説明

車両用前照灯システム

【課題】グレア防止のために自動的に照射領域の少なくとも一部が遮光されてもその遮光部分の物体の検出能力の低下を軽減できる車両用前照灯システムを提供する。
【解決手段】車両用前照灯システム100は、前照灯ユニット210L,210Rと、車両前方の画像フレームデータを取得する撮影ユニット102と、配光パターンの種類とその遮光領域とが対応付けられた遮光情報を記憶する遮光記憶部106と、画像フレームデータ内の注目物体を抽出する抽出処理部104と、照射する配光パターンの選択を行う照射制御部228とを含む。照射制御部228は、画像フレームデータ内に注目物体を抽出した場合、当該注目物体に対してグレア抑制が可能な配光パターンを選択する。抽出処理部104は、遮光情報を参照して配光パターンの遮光領域に対応する注目領域を画像フレームデータ上に設定し、注目領域における注目物体の抽出能力を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯システム、特に走行中にグレア防止のために自動的に照射領域の少なくとも一部が遮光される車両用前照灯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたカメラ等の画像取得装置で自車前方に関する画像データを取得して、車両制御に利用するシステムが提案されている。そのようなシステムの中には、画像データとして、自車より前方に存在する前方車の検出を行い、検出した対向車や前走車の運転者や同乗者に不快感を伴うグレアを与えないように自車の前照灯の制御を自動で実施するものがある。例えば、特許文献1に開示されるシステムは、複数のハイビームユニットで個別照射可能なハイビーム照射エリアを形成すると共に、CCDカメラ等で車両前方の画像を取得して対向車などの照射禁止対象を検出している。そして、照射禁止対象が存在する領域を照射するハイビームユニットを消灯することにより、照射禁止対象にグレアを与えないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−37240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなシステムにおいては、対向車や前走車が存在する場合、その部分に自車の前照灯の光が直接当たらないように配光パターンが変更されてグレアの防止が実現できる。その反面、自車前方の車両や歩行者に対する光の照射が一時的に停止されるためCCDカメラ等で前方の車両や歩行者を検出している場合、遮光による暗さのために検出能力が一時的に低下してしまうことがある。その結果、遮光部分の物体検出が遅れて次の配光パターンの変更制御がスムーズに行えなくなる場合がある。また、レーン検出等を行っている場合には、遮光部分が広がることによりレーンの検出精度が低下する場合があり、レーン検出に基づく制御がスムーズにできなくなる場合がある。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、グレア防止のために自動的に照射領域の少なくとも一部が遮光された場合でも、その遮光部分の物体の検出能力の低下を軽減できる車両用前照灯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用前照灯システムは、複数種類の配光パターンの中からいずれかを選択的に車両の前方に照射する灯具ユニットと、配光パターンを含む車両前方に関する画像フレームデータを取得可能な撮影ユニットと、配光パターンの種類とその遮光領域とが対応付けられた遮光情報を記憶する遮光記憶部と、撮影ユニットが取得した画像フレームデータ内の注目物体の抽出を行う抽出処理部と、照射する配光パターンの選択を行う制御部と、を含む。制御部は、画像フレームデータ内に注目物体が抽出された場合、当該注目物体に対してグレア抑制が可能な配光パターンの選択を行い、抽出処理部は、遮光情報を参照して選択された配光パターンの遮光領域に対応する注目領域を画像フレームデータ上に設定し、注目領域における注目物体の抽出能力を高める。
【0007】
注目物体は、例えば対向車や前走車等の前方車の他歩行者や自転車等を含む。制御部は注目物体を確認した場合、注目物体にグレアを与えないような遮光領域を有する配光パターンを選択する。遮光記憶部は、配光パターンの種類とその遮光領域とが対応付けられた遮光情報を有しているので、抽出処理部は、現在の配光パターンに基づき遮光領域の特定を行い、遮光領域に対応する注目領域を画像フレームデータ上に設定する。そして、注目領域における注目物体の抽出能力を高める。この場合、抽出能力は非遮光領域と同等またはそれに近い状態とすることが望ましい。この態様によれば、グレア防止のために照射領域の少なくとも一部が遮光された場合でも、その遮光部分の注目物体の検出能力の低下を軽減できるので、遮光領域に存在する注目物体等の認識を迅速かつ高精度にできる。
【0008】
抽出処理部は、注目物体の抽出能力を高める場合、注目領域の明るさを高めるブライト調整処理を施すようにしてもよい。この態様によれば、遮光領域の注目物体の検出を容易にできる。
【0009】
遮光領域に注目物体が存在する場合、遮光領域に注目物体が存在することを運転者に報知する報知部をさらに含んでもよい。遮光領域に注目物体が存在する場合、報知部は、例えば注目物体の存在を音声や映像により運転者に報知する。この場合、注目物体の解析を行い具体的に対向車であるとか、前走車であるとか、歩行者であるとかを報知してもよいし、単に物体が存在することを報知するのみでもよい。この態様によれば、遮光領域が変化してもその遮光領域の状態を運転者に報知するので、遮光により視界が変化する場合でもこの視界の変化による運転者に与える違和感を抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用前照灯システムによれば、グレア防止のために照射領域の少なくとも一部が遮光された場合でも、その遮光部分の注目物体の検出能力の低下を軽減できるので、遮光領域に存在する注目物体等の認識を迅速かつ高精度にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の車両用前照灯システムの構成概念図である。
【図2】本実施形態の車両用前照灯システムにおける前照灯ユニットの内部構造を説明する概略断面図である。
【図3】本実施形態の車両用前照灯システムに搭載できる回転シェードの概略斜視図である。
【図4】実施形態の車両用前照灯システムで形成可能な配光パターンを例示する説明図である。
【図5】本実施形態の車両用前照灯システムの前照灯ユニットの照射制御部と車両側の車両制御部の動作連携を説明する機能ブロック図である。
【図6】本実施形態の車両用前照灯システムの遮光記憶部が保持する遮光情報の一例を説明する説明図である。
【図7】実施形態の車両用前照灯システムの画像フレームデータ上における遮光領域と注目領域を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の車両用前照灯システム100の構成概念図である。車両用前照灯システム100は、撮影ユニット102と車両制御部302と前照灯ユニット210を中心に構成されている。前照灯ユニット210は、車両の車幅方向の端部に左側の前照灯ユニット210Lと右側の前照灯ユニット210Rを1灯ずつ配置している。本実施形態の前照灯ユニット210L,210Rは、例えば1つの光源から照射されるビームの一部を遮ることによりロービーム用配光パターンを形成し、遮らないときにハイビーム用配光パターンを形成する、いわゆる配光可変式前照灯である。
【0014】
各前照灯ユニット210L,210Rに含まれる灯具ユニット10は、車幅方向と直交する車両前方に向く光軸を有する複数の配光パターンを形成する。各前照灯ユニット210L,210Rは、交通法規が左側通行である地域で利用する左通行用のロービーム用配光パターンと、ハイビーム用配光パターンを含む。また、ハイビーム用配光パターンの自車線側または対向車線側を遮光した片ハイ用配光パターンや中央部分を遮光した凹形状の凹形状配光パターンを等を形成できるものを含むことができる。なお、交通法規が右側通行の地域で利用する灯具ユニット10は形成する配光パターンの形状が左右逆になる。
【0015】
撮影ユニット102は、車両前方の画像フレームデータを取得する例えばCCDカメラで構成できる。撮影ユニット102は、例えばルームミラーの裏側ブラケット(フロントガラスの内側)など車両前方が見渡せると共にワイパーの払拭範囲内の位置に固定することが望ましい。撮影ユニット102の撮影範囲は、自車前方の領域で、少なくとも自車が走行する自車線と対向車線および路側を含み、ハイビーム用配光パターンの照射領域を含む範囲とすることが望ましい。また、片側複数車線の場合は、自車線と少なくとも自車線の左右の車線を含み、ハイビーム用配光パターンの照射領域を含む範囲とすることが望ましい。なお、スイブル機能を有する場合は、スイブル角度を加えた範囲以上とすることが望ましい。
【0016】
車両制御部302は提供された画像フレームデータに基づき、自車の前方に存在する前走車や対向車等の前方車や歩行者、自転車などの注目物体を検出して、その注目物体が自車の照射するハイビーム用配光パターンによるグレアを受ける対象物体であるか否かを判定する。車両制御部302は、前照灯ユニット210L,210Rの照射制御部228L,228Rに判定結果に基づく情報を提供する。照射制御部228L,228Rは、車両制御部302から提供された情報に基づき自車周囲の状況に適した配光パターン、すなわちグレアを与えないような配光パターンや運転者の視界を向上させるような配光パターンを選択し形成する制御を実行する。
【0017】
図2は、前照灯ユニット210の内部構造を説明する概略断面図である。前述したように、前照灯ユニット210は車両の車幅方向の左右に1灯ずつ配置される配光可変式前照灯であり、その構造は実質的に左右同等なので代表して車両右側に配置される前照灯ユニット210Rの構造を説明する。前照灯ユニット210Rは、ランプボディ212と透明カバー214を含む。ランプボディ212は、車両前方方向に開口部を有し、後方側にはバルブ14の交換時等に取り外す着脱カバー212aを有する。そして、ランプボディ212の前方の開口部には、透明カバー214が接続されて灯室216が形成される。灯室216には、光を車両前方方向に照射する灯具ユニット10が収納されている。灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218はランプボディ212の壁面に回転自在に支持されたエイミング調整ネジ220と接続されている。したがって、灯具ユニット10はエイミング調整ネジ220の調整状態で定められた傾動可能な状態で灯室216内の所定位置に支持されることになる。
【0018】
また、灯具ユニット10の下面には、曲線道路走行時等に進行方向を照らす曲線道路用配光可変前照灯(Adaptive Front-lighing System:AFS)を構成するためのスイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は車両側から提供される操舵量のデータやナビゲーションシステムから提供される走行道路の形状データ、前方車と自車の相対位置の関係等に基づいて灯具ユニット10をピボット機構218aを中心に進行方向に旋回(スイブル:swivel)させる。その結果、灯具ユニット10の照射領域が車両の正面ではなく曲線道路のカーブの先に向き、運転者の前方視界を向上させる。スイブルアクチュエータ222は、例えばステッピングモータで構成できる。スイブルアクチュエータ222を含む機構は、光軸を車幅方向に揺動させる光軸揺動機構として機能する。なお、スイブル角度が固定値の場合には、スイブルアクチュエータ222としてソレノイドなども利用可能である。
【0019】
スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸を下方に向けるレベリング調整ができる。このような、レベリング調整をすることで車両姿勢に応じた光軸調整ができる。その結果、前照灯ユニット210による前方照射の到達距離を最適な距離に調整できる。なお、レベリングアクチュエータ226を含む機構を光軸揺動機構ということもできる。
【0020】
このレベリング調整は、走行中の車両姿勢に応じて実行することもできる。例えば、車両が走行中に加速する場合は後傾姿勢となり、逆に減速する場合は前傾姿勢となる。したがって、前照灯ユニット210の照射方向も車両の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで実行することで走行中でも前方照射の到達距離を最適に調整できる。これを「オートレベリング」と称することもある。
【0021】
灯室216の内壁面、例えば、灯具ユニット10の下方位置には、灯具ユニット10の点消灯制御や配光パターンの形成制御を実行する照射制御部228が配置されている。図2の場合、前照灯ユニット210Rを制御するための照射制御部228Rが配置されている。この照射制御部228Rは、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226等の制御も実行する。なお、前照灯ユニット210Lは専用の照射制御部228Lを有していてもよいし、前照灯ユニット210Rに設けられた照射制御部228Rが前照灯ユニット210Rおよび前照灯ユニット210Lの各アクチュエータの制御や配光パターンの形成制御を一括して制御するようにしてもよい。
【0022】
灯具ユニット10はエイミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分に、エイミング調整時の揺動中心となるエイミングピボット機構を配置する。また、ランプブラケット218には一対の前述したエイミング調整ネジ220が車幅方向に間隔を空けて配置されている。例えば2本のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に前傾姿勢となり光軸が下方に調整される。同様に2本のエイミング調整ネジ220を時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に後傾姿勢となり光軸が上方に調整される。また、車幅方向左側のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に右旋回姿勢となり右方向に光軸が調整される。また、車幅方向右側のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に左旋回姿勢となり左方向に光軸が調整される。このエイミング調整は、車両出荷時や車検時、前照灯ユニット210の交換時に行われる。そして、前照灯ユニット210が設計上定められた姿勢に調整され、この姿勢を基準に本実施形態の配光パターンの形成制御が行われる。
【0023】
灯具ユニット10は、回転シェード12(可変シェードという場合もある)を含むシェード機構18、光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、投影レンズ20で構成される。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16はバルブ14から放射される光を反射する。そして、バルブ14からの光及びリフレクタ16で反射した光は、その一部がシェード機構18を構成する回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。
【0024】
図3は、回転シェード12の概略斜視図である。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材である。また、回転シェード12は軸方向に一部が切り欠かれた切欠部22を有し、当該切欠部22以外の外周面12b上に板状のシェードプレート24を複数保持している。回転シェード12は、その回転角度に応じて投影レンズ20の後方焦点を含む後方焦点面の位置に切欠部22または、シェードプレート24のいずれか1つを移動させることができる。そして、回転シェード12の回転角度に対応して光軸O上に位置するシェードプレート24の稜線部の形状に従う配光パターンが形成される。例えば、回転シェード12のシェードプレート24のいずれか1つを光軸O上に移動させてバルブ14から照射された光の一部を遮光することで、図4(a)に示すようなロービーム用配光パターンまたは一部にロービーム用配光パターンの特徴を含む配光パターンを形成する。また、光軸O上に切欠部22を移動させてバルブ14から照射された光を非遮光とすることで図4(b)に示すようなハイビーム用配光パターンを形成する。同様にシェードプレート24の形状により図4(c)に示すような凹形状配光パターンや図4(d)に示すような一部にハイビーム用配光パターンの特徴を含む片ハイ用配光パターン等を形成する。
【0025】
回転シェード12は、例えばモータ駆動により回転可能であり、モータの回転量を制御することで回転して所望の配光パターンを形成するためのシェードプレート24または切欠部22を光軸O上に移動させる。なお、回転シェード12の外周面12bの切欠部22を省略して、回転シェード12に、遮光機能だけを持たせてもよい。そして、ハイビーム用配光パターンを形成する場合は、例えばソレノイド等を駆動して回転シェード12を光軸Oの位置から退避させるようにしてもよい。この場合、回転シェード12は切欠部22を持たないので、例えば回転シェード12を回転させるモータがフェールしてもロービーム用配光パターンまたはそれに類似する配光パターンで固定されることになる。つまり、回転シェード12がハイビーム用配光パターンの形成姿勢で固定されてしまうことを確実に回避してフェールセーフ機能を実現できる。
【0026】
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸O上に配置され、バルブ14は投影レンズ20の後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として前照灯ユニット210前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
【0027】
図5は、車両用前照灯システム100全体を説明する機能ブロック図である。すなわち、上述のように構成される前照灯ユニット210L,210Rの照射制御部228L,228Rと車両300側の車両制御部302の動作連携を説明する説明図である。なお、前述したように、前照灯ユニット210L,210Rの構成は基本的に同じなので前照灯ユニット210R側のみの説明を行い前照灯ユニット210L側の説明は省略する。なお、左右の前照灯ユニット210L,210Rを説明上特に区別する必要のない場合には、添え字「L]、「R]を省略することがある。同様に、他の構成部材についても左右の区別を必要としない場合には添え字「L]、「R]を省略することがある。また、本実施形態では、車両制御部302は、各種センサからの情報に基づき車両側の制御を実施すると共に、照射制御部228に車両側で得た情報を提供し、照射制御部228により前照灯ユニット210の配光パターンの選択処理等を行わせる例を説明する。
【0028】
前照灯ユニット210Rの照射制御部228Rは、車両300に搭載された車両制御部302からの情報にしたがって電源回路230の制御を行いバルブ14の点灯制御を実行する。また、照射制御部228Rは車両制御部302からの情報にしたがい可変シェード制御部232、スイブル制御部234、レベリング制御部236を制御する。可変シェード制御部232は、回転シェード12の回転軸12aにギア機構を介して接続されたモータ238を回転制御して、所望のシェードプレート24または切欠部22を光軸O上に移動させる。なお、可変シェード制御部232には、モータ238や回転シェード12に備えられたエンコーダ等の検出センサから回転シェード12の回転状態を示す回転情報が提供されてフィードバック制御により正確な回転制御が実現される。
【0029】
スイブル制御部234は、スイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸を車幅方向について調整する。例えば、曲路走行や右左折走行などの旋回時に灯具ユニット10の光軸をこれから進行する方向に向ける。また、レベリング制御部236は、レベリングアクチュエータ226を制御して、灯具ユニット10の光軸を車両上下方向について調整する。例えば、加減速時における車高の変化を車高センサ316からの情報に基づき検出して、車両姿勢の前傾、後傾に応じて灯具ユニット10の姿勢を調整して前方照射の到達距離を最適な距離に調整する。照射制御部228Lは、前照灯ユニット210Lに対しても同様な制御を実施する。
【0030】
本実施形態の場合、前照灯ユニット210L,210Rによって形成される配光パターンは、運転者によるライトスイッチ304の操作内容に応じて切り替え可能である。この場合、ライトスイッチ304の操作状態を車両制御部302が照射制御部228L,228Rに提供して、可変シェード制御部232を介してモータ238の駆動により所望の配光パターンを形成する。
【0031】
本実施形態の前照灯ユニット210L,210Rは、ライトスイッチ304の操作によらず、各種センサで検出された車両周囲状況に応じた最適な配光パターンを形成するように自動制御されることもできる。例えは、車両制御部302によって自車の前方に前走車や対向車等の注目物体が存在することが検出できた場合には、照射制御部228はロービーム用配光パターンを形成してグレアを防止するべきであると判定してロービーム用配光パターンを形成する。また、車両制御部302によって自車の前方に前走車や対向車等の注目物体が存在しないことが検出できた場合には、照射制御部228は回転シェード12による遮光を伴わないハイビーム用配光パターンを形成して運転者の視界を向上させるべきであると判定してハイビーム用配光パターンを形成する。
【0032】
このように前走車や対向車などの注目物体を検出するために車両制御部302には、注目物体の認識手段として例えばステレオカメラなどのカメラ306が接続されている。カメラ306で撮影された画像フレームデータは、データ保持部308で一時的に保持され必要に応じて抽出処理部104で物体認識処理など所定の画像処理が施されて画像フレームデータ内の車両等の注目物体が抽出される。抽出処理部104は、例えば予め保持した車両や歩行者の形状データと一致するデータが画像フレームデータの中に存在するか否かをパターン認識にて判定して注目物体である車両や歩行者を認識する。また、車両の場合は対向車のヘッドライトや先行車のテールランプを検出することによっても認識できる。具体的には、前方車のヘッドライトの光点やテールランプの光点は通常左右2個がセットで点灯している。この場合、もしその光点が車両のものであれば、2個の光点は同じ挙動を示しながら移動していく。つまり、同じ挙動を示す2個の光点が確認できれば、それが車両のヘッドライトまたはテールランプであると推定できて前方車と見なすことができる。ヘッドライトやテールランプの光点の検出は、比較的容易であり、また暗くても比較的遠方まで可能なので処理負荷も低く前走車の検出処理が迅速かつ正確に行える。なお、ヘッドライトとテールランプの識別は、光点の色により判断できる。すなわち、光点が「赤」であればテールランプであり、それ以外の光点の色はヘッドライトであると推定できる。
【0033】
車両制御部302には遮光記憶部106が接続されている。遮光記憶部106には、配光パターンの種類とその遮光領域とが対応付けられた遮光情報が記憶されている。車両制御部302は、照射制御部228から現在選択している配光パターンの種類に関する情報を取得できる。したがって、車両制御部302は、照射制御部228から提供される配光パターンの種類情報と遮光記憶部106に記憶された遮光情報とを取得することにより、現在選択している配光パターンの遮光領域が何処であるかが取得できる。抽出処理部104は、車両制御部302を介して現在選択されている配光パターンの遮光領域に対応する注目領域を画像フレームデータ上に設定する。そして、抽出処理部104は注目領域における注目物体の抽出能力を高める制御を実行する。例えば、抽出処理部104は注目領域の明るさを高めるブライト調整処理を施す。その結果、注目領域内の物体のシルエットを浮かび上がらせることが容易になりパターン認識等の画像処理が可能になり注目物体であるか否かの判定が容易になる。この場合、抽出処理部104は注目領域のみのブライトを高めるので、元々明るい非遮光領域の抽出物体の抽出には影響しない。その結果、非遮光領域および遮光領域における注目物体の抽出をそれぞれ良好に実施できる。
【0034】
なお、他の実施形態では、赤外線を用いることにより遮光領域である注目領域の抽出能力を高めることができる。この場合、撮影ユニット102のカメラ306は赤外線まで感度分布を持つCCDカメラとすると共に、撮影ユニット102は、赤外線を車両前方に照射可能な赤外線照射器を備える。抽出処理部104は、注目領域が設定された場合、赤外線照射器により少なくとも注目領域に赤外線を照射する。その結果、カメラ306は非遮光領域において可視光および赤外線の反射がある部分では可視光画像を取得し、遮光領域で赤外線の反射がある部分では赤外光画像を取得する。結果的に、撮影ユニット102の取得できる画像フレームデータは、非遮光領域の可視光画像と遮光領域の赤外光画像が合成された合成画像となる。したがって、抽出処理部104は取得した合成画像を解析して注目領域を含めて注目物体を抽出できる。また、抽出処理部104は注目領域の位置が分かっているので、注目領域に照射する赤外線の強度を注目領域での物体の検出状態に応じて変化させることで効率的に注目物体の抽出が実行できる。例えば、弱い赤外線照射でも容易に注目物体が抽出できる場合には赤外線出力は省エネモードとなるので抽出能力を低下させることなくバッテリ消費を抑制できる。また、何らかの物体が存在するようだがそれが注目物体であるか否か決定しにくい場合には赤外線の照射強度を強めれば高精度の判断が可能になる。なお、赤外線を利用する場合、色彩の判別が困難であるため、前述したように光点の色によりヘッドライトかテールランプかの判定が難しくなる。そこで、抽出処理部104は、注目領域410が設定されている場所が自車線か対向車線かの情報を用いて、赤外線画像で抽出した車両がヘッドライトが見える対向車かテールランプが見える先行車かを推定するようにしてもよい。
【0035】
また、別の実施形態としては、カメラ306の各画像素子の露光時間を電子的に制御して注目領域の抽出能力を高めることができる。例えば、非遮光領域である明るい領域に対応する画像素子の露光時間を通常撮影時の露光時間Aとする。一方、注目領域である暗い領域の露光時間は、露光時間Aより長い露光時間Bとする。この場合、全体としては露光時間Bを基準にした画像取得周期になるが、非遮光領域である明るい領域は標準的な明るさの画像が得られ、遮光部分である暗い注目領域は多少のピンボケが生じる可能性があるが露光時間延長により明るくなり注目物体の存在有無が判別しやすい画像が得られる。露光時間を調整する構成の場合、従来と同じ性能のカメラ306が利用可能なので大きなコストアップを招くことなく注目物体の抽出能力を高めることができる。
【0036】
なお、抽出処理部104が抽出能力を高める制御を実行する場合、遮光領域における抽出能力は非遮光領域における抽出能力と同等またはそれに近い状態とすることが望ましい。このように抽出能力を非遮光領域と遮光領域とで同等またはそれに近い状態とすることで抽出処理部104における注目物体の抽出処理が画像フレームデータ内でほぼ一定となり安定した信頼性の高い注目物体の抽出処理ができる。
【0037】
報知部108は、抽出処理部104が遮光領域で注目物体を抽出した場合に、注目物体を抽出した旨を運転者に報知する。この場合、報知部108は、例えば車載スピーカを用いて音声により注目物体の存在を運転者に報知してもよい。また、報知部108は車載ディスプレイやオーバーヘッドディスプレイ等に注目物体の存在を示すメッセージや画像を表示して報知してもよい。報知部108による報知は、単に遮光領域に注目物体が存在することを示す簡易的なものでもよいし、付加情報を加えて運転者の注意喚起度を高めるようにしたものでもよい。例えば、抽出処理部104で取得した画像フレームデータに基づき車両前方の全領域の画像を表示し、その中で非遮光領域と遮光領域を明示して注目物体を表示するようにしてもよい。遮光領域を明示して、そこに存在する注目物体を表示することにより、遮光され暗くなった領域に注目物体が存在するということを強調することが可能になり、運転者への注意喚起が容易にできる。さらに、報知部108は、注目物体の解析を行い具体的に対向車であるとか、前走車であるとか、また歩行者であるとかを報知してもよい。この場合、撮影ユニット102で取得した画像フレームデータを用いて車両や歩行者の画像を表示してもよいし、予め準備しておいた車両や歩行者を示す映像やマークを表示してもよい。具体的に車両や歩行者を表示することで運転者の注意喚起度を向上する効果がある。なお、報知部108は、音声と表示による報知を併せて実施することにより、運転者の注意喚起度の向上がさらに図れる。なお、画像フレームデータには、前方車や歩行者や自転車の他に、白線(レーンマーク)や標識も含まれる。したがって、遮光領域における注目物体として白線や標識を含め、その存在を運転者に報知するようにしてもよい。また、白線や標識の検出は、本実施形態で示すように車両用前照灯システムの制御に関連して利用することもできるし、車両の走行制御や制動制御など車両用前照灯システム以外の制御に利用することもできる。
【0038】
データ保持部308で保持された画像フレームデータは必要に応じて車両制御部302へ直接提供されてもよく、例えば、リアルタイム画像を車載ディスプレイやオーバーヘッドディスプレイに表示するようにしてもよいし、前照灯装置以外の他の制御に利用するようにしてもよい。本実施形態では、カメラ306とデータ保持部308とで撮影ユニット102を構成している。
【0039】
車両制御部302は、車両300に通常搭載されているステアリングセンサ310、車速センサ312、車高センサ316などからの情報も取得可能である。そして、車両制御部302は車両300の走行状態や走行姿勢の情報を照射制御部228に提供する。照射制御部228は提供された各種情報に基づき形成する配光パターンを選択したり、光軸の方向を変化させて簡易的に配光パターンを変化させる制御をすることができる。例えば、ステアリングセンサ310からの情報に基づき車両が旋回しているという情報を車両制御部302が照射制御部228に提供した場合、照射制御部228は回転シェード12を回転制御して旋回方向の視界を向上させるような配光パターンを形成するシェードプレート24を選択するできる。また、照射制御部228は、回転シェード12の回転状態は変化させずに、スイブル制御部234によりスイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸を旋回方向に向けて視界を向上させてもよい。このような制御モードを旋回感応モードという場合がある。
【0040】
また、夜間に高速走行しているときには、対向車、前走車、道路標識やメッセージボードの認識をできるだけ早く行えるように前照灯による照明を実行することが好ましい。したがって、車両制御部302は車速センサ312からの情報に基づき高速走行していると判定した場合、その情報を照射制御部228に提供する。照射制御部228は、その情報に基づき、回転シェード12を回転制御してロービーム用配光パターンの一部の形状を変えたハイウェイモードのロービーム用配光パターンを形成するシェードプレート24を選択する。同様な制御は、レベリング制御部236によりレベリングアクチュエータ226を制御して灯具ユニット10を後傾姿勢に変化させることでも実現できる。前述したレベリングアクチュエータ226による加減速時のオートレベリング制御は、照射距離を一定に維持するような制御である。この制御を利用して、積極的にカットオフラインの高さを制御すれば、回転シェード12を回転させて異なるカットオフラインを選択する制御と同等の制御ができる。このような制御モードを速度感応モードという場合がある。
【0041】
なお、灯具ユニット10の光軸の調整は、スイブルアクチュエータ222やレベリングアクチュエータ226を用いずに実行することもできる。例えば、エイミング制御をリアルタイムで実行するようにして灯具ユニット10を旋回させたり前傾姿勢や後傾姿勢にして、所望する方向の視界を向上させてもよい。
【0042】
この他、車両制御部302は、ナビゲーションシステム314から道路の形状情報や形態情報、道路標識の設置情報などを取得することもできる。これらの情報を事前に取得して照射制御部228に提供する。その結果、照射制御部228は、レベリングアクチュエータ226、スイブルアクチュエータ222、モータ238等を制御して、走行道路に適した配光パターンをスムーズに形成することができる。このような制御モードをナビ感応モードという場合もある。
【0043】
このように、自車の走行状態や自車周囲の状況に応じて自車の配光パターンを自動的に変更することにより、前走車や対向車等の前方車の運転者や同乗者に与えるグレアを抑制しつつ、自車運転者の視界向上が可能となる。
【0044】
図6は、遮光記憶部106が記憶する遮光情報の一例である。
図6では、一例として「左片ハイ用配光パターン」、「右片ハイ用配光パターン」、「凹形状配光パターン」の遮光情報を示す。左片ハイ用配光パターンは、交通法規が左側通行の地域で利用可能な配光パターンで、ハイビーム用配光パターンのうち対向車線側の領域のみを遮光している。つまり、対向車にグレアを与えることなく自車線側はハイビームにより前方視界を確保できる配光パターンであるといえる。右片ハイ用配光パターンは、交通法規が左側通行の地域で利用可能な配光パターンで、ハイビーム用配光パターンのうち自車線側の領域のみを遮光している。つまり、先行車にグレアを与えることなく対向車線側はハイビームにより前方視界を確保できる配光パターンであるといえる。凹形状配光パターンは、自車から遠方に先行車や対向車が存在する場合に有効な配光パターンである。凹形状配光パターンは、水平ラインHと垂直ラインVの交点付近に存在する遠方車両にグレアを与えることなく、自車に近い領域や路側方向の視界を向上させることができる配光パターンであるといえる。
【0045】
図6に示すように遮光記憶部106には、各配光パターンに対応する遮光領域が記憶されている。したがって、抽出処理部104は、現在選択されている配光パターンに対応する遮光領域の情報を車両制御部302を介して遮光記憶部106から得ることができる。また、抽出処理部104は、車両制御部302を介して照射制御部228の制御状態情報が取得可能である。つまり、抽出処理部104は、現在選択されている配光パターンの種類や、スイブルの状態、レベリングの状態等が取得可能である。したがって、抽出処理部104は、図7(a)に示すように、撮影ユニット102が取得する画像フレームデータ上で前照灯ユニット210による非遮光領域(照射領域)400と遮光領域402とを正確に分類できる。図7(a)は、前照灯ユニット210が「左片ハイ用配光パターン」を形成している例を示している。前述したように、非遮光領域は、前照灯ユニット210により光が照射されるので、抽出処理部104は画像フレームデータ上で、自車線側の歩行者404を注目物体として検出できる。一方、図7(a)の例の場合、遮光領域402にも対向車406と歩行者408が存在する。しかし、遮光領域402は光の照射がないので、画像フレームデータ上での対向車406や歩行者408の検出精度は非遮光領域400に比べ劣る。そこで、抽出処理部104は、車両制御部302を介して得られる遮光記憶部106の遮光情報を参照して、図7(b)に示すように左片ハイ用配光パターンの遮光領域402に対応する部分に注目領域410を設定する。図7(b)の場合、左片ハイ用配光パターンの実際の遮光領域より広めに注目領域410を設定しているが、図6に示す遮光領域402と同じ広さの注目領域410を設定してもよい。
【0046】
抽出処理部104は、注目領域410を設定すると、その注目領域410に対して例えば明るさを高めるブライト調整処理を施す。その結果、対向車406や歩行者408が処理前に比べ検出しやすくなる。この場合、元々十分な明るさを有する非遮光領域400にはブライト調整処理を施さないので、非遮光領域400の画像が明るくなり過ぎて白くなってしまうことはない。その結果、抽出処理部104は非遮光領域400および遮光領域402である注目領域410に存在する注目物体を容易に検出できる。この場合、抽出処理部104は、注目領域410における対向車406や歩行者408の存在状況を正確に検出できる。そのため、照射制御部228は車両制御部302を介して得られる抽出処理部104からの情報に基づき現在の配光パターンをどのタイミングまで継続したらよいかを正確に決めることができる。つまり、左片ハイ用配光パターンの状態から元のハイビーム用配光パターンに戻す制御を適切なタイミングで実施できる。また、対向車406や歩行者408の注目領域410における存在状況に基づき、照射制御部228は次にどの配光パターンを形成したらよいか正確かつ迅速に決定することができる。その結果、自車周囲の状況に基づく最適な配光パターンの形成制御を迅速かる正確に実施できる。また、車両制御部302がレーン検出を行っている場合は、左片ハイ用配光パターン等により遮光領域402が形成されるとレーン検出の精度が低下してしまう場合がある。本実施形態においては、注目領域410を設定してブライト調整処理を施すことによりレーン検出精度の維持が可能となり、配光パターンの選択状況にかかわりなく安定してレーン検出が可能になる。
【0047】
抽出処理部104において、注目領域410で注目物体を検出した場合、報知部108はその検出結果を運転者に音声や映像を用いて提示する。遮光領域402は実際には前照灯ユニット210の光が照射されないので、それまで照射されていた配光パターンから新たな配光パターンに切り替わったときに、突然視界が変化したような違和感を与えてしまう場合がある。この場合、前照灯ユニット210が完全に消灯してしまうことはなく、少なくともロービーム用配光パターンで照射する領域は照射領域として残るので運転操作は通常通りにできるが、運転者に心理的な違和感を与えてしまう場合がある。本実施形態の場合、報知部108により遮光領域に注目物体が存在する場合には、その旨報知できるので、上述したような運転者が感じる可能性のある違和感を軽減できる。また、報知を実施することにより、運転者に遮光領域402の注目物体に関する注意喚起ができる。なお、この報知には、基本的にはレーンの検出は含まないものとする。ただし、レーンを示す白線への異常接近などを検出した場合には、レーン検出処理と連携して白線の接近を報知することが望ましい。
【0048】
なお、上述した実施形態では、車両300側で車両や歩行者などの注目物体の検出処理を行い、照射制御部228で配光パターンの選択処理を実施する例を示した。別の実施形態では、車両300側の制御部で注目物体の検出および配光パターンの選択処理を実施するようにしてもよく、上述した実施形態と同様の効果が得られる。また、照射制御部228が車両300側から各種センサ等の検出情報を全て取得して照射制御部228側で注目物体の検出処理や配光パターンの選択処理を実施してもよい。また、車両用前照灯システム100の構成の一例として前照灯ユニット210の構造を図2に示し、その機能ブロック図を図5に示したが、配光パターンを周囲の状況に応じての自動的に切り替える車両用前照灯システムであれば、本実施形態が適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0049】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 灯具ユニット、 100 車両用前照灯システム、 102 撮影ユニット、 104 抽出処理部、 106 遮光記憶部、 108 報知部、 210,210L,210R 前照灯ユニット、 300 車両、 402 遮光領域、 406 対向車、 408 歩行者、 410 注目領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の配光パターンの中からいずれかを選択的に車両の前方に照射する灯具ユニットと、
前記配光パターンを含む車両前方に関する画像フレームデータを取得可能な撮影ユニットと、
前記配光パターンの種類とその遮光領域とが対応付けられた遮光情報を記憶する遮光記憶部と、
前記撮影ユニットが取得した前記画像フレームデータ内の注目物体の抽出を行う抽出処理部と、
照射する前記配光パターンの選択を行う制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記画像フレームデータ内に注目物体が抽出された場合、当該注目物体に対してグレア抑制が可能な配光パターンの選択を行い、
前記抽出処理部は、前記遮光情報を参照して選択された前記配光パターンの遮光領域に対応する注目領域を前記画像フレームデータ上に設定し、前記注目領域における前記注目物体の抽出能力を高めることを特徴とする車両用前照灯システム。
【請求項2】
前記抽出処理部は、前記注目物体の抽出能力を高める場合、前記注目領域の明るさを高めるブライト調整処理を施すことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯システム。
【請求項3】
前記遮光領域に前記注目物体が存在する場合、前記遮光領域に注目物体が存在することを運転者に報知する報知部をさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用前照灯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−51441(P2011−51441A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201273(P2009−201273)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】