説明

車両用前照灯のレベリング装置

【課題】従来の車両用前照灯のレベリング装置では、プリント基板をケース体に、プリント基板に撓みなどのストレスの発生が無く、かつ、高精度に固定することについて課題がある。
【解決手段】この発明は、ハウジング9、10と、モータ11および駆動力伝達機構17およびプリント配線基板14と、シャフト12と、を備える。プリント配線基板14には、嵌合孔29が設けられている。前側ハウジング9には、嵌合ピン30が設けられている。前側ハウジング9とプリント配線基板14とには、規制部31、32がそれぞれ設けられている。ハウジング9、10には、基板受部33と押圧ピン34と固定部が設けられている。この結果、この発明は、プリント配線基板14をハウジング9、10に、プリント配線基板14に撓みなどのストレスの発生が無く、かつ、高精度に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、ヘッドランプやフォグランプなどの車両用前照灯の光軸を調整するレベリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯のレベリング装置は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来の車両用前照灯のレベリング装置について説明する。従来の車両用前照灯のレベリング装置は、ケース体と、このケース体内に配置されているモータおよびプリント基板と、このモータの回転によって前後に移動するシャフトと、を備えるものである。プリント基板を介してモータに給電することにより、モータが駆動してシャフトが前後に移動して車両用前照灯の光軸が調整される。
【0003】
かかる車両用前照灯のレベリング装置においては、プリント基板をケース体に、プリント基板に撓みなどのストレスの発生が無く、かつ、高精度に固定する必要がある。すなわち、プリント基板に撓みなどのストレスの発生があると、プリント基板自身、プリント基板に実装されている電気部品(電子部品)、プリント基板上のプリント配線と電気部品とを電気的に接続する半田などに、ダメージやストレスを与える虞がある。また、高精度に固定しないと、高精度の光軸調整が得られない虞がある。
【0004】
ところが、前記の従来の車両用前照灯のレベリング装置においては、プリント基板をケース体に、プリント基板に撓みなどのストレスの発生が無く、かつ、高精度に固定する構成について考慮されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−97107号公報
【特許文献1】特開2001−163116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用前照灯のレベリング装置では、プリント基板をケース体に、プリント基板に撓みなどのストレスの発生が無く、かつ、高精度に固定する構成について考慮されていないという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、ハウジングと、駆動装置および基板と、シャフトと、を備え、ハウジングと基板のいずれか一方には嵌合孔が設けられていて、ハウジングと基板のいずれか他方には嵌合孔に基板の板厚方向に嵌合する嵌合ピンが設けられていて、ハウジングと基板とには相互に当接することにより嵌合孔および嵌合ピンを中心としてハウジングと基板とが基板の板面方向に回転するのを規制する規制部がそれぞれ設けられていて、ハウジングには基板を基板の板厚方向に挟み込んで固定する固定部が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、基板のうち相互に嵌合する嵌合孔および嵌合ピンの近傍にはシャフトの進退量を計測する位置センサが設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、基板のうち規制部の近傍には車両側のコネクタと電気的に接続するおす型端子を有するコネクタ部が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、嵌合ピンを嵌合孔に基板の板厚方向に嵌合させることにより、基板がハウジングに対して嵌合ピンおよび嵌合孔を中心とする径方向にぶれるのを防止することができる。また、規制部を相互に当接させることにより、基板がハウジングに対して嵌合ピンおよび嵌合孔を中心とする基板の板面方向にぶれる(回転する)のを防止することができる。さらに、ハウジングの固定部が基板を基板の板厚方向に挟み込むことにより、基板がハウジングに対して基板の板厚方向にぶれるのを防止することができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、複数の固定ピンを複数の固定孔中に圧入して基板をハウジングに固定するレベリング装置、または、複数本のスクリューを基板とハウジングとにねじ込んで基板をハウジングに固定するレベリング装置と比較して、基板をハウジングに、基板に撓みなどのストレスの発生が無く、かつ、高精度に固定することができる。これにより、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、基板に撓みなどのストレスの発生がないので、基板自身、基板に実装されている電気部品(電子部品)、基板上のプリント配線と電気部品とを電気的に接続する半田などに、ダメージやストレスなどが無い。また、高精度に固定されるので、高精度の光軸調整が得られる。
【0011】
すなわち、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、嵌合ピンを嵌合孔中に嵌合させ、また、規制部を相互に当接させ、さらに、ハウジングの固定部の間に基板を挟み込むものであるから、基板には固定ピンを固定孔中に圧入する際の圧入力またはスクリューを基板とハウジングとにねじ込む際のねじ込み力などがかからないので、基板をハウジングに基板に撓みなどのストレスの発生が無く固定することができる。また、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、嵌合ピンと嵌合孔との嵌合により基板のハウジングに対する嵌合ピンおよび嵌合孔を中心とする径方向のぶれを防止でき、また、規制部の相互当接により基板のハウジングに対する嵌合ピンおよび嵌合孔を中心とする基板の板面方向の回転を防止でき、さらに、ハウジングの固定部の基板の挟み込みにより基板のハウジングに対する基板の板厚方向のぶれを防止できるので、基板をハウジングに高精度に固定することができる。
【0012】
しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、基板とハウジングとの寸法管理が、嵌合ピンと嵌合孔との嵌合寸法と、規制部の相互当接寸法と、ハウジングの固定部の基板の挟み込み寸法と少なくて済む。また、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、基板をハウジングに、基板に撓みなどのストレスの発生が無くかつ高精度に固定することができるので、基板とハウジングとの寸法管理が簡単となり、要求される寸法精度が軽減されて、製造コストを安価にすることができる。
【0013】
その上、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、固定ピンを固定孔中に圧入する必要がないので、固定ピンを固定孔中に圧入する際に発生する摩耗かすがないので、摩耗かすの除去作業が不要であり、また、スクリューなどの部品を必要としないので、その分、製造コストを安価にすることができる。また、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、嵌合ピンを嵌合孔中に嵌合させ、また、規制部を相互に当接させ、さらに、ハウジングの固定部の間に基板を挟み込むものであるから、複数の固定ピンを複数の固定孔中に圧入したり、または、複数本のスクリューを基板とハウジングとにねじ込んだりするレベリング装置と比較して、基板をハウジングに簡単に固定することができる。
【0014】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、基板のうち相互に嵌合する嵌合孔および嵌合ピンの近傍にシャフトの進退量を計測する位置センサを設けたので、相互に当接する規制部の間に僅少の隙間があったとしても、基板がハウジングに対して嵌合孔および嵌合ピンを中心として基板の板面方向に回転するだけであるから、その回転中心の近傍にある位置センサのシャフトの進退量の計測精度には影響が無い。これにより、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、位置センサによりシャフトの進退量を高精度に計測することができるので、高精度に光軸を調整することができる。
【0015】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、基板のうち規制部の近傍には車両側のコネクタと電気的に接続するおす型端子を有するコネクタ部が設けられているので、車両側のコネクタを介して基板のコネクタ部に外力がかかっても、その外力をコネクタ部の近傍の規制部を介してハウジングで受け止めることができる。これにより、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用前照灯のレベリング装置は、外力の影響を軽減することができるので、レベリング装置の部品へのストレスを軽減することができ、耐久性が向上し、かつ、高精度の光軸調整が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、この発明にかかる車両用前照灯のレベリング装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
以下、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置の構成について説明する。図1において、符号1は、この実施例におけるレベリング装置を備える車両用前照灯であって、この例ではヘッドランプである。前記ヘッドランプ1は、灯室2を区画する固定部材としてのランプハウジング3およびランプレンズ4と、前記灯室2内に配置されている傾動部材としての取付ブラケット5と、前記ランプハウジング3と前記取付ブラケット5との間に配置されているこの実施例における車両用前照灯のレベリング装置6と、を備えるものである。
【0018】
前記傾動部材は、1個もしくは複数個のランプユニット(図示せず)と、前記1個もしくは複数個のランプユニットを取り付けた前記取付ブラケット5と、から構成されている。前記ランプユニットは、たとえば、プロジェクタタイプやリフレクタタイプ(反射タイプ)や直射タイプなどある。前記ランプユニットは、光源(図示せず)からの光(図示せず)を所定の光軸(図示せず)に沿って前記ランプレンズ4を通して車両の前方に所定の配光パターン(図示せず)で照射する。なお、前記ランプユニットの構成部品たとえばリフレクタと前記取付ブラケット5とが兼用する場合がある。また、光源としては、たとえば、LEDなどの半導体型光源、HIDなどの放電灯、ハロゲンバルブ、白熱バルブなどがある。さらに、所定の配光パターンとしては、たとえば、すれ違い用配光パターン、高速道路用配光パターン、走行用配光パターンなどがある。
【0019】
前記傾動部材の前記取付ブラケット5は、前記ランプハウジング3に前記レベリング装置6およびピボット機構7を介して前記ピボット機構7の球部8の中心を通る水平線H(ほぼ水平線も含む)回りに上下に回転可能に取り付けられている。なお、前記ランプハウジング3と前記取付ブラケット5との間に左右用の光軸調整機構(図示せず)を設け、前記傾動部材を前記ピボット機構7の球部8の中心を通る垂直線V(ほぼ垂直線も含む)回りに左右に光軸調整可能に構成しても良い。
【0020】
前記レベリング装置6は、図1、図4、図5に示すように、ハウジング9、10と、駆動装置としてのモータ11および駆動力伝達機構17と、シャフト12と、コネクタ部13と、基板としてのプリント配線基板14と、を備える。
【0021】
前記ハウジング9、10は、たとえば係合爪(図示せず)により、前記ランプハウジング3にOリング形状のパッキン(図示せず)を介して気密にもしくは水密に取り付けられている。前記ハウジングは、図1、図3〜図5に示すように、前側のハウジング9と、後側のハウジング10とに、垂直(ほぼ垂直も含む)に2分割されている。前記前側ハウジング9と前記後側ハウジング10とをたとえば係合爪(図示せず)などにより着脱可能に一体にしまたは固定することにより前記ハウジングが構成される。
【0022】
前記前側ハウジング9と前記後側ハウジング10との間には、シール部材16が介在されている。前記シール部材16は、環状形状をなし、前記前側ハウジング9と前記後側ハウジング10との間を、気密にもしくは水密に保持するものである。
【0023】
前記前側ハウジング9の前面側(外面側)の上側のほぼ中央には、円筒部15が一体に設けられている。前記後側ハウジング10の後面側(外面側)の上側のほぼ中央には、小円筒部21が前記前側ハウジング10の前記円筒部15と同軸上に一体に設けられている。また、前記後側ハウジング10の後面側(外面側)の下側のほぼ中央には、車両側のコネクタ(図示せず)挿入用の凹部(図示せず)が設けられている。前記凹部の底には、3個の挿入孔(図示せず)が等間隔に一列(一直線)にそれぞれ設けられている。3個の前記挿入孔中には、前記コネクタ部13の3本のおす型端子22がそれぞれ挿入されている。
【0024】
前記モータ11は、出力軸を有する。前記モータ11は、前記前側ハウジング9の保持部(図示せず)に保持されていて、前記ハウジング9、10内に配置されている。
【0025】
前記シャフト12は、アジャストスクリューであって、前記前側ハウジング9の前記円筒部15および前記後側ハウジング10の前記小円筒部21内に、前記駆動力伝達機構17およびクラウンギア24を介して、前記ハウジング9、10および前記円筒部15に対して前後方向すなわち前記シャフト12の軸方向に進退可能にかつ回転可能に取り付けられている。前記シャフト12の一端部(前端部)には、スクリュー部25が設けられている。
【0026】
前記シャフト12の前記スクリュー部25には、ナット部材(ナット、スクリューマウンティング)28が、前記シャフト12の軸方向(図1中の実線矢印方向であって、前後方向)にねじ送り可能にねじ装着されている。 前記ナット部材28は、前記取付ブラケット5に装着されている。これにより、前記シャフト12は、前記ナット部材28を介して前記傾動部材の前記取付ブラケット5に取り付けられている。また、前記のように、前記ハウジング9、10は、前記ランプハウジング3に取り付けられている。この結果、前記レベリング装置6は、前記固定部材としての前記ランプハウジング3と前記傾動部材としての前記取付ブラケット5との間に配置されていることとなる。
【0027】
前記シャフト12が前記モータ11の駆動により前記ハウジング9、10および前記円筒部15に対して図1中の実線矢印方向(前記シャフト12の軸方向)に進退すると、前記ナット部材28が図1中の破線矢印方向に前記シャフト12の進退と一体に進退する。また、前記シャフト12が前記クラウンギア24の手動回転により前記ハウジング9、10および前記円筒部15に対して図1中の実線矢印方向に回転すると、前記ナット部材28が図1中の破線矢印方向にねじ送り作用で前記シャフト12に対して進退する。これにより、前記取付ブラケット5をはじめとする前記傾動部材が前記ランプハウジング3をはじめとする固定部材に対して前記水平線H回りに図1中の二点鎖線矢印方向に上下に傾動して、前記ヘッドランプ1の光軸が調整される。
【0028】
前記駆動力伝達機構17は、たとえば、第1ギア18と、第2ギア19と、第3ギアのウォーム20と、ウォームホイール26と、前記シャフト12の進退と連動して進退するロッド27と、から構成されている。前記駆動力伝達機構17は、前記ハウジング9、10内であって、前記モータ11と前記シャフト12との間に配置されていて、前記モータ11の駆動により前記シャフト12を前記ハウジング9、10および前記円筒部15に対して図1中の実線矢印方向(前記シャフト12の軸方向)に進退させる。
【0029】
前記シャフト12は、前記クラウンギア24に対して回転不可能かつ軸方向に移動可能(進退可能)に取り付けられている。これにより、前記シャフト12は、前記クラウンギア24の手動回転により前記ハウジング9、10および前記円筒部15に対して前記クラウンギア24と共に回転する。
【0030】
前記シャフト12は、前記駆動力伝達機構17および前記クラウンギア24を介して、前記ハウジング9、10および前記円筒部15に対して軸方向に進退可能にかつ回転可能に取り付けられている。この結果、前記シャフト12は、前記モータ11の駆動により前記ハウジング9、10および前記円筒部15に対して図1中の実線矢印方向(前記シャフト12の軸方向)に進退し、前記クラウンギア24の手動回転により前記ハウジング9、10および前記円筒部15に対して前記クラウンギア24と共に回転する。
【0031】
前記プリント配線基板14は、前記ハウジング9、10内に配置されていて前記ハウジング9、10に固定されている。すなわち、図2〜図5に示すように、前記プリント配線基板14の上端部には、前記プリント配線基板14を前記ハウジング9、10に固定する際の基準となる円形の嵌合孔29が前記プリント配線基板14の板厚方向に設けられている。一方、前記前側ハウジング9の上端部には、前記嵌合孔29に前記プリント配線基板14の板厚方向に嵌合する円柱形の嵌合ピン30が前記嵌合孔29に対応して一体に設けられている。
【0032】
前記プリント配線基板14の下端部の左右両側と前記前側ハウジング9の下端部の左右両側とには、相互に当接することにより、前記嵌合孔29および前記嵌合ピン30の中心を中心として前記前側ハウジング9と前記プリント配線基板14とが前記プリント配線基板14の板面方向に回転するのを規制する規制部31、32がそれぞれ設けられている。前記プリント配線基板14側の前記規制部31は、前記プリント配線基板14の縁に設けた切欠からなる。一方、前記前側ハウジング9側の前記規制部32は、前記前側ハウジング9に一体に設けたリブからなる。
【0033】
前記ハウジング9、10には、前記プリント配線基板14を前記プリント配線基板14の板厚方向に挟み込んで固定する固定部33、34がそれぞれ設けられている。すなわち、前記前側ハウジング9には、前記プリント配線基板14を受ける基板受部33が設けられている。また、前記後側ハウジング10には、前記プリント配線基板14を前記前側ハウジング9側に押圧する押圧ピン34が前記基板受部33に対応して設けられている。
【0034】
前記プリント配線基板14の一面には、コンデンサやハイブリットICなどの電子部品35と前記コネクタ部13が実装されている。また、前記プリント配線基板14の他面には、配線(図示せず)と半田付けされる箇所のランド(図示せず)とがそれぞれプリントされている。
【0035】
前記ハウジング9、10に取り付けられている前記プリント配線基板14と前記駆動力伝達機構17の前記ロッド27との間には、位置センサ36が設けられている。前記位置センサ36は、スライド抵抗からなり、抵抗器を内蔵する本体部37と、スライド部38と、から構成されている。前記本体部37が前記プリント配線基板14に取り付けられている。前記スライド部38は、前記駆動力伝達機構17の前記ロッド27に連結されている。前記スライド部38が前記シャフト12および前記駆動力伝達機構17の前記ロッド27と共に移動することにより、前記本体部37中の抵抗器の抵抗値が変化し、この抵抗値の変化で前記スライド部38の移動量、すなわち、前記ヘッドランプ1の光軸の上下方向の傾動角度を計測把握することができる。
【0036】
前記位置センサ36と前記コネクタ部13の3本の前記おす型端子22と前記モータ11とをオートレベリングシステムの制御装置(図示せず)に接続することにより、車両の姿勢の変化に応じて前記ヘッドランプ1の上下方向の光軸を自動的に調整することができる。
【0037】
前記プリント配線基板14の中間部には、2個のモータ接続端子39が固定されている。前記モータ接続端子39と前記プリント配線基板14のプリント配線とが電気的に接続されている。また、前記モータ接続端子39と前記モータ11とが電気的に接続されている。
【0038】
前記コネクタ部13は、前記プリント配線基板14と電気的に接続されていて、かつ、前記車両側のコネクタと電気的に接続されることにより、前記プリント配線基板14を介して前記モータ11に給電するものである。前記コネクタ部13は、前記車両側のコネクタと電気的に接続される複数本この例では3本のおす型端子(電源側の給電端子)22と、3本のおす型端子22が圧入固定されている1個の土台(ベース)40、前記プリント配線基板14に加締め付け(あるいは、加締め付けてかる半田付け)して固定する複数枚この例では2枚の固定片(固定ブラケット)41と、から構成されている。
【0039】
図2に示すように、前記コネクタ部13の3本の前記おす型端子22を結ぶ直線42に接するもしくは近くを通るように、前記嵌合孔29および前記嵌合ピン30の中心を中心として円43を描く。前記円43と前記プリント配線基板14の外形(縁)とが重なる箇所(図2中の右側の縁)もしくは重なる箇所の近くの箇所(図2中の左側の縁)には、切欠の前記規制部31を設ける。
【0040】
前記プリント配線基板14の前記嵌合孔29中に前記前側ハウジング9の前記嵌合ピン30を嵌合させる。また、前記プリント配線基板14の切欠の前記規制部31と前記前側ハウジング9のリブの前記規制部32とを相互に当接させる。さらに、前記プリント配線基板14を前記前側ハウジング9の前記基板受部33と前記後側ハウジング10の前記押圧ピン34との間に挟み込む。この状態で、前記前側ハウジング9と前記後側ハウジング10とを取り付ける。この結果、前記プリント配線基板14が前記ハウジング9、10に固定される。
【0041】
この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0042】
まず、ヘッドランプ1の上下方向の光軸の初期設定について説明する。工具によりクラウンギア24を手動により回転させる。すると、駆動力伝達機構17の作用により、シャフト12は、ハウジング9、10および円筒部15に対して軸方向に進退(移動)することなく回転するだけである。
【0043】
シャフト12がクラウンギア24の手動回転によりハウジング9、10および円筒部15に対して図1中の実線矢印方向に回転すると、シャフト12のスクリュー部25にねじ込まれているナット部材28がねじ送り作用によりシャフト12の軸方向に進退する。このナット部材28の進退により、取付ブラケット5をはじめとする傾動部材が水平線H回りに図1中の二点鎖線矢印方向に上下に傾動して、ヘッドランプ1の上下方向の光軸の初期設定が行われる。
【0044】
ヘッドランプ1の上下方向の光軸の初期設定が完了して、ヘッドランプ1のランプユニットの光源を点灯する。すると、光源からの光は、所定の光軸に沿ってランプレンズ4を通して車両の前方に所定の配光パターンで照射される。
【0045】
ここで、車両の姿勢が変化すると、オートレベリングシステムの制御装置が車両の姿勢の変化を検知してモータ11を駆動させる。なお、手動スイッチによりモータ11を駆動させても良い。モータ11が駆動すると、モータ11の駆動力すなわちモータ11の出力軸の回転力は、駆動力伝達機構17を介してシャフト12に伝達される。すると、駆動力伝達機構17の作用により、シャフト12は、ハウジング9、10および円筒部15に対して回転しないで進退するだけである。
【0046】
このために、シャフト12は、モータ11の駆動によりハウジング9、10および円筒部15に対して図1中の実線矢印方向(シャフト12の軸方向)に進退すると、ナット部材28が図1中の破線矢印方向にシャフト12の進退と一体に進退する。これにより、取付ブラケット5をはじめとする傾動部材が水平線H回りに図1中の二点鎖線矢印方向に上下に傾動して、ヘッドランプ1の光軸が車両の姿勢の変化に対応して自動的に調整される。
【0047】
この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0048】
この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、嵌合ピン30を嵌合孔29にプリント配線基板14の板厚方向に嵌合させることにより、プリント配線基板14がハウジング9、10に対して嵌合ピン30および嵌合孔29を中心とする径方向(図3中の実線矢印方向)にぶれるのを防止することができる。また、規制部31、32を相互に当接させることにより、プリント配線基板14がハウジング9、10に対して嵌合ピン30および嵌合孔29を中心とするプリント配線基板14の板面方向(図3中の実線矢印方向)にぶれる(回転する)のを防止することができる。さらに、ハウジング9、10の基板受部33と押圧ピン34とがプリント配線基板14をプリント配線基板14の板厚方向に挟み込むことにより、プリント配線基板14がハウジング9、10に対してプリント配線基板14の板厚方向にぶれるのを防止することができる。この結果、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、複数の固定ピンを複数の固定孔中に圧入して基板をハウジングに固定するレベリング装置、または、複数本のスクリューを基板とハウジングとにねじ込んで基板をハウジングに固定するレベリング装置と比較して、プリント配線基板14をハウジング9、10に、プリント配線基板14に撓みなどのストレスの発生が無く、かつ、高精度に固定することができる。これにより、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、プリント配線基板14に撓みなどのストレスの発生がないので、プリント配線基板14自身、プリント配線基板14に実装されている電子部品35、プリント配線基板14上のプリント配線(図示せず)と電子部品35とを電気的に接続する半田(図示せず)などに、ダメージやストレスなどが無い。また、高精度に固定されるので、高精度の光軸調整が得られる。
【0049】
すなわち、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、嵌合ピン30を嵌合孔29中に嵌合させ、また、規制部31、32を相互に当接させ、さらに、ハウジング9、10の基板受部33と押圧ピン34との間にプリント配線基板14を挟み込むものであるから、プリント配線基板14には固定ピンを固定孔中に圧入する際の圧入力またはスクリューをプリント配線基板14とハウジング9、10とにねじ込む際のねじ込み力などがかからないので、プリント配線基板14をハウジング9、10にプリント配線基板14に撓みなどのストレスの発生が無く固定することができる。また、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、嵌合ピン30と嵌合孔29との嵌合によりプリント配線基板14のハウジング9、10に対する嵌合ピン30および嵌合孔29を中心とする径方向のぶれを防止でき、また、規制部31、32の相互当接によりプリント配線基板14のハウジング9、10に対する嵌合ピン30および嵌合孔29を中心とするプリント配線基板14の板面方向の回転を防止でき、さらに、ハウジング9、10の基板受部33と押圧ピン34とのプリント配線基板14の挟み込みによりプリント配線基板14のハウジング9、10に対するプリント配線基板14の板厚方向のぶれを防止できるので、プリント配線基板14をハウジング9、10に高精度に固定することができる。
【0050】
しかも、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、プリント配線基板14とハウジング9、10との寸法管理が、嵌合ピン30と嵌合孔29との嵌合寸法と、規制部31、32の相互当接寸法と、ハウジング9、10の基板受部33と押圧ピン34とのプリント配線基板14の挟み込み寸法と少なくて済む。また、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、プリント配線基板14をハウジング9、10に、プリント配線基板14に撓みなどのストレスの発生が無くかつ高精度に固定することができるので、プリント配線基板14とハウジング9、10との寸法管理が簡単となり、要求される寸法精度が軽減されて、製造コストを安価にすることができる。
【0051】
その上、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、固定ピンを固定孔中に圧入する必要がないので、固定ピンを固定孔中に圧入する際に発生する摩耗かすがないので、摩耗かすの除去作業が不要であり、また、スクリューなどの部品を必要としないので、その分、製造コストを安価にすることができる。また、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、嵌合ピン30を嵌合孔29中に嵌合させ、また、規制部31、32を相互に当接させ、さらに、ハウジング9、10の基板受部33と押圧ピン34との間にプリント配線基板14を挟み込むものであるから、複数の固定ピンを複数の固定孔中に圧入したり、または、複数本のスクリューを基板とハウジングとにねじ込んだりするレベリング装置と比較して、基板をハウジングに簡単に固定することができる。
【0052】
また、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、プリント配線基板14のうち相互に嵌合する嵌合孔29および嵌合ピン30の近傍にシャフト12の進退量を計測する位置センサ36を設けたので、相互に当接する規制部31、32の間に僅少の隙間があったとしても、プリント配線基板14がハウジング9、10に対して嵌合孔29および嵌合ピン30を中心としてプリント配線基板14の板面方向に回転するだけであるから、その回転中心の近傍にある位置センサ36のシャフト12の進退量の計測精度には影響が無い。これにより、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、位置センサ36によりシャフト12の進退量を高精度に計測することができるので、高精度に光軸を調整することができる。
【0053】
さらに、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、プリント配線基板14のうち規制部31、32の近傍には車両側のコネクタと電気的に接続するおす型端子22を有するコネクタ部12が設けられているので、車両側のコネクタを介してプリント配線基板14のコネクタ部12に外力がかかっても、その外力をコネクタ部12の近傍の規制部31、32を介してハウジング9、10で受け止めることができる。これにより、この実施例における車両用前照灯のレベリング装置6は、外力の影響を軽減することができるので、レベリング装置の部品へのストレスを軽減することができ、耐久性が向上し、かつ、高精度の光軸調整が得られる。
【0054】
なお、前記の実施例においては、車両用前照灯のレベリング装置としてヘッドランプ1について説明する。ところが、この発明においては、ヘッドランプ1以外の車両用前照灯のレベリング装置にも適用することができる。
【0055】
また、前記の実施例においては、クラウンギア24を用いてシャフト12を手動により回転させて光軸調整できるようにしたものである。ところが、この発明においては、シャフト12を手動により回転させて光軸調整を行わなくても良い。
【0056】
さらに、前記の実施例においては、固定部材としてランプハウジング3を使用し、傾動部材としてランプユニットおよび取付ブラケット5を使用するものである。ところが、この発明においては、固定部材として車体を使用し、傾動部材として車両用前照灯全体を使用しても良い。
【0057】
さらにまた、前記の実施例においては、プリント配線基板14に嵌合孔29を設け、前側ハウジング9に嵌合ピン30を設けたものである。ところが、この発明においては、逆に、プリント配線基板14に嵌合ピンを設け、前側ハウジング9に嵌合孔を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明にかかる車両用前照灯のレベリング装置の実施例を示すヘッドランプの縦断面図(垂直断面図)である。
【図2】同じく、プリント配線基板を示す平面図である。
【図3】同じく、後側ハウジングを除いた状態の前側ハウジングおよびプリント配線基板を示す平面図である。
【図4】同じく、図3におけるIV−IV線断面図である。
【図5】同じく、前側ハウジングおよび後側ハウジングおよびプリント配線基板を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ヘッドランプ(レベリング装置を備える車両用前照灯)
2 灯室
3 ランプハウジング(固定部材)
4 ランプレンズ
5 取付ブラケット(傾動部材)
6 レベリング装置
7 ピボット機構
8 球部
9 前側ハウジング
10 後側ハウジング
11 モータ(駆動装置)
12 シャフト
13 コネクタ部
14 プリント配線基板(基板)
15 円筒部
16 シール部材
17 駆動力伝達機構
18 第1ギア
19 第2ギア
20 ウォーム
21 小円筒部
22 おす型端子
23 土台
24 クラウンギア
25 スクリュー部
26 ウォームホイール
27 ロッド
28 ナット部材
29 嵌合孔
30 嵌合ピン
31 切欠の規制部
32 リブの規制部
33 基板受部(固定部)
34 押圧ピン(固定部)
35 電子部品
36 位置センサ
37 本体部
38 スライド部
39 モータ接続端子
40 土台
41 固定片
42 直線
43 円
H 水平線
V 垂直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用前照灯の光軸を調整するレベリング装置において、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されている駆動装置および基板と、
前記ハウジングに対して進退可能に配置されていて、前記駆動装置の駆動により前記ハウジングに対して進退して前記車両用前照灯の光軸を調整するシャフトと、
を備え、
前記ハウジングと前記基板のいずれか一方には、嵌合孔が設けられていて、
前記ハウジングと前記基板のいずれか他方には、嵌合孔に前記基板の板厚方向に嵌合する嵌合ピンが設けられていて、
前記ハウジングと前記基板とには、相互に当接することにより、前記嵌合孔および前記嵌合ピンを中心として前記ハウジングと前記基板とが前記基板の板面方向に回転するのを規制する規制部がそれぞれ設けられていて、
前記ハウジングには、前記基板を前記基板の板厚方向に挟み込んで固定する固定部が設けられている、
ことを特徴とする車両用前照灯のレベリング装置。
【請求項2】
前記基板のうち相互に嵌合する前記嵌合孔および前記嵌合ピンの近傍には、前記シャフトの進退量を計測する位置センサが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯のレベリング装置。
【請求項3】
前記基板のうち前記規制部の近傍には、車両側のコネクタと電気的に接続するおす型端子を有するコネクタ部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯のレベリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−158283(P2009−158283A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334952(P2007−334952)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】