説明

車両用ラジエータサポート

【課題】矩形枠状の車両用ラジエータサポートを輸送する際に、輸送先での組立作業性を確保しつつ輸送効率を向上させる。
【解決手段】サポート部30が、左右両側の一対の上側連結ボルト36によりその軸心である回動中心Sまわりに相対回動可能に連結された上側枠構成部31および下側枠構成部32から成り、その回動中心Sまわりに回動させて図1(c) に示すように折り畳んだ状態で輸送できるため、輸送効率を向上させることができる。また、上側枠構成部31と下側枠構成部32とを所定の回動中心Sまわりに回動させて折り畳むだけであるため、その回動中心Sまわりに相対回動させて図1(a) 、(b) に示す組立状態とし、下側連結ボルト38により位置合わせするとともに、その下側連結ボルト38および上側連結ボルト36を強固に締め付けることにより簡単に組立状態(完成品)とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ラジエータサポートに係り、特に、輸送先での組立作業性を確保しつつ輸送効率を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体に一体的に固設されるとともに、略四角形の空間内に冷却部品を支持する矩形枠状のサポート部を有する車両用ラジエータサポートが知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、車両幅方向の両側に位置する一対のラジエータサポートサイドの上下方向の中間位置で略水平に2分割されているとともに、それぞれ複数の締結ボルトによって一体的に結合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−249835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の車両用ラジエータサポートを車両に組み付けたり、或いは冷却部品をラジエータサポートに組み付けるたりするために輸送する場合、完成体のままだとサポート部の内部空間の存在などで個々の占有容積が大きくなり、輸送効率が悪い一方、複数に分離した組立前の状態で輸送すると、輸送先での組立作業性が良くない。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、輸送先での組立作業性を確保しつつ輸送効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、車体に一体的に固設されるとともに、略四角形の空間内に冷却部品を支持する矩形枠状のサポート部を有する車両用ラジエータサポートにおいて、前記サポート部は所定の回動中心まわりに相対回動可能に連結された複数の枠構成部から成り、その回動中心まわりに回動させて折り畳んだ状態で輸送できることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の車両用ラジエータサポートにおいて、前記回動中心まわりに回動させられて折り畳まれることにより、その回動中心まわりに相対回動可能に連結されている一対の枠構成部の一方は他方の内側に収納されることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用ラジエータサポートにおいて、前記複数の枠構成部は、前記矩形枠状の互いに平行な2辺の中間位置で2分割されたそれぞれコの字形状の一対の枠構成部で、その分割位置で前記回動中心まわりに相対回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第3発明の車両用ラジエータサポートにおいて、前記コの字形状の一対の枠構成部の一方は、他方の枠構成部の内側に位置して連結されるように前記回動中心と平行な方向の寸法が短くされており、その回動中心まわりに回動させられて折り畳まれることによりその一方の枠構成部が他方の枠構成部の内側に収納されることを特徴とする。
【0010】
第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかの車両用ラジエータサポートにおいて、(a) 前記サポート部は、(a-1) 車両の左右方向に略水平に配設されて前記冷却部品の上部を支持するラジエータサポートアッパと、(a-2) そのラジエータサポートアッパの下方にそのラジエータサポートアッパと平行に配設されて、前記冷却部品の下部を支持するラジエータサポートロアと、(a-3) 車両の左右方向に離間して前記ラジエータサポートアッパと前記ラジエータサポートロアとに跨がって上下方向に配設され、それ等を連結する一対のラジエータサポートサイドと、を有して構成されている一方、(b) 前記一対のラジエータサポートサイドの上下方向の中間位置で略水平に2分割されることにより、車両前方から見た正面視においてそれぞれコの字形状を成す一対の上側枠構成部および下側枠構成部を前記複数の枠構成部として備えており、その分割位置で略水平な回動中心まわりに相対回動可能に連結されていることを特徴とする。
なお、上記第5発明は車両への搭載状態を想定して分割位置等を規定したもので、現実に車両に搭載されていることを意味するものではない。
【発明の効果】
【0011】
このような車両用ラジエータサポートにおいては、サポート部が所定の回動中心まわりに相対回動可能に連結された複数の枠構成部にて構成されており、その回動中心まわりに回動させて折り畳んだ状態で輸送できるようになっているため、サポート部の内側の空間が開放されて輸送の際の積み込みの自由度が高くなるとともに、複数の枠構成部の何れかを他の枠構成部の内側に収納できるようにすれば占有容積が低減されるなど、輸送効率が向上する。また、複数の枠構成部を所定の回動中心まわりに回動させて折り畳んであるだけであるため、その回動中心まわりに回動させて所定の組立状態とし、ボルト等により位置決めするだけで組立状態(完成品)とすることができるため、完全に分離された複数の枠構成部を位置合わせして一体的に組み立てる場合に比較して組立作業が容易である。
【0012】
第2発明では、回動中心まわりに相対回動可能に連結されている一対の枠構成部の一方が他方の内側に収納されるため、輸送する際の占有容積が低減されて輸送効率が向上する。
【0013】
第3発明では、矩形枠状の互いに平行な2辺の中間位置で2分割されたコの字形状の一対の枠構成部が、その分割位置で回動中心まわりに相対回動可能に連結されているため、3つ以上の枠構成部に分割したり矩形枠状の対角線方向に分割したりする場合に比較して構造が簡単で安価に構成できる。
【0014】
第4発明では、コの字形状の一対の枠構成部の一方が、他方の枠構成部の内側に位置して連結されるように回動中心と平行な方向の寸法が短くされており、その回動中心まわりに回動させられて折り畳まれることにより他方の枠構成部の内側に収納されるため、第2発明と同様に輸送する際の占有容積が低減されて輸送効率が向上する。
【0015】
第5発明は、冷却部品の上部を支持するラジエータサポートアッパ、冷却部品の下部を支持するラジエータサポートロア、およびそれ等のラジエータサポートアッパおよびラジエータサポートロアに跨がって上下方向に配設される一対のラジエータサポートサイドを有してサポート部が構成されている場合で、その一対のラジエータサポートサイドの上下方向の中間位置で略水平に2分割されて上側枠構成部および下側枠構成部に分けられているため、冷却部品を支持するラジエータサポートアッパおよびラジエータサポートロアは基本的に従来のままで良く、冷却部品の支持性能が良好に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例である車両用ラジエータサポートを説明する図で、(a) は組立状態の斜視図、(b) は組立状態の側面図、(c) は折り畳んだ状態の側面図である。
【図2】(a) は図1(a) におけるIIA−IIA矢視部分の拡大断面図で、(b) は(a) における連結ボルトを単独で拡大して示す図である。
【図3】図1の車両用ラジエータサポートが折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【図4】図1の車両用ラジエータサポートを組立状態で収納箱に収納する場合と、折り畳んで収納する場合とを比較して示す図である。
【図5】本発明の他の実施例を説明する図で、車両左側のラジエータサポートサイド付近を示す図であり、(a) は組立状態の側面図、(b) は前側から見た正面図、(c) は折り畳んだ状態の側面図である。
【図6】本発明の更に別の実施例を示す図で、回動中心S付近にワッシャー厚み分の凹座面が設けられた場合である。
【図7】本発明の更に別の実施例を説明する概略図で、(a) は組立状態の正面図、(b) は折り畳み状態の正面図である。
【図8】本発明の更に別の実施例を説明する概略図で、(a) は組立状態の正面図、(b) は折り畳み状態の正面図である。
【図9】本発明の更に別の実施例を説明する図で、車両左側のラジエータサポートサイド付近を示す図であり、(a) は組立状態の側面図、(b) は前側から見た正面図、(c) は折り畳んだ状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の車両用ラジエータサポートが支持する冷却部品は、主としてエンジン冷却用等の冷却流体を冷却するラジエータ本体であるが、空調設備の空調用コンデンサ等の他の冷却部品を支持する場合にも適用され得る。ラジエータ本体と空調用コンデンサなど複数種類の冷却部品を支持するように構成することも可能である。
【0018】
車両用ラジエータサポートは、例えば冷却部品を支持する矩形枠状のサポート部のみで構成され、車両のフレーム等に一体的に固設されるが、ラジエータサポートアッパを車両のフレーム等と一体に構成することも可能で、そのラジエータサポートアッパの所定位置に一対のラジエータサポートサイドの上端部が連結され、その一対のラジエータサポートサイドの下端に跨がってラジエータサポートロアが一体的に連結されても良い。これ等のラジエータサポートアッパ、ラジエータサポートロア、ラジエータサポートサイドはそれぞれ別体に構成してボルトや溶接等により一体的に連結しても良いが、一部の部材を互いに一体に構成することも可能である。
【0019】
本発明の車両用ラジエータサポートは、相対回動可能な複数の枠構成部をラジエータサポートとして機能するように組立状態に位置決めする位置決め手段が必要に応じて設けられる。すなわち、複数の枠構成部を回動中心まわりに回動させて車体のフレーム等に固定することにより、ラジエータサポートとして機能する所定の組立状態に保持されるようになっていても良いが、その車体に対する組付作業を容易にする上で、車両用ラジエータサポート単体として組立状態(完成品)に保持されるようにボルトや溶接等の位置決め手段によって位置決めできることが望ましい。
【0020】
第2発明では、回動中心まわりに略180°回動させられて折り畳まれることにより、一対の枠構成部の一方が他方の内側に収納されるようになっているが、第1発明の実施に際しては、一対の枠構成部が略平行に並ぶようにヘアピン状に折り畳まれる場合でも良いし、鋭角状(松葉状)に所定の角度だけ開いた状態で折り畳まれる場合でも良い。
【0021】
第3発明では、矩形枠状の互いに平行な2辺の中間位置で2分割されたコの字形状の一対の枠構成部が、その分割位置で回動中心まわりに相対回動可能に連結されているが、第1発明の実施に際しては、例えば互いに平行な複数の分割面で3つ以上に分割し、その3つ以上の枠構成部を互いに平行な複数の回動中心まわりに相対回動可能に連結するようにしても良いし、矩形枠状の対角線に沿って分割することもできるなど、種々の態様が可能である。第3発明の実施に際しては、車両に搭載した状態で左右両側に位置するラジエータサポートサイドの中間位置で略水平な分割面により上下に2分割することが望ましいが、上下に位置するラジエータサポートアッパおよびラジエータサポートロアの中間位置で略垂直な分割面により左右に2分割することも可能である。なお、真ん中で略均等に2分割しても良いが、第4発明のように一方の枠構成部が他方の枠構成部の内側に収納されるように他方の枠構成部を大きくしても良い。
【0022】
第5発明では、ラジエータサポートアッパおよびラジエータサポートロアによって冷却部品が支持されるが、一対のラジエータサポートサイドによって冷却部品が支持されるようにしても良いし、それ等のラジエータサポートアッパ、ラジエータサポートロア、および一対のラジエータサポートサイドの全部で冷却部品が支持されるようになっていても良い。矩形枠状のサポート部の互いに平行な2辺で冷却部品を支持する場合に、他の2辺の中間位置で2分割するようにすれば、第5発明と同様に冷却部品の支持性能が良好に維持される。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両用ラジエータサポート10を説明する図で、(a) は概略斜視図、(b) は(a) の右方向すなわち車両の左側から見た側面図、(c) は車両用ラジエータサポート10を折り畳んだ状態を示す側面図である。この車両用ラジエータサポート10は、エンジン冷却用の冷却流体を冷却するラジエータ本体20を支持するもので、そのラジエータ本体20を支持する矩形枠状のサポート部30と、そのサポート部30を車両のフレーム等に取り付けるための取付ブラケット34、35とを備えている。なお、図1の(b) 、(c) では取付ブラケット34、35が省略されている。また、図中に示されている矢印の「上」、「前」、「左」は、車両用ラジエータサポート10を車両に搭載した場合の車両の上方、車両の前方、車両の左側を意味し、現実に車両に搭載されていることを意味するものではない。他の図面についても同様である。
【0024】
サポート部30は、車両の左右方向に略水平に配設されるラジエータサポートアッパ12、そのラジエータサポートアッパ12の下方に略平行に配設されるラジエータサポートロア14、および車両の左右方向に離間してラジエータサポートアッパ12とラジエータサポートロア14とに跨がって上下方向(略垂直方向)に配設され、それ等を連結する一対のラジエータサポートサイド16、18とを備えている。そして、それ等のラジエータサポートアッパ12、ラジエータサポートロア14、および一対のラジエータサポートサイド16、18によって略四角形の枠体が構成され、その枠体によって囲まれた略四角形(図は横長の長方形)の空間内にラジエータ本体20が一体的に取り付けられて支持されるようになっている。ラジエータ本体20は冷却部品に相当する。
【0025】
前記ラジエータサポートアッパ12は、断面が略コの字状の長手形状を成しているプレス成形品で、コの字状の開口側が下向きとなる姿勢で車両の左右方向に略水平に配設され、図示しない車両のフレーム等に一体的に固設されるとともに、前記ラジエータ本体20の上端を固定するための上側取付部として一対の保持穴22が左右方向に離間して設けられている。保持穴22は、車両への配設状態において略水平となる平坦部、すなわちコの字状の背面部分に、ラジエータサポートアッパ12のプレス成形時に同時にプレス加工によって設けられたバーリング穴で、上方へ突き出す円筒状のフランジを一体に備えており、ゴム等の弾性体を介してラジエータ本体20の上部が一体的に取り付けられるようになっている。
【0026】
前記ラジエータサポートサイド16、18は、それぞれ上側サポートサイド16a、18aおよび下側サポートサイド16b、18bの2部材で構成されているとともに、それ等の上側サポートサイド16a、18aおよび下側サポートサイド16b、18bは、それぞれ一対の連結ボルト36、38によって一体的に連結されるようになっている。上側サポートサイド16a、18aおよび下側サポートサイド16b、18bは、何れも断面が略コの字状の長手形状を成しているプレス成形品で、上側サポートサイド16a、18aはコの字状の開口側が内向きとなる姿勢で車両の上下方向に略垂直に配設され、その上端部においてラジエータサポートアッパ12の左右の両端部に溶接やボルト等の固設手段を介して一体的に固設されている。下側サポートサイド16b、18bは、コの字状の開口側が外向きとなる姿勢で車両の上下方向に略垂直に配設され、その下端部においてラジエータサポートロア14の左右の両端部に溶接やボルト等の固設手段を介して一体的に固設されているとともに、上端部は所定の重なり範囲で上側サポートサイド16a、18aと背中合わせに重ね合わされ、前記一対の連結ボルト36、38によって連結されるようになっている。前記取付ブラケット34、35は、この下側サポートサイド16b、18bに溶接等により一体的に固設されている。
【0027】
また、前記ラジエータサポートロア14は、ラジエータサポートアッパ12と同様に断面が略コの字状の長手形状を成しているプレス成形品で、コの字状の開口側が下向きとなる姿勢で車両の左右方向に略水平に配設され、その両端部において前記一対のラジエータサポートサイド16、18によって支持されているとともに、前記ラジエータ本体20の下端を固定するための下側取付部として一対の保持穴28が左右に離間して設けられている。この保持穴28は、前記上側取付部の保持穴22と同様に車両への配設状態において略水平となる平坦部、すなわちコの字状の背面部分に、ラジエータサポートロア14のプレス成形時に同時にプレス加工によって設けられたバーリング穴で、下方へ突き出す円筒状のフランジを一体に備えており、ゴム等の弾性体を介してラジエータ本体20の下部が一体的に取り付けられるようになっている。
【0028】
ここで、前記一対のラジエータサポートサイド16、18は、上下方向の中間位置で略水平に2分割されて前記上側サポートサイド16a、18aと下側サポートサイド16b、18bとに分けられており、前記一対の連結ボルト36、38により連結される前の状態では、矩形枠状のサポート部30が、車両前方から見た正面視においてそれぞれコの字形状を成す一対の上側枠構成部31と下側枠構成部32との2つの構成部に分けられる。すなわち、上側枠構成部31は、ラジエータサポートアッパ12およびその両端部に一体的に固設された一対の上側サポートサイド16a、18aによって構成され、下側枠構成部32は、ラジエータサポートロア14およびその両端部に一体的に固設された一対の下側サポートサイド16b、18bによって構成されており、何れも左右方向の中心線に対して左右対称に構成されている。そして、それ等の上側枠構成部31および下側枠構成部32が、その分割位置付近において一対の連結ボルト36、38の中の上側に位置する上側連結ボルト36によって連結されることにより、その上側連結ボルト36の共通の軸心である回動中心Sまわりに相対回動可能とされ、図1の(b) に示す矢印Aのように上側枠構成部31が約180°回動させられることにより、図1の(c) に実線で示すように側面視において下側枠構成部32と略重なるように、すなわち下側枠構成部32の一対の下側サポートサイド16b、18bの内側に上側枠構成部31が収納されるように折り畳むことができる。上側連結ボルト36は、上側枠構成部31と下側枠構成部32とを回動中心Sまわりに回動可能に連結する連結部材として機能している。図3は、図1(c) のように上側枠構成部31が下側枠構成部32の内側に収納されるように折り畳まれた状態の斜視図である。
【0029】
上側枠構成部31の左右方向の幅寸法は、下側枠構成部32の左右方向の幅寸法よりも僅かに小さく、下側枠構成部32の内側に収納されるようになっている。回動中心Sから上側枠構成部31の上枠外端までの外寸法L1は、回動中心Sから下側枠構成部32の下枠内端すなわちラジエータサポートロア14の上面までの内寸法L2よりも小さい。また、図1(a) におけるIIA−IIA断面の拡大図である図2(a) から明らかなように、上側連結ボルト36は、上側サポートサイド16aおよび下側サポートサイド16bの各々の幅方向(図2(a) における上下方向)の中心位置で両者を連結するようになっている。したがって、上側サポートサイド16aおよび下側サポートサイド16bの幅寸法を略同じか下側サポートサイド16bの方を大きくすれば(実施例は同じ)、上側枠構成部31が下側枠構成部32の内側に重なるように収納される。図1の(b) は、下側の連結ボルト38が装着された組立状態(完成品)であり、その連結ボルト38を装着する前で且つ連結ボルト36を完全に締め付ける前の状態であれば、図1の(c) や図3に示すように折り畳むことができる。図1(c) の一点鎖線で示す上側枠構成部31は、180°回動させる際の姿勢変化を45°間隔で図示したものである。
【0030】
図2の(a) から明らかなように、上側枠構成部31の上側サポートサイド16aと下側枠構成部32の下側サポートサイド16bとの間にはワッシャ40が配設され、それ等の上側枠構成部31および下側枠構成部32が円滑に回動できるようになっている。また、上側連結ボルト36は、図2の(b) に単独で拡大して示すように、ねじ部36aの根元にテーパ部36bおよび円筒部36cを同心に一体に備えているセンタリングボルトで、上側サポートサイド16aと下側サポートサイド16bとを高い精度で位置合わせした状態で相対回動可能に連結できるとともに、図1の(a) 、(b) に示すように上側枠構成部31が上方へ垂直に持ち上げられた組立状態でナット42に対して強固に締め付けられることにより、高い位置精度で両者を位置合わせした状態で一体的に固定することができる。下側連結ボルト38もセンタリングボルトにて構成されているとともに、上記ワッシャ40と同様のワッシャを挟んで上側サポートサイド16aと下側サポートサイド16bとを一体的に締結するようになっており、上側連結ボルト36と協働して、上側枠構成部31と下側枠構成部32とが側面視において一直線になる組立状態に高い精度で位置決めして両者を一体的に固定する。この下側連結ボルト38は、回動中心Sまわりに相対回動可能な車両用ラジエータサポート10を組立状態に位置決めする位置決め手段として機能している。上側サポートサイド16aに設けられている挿通穴44a、および下側サポートサイド16bに設けらている挿通穴44bは、組立時に一致するように同心に重ねられて下側連結ボルト38が挿通させられるものである。なお、ラジエータサポートサイド18側は、上記ラジエータサポートサイド16側と対称的に構成されている。
【0031】
このような本実施例の車両用ラジエータサポート10においては、サポート部30が、左右両側の一対の上側連結ボルト36によりその共通の軸心である回動中心Sまわりに相対回動可能に連結された上側枠構成部31および下側枠構成部32から成り、その回動中心Sまわりに回動させて折り畳んだ状態で輸送できるため、輸送効率を向上させることができる。すなわち、本実施例では図3に示すように上側枠構成部31が下側枠構成部32の内側に重なるように収納されるため、その占有容積が半分近くまで低減される。これにより、例えば図4の(a) に示すように組立状態(完成品)で収納箱46に収納する場合に比較して、図4の(b) に示すように折り畳んだ状態で収納すれば、幅寸法(図4における左右方向の寸法)および奥行き(図4における紙面に対して垂直な方向の寸法)はそのままで、高さ寸法が半分近くまで低減されるため、収納箱48が小さくなって輸送効率が向上する。
【0032】
また、図3に示すように上方に開放されたコの字形状を成すように折り畳まれるため、輸送の際の積み込みの自由度が高くなり、例えば他の車両用ラジエータサポート10の一部やその他の部品を、そのコの字形状の内側に入り込むように積み込むことが可能となり、この点でも輸送効率を向上させることができる。
【0033】
一方、上側枠構成部31と下側枠構成部32とを所定の回動中心Sまわりに回動させて折り畳んであるだけであるため、その回動中心Sまわりに相対回動させて図1(a) 、(b) に示す組立状態とし、下側連結ボルト38により位置合わせするとともに、その下側連結ボルト38および上側連結ボルト36を強固に締め付けることにより簡単に組立状態(完成品)とすることができ、完全に分離された複数の枠構成部を位置合わせして一体的に組み立てる場合に比較して組立作業が容易である。本実施例では、上側連結ボルト36および下側連結ボルト38としてセンタリングボルトが用いられているため、上側枠構成部31と下側枠構成部32とを高い位置精度で組立状態に位置合わせして一体的に組み立てることができる。
【0034】
また、本実施例では、矩形枠状の互いに平行な2辺である一対のラジエータサポートサイド16、18の中間位置で2分割されることにより、コの字形状の一対の枠構成部である上側枠構成部31および下側枠構成部32が構成され、それ等の上側枠構成部31および下側枠構成部32は、その分割位置付近で回動中心Sまわりに相対回動可能に連結されているため、3つ以上の枠構成部に分割したり矩形枠状の対角線方向に分割したりする場合に比較して構造が簡単で安価に構成される。
【0035】
また、本実施例は、ラジエータ本体20の上部を支持するラジエータサポートアッパ12、ラジエータ本体20の下部を支持するラジエータサポートロア14、およびそれ等のラジエータサポートアッパ12およびラジエータサポートロア14に跨がって上下方向に配設される一対のラジエータサポートサイド16、18を有してサポート部30が構成されている場合で、その一対のラジエータサポートサイド16、18の上下方向の中間位置で略水平に2分割されて上側枠構成部31および下側枠構成部32に分けられているため、ラジエータ本体20を支持するラジエータサポートアッパ12およびラジエータサポートロア14は基本的に従来のままで良く、ラジエータ本体20の支持性能、例えば一対ずつの保持穴22、28の位置関係等が良好に維持される。
【0036】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0037】
図5のサポート部50は、前記実施例のサポート部30に比較して一対のL字形の当接ブラケット52、54が設けられるとともに、一対の連結ボルト36、38のうちの下側連結ボルト38の軸心を回動中心Sとして相対回動可能に連結され、折り畳み可能とされている点が相違する。すなわち、この実施例では、下側連結ボルト38が、上側枠構成部31と下側枠構成部32とを回動中心Sまわりに相対回動可能に連結する連結部材として機能している。また、一方の当接ブラケット52は上側サポートサイド16aに溶接やボルト等の固設手段によって一体的に固設されており、他方の当接ブラケット54は下側サポートサイド16bに溶接やボルト等の固設手段によって一体的に固設されており、図5の(a) 、(b) に示すように互いに当接させられることにより組立状態、すなわち両サポートサイド16a、16bが略一直線になる相対回動位置を規定している。図5は車両左側のラジエータサポートサイド16の近傍を示す図で、(a) は車両の左側から見た組立状態の側面図、(b) は車両前側から見た組立状態の正面図、(c) は車両左側から見た折り畳み状態の側面図である。図5(c) において上側サポートサイド16aに設けられている挿通穴56a、および下側サポートサイド16bに設けらている挿通穴56bは、組立時に一致するように同心に重ねられて上側連結ボルト36が挿通させられるものである。なお、ラジエータサポートサイド18側は、上記ラジエータサポートサイド16側と対称的に構成されている。
【0038】
このようなサポート部50においては、図5(c) に示す折り畳み状態から上側枠構成部31を矢印Aと逆まわりに回動させて図5の(a) 、(b) に示す組立状態とする際に、一対の当接ブラケット52、54が互いに当接させられることによって組立状態(相対回動位置)が規定されるため、挿通穴56a、56bを一致させて上側連結ボルト36を挿し通して一体的に連結する際の組立作業が一層容易になるとともに、連結部分の剛性が向上する。一対の当接ブラケット52、54は、上側連結ボルト36と共に組立状態に位置決めする位置決め手段として機能している。なお、当接ブラケット52、54をスポット溶接やアーク溶接等により一体的に固定すれば、連結部分の剛性や強度が更に高くなる。
【0039】
図6の実施例は、前記第1実施例における上側サポートサイド16aの下端部、すなわち下側サポートサイド16bとの連結部分であって、下側サポートサイド16bに対面する部分に、前記ワッシャ40の肉厚と略同じ突出寸法を有する凹座面60を設けた場合で、輸送後に図1(a) 、(b) に示すように組立状態として下側連結ボルト38および上側連結ボルト36を締め付けるだけでなく、更に凹座面60の底部と下側サポートサイド16bとを面接触させた状態でスポット溶接等により一体的に固定することにより、組立状態に位置決めする連結部分の強度が向上する。この凹座面60に代えて前記ワッシャ40と略同じ肉厚のスペーサを別個に用意し、上側サポートサイド16aと下側サポートサイド16bとの間に介在させてスポット溶接等により一体的に固定するようにしても良い。予めスペーサを何れか一方のサポートサイド16aまたは16bに溶接等で固定しておくこともできるが、輸送後に下側連結ボルト38および上側連結ボルト36を締め付けた後に、両サポートサイド16aと16bとの間に挿入して溶接するようにしても良く、その場合は折り畳み時にスペーサが引っ掛かるなどして上側枠構成部31と下側枠構成部32とを相対回動させる際の作動が損なわれる恐れがない。なお、図6において下側連結ボルト38が挿通させられる挿通穴44aの上に設けられている挿通穴56aは、上側連結ボルト36が挿通させられる挿通穴である。
【0040】
図7は、略正方形の枠形状を成すサポート部70を有する場合で、対角線に沿って2分割された一対のL字状の枠構成部72、74を備えているとともに、前記連結ボルト36等の連結部材により、その軸心である回動中心Sまわりに相対回動可能に連結されている一方、前記連結ボルト38等の図示しない位置決め手段により図7の(a) に示す組立状態に位置決めされるようになっている。一方の枠構成部74は、他方の枠構成部72の内側に位置して連結されるように回動中心Sと平行な方向の寸法が枠構成部72よりも短く、図7の(b) に示すように回動中心Sまわりに回動させられて折り畳まれることにより、枠構成部72の内側に枠構成部74が収納されるようになっている。この場合も、サポート部70が図7(b) のようにL字形状に折り畳まれることにより、回動中心Sに対して直角方向(図7(b) における斜め左上方向)の寸法が半分近くになるため、占有容積が小さくなって輸送効率が向上するなど、前記実施例と同様の効果が得られる。
【0041】
図8は、長方形の枠形状を成すサポート部80を有する場合で、上下方向の互いに平行な二つの分割面で3つの枠構成部82、84、86に分割し、その分割部分において互いに平行な略垂直の2本の回動中心S1、S2まわりに相対回動可能に連結した場合である。この場合には、図8の(a) に示すように、左右両側のコの字形状の枠構成部82、86をそれぞれ矢印A、Bで示すように内側へ回動させることにより、図8の(b) に示すようにそれ等の枠構成部82、86を枠構成部84の内側に重なるように折り畳むことができる。したがって、サポート部80の左右方向の寸法が半分近くになり、占有容積が小さくなって輸送効率が向上するなど、前記実施例と同様の効果が得られる。
【0042】
図9のサポート部90は、前記上側サポートサイド16aの下端部と下側サポートサイド16bの上端部とを、略水平なヒンジピン92を介して相対回動可能に連結された一対のヒンジ部材94、96により相対回動可能に連結した場合である。これ等のヒンジ部材94、96は、上側サポートサイド16a、下側サポートサイド16bの前面にそれぞれ溶接等の固設手段により一体的に固設されており、上側枠構成部31および下側枠構成部32はそのヒンジピン92の軸心である回動中心Sまわりに相対回動可能に連結され、図9の(c) に示すように上側枠構成部31が下側枠構成部32と略平行になるように折り畳むことができる。図9は車両左側のラジエータサポートサイド16の近傍を示す図で、(a) は車両の左側から見た組立状態の側面図、(b) は車両前側から見た組立状態の正面図、(c) は車両左側から見た折り畳み状態の側面図である。なお、ラジエータサポートサイド18側は、上記ラジエータサポートサイド16側と対称的に構成されている。
【0043】
この場合も、高さ寸法が半分近くになるとともに、車両前側から見た正面視では上方に開口するコの字形状を成しているため、輸送する際の積み込みの自由度が高くなり、輸送効率を向上させることができる。また、図9の(a) 、(b) に示す組立状態では、上側サポートサイド16aの下端と下側サポートサイド16bの上端とが当接させられることにより、その組立状態の相対回動位置が規定されるため、ボルト等の図示しない位置決め手段によってその組立状態に位置決めする際の組立作業を容易に行うことができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
10:車両用ラジエータサポート 12:ラジエータサポートアッパ 14:ラジエータサポートロア 16、18:ラジエータサポートサイド 20:ラジエータ本体(冷却部品) 30、50、70、80、90:サポート部 31:上側枠構成部 32:下側枠構成部 72、74、82、84、86:枠構成部 S、S1、S2:回動中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に一体的に固設されるとともに、略四角形の空間内に冷却部品を支持する矩形枠状のサポート部を有する車両用ラジエータサポートにおいて、
前記サポート部は所定の回動中心まわりに相対回動可能に連結された複数の枠構成部から成り、該回動中心まわりに回動させて折り畳んだ状態で輸送できる
ことを特徴とする車両用ラジエータサポート。
【請求項2】
前記回動中心まわりに回動させられて折り畳まれることにより、該回動中心まわりに相対回動可能に連結されている一対の枠構成部の一方は他方の内側に収納される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ラジエータサポート。
【請求項3】
前記複数の枠構成部は、前記矩形枠状の互いに平行な2辺の中間位置で2分割されたそれぞれコの字形状の一対の枠構成部で、該分割位置で前記回動中心まわりに相対回動可能に連結されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ラジエータサポート。
【請求項4】
前記コの字形状の一対の枠構成部の一方は、他方の枠構成部の内側に位置して連結されるように前記回動中心と平行な方向の寸法が短くされており、該回動中心まわりに回動させられて折り畳まれることにより該一方の枠構成部が該他方の枠構成部の内側に収納される
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用ラジエータサポート。
【請求項5】
前記サポート部は、
車両の左右方向に略水平に配設されて前記冷却部品の上部を支持するラジエータサポートアッパと、
該ラジエータサポートアッパの下方に該ラジエータサポートアッパと平行に配設されて、前記冷却部品の下部を支持するラジエータサポートロアと、
車両の左右方向に離間して前記ラジエータサポートアッパと前記ラジエータサポートロアとに跨がって上下方向に配設され、それ等を連結する一対のラジエータサポートサイドと、
を有して構成されている一方、
前記一対のラジエータサポートサイドの上下方向の中間位置で略水平に2分割されることにより、車両前方から見た正面視においてそれぞれコの字形状を成す一対の上側枠構成部および下側枠構成部を前記複数の枠構成部として備えており、該分割位置で略水平な回動中心まわりに相対回動可能に連結されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用ラジエータサポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−219040(P2011−219040A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92658(P2010−92658)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【Fターム(参考)】