上げ面を円滑に必要量折り曲げることができるという優れた効果を有する。
【0073】
請求項15記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができるので、狙い通りにロッドを曲げ変形させることができ、その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができるという優れた効果を有する。
【0074】
請求項16記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ガイド手段の設計の自由度を高めることができると共に構造の簡素化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0075】
請求項17記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、構造の簡素化及び軽量化を図ることができると共に組付作業工程が増加しないという優れた効果を有する。
【0076】
請求項18記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ガイド手段の設計の自由度を高めることができると共に軽量化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0077】
請求項19記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができるので、狙い通りにロッドを曲げ変形させることができ、その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができるという優れた効果を有する。
【0078】
請求項20記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができるので、狙い通りにロッドを曲げ変形させることができ、その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができるという優れた効果を有する。
【0079】
請求項21記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ヒンジアーム又は補強板の設計の容易化を図ることができ、ひいては機能分担により横壁及び縦壁の最適設計が可能になるという優れた効果を有する。
【0080】
請求項22記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ロッドの先端部の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができるので、狙い通りにロッドを曲げ変形させることができ、その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができるという優れた効果を有する。
【0081】
請求項23記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、ヒンジアームをフード幅方向に小型化することができるので、ヒンジアームの幅をあまりとれない車両に対して有効であるという優れた効果を有する。
【0082】
請求項24記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、前側のボルト締結点についてはスペースを確保できるものの、後側のボルト締結点については、前側のボルト締結点を通るフード前後方向に略同一直線上となる位置に設定することができないが、フード幅方向にはスペースを確保することができる車両に対して有利であるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
〔第1実施形態〕
【0084】
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0085】
図3には、第1実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の全体構成を示す平面図が示されている。また、図2には、右ハンドル車でドライバ側から見て右側(以下、単に「ドライバ側から見て右側」と略す。)に配置されたポップアップ機構部を拡大して示す平面図が示されている。さらに、図1には、ドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部をエンジンルーム側から見て示す拡大側面図が示されている。
【0086】
これらの図に示されるように、車両用ポップアップフード装置10は、エンジンルームを開閉するフード12の後端側両サイドにそれぞれ配設された左右一対のポップアップ機構部14を主要部として構成されている。左右のポップアップ機構部14はいずれも同一構成であるので、以下の説明においてはドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部14の構成について説明し、ドライバ側から見て左側に配置されたポップアップ機構部14の構成の説明は省略する。
【0087】
ポップアップ機構部14は、フード12を開閉可能に支持するフードヒンジ16と、歩行者等の衝突体との衝突時に作動するアクチュエータ18と、このアクチュエータ18が作動することによりフード上方側へ軸方向移動するロッド20(図4参照)と、によって構成されている。以下、この順に各構成要素について説明する。
【0088】
<フードヒンジ16の構成>
【0089】
フードヒンジ16は、フード12の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車両幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられた車体側構成部材であるカウルトップサイド22の上面部22Aに後述する取付ボルト36で固定されるヒンジベース26と、このヒンジベース26にヒンジピン(回転中心軸)28で相対回転可能に連結され、ヒンジベース26とフード12の後述する後端膨らみ部34Aとを連結するヒンジアーム30と、によって構成されている。
【0090】
なお、フード12は、車両外側に配置されて意匠面を構成するフードアウタパネル32と、エンジンルーム側に配置されると共にフードアウタパネル32を補強するフードインナパネル34と、を含んで構成されており、両者はその端末部がヘミング加工されることによって結合されている。また、フードインナパネル34の後端側はフード下方側へ膨らんでおり、これによりフード12の後端側に後端膨らみ部34Aが形成されている。さらに、フードヒンジ16は、本来的にはフード12をボディーに開閉可能に支持するためのヒンジ部品であるが、本実施形態では、車両用ポップアップフード装置10の構成要素でもある。
【0091】
各部の構成についてより具体的に説明すると、図1及び図2に示されるように、ヒンジベース26は、車両正面視で略L字状に形成されており、車両前後方向に沿って延在する狭幅板状の取付部26Aと、取付部26Aの車両幅方向内側の端部から車両上方側へ屈曲されかつ側面視で略二等辺三角形状に形成された支持部26Bと、を備えている。取付部26Aは、カウルトップサイド22の上面部22Aに取付ボルト36固定されている。
【0092】
一方、ヒンジアーム30は、車両前後方向に沿って延在する長尺状の部材であり、側面視で略L字状(上下逆向きの「へ」の字状)に形成されている。構造的には、ヒンジアーム30は、ヒンジベース26の支持部26Bに対して平行に配置される側壁部30Aと、当該側壁部30Aの上縁部からフード幅方向中央側へ向けて折り曲げられて形成されると共にフード12の後端膨らみ部34Aに対して平行に配置される頂壁部30Bと、を含んで構成されており、一般断面の縦断面形状は上下逆向きのL字状とされている。このうち、頂壁部30Bの前部下面(図1に矢印Aで示す範囲)が、後述するロッド20の先端部(押圧部54)によって押し上げられて当該先端部(押圧部54)が摺動していく押し上げ面(摺動面)38とされている。但し、実際には、後述するロッド20がフード上方側へ軸方向移動してその先端部の押圧部54が当接する位置よりもフード前方側の面は、摺動面としては使用しない。
【0093】
また、頂壁部30Bの前端部の内側縁はフード下方側へ折り曲げられており、側壁部30Aと平行な一対のフランジを形成している(以下、この部分を「追加側壁部30C」(図9に図示)と称す)。ヒンジアーム30は、追加側壁部30Cが形成された部位では、コ字状の断面形状とされている。なお、この追加側壁部30Cについては、後述する切欠46との関係で第5実施形態として説明することにする。
【0094】
図2に示されるように、上記フードヒンジ16の側壁部30Aは、ヒンジベース26の支持部26Bの車両幅方向内側に隣接して配置される後部30A1と、後部30A1に対してフード幅方向中央側へオフセットして配置されかつフード前方側へ延設された前部30A2と、後部30A1と前部30A2とを斜めに繋ぐ中間部30A3と、によって構成されている。フードヒンジ16の頂壁部30Bも同様に構成されており、ヒンジベース26の支持部26B側に配置される後部30B1と、フード12の後端膨らみ部34Aの下面に当接状態で重ねられる前部30B2と、後部30B1と前部30B2とを斜めに繋ぐ中間部30B3とを備えている。
【0095】
ヒンジアーム30の側壁部30Aの後端部は、ヒンジピン28によってヒンジベース26の支持部26Bの上端部にヒンジ結合されている。従って、ヒンジアーム30は、ヒンジピン28を回転中心として車両上下方向へ回動可能とされている。なお、側壁部30Aの後端部には、鉤状に屈曲された開度規制用のストッパ40が半径方向に突出されており、これに対応してヒンジベース26の支持部26Bの上端部には、ストッパ40と干渉してそれ以上のヒンジアーム30の回動を規制する開度規制用の規制部42が一体に形成されている。
【0096】
また、ヒンジアーム30の頂壁部30Bの前部30B2は、フード12の後端膨らみ部34Aの下面に沿って略車両前後方向に延出されており、前後二点で締結具であるヒンジボルト44及び図示しないウエルドナットによってフード12の後端膨らみ部34Aに締結(固定)されている。なお、ヒンジボルト44のボルト締結方向はフード上下方向であり、組付に際してはフード下方側からヒンジボルト44が図示しないウエルドナットに螺入されるようになっている。従って、ヒンジボルト44の締結後の状態では、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aが頂壁部30Bの下面からフード下方側へ突出した状態で配置されるようになっている(図1参照)。
【0097】
さらに、上述した側壁部30Aには、フード後方側に配置されたヒンジボルト44のボルト頭部44Aと対向する位置に、側面視で矩形状とされた低剛性部としての切欠46が形成されている。切欠46は、側壁部30Aの下縁側から上縁側へ向けて切り欠かれている。なお、切欠46は、側壁部30Aと頂壁部30Bとの接続部位である稜線にかかるように設定されている。
【0098】
なお、上記の如く構成されたヒンジアーム30を機能的に見た場合、側壁部30Aの後部30A1がヒンジ側連結部として機能し、頂壁部30Bの前部30B2がフード側連結部として機能し、両機能を併有した部品がヒンジアーム30といえる。
【0099】
<アクチュエータ18の構成>
【0100】
アクチュエータ18は、略円柱状に形成されており、平面視でヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける押し上げ面38の前部下方に略車両上下方向を軸方向として配置されている。アクチュエータ18にはブラケット48が一体的に設けられており、ブラケット48がカウルトップサイド22の側面部22Bにボルト50で固定されている。また、アクチュエータ18のハウジング52の内部には、ガス発生剤で構成されたガス発生手段及びガス発生剤を燃焼させてガスを発生させる点火装置が配設されている。なお、ガス発生剤を使ったタイプの他に、ハウジング52内に高圧ガスが封入されて点火装置が作動することにより高圧ガスを隔成している隔壁を破断させるタイプを利用することも可能である。
【0101】
また、上記アクチュエータ18を作動させる点火装置は、コンソールボックスの下方等に配設された図示しないECU(制御手段)と接続されている。ECUは、フロントバンパ等に配設されて歩行者等の衝突体との衝突を検知又は予知する衝突検知センサ(衝突検知手段)と接続されている。
【0102】
<ロッド20の構成>
【0103】
ロッド20は、アクチュエータ18のハウジング52内に同軸上に収容されている。ロッド20は真直棒状の部材とされており、その下端部にはハウジング52内に緊密に収容されたピストン(図示省略)が設けられている。ハウジング52内で発生したガスは、このピストンの推進力として作用するようになっている。また、ロッド20の上端部には、ロッド20よりも大径とされた押圧部54が取り付けられている。この押圧部54の先端部は緩やかな曲面形状に形成されており、頂壁部30Bの押し上げ面38の前端部近傍部位と上下に対向して配置されている。より正確には、図2に示されるように、押圧部54は、押し上げ面38のフード幅方向外側に配置されている。換言すれば、押圧部54は、車両平面視で前後一対のヒンジボルト44に対してフード幅方向にずれた位置(オーバーラップしない位置)に配置されており、かつ前後一対のヒンジボルト44の間(フード前方側のヒンジボルト44の近傍)に配置されている。なお、このような位置関係になるのは、周辺部品との関係で車両搭載スペースが限られる等の理由による。
【0104】
さらに、図4に示されるフード12の押し上げ位置保持状態において、ロッド20の軸線とヒンジアーム30の押し上げ面38とのなす角度θは、95°以上140°以下の範囲に設定されている。なお、単に「ロッド20の軸線とヒンジアーム30の押し上げ面38とのなす角度」というとロッド20の軸線に対して車両後方側の角度と車両前方側の角度の二つがあるが、ここでいう「ロッド20の軸線とフードヒンジ30の押し上げ面38とのなす角度θ」は、前者の方の角度のことを指しており、鈍角の方である。
【0105】
(本実施形態の作用並びに効果)
【0106】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0107】
図1に示される状態が車両用ポップアップフード装置10の非作動状態である。この状態のときには、アクチュエータ18が非作動状態にあるため、ロッド20はアクチュエータ18のハウジング52内に収容された状態にある。また、図2に示されるように、ロッド20の先端部の押圧部54は、ヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける押し上げ面38の前端側の直下に対向して配置されており、かつヒンジボルト44に対してフード幅方向にずれた位置に位置されている(図2参照)。
【0108】
この状態から、歩行者等の衝突体と前面衝突すると、図示しない衝突検知手段によって衝突体と前面衝突したことが検知され、図示しないECUに衝突信号が出力される。ECUでは、入力された衝突信号に基づいて車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきか否かを判断し、車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきと判断すると、アクチュエータ18に作動信号が出力される。これにより、アクチュエータ18内の図示しない点火装置が点火し、ガス発生剤を燃焼させて所定量のガスをハウジング52内に発生させる。なお、アクチュエータ18が高圧ガス封入タイプの場合には、点火装置が作動することにより隔壁が破断等されることにより所定量のガスがハウジング52内に発生する。また、プリクラッシュセンサを搭載している場合には、前面衝突が予知された段階で上記の作動となる。
【0109】
上記の如くして発生したガスは、ハウジング52内に緊密に収容されたピストンに作用し、ピストンをハウジング52の軸方向先端側(即ち、フード上方側)へ押圧する。ピストンには、ロッド20の下端部が連結されているので、ピストンがハウジング52内を上昇すると、ロッド20がフード上方側へ向けて軸方向移動する。その結果、図4に示されるように、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38に当接し、ヒンジアーム30をヒンジピン28回りに図4の時計方向(矢印B方向)へ回動させることにより、フード12の後端側(後端膨らみ部34A)がフード上方側へ押し上げられる。このとき、ヒンジアーム30の側壁部30Aの前部30A2側は切欠46の形成部位の剛性が他の部位に比べて低くなっているため、切欠46を起点としてヒンジアーム30が屈曲される。なお、ヒンジアーム30の回動ストロークは、側壁部30Aの後端部に形成されたストッパ40がヒンジベース26の規制部42に当接することによって規制されるので、ヒンジアーム30は所定量以上は回動しない。すなわち、フード12の後端側のポップアップ量(リフトアップ量)は、予め決められている。
【0110】
図4に示されるフード12の押し上げ位置保持状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重が、ロッド20によるフード12の押し上げ位置付近に作用した場合、図5に示されるように、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38に沿って車両後方側へ摺動される。そして、ロッド20の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38上を車両後方側へ摺動するのに伴ってロッド20が根元から曲げ変形(塑性変形)される。このときのロッド20の曲げ変形により、衝突エネルギーが吸収されて、衝突体への入力荷重(反力)が低減される。なお、押し上げ面38上をロッド20の押圧部54が摺動していく際に、ヒンジアーム30の側壁部30Aは切欠46が開く方向へ変形される。
【0111】
すなわち、本実施形態に係る車両用ポップアップフード装置10では、ロッド20の先端部の押圧部54をフード12の後端側に連結されたヒンジアーム30の押し上げ面38に沿って車両後方側へ摺動させ、その摺動動作を利用してロッド20を根元から曲げ変形させてエネルギー吸収する構成を採っているため、従来のようにエネルギー吸収機構の寸法精度によって塑性変形の仕方が変動したり、衝突荷重の入力方向によってピストンロッドがシリンダ内へ円滑に相対移動しないことによるエネルギー吸収ロスが大幅に削減される。その結果、本実施形態によれば、衝突体との衝突時にアクチュエータ18の作動によりロッド20を伸長させてフード12の後端側を押し上げる構成において、フード押し上げ位置付近に所定値以上の衝突荷重が入力された場合に効率良く衝突エネルギーを吸収することができる。
【0112】
また、本実施形態では、フード12の押し上げ位置保持状態を車両側方から見た場合に、フード後端側を押し上げているロッド20の軸線とロッド20の先端部の押圧部54が当接するフード後端側の押し上げ面38とのなす角度θが95°以上140°以下の範囲に設定されているので、フード12の押し上げ位置付近に作用する衝撃力の方向が多少変動しても、ロッド20の押圧部54はフード後端側の押し上げ面38上を車両後方側へ摺動していく。すなわち、仮に上記角度θが90°の場合には、衝突荷重がロッド20の軸方向に作用するので、ロッド20が座屈する可能性がある。従って、角度θは90°よりも大きくなくてはならず、誤差を見込むと95°以上であるのがよい。また、角度θが140°を超えると、ロッド20の押圧部54と押し上げ面38との間に作用する摩擦力が小さくなり過ぎてロッド20の押圧部54が押し上げ面38上を滑り、ロッド20が充分に曲げ変形しない。従って、角度θは140°以下であるのがよい。この範囲に設定しておけば、ロッド20に曲げ変形を高い確度で生じさせることができ、ロッド20が座屈モードとなって反力が高くなるのを抑制し、エネルギー吸収性能に対する信頼性を向上させることができる。
【0113】
さらに、本実施形態では、フード後端側におけるロッド20の先端部の押圧部54が当接する部位に、当該当接部位を補強する補強部材としてヒンジアーム30を配設したので、フード後端側にロッド20の押圧部54が当接してもフード12自体にロッド20の押圧部54が直接当接することはない。従って、ロッド20の押圧部54によってフード12自体が損傷を受けるのを抑制又は防止することができる。
【0114】
加えて、本実施形態では、ロッド20の先端部の押圧部54によるフード後端側の押し上げ位置がヒンジボルト44のボルト頭部44Aに対してフード幅方向に重ならないようにずれた位置に設定されているので、ロッド20の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38上を車両後方側へ摺動する際に、ロッド20の押圧部54がヒンジボルト44のボルト頭部44Aに引っ掛かることなく車両後方側へ滑っていく。すなわち、本実施形態では、ヒンジアーム30にヒンジボルト44のボルト頭部44Aに対する干渉回避構造或いは干渉回避手段を付加したので、ロッド20の押圧部54の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。その結果、狙い通りにロッド20を曲げ変形させることができ、ひいては衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができる。
【0115】
この点について補足すると、フードに衝突荷重が作用した際(初期)にロッドの先端部がヒンジボルト等の締結具に引っ掛かると、(仮にロッド20の軸線と押し上げ面38との角度θが上記の範囲に設定されていたとしても、)ロッドはその軸方向の両端部が拘束された状態(ロッドの下端部はアクチュエータに拘束され、ロッドの上端部は締結具の頭部に拘束された状態)となり、ロッドの先端部がヒンジアームに沿って車両後方側へ摺動せず、ロッドの軸方向中間部が折れ曲がる「座屈モード」になる可能性がある。その場合、衝突体に対する入力荷重(反力)が増加し、狙ったエネルギー吸収性能が得られない。しかし、本実施形態によれば、ロッド20の先端部の押圧部54によるフード後端側の押し上げ位置を、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aに対してフード幅方向にオフセットさせたので、このような事態は生じない点で非常に優れている。
【0116】
〔第2実施形態〕
【0117】
次に、図6を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する(第3実施形態以降も同様)。
【0118】
図6に示されるように、この第2実施形態では、ロッド20の先端部に設けられた押圧部56の端部を、ヒンジアーム30の押し上げ面38を突き上げるときの押し上げ面38の傾斜角度に合致する傾斜面58で構成した点に特徴がある。具体的には、通常時(車両用ポップアップフード装置10の非作動時)のときの押し上げ面38の傾斜角度に合致する傾斜面58が押圧部56の端面に形成されている。
【0119】
(作用・効果)
【0120】
上記構成によれば、アクチュエータ18が作動して、ロッド20がフード上方側へ軸方向移動し、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38を押し上げた際、押圧部56の傾斜面58が押し上げ面38に面接触状態で接触する。従って、仮にロッド20の押圧部が押し上げ面38に点接触状態で当接した場合に比べて接触面の面圧が低くなり、その分、押し上げ面38(ヒンジアーム30)に変形が生じ難くなる。そして、押し上げ面38の変形が少ないことにより、衝突荷重が作用したときに、ロッド20の先端部(押圧部56)をヒンジアーム30の押し上げ面38に沿って車両後方側へ円滑に摺動させることができる。
【0121】
補足すると、フード12がポップアップされた際にも、ヒンジアーム30の回動がストッパ40によって規制されるため、ロッド20の先端部がヒンジアーム30の押し上げ面38を強圧するが、このときの押圧力よりも、アクチュエータ18が作動してロッド20の先端部がヒンジアーム30を押し上げ始めたとき(最初に当接したとき)の方が押し上げ面38には強い力が作用する。従って、このタイミングで面接触状態となるようにロッド20の先端部に傾斜面58を設定するのが最も効果的である。
【0122】
〔第3実施形態〕
【0123】
次に、図7を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第3実施形態について説明する。
【0124】
図7に示されるように、この第3実施形態では、フードヒンジ16のヒンジアーム30とは別体で構成された補強部材としての補強板60がヒンジアーム30の前方側に配設されている。補強板60の断面形状はヒンジアーム30の前部と同様にコ字状とされており、前後2本の補強板固定ボルト62でフード12の後端膨らみ部34Aに固定されている。
【0125】
アクチュエータ18及びロッド20は、補強板60の下方側に上下に対向して配設されている。従って、アクチュエータ18及びロッド20は、ヒンジアーム30とは対向していないレイアウトになっている。さらに、ロッド20の先端部の押圧部54は、車両平面視で補強板固定ボルト62に対してフード幅方向にずれた位置に配置されている。
【0126】
(作用・効果)
【0127】
上記構成によれば、アクチュエータ18が作動すると、ロッド20がフード上方側へ軸方向移動し、押圧部54が補強板60の頂壁部60Aの押し上げ面38に当接する。押圧部54による補強板60の押し上げ位置は補強板固定ボルト62に対してフード幅方向に重ならないようにずれた位置に設定されているので、押圧部54が補強板60の押し上げ面38上を車両後方側へ摺動する際に、押圧部54が補強板固定ボルト62のボルト頭部62Aに引っ掛かることなく車両後方側へ滑っていく。すなわち、ロッド20の先端部の押圧部54の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。よって、この実施形態においても、狙い通りにロッド20を曲げ変形させることができ、その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができる。
【0128】
しかも、本実施形態では、ヒンジアーム30とは別体で補強板60を設け、当該補強板60の押し上げ面38上をロッド20の押圧部54が摺動するように構成したので、このような部品レイアウトを採らざるを得ないような車種(車体構造)に対して有効である。
【0129】
なお、図7に示される構成では、補強板60をヒンジアーム30のフード前方側に所定の隙間をあけて配置し、補強板60のみに押し上げ面38を設定したが、これに限らず、両部材をフード前後方向に当接(連続)させて、補強板60とヒンジアーム30の前端部とに跨って押し上げ面38が設定されるようにしてもよい。
【0130】
〔第4実施形態〕
【0131】
次に、図8を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第4実施形態について説明する。
【0132】
図8に示されるように、この実施形態では、二分割構造とされたヒンジアーム64に対して本発明を適用した点に特徴がある。すなわち、ヒンジアーム64は、側面形状が第1実施形態で説明したヒンジアーム30と略同様形状とされたヒンジロアアーム66と、このヒンジロアアーム66の前端部にヒンジピン68で相対回転可能に連結された平面視で直線状のヒンジアッパアーム70と、によって構成されている。なお、ヒンジロアアーム66は、フード幅方向外側の側壁部66A及び頂壁部66Bを備えて一般断面がL字状とされている点で第1実施形態のヒンジアーム30と同様であるが、ヒンジアッパアーム70との干渉を避けるため、頂壁部66Bの前端部及びフード幅方向内側の追加側壁部については備えていない。また、ヒンジアッパアーム70は、車両正面視で断面形状がコ字状とされている。通常時においては、ヒンジアッパアーム70の側壁部70Aはヒンジロアアーム66の側壁部66Aに重なるように配置された状態でシェアピン72で結合されている。シェアピン72は、所定値以上のせん断荷重が作用することにより破断するようになっている。
【0133】
また、この構造においても、ロッド20とフード12の押し上げ位置保持状態のときの押し上げ面38とのなす角度θは、第1実施形態と同様に、95°以上140°以下の範囲に設定されている。
【0134】
(作用・効果)
【0135】
上記構成によっても、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。すなわち、アクチュエータ18が作動してロッド20がフード上方側へ軸方向移動すると、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアッパアーム70の頂壁部70Bの下面(押し上げ面38)に当接して、これを押し上げる。そして、シェアピン72に作用するせん断荷重が所定値に達すると、シェアピン72が破断して、ヒンジアッパアーム70がヒンジピン68回りに図8の矢印C方向へ相対回転する。これにより、フード12が押し上げ位置保持状態に保持される。その後、衝突荷重がフード上方側から作用すると、押圧部54がヒンジアッパアーム70の押し上げ面38に沿って車両後方側へ摺動していき、ロッド20をその根元から折り曲げていく。よって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0136】
〔第5実施形態〕
【0137】
次に、図9〜図13を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第5実施形態について説明する。
【0138】
この第5実施形態では、ヒンジアーム30のヒンジアーム面(押し上げ面38)を傾けることで、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジボルト44のボルト頭部44Aに干渉するのを避けるようにした点に特徴がある。
【0139】
具体的に説明すると、図9〜図11に示される例では、ヒンジアーム30の全体形状及び構造は前述した第1実施形態の場合と同様とされており、その前部は側壁部30A、頂壁部30B、及び追加側壁部30Cから成るコ字状に形成されている。
【0140】
上記ヒンジアーム30のフード幅方向外側の側壁部30Aにおける長手方向の所定位置(ロッド20の押圧部54による押し上げ位置よりも若干フード後方側)には、低剛性部としての切欠46が形成されている。この切欠46は第1実施形態で説明したものと同一構成であり、側壁部30Aの剛性を低下させるべく、側壁部30Aの下縁側から垂直に切り欠かれて側壁部30Aを前後に分断し、かつ側壁部30Aの上縁を通って頂壁部30Bの板厚まで食い込むことで、側壁部30Aと頂壁部30Bとの稜線80を横断するように形成されている。寸法的には、図10に示されるように、切欠46の切欠幅a及び平面視での切欠長さbは、押圧部54の外径φよりも小さく設定されている。なお、切欠幅aはヒンジアーム30の板厚の2倍程度は必要であるが、あまり切欠幅aが大きいと、押圧部54が車両後方側へ摺動する際に切欠46に嵌ってしまう可能性があるので、板厚の2倍以上で押圧部54の外径φよりも小さい程度が好ましい。
【0141】
なお、切欠46の形状は特に限定されず、スリット状のものでもよいし、上下逆向きのV字状、U字状等でもよい。また、上記構成では、低剛性部として切欠46を設定したが、これに限らず、ビードやノッチ等でもよい。
【0142】
一方、反対側の追加側壁部30Cは、前後一対のヒンジボルト44の二箇所の締結位置をフード前後方向に包含する範囲に亘って形成されている。そして、頂壁部30Bのフード12への固定面82の後端内側の角部が四分円形状にカットされており、この切除部84に至るまで追加側壁部30Cが形成されている。つまり、追加側壁部30Cが存在しなくなった切除部84で剛性が急変し、もう一つの低剛性部が設定される構成である。そして、切欠46と切除部84とを結んだ線分Qが折れ線とされている。
【0143】
(作用・効果)
【0144】
上記構成によれば、図11(A)に示される状態が通常時の状態であり、この状態では、ヒンジアーム30の押し上げ面38は傾斜されていない。この状態から、図11(B)に示されるように、アクチュエータ18が作動し、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38を押し上げ位置(図10の押圧部54の位置)にて押し上げると、その際の押し上げ力によって頂壁部30Bが押し上げられた側(頂壁部30Bのフード幅方向外側)に傾く。つまり、折れ線Qで頂壁部30Bが折れ曲がり、これにより傾斜面86が形成される。その結果、ロッド20の先端部の押圧部54が押し上げ面38の傾斜面86上を車両後方側へ摺動する際に、ヒンジボルト44から離間する方向へ摺動していく。
【0145】
このように、本実施形態によれば、頂壁部30Bにロッド20の押圧部54によって押し上げられた際に折れ線Qが形成されるように切欠46及び切除部84を設定するといった比較的簡単な構成で、ロッド20の先端部の押圧部54の挙動(移動軌跡)をコントロールすることができる。その結果、本実施形態によれば、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジボルト44に引っ掛かるのをより確実に抑制又は防止することができる。
【0146】
しかも、低剛性部が切欠46によって構成されているので、板厚を薄くする等の構成に比べれば、製作が容易である。従って、低コストで低剛性部を設定することができると共にフードヒンジ16の押し上げ面38を形成する頂壁部30Bを円滑に必要量折り曲げることができる。
【0147】
また、ヒンジアーム30の頂壁部30Bの固定面82にフード前後方向に対して所定角度傾斜した斜め方向の折れ線Qが形成されるので、ヒンジアーム30の強度を上げることができる。すなわち、フード12を過度に開けようとしたり、強閉したりする場合、ヒンジアーム30の押し上げ面38はヒンジアーム30の回転軸線Rに対して平行な線S(最後尾に位置するボルト締結点)を折れ線Sとして折れ曲がろうとする。これに対し、本実施形態では、ヒンジアーム30の固定面82に設定された折れ線Qが車両平面視でヒンジアーム30の回転軸線Rに対して交差する(非平行とされる)ので、折れ曲がろうとする線(回転軸に対して平行な線S)と折れ線Qとが交差する関係に立つ。このため、回転軸線Rに対して非平行な折れ線Qが、回転軸線Rに対して平行な折れ線Sの形成に対して抵抗となり、ヒンジアーム30の頂壁部30Bは回転軸線Rに対して平行な線Sで折れ曲がり難くなる。その結果、フード12の過開き等に対する強度を上げることができる。
【0148】
さらに、ヒンジアーム30の押し上げ面38の傾斜方向側には側壁部30Aが控えているので、仮にこの傾斜面86に起因して、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジボルト44から離間し過ぎても、側壁部30Aによってロッド20の押圧部54が押し上げ面38から脱落することが阻止される。その結果、ロッド20の先端部の押圧部54を予め設定した摺動ストロークの最後又はその近傍まで摺動させることができ、ひいてはエネルギー吸収量のバラツキを抑制することができる。なお、ロッド20の押圧部54が押し上げ面38から脱落することが阻止される結果、フード12への損傷を防止することができるという効果も得られる。
【0149】
また、ヒンジアーム30の押し上げ面38のヒンジボルト44と反対側のフード幅方向の端部に側壁部30Aを立てると、その分、側壁部30Aの形成範囲のヒンジアーム30の剛性が高くなるが、本実施形態では、側壁部30Aの途中部分に切欠46を設定したので、側壁部30Aは必ず切欠46の形成部位から折れる。つまり、切欠46が折れ起点となって所定の折れ線Qが狙い通りに形成される。その結果、折れ起点が明確になり、ヒンジアーム30の頂壁部30Bを所定の折れ線Qに沿って折り曲げることに対する精度を高めることができる。
【0150】
さらに、本実施形態では、ヒンジアーム30の頂壁部30Bのフード幅方向内側にも側壁部30Aと平行な追加側壁部30Cを形成したので、側壁部30Aに切欠46を設けたことによるヒンジアーム30の剛性低下分を追加側壁部30Cで補うことができる。その結果、正確な折れ線Qの形成とヒンジアーム30の剛性確保の両立を図ることができる。
【0151】
<第5実施形態のバリエーション1>
【0152】
図12に示される例は、上記寸法a、b、φの関係(a<φ、b<φ)で切欠46を設定した場合の発展形のバリエーションである。
【0153】
仮に、側壁部30Aに切欠幅aが狭い切欠46を形成すると、図12(A)に示されるように、切欠46を挟む前後のフランジ88、90が対向して配置されるため、頂壁部30Bが折れ線Qで折れ曲がる際に、前後のフランジ88、90の切欠側の下端角部同士が(早い段階で)相互に干渉して折れ曲がりを阻害することも考えられる。
【0154】
そこで、図12(B)に示される例では、切欠46を挟んだ前後のフランジ92、94をフード幅方向にオフセットして配置させている。このようにすれば、前後のフランジ92、94の切欠側の下端角部同士が相互に干渉する問題は解消される。なお、オフセットの関係が逆になると、ロッド20の押圧部54が押し上げ面38上を車両後方側へ摺動する際に、後側のフランジに押圧部54が引っ掛かるので、オフセット関係は図12(B)のように設定するのがよい。
【0155】
また、図12(C)に示される例では、切欠46の前後のフランジ96、98のうち、前側のフランジ96を予めフード幅方向外側へ開くように折り曲げられ、フード前後方向に見たときに、前側のフランジ96が後側のフランジ98に対して交差するように形成されている。このようにしても前側のフランジ96の下端角部は後側のフランジ98の下端角部に対してフード幅方向外側にずれているため、下端角部同士が相互干渉する問題は解消される。
【0156】
<第5実施形態のバリエーション2>
【0157】
一方、図13に示される例では、ロッド20の先端部の押圧部54による押し上げ力が作用することによって頂壁部30Bに傾斜面86が形成されるのでなく、頂壁部30Bに予め傾斜面99を設けておく点に特徴がある。なお、この例では、上述した切欠46を側壁部30Aに形成していないため、反対側の追加側壁部30Cを設けていない構成(車両前後方向に見て略L字状の断面形状)とされている。
【0158】
上記構成によっても、傾斜面99上を押圧部54が摺動することにより、押圧部54をヒンジボルト44のボルト頭部44Aから離間させることができる。
【0159】
〔第6実施形態〕
【0160】
次に、図14〜図16を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第6実施形態について説明する。
【0161】
この第6実施形態では、ヒンジアーム100にロッド20の先端部の押圧部54の摺動をガイドするガイド手段を設けた点に特徴がある。
【0162】
図14に示される例では、ヒンジアーム100の前部の断面形状が側壁部100Aと頂壁部100Bから成るL字状とされている。頂壁部100Bの幅方向寸法はフード12の後端膨らみ部34Aの幅方向寸法に略一致されており、頂壁部100Bが後端膨らみ部34Aの下面に重ねられた状態で、後述するガイドプレート102と共にヒンジボルト44によって締結(固定)されている。また、ヒンジアーム100が固定された状態では、側壁部100Aはフード幅方向外側に配置されている。
【0163】
上記ヒンジアーム100の頂壁部100Bの下面には、ヒンジアーム100とは別体で構成されかつ車両前後方向に見てL字状に形成されたガイド手段としてのガイドプレート102が配置されている。ガイドプレート102も縦壁としての側壁部102Aと頂壁部102Bとを備えているが、頂壁部102Bの幅方向寸法はヒンジアーム100の頂壁部100Bの半分程度とされている。また、側壁部102Aの高さは、ヒンジアーム100の側壁部100Aの高さから頂壁部100Bの板厚を引いた高さに設定されている。
【0164】
組付に際しては、ガイドプレート102をヒンジアーム100のフード幅方向内側に片寄せて配置し、ガイドプレート102の頂壁部102B、ヒンジアーム100の頂壁部100B、後端膨らみ部34Aを三枚重ねの状態とした上で、ヒンジボルト44で共締めされている。組付後の状態では、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aはガイドプレート102の頂壁部102B側に位置し、フード側方から見た場合、ボルト頭部44Aが側壁部102Aによって見えないようになっている。つまり、ガイドプレート102の側壁部102Aの高さは、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aを覆う程度に設定されていればよい。
【0165】
さらに、ヒンジアーム100の側壁部100Aとガイドプレート102の側壁部102Aとの間には、ロッド20の先端部の押圧部54が摺動する軌道104が形成されている。
【0166】
(作用・効果)
【0167】
上記構成によれば、ヒンジアーム100の頂壁部100Bのフード幅方向中間部にヒンジボルト44のボルト頭部44Aとロッド20の押圧部54とを隔成する縦壁(ガイドプレート102の側壁部102A)が形成されるので、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム100の押し上げ面38上を軌道104に沿って車両後方側へ摺動する際には、ガイドプレート102の側壁部102Aによってロッド20の押圧部54がヒンジボルト44のボルト頭部44Aと干渉することが防止される。これにより、ロッド20の押圧部54は、ヒンジアーム100の押し上げ面38を軌道104に沿って車両後方側へ円滑に摺動していく。
【0168】
ここで、上記ガイドプレート102はヒンジアーム100とは別体とされているため、ロッド20の押圧部54が摺動する軌道104の幅や長さ、形状といった事項を任意に設定することができる。従って、設計の自由度が増す。さらに、ガイドプレート102はヒンジボルト44を用いてフード12の後端膨らみ部に共締めされるため、別個独立にヒンジアーム100に固定される場合に比べて、部品点数が少なくて済む。その結果、本実施形態によれば、ロッド20の押圧部54の移動をガイドするガイド手段の設計の自由度を高めることができると共に構造の簡素化を図ることができる。
【0169】
なお、上記構成の変形例として、ヒンジアーム100とガイドプレート102の配置を逆にしてもよい。すなわち、ヒンジアーム100をガイドプレートとし、ガイドプレート102をヒンジアームとしてもよい。この場合においても、ヒンジアームの側壁部(側壁部102A)が干渉回避の隔壁となり、軌道104も確保される。更に補足すると、この構成の場合、ガイドプレート(ヒンジプレート100)の押し上げ面38上を押圧部54が車両後方側へ摺動していくことになるが、その場合のガイドプレートは本発明における補強部材に相当し、ヒンジボルト44は両方の部材を共締めしているので、補強板固定ボルトに相当するものとして解釈すればよい。
【0170】
<第6実施形態のバリエーション1>
【0171】
図15に示される例では、ガイド手段がヒンジアーム106に一体に形成されている点に特徴がある。具体的には、ヒンジアーム106は側壁部102Aと頂壁部102Bとを備えたL字状に形成されており、頂壁部102Bの幅方向中間部にはフード下方側へ突出するガイド手段としての突出部108が一体に形成されている。突出部108の断面形状はU字状とされ、側壁部102Aに対して平行に立設されている。これにより、頂壁部102Bにおける突出部108と側壁部102Aとの間に、ロッド20の押圧部54が摺動する軌道104が形成されている。また、頂壁部102Bにおける突出部108よりもフード幅方向内側の部分にヒンジボルト44のボルト締結点が設定されている。
【0172】
上記構成によっても、図14に示される例と同様に、突出部108によってボルト締結面とロッド20の押圧部54の軌道104とが突出部108によって隔成されるので、ロッド20の押圧部54がヒンジボルト44のボルト頭部44Aに干渉するのを防止することができる。さらに、突出部108はヒンジアーム106と一体に形成されるため、ガイド手段を別体で構成する場合に比べて、部品点数が少なくて済みかつ重量増加を抑制することができると共に取付作業が不要である。その結果、この例によれば、構造の簡素化及び軽量化を図ることができると共に組付作業工程が増加しないというメリットが得られる。
【0173】
<第6実施形態のバリエーション2>
【0174】
図16に示される例では、金属製のヒンジアーム110の下面にガイド手段としての樹脂製のガイドプレート111が取り付けられている。この樹脂製のガイドプレート111は平板状に形成されており、押圧部54が摺動可能なガイド溝112が一体に形成されている。また、ガイドプレート111のフード幅方向内側の前後二箇所には、一対の四分円状の欠損部114が形成されている。この欠損部114が形成された部分ではヒンジアーム110の下面が露出しており、かかる欠損部114においてヒンジボルト44がフード12の後端膨らみ部34Aに螺合されることにより、ヒンジアーム110がフード12の後端膨らみ部34Aに締結固定されている。
【0175】
なお、ガイド溝112の始端部112Aは、前後一対のボルト締結点の間に設定されている。また、ガイド溝112は、始端部112Aからフード幅方向外側へ緩やかに抜けてフード後方側へ続くように形成されている。
【0176】
上記構成によっても、図14に示される例と同様に、ガイドプレート111のガイド溝112の非形成部分によってボルト締結面とロッド20の押圧部54の軌道(ガイド溝112)とが隔成されるので、ロッド20の押圧部54がヒンジボルト44のボルト頭部44Aに干渉するのを防止することができる。
【0177】
加えて、ロッド20の押圧部54が摺動するガイド溝112の溝幅や溝長さ、溝深さ、溝形状、ヒンジアーム110の重さといった事項を任意に設定することができる。従って、設計の自由度が増す。さらに、ヒンジアーム110は樹脂製とされているので、別部品化してもそれほど重量は増えない。その結果、この例によれば、ガイド手段の設計の自由度を高めることができると共に軽量化を図ることができる。
【0178】
なお、図16に示される例では、ガイド溝112を備えたガイドプレート111をヒンジアーム110と別体で構成したが、ヒンジアームを所定の強度及び剛性が得られる樹脂材料で製作すれば、ガイドプレート111に相当する凸部をヒンジアームに一体に形成することができる。この場合、図16に示される構成に比べて、部品点数が少なくて済みかつ重量増加を抑制することができると共にガイドプレートの取付作業が不要である。よって、この構成の場合、構造の簡素化及び軽量化を図ることができると共に組付作業工程が増加しないというメリットが得られる。
【0179】
〔第7実施形態〕
【0180】
次に、図17を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第7実施形態について説明する。
【0181】
この第7実施形態では、ヒンジアーム120の頂壁部120Aにフード上方(ボルト締結方向)側へ凹む一対の凹部122が形成されており、この凹部122にヒンジボルト44のボルト頭部44Aを納めた点に特徴がある。ボルト締結後の状態では、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aの端面と頂壁部120Aの押し上げ面38とが略面一になるように設定されている。
【0182】
(作用・効果)
【0183】
上記構成によれば、ロッド20の押圧部54がヒンジアーム120の押し上げ面38上を車両後方側へ摺動する際には、ロッド20の押圧部54がヒンジボルト44のボルト頭部44Aに引っ掛かることはない。つまり、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aの端面は頂壁部120Aの押し上げ面38と略面一に設定されているため、ボルト頭部44Aの端面も押し上げ面38の一部として機能するので、この部分を押圧部54が通過しても何ら引っ掛かることはない。このため、ロッド20の押圧部54の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。その結果、狙い通りにロッド20を曲げ変形させることができ、その結果、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができる。
【0184】
また、本発明によれば、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aと押圧部54との干渉を回避するためにロッド20の押圧部54とボルト頭部44Aとをフード幅方向にずらして配置する必要がないため、ヒンジアーム120のフード幅方向の寸法を小さくすることができる。その結果、ヒンジアーム120のフード幅方向への小型化を図ることができる。
【0185】
〔第8実施形態〕
【0186】
次に、図18を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第8実施形態について説明する。
【0187】
この第8実施形態では、ヒンジアーム138をフード幅方向をボルト締結方向としてフード後部側に取り付けた点に特徴がある。
【0188】
具体的には、フード130が、意匠面を構成するフードアウタパネル132と、フードアウタパネル132の下面側に配置されてフードアウタパネル132を補強する二枚の第1フードインナパネル134及び第2フードインナパネル136と、によって構成されている。つまり、フードインナパネルがフード幅方向外側に配置される第1フードインナパネル134とフード幅方向内側に配置される第2フードインナパネル136とに分割された構造になっている。そして、第1フードインナパネル134の内側端末部134Aと第2フードインナパネル136の外側端末部136Aとが合わされてフード下方側へ屈曲垂下されている。なお、これはフードの板組み構造の一例であり、内側端末部134Aと外側端末部136Aに相当する垂直な取付座面が得られる構成であれば、他のフードの板組み構造を適用してもよい。
【0189】
ヒンジアーム138は、縦断面形状が略L字状に形成されており、縦壁部138Aと横壁部138Bとを備えている。縦壁部138Aは第1フードインナパネル134の内側端末部134Aのフード幅方向外側面に当接されて、縦壁部138A、第1フードインナパネル134の内側端末部134A、第2フードインナパネル136の外側端末部136Aの三枚重ねの状態で、ヒンジボルト44がフード幅方向外側から挿入されてナット140で固定されている。
【0190】
また、横壁部138Bのフード幅方向内側には、フード下方側が開放されたコ字状の断面形状となるように屈曲されており、このコ字状に屈曲された部分の底部がロッド20の押圧部54が摺動する軌道142とされている。
【0191】
(作用・効果)
【0192】
上記構成によれば、ヒンジアーム138がフード幅方向をボルト締結方向としてフード後部側に取り付けられているので、ロッド20の押圧部54が軌道104に沿って押し上げ面38上を車両後方側へ摺動する際に、ロッド20の押圧部54がヒンジボルト44と干渉しない位置関係にすることができる。このため、ロッド20の押圧部54の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。その結果、狙い通りにロッド20を曲げ変形させることができ、ひいては衝突時エネルギーを効率良く吸収することができる。
【0193】
また、ヒンジアーム138が縦壁部138Aと横壁部138Bとを備えているので、横壁部138Bをロッド20の押圧部54の摺動用に用い、縦壁部138Aをヒンジアーム138のフード後部側への取付部として用いることができる。すなわち、壁ごとに用途を一つに絞って利用することができる。このため、同一の壁にロッド20の押圧部54の摺動面としての機能とボルト締結面としての機能とを設定する場合に比べて、ヒンジアーム30の設計の容易化を図ることができ、ひいては機能分担により縦壁部138A及び横壁部138の最適設計が可能になる。
【0194】
〔第9実施形態〕
【0195】
次に、図19及び図20を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第9実施形態について説明する。
【0196】
図19に示されるように、この第9実施形態では、アーム長がフード前後方向に長いヒンジアーム150を用い、これを3本のヒンジボルト44(2本)、152(1本)でフード後端側に締結固定している。具体的には、前述した第1実施形態等で用いたヒンジアーム30の前端部をフード前方側へ延長し、当該延長部150Aの前端部に第3のボルト締結点を設定している。これにより、2番目のヒンジボルト44のボルト頭部44Aと最前部に位置するヒンジボルト152のボルト頭部152Aとの間隔が広くなり、双方のボルト締結点間の空いた部分をロッド20の押圧部54が摺動する押し上げ面38として用いる構成となっている。そのため、この実施形態では、2番目と3番目のヒンジボルト44、152の締結点間のピッチtが、ロッド20の押圧部54の移動ストロークよりも長く設定されている。
【0197】
(作用・効果)
【0198】
上記構成によれば、ヒンジアーム150はフード前後方向に所定の間隔を隔てて配置された複数のヒンジボルト44、152によってフード後部側に固定されており、ロッド20の押圧部54は、フード前後方向に隣り合うボルト締結点間に位置する部位(図19の押圧部54の破線図示位置)に当接される。そして、ロッド20の押圧部54は破線図示位置から二点鎖線図示位置まで車両後方側へ摺動していくが、本実施形態では、フード前後方向に隣り合うボルト締結点間のピッチtがロッド20の押圧部54の移動ストローク以上に設定されているため、ロッド20の押圧部54は最低でもロッド20を曲げ変形させるのに必要なストローク分は摺動することができる。これにより、ロッド20の押圧部54の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。その結果、狙い通りにロッド20を曲げ変形させることができ、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができる。
【0199】
換言すれば、本実施形態は、押圧部54の必要な移動ストロークを、ボルト締結間のピッチを調整することで吸収できるように、通常のヒンジアームに延長部150Aを付加した全長のヒンジアーム150を採用するというものである。
【0200】
また、本実施形態によれば、ヒンジボルト44、152のボルト頭部44A、152Aとの干渉を回避するためにロッド20の押圧部54とボルト頭部44A、152Aとを車両幅方向にずらして配置する必要がないため、ヒンジアーム150のフード幅方向の寸法を小さくすることができる。よって、ヒンジアーム150をフード幅方向へ小型化することができる。その結果、ヒンジアーム30の幅をあまりとれない車両に対して有効である。
【0201】
さらに、本実施形態によれば、ヒンジアーム150に凹みを設ける等の加工が必要ないので、板厚に対して形成可能な凹部の深さの制約を受けることもない。従って、ヒンジアーム150の製作が容易である。
【0202】
なお、上記構成においては、3本のヒンジボルト44(2本)、152(1本)とロッド20の押圧部54の当接位置(図19の破線図示位置)がフード前後方向に一直線上に配置されていたが、これに限らず、図20に示されるように、後側のヒンジボルト44を1本とし、かつこのヒンジボルト44をヒンジアーム160のフード幅方向(この例では内側)にオフセットした位置に設けた固定部162に締結固定するようにしてもよい。なお、図20に示される例では、ヒンジアーム160の内側の側壁部を切り起こすことにより、固定部162を形成している。また、前側のヒンジボルト152を延長部160Aに締結固定する点及びストロークとボルト締結点間のピッチの設定の仕方は、図19に示される構成と同様である。
【0203】
上記構成によっても、図15に示される構成と同様の作用及び効果が得られる。
【0204】
〔第10実施形態〕
【0205】
次に、図21を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第10実施形態について説明する。
【0206】
図21に示されるように、この第10実施形態では、前述した第9実施形態の図20に示されるヒンジアーム160において延長部160Aを設けず、かつ固定部162はそのまま存置されたヒンジアーム170を用いた点に特徴がある。
【0207】
具体的には、ヒンジアーム170の幅方向寸法は、ヒンジアーム160の幅方向寸法と同一に設定されている。また、前側のヒンジボルト44のフード後方側に押圧部54による押し上げ位置(破線図示位置)が設定されており、かつ押圧部54は後側のヒンジボルト44のボルト締結点を越えて車両後方側へ摺動するようになっている。
【0208】
(作用・効果)
【0209】
上記構成によれば、押圧部54がヒンジアーム170の前側のボルト44のボルト締結点の車両後方側に当接し、そこから車両後方側へ摺動していく。押圧部54は後側のヒンジボルト44のボルト締結点を越えて摺動していくが、後側のヒンジボルト44はフード幅方向内側に張り出した固定部162において締結されているため、押圧部54の移動軌跡上には後側のヒンジボルト44は存在しない。従って、押圧部54が後側のヒンジボルト44のボルト頭部44Aに干渉することなく通り過ぎることができる。よって、ロッド20の押圧部54の車両後方側への摺動を円滑に行わせることができる。その結果、狙い通りにロッド20を曲げ変形させることができ、衝突時のエネルギーを効率良く吸収することができる。
【0210】
特に、本実施形態では、前側のヒンジボルト44のボルト締結点についてはスペースを確保できるものの、後側のヒンジボルト44のボルト締結点については、前側のヒンジボルト44のボルト締結点を通るフード前後方向に略同一直線上となる位置に設定することができないが、フード幅方向にはスペースを確保することができる車両に対して有利である。
【0211】
〔上記実施形態の補足説明〕
【0212】
(1) 上述した実施形態では、フードヒンジ16をカウルトップサイドに固定したが、これに限らず、フードヒンジをエプロンアッパメンバ等の車体側構成部材に固定するようにしてもよい。
【0213】
(2) 上述した実施形態では、フード12の後端側をロッド20が押し上げる構成を採ったが、これに限らず、フード後部側をロッドが押し上げる構成であればよい。すなわち、本発明における「フード後部側」とは、フードの前後方向中間部よりも車両後方側に位置する部分を指している。好ましくは、フード後端からフード全長の1/3程度までの部分をロッドで押し上げるとよい。なお、フードの前後方向中間部を除いているのは、フードの前後方向中間部にはフードの折れビードが設定されていることがあり、この部分をフード上方側へ押し上げると、フードが折れ変形し、フード後端側が上がらないためである。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】第1実施形態に係る車両用ポップアップフード装置においてドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部を示す側面図である。
【図2】ドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部を拡大して示す平面図である。
【図3】図1に示される車両用ポップアップフード装置の全体構成を示す平面図である。
【図4】押し上げ位置保持状態のときのポップアップ機構部の状態を示す図1に対応する側面図である。
【図5】フード上方側から衝突荷重が作用したときの作動を示す図4に対応する側面図である。
【図6】第2実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部を拡大して示す側面図である。
【図7】第3実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部を拡大して示す側面図である。
【図8】第4実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部を示す側面図である。
【図9】第5実施形態に係る車両用ポップアップフード装置のフードヒンジを拡大して示す斜視図である。
【図10】図9に示されるフードヒンジが組付けられた状態においてロッドの押圧部、ヒンジボルト、切欠及び折れ線の位置関係を示す拡大平面図である。
【図11】(A)は通常時の状態を車両前方側から見て示す要部縦断面図であり、(B)はポップアップ時の状態を車両前方側から見て示す要部縦断面図である。
【図12】(A)はヒンジアームの側壁部に切欠を形成した場合の問題点を説明するための要部拡大斜視図であり、(B)はそれを解消するための改良案(バリエーション1)の最初の例を示す要部拡大斜視図であり、(C)は改良案(バリエーション1)の2番目の例を示す要部拡大斜視図である。
【図13】図12(B)、(C)と同様に改良案(バリエーション2)を示す図11(B)に対応する縦断面図である。
【図14】第6実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部を拡大して示す縦断面図ある。
【図15】第6実施形態のバリエーション1を示す要部縦断面図ある。
【図16】第6実施形態のバリエーション2を示すヒンジアームの部分拡大斜視図ある。
【図17】第7実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部であるヒンジアームの部分拡大斜視図ある。
【図18】第8実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部であるヒンジアームの取付構造を拡大して示す縦断面図ある。
【図19】第9実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部を拡大して示す平面図である。
【図20】図19に示される実施形態の変形例を示す図19に対応する要部拡大平面図である。
【図21】第10実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部を拡大して示す平面図である。
【符号の説明】
【0215】
10 車両用ポップアップフード装置
12 フード
16 フードヒンジ
18 アクチュエータ
20 ロッド
30 ヒンジアーム(補強部材)
30A 側壁部(フランジ)
30C 追加側壁部(第2フランジ)
34A 後端膨らみ部(フード後部側)
38 押し上げ面
44 ヒンジボルト
44A ボルト頭部
46 切欠(低剛性部)
54 押圧部(ロッドの先端部)
56 押圧部(ロッドの先端部)
58 傾斜面
60 補強板(補強部材)
62 補強板固定ボルト
62A ボルト頭部
64 ヒンジアーム(補強部材)
70A 側壁部(フランジ)
86 傾斜面(折り曲げ面)
92 フランジ(切欠を挟んだ前後のフランジ)
94 フランジ(切欠を挟んだ前後のフランジ)
96 フランジ(一方のフランジ)
98 フランジ(他方のフランジ)
99 傾斜面
100 ヒンジアーム(補強部材)
100A 側壁部(フランジ)
102 ガイドプレート(ガイド手段)
102A 側壁部(縦壁)
104 軌道
106 ヒンジアーム(補強部材)
108 突出部(ガイド手段)
110 ヒンジアーム(補強部材)
111 ガイドプレート(ガイド手段)
112 ガイド溝
120 ヒンジアーム(補強部材)
122 凹部(ガイド手段)
130 フード
138 ヒンジアーム(補強部材)
138A 縦壁部
138B 横壁部
142 軌道
150 ヒンジアーム(補強部材)
152 ヒンジボルト
152A ボルト頭部
160 ヒンジアーム(補強部材)
170 ヒンジアーム(補強部材)
Q 折れ線
θ ロッド軸線とロッド先端部が当接するフード後部側の押し上げ面とのなす
角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード後部側をフードヒンジを介して車体側に開閉可能に支持する一方、車両に搭載されたアクチュエータが作動することによりロッドがフード上方側へ伸長してフード後部側をフード上方側へ押し上げかつその押し上げ位置にフードを保持する車両用ポップアップフード装置であって、
前記フードの押し上げ状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重がロッドによるフードの押し上げ部位付近に作用した場合に、ロッドの先端部をフード後部側の押し上げ面に沿って車両後方側へ摺動させながらロッドを曲げ変形させることにより、衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収機構部を設けた、
ことを特徴とする車両用ポップアップフード装置。
【請求項2】
前記フードの押し上げ状態を車両側方から見た場合に、フード後部側を押し上げているロッドの軸線とロッドの先端部が当接するフード後部側の押し上げ面とのなす角度θが95°以上140°以下の範囲に設定されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項3】
前記ロッドの先端部は、アクチュエータの非作動時における前記フード後部側の押し上げ面の傾斜角度と略同一の角度となる傾斜面を備えている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項4】
前記フード後部側におけるロッドの先端部が当接する部位には、当該当接部位を補強する補強部材が配設されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項5】
前記補強部材は、フード後部側に一端がヒンジボルトで固定されるフードヒンジのヒンジアームであり、
前記ロッドの先端部によるフード後部側の押し上げ位置は、ヒンジボルトに対してフード幅方向に重ならないようにずれた位置に設定されている、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項6】
前記補強部材は、フードヒンジとは別体で構成されると共に補強板固定ボルトでフード後部側に固定された補強板であり、
前記ロッドの先端部によるフード後部側の押し上げ位置は、補強板固定ボルトに対してフード幅方向に重ならないようにずれた位置に設定されている、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項7】
請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面の全部又は一部は、前記ロッドの先端部が当該押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際に、ロッドの先端部が請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトから離れる方向へ滑るように、予めフード幅方向に傾斜されている、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項8】
前記押し上げ面は、前記ロッドの先端部が当該押し上げ面を押し上げた際の押し上げ力が作用することにより所定の折れ線に沿って折れ曲がり、当該折り曲げ面上をロッドの先端部が車両後方側へ摺動することにより、ロッドの先端部が請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトから離れる、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項9】
前記押し上げ面は、請求項5記載のヒンジアームの押し上げ面であり、
前記折れ線は、車両平面視で前記ヒンジアームの回転軸線に対して非平行となるように設定されている、
ことを特徴とする請求項8記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項10】
請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面には、請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトの配置側と反対側のフード幅方向の端部に、フード前後方向に延在するフランジが設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項11】
請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面には、請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトの配置側と反対側のフード幅方向の端部に、フード前後方向に延在するフランジが設けられている、
ことを特徴とする請求項8又は請求項9記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項12】
前記フランジの途中部分には、当該フランジを弱体化させる低剛性部が設定されている、
ことを特徴とする請求項11記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項13】
請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面には、請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトの配置側となるフード幅方向の端部にも、フード前後方向に延在する第2のフランジが設けられている、
ことを特徴とする請求項12記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項14】
前記低剛性部は切欠であり、
当該切欠を挟んだ前後のフランジをフード幅方向にオフセットして配置し、或いは一方のフランジが他方のフランジに対して交差するように配置した、
ことを特徴とする請求項12又は請求項13記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項15】
請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面に、前記ロッドの先端部が当該押し上げ面上を車両後方側へ摺動する際に、ロッドの先端部が請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトに干渉しないようにロッドの先端部の移動をガイドするガイド手段を設けた、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項16】
前記ガイド手段は、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板とは別体とされ、かつ請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトを用いてフードに共締めされると共にフード上下方向に沿って延在してヒンジボルト又は補強板固定ボルトとロッドの先端部の軌道とを隔てる縦壁を有するガイドプレートである、
ことを特徴とする請求項15記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項17】
前記ガイド手段は、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板と一体に形成され、かつフード下方へ向けて突出してヒンジボルト又は補強板固定ボルトとロッドの先端部の軌道とを隔てる突出部である、
ことを特徴とする請求項15記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項18】
前記ガイド手段は、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の下面に固定されかつロッドの先端部が摺動可能なガイド溝を有する樹脂製のガイドプレートである、
ことを特徴とする請求項15記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項19】
請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板には、請求項5記載のヒンジボルト又は請求項6記載の補強板固定ボルトのボルト締結方向に凹む凹部が形成されており、
ボルト締結後の状態では、請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板の押し上げ面と前記凹部に収容されたボルト頭部の端面とが略面一になるように設定されている、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項20】
請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板は、フード幅方向をボルト締結方向としてフード後部側に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項21】
請求項5記載のヒンジアーム又は請求項6記載の補強板は、フード後部側の下面に対して略平行に配置されかつロッドの先端部が摺動する横壁と、フード後部側の下面に対して略垂直に配置されかつボルト締結部とされる縦壁と、を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項20記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項22】
前記補強部材はフードヒンジのヒンジアーム又はフードヒンジとは別体で構成された補強板であり、当該ヒンジアーム又は補強板はフード前後方向に所定の間隔を隔てて配置された複数のヒンジボルト又は補強板固定ボルトによってフード後部側に固定されており、
前記ロッドの先端部はフード前後方向に隣り合うボルト締結点間に位置する部位に当接しかつ当該フード前後方向に隣り合うボルト締結点間に当該ロッドの先端部の移動ストロークが含まれている、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項23】
前記複数のボルト締結点は、フード前後方向に略一直線上に配置されている、
ことを特徴とする請求項22記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項24】
前記補強部材はフードヒンジのヒンジアーム又はフードヒンジとは別体で構成された補強板であり、当該ヒンジアーム又は補強板はフード前後方向に所定の間隔を隔てて配置された複数のヒンジボルト又は補強板固定ボルトによってフード後部側に固定されており、
前記ロッドの先端部は前側のボルト締結点と後側のボルト締結点との間に位置する部位に当接しかつ後側のボルト締結点を越えて車両後方側へ摺動し、
さらに、後側のボルト締結点を前側のボルト締結点に対してフード幅方向にずらして配置した、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用ポップアップフード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−173212(P2009−173212A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15610(P2008−15610)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】