説明

車両用懸架装置

【課題】サブアッセンブリが車体に組付けられる際の、作業工数を増加することなく、生産性の向上を図ること。
【解決手段】車両用懸架装置では、車輪11を回転自在に支持するキャリア12を車体に連結するためのアッパアーム13,14とロアアーム15,16とトーコントロールアーム(サスアーム)19が、別位置に配置されるショックアブソーバ17およびコイルスプリング18と共に、サブアッセンブリ10とされている。サブアッセンブリ10では、コイルスプリング18がロアアーム16に傾斜した状態で載置され、ロアアーム16より上方に配置されるトーコントロールアーム19がコイルスプリング18の傾斜方向に配置されてコイルスプリング18を保持可能とされている。トーコントロールアーム19には、コイルスプリング18の傾斜方向に湾曲してコイルスプリング18の一部を収容可能な湾曲部19aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用懸架装置に係り、特に、車輪を回転自在に支持するキャリア(ナックルと呼ばれることもある)を車体に連結するためのアッパアームとロアアームが、別位置に配置されるショックアブソーバおよびコイルスプリングと共に、サブアッセンブリとされていて、このサブアッセンブリが車体に組付けられるように構成されている車両用懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用懸架装置は、例えば、下記特許文献1に示されている。下記特許文献1に記載されている車両用懸架装置においては、前記サブアッセンブリにて、前記コイルスプリングが前記ロアアームに傾斜した状態で載置され、このコイルスプリングが車体に組付けられる際に倒れないようにするための位置決め装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−69762号公報
【発明の概要】
【0004】
上記した特許文献1に記載されている車両用懸架装置においては、コイルスプリングの位置決め装置(ロアアームに傾斜した状態で載置されたコイルスプリングが車体に組付けられる際に倒れないようにするためのもの)が設けられている。このため、サブアッセンブリが車体に組付けられる際に、コイルスプリングが倒れなくて生産性の向上を図ることが可能である。
【0005】
しかし、上記したコイルスプリングの位置決め装置は、ロアアームに傾斜した状態で載置されたコイルスプリングの内部に挿入される複数の可動レバーや、これらの可動レバーを径外方に移動させてコイルスプリングの内周面に当接させる駆動機構を備えていて、サブアッセンブリが車体に組付けられる際に、予め位置決め装置にてコイルスプリングを位置決め保持する必要があるとともに、組付後に位置決め装置をコイルスプリングから取り外す必要があって、組付時の作業工数が増加するといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解消すべくなされたものであり、車輪を回転自在に支持するキャリアを車体に連結するためのアッパアームとロアアームが、別位置に配置されるショックアブソーバおよびコイルスプリングと共に、サブアッセンブリとされていて、このサブアッセンブリが車体に組付けられるように構成されている車両用懸架装置であって、前記サブアッセンブリでは、前記コイルスプリングが前記ロアアームに傾斜した状態で載置され、前記ロアアームより上方に配置されるサスアームが前記コイルスプリングの傾斜方向に配置されて前記コイルスプリングを保持可能とされていることに特徴がある。上記したサスアームは、前記ロアアームより上方に配置されるアッパアームであってもよく、前記ロアアームと前記アッパアーム間に配置されるトーコントロールアームであってもよい。
【0007】
本発明による車両用懸架装置においては、ロアアームより上方に配置されるサスアーム(例えば、トーコントロールアーム)がコイルスプリングの傾斜方向に配置されてコイルスプリングを保持可能とされているため、サブアッセンブリが車体に組付けられる際に、ロアアームに傾斜した状態で載置されたコイルスプリングは、サスアームによって保持されて倒れることはなく、生産性の向上を図ることが可能である。しかも、コイルスプリングは車両用懸架装置の一構成部材であるサスアームによって保持されるものであり、サブアッセンブリが車体に組付けられる際に、サスアームを脱着する必要がなくて、作業工数の増加もない。したがって、本発明では、作業工数を増加することなく、生産性の向上を図ることが可能である。
【0008】
本発明の実施に際して、前記サスアームの前記コイルスプリングと対向する部位には、前記コイルスプリングの傾斜方向に湾曲して前記コイルスプリングの一部を収容可能な湾曲部が形成されていることも可能である。この場合には、サスアームの湾曲部にてコイルスプリングを安定的に保持することが可能であるとともに、サスアーム全体をコイルスプリングの軸心に近づけて配置することが可能であって、サブアッセンブリの小型化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による車両用懸架装置の一実施形態を示した車両背面視図である。
【図2】図1に示した車両用懸架装置の矢視2方向から見た側面図である。
【図3】図1および図2に示した車両用懸架装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は本発明による車両用懸架装置の一実施形態を示していて、この実施形態の独立懸架式の車両用懸架装置では、車輪11を回転自在に支持するキャリア12を車体(図示省略)に連結するための前後一対のアッパアーム13,14と前後一対のロアアーム15,16とトーコントロールアーム(サスアーム)19が、別位置に配置されるショックアブソーバ17およびコイルスプリング18と共に、サブフレーム(図示省略でサスペンションメンバと呼ばれることもある)に組付けられて、サブアッセンブリ10とされていて、このサブアッセンブリ10が車体に組付けられるように構成されている。なお、図1では、コイルスプリング18が縦断断面で示されている。
【0011】
各アッパアーム13,14とトーコントロールアーム19の内端部(図1の左端部)は、各ブッシュを介してサブフレームに連結されている。また、各アッパアーム13,14とトーコントロールアーム19の外端部(図1の右端部)は、各ブッシュを介してキャリア12に連結されている。ショックアブソーバ17の下端は、ブッシュを介してロアアーム16に連結されている。また、ショックアブソーバ17の上端は、車体に連結されるように構成されている。コイルスプリング18の下端は、リテーナ18aを介してロアアーム16に当接していて、ロアアーム16によって支持されている。また、コイルスプリング18の上端は、リテーナ18bを介して車体に連結されるように構成されている。
【0012】
ところで、この実施形態のサブアッセンブリ10では、コイルスプリング18が後方のロアアーム16に傾斜した状態で載置され、後方のロアアーム16より上方に配置されるトーコントロールアーム19がコイルスプリング18の傾斜方向(車両後方)に配置されてコイルスプリング18を保持可能とされている。また、トーコントロールアーム19のコイルスプリング18と対向する部位には、コイルスプリング18の傾斜方向に湾曲してコイルスプリング18の一部(中間部の後方部位)を収容可能な湾曲部19aが形成されている。
【0013】
このため、この実施形態においては、サブアッセンブリ10が車体に組付けられる際に、後方のロアアーム16に傾斜した状態で載置されたコイルスプリング18が、トーコントロールアーム19によって保持されて倒れることはなく、生産性の向上を図ることが可能である。しかも、コイルスプリング18は車両用懸架装置の一構成部材であるトーコントロールアーム19によって保持されるものであり、サブアッセンブリ10が車体に組付けられる際に、トーコントロールアーム19を脱着する必要がなくて、作業工数の増加もない。したがって、この実施形態では、作業工数を増加することなく、生産性の向上を図ることが可能である。
【0014】
また、この実施形態では、トーコントロールアーム19のコイルスプリング18と対向する部位に、コイルスプリング18の傾斜方向に湾曲してコイルスプリング18の一部を収容可能な湾曲部19aが形成されている。このため、トーコントロールアーム19の湾曲部19aにてコイルスプリング18を安定的に保持すること(コイルスプリング18が車両後方および図1の左方向(車幅方向)に倒れないように保持すること)が可能であるとともに、トーコントロールアーム19全体をコイルスプリング18の軸心に近づけて配置すること(車両前方に配置させること)が可能であって、サブアッセンブリ10の小型化も可能である。なお、サブアッセンブリ10の小型化では、キャリア12の小型化が可能であって、ディスクホイールの小型化が可能であり、また、サブフレーム(図示省略)の構造簡素化(小型化)および剛性アップを図ることが可能である。
【0015】
上記した実施形態においては、当該車両用懸架装置がトーコントロールアーム(サスアーム)19を備えていて、このトーコントロールアーム19がコイルスプリング18の傾斜方向(車両後方)に配置されているため、サブアッセンブリ10が車体に組付けられる際のコイルスプリング18の傾動をトーコントロールアーム19にて規制するように構成して実施したが、当該車両用懸架装置の、例えば、アッパアーム(上記実施形態のアッパアーム14に相当するもの)がコイルスプリング(18)の傾斜方向(車両後方)に配置されている場合には、そのアッパアーム(サスアーム)にて、サブアッセンブリ(10)が車体に組付けられる際のコイルスプリング(18)の傾動を規制するように構成して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0016】
10…サブアッセンブリ、11…車輪、12…キャリア、13…前方のアッパアーム、14…後方のアッパアーム、15…前方のロアアーム、16…後方のロアアーム、17…ショックアブソーバ、18…コイルスプリング、19…トーコントロールアーム(サスアーム)、19a…湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回転自在に支持するキャリアを車体に連結するためのアッパアームとロアアームが、別位置に配置されるショックアブソーバおよびコイルスプリングと共に、サブアッセンブリとされていて、このサブアッセンブリが車体に組付けられるように構成されている車両用懸架装置であって、前記サブアッセンブリでは、前記コイルスプリングが前記ロアアームに傾斜した状態で載置され、前記ロアアームより上方に配置されるサスアームが前記コイルスプリングの傾斜方向に配置されて前記コイルスプリングを保持可能とされている車両用懸架装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用懸架装置において、
前記サスアームの前記コイルスプリングと対向する部位には、前記コイルスプリングの傾斜方向に湾曲して前記コイルスプリングの一部を収容可能な湾曲部が形成されている車両用懸架装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用懸架装置において、
前記サスアームが前記ロアアームと前記アッパアーム間に配置されるトーコントロールアームである車両用懸架装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−224303(P2012−224303A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96063(P2011−96063)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】