説明

車両用推定航法装置、車両用推定航法及び車両用推定航法のプログラム

【課題】マルチパスなど外乱の影響が少なく精度を向上することができる車両用推定航法装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載され、GPS情報から速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、タイヤの回転情報を検出するタイヤ回転情報検出手段と、タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出手段と、ヨーレートを算出するヨーレート算出手段と、車両速度とタイヤ回転速度との関係式のパラメータを逐次推定アルゴリズムを用いて算出するパラメータ算出手段と、パラメータとタイヤ回転速度とから車両速度を逆推定する車両速度推定手段と、逆推定された車両速度と速度算出手段により算出された車両速度との差に基づく判定値と、所定の閾値とを比較する比較手段と、判定値が閾値より小さい場合、GPS情報とタイヤ回転速度とを用いて、車両速度とタイヤ回転速度との第1パラメータを逐次最小二乗法により算出する第1パラメータ算出手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用推定航法装置、車両用推定航法及び車両用推定航法のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行案内を行う地上ナビゲーションシステムは、GPS衛星からの信号を利用してナビゲーションを行っているが、高層建築物による信号の遮断や反射などにより当該GPS衛星からの信号が充分に受信できなくなると、正確な走行案内ができなくなる。
【0003】
そこで、従来、GPS衛星からの信号が充分に受信できないときに何らかの方法で推定航法を行うことにより、ナビゲーションを途切れなくする工夫が行われている。しかし、その多くはヨーレートセンサや加速度センサから得られるセンサ情報を用いるため、コストアップの要因となっていた。
【0004】
このため、本出願人は、追加のセンサを用いることなく正確な推定航法を行うことができる車両用推定航法装置及び車両用推定航法を提案している(特願2009−265126。以下、「先願発明」という)。
【0005】
この先願発明に係る車両用推定航法装置は、車両の回転速度情報を利用するものであり、タイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルのパラメータをGPS受信時に推定しておき、GPS受信不可時には当該パラメータを用いて車両速度やヨーレートを算出している。
【0006】
具体的に、先願発明に係る車両用推定航法装置は、走行車両に搭載されたGPS受信機によるGPS情報から当該車両の走行速度の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、
前記車両に装着されたタイヤの回転情報を検出するタイヤ回転情報検出手段と、
このタイヤ回転情報検出手段により得られるタイヤの回転情報から当該タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両の速度を算出する速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両のヨーレートを算出するヨーレート算出手段と、
前記タイヤ回転速度算出手段により得られるタイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記速度算出手段により算出される車両速度と前記タイヤ回転速度との第1関係式の第1パラメータを算出する第1パラメータ算出手段と、
前記タイヤ回転速度算出手段により得られるタイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記ヨーレート算出手段により算出されるヨーレートと前記タイヤ回転速度との第2関係式の第2パラメータを算出する第2パラメータ算出手段と
を備えている。
【0007】
そして、GPS受信時に、車両速度については、GPSから得られる速度Vと内外輪回転角速度の和Xとの関係をV=A1×X+B1とし、パラメータA1、B1を推定する。
【0008】
また、ヨーレートについては、GPSから得られるヨーレートYと、内外輪回転角速度の和の二乗z及び内外輪回転角速度の差yとの関係をY=A2×y/(B2×z+C2)とし、パラメータA2、B2、C2を推定する。
【0009】
GPS未受信時には、前記パラメータA1、B1、A2、B2、C2とタイヤの回転速度を用いて車両速度及びヨーレートを算出し、算出した情報を用いて推定航法を実施する。
【0010】
先願発明では、GPS情報を教師データとして学習をすることになるが、車両が高層ビル街を走行する場合などにおいて、マルチパスと呼ばれるGPSの反射波によりGPS情報が不正になることがある。GPS情報が正しくないと、正しくパラメータ学習を行うことができず、その結果、推定航法の精度が低下する。
【0011】
従来は、パラメータ学習、つまりは回帰係数の計算にカルマンフィルタ(逐次最小二乗法)が用いられたが、このアルゴリズムはノイズの白色性を仮定するため、突発的に観測される有色の外れ値に頑健でない。そのため、マルチパスなどに起因する外れ値が頻発する状況においては推定値の収束が遅れる原因となる。したがって、現在の推定値に悪影響を及ぼすと予想されるデータに対しては、外れ値とみなして棄却する等の適応的な処理が必要となる。これは、一般に「ロバストカルマンフィルタ」と呼ばれる手法であり、例えば、カルマンゲインの計算にガンマ分布に由来する事前知識を組み込むことにより、外れ値に対する頑健性を向上させるという状態推定の方法が考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】チン ジェイ.(Ting,J.);セオドロウ イー.(Theodorou,E.);シャール エス.(Schaal,S.)による「ラーニング ア アウトライヤーロバスト カルマンフィルタ(Learning an Outlier−Robust Kalman Filter)」,ヨーロピアン カンフェレンス オン マシンラーニングナイン(European Conference on Machine Learning9(ECML2007)、748−756頁、スプリンガー(Springer)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マルチパスなどに起因する外れ点の影響を小さくして推定航法の精度を向上させることができる車両用推定航法装置、車両用推定航法及び車両用推定航法のプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の車両用推定航法装置は、走行車両に搭載されたGPS受信機によるGPS情報から当該車両の走行速度の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、
前記車両に装着されたタイヤの回転情報を検出するタイヤ回転情報検出手段と、
このタイヤ回転情報検出手段により得られるタイヤの回転情報から当該タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両の速度を算出する速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両のヨーレートを算出するヨーレート算出手段と、
GPS情報から算出した速度ベクトルに基づいた車両速度と前記タイヤ回転速度との関係式のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いて算出するパラメータ算出手段と、
前記パラメータとタイヤ回転速度とから車両速度を逆推定する車両速度推定手段と、
逆推定された車両速度と前記速度算出手段により算出された車両速度との差に基づく判定値と、所定の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、得られるGPS情報とタイヤ回転速度とを用いて、タイヤ回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記車両速度と前記タイヤ回転速度との第1関係式の第1パラメータを逐次最小二乗法により算出する第1パラメータ算出手段と、
タイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記ヨーレート算出手段により算出されるヨーレートと前記タイヤ回転速度との第2関係式の第2パラメータを逐次最小二乗法により算出する第2パラメータ算出手段と
を備えたことを特徴としている。
【0015】
本発明の車両用推定航法装置では、まずGPS情報から得られる車両速度とタイヤ回転速度から、ロバストな逐次推定アルゴリズムを用いることで外れ点の影響が低減されたパラメータを得ることができる。そして、このパラメータを用いて逆推定した車両速度とGPS情報から得られる車両速度との差に基づく判定値が閾値より小さい場合、すなわちGPS情報が「外れ点」ではなく正確である場合に、この正確なGPS情報とタイヤ回転速度算出手段により得られるタイヤの回転速度とからモデル式のパラメータを算出している。したがって、マルチパスなどに起因する外れ点の影響を極力小さくしたパラメータを設定することができ、GPS受信不可時には、かかるパラメータを用いて車両速度及びヨーレートを算出して、より正確な推定航法を行うことができる。
【0016】
(2)前記(1)の車両用推定航法装置において、前記判定値を、前記差の二乗と、ノイズが白色であると仮定した場合の誤差分散との比とすることができる。
【0017】
(3)前記(1)又は(2)の車両用推定航法装置において、前記第1パラメータ算出手段及び第2パラメータ算出手段は、前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、それぞれ前記第1パラメータ及び第2パラメータを算出し、GPS情報受信不可時に、算出した最新のパラメータを用いてタイヤ回転速度から車両速度及びヨーレートを算出するように構成することができる。
【0018】
(4)前記(1)〜(3)の車両用推定航法装置において、前記速度算出手段により得られる車両速度をV、内外輪回転角速度の和をXとしたときに、前記関係式を、V=A1´×Xとし、ここでA1´がパラメータであり、且つ、前記第1関係式を、V=A1×X+B1とし、ここでA1及びB1が第1パラメータであり、
前記ヨーレート算出手段により得られるヨーレートをY、内外輪回転角速度の和の二乗をz、内外輪回転角速度の差をyとしたときに、前記第2関係式を、Y=A2×y/(B2×z+C2)とし、ここでA2、B2及びC2が第2パラメータとすることができる。
【0019】
(5)前記(1)〜(4)の車両用推定航法装置において、前記回転速度が、従動輪タイヤの回転速度であることが好ましい。この場合、タイヤの回転速度の算出に際しスリップ率の影響を受けることがないので、より正確に回転速度を算出することができる。
【0020】
(6)本発明の車両推定航法は、走行車両に搭載されたGPS受信機によるGPS情報から当該車両の走行速度の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出工程と、
前記車両に装着されたタイヤの回転情報を検出するタイヤ回転情報検出工程と、
このタイヤ回転情報検出工程において得られるタイヤの回転情報から当該タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出工程と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両の速度を算出する速度算出工程と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両のヨーレートを算出するヨーレート算出工程と、
GPS情報から算出した速度ベクトルに基づいた車両速度と前記タイヤ回転速度との関係式のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いて算出するパラメータ算出工程と、
前記パラメータとタイヤ回転速度とから車両速度を逆推定する車両速度推定工程と、
逆推定された車両速度と前記速度算出手段により算出された車両速度との差に基づく判定値と、所定の閾値とを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、得られるGPS情報とタイヤ回転速度とを用いて、タイヤ回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記車両速度と前記タイヤ回転速度との第1関係式の第1パラメータを逐次最小二乗法により算出する第1パラメータ算出工程と、
タイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記ヨーレート算出工程において算出されるヨーレートと前記タイヤ回転速度との第2関係式の第2パラメータを逐次最小二乗法により算出する第2パラメータ算出工程と
を含むことを特徴としている。
【0021】
本発明の車両用推定航法では、まずGPS情報から得られる車両速度とタイヤ回転速度から、ロバストな逐次推定アルゴリズムを用いることで外れ点の影響が低減されたパラメータを得ることができる。そして、このパラメータを用いて逆推定した車両速度とGPS情報から得られる車両速度との差に基づく判定値が閾値より小さい場合、すなわちGPS情報が「外れ点」ではなく正確である場合に、この正確なGPS情報とタイヤ回転速度算出手段により得られるタイヤの回転速度とからモデル式のパラメータを算出している。したがって、マルチパスなどに起因する外れ点の影響を極力小さくしたパラメータを設定することができ、GPS受信不可時には、かかるパラメータを用いて車両速度及びヨーレートを算出して、より正確な推定航法を行うことができる。
【0022】
(7)前記(6)の車両用推定航法において、前記判定値を、前記差の二乗と、ノイズが白色であると仮定した場合の誤差分散との比とすることができる。
【0023】
(8)前記(6)又は(7)の車両用推定航法において、前記第1パラメータ算出工程及び第2パラメータ算出工程は、前記比較工程における比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、それぞれ前記第1パラメータ及び第2パラメータを算出し、GPS情報受信不可時に、算出した最新のパラメータを用いてタイヤ回転速度から車両速度及びヨーレートを算出するように構成することができる。
【0024】
(9)前記(6)〜(8)の車両用推定航法において、前記速度算出工程において得られる車両速度をV、内外輪回転角速度の和をXとしたときに、前記関係式を、V=A1´×Xとし、ここでA1´がパラメータであり、且つ、前記第1関係式を、V=A1×X+B1とし、ここでA1及びB1が第1パラメータであり、
前記ヨーレート算出工程において得られるヨーレートをY、内外輪回転角速度の和の二乗をz、内外輪回転角速度の差をyとしたときに、前記第2関係式を、Y=A2×y/(B2×z+C2)とし、ここでA2、B2及びC2が第2パラメータとすることができる。
【0025】
(10)前記(6)〜(9)の車両用推定航法において、前記回転速度が、従動輪タイヤの回転速度であることが好ましい。この場合、タイヤの回転速度の算出に際しスリップ率の影響を受けることがないので、より正確に回転速度を算出することができる。
【0026】
(11)本発明の車両用推定航法のプログラムは、推定航法を実行するためにコンピュータを、走行車両に搭載されたGPS受信機によるGPS情報から当該車両の走行速度の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、
前記車両に装着されたタイヤの回転情報を検出するタイヤ回転情報検出手段と、
このタイヤ回転情報検出手段により得られるタイヤの回転情報から当該タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両の速度を算出する速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両のヨーレートを算出するヨーレート算出手段と、
GPS情報から算出した速度ベクトルに基づいた車両速度と前記タイヤ回転速度との関係式のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いて算出するパラメータ算出手段と、
前記パラメータとタイヤ回転速度とから車両速度を逆推定する車両速度推定手段と、
逆推定された車両速度と前記速度算出手段により算出された車両速度との差に基づく判定値と、所定の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、得られるGPS情報とタイヤ回転速度とを用いて、タイヤ回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記車両速度と前記タイヤ回転速度との第1関係式の第1パラメータを逐次最小二乗法により算出する第1パラメータ算出手段と、
タイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記ヨーレート算出手段により算出されるヨーレートと前記タイヤ回転速度との第2関係式の第2パラメータを逐次最小二乗法により算出する第2パラメータ算出手段として機能させることを特徴としている。
【0027】
本発明の車両用推定航法のプログラムでは、まずGPS情報から得られる車両速度とタイヤ回転速度から、ロバストな逐次推定アルゴリズムを用いることで外れ点の影響が低減されたパラメータを得ることができる。そして、このパラメータを用いて逆推定した車両速度とGPS情報から得られる車両速度との差に基づく判定値が閾値より小さい場合、すなわちGPS情報が「外れ点」ではなく正確である場合に、この正確なGPS情報とタイヤ回転速度算出手段により得られるタイヤの回転速度とからモデル式のパラメータを算出している。したがって、マルチパスなどに起因する外れ点の影響を極力小さくしたパラメータを設定することができ、GPS受信不可時には、かかるパラメータを用いて車両速度及びヨーレートを算出して、より正確な推定航法を行うことができる。
【0028】
(12)前記(11)の車両用推定航法のプログラムにおいて、前記判定値を、前記差の二乗と、ノイズが白色であると仮定した場合の誤差分散との比とすることができる。
【0029】
(13)前記(11)又は(12)の車両用推定航法のプログラムにおいて、前記第1パラメータ算出手段及び第2パラメータ算出手段は、前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、それぞれ前記第1パラメータ及び第2パラメータを算出し、GPS情報受信不可時に、算出した最新のパラメータを用いてタイヤ回転速度から車両速度及びヨーレートを算出するように構成することができる。
【0030】
(14)前記(11)〜(13)の車両用推定航法のプログラムにおいて、前記速度算出手段により得られる車両速度をV、内外輪回転角速度の和をXとしたときに、前記関係式を、V=A1´×Xとし、ここでA1´がパラメータであり、且つ、前記第1関係式を、V=A1×X+B1とし、ここでA1及びB1が第1パラメータであり、
前記ヨーレート算出手段により得られるヨーレートをY、内外輪回転角速度の和の二乗をz、内外輪回転角速度の差をyとしたときに、前記第2関係式を、Y=A2×y/(B2×z+C2)とし、ここでA2、B2及びC2が第2パラメータとすることができる。
【0031】
(15)前記(11)〜(14)の車両用推定航法のプログラムにおいて、前記回転速度が、従動輪タイヤの回転速度であることが好ましい。この場合、タイヤの回転速度の算出に際しスリップ率の影響を受けることがないので、より正確に回転速度を算出することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の車両用推定航法装置、車両用推定航法及び車両用推定航法のプログラムによれば、マルチパスなどに起因する外れ点の影響を小さくして推定航法の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の車両用推定航法装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示される車両用推定航法装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る車両用推定航法のフローチャートである。
【図4】実施例における走行ルートを示す図である。
【図5】車輪速から推定した車両速度とGPS速度との差を示す図である。
【図6】速度差の二乗と、速度差の分散との比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の車両用推定航法装置、車両用推定航法及び車両用推定航法のプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
図1に示されるように、本発明の一実施の形態に係る車両用推定航法装置は、4輪車両(前輪駆動車)に備えられた4つのタイヤFL(左前輪)、FR(右前輪)、RL(左後輪)及びRR(右後輪)のうち、従動輪であるRLタイヤ及びRRタイヤの回転情報を検出するため、当該タイヤに関連して設けられた通常の車輪速度検出手段(タイヤ回転情報検出手段)1を備えている。
【0035】
前記車輪速度検出手段1としては、電磁ピックアップなどを用いて回転パルスを発生させてパルスの数から回転角速度及び車輪速度を測定するための車輪速センサを用いることができる。前記車輪速度検出手段1の出力は、ABSなどのコンピュータである制御ユニット2に与えられる。この制御ユニット2にはGPS情報を受信することができるGPS装置3が接続されている。
【0036】
制御ユニット2は、図2に示されるように、外部装置との信号の受け渡しに必要なI/Oインターフェース2aと、演算処理の中枢として機能するCPU2bと、このCPU2bの制御動作プログラムが格納されたROM2cと、前記CPU2bが制御動作を行う際にデータなどが一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータが読み出されたりするRAM2dとから構成されている。なお、図2において、3aはGPSアンテナである。
【0037】
前記車輪速度検出手段1では、タイヤの回転数に対応したパルス信号(以下、「車輪速パルス」ともいう)が出力される。また、CPU2bでは、車輪速度検出手段1から出力された車輪速パルスに基づいて、所定のサンプリング周期ΔT(sec)、例えばΔT=0.05秒毎に従動輪のタイヤの回転角速度が算出される。
【0038】
本実施の形態に係る車両用推定航法装置は、車両に装着されたタイヤの回転情報を検出する前記車輪速度検出手段(タイヤ回転情報検出手段)1と、走行車両に搭載されたGPS受信機3によるGPS情報から当該車両の走行速度の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、前記車輪速度検出手段1により得られるタイヤの回転情報から当該タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出手段と、前記速度ベクトルの情報に基づいて車両の速度を算出する速度算出手段と、前記速度ベクトルの情報に基づいて車両のヨーレートを算出するヨーレート算出手段と、GPS情報から算出した速度ベクトルに基づいた車両速度と前記タイヤ回転速度との関係式のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いて算出するパラメータ算出手段と、前記パラメータとタイヤ回転速度とから車両速度を逆推定する車両速度推定手段と、逆推定された車両速度と前記速度算出手段により算出された車両速度との差に基づく判定値と、所定の閾値とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、得られるGPS情報とタイヤ回転速度とを用いて、タイヤ回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記車両速度と前記タイヤ回転速度との第1関係式の第1パラメータを逐次最小二乗法により算出する第1パラメータ算出手段と、タイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記ヨーレート算出手段により算出されるヨーレートと前記タイヤ回転速度との第2関係式の第2パラメータを逐次最小二乗法により算出する第2パラメータ算出手段とから構成されている。
【0039】
そして、車両用推定航法のプログラムは、前記制御ユニット2にインストールされており、当該制御ユニット2を、速度ベクトル算出手段、タイヤ回転速度算出手段、速度算出手段、ヨーレート算出手段、パラメータ算出手段、車両速度推定手段、比較手段、第1パラメータ算出手段及び第2パラメータ算出手段として機能させる。
【0040】
本発明の車両用推定航法装置及び車両用推定航法では、前記先願発明と同様に、GPSによる速度情報として速度ベクトルが用いられる。
GPSによる速度ベクトルの変化から内積による角度変化、すなわちヨーレートを算出し、このGPS情報から求めたヨーレートと、後述するようにタイヤの回転速度から算出したヨーレートとが一致するようにタイヤモデルのパラメータを推定する。
【0041】
また、GPSによる3次元方向の速度ベクトルの合成により算出される車両速度と、同じくタイヤの回転速度から算出した車両速度とが一致するようにタイヤモデルのパラメータを推定する。
【0042】
なお、駆動輪においては、旋回における荷重移動だけでなくスリップ率もタイヤ回転速度に影響を及ぼすため、タイヤの回転速度の算出には従動輪を使用するのが好ましい。
本発明では、これらのタイヤ特性を考慮して、タイヤの対地速度を車輪速を用いたモデルで表現し、マルチパスなどに起因する外れ点の影響が除外された正確なGPS情報が受信できている間に最適なモデルパラメータを算出し、GPSが受信できないときに、かかるモデルパラメータを用いて車両速度及びヨーレートを算出するものである。これにより、推定航法で最も重要な方位変化を精度良く車輪速情報から求めることができる。
【0043】
次に、車両速度とヨーレートに着目したタイヤモデルについて説明するが、この方法はモデル作成の一例にすぎず、本発明はかかる方法に限定されるものではない。
【0044】
〔車両速度とヨーレートの算出法〕
車両の速度とヨーレートはGPSによる3次元速度ベクトルから算出することができる。例えば特開2002−22816号公報に開示されているように、衛星のキャリヤ位相から偏位量を求めることができる。
【0045】
受信機の3次元方向の偏位量として、地球固定座標系での東西方向の偏位量Deと、南北方向の偏位量Dnと、垂直方向の偏位量Duとを算出する。また、受信点の3次元方向の偏位量に代えて、受信点の3次元方向の速度成分として、地球固定座標系での東西方向の成分速度Veと、南北方向の成分速度Vnと、垂直方向の成分速度Vuとを算出する。
これらの3次元方向の速度ベクトルを合成することで、正確な車両速度を以下の式(1)により算出することができる。
【0046】
【数1】

【0047】
また、ヨーレート(Y)は、ある時刻(t)における東西方向の成分速度Veと南北方向の成分速度Vnをベクトル合成した速度ベクトルVtの、時刻ごとにおける角度変化を内積として求めることで、算出時間あたりの角度変化Hdが以下の式(2)により算出できる。
【0048】
【数2】

【0049】
そして、このHdから単位時間あたりの方位変化としてヨーレート(Y)を求めることができる。
【0050】
〔タイヤモデル〕
GPSによる車両直進時の速度情報と、タイヤ回転速度との関係から4輪それぞれの動荷重半径を算出することができる。そのときの動荷重半径を基準動荷重半径とし、Drとする。
【0051】
車両の旋回時に発生する横Gによって車両の内外輪の動荷重半径は変化し、その変化量をΔDrとすると、旋回内側のタイヤ対地速度Vinと旋回外側のタイヤ対地速度Voutは、そのときの内輪の回転角速度ωin及び外輪の回転角速度ωoutによって、
Vin=(Dr+ΔDr)×ωin
Vout=(Dr-ΔDr)×ωout
と表すことができる。
ここで、車両速度(V)は、以下の式(3)で表すことができる。
【0052】
【数3】

【0053】
また、ヨーレート(Y)については、
タイヤの荷重感度:単位荷重が作用したときのタイヤの撓み量=b
車両の前後等価バネ定数の比:荷重移動量全体に対する従動軸が受け持つ荷重比=K
車両質量=m
車両のトレッド幅=W
車両の重心高さ=h
横加速度=ay
とすると、ヨーレート(Y)=(Vout−Vin)/Wである。
また、
Vout+Vin=Dr×(ωout+ωin)
Vout−Vin=Dr×(ωout−ωin)−ΔDr×(ωout+ωin)
=Dr×(ωout−ωin)−2×b×K×(h/W)×m×ay×(ωout+ωin)
ay=(Vout+Vin)×(Vout−Vin)/2W
であるので、ヨーレート(Y)は以下の式(4)で表すことができる。
【0054】

【数4】

【0055】
以上より、車両速度(V)とヨーレート(Y)を、タイヤの内外輪角速度の和及び差を変数として、車両及びタイヤのパラメータで表すモデルを構築することができる。
【0056】
〔パラメータの推定方法〕
前述したタイヤモデルのパラメータのうち速度(V)に関連するパラメータは、式(3)より、GPSから得られる速度(V)と内外輪回転角速度の和(X)の関係をV=A1×X+B1とし、パラメータ(A1、B1)を推定することができる。
【0057】
また、ヨーレート(Y)に関連するパラメータは、式(4)より、GPSから得られるヨーレート値(Y)と、内外輪角速度の和の二乗(z)及び内外輪角速度の差(y)との関係をY=A2×Y/(B2×z+C2)とし、パラメータ(A2、B2、C2)を推定することができる。
【0058】
〔外れ点の判定〕
本発明では、車両が高層ビル街を走行する場合などにおいて、マルチパスと呼ばれるGPSの反射波によりGPS情報が不正になることに鑑みて、かかるマルチパスなどに起因する外れ点を除外した正しいGPS情報に基づいて前記パラメータを推定するために、当該外れ点の判定を行っている。
【0059】
具体的には、GPSから得られる速度Vと車輪速とから、関係式(V=A´×X)のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いることで求める。
【0060】
より詳細には、内外輪回転角速度の和Xを車両のABSに搭載された前記車輪速度検出手段1から、車両速度VをGPSからそれぞれ取得し、V=A´×Xの関係より、線形回帰を行った場合の回帰係数としてAを得る。ここで、A=(a、b)´、X=(x、1)´なる縦ベクトルであり、bは回帰切片を表す。求めるべき回帰パラメータAは、一般的な逐次更新式にしたがう。すなわち、以下の式(5)により計算される。
k+1=A+K(Y−A´X) ・・・・・・(5)
添え字kは、k回目に得たデータ又は推定値であることを示す。ここで、カルマンゲインに対応するKの計算が問題となるが、本発明では前記非特許文献1と同様に、以下の式(6)のように計算する。
【0061】
【数5】

【0062】
なお、Σは入力Xの共分散行列を表し、Rは単位行列とすることができる。式(6)における更新調整パラメータwkは、以下の式(7)のように計算する。
【0063】
【数6】

【0064】
ここで、α、βは任意のパラメータであり、
【0065】
【数7】

【0066】
であり、ノイズが白色であると仮定した場合の予測誤差分散である。
【0067】
次に図3に示されるフローチャートを参照しつつ、本発明の車両用推定航法の一実施の形態について説明する。この実施の形態では、GPS受信時において所定時間ごとに、具体的には50msごとに外れ点の判定及びパラメータの推定を行い、GPS受信不可時には推定しておいた最新のパラメータ及び車輪速データに基づいて車両の速度及びヨーレートを算出する。
【0068】
まず、ステップS1において、GPS装置3からGPS情報を受信する。このGPS情報には車両の絶対位置が含まれる。
ついで、ステップS2において、車輪速度検出手段1からタイヤの回転数に対応したパルス信号が入力される。なお、本実施の形態における車輪速度検出手段1はタイヤ1回転当たり48のパルスを発生する。
【0069】
ついで、ステップS3において、GPS受信機3からの信号が充分に受信できているか否かの判断を行なう。具体的には、GPSが出力するDOP値(測位精度の劣化係数)で判定し、当該DOP値が所定値以下の場合は受信状態が良好でないと判断する。
ステップS3においてGPS受信機3からの信号の受信状態が良好であると判断されると、ステップS4〜5において外れ点の判定が行われる。
【0070】
まずステップS4において、所定のサンプリング周期ΔT=0.05秒ごとに車輪速(タイヤの回転角速度)及びGPS情報に基づく車両速度が算出される。車輪速及び車両速度は、それぞれ次の式に従い算出される。
車輪速=(2π/48)×パルス数/0.05
車両速度=移動距離/0.05
ここで、前記移動距離及び移動角は0.05秒間における車両の絶対位置の変化量から求めることができる。また、車輪速は従動軸の左輪及び右輪のそれぞれについて算出される。
【0071】
ついで、算出された車両速度と車輪速とから、前述したように、関係式(V=A´×X)のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いることで求める。
そして、このパラメータと車輪速とから車両速度を逆推定する。
ついで、逆推定した車両速度と、GPS情報に基づく車両速度との差(誤差。e_new)を新しくデータが入力されるたびに逐次算出する。また、同様に、誤差分散(Ve_old)も逐次更新する。
【0072】
そして、ステップS5において、誤差の二乗値(e_new)と誤差分散(Ve_old)の比を判定値とし、この判定値と所定の閾値とを比較する。
ステップS5において前記判定値が所定の閾値よりも小さいと判断された場合は、ステップS6において、GPS情報に基づいて車両速度及びヨーレートが算出され、タイヤの回転情報に基づいて車輪速が算出される。なお、ヨーレートは、次の式に従い算出される。
ヨーレート=移動角/0.05
【0073】
ついで、ステップS7において、前記モデル式のパラメータ(A1、B1、A2、B2、C2)が逐次最小二乗法により推定される。そして、推定されたパラメータが制御ユニット2の記憶手段に記憶される。このパラメータの推定は、GPS情報の受信時に常に実行され、直前に推定されたパラメータは、新たに推定された最新のパラメータに順次更新される。
【0074】
一方、ステップS3において、GPS情報の受信が良好ではない、又は、受信不可であると判断されると、ステップS8においてステップS7で求めたパラメータを使い車輪速が算出される。さらに、ステップS5において、前記判定値が所定の閾値以上であると判断された場合もステップS8において前記ステップS4と同様にして車輪速が算出される。
【0075】
そして、算出された車輪速と、制御ユニット2の記憶手段に記憶されている最新のパラメータを用いて所定のサンプリング周期ΔT=0.05秒ごとに車両速度とヨーレートが算出される。
ついで、ステップS8で算出された車両速度及びヨーレートに基づいて、ステップS9において、車両の推定航法が実行される。
【0076】
〔実験例〕
次に本発明の車両用推定航法の有効性を確認するために行った実験例について説明する。
実験は、国産のFF車に住友ゴム工業株式会社製のタイヤ(195/60R15 SP10)を装着し、各所の高層ビルなどがあり、マルチパスが発生する可能性が高いコース(図4参照)を1周走行して行った。車両にはVBOX(商品名。英国Race Logic社製GPS速度計)を装備した。
【0077】
結果を図5及び図6に示す。図5は、横軸に走行時間(sec)、縦軸に車輪速から推定した車両速度とGPS情報から得られる車両速度の差(m/s)を示している。また、図6は、横軸に走行時間(sec)、縦軸に逆推定した車両速度とGPS情報に基づく車両速度との差(誤差)の二乗値と、これまでのデータから算出した誤差分散との比を示している。図5より、長丸で囲んだ付近は、実際にビルの谷間になっている箇所であり、これらの箇所でマルチパス現象が発生し、異常なGPS情報が出ている。そして、図5と図6の横軸を基準にした対比により、このような異常なGPS情報が出ている箇所においては、誤差の二乗値とこれまでの誤差分散との比による外れ点判定値は閾値を上回っており、本発明におけるロジックの有効性が確認できた。つまり、閾値を適切に設定することにより、マルチパスによる外れ点の影響を極力除外できることが確認できた。
【符号の説明】
【0078】
1 車輪速度検出手段(タイヤ回転情報検出手段)
2 制御ユニット
2a インターフェース
2b CPU
2c ROM
2d RAM
3 GPS装置
3a GPSアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両に搭載されたGPS受信機によるGPS情報から当該車両の走行速度の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、
前記車両に装着されたタイヤの回転情報を検出するタイヤ回転情報検出手段と、
このタイヤ回転情報検出手段により得られるタイヤの回転情報から当該タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両の速度を算出する速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両のヨーレートを算出するヨーレート算出手段と、
GPS情報から算出した速度ベクトルに基づいた車両速度と前記タイヤ回転速度との関係式のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いて算出するパラメータ算出手段と、
前記パラメータとタイヤ回転速度とから車両速度を逆推定する車両速度推定手段と、
逆推定された車両速度と前記速度算出手段により算出された車両速度との差に基づく判定値と、所定の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、得られるGPS情報とタイヤ回転速度とを用いて、タイヤ回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記車両速度と前記タイヤ回転速度との第1関係式の第1パラメータを逐次最小二乗法により算出する第1パラメータ算出手段と、
タイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記ヨーレート算出手段により算出されるヨーレートと前記タイヤ回転速度との第2関係式の第2パラメータを逐次最小二乗法により算出する第2パラメータ算出手段と
を備えたことを特徴とする車両用推定航法装置。
【請求項2】
前記判定値が、前記差の二乗と、ノイズが白色であると仮定した場合の誤差分散との比である請求項1に記載の車両用推定航法装置。
【請求項3】
前記第1パラメータ算出手段及び第2パラメータ算出手段は、前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、それぞれ前記第1パラメータ及び第2パラメータを算出し、GPS情報受信不可時に、算出した最新のパラメータを用いてタイヤ回転速度から車両速度及びヨーレートを算出するように構成されている請求項1又は2に記載の車両用推定航法装置。
【請求項4】
前記速度算出手段により得られる車両速度をV、内外輪回転角速度の和をXとしたときに、前記関係式は、V=A1´×Xであり、ここでA1´がパラメータであり、且つ、前記第1関係式は、V=A1×X+B1であり、ここでA1及びB1が第1パラメータであり、
前記ヨーレート算出手段により得られるヨーレートをY、内外輪回転角速度の和の二乗をz、内外輪回転角速度の差をyとしたときに、前記第2関係式は、Y=A2×y/(B2×z+C2)であり、ここでA2、B2及びC2が第2パラメータである請求項1〜3のいずれかに記載の車両用推定航法装置。
【請求項5】
前記回転速度が、従動輪タイヤの回転速度である請求項1〜4のいずれかに記載の車両用推定航法装置。
【請求項6】
走行車両に搭載されたGPS受信機によるGPS情報から当該車両の走行速度の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出工程と、
前記車両に装着されたタイヤの回転情報を検出するタイヤ回転情報検出工程と、
このタイヤ回転情報検出工程において得られるタイヤの回転情報から当該タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出工程と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両の速度を算出する速度算出工程と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両のヨーレートを算出するヨーレート算出工程と、
GPS情報から算出した速度ベクトルに基づいた車両速度と前記タイヤ回転速度との関係式のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いて算出するパラメータ算出工程と、
前記パラメータとタイヤ回転速度とから車両速度を逆推定する車両速度推定工程と、
逆推定された車両速度と前記速度算出手段により算出された車両速度との差に基づく判定値と、所定の閾値とを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、得られるGPS情報とタイヤ回転速度とを用いて、タイヤ回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記車両速度と前記タイヤ回転速度との第1関係式の第1パラメータを逐次最小二乗法により算出する第1パラメータ算出工程と、
タイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記ヨーレート算出工程において算出されるヨーレートと前記タイヤ回転速度との第2関係式の第2パラメータを逐次最小二乗法により算出する第2パラメータ算出工程と
を含むことを特徴とする車両用推定航法。
【請求項7】
前記判定値が、前記差の二乗と、ノイズが白色であると仮定した場合の誤差分散との比である請求項6に記載の車両用推定航法。
【請求項8】
前記第1パラメータ算出工程及び第2パラメータ算出工程は、前記比較工程における比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、それぞれ前記第1パラメータ及び第2パラメータを算出し、GPS情報受信不可時に、算出した最新のパラメータを用いてタイヤ回転速度から車両速度及びヨーレートを算出する請求項6又は7に記載の車両用推定航法。
【請求項9】
前記速度算出工程において得られる車両速度をV、内外輪回転角速度の和をXとしたときに、前記関係式は、V=A1´×Xであり、ここでA1´がパラメータであり、且つ、前記第1関係式は、V=A1×X+B1であり、ここでA1及びB1が第1パラメータであり、
前記ヨーレート算出工程において得られるヨーレートをY、内外輪回転角速度の和の二乗をz、内外輪回転角速度の差をyとしたときに、前記第2関係式は、Y=A2×y/(B2×z+C2)であり、ここでA2、B2及びC2が第2パラメータである請求項6〜8のいずれかに記載の車両用推定航法。
【請求項10】
前記回転速度が、従動輪タイヤの回転速度である請求項6〜9のいずれかに記載の車両用推定航法。
【請求項11】
推定航法を実行するためにコンピュータを、走行車両に搭載されたGPS受信機によるGPS情報から当該車両の走行速度の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、
前記車両に装着されたタイヤの回転情報を検出するタイヤ回転情報検出手段と、
このタイヤ回転情報検出手段により得られるタイヤの回転情報から当該タイヤの回転速度を算出するタイヤ回転速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両の速度を算出する速度算出手段と、
前記速度ベクトルの情報に基づいて車両のヨーレートを算出するヨーレート算出手段と、
GPS情報から算出した速度ベクトルに基づいた車両速度と前記タイヤ回転速度との関係式のパラメータをロバストな逐次推定アルゴリズムを用いて算出するパラメータ算出手段と、
前記パラメータとタイヤ回転速度とから車両速度を逆推定する車両速度推定手段と、
逆推定された車両速度と前記速度算出手段により算出された車両速度との差に基づく判定値と、所定の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、得られるGPS情報とタイヤ回転速度とを用いて、タイヤ回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記車両速度と前記タイヤ回転速度との第1関係式の第1パラメータを逐次最小二乗法により算出する第1パラメータ算出手段と、
タイヤの回転速度からタイヤの対地速度を算出する数式モデルから求めた、前記ヨーレート算出手段により算出されるヨーレートと前記タイヤ回転速度との第2関係式の第2パラメータを逐次最小二乗法により算出する第2パラメータ算出手段として機能させることを特徴とする車両用推定航法のプログラム。
【請求項12】
前記判定値が、前記差の二乗と、ノイズが白色であると仮定した場合の誤差分散との比である請求項10に記載の車両用推定航法のプログラム。
【請求項13】
前記第1パラメータ算出手段及び第2パラメータ算出手段は、前記比較手段による比較の結果、判定値が閾値よりも小さい場合に、それぞれ前記第1パラメータ及び第2パラメータを算出し、GPS情報受信不可時に、算出した最新のパラメータを用いてタイヤ回転速度から車両速度及びヨーレートを算出するように構成されている請求項11又は12に記載の車両用推定航法のプログラム。
【請求項14】
前記速度算出手段により得られる車両速度をV、内外輪回転角速度の和をXとしたときに、前記関係式は、V=A1´×Xであり、ここでA1´がパラメータであり、且つ、前記第1関係式は、V=A1×X+B1であり、ここでA1及びB1が第1パラメータであり、
前記ヨーレート算出手段により得られるヨーレートをY、内外輪回転角速度の和の二乗をz、内外輪回転角速度の差をyとしたときに、前記第2関係式は、Y=A2×y/(B2×z+C2)であり、ここでA2、B2及びC2が第2パラメータである請求項11〜13のいずれかに記載の車両用推定航法のプログラム。
【請求項15】
前記回転速度が、従動輪タイヤの回転速度である請求項11〜14のいずれかに記載の車両用推定航法のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137425(P2012−137425A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290972(P2010−290972)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】