説明

車両用操舵装置

【課題】センサの異常をより確実に検出することができ、且つ、製造コストの点からも好ましい車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】車両用操舵装置1は、操舵部材に連結される入力軸18と転舵機構に連結される出力軸19との間に介在する伝達比可変機構13と、伝達比制御モータ14と、伝達比制御モータ14の回転位置を検出する第1レゾルバ31と、反力補償モータ15と、反力補償モータ15の回転位置を検出する第2レゾルバ32と、制御部と、を備える。制御部の第1判定部は、伝達比制御モータ14が制御部によって所定の回転方向に第1目標角度δ1回転された場合において、第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1と第1目標角度δ1との差が第1基準値θ1を超えているときに、第1レゾルバ31に異常が生じていると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵部材に連結される入力軸と、転舵機構に連結される出力軸との間に、入力軸と出力軸との間の回転伝達比を変更可能な伝達比可変機構を備える車両用操舵装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。伝達比可変機構は、遊星歯車機構や波動歯車機構等により構成されており、電動モータ(伝達比制御モータ)が遊星歯車機構のキャリアや波動歯車機構のウェーブジェネレータを回転させることにより、回転伝達比を変更できるようになっている。また、伝達比可変機構を備える車両用操舵装置には、レゾルバ等の種々の回転角センサを備えており、これらの回転角センサの検出結果を用いることで、適切な回転伝達比の制御を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−159991号公報
【特許文献2】特開2005−212616号公報
【特許文献3】特開2006−10336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝達比可変機構を備える車両用操舵装置では、伝達比可変機構の動作により、操舵部材に伝わる反力が変化するので、この反力の変化を補償するための反力補償モータが備えられることがある。この場合、伝達比制御モータのロータの位置を検出するレゾルバに加え、反力補償モータのロータの位置を検出するレゾルバが設けられる。
これらのレゾルバに異常が生じると、回転伝達比の制御や、反力補償を正しく行うことができなくなる。したがって、レゾルバに異常が生じているときには、回転伝達比を機械的に固定する等の対応が必要になる。このように、レゾルバの異常に対応した措置をとることができるように、レゾルバ等の回転角センサの異常を確実に検出できるようにする必要がある。
【0005】
例えば、伝達比制御モータ用のレゾルバの異常を検出するための専用のセンサを出力軸等に設けることも考えられる。しかしながら、レゾルバの異常を検出するための専用のセンサをさらに設けることは、製造コストの点から好ましくない。
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、センサの異常をより確実に検出することができ、且つ、製造コストの点からも好ましい車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、操舵部材(2)の操舵に応じて回転する入力軸(18)と転舵機構(9)の動作に連動して回転する出力軸(19)との間に介在し、入力軸および出力軸間の伝達比を変更可能な伝達比可変機構(13)と、前記伝達比可変機構の前記伝達比を変更するための伝達比制御モータ(14)と、前記伝達比制御モータの回転位置(θvgr)を検出する第1センサ(31)と、前記伝達比可変機構の動作による前記操舵部材の操舵反力を補償するための反力補償モータ(15)と、前記反力補償モータの回転位置(θreact)を検出する第2センサ(32)と、前記伝達比制御モータおよび前記反力補償モータを制御する制御部(37)と、を備え、前記制御部は、前記第1センサまたは前記第2センサからなる所定のセンサの異常の有無を判定する第1判定部(49)を含み、前記第1判定部は、前記所定のセンサに対応する前記伝達比制御モータまたは前記反力補償モータが前記制御部によって所定の回転方向に第1目標角度(δ1)回転された場合において、前記所定のセンサの検出値の変化量(Δθvgr1)と前記第1目標角度との差が第1基準値(θ1)を超えているときに、前記所定のセンサに異常が生じていると判定することを特徴とする、車両用操舵装置(1)である(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、伝達比可変機構モータの駆動により、伝達比を変更することができる。また、反力補償モータの駆動により、操舵部材に作用する反力を補償できる。
また、所定のセンサに対応する伝達比制御モータまたは反力補償モータが制御部によって所定の回転方向に第1目標角度回転された場合を考える。この場合、所定のセンサに異常がなければ、所定のセンサの変化量は、第1目標角度と略同じ値となる。一方、所定のセンサのロータ等が、固定されているべき部材から外れていること等により、所定のセンサに異常があれば、所定のセンサの検出値の変化量は、第1目標角度と大きくずれることになる。したがって、前記所定のセンサの検出値の変化量と前記第1目標角度との差が第1基準値を超えているときには、所定のセンサに異常が生じていると判定することができる。これにより、所定のセンサの異常をより確実に検出することができる。また、所定のセンサの異常を検出するための専用のセンサを設ける構成ではないので、部品点数を少なくでき、製造コストの点からも好ましい。
【0008】
例えば、上記所定のセンサが第1センサである場合、第1センサの異常を確実に検出できる。これにより、第1センサの異常に起因する伝達比の制御の異常を抑制できる。例えば、第1センサが、伝達比制御モータのモータロータと一体回転するセンサロータを含む場合、このセンサロータは、車両の悪路走行時の振動や経年劣化等によって、モータロータ等から抜け落ちるおそれがある。このとき、単に第1センサの出力が途切れたことで第1センサの異常を検出する構成であれば、センサロータが抜け落ちても、第1センサからの出力信号が発せられるので、第1センサの異常を検出できない。このような異常の下では、第1センサで伝達比制御モータの回転位置を検出することができない。その結果、第1センサで伝達比制御モータの回転位置を検出できないにも拘わらず、伝達比制御モータには、目標回転位置に到達するべく、制御電流が流れ続けることになり、伝達比制御モータに故障が生じる原因となる。
【0009】
これに対して、本発明では、単に第1センサの検出値がしきい値を超えているか否かを判定するのではなく、制御部から伝達比制御モータへの指令値である第1目標角度と、第1センサの検出値の変化量との比較により、第1センサに異常が生じているか否かを判定できる。したがって、第1センサの異常をより確実に検出できる。このため、第1センサで伝達比制御モータの回転位置を高い信頼性で検出することができる。その結果、伝達比制御モータが目標回転位置に到達すると、第1センサがその旨を検出し、伝達比制御モータへの制御電流が止まるというフィードバック制御を確実に維持できる。よって、伝達比制御モータにいつまでも電流が流れ続けることはない。これにより、伝達比制御モータの故障を抑制でき、且つ、適切な伝達比制御を実現できる。
【0010】
また、前記反力補償モータは前記入力軸に連結され、前記伝達比可変機構は、前記入力軸に連結される入力サンギヤと、この入力サンギヤと同軸に配置され前記出力軸に連結される出力サンギヤと、前記入力サンギヤおよび前記出力サンギヤの双方に噛み合う遊星ギヤと、この遊星ギヤを前記入力サンギヤの回りに公転可能且つ遊星ギヤの中心軸線回りに自転可能に支持するキャリアとを含み、前記伝達比制御モータのロータは、前記キャリアに一体回転可能に連結されてもよい。
【0011】
この場合、反力補償モータの出力は、入力軸を介して操舵部材に伝わり、操舵部材の反力を補償する。また、伝達比制御モータの出力は、キャリアおよび遊星ギヤを介して出力軸に伝わり、伝達比が制御される。
また、本発明において、前記制御部は、前記第1判定部で前記所定のセンサの異常の有無を判定した後、前記所定のセンサに対応する前記伝達比制御モータまたは前記反力補償モータを、前記所定の回転方向と反対の方向に所定の第1戻し角度(δ1,θvgr1+Δvgr1)回転させる場合がある(請求項2)。
【0012】
この場合、所定のセンサの異常の有無の判定に際し、対応する伝達比制御モータまたは反力補償モータを回転させるので、転舵輪も連動して動作してしまう。そこで、所定のセンサの異常の有無が判定された後は、上記対応する伝達比制御モータまたは反力補償モータの回転位置を、所定のセンサの異常の有無を判定する前の位置等に戻すようにしている。これにより、所定のセンサの異常の有無を判定すると、直接関係のない転舵輪の位置が変わってしまうという違和感を運転者に与えることを抑制できる。
【0013】
また、本発明において、前記操舵部材に作用するトルクを検出するトルクセンサ(30)をさらに備え、前記制御部は、前記トルクセンサの異常の有無を判定する第2判定部(50)を含み、前記第2判定部は、前記伝達比制御モータが前記制御部によって所定の回転方向に第2目標角度(δ2)回転された場合において、所定の基準トルク(k・δ2)と前記トルクセンサの検出値(T0’)との差が第2基準値(T2)を超えているときに、前記トルクセンサに異常が生じていると判定する場合がある(請求項3)。
【0014】
この場合、伝達比制御モータの駆動により、入力軸等にトルクが作用し、このトルクがトルクセンサによって検出される。トルクセンサに異常が生じていれば、伝達比制御モータの駆動によって、入力軸等がトルクを負荷されているにも拘わらず、トルクセンサの検出値がこのトルク変化に対応して変化しない。したがって、トルクセンサの異常をより確実に検出できる。
【0015】
前記所定の基準トルクは、前記第2目標角度に所定の係数を乗じた値であってもよい。この場合、第2目標角度に直接関連する値を基準トルクとして用いることができる。
また、本発明において、前記制御部は、前記第2判定部で前記トルクセンサの異常の有無を判定した後、前記伝達比制御モータを、前記所定の回転方向と反対の方向に所定の第2戻し角度(δ2,θgr3+Δθvgr2)回転させる場合がある(請求項4)。
【0016】
この場合、トルクセンサの異常の有無の判定に際し、伝達比制御モータを回転させるので、転舵輪も連動して動作してしまう。そこで、トルクセンサの異常の有無が判定された後は、伝達比制御モータの回転位置を、トルクセンサの異常の有無を判定する前の位置等に戻すようにしている。これにより、トルクセンサの異常の有無を判定すると、直接関係のない転舵輪の位置が変わってしまうという違和感を運転者に与えることを抑制できる。
【0017】
また、本発明において、前記伝達比制御モータの回転をロック可能なロック機構(25)をさらに備え、前記制御部は、前記センサに異常が生じていると判定したとき、前記ロック機構を駆動させることにより前記伝達比制御モータの回転をロックし、且つ、前記伝達比制御モータの駆動を停止させる場合がある(請求項5)。
この場合、伝達比制御モータや反力補償モータを正確に制御できないフェール状態において、ロック機構によって、伝達比をロック機構によって機械的に固定することができる。これにより、操舵部材による転舵機構の操作が可能な状態を維持できる。また、伝達比制御モータの駆動を停止するので、伝達比制御モータに駆動電流が流れ続けて故障することを防止できる。
【0018】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】伝達比可変機構の概略構成を示す一部断面図である。
【図3】(A)は、ロック機構の主要部の断面図であり、ロック機構がキャリアをロックしていない状態を示しており、(B)は、ロック機構がキャリアをロックしている状態を示している。
【図4】異常判定モードを設定する制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【図5】第1異常判定モードの制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【図6】(a)〜(e)は、それぞれ、異常判定モードを実行しているときの転舵輪の動作を説明するための模式図である。
【図7】第2異常判定モードの制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】伝達比制御モータの回転角度と、入力軸に作用するトルクとの関係を説明するためのグラフである。
【図9】フェールモードにおける制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の別の実施形態の主要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを有し、自動車等の車両の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸8とを有している。ピニオン軸7およびラック軸8によりラックアンドピニオン機構からなる転舵機構9が構成されている。
【0021】
ラック軸8は、車体に固定されるハウジング(図示せず)内に、複数の軸受(図示せず)を介して、軸方向X1に沿って直線往復動可能に支持されている。ラック軸8の各端部には、それぞれタイロッド10が結合されている。各タイロッド10は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪11に連結されている。
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック8aによって、ラック軸8の軸方向X1の直線運動に変換される。これにより、転舵輪11の転舵が達成される。
【0022】
また、車両用操舵装置1は、転舵機構9に操舵補助力を付与するための操舵補助機構12と、操舵部材2の操舵角に対する転舵輪11の転舵角の比(伝達比)を変更することのできる伝達比可変機構13とを備えている。伝達比可変機構13には、伝達比を変更することのできるブラシレスモータからなる所定のモータとしての伝達比制御モータ14が設けられている。また、伝達比可変機構13には、操舵部材2に操舵反力を付与することのできるブラシレスモータからなる反力補償モータ15が設けられている。
【0023】
ステアリングシャフト3は、操舵部材2と伝達比可変機構13との間に配置され操舵部材2の操舵に応じて回転する入力軸18と、伝達比可変機構13と中間軸5との間に配置され転舵機構9の動作に連動して回転する出力軸19とを含む。
入力軸18は、操舵部材2に一体回転可能に連結される第1軸18aと、第1軸18aにトーションバー20を介して連結される第2軸18bとを含む。トーションバー20を介した第1軸18aと第2軸18bの相対回転量は小さく、実質的に第1軸18aと第2軸18bとは一体回転していると考えることができる。
【0024】
操舵補助機構12は、ブラシレスモータからなる操舵補助モータ21と、操舵補助モータ21の出力回転を減速する減速機構22と、を含む。減速機構22は、例えば、ウォーム減速機構であり、操舵補助モータ21のロータ21aに一体回転可能に連結されるウォーム軸23と、出力軸19に一体回転可能に連結されウォーム軸23に噛み合うウォームホイール24とを含む。
【0025】
操舵補助モータ21は、減速機構22、出力軸19および中間軸5を介して転舵機構9に動力伝達可能に連結されている。操舵補助モータ21の出力は、減速機構22を介して出力軸19に伝達され、運転者の操舵を補助するようになっている。
車両用操舵装置1は、伝達比制御モータ14の回転をロック可能なロック機構25を備えている。
【0026】
また、車両用操舵装置1は、複数のセンサとして、トルクセンサ30、第1センサとしての第1レゾルバ31、第2センサとしての第2レゾルバ32、第3センサとしての第3レゾルバ33、伝達比制御モータ14の電流を検出する第1電流センサ34、反力補償モータ15の電流を検出する第2電流センサ35および走行状態センサ36を備えている。
トルクセンサ30は、トーションバー20に隣接して配置されており、トーションバー20のねじれに伴う第1軸18aと第2軸18bとの相対回転量を検出することで、操舵部材2に負荷される操舵トルクを検出する。
【0027】
第1レゾルバ31は、伝達比制御モータ14の後述するロータ14aの回転位置を検出するレゾルバであり、所定のセンサとして、伝達比制御モータ14に隣接して配置されている。伝達比制御モータ14は、第1レゾルバ31の検出値θvgrを用いるフィードバック制御により駆動制御される。
第2レゾルバ32は、反力補償モータ15の後述するロータ15aの回転位置を検出するレゾルバであり、反力補償モータ15に隣接して配置されている。反力補償モータ15は、第2レゾルバ32の検出値θreactを用いるフィードバック制御により駆動制御される。反力補償モータ15は、伝達比可変機構13の動作による操舵部材2の操舵反力(操舵反力の変化)を補償するためのモータである。
【0028】
第3レゾルバ33は、操舵補助モータ21のロータ21aの回転位置を検出するレゾルバであり、操舵補助モータ21に設けられている。操舵補助モータ21は、第3レゾルバ33の検出値θepsを用いるフィードバック制御により駆動制御される。
走行状態センサ36は、車両の走行状態(車速、転舵角、車両のヨーレート等の、車両用操舵装置1の制御に関連する車両走行状態)を検出するセンサであり、複数のセンサによって構成されている。
【0029】
車両用操舵装置1は、制御部37を備えている。制御部37は、伝達比制御モータ14、反力補償モータ15、およびロック機構25の動作を制御することにより操舵を制御する操舵制御部38と、操舵補助モータ21の動作を制御する操舵補助制御部39とを含んでいる。
操舵制御部38および操舵補助制御部39は、それぞれ電子制御ユニット(ECU:Electronic ControlUnit)により構成され、例えば車載ネットワーク40を介して互いに信号伝達可能に接続されている。
【0030】
操舵制御部38には、トルクセンサ30、第1レゾルバ31、第2レゾルバ32、第3レゾルバ33、第1電流センサ34、第2電流センサ35、および走行状態センサ36がそれぞれ接続されており、各センサ30〜36からの検出信号が、操舵制御部38に入力されるようになっている。
操舵制御部38は、ドライバ41を介して伝達比制御モータ14に接続されており、ドライバ42を介して反力補償モータ15に接続されている。また、制御部37の操舵制御部38は、ロック機構25と、ステアリングロック装置26と、報知手段としての警告ランプ44およびスピーカ45とに接続されている。
【0031】
操舵制御部38は、所定のプログラムを実行することによってソフトウェア的に実現される機能処理部として、伝達比制御部46と、反力制御部47と、モード設定部48と、第1判定部49と、第2判定部50と、カウンタ51と、を含んでいる。
伝達比制御部46は、伝達比を制御するべく、伝達比制御モータ14の駆動を制御するようになっている。反力制御部47は、操舵部材2に負荷される反力を制御するべく、反力補償モータ15の駆動を制御するようになっている。モード設定部48は、伝達比制御モータ14、反力補償モータ15および操舵補助モータ21の駆動を制御する主モードと、第1レゾルバ31およびトルクセンサ30の異常を判定する異常判定モードと、フェールモードとを択一的に設定するようになっている。
【0032】
車両用操舵装置1は、報知手段としての警告ランプ44およびスピーカ45を含んでいる。警告ランプ44およびスピーカ45は、操舵制御部38に接続されており、フェールモードにおいて、警告ランプ44が点灯するとともに、スピーカ45が警告音を発するようになっている。これにより、フェール状態を運転者に報知可能となっている。操舵補助制御部39は、ドライバ43を介して操舵補助モータ21に接続されている。
【0033】
また、ステアリングロック装置26は、入力軸18の回転を規制するために設けられた、いわゆるキーロック装置であり、車両の駐車時に操舵部材2および入力軸18の回転を規制することで、車両盗難を抑制する機能を有する。このステアリングロック装置26は、例えば、ソレノイドであり、ハウジング26aと、ロッド26bとを有している。ロッド26bは、ハウジング26aから突出し、入力軸18の第1軸18aに係合することができる。これにより、第1軸18aの回転を規制可能である。また、ロッド26bは、ハウジング26a内に退避しているときには、第1軸18aに係合せず、第1軸18aの回転を規制しない。ステアリングロック装置26は、操舵制御部38に接続されている。操舵制御部38は、ロッド26bと第1軸18aとの係合/非係合を制御する。
【0034】
図2は伝達比可変機構13の概略構成を示す一部断面図である。図2に示すように、入力軸18の第2軸18bおよび出力軸19は、互いの先端を相対向させて同軸上に配置されている。
伝達比可変機構13は、入力軸18の第2軸18bと出力軸19との間の伝達比を変更可能とされている。伝達比可変機構13は、全体として筒状をなすハウジング53に収容されている。
【0035】
伝達比可変機構13は、入力軸18の第2軸18bと同軸に並んで一体回転可能な入力サンギヤ54と、入力サンギヤ54と同軸に配置され、出力軸19と一体回転可能な出力サンギヤ55と、各サンギヤ54,55の双方に噛み合う遊星ギヤ56と、遊星ギヤ56を遊星ギヤ56の中心軸線L2回りに自転可能且つ各サンギヤ54,55の中心軸線L1回りに公転可能に支持するキャリア57と、を含んでいる。
【0036】
遊星ギヤ56は、入力サンギヤ54および出力サンギヤ55を互いに関連付けるためのものであり、中心軸線L1回りに複数(本実施の形態において、2つ)配置されている。入力サンギヤ54、出力サンギヤ55および遊星ギヤ56は、キャリア57の回転がロックされているときに、入力サンギヤ54と出力サンギヤ55の回転伝達比が例えば1になるように設計されている。
【0037】
キャリア57は、筒状に形成されており、出力軸19が挿通されている。キャリア57は、各サンギヤ54,55の中心軸線L1の回りを回転可能である。キャリア57は、第1軸受58を介してハウジング53に支持され、且つ各遊星ギヤ56の支軸56aの一端を支持する第1部分57aと、支軸56aの他端を支持する第2部分57bと、第2部分57bから減速機構22に向けて延び第2軸受59を介してハウジング53に支持される第3部分57cと、を含んでいる。
【0038】
キャリア57の第2部分57bを取り囲むようにして、伝達比制御モータ14が配置されている。伝達比制御モータ14は、第2部分57bの外周に一体回転可能に連結されたロータ14aと、ロータ14aを取り囲みハウジング53に固定されたステータ14bとを含んでいる。伝達比制御モータ14の駆動によって、キャリア57が中心軸線L1回りを回転するようになっている。
【0039】
伝達比制御モータ14に関連して、第1レゾルバ31が配置されている。第1レゾルバ31は、キャリア57の第3部分57cの外周に一体回転可能に連結されたロータ31aと、ロータ31aを取り囲みハウジング53に固定されたステータ31bとを含んでいる。キャリア57に伝達比制御モータ14のロータ14aおよび第1レゾルバ31のロータ31aの双方が連結されていることにより、第1レゾルバ31は、キャリア57の回転位置(回転角)および伝達比制御モータ14のロータ14aの回転位置を検出することが可能である。
【0040】
伝達比制御モータ14に対して入力軸18側(図2の右側)には、反力補償モータ15が配置されている。反力補償モータ15は、入力軸18の第2軸18bの外周に連結されたロータ15aと、ロータ15aを取り囲みハウジング53に固定されたステータ15bとを含んでいる。
反力補償モータ15に隣接して、第2レゾルバ32が配置されている。第2レゾルバ32は、第2軸18bの外周に連結されたロータ32aと、ロータ32aを取り囲みハウジング53に固定されたステータ32bとを含んでいる。第2軸18bに反力補償モータ15のロータ15aおよび第2レゾルバ32のロータ32aの双方が連結されていることにより、第2レゾルバ32は、入力軸18の回転位置(転舵角)および反力補償モータ15のロータ15aの回転位置を検出することが可能である。
【0041】
第3レゾルバ33は、第1レゾルバ31および第2レゾルバ32と同様の構成を有している。より具体的には、第3レゾルバ33は、図示していないけれども、ロータおよびステータを有している。このロータは、操舵補助モータ21のロータ21aに一体回転可能に連結され、ステータは、操舵補助モータ21のモータハウジングに固定されている。
ロック機構25は、フェール時にキャリア57の回転をロックすることにより、入力軸18と出力軸19との間の伝達比を所定値(本実施形態において、1)に固定するためのものである。
【0042】
図3(A)は、ロック機構25の主要部の断面図であり、ロック機構25がキャリア57をロックしていない状態を示している。図2および図3(A)を参照して、ロック機構25は、キャリア57の第3部分57cに一体回転可能に連結されたリング部材60と、このリング部材60に係合可能なロッド61aを有するソレノイド61とを含んでいる。
リング部材60の外周には、複数の溝60aが周方向に等間隔に複数配置されている。ソレノイド61は、ハウジング53に取り付けられている。ソレノイド61は、ロッド61aと、電磁石と、ロッド61aをリング部材60に向けて付勢するばね(図示せず)とを含んでおり、操舵制御部38(図1参照)によって駆動制御される。
【0043】
図2および図3(B)を参照して、車両の電源オフ時には、ばねの付勢力によって、ロッド61aがリング部材60の溝60aに嵌まるようになっている。フェール時も同様に、ロッド61aがリング部材60の溝60aに嵌まるようになっている。一方、主モード時には、図3(A)に示すように、ソレノイド61の駆動により、ロッド61aがリング部材60に係合しない位置に配置されるようになっている。これにより、ロッド61aがキャリア57の回転を規制しないようになっている。
【0044】
図2を参照して、主モード時、操舵部材2が操舵されると、この操舵部材2に連結された入力軸18が回転する。これにより、伝達比可変機構13の入力サンギヤ54が回転する。
このとき、操舵制御部38の伝達比制御部46は、操舵制御部38に接続された各センサ30〜36からの入力信号等に基づいて、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15の目標駆動量を設定する。そして、操舵制御部38は、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15のロータ14a,15aの回転位置と目標回転位置との偏差がゼロになるように、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15を駆動する。
【0045】
この操舵制御部38の制御により、伝達比制御モータ14のロータ14aが回転されない場合がある。この場合、入力サンギヤ54の回転により、各遊星ギヤ56、出力サンギヤ55および出力軸19が回転する。
このとき、入力軸18から出力軸19への回転伝達比は、前述の所定の伝達比(例えば、1)である。この結果、転舵輪11は、操舵部材2の操作方向に、この操舵部材2の操舵角に前記回転比を乗じた角度相当分だけ転舵されることになり、操舵部材2から操舵用の転舵輪11への伝達比は一定値となる。
【0046】
一方、操舵制御部38の伝達比制御部46の制御により、伝達比制御モータ14を駆動することでキャリア57を回転させた場合、入力軸18から出力軸19への回転伝達は、前述した所定の伝達比からキャリア57の回転分だけ増減された伝達比にてなされる。これにより、入力軸18および出力軸19間の伝達比、すなわち操舵部材2から転舵輪11への伝達比を無段階に変更することができることになる。
【0047】
また、伝達比制御モータ14の駆動に伴う操舵部材2への反力を補償するために、反力制御部47は、反力補償モータ15を駆動する。これにより、伝達比制御モータ14の駆動に伴う操舵部材2のトルク変動を打ち消すように、反力トルクが入力軸18に伝達される。これにより、運転者の違和感が軽減される。
次に、車両用操舵装置1の主な制御の流れを説明する。
【0048】
以下では、操舵制御部38による、(1)異常判定モードを設定する制御の流れと、(2)異常判定モードでの制御の流れと、(3)フェールモードでの制御の流れと、を説明する。
なお、本実施形態では、所定のセンサとしての第1レゾルバ31の異常判定に関連する制御の流れを説明する。
【0049】
図4は、上記(1)の異常判定モードを設定する制御の流れを説明するためのフローチャートである。図4に示すように、車両のイグニッションキーがオンにされると(ステップS1)、モード設定部48は、主モードを設定する(ステップS2)。これにより、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15を、車両の走行状態に応じて制御する前述の主モードが設定される。
【0050】
次いで、操舵制御部38は、走行状態センサ36から、走行状態に関する信号を読み込む(ステップS3)。この場合の走行状態に関する信号として、例えば、車速、オートマチックトランスミッション(AT)車のシフトレバーの位置信号、および車両のサイドブレーキの信号を例示することができる。
車速がゼロで、シフトレバーがパーキング位置にあり、且つ、サイドブレーキがかけられていること等により、車両の停止状態が継続していると判定されると(ステップS4でYES)、操舵制御部38のモード設定部48は、異常判定モードを設定する(ステップS5)。
【0051】
次いで、上記(2)の異常判定モードについて説明する。異常判定モードは、第1レゾルバ31に異常が生じているか否かを判定するモードである。異常判定モードは、第1異常判定モードと第2異常判定モードとを含んでいる。
図5は、第1異常判定モードの制御の流れを説明するためのフローチャートである。図5に示すように、第1異常判定モードおいて、操舵制御部38は、まず、所定のモータとしての伝達比制御モータ14に対応する第1レゾルバ31の検出値θvgr1を読み込む(ステップQ1)。このとき、図6(a)に示すように、車両100の転舵輪11は、例えば車両直進方向に沿っており、θvgr1=ゼロである。
【0052】
次いで、操舵制御部38によって、伝達比制御モータ14のロータ14aが、一方向(例えば、操舵部材2から見て時計回り)に第1目標角度δ1(deg)回転される(ステップQ2)。第1目標角度δ1は、例えば、数(deg)〜100(deg)程度である。このとき、伝達比制御モータ14は、第1レゾルバ31を用いないオープンループ制御によって、回転駆動される。これにより、図6(b)に示すように、車両100の転舵輪11は、時計回りに、第1目標角度δ1に対応する角度δ1’回転される。すなわち、伝達比制御モータ14のロータ14aが回転されると、この回転がキャリア57や出力軸19等を介してピニオン7aに伝わり、ラック軸8が変位する。これにより、車両100の転舵輪11が時計回りに回転する。
【0053】
伝達比制御モータ14のロータ14aがオープンループ制御によって一方向に第1目標角度δ1(deg)回転された後、第1判定部49は、第1レゾルバ31の検出値θvgr2を読み込む(ステップQ3)。その後、第1判定部49は、伝達比制御モータ14のロータ14aが第1目標角度δ1回転される前後での第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1=|θvgr1−θvgr2|を算出する(ステップQ4)。
【0054】
なお、第1レゾルバ31の検出値θvgrからは、図6(c)に示すように、第1レゾルバ31の検出値θvgr1に対応する転舵輪11の転舵角θvgr1’を推定できる。また、第1レゾルバ31の検出値θvgr2に対応する転舵輪11の転舵角θvgr2’を推定できる。さらに、Δθvgr1=|θvgr1−θvgr2|に対応する転舵輪11の転舵角の変位量Δθvgr1’を推定できる。
【0055】
次いで、第1判定部49によって、第1レゾルバ31がフェール条件を満たしているか否かが判定される(ステップQ5)。具体的には、第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1と、第1目標角度δ1との差|Δθvgr1−δ1|が第1基準値θ1以下であるか否かが判定される。第1基準値θ1は、例えば、角度にして数十分である。
第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1と、第1目標角度δ1との差|Δθvgr1−δ1|が第1基準値θ1以下である場合(ステップQ5でYES)、第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1は、第1目標角度δ1と実質的に等しいといえる。したがって、第1レゾルバ31は正常であり、フェール条件を満たしていないと判定される。この場合、第1フェールカウンタ値no1_fail_cntは加算されず、カウンタ値cnt1が1加算される(ステップQ6)。
【0056】
一方、ステップQ5で、第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1と、第1目標角度δ1との差|Δθvgr1−δ1|が第1基準値θ1を超えている場合(ステップQ5でNO)、第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1は、第1目標角度δ1と大きく異なっているといえる。例えば、第1レゾルバ31のロータ31aがキャリア57に対して外れて空転している場合に、このような事態が生じ得る。したがって、第1判定部49は、第1レゾルバ31に異常が生じており、フェール条件を満たしていると判定する。この場合、第1フェールカウンタ値no1_fail_cntが1追加され(ステップQ7)、その後、cnt1が1加算される(ステップQ6)。
【0057】
次いで、操舵制御部38は、伝達比制御モータ14のロータ14aを、ステップQ2のときとは反対方向に、所定の第1戻し角度としての角度δ1だけ回転させる(ステップQ8)。これにより、転舵輪11は、図6(d)に示すように、第1目標角度δ1に対応するδ1’だけ、反時計回りに回転され、第1異常判定モードが実行される直前の位置に戻る。
【0058】
次いで、カウンタ値cnt1が第1所定値c1に達したか否かが第1判定部49によって判定される(ステップQ9)。なお、ステップQ1〜Q9は、例えば、10(msec)周期で行われる。第1所定値c1は、例えば、10である。カウンタ値cnt1が第1所定値c1未満である場合(ステップQ9でNO)、ステップQ1に戻る。
一方、ステップQ1〜Q9が繰り返され、カウンタ値cnt1が第1所定値c1に達した場合、(ステップQ9でYES)、操舵制御部38は、第1フェールカウンタ値no1_fail_cntがゼロであるか否かを判定する(ステップQ10)。ステップQ5でフェール条件が満たされるとの判定が一度でもされており、第1フェールカウンタ値no1_fail_cntがゼロでない場合(ステップQ10でNO)、モード設定部48によって、フェールモードが設定される(ステップQ11)。
【0059】
一方、ステップQ5では、フェール条件が満たされるとの判定が一度もされておらず、第1フェールカウンタ値no1_fail_cntがゼロである場合(ステップQ10でYES)、ステップQ12に進む。ステップQ12では、操舵制御部38は、伝達比制御モータ14のロータ14aを、ステップQ2のときとは反対方向に(θvgr1+Δθvgr1)(deg)回転させる。
【0060】
ここで、ステップQ12を設ける意義について説明する。第1異常判定モードでは、第1レゾルバ31の回転角センサを用いるフィードバック制御を行っていない。このため、伝達比可変機構13の駆動により微小なバックラッシがラック軸8に発生している可能性がある。ステップQ12においては、ステップQ5の|Δθvgr1−δ1|が第1基準値θ1以下であり、第1レゾルバ31が正常であることが分かっている。そこで、第1レゾルバ31を用いて伝達比制御モータ14をフィードバック制御する。これにより、ステップQ1〜Q9を経ることで発生していると予想される微小なバックラッシをΔθvgr1(=|θvgr1−θvgr2|)として算出する。そして、このΔθvgr1を用いて転舵輪11を、第1異常判定モード実行前の位置に戻す。これが、ステップQ12の目的である。
【0061】
なお、ステップQ12は、第1レゾルバ31が正常であるときに実行されるので、省略されてもよい。一方で、第1異常判定モード実行後のθvgr1がより高い信頼性を要求されるときには、ステップQ12を積極的に用いてもよい。目標角度δ1ではなく、実際の検出値(θvgr1+Δθvgr1)を用いている点に意味がある。
ステップQ12の後、操舵制御部38は、カウンタ値cnt1および第1フェールカウンタ値no1_fail_cntをそれぞれゼロにクリアし(ステップQ13)、モード設定部48によって、第2異常判定モードを設定する(ステップQ14)。
【0062】
図7は、第2異常判定モードの制御の流れを説明するためのフローチャートである。図7に示すように、第2異常判定モードおいて、操舵制御部38は、まず、第1レゾルバ31の検出値θvgr3を読み込む(ステップR1)。
次いで、操舵制御部38は、ロック機構25のソレノイド61を制御することで、ロッド61aを、リング部材60の溝60aに刺す(ステップR2)。これにより、リング部材60の回転が規制される。
【0063】
次いで、操舵制御部38によって、伝達比制御モータ14のロータ14aが、一方向(例えば、操舵部材2から見て時計回り)に第2目標角度δ2(deg)回転される(ステップR3)。第2目標角度δ2は、数(deg)、例えば5(deg)程度である。
このとき、伝達比制御モータ14は、第1レゾルバ31を用いたフィードバック制御によって、回転駆動される。
【0064】
伝達比制御モータ14のロータ14aが一方向に第2目標角度δ2(deg)回転された後、第2判定部50は、トルクセンサ30の検出値T0’を読み込む(ステップR4)。
次いで、第2判定部50によって、トルクセンサ30がフェール条件を満たしているか否かが判定される(ステップR5)。具体的には、伝達比制御モータ14のロータ14aが第2目標角度δ2回転された後のトルクセンサ30の検出値T0’と、第2目標角度δ2に所定の係数kを乗じた値(基準トルク)k・δ2との差|k・δ2−T0’|が、第2基準値T2以下であるか否かが判定される。第2基準値T2は、例えば、1(N・m)である。係数kは、伝達比可変機構13の各ギヤ54,55,56の歯数や入力軸18のねじれ剛性等に応じて適宜設定される。上記のように、第2基準値T2は、1(N・m)程度の小さい値である。したがって、操舵部材2や入力軸18の第2軸18bは、第2軸18bが軸受等から受ける摩擦抵抗によって、実質的に回転規制されている。このとき、伝達比制御モータ14のロータ14aの回転角度θと、入力軸18に作用するトルクTとは、例えば、図8に示すグラフに沿ったものとなる。
【0065】
図7に示すように、|k・δ2−T0’|が第2基準値T2以下である場合(ステップR5でYES)、トルクセンサ30の検出値T0’は、ロータ14aを第2目標角度δ2回転させたときに入力軸18に生じるトルクと実質的に等しいといえる。したがって、トルクセンサ30は正常であり、フェール条件を満たしていないと判定される。この場合、第2フェールカウンタ値no2_fail_cntは追加されず、カウンタ値cnt2が1追加される(ステップR6)。
【0066】
一方、ステップR5で、入力軸18の実際のトルクk・δ2と、トルクセンサ30での検出値T0’との差|k・δ2−T0’|が第2基準値θ2を超えている場合(ステップR5でNO)、トルクセンサ30の検出値T0’は、入力軸18の実際のトルクと大きく異なっているといえる。例えば、トルクセンサ30のうち、入力軸18に結合されているはずの部材(検出リング等)が入力軸18に対して空転している場合に、このような事態が生じ得る。したがって、第2判定部50は、トルクセンサ30に異常が生じており、フェール条件を満たしていると判定する。この場合、第2フェールカウンタ値no2_fail_cntが1追加され(ステップR7)、その後ステップR6に進む。
【0067】
ステップR6でカウンタ値cnt2が1追加された後、操舵制御部38は、伝達比制御モータ14のロータ14aを、ステップR3のときとは反対方向に、所定の第2戻し角度としてのδ2だけ回転させる(ステップR8)。
これにより、車両100の転舵輪11は、ステップR3で転舵される前の位置に戻される。
【0068】
次いで、カウンタ値cnt2が第2所定値c2に達したか否かが第2判定部50によって判定される(ステップR9)。第2所定値c2は、例えば、10である。カウンタ値cnt2が第2所定値c2未満である場合(ステップR9でNO)、ステップR3に戻る。一方、ステップR3〜R9が繰り返され、カウンタ値cnt2が第2所定値c2に達した場合、(ステップR9でYES)、操舵制御部38は、第2フェールカウンタ値no2_fail_cntがゼロであるか否かを判定する(ステップR10)。ステップR5でフェール条件が満たされるとの判定が一度でもされており、第2フェールカウンタ値no2_fail_cntがゼロでない場合(ステップQ10でNO)、モード設定部48によって、フェールモードが設定される(ステップR11)。
【0069】
一方、ステップR5では、フェール条件が満たされるとの判定が一度もされておらず、第2フェールカウンタ値no2_fail_cntがゼロである場合(ステップR10でYES)、ステップR12に進む。ステップR12では、操舵制御部38は、伝達比制御モータ14のロータ14aを、ステップR3のときとは反対方向に(θvgr3+Δθvgr2)(deg)回転させる。
【0070】
ここで、ステップR12を設ける意義について説明する。第2異常判定モードでは、第1レゾルバ31を用いている。一方で、リング部材60の回転がロックされることで、伝達比可変機構13を介して入力軸18と出力軸19とが動力伝達可能に連結されている。このため、トーションバー20や各軸18,19を支持する軸受等の影響により、ステップR1〜R10の終了後に、微小なバックラッシがラック軸18に発生している可能性がある。そこで、伝達比制御モータ14をフィードバック制御し、R1〜R10を経た直後の第1レゾルバ31の検出値θvgr4(図6(e)参照)を読み込む。そして、ステップR1〜R10を経ることで発生していると予想される微小なバックラッシを、Δθvgr2(=|θvgr3−θvgr4|)とみなして算出する。そして、伝達比制御モータ14のロータ14aをステップR3のときとは反対方向にθvgr3+Δθvgr2回転することで、転舵輪11を、第2異常判定モードを実行する前の位置(θvgr3に対応する位置)に戻す。これが、ステップR12を設ける意義である。
【0071】
なお、ステップR12は、トルクセンサ30が正常である状態、換言すれば、バックラッシ等が許容範囲内に入っている状態でのステップであるので、省略されてもよい。一方で、第2異常判定モード実行後のθvgr3がより高い信頼性を要求されるときには、ステップQ12を積極的に用いてもよい。目標角度δ2ではなく、実際の検出角(θvgr3+Δθvgr2)を用いている点に意味がある。
【0072】
第1異常判定モードでのθvgr1を用いてΔθvgr2を求めれば、第2異常判定モード終了後の転舵輪11の転舵角における信頼性をより高く確保できる。
ステップR12の後、操舵制御部38は、カウンタ値cnt2および第2フェールカウンタ値no2_fail_cntをそれぞれゼロにクリアする(ステップR13)。次いで、ソレノイド61のロッド61aによるリング部材60のロックを解除し(ステップR14)、モード設定部48によって、主モードが設定される(ステップR15)。
なお、ステップR3〜R9は、例えば、10(msec)周期で行われる。
【0073】
図9は、フェールモードにおける制御の流れを説明するためのフローチャートである。図9に示すように、フェールモードでは、まず、キャリア57の回転がロックされる(ステップT1)。具体的には、ロック機構25のソレノイド61がオフにされる。これにより、ソレノイド61のロッド61aがばねの付勢力によってリング部材60の溝60aに入り、キャリア57および伝達比制御モータ14のロータ14aがロック(回転規制)される。したがって、操舵部材2の回転は、入力軸18、入力サンギヤ54に伝わり、さらに、自転可能且つ公転不能にされた各遊星ギヤ56を介して出力サンギヤ55に伝わる。この出力サンギヤ55の回転は、出力軸19等を介して転舵機構9に伝達され、その結果、転舵輪10が操向される。
【0074】
フェール発生に伴う操舵制御及び反力制御の停止時における緊急の操舵を、操舵部材2から転舵機構9への機械的な動力伝達によるマニュアル操舵によって行わせることができる。
次いで、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15への電力の供給が停止される(ステップT2)。
【0075】
このように、伝達比制御モータ14に加えて反力補償モータ15への電流の供給を停止している。第1レゾルバ31等を用いた伝達比制御モータ14のフィードバック制御が不可であることにより、反力補償モータ15による反力制御を適切に行えない状態において、反力補償モータ15が駆動されることを防止している。
次いで、警告ランプ44が点灯されるとともに、スピーカ45から警告音が発せられることで、フェールモードに移行したことが運転者に報知される(ステップT3)。これにより、車両を整備工場に入庫させることを運転者に促すことができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、主モードにおいて、伝達比制御モータ14の駆動により、伝達比を変更することができる。また、反力補償モータ15の駆動により、伝達比可変機構13の駆動によって生じる操舵部材2への反力の変動を補償できる。さらに、操舵補助モータ21の駆動により、運転者による操舵部材2の操舵をアシストすることができる。これにより、車両の走行状態に応じて適切な伝達比を実現しつつ、運転者に違和感の無い操舵フィーリングを与えることができ、且つ、運転者が少ない力で容易に操舵部材2を操作することができる。
【0077】
また、第1異常判定モード時、伝達比制御モータ14が操舵制御部38によって所定の回転方向に第1目標角度δ1回転される。第1レゾルバ31に異常がなければ、第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1は、第1目標角度δ1と略同じ値となる。一方、第1レゾルバ31のロータ31a等が、キャリア57から外れていること等により、第1レゾルバ31に異常があれば、第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1は、第1目標角度δ1と大きくずれることになる。したがって、第1レゾルバ31の検出値の変化量Δθvgr1と第1目標角度δ1との差が第1基準値θ1を超えているときには、第1レゾルバ31に異常が生じていると判定することができる。
【0078】
これにより、第1レゾルバ31の異常をより確実に検出することができる。また、第1レゾルバ31の異常を検出するための専用のセンサを設ける構成ではないので、部品点数を少なくでき、製造コストの点からも好ましい。
上記のように、第1レゾルバ31の異常をより確実に検出できるようにされているので、第1レゾルバ31の異常に起因する伝達比の制御の異常を抑制できる。第1レゾルバ31のロータ31aは、車両の悪路走行時の振動や経年劣化等によって、キャリア57から抜け落ちるおそれがある。このとき、単に第1レゾルバ31の出力が途切れた(ゼロになった)ことで第1レゾルバ31の異常を検出する構成であれば、ロータ31aが抜け落ちても、第1レゾルバ31からは出力信号が発せられるので、第1レゾルバ31の異常を検出できない。
【0079】
しかしながら、このような異常の下では、第1レゾルバ31で伝達比制御モータ14の回転位置を検出することができない。その結果、第1レゾルバ31で伝達比制御モータ14の回転位置を検出できないにも拘わらず、伝達比制御モータ14には、目標回転位置に到達するべく、制御電流が流れ続けることになり、伝達比制御モータ14に故障が生じる原因となる。
【0080】
これに対して、本実施形態では、単に第1レゾルバ31の検出値θvgrがしきい値を超えているか否かを判定するのではなく、操舵制御部38から伝達比制御モータ14への指令値である第1目標角度δ1と、第1レゾルバ31の検出値θvgrの変化量Δθvgr1との比較により、第1レゾルバ31に異常が生じているか否かを判定できる。したがって、第1レゾルバ31の異常をより確実に検出できる。このため、第1レゾルバ31で伝達比制御モータ14の回転位置を高い信頼性で検出することができる。その結果、伝達比制御モータ14が目標回転位置に到達すると、第1レゾルバ31がその旨を検出し、伝達比制御モータ14への制御電流が止まるというフィードバック制御を確実に維持できる。
【0081】
よって、伝達比制御モータ14にいつまでも電流が流れ続けることはない。これにより、伝達比制御モータ14の故障を抑制でき、且つ、適切な伝達比制御を実現できる。
また、操舵制御部38は、第1判定部49で第1レゾルバ31の異常の有無を判定した後、伝達比制御モータ14のロータ14aを、所定の回転方向と反対の方向に第1目標角度δ1またはθvgr1+Δθvgr1だけ回転させる。
【0082】
本実施形態では、第1レゾルバ31の異常の有無の判定に際し、伝達比制御モータ14を回転させるので、転舵輪11も連動して動作してしまう。そこで、第1レゾルバ31の異常の有無が判定された後は、伝達比制御モータ14の回転位置を、第1レゾルバ31の異常の有無を判定する前の位置や直進位置に戻すようにしている。これにより、第1レゾルバ31の異常の有無を判定すると、直接関係のない転舵輪11の位置が変わってしまうという違和感を運転者に与えることを抑制できる。
【0083】
さらに、第1レゾルバ31の異常の有無を最大で第1所定値c1回行うけれども、第1レゾルバ31の異常の有無を判定する度に、伝達比制御モータ14のロータ14aの回転位置を、第1レゾルバ31の異常の有無を判定する前の状態に戻している(ステップQ8)。これにより、第1レゾルバ31の異常の有無を判定する度に転舵輪11の向きが一方向に変化し続けることを防止できる。これにより、第1レゾルバ31の異常の有無の判定中に転舵輪11が最も転舵された状態になってこの異常の有無の判定ができなくなることを抑制できる。
【0084】
また、第2異常判定モードにおいて、第2判定部50は、伝達比制御モータ14が操舵制御部38によって所定の回転方向に第2目標角度δ2回転された場合において、基準トルクk・δ2とトルクセンサ30の検出値T0’との差|k・δ2−T0’|が第2基準値θ2を超えているときに、トルクセンサ30に異常が生じていると判定する。
この場合、伝達比制御モータ14の駆動により、入力軸18にトルクが作用し、このトルクがトルクセンサ30によって検出される。トルクセンサ30に異常が生じていれば、伝達比制御モータ14の駆動によって、入力軸18がトルクを負荷されているにも拘わらず、トルクセンサ30の検出値T0’がこのトルク変化に対応して変化しない。したがって、トルクセンサ30の異常をより確実に検出できる。
【0085】
トルクセンサ30が操舵トルクを正確に検出することが、伝達比可変制御の上で重要である。したがって、このトルクセンサ30に異常が生じているときには、そのことを確実に検出できるようにする必要がある。この構成では、トルクセンサ30の異常を確実に検出できる。その結果、誤ったトルク検出結果によって伝達比可変制御が行われることを抑制できる。
【0086】
また、操舵制御部38は、第2判定部50でトルクセンサ30の異常の有無を判定した後、伝達比制御モータ14を、所定の回転方向と反対の方向に第2目標角度δ2またはθvgr3+Δθvgr2だけ回転させる。
本実施形態では、トルクセンサ30の異常の有無の判定に際し、伝達比制御モータ14を回転させるので、転舵輪11も連動して動作してしまう。そこで、トルクセンサ30の異常の有無が判定された後は、伝達比制御モータ14の回転位置を、トルクセンサ30の異常の有無を判定する前の位置等に戻すようにしている。これにより、トルクセンサ30の異常の有無を判定すると、直接関係のない転舵輪11の位置が変わってしまうという違和感を運転者に与えることを抑制できる。
【0087】
また、操舵制御部38は、第1レゾルバ31およびトルクセンサ30の少なくとも一方に異常が生じていると判定したとき、ロック機構25を駆動させることにより伝達比制御モータ14のロータ14aの回転をロックし、且つ、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15の駆動を停止させる。
これにより、伝達比制御モータ14や反力補償モータ15を正確に制御できないフェール状態において、ロック機構25によって、伝達比を機械的に固定することができる。これにより、操舵部材2による転舵機構9の操作が可能な状態を維持できる。また、伝達比制御モータ14の駆動を停止するので、伝達比制御モータ14に駆動電流が流れ続けて故障することを防止できる。
【0088】
本発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、第1レゾルバ31の異常を検出したけれども、これに限定されない。第1異常判定モードにおいて、第2レゾルバ32の異常を検出するようにしてもよい。この場合、所定のセンサが第2レゾルバ32となり、所定のモータが反力補償モータ15になる点以外は、上記実施形態と同様である。
【0089】
また、第2異常判定モードにおいて、ステアリングロック装置26を用いて第1軸18の入力軸18aの回転を規制してもよい。また、第2異常判定モードにおいて、図10に示すように、入力軸18の第1軸18aに反力補償モータ15を設け、この反力補償モータ15の回転をロックさせることにより、入力軸18aの回転を規制してもよい。
さらに、伝達比制御モータ14を制御できないときに、操舵補助モータ21を伝達比可変モータとして用いてもよい。
【0090】
また、第1センサ、第2センサおよび第3センサとしてレゾルバを用いる構成を例示したけれども、これに限定されない。第1〜第3センサとして、対応するモータ14,15,21の回転位置を検出可能な他の一般のセンサを用いてもよい。
さらに、本実施形態では、ステアリングシャフト3の出力軸19から転舵機構9に操舵補助力を負荷するコラムアシストタイプの操舵補助機構12を説明したけれども、これに限定されない。例えば、ピニオン軸7やラック軸8から転舵機構9に操舵補助力を負荷する構成でもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…車両用操舵装置、2…操舵部材、9…転舵機構、13…伝達比可変機構、14…伝達比制御モータ、15…反力補償モータ、18…入力軸、19…出力軸、25…ロック機構、30…トルクセンサ、31…第1レゾルバ(第1センサ)、32…第2レゾルバ(第2センサ)、37…制御部、49…第1判定部、50…第2判定部、θreact…第2レゾルバの検出値、θvgr…第1レゾルバの検出値、Δθvgr1…第1レゾルバの検出値の変化量(所定のセンサの検出値の変化量)、θ1…第1基準値、δ1…第1目標角度(第1戻し角度)、δ2…第2目標角度(第2戻し角度)、k・δ2…基準トルク、T0’…トルクセンサの検出値、T2…第2基準値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材の操舵に応じて回転する入力軸と転舵機構の動作に連動して回転する出力軸との間に介在し、入力軸および出力軸間の伝達比を変更可能な伝達比可変機構と、
前記伝達比可変機構の前記伝達比を変更するための伝達比制御モータと、
前記伝達比制御モータの回転位置を検出する第1センサと、
前記伝達比可変機構の動作による前記操舵部材の操舵反力を補償するための反力補償モータと、
前記反力補償モータの回転位置を検出する第2センサと、
前記伝達比制御モータおよび前記反力補償モータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1センサまたは前記第2センサからなる所定のセンサの異常の有無を判定する第1判定部を含み、
前記第1判定部は、前記所定のセンサに対応する前記伝達比制御モータまたは前記反力補償モータが前記制御部によって所定の回転方向に第1目標角度回転された場合において、前記所定のセンサの検出値の変化量と前記第1目標角度との差が第1基準値を超えているときに、前記所定のセンサに異常が生じていると判定することを特徴とする、車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御部は、前記第1判定部で前記所定のセンサの異常の有無を判定した後、前記所定のセンサに対応する前記伝達比制御モータまたは前記反力補償モータを、前記所定の回転方向と反対の方向に所定の第1戻し角度回転させることを特徴とする、車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記操舵部材に作用するトルクを検出するトルクセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記トルクセンサの異常の有無を判定する第2判定部を含み、
前記第2判定部は、前記伝達比制御モータが前記制御部によって所定の回転方向に第2目標角度回転された場合において、所定の基準トルクと前記トルクセンサの検出値との差が第2基準値を超えているときに、前記トルクセンサに異常が生じていると判定することを特徴とする、車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項3において、前記制御部は、前記第2判定部で前記トルクセンサの異常の有無を判定した後、前記伝達比制御モータを、前記所定の回転方向と反対の方向に所定の第2戻し角度回転させることを特徴とする、車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項において、前記伝達比制御モータの回転をロック可能なロック機構をさらに備え、
前記制御部は、前記センサに異常が生じていると判定したとき、前記ロック機構を駆動させることにより前記伝達比制御モータの回転をロックし、且つ、前記伝達比制御モータの駆動を停止させることを特徴とする、車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−6430(P2012−6430A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141909(P2010−141909)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】