説明

車両用回転電機

【課題】この発明は、絶縁ブッシュをスナップフィット結合方式で絶縁筒に直接取り付けるようにし、穴加工精度を高めることなくブラケットに取り出し穴を形成でき、かつ中継部材を入出力端子ボルトの雄ねじ部に締着後絶縁ブッシュを装着できる、安価な、組立作業性に優れた車両用回転電機を得る。
【解決手段】三相の締結座金26が締結部26aの両面を露出するようにファンガイド30にインサート成形され、絶縁筒31が各相の締結座金26の締結部26aの他面を取り囲んで、かつ各相の中継部材27の一端側を取り囲んでファンガイド30の他面側に一体に突設され、絶縁ブッシュ36が中継部材27の外周を覆うように各相の絶縁筒31にスナップフィット結合により装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に用いられる車両用回転電機に関し、特に車両用回転電機の固定子巻線の口出し線と入出力ハーネスとの間の電力の授受を行う入出力端子部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用回転電機では、中継部材が出力端子ボルトの雄ねじ部に螺着されて締結座金の一面に面接触状態に当接し、固定子側ターミナルが頭部と締結座金の他面との間に面接触状態に締結されている。また、ナットが中継部材から延出する出力端子ボルトの雄ねじ部に螺着され、三相電線側ターミナルが中継部材の反締結座金側端面に面接触状態に締結されている。そして、絶縁筒が中継部材の外周を覆うように中継部材とブラケットに形成された取り出し穴との間に介装されている。さらに、絶縁ブッシュが、絶縁筒、絶縁筒からの出力端子ボルトの延出部、さらには三相電線側ターミナルを覆うように、取り出し穴に装着されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−325376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用回転電機においては、絶縁ブッシュがブラケットに形成された取り出し穴に装着されているので、アルミ製のブラケットに形成される取り出し穴の穴加工精度を高くしなければならず、加工費が高くなると共に、絶縁ブッシュを取り出し穴に装着した後、中継部材を出力端子ボルトの雄ねじ部に締着することになり、三相出力端子部の組立作業性が悪化していた。
【0005】
この発明は、上記の課題を解消するためになされたもので、絶縁ブッシュをスナップフィット結合方式で絶縁筒に直接取り付けるようにし、穴加工精度を高めることなくブラケットに取り出し穴を形成でき、かつ中継部材を入出力端子ボルトの雄ねじ部に締着後絶縁ブッシュを装着できる、安価な、組立作業性に優れた車両用回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による回転電機は、ハウジングと、このハウジングに回転自在に支持されたシャフトに固着されて上記ハウジング内に配設された回転子と、上記回転子を所定のエアギャップを介して囲繞して配設された固定子鉄心およびこの固定子鉄心に巻装された固定子巻線を有する固定子と、この固定子巻線の三相の口出し線が接続される三相の固定子側ターミナルと、この三相の固定子側ターミナルと三相の入出力ハーネスとを接続するための三相の入出力端子部と、を備えている。各相の上記入出力端子部は、締結部及び該締結部内に穿設された貫通孔を有する締結座金と、頭部、該頭部の一側に延設された軸部、該軸部根元部に形成されたローレット部およびこの軸部に形成された雄ねじ部を有し、該ローレット部を上記締結部の貫通孔に圧入して該軸部が上記ハウジングに穿設された取り出し穴から延出された入出力端子ボルトと、雌ねじ部が内周面に形成された筒状体に形成され、該雌ねじ部を上記雄ねじ部に螺着されて上記取り出し穴から延出され、一端面を上記締結部の他面に密接させて上記固定子側ターミナルを上記頭部と上記締結部の一面との間に締結する中継部材と、この中継部材の他端面から延出する上記入出力端子ボルトの雄ねじ部に螺着されて上記入出力ハーネスに電気的に接続されたハーネス側ターミナルを上記中継部材の他端面に締着するナット部材と、を備えている。そして、三相の上記締結座金が上記締結部の両面を露出するようにモールド体にインサート成形され、絶縁筒が各相の上記締結座金の締結部の他面を取り囲んで、かつ各相の上記中継部材の一端側を取り囲んで上記モールド体の他面側に一体に突設され、絶縁性樹脂製の絶縁ブッシュが上記中継部材の外周を覆うように各相の上記絶縁筒にスナップフィット結合により装着されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、絶縁ブッシュが中継部材の外周を覆うように各相の絶縁筒にスナップフィット結合により装着されているので、ハウジングに形成される取り出し穴の穴加工精度を高める必要が無く、加工費が安くなる。また、中継部材を入出力端子ボルトの雄ねじ部に締着した後、絶縁ブッシュを絶縁筒に装着することができ、入出力端子部の組立作業性が高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用回転電機を示す縦断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る車両用回転電機におけるハーネス側ターミナルの取付状態を説明する図であり、図2の(a)はその正面図、図2の(b)はその縦断面図である。図3はこの発明の実施の形態1に係る車両用回転電機に適用されるファンガイドを示す平面図、図4はこの発明の実施の形態1に係る車両用回転電機における入出力端子部の組立方法を説明する図である。
【0009】
図1乃至図3において、ハウジング1は、椀状に形成されたアルミニウム製のフロントブラケット2およびリヤブラケット3を相対して配置し、両ブラケット2,3をボルト4により締着固定して構成されている。シャフト5は、両ブラケット2,3に軸受6,7を介して回転自在に取り付けられている。そして、プーリ8がシャフト5のフロントブラケット2からの延出部に固着され、図示していないが、ベルトを介してエンジンの回転軸に連結されている。また、吸気孔2a,3aがフロントブラケット2およびリヤブラケット3の端面の軸受6,7の径方向外周側に穿設され、排気孔2b、3bがフロントブラケット2およびリヤブラケット3の径方向外周縁部に穿設されている。
【0010】
ランデル型の回転子9は、電流を流して磁束を発生する界磁巻線10と、この界磁巻線10を覆うように設けられ、その磁束によって磁極が形成される一対のポールコア11,12とを備えている。この回転子9は、一対のポールコア11,12がそれぞれの爪状磁極部を噛み合わせるように組み付けられてシャフト5に圧入され、ハウジング1内に回転自在に配設されている。そして、冷却ファン13がシャフト5に圧入されたポールコア11,12の軸方向両端面にそれぞれ固着されている。
【0011】
固定子14は、円筒状の固定子鉄心15と、固定子鉄心15に巻装された固定子巻線16とから構成されている。この固定子14は、ボルト4の締着力により固定子鉄心15の外周両端を両ブラケット2,3に加圧挟持されて、回転子9を囲繞するようにハウジング1に取り付けられている。
スリップリング17は、シャフト5の軸受7側に嵌着され、シャフト5と一体となって回転する。このスリップリング17は、界磁巻線10と電気的に接続されている。そして、一対のブラシ18がブラシホルダ19に収納され、それぞれスリップリング17の表面に摺動するように配設されている。また、固定子14に対する回転子9の相対位置を検出する回転子位置検出装置20が、軸受7の軸方向外方に配設されている。
【0012】
入出力端子ボルト25は、鉄などの導電材料で作製され、頭部25a、頭部25aから一側に延設された軸部25b、軸部25bの根元部に形成されたローレット部25cおよび軸部25bに形成された雄ねじ部25dを備えている。
締結座金26は、鉄などの導電材料で平板状に作製され、貫通孔26bがその締結部26aに穿設されている。中継部材27は、鉄等の導電材料で円筒状に作製され、その内周面に雌ねじ部27aが形成されている。そして、中継部材27の一端側の外形形状が六角ナット形状になっている。
【0013】
モールド体としてのファンガイド30は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を用いてリング状の平板に作製されている。そして、3つの締結座金26が、それぞれ締結部26aの両面を露出させるようにファンガイド30の所定位置に一体にインサートモールドされている。また、切り欠き30aが、ブラシホルダ19を嵌入させるようにファンガイド30に形成されている。さらに、絶縁筒31が3つの締結座金26の締結部26aをそれぞれ取り囲むように、ファンガイド30の裏面から一体に突設されている。スナップフィット結合の嵌合凹部31aが絶縁筒31の内壁面に、ファンガイド30の径方向に相対して凹設されている。また、径方向外方の各嵌合凹部31aの底部とファンガイド30の表面側とを連通する排水穴31bがファンガイド30に形成されている。さらに、径方向内方の各嵌合凹部31aの底部と絶縁筒31の外周側とを連通する排水穴31cが絶縁筒31に形成されている。
【0014】
絶縁ブッシュ36は、例えばPPS樹脂を用いて中継部材27を覆う内周形状を有する円筒状に作製されている。そして、嵌合凹部31aに嵌着されるスナップフィット部36aが、一対の嵌合凹部31aに対応する位置関係に、絶縁ブッシュ36の一端から相対して延設されている。
【0015】
ここで、入出力端子部の取付方法について、図4を参照しつつ説明する。
まず、ファンガイド30が、3つの絶縁筒31をリヤブラケット3に穿設された取り出し穴32からそれぞれ延出させて、複数本の取付ねじ(図示せず)をリヤブラケット3の内壁面に締着して、シャフト5の軸心と直交するように配設される。このとき、ファンガイド30は、切り欠き30a内にブラシホルダ19を嵌入させて、平坦なブレード対向面を構成する。なお、ブレード対向面とは、冷却ファン13のブレードに対向する環状の面である。また、複数本の取付ねじのなかの3本が、ファンガイド30中に埋め込まれた各締結座金26の延出部26cを電気的に絶縁状態に貫通してリヤブラケット3の内壁面に締着され、ファンガイド30の取付強度が高められている。
【0016】
ついで、入出力端子ボルト25が、ファンガイド30の表面側からローレット部25cを締結座金26の貫通孔26bに圧入して、締結座金26のそれぞれに取り付けられる。そして、中継部材27が一端側の六角ナット形状を利用して軸部25bに形成された雄ねじ部25dに締着される。これにより、固定子側ターミナル33の一端が、入出力端子ボルト25の雄ねじ部25dに螺着された中継部材27の締着力により、頭部25aと締結座金26の締結部26aの一面との間に面接触状態に加圧挟持される。また、中継部材27の締結座金側端面27bが締結座金26の締結部26aの他面に面接触状態に当接している。なお、固定子巻線16の三相の口出し線16aがそれぞれ固定子側ターミナル33の他端に溶接されている。
【0017】
ついで、絶縁ブッシュ36が、スナップフィット部36aを各嵌合凹部31aに嵌着させて、絶縁筒31にスナップフィット結合される。さらに、入出力ハーネス34のハーネス側ターミナル34aが、各入出力端子ボルト25の雄ねじ部25dに装着され、ナット部材としてのナット35の雄ねじ部25dへの締着により、中継部材27の反締結座金側端面27cに面接触状態に締結されている。
ここで、各相の入出力端子部が、入出力端子ボルト25、締結座金26、中継部材27、固定子側ターミナル33、ナット35および絶縁ブッシュ36により構成されている。また、絶縁筒31からの入出力端子ボルト25の延出部が絶縁ブッシュ36に覆われる。
【0018】
このように構成された車両用回転電機においては、電流がバッテリ(図示せず)からブラシ18およびスリップリング17を介して界磁巻線10に供給され、磁束が発生される。この磁束により、一方のポールコア11の爪状磁極がN極に着磁され、他方のポールコア12の爪状磁極がS極に着磁される。一方、エンジンの回転トルクがエンジンの出力軸からベルトおよびプーリ8を介してシャフト5に伝達され、回転子9が回転される。そこで、固定子巻線16に回転磁界が与えられ、固定子巻線16に起電力が発生する。この交流の起電力が三相の口出し線16a、固定子側ターミナル33、締結座金26および中継部材27を介して三相の入出力ハーネス34から外部に取り出される。そして、三相の入出力ハーネス34を介して取り出された三相の交流電流は、外部の三相整流回路(図示せず)に入力され、直流電流に整流されてバッテリを充電したり、電気負荷に供給される。
【0019】
また、エンジンの始動時には、交流電流が三相駆動回路(図示せず)より三相の入出力ハーネス34を介して固定子巻線16に順次供給され、界磁電流がブラシ18およびスリップリング17を介して界磁巻線10に供給される。そして、固定子巻線16および界磁巻線10が電磁石となり、回転子9がシャフト5とともに固定子14内で回転する。このシャフト5の回転力がプーリ8からベルトを介してエンジンの出力軸に伝達され、エンジンが始動される。この時、回転子位置検出装置20が回転子9の回転角度を検出する。そして、制御装置(図示せず)が回転子9の回転方向が一定方向で、かつ、所定の回転速度が得られるように、固定子巻線16に順次供給する交流電流を制御する。
【0020】
さらに、この車両用回転電機では、シャフト5が回転されると、回転子9とともに冷却ファン13が回転駆動される。そして、冷却ファン13の回転により、外気が吸気孔2a,3aからハウジング1内に吸入される。
そして、吸気孔2aから吸入された外気は、冷却ファン13で遠心方向に曲げられて、排気孔2bからハウジング1の外部に排出される。これにより、ハウジング1内の発熱部品である固定子巻線16のフロント側コイルエンドから熱が冷却風に吸熱され、固定子14が冷却される。
【0021】
一方、吸気孔3aから吸入された外気は、ブラシホルダ19およびファンガイド30に沿って径方向内方に流れ、ファンガイド30の内周側とシャフト5との間を通って回転子9側に流れる。そして、回転子9側に流れてきた空気は、冷却ファン13で遠心方向に曲げられて、排気孔3bからハウジング1の外部に排出される。これにより、固定子巻線16のリヤ側コイルエンドから熱が冷却風に吸熱され、固定子14が冷却される。また、入出力端子ボルト25と固定子側ターミナル33との電気的接続部が冷却される。
【0022】
この実施の形態1によれば、絶縁ブッシュ36がファンガイド30の絶縁筒31に装着されているので、リヤブラケット3に形成される取り出し穴32の穴加工精度を高くする必要が無く、穴加工費が安価になる。
また、絶縁ブッシュ36が中継部材27を覆う内周形状に形成され、絶縁筒31にスナップフィット結合方式で装着されているので、中継部材27を入出力端子ボルト25の雄ねじ部25dに締結後に絶縁ブッシュ36を絶縁筒31に装着でき、入出力端子部の組立作業性が向上される。また、絶縁筒31からの入出力端子ボルト25の延出部が絶縁ブッシュ36に覆われるので、リヤブラケット3と入出力端子ボルト25との間の電気的絶縁性が確保される。
【0023】
また、径方向外方の嵌合凹部31aとファンガイド30の表面側とを連通する排水穴31bが形成されているので、中継部材27と絶縁ブッシュ36との間に侵入した水は、嵌合凹部31aおよび排水穴31bを通って固定子14側に導かれ、排気孔3bから外部に排水される。そこで、侵入した水に含まれる泥などが堆積し、リヤブラケット3と入出力端子部の電気導電部との間で地絡を起こすことが未然に防止される。
また、排水穴31bが嵌合凹部31aの底部とファンガイド30の表面側とを連通するように形成されているので、嵌合凹部31aが排水路の機能を兼用し、排水路の構成が簡易となる。
【0024】
また、入出力端子ボルト25はその雄ねじ部25dを取り出し穴32から延出させ、ハーネス側ターミナル34aがナット35の締着力により雄ねじ部25dに螺着された中継部材27の反締結座金側端面27cに面接触状態で締着固定されている。これにより、ハーネス側ターミナル34aの入出力端子ボルト25に対する接続力が大きくなり、中継部材27とハーネス側ターミナル34aとの接続抵抗が小さくなる。
そこで、仮に大電流が流れた場合でも、中継部材27とハーネス側ターミナル34aとの接点での発熱が抑制され、当該接続部での温度上昇が抑えられる。これにより、接点部の溶着や周囲の樹脂部品の溶融の発生が防止される。また、電流によるジュール損が減少し、特性および効率が向上される。
【0025】
さらに、ハーネス側ターミナル34aが中継部材27に強固に接続されているので、車両の振動が入出力ハーネス34を揺らしても、中継部材27とハーネス側ターミナル34aとの接続部が摩耗したり、破損したりすることが防止される。
【0026】
また、固定子側ターミナル33が、中継部材27の締着力により、入出力端子ボルト25の頭部25aと締結座金26との間に面接触状態で締着固定されている。さらに、中継部材27締結座金側端面27bが締結座金26に面接触状態で当接している。これにより、螺着部が固定子側ターミナル33からハーネス側ターミナル34aに至る主電気伝導経路から排除される。即ち、この主電気伝導経路における電気的接続部は面接触部で構成される。そこで、仮に大電流が流れた場合でも、この主電気伝導経路での発熱が抑制され、接点部の溶着や樹脂部品の溶融の発生が確実に防止される。
【0027】
また、入出力端子ボルト25と固定子側ターミナル33とが雄ねじ部25dに螺着された中継部材27の締着力により強固に接続されているので、車両の振動が入出力ハーネス34を介して入出力端子ボルト25に伝わっても、入出力端子ボルト25と固定子側ターミナル33との接続部が摩耗したり、破損したりすることが防止される。
また、中継部材27が取り出し穴32からリヤブラケット3の外部に延出しているので、固定子側ターミナル33と締結座金26との締結をハウジング1の外部から行うことができる。そこで、固定子14および回転子9をハウジング1に組み付けた後、固定子側ターミナル33と締結座金26との締結作業を実施でき、組立性が向上される。
【0028】
また、ファンガイド30が平坦なファン対向面を構成するように配設されているので、冷却ファン13とファンガイド30との干渉による風騒音が低減される。さらに、冷却ファン13により遠心方向に曲げられた冷却風が入出力端子ボルト25の頭部25aから熱を吸熱する。そこで、入出力端子部で発生した熱は入出力端子ボルト25を介して冷却風に吸熱され、過度の温度上昇が抑制される。
【0029】
また、絶縁筒31が中継部材27の外周を覆うように中継部材27と取り出し穴32との間に介装されているので、中継部材27とハウジング1との間の電気的絶縁性が確保される。
また、絶縁筒31がファンガイド30に一体にモールド成形されているので、部品点数が削減され、組立性が向上される。
また、3つの締結座金26がファンガイド30に一体にモールド成形されているので、部品点数が削減され、組立性が向上される。
さらに、固定子側ターミナル33およびハーネス側ターミナル34aが単一の入出力端子ボルト25を用いて締結されているので、入出力端子部の構造が簡素化され、堅牢となる。
【0030】
なお、上記実施の形態1では、スナップフィット結合の嵌合凹部31aが絶縁筒31の内壁面に、ファンガイド30の径方向に相対して凹設され、径方向外方の各嵌合凹部31aの底部とファンガイド30の表面側とを連通する排水穴31bがファンガイド30に形成されているものとしている。しかし、中継部材27と絶縁ブッシュ36との間に侵入した水の排水性を考慮すれば、ファンガイド30がリヤブラケット3に取り付けられた状態において、嵌合凹部31aの1つを地方向に位置するように各絶縁筒31に形成し、排水穴31bを当該嵌合凹部31aの底部とファンガイド30の表面側とを連通するように形成することが好ましい。
【0031】
また、上記実施の形態1では、スナップフィット結合のスナップフィット部36aを絶縁ブッシュ36に形成し、嵌合凹部31aを絶縁筒31に形成するものとしているが、スナップフィット部を絶縁筒31に形成し、嵌合凹部を絶縁ブッシュ36に形成してもよい。この場合、排水穴を絶縁筒31の底部とファンガイド30の表面側とを連通するように形成すればよい。
【0032】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る車両用回転電機におけるハーネス側ターミナルの取付状態を説明する図であり、図5の(a)はその正面図、図5の(b)はその縦断面図である。
【0033】
図5において、ハーネス側ターミナル34aの差し込み用の切り欠き36cを有するC状の回り止め36bが絶縁ブッシュ36Aの他端に突設されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0034】
この実施の形態2では、絶縁ブッシュ36Aが、スナップフィット部36aを各嵌合凹部31aに嵌着して、絶縁筒31にスナップフィット結合される。また、入出力ハーネス34のハーネス側ターミナル34aが、各入出力端子ボルト25の雄ねじ部25dに装着され、ナット35の雄ねじ部25dへの締着により、中継部材27の反締結座金側端面27cに面接触状態に締結されている。そして、ハーネス側ターミナル34aが回り止め36bの切り欠き36cから延出されている。さらに、絶縁筒31からの入出力端子ボルト25の延出部、さらにはハーネス側ターミナル34aが絶縁ブッシュ36Aに覆われる。
【0035】
従って、この実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
この実施の形態2によれば、回り止め36bが絶縁ブッシュ36Aの他端に形成されているので、ナット35を雄ねじ部25dに締着する際に、ハーネス側ターミナル34aの供回りが阻止される。また、締着後のハーネス側ターミナル34aの回動も阻止され、ハーネス側ターミナル34aの締着緩みの発生が防止される。また、車両用回転電機の車両への搭載状態を考慮して、3つの絶縁ブッシュ36Aにおける切り欠き34cの位置を変えることで、入出力ハーネス34の組み付け方向を最適な方向に設定することができる。
【0036】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3に係る車両用回転電機における絶縁ブッシュの構造を説明する図であり、図6の(a)はその側面図、図6の(b)はその背面図である。図7はこの発明の実施の形態3に係る車両用回転電機に適用されるファンガイドを示す平面図である。
【0037】
図6において、回り止め突起部36dが絶縁ブッシュ36Bの一端のスナップフィット部36a間の位置から突設されている。
図7において、回り止め突起部36dが嵌入される嵌合溝31dがファンガイド30Aの絶縁筒31に凹設されている。
なお、他の構成は上記実施の形態2と同様に構成されている。
【0038】
この実施の形態3では、絶縁ブッシュ36Bが、スナップフィット部36aを各嵌合凹部31aに嵌着して、絶縁筒31にスナップフィット結合される。この時、回り止め突起部36dが嵌合溝31dに嵌入される。また、入出力ハーネス34のハーネス側ターミナル34aが、各入出力端子ボルト25の雄ねじ部25dに装着され、ナット35の雄ねじ部25dへの締着により、中継部材27の反締結座金側端面27cに面接触状態に締結されている。そして、ハーネス側ターミナル34aが回り止め36bの切り欠き36cから延出されている。さらに、絶縁筒31からの入出力端子ボルト25の延出部、さらにはハーネス側ターミナル34aが絶縁ブッシュ36Bに覆われる。
【0039】
従って、この実施の形態3においても、上記実施の形態2と同様の効果が得られる。
この実施の形態3によれば、絶縁ブッシュ36Bの回り止め突起部36dがファンガイド30Aの絶縁筒31に形成された嵌合溝31dに嵌入されるようになっているので、絶縁ブッシュ36Bの回動が阻止される。そこで、ナット35を雄ねじ部25dに締着する際に、絶縁ブッシュ36Bの供回りが阻止されるので、ハーネス側ターミナル34aの供回りが確実に阻止される。また、締着後の絶縁ブッシュ36Bの回動が阻止されるので、ハーネス側ターミナル34aの回動が阻止され、ハーネス側ターミナル34aの締着緩みの発生が確実に防止される。
【0040】
なお、上記実施の形態3では、回り止め突起部36dが絶縁ブッシュ36Bに形成され、嵌合溝31dが絶縁筒31に形成されているものとしているが、回り止め突起部が絶縁筒31に形成され、嵌合溝が絶縁ブッシュに形成されてもよい。
また、上記各実施の形態では、排水穴31bが嵌合凹部31aの底部とファンガイド30の表面側とを連通するように形成されているものとしているが、排水穴31bを絶縁筒31の底部とファンガイド30の表面側とを連通するように形成してもよい。
また、上記各実施の形態において、3つの絶縁ブッシュ36BをU相、V相およびW相を特定する色で作製すれば、U相、V相およびW相の入出力ハーネス34の誤組み付けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車両用回転電機を示す縦断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る車両用回転電機におけるハーネス側ターミナルの取付状態を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る車両用回転電機に適用されるファンガイドを示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る車両用回転電機における入出力端子部の組立方法を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る車両用回転電機におけるハーネス側ターミナルの取付状態を説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る車両用回転電機における絶縁ブッシュの構造を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る車両用回転電機に適用されるファンガイドを示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ハウジング、5 シャフト、9 回転子、13 冷却ファン、14 固定子、15 固定子鉄心、16 固定子巻線、16a 口出し線、25 入出力端子ボルト、25a 頭部、25b 軸部、25c ローレット部、25d 雄ねじ部、26 締結座金、26a 締結部、26b 貫通孔、27 中継部材、30 ファンガイド(モールド体)、31 絶縁筒、31a 嵌合凹部、31b 排水穴、31d 嵌合溝、32 取り出し穴、33 固定子側ターミナル、34 入出力ハーネス、34a ハーネス側ターミナル、35 ナット(ナット部材)、36,36A,36B 絶縁ブッシュ、36a スナップフィット部、36b 回り止め、36d 回り止め突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングに回転自在に支持されたシャフトに固着されて上記ハウジング内に配設された回転子と、上記回転子を所定のエアギャップを介して囲繞して配設された固定子鉄心およびこの固定子鉄心に巻装された固定子巻線を有する固定子と、この固定子巻線の三相の口出し線が接続される三相の固定子側ターミナルと、この三相の固定子側ターミナルと三相の入出力ハーネスとを接続するための三相の入出力端子部と、を備えた車両用回転電機において、
各相の上記入出力端子部は、
締結部及び該締結部内に穿設された貫通孔を有する締結座金と、
頭部、該頭部の一側に延設された軸部、該軸部根元部に形成されたローレット部およびこの軸部に形成された雄ねじ部を有し、該ローレット部を上記締結部の貫通孔に圧入して該軸部が上記ハウジングに穿設された取り出し穴から延出された入出力端子ボルトと、
雌ねじ部が内周面に形成された筒状体に形成され、該雌ねじ部を上記雄ねじ部に螺着されて上記取り出し穴から延出され、一端面を上記締結部の他面に密接させて上記固定子側ターミナルを上記頭部と上記締結部の一面との間に締結する中継部材と、
この中継部材の他端面から延出する上記入出力端子ボルトの雄ねじ部に螺着されて上記入出力ハーネスに電気的に接続されたハーネス側ターミナルを上記中継部材の他端面に締着するナット部材と、を備え、
三相の上記締結座金が上記締結部の両面を露出するようにモールド体にインサート成形され、
絶縁筒が各相の上記締結座金の締結部の他面を取り囲んで、かつ各相の上記中継部材の一端側を取り囲んで上記モールド体の他面側に一体に突設され、
絶縁性樹脂製の絶縁ブッシュが上記中継部材の外周を覆うように各相の上記絶縁筒にスナップフィット結合により装着されていることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項2】
上記ハーネス側ターミナルの回り止めが上記絶縁ブッシュに形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用回転電機。
【請求項3】
回り止め突起部が上記絶縁ブッシュと上記絶縁筒との一方に形成され、かつ、嵌合溝が上記絶縁ブッシュと上記絶縁筒との一方に形成され、上記回り止め突起部が上記嵌合溝に嵌入して上記絶縁筒に対する上記絶縁ブッシュの回動が規制されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用回転電機。
【請求項4】
三相の上記絶縁ブッシュが、それぞれ異なる色で作製されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用回転電機。
【請求項5】
スナップフィット部が上記絶縁ブッシュに形成され、嵌合凹部が上記絶縁筒に形成され、排水穴が上記嵌合凹部の底部と上記モールド体の一面側とを連通するように該モールド体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−263702(P2008−263702A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103839(P2007−103839)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】