説明

車両用ルーフトリム

【課題】 レイアウトに制約を受けずに補強材を設定することができると共に、ルーフトリム側端側に補強材を設定してもカーテンエアバッグをスムーズに展開させることができる車両用ルーフトリムを提供する。
【解決手段】 車両用ルーフトリム100は、サンルーフ用開口10と、ルーフトリム側部20を補強する補強材30A,30Bとを備える。補強材30A,30Bは、ルールトリム側端部20A側を覆うようにルーフトリム側部20に配置されると共に、カーテンエアバッグ50が膨張したときルーフトリム側端部20A側に対応する補強材部分34を車室R内側折り曲げるヒンジ手段40A,40Bを有している。これにより、レイアウトに制約を受けずに補強材30A,30Bを設定することができると共に、ルーフトリム側端部20A側に補強材30A,30Bを設定してもカーテンエアバッグ50をスムーズに車室内R側へ展開させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ルーフトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装には、ルーフパネルの室内面側に取り付けられる車両用ルーフトリムが装備されている。この車両用ルーフトリムには、サンシェードパネルが開閉可能に装着されるサンルーフ用開口が開設されている。
【0003】
図1は、従来の車両用ルーフトリムを車体パネル側から見た全体斜視図である。図1に示される従来の車両用ルーフトリム1においては、作業中に作業者がルーフトリム1の両側端部2を把持しながら運ぶ場合があるため、作業者が把持した際に生ずるルーフトリム側部3の折損を防止する対索として、ルーフトリム側端部2とサンルーフ用開口4の開口周縁部4Aと間に補強材5が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の別の車両用ルーフトリムにおいては、車両前後方向に延びるルーフサイドレールに沿ってカーテン状に展開するカーテンエアバッグに対応する構造が特許文献2及び特許文献3に開示されている。具体的には、側面衝突時や車両横転時、その衝撃を感知してインフレータ(ガス発生器)から発生させたガスをルーフサイドレールに装備されたカーテンエアバッグ内に注入し、カーテンエアバッグを下方向に膨張展開させる。このとき、従来の車両用ルーフトリムは、折畳まれた状態のカーテンエアバッグがスムーズに安定した状態で車室内の側壁に沿ってカーテン状に展開するように、カーテンエアバッグの膨張による押圧を受けてルーフトリム側端部側を車室内に向けて弾性的に回動させる構造が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8-119142号公報
【特許文献2】特開2004−256000号公報
【特許文献3】特開2005−193856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2は、図1に示される従来の車両用ルーフトリム1を車体に取り付け、カーテンエアバッグを膨張展開させた状態のルーフトリム側部のA−A断面図である。
【0007】
しかしながら、従来の車両用ルーフトリム1では、図2に示されるように、折畳まれた状態のカーテンエアバッグ6が膨張展開する際に、ルーフトリム側端部2側を車室R内に向けて回動させなければいけないため、補強材5は、ルーフトリム側端部2が回動する支点Oからルーフトリム側端部2までのルーフトリム側部3の領域Aには配置することはできなかった。このため、補強材5は、ルーフトリム側部3の領域Aを除いたルーフトリム側部3の領域Bに配置するしかないため、レイアウトに制約が生じる問題があった。この結果、補強材5の取り付けは、人的に行われるため、補強材5の取り付け位置を誤ってルーフトリム側部3の領域Aに取り付けてしまう場合もあり、カーテンエアバッグ6の展開を妨げるという問題が発生していた。
【0008】
また、特許文献2及び特許文献3に示される従来の車両用ルーフトリムでは、折畳まれた状態のカーテンエアバッグがスムーズに車室内側に展開するように、ルーフトリム側端部側を押し広げ易い構造を採用しているだけであり、サンルーフ用開口が形成されることによって必要となる補強材については何ら考慮されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、レイアウトに制約を受けずに補強材を設定することができると共に、ルーフトリム側端側に補強材を設定してもカーテンエアバッグをスムーズに展開させることができる車両用ルーフトリムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用ルーフトリムは、サンルーフ用開口と、該サンルーフ用開口付近のルーフトリム側部を補強する補強材とを備える車両用ルーフトリムであって、前記補強材は、前記ルーフトリム側部の端側を覆うように前記ルーフトリム側部に配置されると共に、カーテンエアバッグが膨張したときに前記ルーフトリム側部の端側に対応する部分を車室内に向けて折り曲げるヒンジ手段を有する。
【0011】
本発明によれば、補強材がルーフトリム側部の端側を覆うように配置されていても、補強材はエアバッグが膨張したときルーフトリム側部の端側に対応する補強材部分は車室内に向けて折り曲がるヒンジ手段を有しているため、カーテンエアバッグをスムーズに展開させることができる。これにより、補強材がルーフトリム側部の端側に配置されていても、カーテンエアバッグの展開を妨げることがないため、ルーフトリム側部に対する補強材のレイアウトを容易に行うことができる。このため、補強材は設計上のレイアウトに制約を受けずに広範囲のルーフトリム側部に設定することができる。また、ルーフトリム側部の端側に対応する補強材部分は、エアバッグが膨張したときだけ折り曲がるように補強強度を保持しているため、作業中に作業者がこの補強材部分を把持してもルーフトリム側部の折損は防止される。
【0012】
前記ヒンジ手段は、車両前後方向に沿って形成されたスリット又は溝からなる。本発明によれば、ヒンジ手段が車両前後方向に沿って形成されたスリット又は溝であることから、ルーフトリム側部の端側に対応する補強材部分を補強材の長手方向に沿って車室内側へ折り曲げることができる。これにより、カーテンエアバッグを車両前後方向に沿って大きく展開させることができるため、衝撃を吸収できる範囲を広く確保することができる。
【0013】
前記補強材の車幅方向の長さは、前記サンルーフ用開口の周縁付近から前記ルーフトリム側部の端までの長さに対応している。本発明によれば、補強材が所定の長さであるため、広範囲のルーフトリム側部を補強することができる。これにより、ルーフトリム側部の折損事故は確実に防止することができる。
【0014】
前記補強材は、前記ルーフトリム側部より肉薄である。本発明によれば、補強材が肉薄であるため、カーテンエアバッグが膨張したときには、ヒンジ手段によりルーフトリム側部の端側に対応する補強材部分を容易に折り曲げることができる。これにより、瞬時にカーテンエアバッグを車室内へ展開することができる。
【0015】
前記補強材は、前記ヒンジ手段が前記ルーフトリム側部に形成された肉薄部分と重なるように前記ルーフトリム側部に配置される。本発明によれば、ヒンジ手段とルーフトリム側部の肉薄部分が重なるため、ルーフトリム側部の端側に対応する補強材部分は、車室内側へ折れ曲がり易くなっている。これにより、確実に、カーテンエアバッグを車室内へ展開させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レイアウトに制約を受けずに補強材を設定することができると共に、ルーフトリム側端側に補強材を設定してもカーテンエアバッグをスムーズに展開させることができる車両用ルーフトリムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明における車両用ルーフトリムについて、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0018】
本実施の形態による車両用ルーフトリム100について、図3乃至図6を用いて説明する。図3は本発明の実施形態による車両用ルーフトリムを車体パネル側から見た全体斜視図、図4は図3に示す車両用ルーフトリムに補強材を取り付ける状態を説明する図、図5は図3に示す車両用ルーフトリムを車体に取り付け、カーテンエアバッグを膨張展開させた状態のルーフトリム側部のB−B断面図、図6は補強材の変形例を説明する図であり、図5に対応する図面である。
【0019】
車両用ルーフトリム100は、図3に示すように、図示しないルーフパネル(車体パネル)の車室内面形状に対応した大きさに形成されており、複数の面ファスナー等の取付手段(図示省略)によりルーフパネルの車室内面側に取り付けられるものである。
【0020】
車両用ルーフトリム100は、ルーフパネルの内側を美装するよう、保形性を有する発泡樹脂基材100Aと、発泡樹脂基材100Aの車室表面側に積層一体化される加飾機能をもつ不織布表皮材100Bとの積層成形体で構成されている。図3に示す車両用ルーフトリム100は、発泡樹脂基材100Aを赤外線加熱炉等の加熱装置(図示省略)により所定温度に加熱軟化処理した後、金型装置(図示省略)のキャビティ内で不織布表皮材100Bと一体的にプレス成形することにより、成形される。
【0021】
発泡樹脂基材100Aと不織布表皮材100Bの素材について概略を説明する。発泡樹脂基材100Aは、ガラスマットと、ガラスマットの両面に剛性を強化する発泡樹脂フィルム、例えば、発泡剤が混入されたポリプロピレン(PP)フィルムとから積層一体化されたものである。ガラスマットとしては、ガラス繊維と、ポリプロピレン樹脂繊維等のポリオレフィン系樹脂繊維をマット状に集積したものや、ガラス繊維にポリオレフィン系樹脂をバインダとして混入したガラス繊維マットが使用することができる。尚、発泡樹脂基材100Aの一面側には、不織布表皮材100Bとの接着媒体としてのホットメルトフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム等)がラミネートされている。
【0022】
不織布表皮材100Bは、ポリエステル繊維不織布、あるいはポリエステル繊維とポリプロピレン繊維との混紡不織布等が使用でき、良好な外観性能を確保するために、グレー系、ベージュ系等、所望の着色に彩色されている。
【0023】
次に、車両ルーフトリム100の細部について、図3を参照しながら説明する。
車両用ルーフトリム100は、図3に示すように、サンシェードパネル(図示省略)が開閉可能に装着されるサンルーフ用開口10と、このサンルーフ用開口10付近のルーフトリム側部20を補強する補強材30A,30Bとを備えている。
【0024】
サンルーフ用開口10は、車両前方に形成されたマップランプ用開口12の後方に大きく開設されている。サンルーフ用開口10の斜め前方には、マップランプ用開口12を間に挟むように、サンバイザ(図示省略)を収容する凹状のサンバイザ収容部14が形成されており、このサンバイザ収容部14には、サンバイザの取付ブラケット(図示省略)が取り付けられるサンバイザ取付孔14A,14Bが形成されている。また、サンルーフ用開口10の車幅方向には、両ルーフトリム側部20が配置されており、ルーフトリム側部20の夫々には、前方側にアシストグリップ取付孔16A,16Bが形成されており、後方側にパーソナルランプ取付用開口18A,18Bが形成されている。
【0025】
補強材30A,30Bは、作業者が把持した際に生ずるルーフトリム側部20の折損を防止する板状のものであり、ヒンジ手段としてのスリット40A,40Bが形成されている。補強材30A,30Bは、ルーフトリム側端部20A側を覆うようにルーフトリム側部20に配置され、かつ、アシストグリップ取付孔16A,16Bとパーソナルランプ取付用開口18A,18Bの間に配置されている。
【0026】
補強材30A,30Bの寸法について詳述すると、補強材30A,30Bの車幅方向の長さは、サンルーフ用開口10の開口周縁部10A付近からルーフトリム側端部20Aまでの長さが設定されている。また、補強材30A,30Bの車両前後方向の長さは、前述の車幅方向の長さより長く、車室内の前部座席から後部座席までの長さが設定されている。また、補強材30A,30Bは、ルーフトリム側部20の厚さH2より肉薄の所定の厚さ(例えば3.0mm)H1が設定されている(図5参照)。
【0027】
スリット40A,40Bは、カーテンエアバッグ50が膨張したときルーフトリム側端部20Aに対応する補強材部分34を車室内Rに向けて折り曲げるヒンジ手段である。ヒンジ手段として機能するスリット40A,40Bは、補強材30A,30Bの長手方向に沿って補強材30A,30Bの表面に形成されている。また、スリット40A,40Bは、補強強度をある程度保持しながら、カーテンエアバッグ50が膨張するときには補強材部分34を車室内側へ折れ曲がるように、補強材30A,30Bの表面から所定の深さ(例えば1.5〜2.0mmの深さ)に設定されている。尚、ルーフトリム側部20に肉薄部分(スリット)22を形成する場合は、補強材30A,30Bは、スリット40A,40Bとルーフトリム側部20の肉薄部分22(スリット)が重なるようルーフトリム側部20に配置することが好ましい(図5参照)。
【0028】
次に、補強材30A,30Bの形成方法について図4を用いて概略を説明する。
車両用ルーフトリム100が、図4に示すように、射出成形法又はモールドプレス法により成形用金型(図示省略)内で製品形状に成形されると、車両用ルーフトリム100は、サンルーフ用開口10となる部分から端材Dが打ち抜かれる。次に、この打ち抜かれた端材Dから所要形状の補強材30A,30Bが切り取られる。そして、切り取られた補強材30A,30Bには、図示しない切り込み手段により補強材30A,30Bの長手方向に沿ってスリット40A,40Bが形成される。そして、スリット40A,40Bが形成された補強材30A,30Bは、接着剤等により車両用ルーフトリム100の両ルーフトリム側部20に固着されるようになっている。尚、補強材30A,30Bは、車両用ルーフトリム100の発泡樹脂基材100Aより肉薄になるよう端材Dから所要形状の補強材30A,30Bを切り取る前にプレス加工することが好ましい。これにより、ルーフトリム側部20には、ルーフトリム側部20の折損を防止する補強材30A,30Bが形成される。
【0029】
上述の車両用ルーフトリム100が車体に搭載された状態について図5を参照すると、補強材30Aは、広範囲のルーフトリム側部20を補強するように、サンルーフ用開口10の開口周縁部10A付近からルーフトリム側端部20Aまでを覆うようにルーフトリム側部20に配置されるようになっている。このとき、補強材30Aのうち、スリット40Aが形成された補強材部分32から補強材部分34までの表面Fが、カーテンエアバッグ50の展開領域Aに配置されるようになっている。すなわち、カーテンエアバッグ50が膨張展開した際には、補強材30Aの表面Fがカーテンエアバッグ50の膨張による押圧を受けるようになっている。
【0030】
ここで、前述のカーテンエアバッグ50について説明を加えると、カーテンエアバッグ50は、車両の側面衝突時や車両横転時、ドアパネル等に強い衝撃が加わると車体に取り付けられたセンサ(図示省略)からの信号で、図示しないリアピラーガーニッシュ内に収容されたガス発生器としてのインフレータ(図示省略)からガスを吐き出し、車両前後方向に延びるルーフサイドレール60内に折り畳まれたカーテンエアバッグ50を下方にカーテン状に展開し、搭乗者とドア窓ガラスとの間に介在し、搭乗者の頭部や胸部などがドアの窓ガラスなどに直接衝突しないように保護するものである。
【0031】
次に、図5を参照しながら、車両に側面衝突の事故等が起きた場合の車両用ルーフトリム100の動作について説明する。側面衝突が起きた際には、センサが衝撃を感知してインフレータから発生させたガスをルーフサイドレール60内に収容されたカーテンエアバッグ50内に注入し、カーテンエアバッグ50が下方向に膨張するようになっている。補強材30Aの表面30Fが、図5に示すように、膨張展開中のカーテンエアバッグ50の膨張による押圧を受けることにより、補強材部分34は、スリット40Aがヒンジ手段として機能して弾性的に図5の矢印方向(車室R内方向)へ回動するようになっている。
【0032】
このとき、補強材30Aの下方に配置されたルーフトリム側部20においては、ルーフトリム側端部20A側が補強材30Aの表面30Fを介してカーテンエアバッグ50による押圧を受けることにより、ルーフトリム側端部20Aが補強材部分34と共に車室R内に向かって回動する。すなわち、補強材30Aの補強材部分34は、カーテンエアバッグ50が膨張展開する際に、ルーフトリム側端部20Aと共に車室R内側へ折れ曲がるように構成されている。また、補強材部分34は、スリット40Aが補強材40Aの長手方向に形成されているため、補強材40Aの長手に沿って折れ曲がるようになる。そして、補強材部分34とルーフトリム側端部20Aが車室R内側へ扉状に開くよう折れ曲がることにより、カーテンエアバッグ50は、車室R内側へカーテン状に展開する。
【0033】
上述のとおり、補強材30A,30Bの補強材部分34は、スリット40A,40Bを支点として車室R内側へ折れ曲がるため、補強材30A,30Bの補強材部分34がカーテンエアバッグ50の展開する領域Aに配置されていても、側面衝突等が起きた際のカーテンエアバッグ50の車室R内への展開は妨げられることはない。これにより、車両の側面衝突時には、カーテンエアバッグ50はスムーズに安定した状態で車室R内へ展開することができる。
【0034】
また、カーテンエアバッグ50の展開性能を考慮して、補強材30A,30Bにはヒンジ手段としてのスリット40A,40Bが形成されているため、サンルーフ用開口10の開口周縁部10A付近からルーフトリム側端部20Aまでの車幅方向の長さを補強材30A,30Bに設定することができる。このため、補強材30A,30Bは、広範囲のルーフトリム側部20に設定することができるため、補強材30A,30Bは設計上のレイアウトに制約を受けることがない。さらに、補強材30A,30Bが広範囲のルーフトリム側部20を補強することができるため、作業中に作業者がルーフトリム側端部20Aを把持する場合でもルーフトリム側部20の折損事故は確実に防止することができる。また、補強材部分34は、カーテンエアバッグ50が膨張したときだけ折り曲がるように補強強度を保持しているため、作業中に作業者がこの補強材部分34を把持してもルーフトリム側部20の折損は防止される。
【0035】
さらに、補強材部分34は、補強材40Aの長手に沿って車室R内側へ折れ曲がるようになっているため、カーテンエアバッグ50は、車室R内の前部座席と後部座席に向けてカーテン状に展開することができる。このため、カーテンエアバッグ50が車室R内に拡張して展開するにより、前席と後席に着座する搭乗者の安全は確保することができる。
【0036】
加えて、補強材30A,30Bがルーフトリム側部20より肉薄であるため、補強材30A,30Bの表面30Fにカーテンエアバッグ50の膨張による押圧がかかるとき、補強材部分34は、スリット40A,40Bを支点として容易に折れ曲がるようになっている。これにより、側面衝突等が起きた際は、瞬時に、カーテンエアバッグ50を車室R内側へ展開させることができるため、搭乗者への衝撃を十分に緩和することができる。
【0037】
また、ルーフトリム側部20に肉薄部分22を形成した場合には、ルーフトリム側端部20Aが肉薄部分22を介して容易に車室Rに折れ曲がり易くなっているため、側面衝突等が起きた際には、補強材部分34はルーフトリム側端部20Aに妨げることなく、確実に車室R内側に折れ曲がることができる。これにより、カーテンエアバッグ50を確実に車室R内へ展開させることができるため、搭乗者に対する信頼性を一層向上させることができる。
【0038】
次に、上述の車両用ルーフトリム100の補強材30A,30Bの変形例について図6を参照しながら説明する。図6は補強材の変形例を説明する図であり、図5に対応する図面である。尚、上述と同一の構成については、図面上に同一符号を付して説明は省略する。
【0039】
図6に示される補強材30A’は、上述の補強材30Aに形成されたスリット40Aと同様の部位に、溝部(ビード)70が形成されている。この溝部70は、図5に示すスリット40Aと同様に、ルーフトリム側部20A,20Bのルーフトリム側端部20A,20B側に対応する補強材30A,30Bを車室内に向けて折り曲げるヒンジ手段である。尚、ルーフトリム側部20には、図5に示す肉薄部分(スリット)22と同様の部位に、肉薄部分(溝)22’を形成するようにしても良い。したがって、補強材30A’は、前述の補強材30の効果と同様の効果が得られる。
【0040】
また、補強材30A’の更なる効果としては、ヒンジ手段としての溝部70は、車両用ルーフトリム100の発泡樹脂基材100Aの成形用金型内に溝部70に対応する溝部形状の突部を形成することにより、車両用ルーフトリム100の成形と同時に同一工程内で形成されるものである。したがって、図6に示す補強材30A’は、車両用ルーフトリム100の成形とは別工程で形成されるスリット40Aを有する補強材30A(図3参照)に比較して簡易に製造作業を行うことができる。
【0041】
尚、上述の実施形態では、ヒンジ手段としてスリット40A,40B又は溝部70を説明したが、本発明はこれに限らず、ルーフトリム側部20A,20Bのルーフトリム側端部20A,20B側に対応する補強材部分34を車室R内に向けて折り曲げるものであれば何れであっても良い。また、ヒンジ手段としてスリット40A,40B又は溝部70は、補強材30A(30A’),30Bの長手方向に沿って長手全体に形成したが、スリット40A,40B又は溝部70は長手の一部であっても良い。
【0042】
また、上述の実施形態では、一対の補強材30A,30Bは、車両前方に配置されたサンルーフ用開口10付近のルーフトリム側部20を補強するものについて説明したが、本発明はこれに限らず、車両後方に形成されたサンルーフ用開口付近のルーフトリム側部を補強するものであっても良く、また、車両前方及び車両後方の両者に形成されたサンルーフ用開口の夫々のルーフトリム側部付近を補強する2以上の一対の補強材であっても良い。
【0043】
さらに、上述の実施形態では、補強材30A,30Bは、サンルーフ用開口10の開口周縁部10A付近からルーフトリム側端部20Aまでの車幅方向の長さが設定されているが、本発明はこれに限らず、ルーフトリム側部20の車幅方向の長さの半分からルーフトリム側端部20Aまでの長さの補強材であっても良い。
【0044】
加えて、上述の実施形態では、補強材の形成方法の例として、補強材30A,30Bは、成形後の車両用ルーフトリム100を打ち抜いたサンルーフ用開口10となる箇所Dから所要形状にカットして形成したが、本発明はこれに限らず、車両用ルーフトリムの成形と同時に補強材を残すようにサンルーフ用開口を打ち抜き、車両用ルーフトリムの成形後に補強材を折返してルーフトリム側部に配設するようにした補強材であっても良い。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係る車両用ルーフトリムは、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来の車両用ルーフトリムを車体パネル側から見た全体斜視図である。
【図2】図1に示す従来の車両用ルーフトリム1を車体に取り付け、カーテンエアバッグを膨張展開させた状態のルーフトリム側部のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態による車両用ルーフトリムを車体パネル側から見た全体斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による車両用ルーフトリムに補強材を取り付ける状態を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態による車両用ルーフトリムを車体に取り付け、カーテンエアバッグを膨張展開させた状態のルーフトリム側部のB−B断面図である。
【図6】補強材の変形例を説明する図であり、図5に対応する図面である。
【符号の説明】
【0047】
100 車両用ルーフトリム
10 サンルーフ用開口
10A 開口周縁部
12 マップランプ用開口
14 サンバイザ収容部
14A,14B サンバイザ取付孔
16A,16B アシストグリップ取付孔
18A,18B パーソナルランプ取付用開口
20 ルーフトリム側部
20A ルーフトリム側端部
22 肉薄部分
30A,30B 補強材
30F 補強材の表面
40A,40B スリット
50 カーテンエアバッグ
60 ルーフサイドレール
70 溝部
A カーテンエアバッグの膨張展開する領域
R 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンルーフ用開口と、該サンルーフ用開口付近のルーフトリム側部を補強する補強材とを備える車両用ルーフトリムであって、
前記補強材は、前記ルーフトリム側部の端側を覆うように前記ルーフトリム側部に配置されると共に、カーテンエアバッグが膨張したときに前記ルーフトリム側部の端側に対応する部分を車室内に向けて折り曲げるヒンジ手段を有する、ことを特徴とする車両用ルーフトリム。
【請求項2】
前記ヒンジ手段は、車両前後方向に沿って形成されたスリット又は溝からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ルーフトリム。
【請求項3】
前記補強材の車幅方向の長さは、前記サンルーフ用開口の周縁付近から前記ルーフトリム側部の端までの長さに対応している、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ルーフトリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−183968(P2008−183968A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17627(P2007−17627)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】