説明

車両用変速制御装置

【課題】回転数制御からトルク制御への切り換え時に発生するショックを抑制できる車両の変速制御装置を提供する。
【解決手段】動力源と変速機における入出力の回転数差を第1の所定値よりも小さい第2の所定値に制御する回転数制御部と、回転数差が第2の所定値よりも大きく第1の所定値よりも小さい第3の所定値以下の場合に、クラッチのトルク容量を勾配をもって増加させるトルク容量制御部と、回転数差が第3の所定値以下になってトルク容量制御部がクラッチのトルク容量を増加させた時点の値から第4の所定値だけ増加したか否かを判定する増加判定部と、増加判定部で動力源のトルクが第4の所定値だけ増加したと判定された場合に、回転数制御からトルク制御に切り換える切換部と、その切り換え時の動力源の出力トルクをトルク制御の目標値に設定するトルク制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータジェネレータとCVT等の変速機とこれらの連結を切断及び接続するクラッチとを備える車両の変速制御装置として、クラッチのスリップ制御の実施中にはモータジェネレータの回転数に基づいて制御(回転数制御)する一方、クラッチのスリップ制御の終了後にはモータジェネレータのトルクに基づいて制御(トルク制御)するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。当該変速制御装置によれば、スリップ制御中に生じるクラッチのスリップ量の過大化を抑制でき、クラッチの耐久性を向上できる。また、当該変速制御装置によれば、スリップ制御終了後にアクセル操作量に応じたトルクを出力でき、運転者の違和感を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記変速制御装置において、回転数制御の終了時点におけるエンジン及びモータの実際のトルクと、目標駆動力から定まる目標トルクとの間にトルク段差が生じる場合がある。この場合、回転数制御からトルク制御へ切り換える際にショックや空吹きが発生する。
本発明は、上記事情に鑑み、回転数制御からトルク制御へ切り換える場合に発生するショックを抑制できる車両用変速制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、車両用変速制御装置は、動力源と変速機との連結を切断及び接続するクラッチの入力側と出力側との回転数差を第1の所定値に維持するスリップ締結状態から完全締結状態に変化させる場合に、前記動力源の回転数を制御する回転数制御から前記動力源のトルクを制御するトルク制御に切り換える車両用変速制御装置であって、前記回転数制御から前記トルク制御に切り換わる場合に、前記回転数差を第1の所定値よりも小さい第2の所定値に制御する回転数制御部と、前記回転数差が前記第2の所定値よりも大きく前記第1の所定値よりも小さい第3の所定値以下か否かを判定する回転差判定部と、前記回転差判定部により前記回転数差が前記第3の所定値以下と判定された場合に、前記クラッチのトルク容量を、勾配をもって増加させるトルク容量制御部と、前記回転数差が前記第3の所定値以下になって前記トルク容量制御部が前記クラッチのトルク容量の増加を開始した時点から前記動力源のトルクが第4の所定値だけ増加したか否かを判定する増加判定部と、前記増加判定部により前記動力源のトルクが前記第4の所定値だけ増加したと判定された場合に、前記回転数制御から前記トルク制御に切り換える切換部と、前記切換部により前記回転数制御から前記トルク制御に切り換える時に、前記動力源が出力しているトルクを、前記トルク制御に切り換えた時の目標値として設定するトルク制御部と、を備える。
【0006】
前記トルク制御部は、前記切換部により前記回転数制御から前記トルク制御に切り換えた場合に、前記トルク容量制御部により増加される前記クラッチのトルク容量の変化率よりも小さな変化率で、前記動力源のトルクを、アクセル開度と車速とから決まる目標値まで増加させることも好ましい。
上記車両用変速制御装置において、前記トルク容量制御部は、前記クラッチのトルク容量が前記動力源のトルクより大きくなった場合に、前記クラッチのトルク容量を最大値に増加させてもよい。
【0007】
前記回転差判定部は、前記回転数差が前記第3の所定値よりも小さい第5の所定値以下か否かを判定し、前記トルク容量制御部は、前記回転差判定部により前記回転数差が前記第5の所定値以下と判定された場合に、前記クラッチのトルク容量を最大値に増加させることも好ましい。
【発明の効果】
【0008】
上記車両用変速制御装置によれば、回転数制御からトルク制御に切り換える時に、回転数制御で出力している原動機のトルクを、トルク制御に切り換えた後のトルク制御の目標値として設定している。このため、回転数制御とトルク制御との間でトルク段差が小さくなり、回転数制御からトルク制御へ切り換えた時に発生するショックを抑制できる。
更に、クラッチの回転数差がスリップ締結状態で維持される第1の回転数差よりも小さい第3の所定値以下になった場合に、クラッチのトルク容量を、勾配をもって増加させるとともに、この増加開始時点の動力源のトルクから第4の所定値だけ、動力源のトルクが増加した場合に、回転数制御からトルク制御に切り換えるようにした。
【0009】
このため、クラッチをスリップ締結状態から完全締結状態に変化させる場合に、運転者のアクセル操作などがあり、動力源のトルクが低下して、クラッチの回転数差が第3の所定値以下となっても、回転数制御からトルク制御へ切り換わることがない。このように、クラッチをスリップ締結状態から完全締結状態に変化させる場合に、運転者のアクセル操作などがあっても、回転数制御からトルク制御への切換時期の誤判定を抑制できる。切換時期の誤判定を抑制できると、切換時期の間違いによる動力源のトルクとクラッチのトルク容量との不一致などによるショックなどの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係るハイブリッド車両の駆動系を示す概略構成図である。
【図2】ハイブリッド車両の制御系を示す概略構成図である。
【図3】統合コントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図4】車両の発進時における車速VSPとCVTの入力軸の回転数Nとエンジン回転数Neとモータ回転数Nmと第2クラッチのトルク容量Tchと合成トルク(Te+Tm)との関係を示すタイミングチャートである。
【図5】WSC走行モードの開始から終了後までの処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用変速制御装置としての統合コントローラ10(図2参照)を備えるハイブリッド車両100の駆動系を示す概略構成図である。この図に示すように、ハイブリッド車両100の駆動系は、エンジン110と、第1クラッチ120と、モータジェネレータ130と、第2クラッチ140と、自動変速機(オートマチックトランスミッション)としてのベルト式CVT(Continuously Variable Transmissionの略、以下、CVTという)150とを備えている。
【0012】
図2は、ハイブリッド車両100の制御系を示す概略構成図である。この図に示すように、ハイブリッド車両100の制御系は、統合コントローラ10と、エンジンコントローラ12と、第1クラッチコントローラ20と、モータコントローラ30と、第2クラッチコントローラ40と、トランスミッションコントローラ(以下、TCという)50と、ブレーキコントローラ14と、第1クラッチ油圧ユニット22と、第2クラッチ油圧ユニット42と、トランスミッション油圧ユニット52と、インバータ16と、バッテリ18とを備えている。エンジンコントローラ12と、第1クラッチコントローラ20と、モータコントローラ30と、第2クラッチコントローラ40と、TC50と、ブレーキコントローラ14と、統合コントローラ10とは、CAN通信回線19を介して接続されており、互いに通信可能である。
【0013】
まず、図1を参照してハイブリッド車両100の駆動系について説明する。エンジン110は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であり、エンジン出力軸からエンジントルクTeを出力する。また、エンジン110は、エンジンコントローラ12により、スロットルバルブのバルブ開度等を制御される。
第1クラッチ120は、エンジン110とモータジェネレータ130との間に配設された乾式多板クラッチである。この第1クラッチ120は、第1クラッチコントローラ20により制御される第1クラッチ油圧ユニット22で発生する油圧によって締結(ロックアップ)及び開放が制御され、エンジン110とモータジェネレータ130との連結を切断及び接続する。
【0014】
モータジェネレータ130は、第1クラッチ120と第2クラッチ140との間に配設され、永久磁石が埋設されたロータと、ステータコイルが巻き付けられたステータとを備える同期型モータジェネレータである。このモータジェネレータ130は、モータコントローラ30により制御されるインバータ16で生成される三相交流が印加されることによって駆動される。また、モータジェネレータ130は、バッテリ18から電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作する一方、ロータが外力により回転されている場合にステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として動作する。モータジェネレータ130は、電動機として動作している状態(所謂、力行状態)において、モータトルクTmを出力する。一方、モータジェネレータ130は、発電機として動作している状態(所謂、回生状態)において、バッテリ18を充電することができる。
【0015】
第2クラッチ140は、モータジェネレータ130とCVT150との間に配設された多板クラッチである。この第2クラッチ140は、第2クラッチコントローラ40により制御される第2クラッチ油圧ユニット42で発生する油圧によって締結(ロックアップ)及び開放が制御され、モータジェネレータ130とCVT150との連結を切断及び接続する。ここで、第2クラッチ140は、重ね合わされた複数の摩擦板を滑らせながら締結状態(完全締結状態)から開放状態(完全開放状態)に遷移する動作(スリップ締結)と、当該複数の摩擦板を滑らせながら締結状態から開放状態に遷移する動作(スリップ開放)とを行う。
【0016】
CVT150は、プライマリプーリ152と、セカンダリプーリ154と、Vベルト156とを備えている。プライマリプーリ152は、CVT150の入力軸151に連結されたプーリである。このプライマリプーリ152は、エンジントルクTeとモータトルクTmとにより回転される入力軸151に固定された固定円錐板152Aと、固定円錐板152Aと入力軸151の軸方向に対向して配設された可動円錐板152Bとを備えている。固定円錐板152Aと可動円錐板152Bとは、互いに円錐面を対向させて配設されており、固定円錐板152Aと可動円錐板152Bとの間の互いに対向した円錐面によりV字状の溝が形成されている。また、油圧室152Cが、可動円錐板152Bを介して固定円錐板152Aと対向するように配設されており、可動円錐板152Bは、油圧室152Cに作用する油圧(以下、プライマリ圧という)によって入力軸151の軸方向へ変位される。この可動円錐板152Bの変位により、プライマリプーリ152の溝幅が変化する。
【0017】
セカンダリプーリ154は、ディファレンシャルに連結されたプーリである。このセカンダリプーリ154は、CVT150により伝達されたエンジントルクTe、モータトルクTmにより回転される出力軸153に固定された固定円錐板154Aと、固定円錐板154Aと出力軸153の軸方向に対向して配設された可動円錐板154Bとを備えている。固定円錐板154Aと可動円錐板154Bとは、互いに円錐面を対向させて配設されており、固定円錐板154Aと可動円錐板154Bとの互いに対向した円錐面によりV字状の溝が形成されている。また、油圧室154Cが、可動円錐板154Bを介して固定円錐板154Aと対向するように配設されており、可動円錐板154Bは、油圧室154Cに作用する油圧(以下、セカンダリ圧という)によって出力軸153の軸方向へ変位される。この可動円錐板154Bの変位により、セカンダリプーリ154の溝幅が変化する。CVT150は、TC50により制御されるトランスミッション油圧ユニット52から油圧室152C、154Cに対してそれぞれ供給されるプライマリ圧及びセカンダリ圧によって、プライマリプーリ152及びセカンダリプーリ154の溝幅が増減される。
【0018】
Vベルト156は、プライマリプーリ152とセカンダリプーリ154とに巻き掛けられており、プライマリプーリ152の回転をセカンダリプーリ154に伝達する。Vベルト156は、プライマリプーリ152の溝幅が拡大した場合に、プライマリプーリ152の内径方向へ変位されることにより入力側ベルト半径を縮小される一方、プライマリプーリ152の溝幅が減少した場合に、プライマリプーリ152の外径方向へ変位されることにより入力側ベルト半径を拡大される。同様に、Vベルト156は、セカンダリプーリ154の溝幅が拡大した場合に、セカンダリプーリ154の内径方向へ変位されることにより出力側ベルト半径を縮小される一方、セカンダリプーリ154の溝幅が減少した場合に、セカンダリプーリ154の外径方向へ変位されることにより出力側ベルト半径を拡大される。これにより、Vベルト156の変速比が連続的に(無段階で)変化し、また、Vベルト156とプライマリプーリ152及びセカンダリプーリ154との接触圧力が変化する。
【0019】
CVT150は、プライマリプーリ152の押付圧力を増大させ、セカンダリプーリ154の押付圧力を減少させることにより、ハイ変速比の状態に変化する。一方、CVT150は、プライマリプーリ152の押付力を減少させ、セカンダリプーリ154の押付力を増大させることにより、ロー変速比の状態に変化する。
CVT150の出力軸153は、プロペラシャフトとディファレンシャルとドライブシャフトとを介して、左右の後輪に連結されており、左右の後輪は、出力軸153から出力されたトルクにより回転駆動される。
【0020】
ここで、ハイブリッド車両100には、第1クラッチ120の締結及び開放の状態に応じて切り替わる第1〜第3の走行モードが設定されている。第1の走行モード(以下、EV走行モードという)は、第1クラッチ120が開放された状態で、エンジントルクTeを用いずにモータトルクTmのみを用いて走行するモードである。
また、第2の走行モード(以下、HEV走行モードという)は、第1クラッチ120が締結された状態で、モータトルクTmのみならずエンジントルクTeをも用いて走行するモードである。HEV走行モードには、エンジン走行モードとモータアシスト走行モードと走行発電モードとの3種の走行モードが設定されている。
【0021】
エンジン走行モードは、エンジントルクTeのみを用いて走行するモードであり、この走行モードにおいて、モータジェネレータ130は、フライホイールとして機能する。また、モータアシスト走行モードは、エンジントルクTeとモータトルクTmとの合成トルク(Te+Tm)を用いて走行するモードである。
さらに、走行発電モードは、エンジントルクTeを用いて走行すると共に、モータジェネレータ130を発電機として動作させるモードである。この走行発電モードに設定されている場合、定速運転時や加速運転時には、モータジェネレータ130が、エンジントルクTeにより発電機として動作される一方、減速運転時には、モータジェネレータ130が、制動エネルギーを回生した回生エネルギーにより発電機として動作される。
【0022】
また、第3の走行モード(以下、WSC(Wet Start Clutch)走行モードという)は、第1クラッチ120が締結され、第2クラッチ140がスリップ締結された状態で、合成トルク(Te+Tm)を用いて走行するモードである。このWSC走行モードは、特に急発進や再加速等の高負荷で発進や加速をする場合に設定されるモードである。
次に、図2を参照してハイブリッド車両100の制御系について説明する。エンジンコントローラ12は、エンジン水温センサからエンジン110の水温の検出情報を、エンジン回転数センサからエンジン回転数Neの検出情報を、統合コントローラ10からエンジントルクTeの目標値の指令を、それぞれ入力し、これらの情報、指令に基づいてエンジン110の動作点(エンジン回転数Ne、エンジントルクTe等)を制御する。また、エンジンコントローラ12は、エンジン110の燃料噴射量やスロットル開度等に基づいてエンジントルクTeを推定演算する。また、エンジンコントローラ12は、エンジン回転数Ne、エンジントルクTe等の情報を、統合コントローラ10へ出力する。
【0023】
第1クラッチコントローラ20は、油圧センサから第1クラッチ油圧ユニット22の油圧の検出情報を、統合コントローラ10から第1クラッチ120の制御指令を、それぞれ入力し、これらの情報、指令に基づいて第1クラッチ油圧ユニット22を制御する。
モータコントローラ30は、レゾルバからモータジェネレータ130のロータ回転位置の検出情報を、統合コントローラ10からモータトルクTmの目標値の情報を、バッテリSOCセンサからバッテリSOCの検出情報を、それぞれ入力し、これらの情報に基づいてモータジェネレータ130の動作点を制御する。また、モータコントローラ30は、モータジェネレータ130の電流値に基づいて、モータトルクTmを推定演算する。また、モータコントローラ30は、バッテリSOCやモータトルクTm等の情報を統合コントローラ10へ出力する。
【0024】
第2クラッチコントローラ40は、アクセル開度センサからアクセル開度APOの検出情報を、車速センサから車速VSPの検出情報を、油圧センサから第2クラッチ油圧ユニット42の油圧の検出情報を、統合コントローラ10から第2クラッチ140の制御指令を、それぞれ入力し、これらの情報、指令に基づいて第2クラッチ油圧ユニット42を制御する。また、第2クラッチコントローラ40は、アクセル開度APOや車速VSP等の情報を統合コントローラ10へ出力する。
【0025】
TC50は、アクセル開度センサからアクセル開度APOの検出情報を、車速センサから車速VSPの検出情報を、油圧センサからセカンダリ圧及びプライマリ圧の検出情報を、統合コントローラ10から制御指令を、それぞれ入力し、これらの情報、指令に基づいてトランスミッション油圧ユニット52を制御する。
ブレーキコントローラ14は、車輪速センサから各車輪の回転速度の検出情報を、ブレーキストロークセンサからブレーキペダルのストローク量の検出情報を、それぞれ入力し、これらの情報に基づいて各車輪のブレーキユニットを制御する。
【0026】
統合コントローラ10は、モータ回転数センサ138からモータジェネレータ130の回転数Nmの検出情報を、CVT入力回転数センサ158からCVT150の入力軸151の回転数Nの検出情報を、それぞれ入力する。また、統合コントローラ10は、エンジンコントローラ12、第1クラッチコントローラ20、モータコントローラ30、第2クラッチコントローラ40、及びTC50へ制御指令を出力することにより、エンジン110、第1クラッチ120、モータジェネレータ130、第2クラッチ140、及びCVT150の動作を制御する。
【0027】
図3は、統合コントローラ10の概略構成を示すブロック図である。このブロック図に示すように、統合コントローラ10は、合成トルク(Te+Tm)の目標値、即ち目標トルクTを演算する目標トルク演算部62と、上述の第1〜第3の走行モードの中から走行モードを選択するモード選択部64と、バッテリ18の充放電電力の目標値、即ち目標充放電量Vを演算する目標充放電量演算部66とを備えている。また、統合コントローラ10は、第1クラッチコントローラ20、第2クラッチコントローラ40及びTC50へ制御指令を出力する変速制御部68と、アクセル開度APO等の入力情報から定まるエンジン110等の動作点指令(エンジン回転数Ne、エンジントルクTe等の指令)をエンジンコントローラ12等の各コントローラへ出力する動作点指令部70とを備えている。
【0028】
目標トルク演算部62は、アクセル開度APOと車速VSPと目標トルクTとの相関関係を示すマップから、アクセル開度APOと車速VSPとから定まる目標トルクTを演算する。また、モード選択部64は、アクセル開度APOと車速VSPと各走行モードとの相関関係を示すマップから、アクセル開度APOと車速VSPとから定まる走行モードを選択する。
【0029】
目標充放電量演算部66は、バッテリSOCと目標充放電量Vとの関係を示すマップからバッテリSOCによる定まる目標充放電量Vを演算する。
ここで、モード選択部64は、車速VSPが所定の車速よりも低速域であり、且つ、アクセル開度APOが所定の開度よりも大きい高開度域である場合には、より大きなトルクを出すためにWSC走行モードを選択する。また、モード選択部64は、バッテリSOCが所定値以下である場合には上述の目標充放電量Vを達成させるべくマップによらずに強制的にHEV走行モードを選択する。
【0030】
変速制御部68は、予め設定されたシフトスケジュールに沿って、CVT150のアップシフト及びダウンシフトが行われると共に第1クラッチ120及び第2クラッチ140のトルク容量が変化されるように、第1クラッチ120、第2クラッチ140及びCVT150の各コントローラへ制御指令を出力する。
動作点指令部70は、上述の目標トルクTに基づいて第2クラッチ140の目標トルク容量Tchを演算する目標トルク容量演算部72と、第2クラッチ140のトルク容量Tchを制御するトルク容量制御部74と、モータ回転数Nmとエンジン回転数Neとを制御する回転数制御部76とを備えている。また、動作点指令部70は、合成トルク(Te+Tm)を制御するトルク制御部78と、第2クラッチ140のトルク容量Tchを推定演算するトルク容量推定演算部80と、回転数制御部76による回転数制御とトルク制御部78によるトルク制御との切り換えを行う切換部82とを備えている。
【0031】
図4は、車両の発進時における車速VSPとCVT150の入力軸151の回転数Nとエンジン回転数Neとモータ回転数Nmと第2クラッチ140のトルク容量Tchと合成トルク(Te+Tm)との関係を示すタイミングチャートである。ここで、モード選択部64は、車速VSPを0から上昇させる場合、即ち、車両を発進させる場合にWSC走行モードを選択する。
【0032】
ところで、発進等の低回転高負荷での走行ではなく、それよりも高回転低負荷で車両が走行する状況では、統合コントローラ10が、第2クラッチ140を完全締結させた状態で、エンジントルクTeとモータトルクTmとを制御することにより、出力軸153からの出力トルクを制御する。これにより、当該状況における車両の走行効率を向上させている。
【0033】
一方、車両が発進する状況では、タイミングチャートにも示すように、モータ回転数Nmが、車速VSPが零の状態、即ち駆動輪が停止した状態から徐々に上昇する。この状況において、エンジン110が停止し、かつ、第1クラッチ120が開放されている場合、第2クラッチ140を完全締結させた状態でモータトルクTmのみで車両を発進させることも可能である。
【0034】
しかしながら、このような発進をした場合、低回転高トルクを出力しなければならないことから、モータジェネレータ130の駆動効率が低くなる。また、車両を発進させる際にエンジン110の始動要求がなされる場合を想定して、エンジンクランキングに必要とされるトルクの分だけ、モータトルクTmの上限値に余裕を持たせる必要があり、上記のような発進をした場合、十分な発進性能を確保できない可能性がある。また、エンジン110の駆動中にはエンジン110のアイドル回転数を確保する必要があることから、第2クラッチ140を完全締結させた状態では、エンジンストールを招く可能性がある。
【0035】
さらに、モータトルクTmのみで車両を発進させ、発進の途中でさらに大きな駆動トルクが要求されてエンジン110の始動要求がなされた場合には、第1クラッチ120を締結してエンジンクランキングを実行させることになるが、この場合、モータジェネレータ130に急に過大な負荷がかかることにより、モータ回転数Nmが急低下する。これにより、駆動輪の回転速度や駆動トルクの変動を招く可能性がある。
【0036】
そこで、発進等の低回転高負荷の状況では、統合コントローラ10が、第1クラッチ120を締結状態に、第2クラッチ140をスリップ締結状態に維持しながら第2クラッチ140のトルク容量Tc2を制御するWSC走行モードに設定する。これにより目標トルクTを達成すると共に、エンジン始動要求に対応することが可能となる。
また、図4のタイミングチャートに示すように、統合コントローラ10は、WSC走行モードを開始してから、まず、回転数制御部76による回転数制御を実行する。回転数制御部76は、モータ回転数Nmとエンジン回転数Neとを駆動輪の回転数Nよりも高い回転数に維持する。ここで、モータ回転数Nmとエンジン回転数Neとを駆動輪の回転数Nよりも高回転に維持するためには、合成トルク(Te+Tm)を第2クラッチ140のトルク容量Tchよりも大きくする必要がある。このため、回転数制御が実行されている間は必然的に、合成トルク(Te+Tm)が第2クラッチ140のトルク容量Tchより高く設定されることになる。
【0037】
ところで、WSC走行モードの実行中に、トルク制御部78によるトルク制御を実行する場合には、モータジェネレータ130を、少なくとも目標トルクTを得ることができるだけではなく、さらにエンジン110の始動要求の際にエンジンクランキングに必要なトルクを出力することができるように、駆動させる必要がある。ここで、エンジンクランキングに必要なトルクが小さい場合には、モータジェネレータ130にかかる負荷が小さくなり、モータ回転数Nmが急に増大することになる。この際、第2クラッチ140は、トルク容量Tchに応じたトルクをCVT150へ伝達するため、CVT150の入力軸151の回転数を急変させることはない。しかし、第2クラッチ140におけるスリップ量が過大となり、第2クラッチ140の耐久性が低下する。
【0038】
そこで、WSC走行モードの実行が開始されてから終了直前までの間、統合コントローラ10が、トルク制御部78によるトルク制御ではなく回転数制御部76による回転数制御を実行し、第2クラッチ140のスリップ量(第1の所定値)を制御する。これにより、モータ回転数Nmが過剰に増大することを防止することができ、第2クラッチ140のスリップ量が過大となることを防止でき、以って、第2クラッチ140の耐久性の低下を抑制できる。
【0039】
一方で、図4のタイミングチャートに示すように、WSC走行モードが終了する直前から終了後にかけて、統合コントローラ10の切換部82が、回転数制御部76による回転数制御からトルク制御部78によるトルク制御への切り換えを実行する。
ここで、目標トルクTが達成される等、所定の条件が成立した後は、第2クラッチ140の耐久性の観点、及び、車両の走行効率の観点から、第2クラッチ140を完全締結させることが望ましい。しかし、回転数制御部76による回転数制御が実行されている状態で第2クラッチ140を完全締結させた場合には、目標回転数との偏差に応じたトルクが出力されることから、運転者の意図に沿わないトルクが駆動輪に出力されることになり、運転者に違和感を与えることになる。また、第2クラッチ140の耐久性の観点から、WSC走行モードを定常的に実行することは困難である。
【0040】
そこで、目標トルクTが達成される等、所定の条件が成立した後は、統合コントローラ10が、第2クラッチ140をスリップ締結から完全締結に切り換えると共に、トルク制御部78によるトルク制御を実行する。
図5は、WSC走行モードの開始から終了後までの処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示すように、本処理ルーチンでは、まず、ステップ100において、統合コントローラ10の切換部82が、アクセル開度APOと車速VSPと各走行モードとの相関関係を示すマップにおいて、動作点(アクセル開度APO及び車速VSP)がWSC走行モードからHEV走行モードへの切り換えが行われる領域に存在するか否かを判定する。即ち、切換部82は、WSC走行モードが終了しようとしているか否かを判定する。判定が肯定された場合には、ステップ102へ移行し、判定が否定された場合には、本処理ルーチンを終了する。
【0041】
ステップ102では、この時点(時刻)t0から、統合コントローラ10の回転数制御部76が、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差が所定値a(第2の所定値)となるように、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmを制御する。次に、ステップ104では、トルク容量制御部74が、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差が所定値a+α(第3の所定値:所定値aに制御誤差分のαを加えた値)以下になったか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ106へ移行する一方、判定が否定された場合にはステップ102へ移行する。
【0042】
ステップ106では、トルク容量制御部74が、第2クラッチ140のトルク容量Tchを、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと回転数Nとの差が所定値a+α以下になった時刻t1から時刻t2(>t1)にかけて、Tch1からTch2(>Tch1)へ増加させる。即ち、トルク容量制御部74が、第2クラッチ140のトルク容量Tchを、時刻t1から時刻t2にかけて所定の変化率Δ1(=(Tch2−Tch1)/(t2−t1))の勾配をもって増加させる。
【0043】
ここで、本ステップでは、トルク容量Tchが、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差がaに維持されている状態で増加される。このため、本ステップでは、合成トルク(Te+Tm)が自動的に(Te+Tm)´まで増加する。
次に、ステップ108では、切換部82が、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差が所定値a+α以下になった後に、合成トルク(Te+Tm)が所定値b(第4の所定値)以上増加したか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ110へ移行する一方、判定が否定された場合にはステップ106へ移行する。ここで、所定値bは、目標トルクTと時刻t1での合成トルク(Te+Tm)との差{T−(Te+Tm)}よりも小さい値に設定されている。
【0044】
ステップ110では、切換部82が、回転数制御部76によるエンジン回転Ne及びモータ回転数Nmの制御から、トルク制御部78による合成トルク(Te+Tm)の制御に切り換える。ここで、トルク制御部78は、合成トルク(Te+Tm)の制御を開始する際に、トルク制御の目標値の初期値を、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差を所定値a以下になった後に所定値b以上増加した時点(時刻t3時点)での合成トルク(Te+Tm)´に設定する。
【0045】
次に、ステップ112では、トルク制御部78が、合成トルク(Te+Tm)を、ステップ108において合成トルク(Te+Tm)が所定値b以上増加したと判定した時刻t3(>t1、<t2)から時刻t4(>t2)にかけて、初期値(Te+Tm)´から目標トルクTへ所定の変化率Δ2(=(T−(Te+Tm)´)/(t4−t3))の勾配をもって増加させる。ここで、トルク容量制御部74は、トルク容量Tchを継続して所定の変化率Δ1の勾配をもって増加させる。
【0046】
次に、ステップ114では、トルク容量制御部74が、トルク容量Tchが合成トルク(Te+Tm)に対して所定値c以上、上回ったか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ116へ移行する一方、判定が否定された場合にはステップ112へ移行する。
ステップ116では、トルク容量制御部74が、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差が所定値d(第5の所定値≒0)以下になったか否か、即ち、第2クラッチ140が完全締結状態に遷移したか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ118へ移行する一方、判定が否定された場合にはステップ112へ移行する。
【0047】
ステップ118では、トルク容量制御部74が、トルク容量Tchを、最大値Tch´に増加する。ここで、トルク容量Tchの変化率Δ1は、合成トルク(Te+Tm)の変化率Δ2よりも大きく設定されており、トルク容量Tchは、合成トルク(Te+Tm)が目標トルクTまで増加する前に、最大値Tch´まで増加する。
次に、ステップ120では、トルク制御部78が、合成トルク(Te+Tm)が、 目標トルク演算部62により演算された目標トルクTまで増加したか否かを判定する。判定が否定された場合には、ステップ112へ移行する一方、判定が肯定された場合にはステップ124へ移行する。
【0048】
一方、ステップ124では、トルク制御部78が、合成トルク(Te+Tm)を、目標トルクTで一定となるように制御する。以上で本処理ルーチンを終了する。
即ち、本実施形態に係る統合コントローラ10では、WSC走行モードが終了する際に、切換部82が、回転数制御部76によるエンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmの制御からトルク制御部78による合成トルク(Te+Tm)の制御に切り換える。この際、トルク制御部78は、回転数制御部76による回転数制御が終了する時点(時刻t3)で発生していた合成トルク(Te+Tm)´をトルク制御の目標値の初期値に設定し、合成トルク(Te+Tm)を当該初期値(Te+Tm)´から目標トルクTまで、所定時間(t4−t3)をかけて(即ち徐々に勾配をもって)増加させる。これにより、回転数制御部76による回転数制御からトルク制御部78によるトルク制御に切り換える際に生じるトルク段差を低減でき、トルク段差に起因するショックや空吹きの発生を抑制できる。
【0049】
また、本実施形態に係る統合コントローラ10では、トルク制御部78が、トルク容量制御部74がトルク容量TchをTch1からTch2まで増加させる際の変化率Δ1よりも小さな変化率Δ2で合成トルク(Te+Tm)を初期値(Te+Tm)´から目標トルクTまで増加させる。これにより、トルク容量Tchを、合成トルク(Te+Tm)が目標トルクTまで増加する前に、最大値Tch´まで増加させることができる。従って、WSC走行モードが終了した時点では、第2クラッチ140を完全締結状態としておくことができる。
【0050】
ここで、ステップ100において切換部82によりWSC走行モードの終了条件が成立したと判定された後に、アクセルが戻される場合がある。このように、WSC走行モードからHEV走行モードに移行する間にアクセルが戻されると、図4中に一点鎖線で示すように、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmが低下し、早期に(時刻t5において)、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差が減少して所定値a+α以下になる場合がある。この場合、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmは、HEV走行モードに移行できるレベルまで上昇していない。このため、切換部82が、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差が所定値a以下になったことのみをもって、回転数制御からトルク制御への切り換えの判定をし、トルク容量制御部74により第2クラッチ140が完全締結して、WSC走行モードからHEV走行モードに移行した場合には、ハイブリッド車両100の挙動が不安定となり、エンジンストールやノッキング等が発生する。
【0051】
しかし、本実施形態に係る統合コントローラ10では、回転数制御部76による制御によりエンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差が所定値a以下となった時点(時刻t1)ではなく、合成トルク(Te+Tm)が、時刻t1での値を所定値b以上上回った時点(時刻t3)で、切換部82が、回転数制御部76による回転数制御からトルク制御部78によるトルク制御に切り換えている。
【0052】
つまり、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmと入力軸151の回転数Nとの差が所定値a以下となった後、エンジンとモータの駆動トルクが上昇していることから、アクセル戻しなどによる駆動力の低下が発生していないことが分かる。これにより、切換部82による回転数制御からトルク制御への切換時期の誤判定を抑制でき、以って、第2クラッチ140のスリップ締結状態から完全締結状態への移行を、エンジン回転数Ne及びモータ回転数Nmが、第2クラッチ140のトルク容量Tchに見合った十分なレベルまで上昇した適当なタイミングで実施できる。従って、WSC走行モードからHEV走行モードへの移行の際におけるハイブリッド車両100の挙動を安定させることができ、エンジンストールやノッキング等の発生を抑制できる。
【0053】
また、本実施形態に係る統合コントローラ10では、トルク容量制御部74が、トルク容量Tchが合成トルク(Te+Tm)に対して所定値c以上上回った場合に、トルク容量Tchを、目標トルクT´よりも大きな最大値Tch´までステップ的に増加させる。これにより、合成トルク(Te+Tm)が変動した場合でも、該合成トルク(Te+Tm)をトルク容量Tch以下に抑えることができ、完全締結状態に移行した後における第2クラッチ140のスリップを防止できる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本実施形態では、エンジン110とモータジェネレータ130とを動力源とするハイブリッド車両100を例にとって本発明を説明したが、これに限らず、エンジン110及びモータジェネレータ130の何れか一方のみを動力源とする車両についても本発明を適用できる。また、本実施形態では、変速機をベルト式のCVT150としたが、ステップATやトロイダルCVT等にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0055】
10 統合コントローラ(車両用変速制御装置)
12 エンジンコントローラ
14 ブレーキコントローラ
15 トルクコンバータ
16 インバータ
18 バッテリ
19 CAN通信回線
20 第1クラッチコントローラ
22 第1クラッチ油圧ユニット
30 モータコントローラ
40 第2クラッチコントローラ
42 第2クラッチ油圧ユニット
50 TC
52 トランスミッション油圧ユニット
60 統合コントローラ
62 目標トルク演算部
64 モード選択部
66 目標充放電量演算部
68 変速制御部
70 動作点指令部
72 目標トルク容量演算部
74 トルク容量制御部
76 回転数制御部
78 トルク制御部
80 トルク容量推定演算部
82 切換部(判定部)
100 ハイブリッド車両
110 エンジン(動力源)
120 第1クラッチ
130 モータジェネレータ(動力源)
140 第2クラッチ(クラッチ)
150 CVT(変速機)
151 入力軸
152 プライマリプーリ
152A 固定円錐板
152B 可動円錐板
152C 油圧室
154 セカンダリプーリ
154A 固定円錐板
154B 可動円錐板
154C 油圧室
156 Vベルト
158 CVT入力回転数センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と変速機との連結を切断及び接続するクラッチの入力側と出力側との回転数差を第1の所定値に維持するスリップ締結状態から完全締結状態に変化させる場合に、前記動力源の回転数を制御する回転数制御から前記動力源のトルクを制御するトルク制御に切り換える車両用変速制御装置であって、
前記回転数制御から前記トルク制御に切り換わる場合に、前記回転数差を第1の所定値よりも小さい第2の所定値に制御する回転数制御部と、
前記回転数差が前記第2の所定値よりも大きく前記第1の所定値よりも小さい第3の所定値以下か否かを判定する回転差判定部と、
前記回転差判定部により前記回転数差が前記第3の所定値以下と判定された場合に、前記クラッチのトルク容量を、勾配をもって増加させるトルク容量制御部と、
前記回転数差が前記第3の所定値以下になって前記トルク容量制御部が前記クラッチのトルク容量の増加を開始した時点から前記動力源のトルクが第4の所定値だけ増加したか否かを判定する増加判定部と、
前記増加判定部により前記動力源のトルクが前記第4の所定値だけ増加したと判定された場合に、前記回転数制御から前記トルク制御に切り換える切換部と、
前記切換部により前記回転数制御から前記トルク制御に切り換える時に、前記動力源が出力しているトルクを、前記トルク制御に切り換えた時の目標値として設定するトルク制御部と、
を備える車両用変速制御装置。
【請求項2】
前記トルク制御部は、前記切換部により前記回転数制御から前記トルク制御に切り換えた場合に、前記トルク容量制御部により増加される前記クラッチのトルク容量の変化率よりも小さな変化率で、前記動力源のトルクを、アクセル開度と車速とから決まる目標値まで増加させる請求項1に記載の車両用変速制御装置。
【請求項3】
前記トルク容量制御部は、前記クラッチのトルク容量が前記動力源のトルクより大きくなった場合に、前記クラッチのトルク容量を最大値に増加させる請求項1又は2に記載の車両用変速制御装置。
【請求項4】
前記回転差判定部は、前記回転数差が前記第3の所定値よりも小さい第5の所定値以下か否かを判定し、
前記トルク容量制御部は、前記回転差判定部により前記回転数差が前記第5の所定値以下と判定された場合に、前記クラッチのトルク容量を最大値に増加させる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−97808(P2012−97808A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245698(P2010−245698)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】