説明

車両用灯具

【課題】安価な構成で所望の歩行者に対して情報を送信する。
【解決手段】車両用前照灯装置100は、光源を有し、車両進行方向に可視光を照射可能な前照灯ユニット210と、歩行者が携帯する受光部付き携帯機器に、前照灯ユニット210から照射された可視光を用いて信号を送信する信号送信部104と、を備える。信号送信部104が送信する信号には、自車両の存在を報知するための情報を含んでいてもよい。また、車両用前照灯装置100は、信号送信部104からの信号を受けて携帯機器が送信した歩行者信号を受信する信号受信部106と、前照灯ユニット210による配光パターンの形成を制御する照射制御部228と、を備え、照射制御部228が、信号受信部106による歩行者信号の受信状況に応じて前照灯ユニット210による配光パターンの形成を制御してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に、自動車などに用いられる車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両間、あるいは車両と歩行者との間で無線通信を行うことにより、互いに情報を送受信する技術が知られている。例えば、特許文献1には、1の他車からの無線信号を、別の他車に対して中継する技術が開示されている。特許文献2には、運転者や歩行者の携帯電話が位置情報を情報サーバに送信し、情報サーバが、位置情報を送信した携帯電話と交錯する可能性のある他の運転者や歩行者の携帯電話に対して警報情報を発信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−357298号公報
【特許文献2】特開2002−304700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両から特定の歩行者に対して情報を送信しようとした場合、自車に搭載された無線通信装置から情報信号を送信する特許文献1の構成では全方位的に情報信号が送信されるため、情報送信対象から除外したい歩行者に対しても情報を送信してしまう場合があった。例えば、歩行者に自車の接近を報知しようとした場合、上述の特許文献1の構成では、自車の進行方向にいない歩行者、すなわち自車が接近しない歩行者に対しても自車の接近を報知してしまう場合があった。これに対し、上述の特許文献2のように、情報サーバにおいて警報情報を発信すべき対象を特定する構成であれば、このような問題は解消され得るが、非常にコストがかかるという問題があった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価な構成で所望の歩行者に対して情報を送信することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、光源を有し、車両進行方向に可視光を照射可能な照明ユニットと、歩行者が携帯する受光部付き携帯機器に、照明ユニットから照射された可視光を用いて信号を送信する信号送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、安価な構成で所望の歩行者に対して情報を送信することができる。
【0008】
上記態様において、信号は、自車両の存在を報知するための情報を含んでもよい。これによれば、車両が接近していく歩行者に対してのみに自車両の存在を報知することができる。
【0009】
上記態様において、信号送信部からの信号を受けて携帯機器が送信した歩行者信号を受信する信号受信部と、照明ユニットによる配光パターンの形成を制御する制御部と、を備え、制御部は、信号受信部による歩行者信号の受信状況に応じて照明ユニットによる配光パターンの形成を制御してもよい。これによれば、歩行者の存在状況により適切に対応した配光パターンの形成が可能となる。
【0010】
上記態様において、制御部は、基本配光パターンを形成するとともに、歩行者を検知する歩行者検知装置によって歩行者が検知された場合に、当該歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成するように照明ユニットを制御し、信号送信部が基本配光パターンを形成する可視光を用いて信号を送信した場合に、制御部は、歩行者検知装置によって検知された歩行者のうち、歩行者信号が未受信である歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成するように照明ユニットを制御してもよい。これによれば、付加配光パターンの形成によって運転者に視覚的な違和感を与える可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価な構成で所望の歩行者に対して情報を送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1に係る車両用灯具の構成を説明する概略図である。
【図2】実施形態1における歩行者への情報送信方法を説明するための模式図である。
【図3】実施形態2に係る車両用灯具における付加配光パターンの形成方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具の構成を説明する概略図である。本実施形態では、車両用灯具として、車両前方に配光パターンを形成する車両用前照灯装置を例に挙げて説明する。本実施形態の車両用前照灯装置100(車両用灯具)は、車両の車幅方向の左側端部に配置された前照灯ユニット210L(照明ユニット)と右側端部に配置された前照灯ユニット210R(照明ユニット)とを備える(以下、適宜、前照灯ユニット210Lと前照灯ユニット210Rを総称して「前照灯ユニット210」という)。また、車両用前照灯装置100は、可視光通信制御部102と、信号送信部104と、信号受信部106と、を備える。
【0015】
前照灯ユニット210は、例えば1つの光源から照射されるビームの一部を遮ることによりロービーム用配光パターンを形成し、遮らないときにハイビーム用配光パターン(非遮光パターン)を形成する、いわゆる配光可変式前照灯である。前照灯ユニット210は、ランプボディと透光カバーによって形成される灯室内に、光を車両前方(車両進行方向)に照射して複数の配光パターンを形成する灯具ユニット10を有する。
【0016】
灯具ユニット10は、光源としてのバルブ、リフレクタを内壁に支持する灯具ハウジング、シェード機構、投影レンズを備える。バルブは、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。バルブから放射された光(可視光)は、直接あるいはリフレクタで反射して、その一部がシェード機構を経て投影レンズへと導かれる。投影レンズは、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として車両用前照灯装置100前方の仮想鉛直スクリーン上に投影し、配光パターンを形成する。
【0017】
灯具ユニット10によって形成される配光パターンには、例えば、交通法規が左側通行である地域で利用する左通行ロービーム用配光パターンと、ハイビーム用配光パターンとが含まれる。また、交通法規が右側通行である地域で利用する、いわゆる「ドーバーロービーム」と称される右通行ロービーム用配光パターンが含まれてもよい。また、灯具ユニット10は、ハイビーム用配光パターンの一部をシェードで遮光したり、専用の光源を点灯するなどして、歩行者検知装置によって検知された歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成可能である。あるいは、前照灯ユニット210は、付加配光パターンを形成するための専用の灯具ユニットを有し、この灯具ユニットを用いて付加配光パターンを形成してもよい。
【0018】
また、前照灯ユニット210L,210Rは、それぞれ灯具ユニット10の点消灯制御や配光パターンの形成制御を実行する照射制御部228L,228R(制御部)(以下、適宜、照射制御部228Lと照射制御部228Rを総称して「照射制御部228」という)。を有する。なお、一つの照射制御部228が前照灯ユニット210Rおよび前照灯ユニット210Lの点消灯制御や配光パターンの形成制御を実行するようにしてもよい。
【0019】
照射制御部228は、カメラ302および画像解析部304を含む歩行者検知装置によって検知された歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成可能である。カメラ302は、例えばステレオカメラなどで構成され、例えばルームミラーの裏側ブラケットやフロントガラスの内側、ダッシュボードの上など車両前方を見渡せる任意の位置に固定される。カメラ302の撮影範囲は、自車前方の領域で、少なくともハイビーム用配光パターンの照射領域を含む範囲である。カメラ302で撮影された画像フレームデータは、画像解析部304で対象物認識処理など所定の画像処理が施されて照射制御部228に提供される。そして、照射制御部228で少なくとも自車前方の歩行者の検出処理が実行される。
【0020】
照射制御部228は、歩行者検出処理の結果に基づいて、検知された歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成することができる。これにより運転者が歩行者を視認しやすくなる。また、照射制御部228は、例えば基本配光パターンとしてロービーム用配光パターン、あるいはハイビーム用配光パターンを形成するとともに、歩行者が検知された場合に付加配光パターンを形成するように前照灯ユニット210を制御することができる。具体的には、ハイビーム用配光パターンの一部を遮光して付加配光パターンを形成する構成である場合には、照射制御部228は、基本配光パターンとしてロービーム用配光パターンを形成し、歩行者が検知された場合に、ハイビーム用配光パターンに切り替えるとともにその一部をシェードで遮光することで、ロービーム用配光パターンを一部に含む付加配光パターンを形成する。また、専用の光源あるいは灯具ユニットを用いて付加配光パターンを形成する構成である場合には、照射制御部228は、灯具ユニット10により基本配光パターンとしてのロービーム用配光パターン、あるいはハイビーム用配光パターンを形成するとともに、歩行者が検知された場合に、基本配光パターンの形成を維持したまま専用の光源あるいは灯具ユニットを用いて付加配光パターンを形成する。
【0021】
可視光通信制御部102は、前照灯ユニット210から照射された可視光を用いて信号を送受信する可視光通信の実施を制御する。例えば、可視光通信制御部102は、車両制御部等から可視光通信実行指示を受けて、信号送信部104に対して可視光を用いて信号を送信するように指示する。
【0022】
信号送信部104は、歩行者が携帯する受光部付き携帯機器に、前照灯ユニット210から照射された可視光を用いて信号を送信することができる。具体的には、可視光通信実行指示を受けた可視光通信制御部102が信号送信部104に対して可視光信号の送信を指示すると、信号送信部104が照射制御部228を介して灯具ユニット10のバルブを点消灯したり周波数を変えることで、バルブから照射される可視光を変調する。これにより、信号送信部104は、送信すべき情報を含む可視光信号を送信することができる。送信すべき情報は、例えば車両制御部から可視光通信制御部102を介して信号送信部104に送られる。
【0023】
信号受信部106は、信号送信部104からの信号を受けて歩行者の携帯機器が送信した歩行者信号を受信することができる。信号受信部106は歩行者信号を受信すると、受信した歩行者信号を照射制御部228に送信する。
【0024】
歩行者の携帯機器は、受光部で信号送信部104からの可視光信号を受信すると、所定の警報音や、音声を発するか、あるいは所定パターンの周期で振動するなどして、歩行者に対して車両から信号を受信したことを通知することができる。また、この携帯機器は、信号送信部104から可視光信号を受信すると、車両に対して歩行者信号を送信可能に構成されている。歩行者信号には、歩行者の位置情報が含まれる。受光部は、フォトダイオード等の光電変換器を備え、車両側から照射された可視光の強弱を光電変換器により電気信号に変換することで信号を受信することができる。受光部は、携帯機器本体に設けられていてもよいし、携帯機器本体とは別体であって歩行者の任意の部位に取り付け可能な構造を有し、有線あるいは無線により携帯機器本体と接続されていてもよい。
【0025】
歩行者から車両への信号の送信は、可視光通信や無線通信などで実行することができる。可視光通信の場合には、信号受信部106は、上述の受光部と同様の構成を備える。携帯機器としては、例えば、受光部を備え、GPS機能を搭載した携帯電話やPDA等を挙げることができる。
【0026】
次に、このような構成を備えた車両用前照灯装置100によって実施される歩行者への情報送信方法について説明する。図2は、実施形態1における歩行者への情報送信方法を説明するための模式図である。
【0027】
図2に示すように、例えば車両300がロービーム用配光パターンLoを形成しながら走行している状態において、信号送信部104がロービーム用配光パターンLoを構成する可視光を用いて信号を送信する。これにより、ロービーム用配光パターンLoの照射領域に含まれる歩行者400aが携帯する受光部付き携帯機器402aに信号を送信することができる。一方、ロービーム用配光パターンLoの照射領域に含まれない歩行者400bが携帯する受光部付き携帯機器402bに対しては信号が送信されない。このように、歩行者が携帯する受光部付き携帯機器に、前照灯ユニット210から照射された可視光を用いて信号を送信することで、情報サーバを設ける場合と比べて安価な構成で特定の歩行者に対して情報を送信することができる。
【0028】
例えば、信号送信部104は、車両300の存在を報知するための情報を送信する。この場合、ロービーム用配光パターンLoの照射領域に含まれる歩行者400a、すなわち車両300の進行方向に存在する歩行者400aに対して自車両の存在を報知することができる。これにより、歩行者400aは車両300が接近していることを知ることができるため、歩行者400aおよび車両300の安全性が向上する。一方、ロービーム用配光パターンLoの照射領域に含まれない歩行者400b、すなわち車両300の進行方向にいない歩行者400bに対しては自車存在情報が送信されない。このように、可視光を用いて信号を送信する本実施形態の構成によれば、車両300からの距離が歩行者400aとあまり変わらないため従来の無線通信を利用する構成であれば不必要な自車存在情報を受信してしまう歩行者400bを、信号の送信対象から除外することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用前照灯装置100は、歩行者が携帯する受光部付き携帯機器に、前照灯ユニット210から照射された可視光を用いて信号を送信する信号送信部104を備える。そして、情報を送信可能な範囲を照明の領域内に限定することが可能な可視光通信の特徴を利用して、歩行者に対して情報を送信する。これにより、安価な構成で所望の歩行者に対して情報を送信することができる。
【0030】
また、本実施形態では、信号送信部104によって送信される信号に、自車両の存在を報知するための情報が含まれる。そのため、前照灯ユニット210から照射された可視光の照射領域に含まれる歩行者、すなわち、車両300が接近していく歩行者に対してのみに自車両の存在を報知することができる。特に、近年増加しているハイブリッドカー(Hybrid Vehicle)はモータ駆動時の発生音が小さく、歩行者が車両の存在を認識しにくいため、前照灯ユニット210の照射した可視光を用いて自車存在情報を送信する本実施形態の車両用前照灯装置100を好適に採用することができる。
【0031】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用前照灯装置は、信号受信部による歩行者信号の受信状況に応じて前照灯ユニットによる配光パターンの形成を制御するものである。以下、本実施形態について説明する。なお、車両用前照灯装置の主な構成等は実施形態1と同様であるため、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
【0032】
図3は、実施形態2に係る車両用前照灯装置における付加配光パターンの形成方法を説明するための模式図である。本実施形態に係る車両用前照灯装置100では、信号送信部104からの信号を受けて携帯機器が送信した歩行者信号を信号受信部106が受信し、信号受信部106による歩行者信号の受信状況に応じて、照射制御部228が前照灯ユニット210による配光パターンの形成を制御する。例えば、ハイビーム用配光パターンが形成され、ハイビーム用配光パターンの可視光を用いて信号が送信された場合に、信号受信部106が歩行者信号を受信した際に照射制御部228がロービーム用配光パターンに切り替えるように制御する。これにより、カメラ302や画像解析部304を含む歩行者検知装置を必要とすることなく、安価な構成で歩行者へのグレアの防止と運転者の視認性の向上とを両立した配光パターンの形成を実現することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る車両用前照灯装置100において、照射制御部228は、基本配光パターンを形成するとともに、歩行者検知装置によって検知された歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成する配光パターンの形成制御と、信号送信部104による基本配光パターンの可視光を用いた信号の送信とを組み合わせた配光パターンの形成制御を実行する。
【0034】
具体的には、例えば図3に示すように、照射制御部228は、基本配光パターンとしてロービーム用配光パターンLoを形成した状態で、歩行者検知装置により車両前方の歩行者を検知する。図3では、カメラ302の撮影範囲DAに含まれる歩行者400aと歩行者400cとが検知された状態が示されている。また、可視光通信制御部102からの指示に従って、信号送信部104がロービーム用配光パターンLoの可視光を用いて信号を送信する。
【0035】
図3に示す状態では、歩行者400aがロービーム用配光パターンLoの照射領域に含まれ、歩行者400cはロービーム用配光パターンLoの照射領域に含まれていない。そのため、歩行者400aの携帯する携帯機器402aのみに自車両存在情報を含む信号が送信され、歩行者400cの携帯する携帯機器402cには信号が送信されない。その結果、歩行者400aの携帯機器402aのみから歩行者信号が送信され、歩行者400aの歩行者信号のみが信号受信部106によって受信される。信号受信部106は、受信した歩行者400aの歩行者信号を照射制御部228に送信する。
【0036】
照射制御部228は、信号受信部106から歩行者400aの歩行者信号を受信すると、この歩行者信号に含まれる歩行者400aの位置情報を用いて、歩行者検知装置によって検知された歩行者400a,400cから歩行者信号を送信した歩行者400aを特定する。これにより、照射制御部228は、撮影範囲DAに含まれる歩行者400a,400cのうち、歩行者400aからは歩行者信号を受信し、歩行者400cからは歩行者信号を未受信であることを認識することができる。
【0037】
そして、照射制御部228は、歩行者検知装置によって検知された歩行者400a,400cのうち、歩行者信号が未受信である歩行者400cを照射領域に含む付加配光パターンMを形成する。一方、照射制御部228は、歩行者検知装置によって検知されたが歩行者信号を受信した歩行者400aに対しては、この歩行者400aを照射領域に含む付加配光パターンを形成しない。
【0038】
検知された歩行者400a,400cのうち、歩行者400aはロービーム用配光パターンLoの照射領域に含まれるため、歩行者400aを含むような付加配光パターンを形成しなくても運転者が歩行者400aを視認しやすい状態にある。そこで、照射制御部228は、基本配光パターンの可視光を用いて信号を送信した場合には基本配光パターンの照射領域に含まれる歩行者のみが歩行者信号を送信することを利用して、歩行者信号の受信の有無から歩行者が基本配光パターンに含まれるか否かを判断する。そして、照射制御部228は、基本配光パターンに含まれる歩行者に対しては、付加配光パターンを形成しないように前照灯ユニット210を制御する。これにより、不必要な付加配光パターンの形成を抑制することができ、付加配光パターンの形成によって運転者に視覚的な違和感を与える可能性を低減することができる。また、不要な付加配光パターンの形成を抑制することで、消費電力の低減も図ることができる。
【0039】
以上説明した本実施形態の構成においても、前照灯ユニット210から照射された可視光を用いて信号を送信しているため、安価な構成で所望の歩行者に対して情報を送信することができる。また、本実施形態では、照射制御部228が信号受信部106による歩行者信号の受信状況に応じて前照灯ユニット210による配光パターンの形成を制御している。そのため、歩行者の存在状況により適切に対応した配光パターンの形成が可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、照射制御部228が基本配光パターンを形成するとともに、歩行者検知装置によって検知された歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成する。そして、信号送信部104が基本配光パターンを形成する可視光を用いて信号を送信した場合に、照射制御部228は、検知された歩行者のうち、歩行者信号を未受信の歩行者を照射領域に含む付加配光パターンMを形成する。これにより、歩行者信号を受信した歩行者、すなわち基本配光パターンの照射領域に含まれる歩行者に対しては付加配光パターンを形成しないようにすることができるため、不必要な付加配光パターンの形成を抑制することができる。そのため、付加配光パターンの形成によって運転者に視覚的な違和感を与える可能性を低減することができ、また、消費電力の低減も図ることができる。
【0041】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施形態同士、および上述の各実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0042】
例えば、上述の各実施形態では、照射制御部228L,228Rが、歩行者の検出処理を実行しているが、車両に設けられた車両制御部(図示せず)がこの処理を実行するようにしてもよい。この場合、照射制御部228は、車両制御部から得られた歩行者存在情報に基づいて配光パターンの形成を制御する。
【0043】
また、歩行者検知装置としては、カメラ302や画像解析部304を含む構成に限らず、例えば、カメラ302に代えてミリ波レーダや赤外線レーダなど他の検出装置を用いてもよい。また、各種通信手段を用いて歩行者を検知してもよい。例えば、路肩に埋め込まれたり、道路周辺に配置されたセンサやカメラなどにより路肩に歩行者等が存在することを検出できるシステムがある場合、これらのシステムと路車間通信を行うことにより、歩行者を検知してもよい。
【0044】
また、上述の各実施形態では、前照灯ユニット210の可視光を用いて信号を送信しているが、例えば、バックアップランプ等の車両後方に可視光を照射可能な照明ユニットの可視光を用いて信号を送信してもよい。この場合には、車両300が後退時に、車両300の進行方向、すなわち車両300の後方に存在する歩行者に対して可視光信号を送信することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 車両用前照灯装置、 104 信号送信部、 106 信号受信部、 210,210L,210R 前照灯ユニット、 228,228L,228R 照射制御部、 300 車両、 302 カメラ、 400a,400b,400c 歩行者、 402a,402b,402c 携帯機器、 M 付加配光パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有し、車両進行方向に可視光を照射可能な照明ユニットと、
歩行者が携帯する受光部付き携帯機器に、前記照明ユニットから照射された可視光を用いて信号を送信する信号送信部と、
を備えたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記信号は、自車両の存在を報知するための情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記信号送信部からの信号を受けて前記携帯機器が送信した歩行者信号を受信する信号受信部と、
前記照明ユニットによる配光パターンの形成を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記信号受信部による歩行者信号の受信状況に応じて前記照明ユニットによる配光パターンの形成を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記制御部は、基本配光パターンを形成するとともに、歩行者を検知する歩行者検知装置によって歩行者が検知された場合に、当該歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成するように前記照明ユニットを制御し、
前記信号送信部が基本配光パターンを形成する可視光を用いて信号を送信した場合に、前記制御部は、前記歩行者検知装置によって検知された歩行者のうち、歩行者信号が未受信である歩行者を照射領域に含む付加配光パターンを形成するように前記照明ユニットを制御することを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−79349(P2011−79349A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230735(P2009−230735)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】