説明

車両用操作身体部位接近検出装置及びそれを用いた車載用電子機器操作ユニット

【課題】 操作身体部位の操作ユニットへの接近を高精度かつ安価に検出でき、接近方向の特定も容易な車両用操作身体部位接近検出装置及びそれを用いた車載用電子機器操作ユニットを提供する。
【解決手段】 着座する乗員Pの身体と容量結合する座席150側の電極を介して交流波形からなる接近信号を入力し、他方、操作入力部側には、その乗員Pの指等の操作身体部位が接近するに伴いこれと容量結合する検出電極42を設け、その検出電極42を経て入力される交流の接近信号を波形検出部43にて検出することにより接近検知を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用操作身体部位接近検出装置及びそれを用いた車載用電子機器操作ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2002−91674号公報
【0003】
カーエアコン、カーナビゲーションシステムあるいはカーオーディオシステム等の車載電子機器の操作ユニットにおいて、操作者の手ないし指などの操作身体部位の操作ユニットへの接近を検出し、その検出結果を利用して制御を行なうニーズがある。具体例として通常時は表示や照明が消灯したブラックフェースの状態で、操作者が操作しようと手を近づけたときにのみ表示や照明を点灯させたり、同じスイッチでも運転席から操作する場合と助手席から操作する場合とで機能を切り替えたり、さらには、走行中の運転席側からの操作を禁止したりするニーズを例示することができる。
【0004】
操作身体部位の操作ユニットへの接近検出方式としては、下記のごとく、従来様々な方法が提案されてきた。
(1)車室内の画像を撮影し、画像処理によって運転席や助手席に座った人の手の動きを検出する。
(2)超音波の発信器と受信器を用い、操作しようとする手によって反射された超音波を検出する。
(3)赤外光の発光器と受光器を用い、操作しようとする手によって赤外光が遮断ないし反射されたことを受光器で検出する(特許文献1)。
(4)操作しようとする手が近づいたことを、手と操作スイッチ間の静電容量の測定により検出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の方式には以下のごとき欠点がある。(1)の方式では、カメラで撮影した画像データに対する複雑な処理が必要であり、また、画像処理であるため外光などによる車室内の照度や、操作ユニットの筐体ないし操作部の配色、操作者の肌の色や手袋の色など、環境条件で検出精度が大きく変化する問題がある。(2)の超音波を用いる方式は、常時発信される超音波による乗員やペットなどへの影響について配慮が必要な場合がある。(3)の方式は、赤外光の受光器が必要であり、外光の影響を直接受けやすいので、安定した動作を確保するために受光器の搭載位置が制約される問題がある。(4)の方式では、指先などで操作する場合、発生する静電容量が微少なため非常に高い検出精度が必要となり、装置コストの高騰を招く。また、いずれの方式においても、操作者の車内着座位置ひいては操作の方向を検出するためには複数の検出手段が必要であり、正確な識別も難しい難点がある。
【0006】
本発明の課題は、操作身体部位の操作ユニットへの接近を高精度かつ安価に検出でき、接近方向の特定も容易な車両用操作身体部位接近検出装置及びそれを用いた車載用電子機器操作ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用操作身体部位接近検出装置は、
車両内の座席に着座した乗員から操作可能な位置に設けられた操作入力部と、
着座する乗員の身体と容量結合するべく座席に設けられた信号電極と、
信号電極に予め定められた交流波形よりなる接近信号を出力する接近信号出力部と、
操作入力部を操作しようとする乗員の操作身体部位の接近を検出可能な位置に、その接近距離に応じた容量にて操作身体部位と容量結合するべく設けられた検出電極と、
信号電極から乗員の身体及び検出電極を経て入力される接近信号を検出する波形検出部と、
該波形検出部による検出波形に基づいて操作身体部位の接近を検出し、その検出結果を出力する接近検出出力部と、を有したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の車載用電子機器操作ユニットは、車両内に取り付けて使用され、上記本発明の車両用操作身体部位接近検出装置を備えるとともに、該車両に搭載された車載用電子機器の操作入力を行なうための操作入力部が筐体の操作前面側に設けられ、かつ、該操作前面側にて操作入力部に対応する位置に検出電極が設けられたことを特徴とする。
【0009】
本発明によると、着座する乗員の身体と容量結合する座席側の電極を介して交流波形からなる接近信号を入力し、他方、操作入力部側には、その乗員の指等の操作身体部位が接近するに伴いこれと容量結合する検出電極を設け、その検出電極を経て入力される交流の接近信号を波形検出部にて検出することにより接近検知を行なう。これにより、複雑な画像処理が不要で外乱光等の影響も受けず、操作身体部位の操作ユニットへの接近を高精度かつ安価に検出することが可能となる。
【0010】
接近信号出力部は、接近信号として予め定められた周波数の搬送波波形をデータ信号にて変調した変調交流信号として出力するものであり、接近検出出力部は、変調交流信号からデータ信号を復調する復調回路と、復調されたデータ信号の内容に基づいて操作身体部位の接近の有無を特定するように構成できる。変調交流信号に対する同調及び該変調交流信号からのデータ信号の復調により、ノイズ等の影響を受けにくい高精度の接近検知を行なうことができる。
【0011】
次に、本発明は、入力操作部を操作可能な複数の座席に信号電極をそれぞれ設け、接近信号出力部は、座席毎に異なる接近信号を対応する信号電極にそれぞれ出力するものとして構成することができる。この場合、接近検出出力部は、特定された接近信号の相違に基づいて、操作身体部位がいずれの座席の側から接近したものであるかを特定し、その特定結果を出力するよう構成できる。この構成によると、座席毎に信号電極を設け、その信号電極に座席毎に異なる接近信号を出力することで、検出電極に現れる接近信号の相違から、どの座席の乗員が操作身体部位を検出電極に近づけたか(つまり、操作身体部位の接近方向)を極めて簡単に、かつ高精度に特定することができる。
【0012】
接近信号出力部は、座席毎に異なる周波数にて接近信号を対応する信号電極にそれぞれ出力するよう構成できる(例えば、前述の変調交流信号の場合、その搬送波の周波数を、座席毎に異なるものとする)。接近検出出力部は、特定された接近信号の周波数の相違に基づいて、操作身体部位がいずれの座席の側から接近したものであるかを特定し、その特定結果を出力するものとして構成することができる。この方式によると、周知のフィルタリング処理等により特定周波数の接近信号を容易に抽出でき、操作身体部位がどの座席から接近したのかをより簡単に、かつ高精度に特定することができる。
【0013】
一方、接近信号出力部は、接近信号として予め定められた周波数の搬送波波形を、座席毎に異なる内容のデータ信号にて変調した変調交流信号として出力するように構成することもできる。接近検出出力部は、変調交流信号からデータ信号を復調する復調回路を有するとともに、復調されたデータ信号の内容に基づいて、操作身体部位がいずれの座席の側から接近したものであるかを特定し、その特定結果を出力するものとして構成することができる。この方式によると、接近信号から分離されるデータ信号の内容の相違に基づいて、操作身体部位がどの座席から接近したのか確実に特定することができる。この場合、各座席について、同一周波数の搬送波を使用するようにすれば、フィルタ回路あるいは復調回路を座席間で共用化することも可能となり、回路構成の軽量化を図ることができる。
【0014】
操作身体部位の接近検出結果は、車載用電子機器操作ユニット上にて種々の目的に活用することができる。例えば、操作入力部に随伴して設けられた該操作入力部の存在位置を示すインジケータ用光源と、接近検出出力部による該操作入力部への操作身体部位の接近検出出力を受けてインジケータ光源を点灯駆動するインジケータ光源駆動手段とを設けることができる。夜間や暗所であれば、手探りにて操作入力部を探す場合、操作身体部位が接近すれば対応するインジケータ光源が点灯するので、操作入力部を容易に特定することができる。また、昼間においても、操作身体部位の接近によりインジケータ光源を、車両側の一種の歓迎動作として点灯させることが可能であり、乗員を楽しませることができる。
【0015】
また、操作入力部に、操作身体部位の接近検出がなされる座席種別に応じて互いに異なる複数の機器機能が割り当てられている場合は、接近検出出力部による、操作身体部位がいずれの座席の側から接近したものであるかの特定結果出力に基づいて、特定された座席に対応する機器機能を操作入力部に設定する機器機能設定手段を設けることができる。本発明の採用により、操作を発生させる乗員の着座位置を車両側にて簡単に判別でき、操作入力部に対する機器機能の自動設定切替も確実に行なうことができる。
【0016】
また、接近検出出力部により、操作入力部に対し操作身体部位が予め定められた無効化対象座席の側から接近したものであることが特定された場合には、該操作入力部への操作入力を無効化する操作入力無効化手段を設けることができる。この構成により、使用可能な操作入力部を座席別にカスタマイズすることができ、例えば、走行中における運転席側からの操作を禁止しつつ、助手席側からの操作は許容する、といった機能も簡単に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1Aは、本発明の車載用電子機器操作ユニットの一実施形態をなすカーエアコン用操作ユニットの正面外観の一例を示すものである。このカーエアコン用操作ユニット100(以下、単に「操作ユニット100」ともいう)は、車両のインパネ部に設けられた運転席用エアコン吹出し口(図示せず)と助手席用エアコン吹出し口(図示せず)との各吹出し制御を独立して行なうためのためのものであり、運転席と助手席との間で共用される操作入力部としての温度設定スイッチ54が配置されている。温度設定スイッチ54はダイアルスイッチにて構成され、樹脂製の本体に検出電極42がそれぞれ埋め込まれている。
【0018】
また、筐体パネル110には、他の操作入力部として、運転席と助手席との温度設定に係るデュアルモード選択スイッチ61、オート/マニュアル切替スイッチ103、A/Cスイッチ59、デフモード選択スイッチ62及び内気/外気切替スイッチ60が設けられている。これら各スイッチはいずれも押しボタンスイッチであり、樹脂製の本体に検出電極42がそれぞれ埋め込まれるとともに、インジケータ光源49が設けられている。該インジケータ光源49は、図1Bに示すように、各スイッチに対応する主機能が選択された主機能選択状態表示用の第一発光ダイオード49P(点灯色:例えば緑)と、検出電極42により操作者の指(操作身体部位)の接近が検知された場合のスイッチ位置報知用に点灯する、第一発光ダイオード49Pとは点灯色の異なる第二発光ダイオード49S(点灯色:例えばアンバー)とを有する。また、風量設定スイッチ52、吹き出しモード(吹き出し口)を切り替えるためのモードスイッチ53、送風オフスイッチ58及びリアデフスイッチ70も設けられ、それぞれ検出電極42と、スイッチ位置報知用の第二発光ダイオード49Sのみからなるインジケータ光源49’とが設けられている。
【0019】
また、筐体パネル110には、このほか、運転席と助手席との各設定温度や風量ないし吹出し口の設定状態を表示する表示部(液晶ディスプレイにて構成されている)63が設けられている。
【0020】
図2は、エアコン制御装置CAの全体構成を模式的に示すブロック図である。空調装置CAはダクト1を備え、該ダクト1には、車内空気を循環させるための内気吸い込み口13と、車外の空気を取込む外気吸い込み口14とが形成され、内外気切替ダンパー15によりいずれかが切替使用される。これら内気吸い込み口13ないし外気吸い込み口14からの空気は、ファン16によってダクト1内に吸い込まれる。
【0021】
ダクト1内は、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ17と、逆にこれを加熱して暖気を発生させるヒータコア2(エンジン冷却水の廃熱により発熱動作する)とが設けられている。そして、これら冷気と暖気とが、エアミックスダンパー3の角度位置に対応した比率にて混合され、吹出し口4,5,6より吹出される。このうち、フロントグラス曇り止め用のデフ吹出し口4はフロントグラスの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、フェイス吹出し口5はインパネの正面中央に、フット吹出し口6はインパネ下面奥の搭乗者足元に対向する位置にそれぞれ開口し、吹出し口切替用ダンパー7,8,9により個別に開閉される。
【0022】
具体的には、モータ20からのダンパー制御用の回転入力位相に応じて、ダンパー駆動ギア機構10により、デフ吹出し口4のみを開いた状態、フェイス吹出し口5のみを開いた状態、フット吹出し口6のみを開いた状態、フェイス吹出し口5とフット吹き出し口6とを開いた状態、及びフット吹出し口6とデフ吹出し口4とを開いた状態の間で切り替えられる。
【0023】
また、内外気切替ダンパー15はモータ21により、エアミックスダンパー3はモータ19により、吹出し口切替用ダンパー7,8,9はモータ20により、それぞれ電動駆動される。これらモータ19,20,21は例えばステッピングモータにて構成される。さらにブロワモータ23はブラシレスモータ等で構成され、PWM制御にて回転速度制御することにより吹出し風量が調整される。これらモータ(アクチュエータ)19〜21,23の動作はエアコンECU50により集中制御される。
【0024】
エアコンECU50の実体はコンピュータハードウェアであり、その入出力部には、エバポレータセンサ51、内気センサ55、外気センサ56、水温センサ57及び日射センサ58が接続されている。
【0025】
また、エアコンECU50には、前述のモードスイッチ53、温度設定スイッチ54、デュアルモード選択スイッチ61、オート/マニュアル切替スイッチ103、A/Cスイッチ59、内外気切替スイッチ60、デフモード選択スイッチ62、内気/外気切替スイッチ60及びリアデフスイッチ70もインジケータ用光源49,49’(の駆動部)とともに接続されている(また、図1の送風オフスイッチ58もインジケータ用光源49’とともに接続されているが、図2には表れていない)。
【0026】
エアコンECU50は、搭載された制御アプリケーションの実行により、以下のような制御を行なう。
・内外気切替スイッチ60の操作入力状態に対応して、内気側及び外気側のいずれかに内外気切替用ダンパー15が倒れるよう、対応するモータ21の駆動ICに制御指令を行なう。
・A/Cスイッチ59の操作状態に応じて、エバポレータ17の作動をオン・オフさせる。
【0027】
・オート/マニュアル切替スイッチ103の入力状態に基づいて、エアコンの動作モードをマニュアルモードとオートモードとの間で切り替える。
・オートモードでは、温度設定スイッチ54による設定温度の入力情報と、内気センサ55、外気センサ56、水温センサ57及び日射センサ58の出力情報とを参照し、車内温度が設定温度に近づくよう周知のシーケンスに従い、エアミックスダンパー3の開度調整による吹出し温度調整と、ブロワモータ23による風量調整と、吹出し口切替ダンパー7,8,9の位置変更とがなされるよう、対応するモータ19,23,20の動作制御指令を行なう。
・マニュアルモードでは、風量設定スイッチ52とモードスイッチ53との操作入力状態に対応して、ブロワモータ23による風量調整を行なうとともに、吹出し口切替ダンパー7,8,9が対応する開閉状態となるようにモータ20への駆動制御指令を行なう。
【0028】
・デュアルモード選択スイッチ61がオンのとき、運転席と助手席とのいずれの側から温度設定スイッチ54が操作されたかを後述の方法により判別し、操作のあった座席側の吹出し温度を独立して設定変更する。一方、デュアルモード選択スイッチ61がオフのときは、運転席と助手席とのいずれの側から温度設定スイッチ54が操作された場合においても、左右の吹出し温度設定を連動して設定変更する。
・デフモード選択スイッチ62の操作に伴い、フロントガラス側のデフ吹出し口の開閉制御を行なう。
・リアデフスイッチ70の操作に伴い、図示しないリアガラスの電熱線に通電し、リアガラスの曇り除去を行なう。
【0029】
次に、エアコンECU50には、本発明の車両用操作身体部位接近検出装置40(以下、接近検出装置40ともいう)が接続されている。図3に示すように、該接近検出装置40は、座席150に設けられた信号電極41と、操作ユニット100に設けられた各スイッチ類(操作入力部)に随伴する検出電極42(図1Aも参照)と、これら電極41,42が接続されるコントローラ40Cとを有する。信号電極41は座席150の座部150Sの着座面側に埋設されている。また、信号電極41が設けられる座席150は、少なくとも運転席とその隣の助手席であるが、それ以外の座席(例えば、後部座席等)に設けることも可能である。ただし、本実施形態では、運転席と助手席にのみ信号電極41を設けている。
【0030】
図4は、コントローラ40Cの基本構成を示すものである。座席に乗員Pが着座すると、信号電極41は、その乗員Pの身体と容量結合するとともに(その等価容量をC1で表わしている)、予め定められた交流波形よりなる接近信号を出力する接近信号出力部47が接続されている。一方、操作ユニット100側の検出電極42は、操作のため乗員Pが指(操作身体部位)を近づけると、その接近距離に応じた容量にて操作身体部位と容量結合する。
【0031】
信号電極41に入力される交流波形からなる接近信号は、乗員Pの身体を経て検出電極42から波形検出部43に入力される。本実施形態では、接近信号は所定周波数の正弦波交流波形(例えば、30kHz、5Vp-p)であり、検出電極42が検出する検出信号波形はアンプIC1で増幅され(入力側には、ツェナーダイオードD1,D2を用いたサージ保護回路が設けられている)、フィルタ44にて希望周波数帯の信号成分(ここでは30kHz)が抽出される。抽出された信号成分は検波回路45(ダイオードD3、コンデンサC3及び抵抗R2からなる周知の包絡線検波回路として構成されている)を経て接近判定データ信号に復調され、接近検出出力部をなすCPU46のA/D変換ポート46aに入力される。
【0032】
検出電極42に対する指の距離が大きい場合は、信号電極41から指を経て放射される接近信号の検出電圧レベルが低く、CPU46における接近信号のA/D変換ポート46aへの接近判定データ信号の入力電圧が閾値未満となって、指(操作身体部位)が接近していないと判定できる。
【0033】
他方、検出電極42に対する指の距離がある閾値未満に小さくなると接近信号の検知電圧レベルが十分高くなり、接近検出出力部46における接近判定データ信号の入力電圧が閾値を超えることで、指(操作身体部位)の接近を検出できる。接近判定データ信号の入力電圧閾値(つまり、接近検出の閾距離)は、信号電極41に与える電圧や、検出電極42の面積、アンプIC1の増幅率を考慮して適宜設定される。
【0034】
接近判定データ信号は、閾レベルよりも単に高いか低いかのみで接近判定結果を示す1ビットの情報であってもよいが、ノイズ等の影響を受け難くするために、複数ビットからなるデータとしておくことがより望ましい。この場合は、図5に示すように、上記周波数の搬送波を、該ビットデータを示す信号にて変調した変調交流信号を接近信号として用いればよい。接近信号出力部47は、搬送波の発振回路と、その出力をスイッチングするトランジスタ等を含む周知の構成を採用可能であり、該トランジスタをCPU46が前述のビットパターンに対応するシーケンスにてオン/オフ駆動することで搬送波が変調され、接近信号として出力される。つまり、CPU46は接近信号出力部47の駆動制御部も兼ねている。この実施形態では、正弦波搬送波をビットデータ信号によりオン/オフ変調している。
【0035】
該変調交流入力波形は検波回路45にて上記ビットデータを反映した接近判定データ信号に復調される(つまり、検波回路45が復調回路を構成する)。CPU46では、A/D変換ポート46aへの該接近判定データ信号の入力値を二値化するとともに、その結果が予め決められたビットパターンと一致したときのみ指の接近ありと判定し、操作検出信号Qを出力する。
【0036】
図1において、風量設定スイッチ52、デュアルモード選択スイッチ61、オート/マニュアル切替スイッチ103、A/Cスイッチ59、デフモード選択スイッチ62、内気/外気切替スイッチ60、送風オフスイッチ58及びリアデフスイッチ70は、左右の座席のどちらから操作されたかを特に区別することなく、エアコンECU50はその操作内容に応じて同じ制御処理を行なうことになる。そして、指がこれらスイッチ(の検出電極42)に対し閾距離未満に接近することにより、各スイッチに随伴するインジケータ光源49は次のような動作となるようにエアコンECU50により駆動制御される。
【0037】
オート/マニュアル切替スイッチ103、A/Cスイッチ59、デフモード選択スイッチ62、内気/外気切替スイッチ60及びリアデフスイッチ70は、いずれも1回押す毎に機能選択状態がサイクリックに切り替わる。そして、各スイッチボタンに表示された主機能(例えば、オート/マニュアル切替スイッチ103ではオートモードが設定された状態、A/Cスイッチ59ではエバポレータがオンの状態、デフモード選択スイッチ62ではデフ吹出し状態等)が選択されている場合には、図1Bにてインジケータ光源49は、指の接近とは無関係に、その主機能選択表示用の第一発光ダイオード49P(点灯色:例えば緑)を点灯させる。
【0038】
この状態で指の接近が検知された場合は、第二発光ダイオード49S(点灯色:例えばアンバー)に点灯が切り替わる。また、主機能が選択されていない場合は、指の接近が検知されていなければインジケータ光源49は第一発光ダイオード49P及び第二発光ダイオード49Sは双方とも消灯(又は第二発光ダイオード49Sの低輝度点灯状態)となり、指の接近が検知されていれば第二発光ダイオード49Sが点灯(又は高輝度点灯状態)となる。なお、インジケータ光源49を単一の発光ダイオードで構成し、主機能の選択状態と指の接近検知状態とを、その発光ダイオードの出力輝度の相違により表示するようにしてもよい。
【0039】
風量設定スイッチ52、送風オン/オフスイッチ58は、上機主機能の概念が存在せず、インジケータ光源49’は指の接近報知用の単一の発光ダイオードからなる。そして、指の接近が検知されていなければインジケータ光源49’は消灯(又は低輝度点灯状態)となり、指の接近が検知されていれば点灯(あるいは高輝度点灯状態)となる。また、モードスイッチ70は、前述の5種類の吹き出しモードをサイクリックに切り替えるものであるが、同様に、インジケータ光源49’は指の接近報知用の単一の発光ダイオードからなる。
【0040】
次に、温度設定スイッチ54については、デュアルモード機能が搭載されていなければ、操作者の座席の区別は同様に行なう必要がない。しかし、上記のようにデュアルモード機能が搭載されている場合は、その操作が運転席からのものであるか助手席からのものであるかを区別する必要が生ずる。この場合は、コントローラ40を図6のように構成する。すなわち、運転席と助手席には、図3の同じ形態にて信号電極41がそれぞれ埋設され、それぞれ個別の接近信号出力部47D,47Nにより互いに異なる周波数(本実施形態では、運転席側が30kHz、助手席側が50kHzである)の接近信号が入力される。温度設定スイッチ54(図1)に設けられた検知電極42に、波形検出部43’が接続されている。その増幅段の構成は図4と同じであるが、アンプIC1の出力は各接近信号の周波数に対応した通過帯域を有するフィルタ44D,44Nに分配入力され、各通過波形がそれぞれ独立した検波回路45D,45Nを経てCPU46の異なるA/D変換ポート46a,46bに入力される。
【0041】
温度設定スイッチ54への指の接近が運転席側からのものであれば、フィルタ44Dの通過波形の出力レベルが高くなり、同じく助手席側からのものであれば、フィルタ44Dの通過波形の出力レベルが高くなる。従って、(検波回路45D,45Nを経て)これらが個別に入力されるA/D変換ポート46a,46bのいずれにおいて、有意な接近信号が検出されているかに応じ、温度設定スイッチ54への操作がどちらの座席からのものであるかを識別することができる。CPU46は、これを受けて、操作のあった座席種別が反映された操作検出信号Qを出力する。
【0042】
各A/D変換ポート46a,46bの入力内容に基づく接近有無判定は、図4の場合と全く同じである。運転席側と助手席側との接近信号にて異なるのは搬送波の周波数であり、例えば、これを変調するビットデータの内容は運転席側と助手席側との間で同じとすることができる。ただし、運転席側と助手席側との間で、図7のごとくビットデータの内容を異ならせることも可能である。
【0043】
また、運転席側と助手席側との間でビットデータの内容を異ならせる場合は、図8に示すように、運転席側と助手席側との接近信号の搬送波周波数を同じに設定することも可能である。ビットデータによる搬送波の変調内容が相違するので、接近信号出力部47D,47Nは個別に設けられている。しかし、搬送波周波数が同一のため、フィルタ及び検波に係る波形検出部43の構成は図4と同様一つで済む。検波後の波形は共通のA/D変換ポート46aに入力され、CPU46はそのビットパターンの内容を解析することにより操作のあった座席種別を判定することができる。運転席側と助手席側との各接近信号出力部47D,47Nは、ビットデータによる変調内容が相違する接近信号を、例えば時分割にて交互に出力するように構成することができる。
【0044】
CPU46が出力する、座席種別が反映された操作検出信号Qを用いて、エアコンECU50は、例えば次のような制御を行なうことができる(いずれも単独で、もしくは互いに組み合わせて実施することができる)。
(1)デュアルモード選択時には、温度スイッチ24の操作に伴い、前述のごとく、操作のあった座席側の吹出し温度を独立して設定変更する。この場合、温度スイッチ24の機能は、運転席側からの操作であれば運転席側の温度設定変更機能となり、助手席側からの操作であれば助手席側の温度設定変更機能となるので、特定された座席に対応する機器機能を操作入力部に設定する機器機能設定手段が実現していることが明らかである。
(2)デュアルモード非選択時には、運転席と助手席とのいずれの側から温度設定スイッチ54が操作された場合においても、左右の吹出し温度設定を連動して設定変更する。なお、助手席側から温度設定スイッチ54が操作された場合に、デュアルモード選択スイッチ61の操作とは無関係にデュアルモードに自動的に移行し、助手席側の吹出し温度を独立して設定変更するように構成することも可能である。
(3)運転席と助手席とのいずれでもない座席(無効化対象座席:例えば後部座席)から操作があると、温度スイッチ24の検出電極42には接近信号の入力そのものがなくなるので、これに基づいて、該接近検知対象外座席からの温度スイッチ24への操作を無効化することが可能である。この場合、温度スイッチ24が操作されても、運転席と助手席との温度設定はいずれも変化しない。つまり、予め定められた無効化対象座席の側から指が接近したことが特定されるに伴い、温度スイッチ24への操作入力を無効化する操作入力無効化手段の機能が実現している。
【0045】
以上、本発明の実施形態を、カーエアコン用操作ユニットへの適用を例にとって説明したが、これ以外の車載用電子機器の操作ユニットにももちろん適用可能である。例えば、図9は、カーナビゲーションシステムへの適用例を示すものである。この場合、ディスプレイ201には、その画面に重ね配置された案内設定用のタッチパネル203と、ディスプレイの筐体に配置された操作スイッチ類202との双方が接近検知対象となりうるが、ここでは、タッチパネル203を利用した目的地定などの案内設定入力操作を、運転席側に限って走行中は制限する場合を例に取る。ナビゲーションECU200には、本発明の接近検出装置40と車速センサ202とが接続される。車速センサ202が検出する車速が閾速度未満では、運転席及び助手席のいずれからもタッチパネル203による案内設定入力操作が可能である。しかし、車速が閾速度を超えたとき、タッチパネル203に組み込まれた透明電極を検出電極242として、図6又は図8と同様の構成の接近検出装置40により、その操作が運転席からのものか助手席からのものであるかが判定される。
【0046】
そして、運転席側からの操作であった場合は、タッチパネル203への操作入力を無効化する(つまり、運転席が無効化対象座席である:タッチパネル203の下のディスプレイに表示されたソフトボタンのうち、操作不能のものを消去したり反転表示等に変更したりすることで操作不能状態であることを運転者に報知することができる)。他方、助手席側からの操作であった場合は、タッチパネル203への操作入力を受け付けるようにする。カーナビゲーションシステムにおける、特定座席からの操作入力を無効化する技術思想については公知であるので、これ以上の詳述は行なわない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1A】本発明の適用対象となるカーエアコン用操作ユニットの一例を示す正面図。
【図1B】インジケータ用光源の構成例を示す回路図。
【図2】エアコン制御装置の全体構成を模式的に示すブロック図。
【図3】本発明の車両用操作身体部位接近検出装置の全体構成を示す模式図。
【図4】本発明の車両用操作身体部位接近検出装置のコントローラ部分の第一実施例を示す回路図。
【図5】接近信号の一例を示す説明図。
【図6】本発明の車両用操作身体部位接近検出装置のコントローラ部分の第二実施例を示す回路図。
【図7】座席別に異なるビットデータを用いる例を説明する図。
【図8】本発明の車両用操作身体部位接近検出装置のコントローラ部分の第三実施例を示す回路図。
【図9】本発明の適用対象となるカーナビゲーションシステムの一例を示す概略ブロック図。
【符号の説明】
【0048】
41 信号電極
42 検出電極
43、43’ 波形検出部
46 CPU(接近検出出力部)
47,47D,47N 接近信号出力部
49,49’ インジケータ用光源(操作入力部)
52 風量設定スイッチ(操作入力部)
53 モードスイッチ(操作入力部)
54 温度設定スイッチ(操作入力部)
58 送風オフスイッチ(操作入力部)
59 A/Cスイッチ(操作入力部)
60 内気/外気切替スイッチ(操作入力部)
61 デュアルモード選択スイッチ(操作入力部)
62 デフモード選択スイッチ(操作入力部)
70 リアデフスイッチ(操作入力部)
100 車両用操作身体部位接近検出装置
103 オート/マニュアル切替スイッチ(操作入力部)
150 座席
203 タッチパネル(操作入力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記車両内の座席に着座した乗員から操作可能な位置に設けられた操作入力部と、
着座する前記乗員の身体と容量結合するべく前記座席に設けられた信号電極と、
前記信号電極に予め定められた交流波形よりなる接近信号を出力する接近信号出力部と、
前記操作入力部を操作しようとする前記乗員の操作身体部位の接近を検出可能な位置に、その接近距離に応じた容量にて前記操作身体部位と容量結合するべく設けられた検出電極と、
前記信号電極から前記乗員の身体及び前記検出電極を経て入力される前記接近信号を検出する波形検出部と、
該波形検出部による検出波形に基づいて前記操作身体部位の接近を検出し、その検出結果を出力する接近検出出力部と、
を有したことを特徴とする車両用操作身体部位接近検出装置。
【請求項2】
前記接近信号出力部は、前記接近信号として予め定められた周波数の搬送波波形をデータ信号にて変調した変調交流信号として出力するものであり、
前記接近検出出力部は、前記変調交流信号から前記データ信号を復調する復調回路と、復調されたデータ信号の内容に基づいて前記操作身体部位の接近の有無を特定する請求項1記載の車両用操作身体部位接近検出装置。
【請求項3】
前記入力操作部を操作可能な複数の座席に前記信号電極がそれぞれ設けられるとともに、
前記接近信号出力部は、前記座席毎に異なる接近信号を対応する前記信号電極にそれぞれ出力するものであり、
前記接近検出出力部は、特定された接近信号の相違に基づいて、前記操作身体部位がいずれの座席の側から接近したものであるかを特定し、その特定結果を出力するものである請求項1又は請求項2に記載の車両用操作身体部位接近検出装置。
【請求項4】
前記接近信号出力部は、前記座席毎に異なる周波数にて前記接近信号を対応する前記信号電極にそれぞれ出力するものであり、
前記接近検出出力部は、特定された接近信号の周波数の相違に基づいて、前記操作身体部位がいずれの座席の側から接近したものであるかを特定し、その特定結果を出力するものである請求項3に記載の車両用操作身体部位接近検出装置。
【請求項5】
前記接近信号出力部は、前記接近信号として予め定められた周波数の搬送波波形を、前記座席毎に異なる内容のデータ信号にて変調した変調交流信号として出力するものであり、
前記接近検出出力部は、前記変調交流信号から前記データ信号を復調する復調回路を有するとともに、復調されたデータ信号の内容に基づいて、前記操作身体部位がいずれの座席の側から接近したものであるかを特定し、その特定結果を出力するものである請求項3に記載の車両用操作身体部位接近検出装置。
【請求項6】
車両内に取り付けて使用され、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用操作身体部位接近検出装置を備えるとともに、該車両に搭載された車載用電子機器の操作入力を行なうための前記操作入力部が筐体の操作前面側に設けられ、かつ、該操作前面側にて前記操作入力部に対応する位置に前記検出電極が設けられたことを特徴とする車載用電子機器操作ユニット。
【請求項7】
前記操作入力部に随伴して設けられた該操作入力部の存在位置を示すインジケータ用光源と、前記接近検出出力部による該操作入力部への前記操作身体部位の接近検出出力を受けて前記インジケータ光源を点灯駆動するインジケータ光源駆動手段とを有する請求項6記載の車載用電子機器操作ユニット。
【請求項8】
請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用操作身体部位接近検出装置を備えるとともに、
前記操作入力部には、前記操作身体部位の接近検出がなされる座席種別に応じて互いに異なる複数の機器機能が割り当てられてなり、
前記接近検出出力部による、前記操作身体部位がいずれの座席の側から接近したものであるかの特定結果出力に基づいて、特定された座席に対応する機器機能を前記操作入力部に設定する機器機能設定手段が設けられてなる請求項6又は請求項7に記載の車載用電子機器操作ユニット。
【請求項9】
請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用操作身体部位接近検出装置を備えるとともに、
前記接近検出出力部により、前記操作入力部に対し前記操作身体部位が予め定められた無効化対象座席の側から接近したものであることが特定された場合に、該操作入力部への操作入力を無効化する操作入力無効化手段を備えてなる請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の車載用電子機器操作ユニット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−238952(P2008−238952A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81707(P2007−81707)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】