説明

車両用凍結除去システム

【課題】 外気温が極めて低い状況においてフロントガラスの解氷を短時間で可能とし、かつ車両の電力不足が生じ難い車両用凍結除去システムを低コストで提供する。
【解決手段】 車両用凍結除去システムAにおいて、車外気温が所定温度より低い場合に、エアコンユニットUによるデフロスタ空調出力と、ワイパーデアイサ440の発熱とを同時に実施するとともに、このときエンジン300の回転数が所定回転数よりも低い場合には、エンジンECU200にアイドルアップを要求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用凍結除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2002−67652号公報
【0003】
冬季には、車両の窓ガラスが凍結することがある。特に、極寒地では窓全体が凍結して車両の視界が確保できなくなる場合がある。こうした場合、一般的な車両においては、特許文献1等に示すような車載空調装置の空調出力モードをデフロスタモードとし、フロントガラスの近傍に設けられた吹出口から該フロントガラスの外面に空調気流を吹き出して凍結を除去する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、外気温が極めて低い状況においては、空調気流によるフロントガラスの解氷に時間がかかるという問題がある。また、フロントガラスの凍結除去には、フロントガラスに配設された電熱線に通電して発熱させる手段等もあるが、こうした他の手段をデフロスタモードでの空調出力と同時に実施することは電力負荷の増大を招き、車両の電力不足、バッテリー上がり、ラフアイドルの発生といった問題を生じる可能性もある。一方で、これらの問題を根本から解決するために、車両に新たなフロントガラス解氷装置を開発・設置することはコスト面を考慮すると避けたいところである。
【0005】
本発明の課題は、外気温が極めて低い状況においてフロントガラスの解氷を短時間で可能とし、かつ車両の電力不足が生じ難い車両用凍結除去システムを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用凍結除去システムは、
車両のエンジンの回転を利用して発電するオルタネータからの出力で充電される車載バッテリーからの電力供給により、少なくとも車両のフロントガラスに向けて空調気流を吹き付けるデフロスタモードによる空調出力が可能な車両用空調手段と、同じく車載バッテリーからの電力供給により、車両のフロントガラスに配設された電気抵抗線に所定電圧を印加可能な電気抵抗線発熱駆動手段と、を備える車両用凍結除去システムであって、
車外気温を検出する車外気温検出手段と、
空調出力手段に対しデフロスタモードでの空調出力を実行させるためのデフロスタ空調出力実行操作部と、
デフロスタ空調出力実行操作部への操作入力に基づいて、空調出力手段にデフロスタモードでの空調出力を実行させるとともに、該デフロスタモードでの空調出力を実行させる際に、車外気温検出手段が検出する車外気温が予め定められた温度閾値を下回っている場合には、電気抵抗線発熱駆動手段による電気抵抗線の発熱駆動も同時に実行させる凍結除去制御手段と、
オルタネータの出力が予め定められた出力レベルを下回っているか否かを判定する発電量判定手段と、
エンジンの回転速度を目標回転速度とするためのフィードバック制御を実行するエンジン制御手段と、
車両用空調手段によるデフロスタモードによる空調出力と、電気抵抗線発熱駆動手段による電気抵抗線への所定電圧の印加とが同時実行される際に、オルタネータの出力が予め定められた出力レベルを下回っている場合には、エンジン制御手段に対しエンジンの回転速度を同時実行前よりもアップさせるアイドルアップ要求を行うアイドルアップ要求手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
上記本発明の構成によると、フロントガラスが凍結するほど車外気温が低い場合には、フロントガラスの解氷のために、デフロスタ空調出力と電気抵抗線(熱線)の発熱とを同時に実施して、フロントガラスの解氷を素早く完了することができる。さらに、デフロスタモードでの空調出力を実行させる操作がなされただけで、デフロスタ空調出力と電気抵抗線の発熱とが同時に実行されるので、ユーザーの操作負担を軽減できる。
【0008】
また、上記本発明の構成によると、フロントガラスの解氷のためにデフロスタ空調出力と電気抵抗線の発熱とを同時に実施することで生じ得る、車両の電力不足、バッテリー上がり、ラフアイドルの発生といった問題は、これらの問題が生じ易い状況が検出された際に、オルタネータの発電量を増大させることで解消できる。即ち、オルタネータの出力レベル(発電量)の低い状況が検出された際に、エンジン回転数をアップしてオルタネータの発電量を増大させることで解消できる。これにより、フロントガラスの解氷時に、車両の消費電力に応じた適切な発電制御を実施することができる。
【0009】
なお、上述の電気抵抗線は、フロントガラスの下側の、ワイパーブレードの停止位置に対応する領域に配設されたワイパーデアイサとすることができる。ワイパーデアイサは、フロントガラスの下側の一部領域(ワイパーブレードの所定停止位置に対応する領域)に限定的に配置される比較的短い電気抵抗線(熱線)であるから、これを駆動する際にはそれほど大きな電力消費とはならない。逆に、フロントガラスの曇り防止のためにフロントガラスに広範囲に配置された電気抵抗線(例えばフロントガラスに全体的に配置された電気抵抗線や、フロントガラスの外周部分を環状に囲む形で配置されるような電気抵抗線)を、フロントガラスの解氷を目的として使用すると、バッテリーへの負荷が極めて大きくなってしまう。特に、フロントガラスの解氷は、他の車載電子機器の消費電力も大きくなる車両始動直後に実施され易いので、消費電力を少しでも抑えられることは大きな利点となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の車両用凍結除去システムの構成を示すブロック図である。図1に示す本実施形態における車両用凍結除去システムAは、暖房出力と冷房出力とを切り替える形で選択的に駆動制御することが可能な図2に示す車載空調ユニットUを備え、その冷房出力用に周知の冷凍サイクルRCを備えて構成されている。
【0011】
図1に示す冷凍サイクルRCは、車両用空調装置に設けられる周知の冷凍サイクルと同様の構成をなしており、ガス状の冷媒を吸入・圧縮して高温・高圧ガスとして送り出すコンプレッサ(圧縮器)1と、送り出された冷媒(高温・高圧ガス)を車外空気(クーリングファンによって取り入れる)によって冷却し、凝縮の潜熱を奪って液化するエンジン駆動のコンデンサ(凝縮器)2と、液化された冷媒をガスと液とに分離して液冷媒のみを送り出すレシーバ(受液器)3と、送り出された液冷媒を膨張させ、低温・低圧の霧状冷媒とするエキスパンションバルブ(膨張弁)4と、その低温・低圧の霧状冷媒によって車室内の空気から潜熱を奪って車室内空気を冷却するとともに、このとき気化された冷媒をコンプレッサ(空調用コンプレッサ)1に送り出すエバポレータ(蒸発器)5とで構成されている。
【0012】
コンプレッサ1は、エアコンECU100により、後述するエバポレータ後センサ123の検出温度が所定温度(エバポレータ目標制御温度の下限値:例えば3℃)を下回った場合に冷房出力レベルを減じる方向に駆動制御され、所定温度(エバポレータ目標制御温度の上限値:6℃)を上回った場合に冷房出力レベルを増じる方向に駆動制御されるよう構成されている。本実施形態のコンプレッサ1は、車両のエンジン300を動力源として駆動するものであり、所定温度(エバポレータ目標制御温度の下限値)を下回った場合にはコンプレッサ1をエンジン300の出力から切り離す一方で、所定温度(エバポレータ目標制御温度の上限値)を上回った場合にはコンプレッサ1とエンジン300の出力に再連結してエンジン300との連動駆動を再開する。
【0013】
具体的に言えば、コンプレッサ1は、エンジン300の出力軸から伝達される駆動力をベルトから受ける形で駆動するとともに、該エンジン300との断接切換用にマグネットクラッチ302を備えて構成されている。マグネットクラッチ302は、コンプレッサ・クラッチ・コイル(図示なし)を有して構成されており、バッテリー電源600からコンプレッサ・クラッチ・コイルへの通電・非通電の切り替えに応じて、エンジン出力とコンプレッサ1とをつなげるオン状態と、エンジン出力とコンプレッサ1とを切り離すオフ状態との間で切り替えられる。この切り替えは、バッテリー電源600からコンプレッサ・クラッチ・コイルの間に設けられたコンプレッサ・クラッチ・リレー(図示なし)のオン/オフを、エアコンECU100が切り替える形でなされる。
【0014】
なお、バッテリー電源(車載バッテリー)600は、オルタネータ500の発電電力を蓄積し、蓄積された電力を各種車載機器に供給する。オルタネータ500は、エンジン300の出力軸から伝達される駆動力をベルトから受ける形で駆動(発電動作)するものであり、この駆動により発電される電力を、レギュレータ501を介してバッテリー電源600に出力する。レギュレータ501は、オルタネータ500のフィールドコイル(図示なし)の導通・非通電を切り替える一般的な構成を有しており、オルタネータ500の出力情報(発電電力情報)をエンジンECU200に入力するとともに(発電量検出手段)、該エンジンECU200からの制御指令に基づいて、バッテリー電圧が所定の調整電圧となるようオルタネータ500の発電電力を制御する。
【0015】
また、車両用凍結除去システムAは、図1に示すように、エアコンECU100とエンジンECU200とワイパーECU400が、車両内LAN50を介して(経由して)接続した構成を有している。
【0016】
エアコンECU100には、図1に示すように、空調用センサ120、空調用駆動部130、及び空調用操作部(空調出力状態設定操作部)140が接続して構成されている。図2は、エアコンECU100により制御されるエアコンユニット(空調出力手段)Uの全体構成を概略的に示す図である。エアコンユニットUは、いわゆるHVAC(Heating, Ventilating and Air-Conditioning)ユニットであり、車室内の空調状態を運転席側と助手席側とで独立して調整可能に構成されている。
【0017】
エアコンユニットUのダクト28には、車内空気を循環させるための内気吸込口42と、車外の空気を取込む外気吸込口41とが形成されており、内外気切替ダンパー24によりいずれかに切り替えて使用される。これら内気吸込口42ないし外気吸込口41からの空気は、ブロワ21によってダクト28内に吸い込まれる。ダクト28内には、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ22が設けられている。そして、エバポレータ22よりも下流側(吹出口側)は、運転席側の吹出口43〜45へ至る経路と助手席側の吹出口46,47へ至る経路に分岐している。
【0018】
なお、図3に示すように、エアコンユニットUには吹出口として、フロントガラス曇り止め用のデフロスタ吹出口43がフロントガラスの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、運転席側フェイス吹出口45がインパネの正面中央右寄りと右隅に、助手席側フェイス吹出口46がインパネの正面中央左寄りと左隅に、運転席側フット吹出口44がインパネ下面右奥の運転席側足元に、助手席側フット吹出口47がインパネ下面左奥の助手席側足元に、それぞれ開口しており、図2の吹出口切替用ダンパー32〜36によってそれぞれ開閉状態が切り替えられる。
【0019】
エアコンECU100に接続する空調用駆動部130(図2)は、上記吹出口切替用ダンパー32〜36や該ダンパー32〜36の開閉状態を切り替えるダンパー駆動ギア機構31、エアミックスダンパー25,26、内外気切替ダンパー24、及びそれらを駆動するサーボモータ71〜74等である。これらサーボモータ(アクチュエータ)71〜74は、バッテリー電源600からの電力供給を受けて駆動し、エアコンECU100によって回転制御される。具体的には、ロータの回転位置や回転速度等の情報を検出してエアコンECU100にフィードバックし、これらの基づく駆動指令信号を該エアコンECU100が駆動回路131〜134に出力する形で、対応するサーボモータ71〜74が駆動する。
【0020】
なお、これらサーボモータ71〜74の他、ブロワ21やコンプレッサ1もエアコンECU100に接続する空調用駆動部130ということができ、バッテリー電源600からの電力供給を受けて駆動し、エアコンECU100によって回転制御される。ただし、コンプレッサ1の直接の駆動源は車載エンジン300(図1)であり、エアコンECU100はその駆動制御を実行するものである。
【0021】
エアコンECU100に接続される空調用センサ120(図2)は、車内温度を検出する内気温センサ(車内温度検出手段)121、車外温度を検出する外気温センサ(車外気温を検出する車外気温検出手段)122、エバポレータを通過した直後の空気の温度を検出するエバポレータ後センサ123、及び日射量を検出する日射センサ124等の周知の空調用センサからなる。
【0022】
エアコンECU100に接続される空調用操作部140(図2)は、車室内の、運転者及び助手席搭乗者により操作可能なインパネ正面中央に設けられたメインパネル20に設けられており、AUTOスイッチ141,OFFスイッチ142,吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ)143,内外気切替スイッチ144,風量切替スイッチ145,温度設定スイッチ146,デフロスタスイッチ147,A/Cスイッチ148,独立/一括制御切替スイッチ(DUALスイッチ)149等のスイッチとを備え、各々周知の押圧操作部やダイアル操作部として構成されている。
【0023】
エアコンECU100は、CPU、ROM、RAM等を備える周知の構成を有し、各種空調用操作部140の操作状態や各種空調用センサ120の検出結果に基づいて空調用駆動部130を駆動制御することにより、吹出温度制御、風量制御、内気吸気・外気吸気切替制御、及び吹出口切替制御等の周知の空調制御を実行する。空調用コンプレッサ1に対しては、空調用操作部140からの操作入力情報に基づいて、あるいは該操作入力情報と空調用センサ120からの検出結果情報とに基づいて算出される制御状態を設定する。これらの空調制御は、エアコンECU100のCPUが自身のROMに格納される空調制御プログラムPG(図2)を実行する形で実行される。
【0024】
エンジンECU200は、エンジン300の回転数(回転速度)を目標回転数(目標回転速度)とするためのフィードバック制御を実行する等、図1に示すエンジン300に関する各種制御を行うエンジン制御手段として機能するものであり、エアコンECU100と同様、CPU、ROM、RAM等を備える周知の構成を有して構成される。エンジンECU200は、エンジン回転数センサ221やイグニッションスイッチ(エンジン始動操作部)222と接続しており、エンジン回転数とイグニッション信号を取得することができる。そして、エンジンECU200は、エンジン回転数センサ221により検出されたエンジン回転数に基づいて、エンジン300のアイドル時におけるアイドル回転数の目標値を設定し、該アイドル回転数が目標値と一致するようエンジン回転数を制御する。さらに、エンジンECU200は、レギュレータ501からオルタネータ500の出力情報(発電電力情報)を受け、これに基づいて上記調整電圧を設定し、バッテリー電圧が所定の調整電圧となるようレギュレータ501に制御指令を出力する。
【0025】
エンジン回転数センサ221は、周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、エンジンのクランク軸付近に設置されてクランク軸の回転を検出してパルス信号としてエンジンECU200に送るものである。エンジンECU200では、所定時間当たりのクランク軸の回転数をエンジン回転数(即ちエンジン回転速度)に換算し、例えば上述のフィードバック制御に用いる。
【0026】
ワイパーECU400は、ワイパーに関連する各種制御を行うものであり、エアコンECU100と同様、CPU、ROM、RAM等を備える周知の構成を有して構成される。ワイパースイッチ421への操作に基づいて、ワイパー駆動回路431にワイパーモータ421を駆動するための駆動指令を与えてワイパー442を駆動させる一方で、ワイパーデアイサスイッチ420への操作に基づいて、ワイパーデアイサ駆動回路(ワイパーデアイサ駆動手段)430に、ワイパーデアイサ440を駆動させるための駆動指令を与えて該ワイパーデアイサ440を発熱駆動させる。
【0027】
図4に示すように、ワイパー442(442R,442L)は、フロントガラスWSの外面を払拭するワイパーブレード443(443R,443L)を有し、ワイパーモータ421により該フロントガラスWS上を往復駆動する。図4に示すワイパー422の位置が該ワイパー422の停止位置であり、該停止位置に対応する領域には電気抵抗線であるワイパーデアイサ440が、両停止位置をまたいで配設されている。
【0028】
ところで、本実施形態の車両用凍結除去システムAは、デフロスタ吹出口43からのフロントガラスWSに空調気流を吹き付けるデフロスタモードにより空調出力を実施するよう、吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ)143、あるいはデフロスタスイッチ147が操作入力された場合には、その操作入力に基づいて、エアコンユニット(空調出力手段)Uに当該デフロスタモードでの空調出力を実行させることができる。具体的に言えば、当該操作入力に基づいて、エアコンECU100がエアコンユニットUの吹出口設定モードをデフロスタモードに設定し、デフロスタ吹出口43から空調気流が出力されるようサーボモータ73を駆動して、吹出口切替用ダンパー32〜36の開閉状態を変更する。
【0029】
なお、本実施形態におけるデフロスタモードは、デフロスタ吹出口43からのみ空調気流が吹き出すモードだけでなく、デフロスタ吹出口43と同時に他の吹出口(例えばフット吹出口44,47)からも空調気流を吹き出すモードも含むものとする。後者のモードは、吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ)143により設定可能である。
【0030】
そして、本実施形態の車両用凍結除去システムAは、該デフロスタモードでの空調出力を実行させる際に、外気温センサ(車外気温検出手段)122が検出する車外気温が、エアコンECU100の記憶部に記憶された所定温度閾値を下回っている場合には、ワイパーデアイサ駆動回路(ワイパーデアイサ駆動手段)430によるワイパーデアイサ440の発熱駆動も同時に実行する。
【0031】
さらに、本実施形態の車両用凍結除去システムAは、オルタネータ500の出力情報(発電電力情報)を受け、オルタネータ500の出力が予め定められた出力レベルを下回っているか否かを判定し(発電量判定手段)、デフロスタモードによる空調出力と、ワイパーデアイサ440の発熱駆動(所定電圧の印加)とが同時に実行される際に、オルタネータ500の出力が予め定められた出力レベルを下回っている場合には、エンジンECU200に対し、エンジン300の回転速度のアップを要求するためのアイドルアップ要求情報を出力し(アイドルアップ要求手段)、該要求に基づいて、オルタネータの駆動源となるエンジン300の回転数(エンジン回転速度)をアップする。
【0032】
以下、エアコンECU100によるデフロスタ出力制御について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
S1において、エアコンECU100は、空調用操作部140であるデフロスタ空調出力実行操作部(吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ)143あるいはデフロスタスイッチ147)により、デフロスタモードを実施する操作入力がなされたか否かを判定する。デフロスタモードを実施する操作入力があった場合はS2に進み、無ければ本制御を終了する。
【0034】
S2では、エアコンECU100が、外気温センサ122の検出する車外気温が予め定められた温度閾値(0℃以下に設定される)を下回っているか否かを判定する。該温度閾値を下回っていればS3に進み、下回っていなければS6に進む。
【0035】
S6では、エアコンECU100は通常のデフロスタモードを実施する。即ち、吹出口切替スイッチ(MODEスイッチ)143あるいはデフロスタスイッチ147により設定された吹出しモードによる空調出力を実施する。
【0036】
他方、S3では、エアコンECU100は通常のデフロスタモードでの空調出力を実施するとともに、ワイパーデアイサ440の発熱駆動も同時に実施するために、ワイパーECU400に対しワイパーデアイサ440の駆動要求を出力する。ワイパーECU400は該駆動要求を受けて、ワイパーデアイサ駆動回路に対しワイパーデアイサ440に所定電圧を印加するよう制御指令を与える。
【0037】
S4では、オルタネータ500の出力が予め定められた出力レベルを下回っているか否かを判定する。具体的には、エアコンECU100が、エンジンECU200に対しレギュレータ501から取得したオルタネータ500の出力情報(発電電力情報)を要求して、これを受信する。そして、エアコンECU100の記憶部の所定領域に記憶されている出力レベルと、現在のオルタネータ500の出力とを比較する形で、上記判定を行う。判定をエンジンECU200によって行い、その結果をエアコンECUに送信する形でもよい。オルタネータ500の現在の出力が上記出力レベルを下回っている場合はS5に進み、下回っていない場合にはそのまま本制御を終了する。
【0038】
S5では、エアコンECU100がエンジンECU200に対しアイドルアップを要求する。エンジンECU200はこれを受けて、それ以前よりもエンジン回転数(エンジン回転速度)をアップさせる。具体的には、エンジンECU200において、通常時には通常回転数(通常回転速度)が設定されているエンジン300の目標回転数(目標回転速度)を、アイドルアップ用回転数(アイドルアップ用回転速度)に設定する。通常回転数(通常回転速度)及びアイドルアップ用回転数(アイドルアップ用回転速度)は、エンジンECU200の記憶部の所定領域に格納されているものが使用される。なお、アイドルアップ用回転数は、通常回転数に所定回転数を加算する形で設定されてもよい。
【0039】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、エアコンECU100が主体となって図5の制御を実施していたが、制御の主体をエンジンECU200やワイパーECU400、あるいはこれらECUと車両内LAN50を介して接続する他のECUが主体となって行ってもよい。この場合、デフロスタモードでの空調出力はエアコンECU100が主体となるECUからの駆動要求に基づいて実施する構成となるし、ワイパーデアイサ440の駆動も、主体となるECUからの駆動要求に基づいて実施する構成となる。図5の各ステップにおいて必要とされる情報も、車両内LAN50を介した各ECU間の通信により取得する構成となる。
【0041】
また、図5のS3について、ワイパーデアイサ440の発熱駆動を予め定められた駆動時間のみとする構成としてもよい。これにより、ワイパーデアイサ440による過度の発熱を防止できる。
【0042】
また、図5のS5について、アイドルアップ要求を行う前に、コンプレッサ1のエンジン300との連動駆動の有無を判定して、連動駆動状態であれば、これをオフ(マグネットクラッチ302のオフ)してコンプレッサ1とエンジン300とを切り離し、それでもエンジン回転数が所定出力レベルを下回る場合に、アイドルアップを実施するように構成することもできる。
【0043】
また、図5のS5について、オルタネータ500の現在の出力の不足レベルに応じて、アイドルアップ用回転数(アイドルアップ用回転速度)を変更して設定可能する構成とすることもできる。この場合、複数段階のアイドルアップ用回転数(アイドルアップ用回転速度)と、これらを使い分けるための判定基準を記憶部に格納しておく必要がある。
【0044】
また、図5の制御は、S1のデフロスタ空調出力実行操作部へのデフロスタモードを実施する操作入力により開始され、デフロスタモードでの空調出力に際し車外気温が所定温度閾値を下回っている場合には(S2)、ワイパーデアイサ440の発熱駆動も同時に実行する(S3)るものであったが、ワイパーデアイサ駆動操作部(ワイパーデアイサスイッチ)420への操作入力に基づいてワイパーデアイサ440の発熱駆動を開始し、その発熱駆動に際し車外気温が所定温度閾値を下回っている場合には、デフロスタモードでの空調出力も同時に実行するように構成してもよい。
【0045】
なお、上記実施形態における電気抵抗線はワイパーデアイサに限られず、フロントガラスの曇り防止のためにフロントガラスに広範囲に配置された電気抵抗線(例えばフロントガラスに全体的に配置された電気抵抗線や、フロントガラスの外周部分を環状に囲む形で配置されるような電気抵抗線)でもよいが、本発明のように、車両始動直後に実施され易いフロントガラスの解氷を目的とするならば、消費電力を少しでも抑えられるワイパーデアイサのみとすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の車両用凍結除去システムを概略的に示すブロック図。
【図2】空調制御装置の全体構成を概略的に示すブロック図。
【図3】車室内に配された吹出口の位置関係を示す図。
【図4】電気抵抗線の配置図。
【図5】デフロスタ出力制御の流れを説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0047】
A 車両用凍結除去システム
U エアコンユニット(空調出力手段)
100 エアコンECU(車両用空調手段、凍結除去制御手段、発電量判定手段、アイドルアップ要求手段)
120 空調用センサ
122 外気温センサ(車外気温検出手段)
130 空調用駆動部
140 空調用操作部(空調出力状態設定操作部)
200 エンジンECU(エンジン制御手段)
221 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
222 車速センサ(車速検出手段)
300 車載エンジン
400 ワイパーECU
440 電気抵抗線(ワイパーデアイサ)
430 ワイパーデアイサ駆動回路(電気抵抗線発熱駆動手段)
500 オルタネータ
501 レギュレータ
600 バッテリー電源(車載バッテリー)
RC 冷凍サイクル
WS フロントガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンの回転を利用して発電するオルタネータからの出力で充電される車載バッテリーからの電力供給により、少なくとも車両のフロントガラスに向けて空調気流を吹き付けるデフロスタモードによる空調出力が可能な車両用空調手段と、同じく前記車載バッテリーからの電力供給により、車両のフロントガラスに配設された電気抵抗線に所定電圧を印加可能な電気抵抗線発熱駆動手段と、を備える車両用凍結除去システムであって、
車外気温を検出する車外気温検出手段と、
車室内に設けられたデフロスタ空調出力実行操作部への操作入力に基づいて、前記空調出力手段に前記デフロスタモードでの空調出力を実行させるとともに、該デフロスタモードでの空調出力を実行させる際に、前記車外気温検出手段が検出する車外気温が予め定められた温度閾値を下回っている場合には、前記電気抵抗線発熱駆動手段による前記電気抵抗線の発熱駆動も同時に実行させる凍結除去制御手段と、
前記オルタネータの出力が予め定められた出力レベルを下回っているか否かを判定する発電量判定手段と、
前記エンジンの回転速度を目標回転速度とするためのフィードバック制御を実行するエンジン制御手段と、
前記車両用空調手段による前記デフロスタモードによる空調出力と、前記電気抵抗線発熱駆動手段による前記電気抵抗線への所定電圧の印加とが同時実行される際に、前記オルタネータの出力が予め定められた出力レベルを下回っている場合には、前記エンジン制御手段に対し前記エンジンの回転速度を前記同時実行前よりもアップさせるアイドルアップ要求を行なうアイドルアップ要求手段と、
を備えることを特徴とする車両用凍結除去システム。
【請求項2】
前記電気抵抗線は、前記フロントガラスの下側の、ワイパーブレードの停止位置に対応する領域に配設されたワイパーデアイサである請求項1記載の車両用凍結除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−78629(P2009−78629A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247889(P2007−247889)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】