説明

車両用前照灯

【課題】 走行状況に対応して前照灯の照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段への重量負荷を軽減すること。
【解決手段】 プロジェクタ型前照灯ユニット10は、発光部1aをリフレクタ2に対向させてランプハウジング内の固定ブラケット15に固着される光源としてのLED1と、リフレクタ2を後部に備え発光部1aの対向部位c1を回動中心として固定ブラケット15に水平方向に回動可能に取り付けられると共に配光制御手段20により回動制御される樹脂製のユニットケーシング9と、該ユニットケーシング9の前部開口部に取り付けられる樹脂製の凸レンズ3とから構成されている。被制御体3、9の樹脂製により配光制御手段20への重量負荷を軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)を光源とする車両用前照灯に関し、特に走行状況に対応して前照灯の照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段、例えば適応型照明システム(AFS(Adaptive Front−lighting System))を備える車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、この種の車両用前照灯100を示す(例えば、特許文献1参照)。この車両用前照灯100は、光源1の光をリフレクタ2で反射させた後、凸レンズ3を介して前方へ出射させるプロジェクタ型前照灯ユニット50が、自車の走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段(AFS)51により水平方向に回動制御されてランプハウジング60内に組み込まれて大略構成されている。
【0003】
この配光制御手段では、自車の走行状況を示す情報をセンサにより検出してその検出出力を電子制御ユニット56に出力する。このときのセンサは、例えば、ステアリングホイールの操舵角を検出するステアリングセンサと、自車の車速を検出する車速センサと、自車の水平状態(レベリング)を検出するために前後の車軸のそれぞれの高さを検出する車高センサとで構成されており、これら各センサが電子制御ユニット56に接続されている。電子制御ユニット56は、入力されたセンサの各出力に基づいて自動車の前部の左右にそれぞれ装備された、照射方向を左右方向に偏向制御してその配光特性を変化することが可能な前照灯ユニット50を制御する。このため配光制御手段は、電子制御ユニット56と、前照灯ユニット50を水平方向に回動する駆動モータ等の駆動力源を備えた駆動手段(アクチュエータ)57とを有して構成されている。図8中、符号58は、電子制御ユニット56とアクチュエータ57とを接続するコネクタである。
【0004】
前照灯ユニット50は、ランプハウジング60と、このランプハウジング60の前部開口に取り付けられるアウターレンズ52と、ランプハウジング60の後部開口に取り付けられる後カバー53とに囲繞されて形成される灯室54内に配設されている。
【0005】
前照灯ユニット50は、光源1として放電バルブが用いられており、灯室54内に固着された略コ字形状のブラッケット55の下板55aと上板55bとの間に挟まれた状態で支持されている。下板55aの下側には、アクチュエータ57が固定されており、アクチュエータ57の回転出力軸57aは下板55aの孔を貫通して上側に突出されている。そして前照灯ユニット50は、その上面に設けた軸部59を、上板55bに設けた軸受61に嵌合させ、かつその下面に設けた連結部62をアクチュエータ57の回転出力軸57aに嵌合させることによって連結されている。
【0006】
これにより前照灯ユニット50は、ブラッケット55に対して左右方向に回動可能とされ、かつアクチュエータ57の動作によって回転出力軸57aと一体に水平方向に回動動作されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−98851公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車両用前照灯100は、プロジェクタ型前照灯ユニット50の高重量に起因してアクチュエータ57への負荷が増大し、ひいては配光制御手段51の故障を招き易い、という課題を有している。
【0008】
すなわち、前照灯ユニット50は、光源1として放電バルブが用いられているので、光源1の出射光の高熱エネルギーに耐えるため凸レンズ3をガラスで形成しなければならず、これによりユニット重量の増大を招いている。
【0009】
そこで、本発明は、走行状況に対応して前照灯の照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段への重量負荷を軽減することによって、配光制御手段の耐久性の向上を図ることができる車両用前照灯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するため、請求項1記載の発明は、光源の光をリフレクタで反射させた後、凸レンズを介して前方へ出射させるプロジェクタ型前照灯ユニットが、走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段により水平方向に回動制御されてランプハウジング内に組み込まれてなる車両用前照灯であって、
前記プロジェクタ型前照灯ユニットは、発光部を前記リフレクタに対向させて前記ランプハウジング内の固定ブラケットに固着される前記光源としてのLEDと、前記リフレクタを後部に備え前記発光部の対向部位を回動中心として前記固定ブラケットに水平方向に回動可能に取り付けられると共に前記配光制御手段により回動制御される樹脂製のユニットケーシングと、該ユニットケーシングの前部開口部に取り付けられる樹脂製の前記凸レンズとから構成されていることを特徴とする。
【0011】
このため、請求項1記載の発明では、LEDの光は、リフレクタに向かって出射し、リフレクタで反射されて凸レンズに達し、凸レンズを介して前方に適宜の配光パターンを投影すると共に、配光制御手段によるユニットケーシングの回動により前記配光パターンを左又は右方向に可変することができる。このときのユニットケーシングの回動は、LEDの発光部の対向部位が回動中心となるので、前記回動にも拘わらずLEDの光のリフレクタへの入射状態を不変に保つことができ、ひいては前記配光パターンのパターン形状をも不変に保つことができる。
【0012】
また、光源として適用したLEDは、それ自体小型であるので、取付に要するスペースを節約することができ、かつその出射光の熱エネルギーもフィラメント付き光源に比べて小さく、灯室の過度の温度上昇を避けることができるので、凸レンズおよびユニットケーシングを共に樹脂製にすることができる。
【0013】
また、配光制御手段は、LED以外の、樹脂製凸レンズを備えた樹脂製ユニットケーシングを回動制御することになるので、被制御体の軽量化により回動の際の重量負荷を軽減することができる。
【0014】
また、LEDは、固定ブラケットに固着されるので、LEDの熱は前記固定ブラケットを介して外部に放熱される。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の車両用前照灯であって、
前記固定ブラケットには、前記発光部の発光中心に対応する部位に軸受部が穿設されており、
前記ユニットケーシングは、前記発光部の発光中心に対応する部位に設けた軸部を前記軸受部に支持させると共に、他の部位を前記配光制御手段を構成するアクチュエータに支持されて取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
このため、請求項2記載の発明では、ユニットケーシングは、配光制御手段を構成するアクチュエータの作動により、LED発光部の発光中心の対向部位を回動中心として回動する。このためユニットケーシングの回動にも拘わらず、ケーシングとLEDとの相対的な焦点ずれが無く、これにより配光可変時の配光パターンの歪みを無くすことができる。
【0017】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用前照灯であって、
前記固定ブラケットには、放熱手段が設けられていることを特徴とする。
【0018】
このため、請求項3記載の発明では、放熱手段は、固定ブラケットに設けるようにしたので、凸レンズを備えたユニットケーシングの軽量化をそのまま維持することができる。
【0019】
また、放熱手段は、固定ブラケットに設けられるので、設置後の回動が無く、その回動に要するスペースの確保も不要となる。
【0020】
また、放熱手段は、固定ブラケットの大きさに合わせてその大きさを自由に設計することができる。
【0021】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯であって、
前記LEDは、複数個設けられており、
前記凸レンズを備えた前記ユニットケーシングは、複数個の前記LEDの各々に対応させて複数個設けられると共に、前記複数個の全体が同期するように前記配光制御手段を構成するアクチュエータに支持されていることを特徴とする。
【0022】
このため、請求項4記載の発明では、凸レンズを備えたユニットケーシングの複数個と複数個のLEDは、総じて所望の配光パターンを奏すると共に、凸レンズを備えたユニットケーシングの複数個は、配光制御手段を構成するアクチュエータの作動により同期して回動し、前記配光パターンを左又は右方向に可変することができる。
【0023】
また、このときの配光パターンは、複数個のLEDにより充分な照度を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明によれば、ユニットケーシングの回動にも拘わらずLEDの光のリフレクタへの入射状態を不変に保つことができ、ひいては配光パターンのパターン形状をも不変に保つことができるので、走行状況に対応した優れた追従性能を有している。
【0025】
また、請求項1記載の発明によれば、配光制御手段は、樹脂製凸レンズを備えた樹脂製ユニットケーシングのみを回動制御することになるので、被制御体の軽量化により回動の際の重量負荷を軽減することができ、これにより配光制御手段の耐久性の向上を図ることができる。
【0026】
その上、請求項1記載の発明によれば、LEDの出射光の熱エネルギーはフィラメント付き光源に比べて小さく、かつLEDの熱は固定ブラケットを介して外部に放熱されるので、灯具内の過度の温度上昇を抑制することができる。
【0027】
また、請求項2記載の発明によれば、ユニットケーシングの回動にも拘わらず、ケーシングとLEDとの相対的な焦点ずれが無く、これにより配光可変時の配光パターンの歪みを無くすことができるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、一層優れた追従性能を有している。
【0028】
また、請求項3記載の発明によれば、放熱手段を設けたにも拘わらず、配光制御手段の被制御体としての凸レンズを備えたユニットケーシングの軽量化を維持することができるので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、配光制御手段の耐久性を維持しつつ、LEDの熱を前記放熱手段を介して一層有効に外部に放熱することができる。
【0029】
また、請求項3記載の発明によれば、放熱手段は固定ブラケットに固定的に設けられるので、放熱手段を回動させるスペースが不要で、灯具全体をコンパクトに構成することができる。
【0030】
また、請求項4記載の発明によれば、複数個のLEDにより充分な照度を有する配光パターンを奏することができるので、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、車両用前照灯としての適合性を一層増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図8に開示したものと同一機能を奏する構成要素は、同一符号を付して説明する。
【0032】
図1および図2は、本発明の第1実施形態としての車両用前照灯に適用されるプロジェクタ型前照灯ユニット10を示す。このユニット10は、光源としてのLED1の光をリフレクタ2で反射させた後、凸レンズ3を介して前方へ出射させるプロジェクタ型で、走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段により水平方向に回動制御されてランプハウジング(図示せず)内に組み込まれて車両用前照灯を構成している。
【0033】
ユニット10は、図3〜図5に示すように、発光部1aをリフレクタ2に対向させてランプハウジング内の固定ブラケット15に固着されるLED1(図3参照)と、リフレクタ2を後部に備え発光部1aの対向部位c1(図1(b)、図2参照)を回動中心として固定ブラケット15に水平方向(図4中のa方向またはb方向)に回動可能に取り付けられると共に配光制御手段20により回動制御される樹脂製のユニットケーシング9と、該ユニットケーシング9の前部開口部に取り付けられる樹脂製の凸レンズ3とから構成されている。なお、図4では、リフレクタ2は、片側半分を切り欠いて示している。
【0034】
本実施形態では、固定ブラケット15は、図3に示すように、上方を開放した略コ字形状の下枠部材16と、この下枠部材16にその開放部分を塞ぐように取り付けられる平板状の上枠部材17とで構成されている。
【0035】
また、LED1は、取付プレート14に固着されてサブアッシされており、発光部1aを上向きにして取付プレート14を下枠部材16の底辺部16aにねじ等で結合することにより固定ブラケット15に固着されている。
【0036】
また、ユニットケーシング9は、凸レンズ3の光軸Zを含む水平面を境界面として上下に分割される上部ケーシング11と下部ケーシング12とで構成されている。
【0037】
このとき上部ケーシング11は、凸レンズ3の光軸Zの後部の上側に設けられ回転楕円曲面あるいは回転楕円を基本にした自由曲面として前部および下部を開放して内側に形成されるリフレクタ2と、リフレクタ2の前部開口部に延設した下部開放の略半円形断面の上部レンズホルダ7とを有して、全体を樹脂材で一体形成して構成されている。上部レンズホルダ7の前端は、凸レンズ3の外周に沿う半円形状に形成されており、その前端には上部係合溝7aが半円形状の内側面に沿って穿設されている。
【0038】
下部ケーシング12は、メリジオナル像面に沿って形成される前端エッジ部4aから後部側に、凸レンズ3の光軸Zを含む水平面に沿うようにして延設されるリフレクタ機能を有するシェード4と、前端エッジ部4aに延設した上部開放の略半円形断面の下部レンズホルダ8とを有して、全体を樹脂材で一体形成して構成されている。下部レンズホルダ8の前端は、凸レンズ3の外周に沿う半円形状に形成されており、その前端には下部係合溝8aが半円形状の内側面に沿って穿設されている。
【0039】
具体的には、上部および下部ケーシング11および12は、例えばポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂材を用いて一体に形成されると共に、内面に反射機能を備える塗膜あるいは蒸着を施して全体構成されている。このように上部および下部ケーシング11および12は、それぞれリフレクタ2およびシェード4を構成要素として一体形成されるものであるから、部品点数の削減、およびこれら部品間の光学的位置精度の向上を共に図ることができる。
【0040】
また、凸レンズ3は、アクリル樹脂等の透明熱可塑性樹脂材を用いて、薄肉のフランジ部3aを外周に設けた両凸の非球面形状に形成されている。
【0041】
そして、凸レンズ3は、そのフランジ部3aを上部および下部係合溝7aおよび8aに係合させると共に、上部および下部ケーシング11および12同士をねじ等の結合手段を用いて結合することによりユニットケーシング9に一体的に取り付けられる。この取付状態において、凸レンズ3は、そのレンズ焦点RFをリフレクタ2の第2焦点F2に略合致させて配置されると共に、前端エッジ部4aの中央部位は、リフレクタ2の第2焦点F2に略合致している。これにより凸レンズ3と前述した部品間の光学的位置精度の向上を図ることができる。
【0042】
また、配光制御手段20は、従来と同様に電子制御ユニット(図示せず)と、この電子制御ユニットからの出力で駆動するアクチュエータ21とから構成されている。その場合、電子制御ユニットは従来の電子制御ユニット56と同様に構成されている。
【0043】
本実施形態では、アクチュエータ21は、図4に示すように、電子制御ユニットからの出力で駆動するモータ22と、このモータ22とギヤ噛合部18を介して連結する駆動ユニット23と、駆動ユニット23のシャフト23aに一体回動するように取り付けられたレバー19を介して駆動ユニット23と連結する可動アーム24とを有して構成されている。可動アーム24は、レバー19の先端に固定された軸19aを可動アーム24の孔に挿通させると共に、ワッシャやプッシュナットを用いて回転自由に連結することによってレバー19との連結が図られている。
【0044】
そしてアクチュエータ21は、図3に示すように、駆動ユニット23を下枠部材16の底辺部16aに固定すると共に、モータ22を下枠部材16の側辺部16bに固定することによって固定ブラケット15にセッティングされている。
【0045】
そして、凸レンズ3を備えたユニットケーシング9は、LED1の発光部1aの対向部位c1を回動中心となるように固定ブラケット15の上枠部材17に回転自由に取り付けられる。この取付状態においては、下枠部材16に固着されているLED1の発光部1aは、リフレクタ2の第1焦点F1(図1(b)参照)に略合致している。図1(b)には、LED1の光の出射パターンL0が破線で示されており、LED1の光のリフレクタ2への入射状態を示している。
【0046】
さらに、凸レンズ3を備えたユニットケーシング9は、図4に示すように、ユニットケーシング9の、前記対向部位c1よりも凸レンズ3の光軸Zに沿う後方部位c2を、可動アーム24に回転自由に連結することによって、固定ブラケット15にセッティングされた配光制御手段20のアクチュエータ21と連結されている。
【0047】
このように取り付けられた凸レンズ3を備えたユニットケーシング9は、固定ブラケット15に固着したLED1と共にプロジェクタ型前照灯ユニット10を構成することになると共に、該ユニット10は、走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段20により水平方向に回動制御されてランプハウジング(図示せず)内に組み込まれて車両用前照灯を構成することになる。
【0048】
このように構成された車両用前照灯においては、LED1の光Lは、リフレクタ2に向かって出射し、リフレクタ2で反射されて凸レンズ3に達し、凸レンズ3を介して前方に適宜の配光パターンを投影すると共に、配光制御手段20によるユニットケーシング9の回動により前記配光パターンを左又は右方向に可変することができる。このときのユニットケーシング9の回動は、LED1の発光部1aの対向部位c1が回動中心となるので、前記回動にも拘わらずLED1の光Lのリフレクタ2への入射状態(図1(b)中のL0)を不変に保つことができ、ひいては前記配光パターンのパターン形状をも不変に保つことができる。
【0049】
このときの配光制御は、配光制御手段20を構成する電子制御ユニットからの出力でアクチュエータ21を駆動させることによって行われる。すなわち、電子制御ユニットからの出力でモータ22が駆動し、この駆動力をギヤ噛合部18を介して駆動ユニット23に伝達する。この伝達により駆動ユニット23のシャフト23aおよびレバー19が一体回動し、軸19aを介して可動アーム24を矢印c方向(図4参照)に移動させる。この可動アーム24の移動は後方部位c2を介してユニットケーシング9に伝達され、凸レンズ3を備えたユニットケーシング9は、LED1の発光部1aの対向部位c1を回動中心として矢印aまたはb方向(図4参照)に回動する。
【0050】
図6は、このときに得られる配光パターンを示す。配光パターンP0(図6(a))は、凸レンズ3が正面に位置しているときのもので、カットラインCLの屈曲点Aがスクリーンの中央に位置したパターンとなっており、配光パターンP1(図6(b))は、凸レンズ3が矢印a方向へ回動したときのもので、パターン形状が配光パターンP0と同一で、カットラインCLの屈曲点Aが右方向にずれたパターンとなっている。凸レンズ3が矢印b方向へ回動したときの配光パターンは、図示しないが、パターン形状が配光パターンP0と同一で、カットラインCLの屈曲点Aが左方向にずれたパターンとなる。このため本実施形態の車両用前照灯は、走行状況に対応した優れた追従性能を有したものとなっている。
【0051】
また、配光制御手段20は、LED1以外の、樹脂製凸レンズ3を備えた樹脂製ユニットケーシング9を回動制御することになるので、被制御体の軽量化により回動の際の重量負荷を軽減することができる。このため本実施形態の車両用前照灯は、配光制御手段の耐久性の向上したものとなっている。
【0052】
また、LED1は、固定ブラケット15に固着されるので、LED1の熱は固定ブラケット15を介して外部に放熱される。このため本実施形態の車両用前照灯は、灯具内の過度の温度上昇を抑制したものとなっている。
【0053】
また好ましくは本実施形態のように、固定ブラケット15は、発光部1aの発光中心に対応する部位に軸受部25(図3参照)を穿設することによって構成されており、ユニットケーシング9は、発光部1aの発光中心に対応する部位に設けた軸部5を軸受部25に支持させると共に、他の部位c2を配光制御手段20を構成するアクチュエータ21に支持されて取り付けられている。
【0054】
このとき軸受部25は、固定ブラケット15の上枠部材17に穿設した貫通孔で構成されており、軸部5は、リフレクタ2の外部に一体に突設した段付き軸で構成されている。そして軸部5は、その小径部を軸受部25に挿通させると共に、ワッシャーやプッシュナットで回転自由に支持されて取り付けられている。
【0055】
また、アクチュエータ21に支持される他の部位は、ユニットケーシング9の、前記対向部位c1よりも凸ンズ3の光軸Zに沿う後方部位c2であり、上部ケーシング11の後方フランジ11aに固着されるブラケット26に一体に突設した段付き軸6で構成されている。この段付き軸6は、可動アーム24の軸受部(図示せず)にワッシャーやプッシュナットで回転自由に支持されて取り付けられている。
【0056】
この構成では、ユニットケーシング9は、配光制御手段20を構成するアクチュエータ21の作動により、LED1の発光部1aの発光中心の対向部位c1を回動中心として回動する。このためユニットケーシング9の回動にも拘わらず、ケーシング9とLED1との相対的な焦点ずれが無く、これにより配光可変時の配光パターンの歪みを無くすことができる。このため本構成を備えた車両用前照灯は、一層優れた追従性能を有している。
【0057】
さらに好ましくは、本実施形態のように、放熱手段27が固定ブラケット15に設けられる。本実施形態では、放熱手段27は、放熱フインを設けた板状体で構成されており、固定ブラケット15の下枠部材16に固着されている。
【0058】
この構成では、放熱手段27は、固定ブラケット15に設けるようにしたので、凸レンズ3を備えたユニットケーシング9の軽量化をそのまま維持することができる。このため本構成を備えた車両用前照灯は、配光制御手段20の耐久性を維持しつつ、LED1の熱を放熱手段27を介して一層有効に外部に放熱することができる。
【0059】
また、放熱手段27は、固定ブラケット15に設けられるので、設置後の回動が無く、その回動に要するスペースの確保も不要となる。このため本構成を備えた車両用前照灯は、灯具全体をコンパクトに構成することができる。
【0060】
さらに、放熱手段27は、固定ブラケット15の大きさに合わせてその大きさを自由に設計することができるので、放熱手段27の設計自由度の拡大を図ることができる。
【0061】
図7は、本発明の第2実施形態としての車両用前照灯に適用される、複数個のプロジェクタ型前照灯ユニット10の組付状態を示す。この第2実施形態の車両用前照灯は、複数個のユニット10を用いている点が異なるだけで、個々のユニット10の構造および作動は第1実施形態の車両用前照灯と同様に構成されている。
【0062】
すなわち、第2実施形態の車両用前照灯では、LED1は、複数個設けられており、凸レンズ3を備えたユニットケーシング9は、複数個のLED1の各々に対応させて複数個設けられると共に、複数個の全体が同期するように配光制御手段20を構成するアクチュエータ21に支持されている。このため同一構成要素は、同一符号を付して説明を省略する。なお、図7では、リフレクタ2は、片側半分を切り欠いて示しており、かつ固定ブラケット15の上枠部材17が省略してある。
【0063】
具体的には、固定ブラケット15は、長尺に形成されており、複数個のLED1は、適宜の間隔を維持して下枠部材16の底辺部16aに直線状に固着されている。第2実施形態では、LED1は5個設置されている。
【0064】
凸レンズ3を備えたユニットケーシング9は、5個のLED1の各々に対応させて5個設けられている。このときのユニットケーシング9は、LED1の発光部1aの対向部位c1を回動中心となるように固定ブラケット15の上枠部材(図示せず)に回転自由に取り付けると共に、対向部位c1よりも凸レンズ3の光軸Zに沿う後方部位c2を、可動アーム24に回転自由に連結することによって、配光制御手段20のアクチュエータ21に連結している。
【0065】
このとき可動アーム24は、長尺に形成されており、5個のユニットケーシング9の後方部位c2を適宜の間隔を維持して直線状に支持することになると共に、可動アーム24のc方向移動は後方部位c2を介してユニットケーシング9に伝達され、5個の凸レンズ3を備えたユニットケーシング9は、LED1の発光部1aの対向部位c1を回動中心として矢印aまたはb方向(図7(b)はa方向回動後の状態を示す)に同期して回動する。
【0066】
これにより第2実施形態の車両用前照灯は、走行状況に対応して配光パターンを左右方向にずらすことができ、ひいては優れた追従性能を有したものとなっている。このときの配光パターンは、5個のLED1により充分な照度を得ることができる。
【0067】
したがって、第2実施形態の車両用前照灯は、5個のLED1により充分な照度を有する配光パターンを奏することができるので、車両用前照灯としての適合性を一層増大させることができる。
【0068】
その上、第2実施形態の車両用前照灯は、5個のLED1を直線状に固着するため固定ブラケット15を長尺に形成することが必要となり、この固定ブラケット15に設定される放熱手段27もその分大型化が可能となり、これにより高効率の放熱作用が確保できるので、5個のLED1をセッテイングしたにも拘わらず灯具内の温度上昇を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態としての車両用前照灯に適用されるプロジェクタ型前照灯ユニットで、(a)はその平面図、(b)は(a)のIb−Ib線に沿う断面図、(c)はその正面図である。
【図2】図1のプロジェクタ型前照灯ユニットの斜視図である。
【図3】第1実施形態としての車両用前照灯に適用される固定ブラケットと、LEDと、配光制御手段と、放熱手段との結合状態を説明するための斜視図である。
【図4】図1のプロジェクタ型前照灯ユニットと配光制御手段との結合状態を説明するための斜視図である。
【図5】図1のプロジェクタ型前照灯ユニットと、固定ブラケットと、配光制御手段と、放熱手段との結合状態を説明するための斜視図である。
【図6】第1実施形態としての車両用前照灯の配光パターンを示すグラフで、(a)はプロジェクタ型前照灯ユニットの正面位置での配光パターン、(b)はプロジェクタ型前照灯ユニットの回動後の位置での配光パターンである。
【図7】本発明の第2実施形態としての車両用前照灯に適用される複数個のプロジェクタ型前照灯ユニットの固定ブラケットへの組み付け状態を示す斜視図で、(a)はプロジェクタ型前照灯ユニットの正面位置での組み付け状態、(b)はプロジェクタ型前照灯ユニットの回動後の位置での組み付け状態である。
【図8】従来のプロジェクタ型車両用前照灯の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 LED
1a 発光部(LEDの)
2 リフレクタ
3 凸レンズ
5 軸部
9 ユニットケーシング
10 ユニット(プロジェクタ型前照灯ユニット)
15 固定ブラケット
20 配光制御手段
21 アクチュエータ
25 軸受部
27 放熱手段
c1 対向部位
c2 後方部位(他の部位)
Z 光軸(凸レンズの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の光をリフレクタで反射させた後、凸レンズを介して前方へ出射させるプロジェクタ型前照灯ユニットが、走行状況に対応して照射方向や照射範囲を追従変化させる配光制御手段により水平方向に回動制御されてランプハウジング内に組み込まれてなる車両用前照灯であって、
前記プロジェクタ型前照灯ユニットは、発光部を前記リフレクタに対向させて前記ランプハウジング内の固定ブラケットに固着される前記光源としてのLEDと、前記リフレクタを後部に備え前記発光部の対向部位を回動中心として前記固定ブラケットに水平方向に回動可能に取り付けられると共に前記配光制御手段により回動制御される樹脂製のユニットケーシングと、該ユニットケーシングの前部開口部に取り付けられる樹脂製の前記凸レンズとから構成されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用前照灯であって、
前記固定ブラケットには、前記発光部の発光中心に対応する部位に軸受部が穿設されており、
前記ユニットケーシングは、前記発光部の発光中心に対応する部位に設けた軸部を前記軸受部に支持させると共に、他の部位を前記配光制御手段を構成するアクチュエータに支持されて取り付けられていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用前照灯であって、
前記固定ブラケットには、放熱手段が設けられていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯であって、
前記LEDは、複数個設けられており、
前記凸レンズを備えた前記ユニットケーシングは、複数個の前記LEDの各々に対応させて複数個設けられると共に、前記複数個の全体が同期するように前記配光制御手段を構成するアクチュエータに支持されていることを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−117164(P2006−117164A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308683(P2004−308683)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】