説明

車両用照度検出装置

【課題】取り付け容易で、取り付け工数の削減、コスト低減を図ることができ、運転者の前方視界を良好に維持することができる照度検出装置を提供する。
【解決手段】車両前方の照度を検出する第1の照度検出手段41と、車両周辺の照度を検出する第2の照度検出手段42とを備え、第1および第2の照度検出手段41,42により検出された照度と予め設定した閾値との比較結果に基づいて車両の灯具を制御する車両用照度検出装置において、第1および第2の照度検出手段41,42が互いに隣接して配置されて1つの照度検出ユニット1にまとめられ、照度検出ユニット1はフロントウィンドシールドガラスとの境界付近のインストルメントパネル2であって運転者の所定の視野角外に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用照度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車外の照度を検出し、該照度に応じて車幅灯や前照灯等の灯具を自動点灯および自動消灯するオートライトシステムが知られている。
例えば、特許文献1には、車両前方の挟角範囲の照度を検出する前方照度センサと、車両周辺の広角範囲の照度を検出する周囲照度センサとを備え、両方の照度センサの検出値が所定の閾値より低下した場合に前記灯具を自動点灯するオートライトシステムが開示されている。このように前方照度センサと周囲照度センサとを併用すると、例えば短い陸橋の下を通過するときなど点灯不要な時に灯具を自動点灯させないようにすることができる。
【特許文献1】特開昭62−26141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来は前方照度センサと周囲照度センサをそれぞれ別々に用意し、前方照度センサは車両前方から光を入射させる必要があることから例えばルームミラーの背面などに設置し、周囲照度センサは車両の周辺から光を入射させる必要があることからインストルメントパネル上に設置していた。
【0004】
そのため、2つの照度センサをそれぞれ別々な場所に取り付けなければならず、取り付け工数が多くなり、コストアップになった。
また、前方照度センサと周囲照度センサを異なる場所に取り付けているため、前方照度センサの検出と周囲照度センサの検出の同期が不安定で、灯具の自動点灯および自動消灯の作動精度を低下させる場合があった。
【0005】
そこで、この発明は、取り付けが容易で、取り付け工数の削減、コスト低減を図ることができ、運転者の前方視界を良好に維持することができる車両用照度検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用照度検出装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両前方の照度を検出する第1の照度検出手段(例えば、後述する実施例における第1の照度検出手段41)と、車両周辺の照度を検出する第2の照度検出手段(例えば、後述する実施例における第2の照度検出手段42)とを備え、前記第1および第2の照度検出手段により検出された照度と予め設定した閾値との比較結果に基づいて車両の灯具を制御する車両用照度検出装置において、前記第1および第2の照度検出手段が互いに隣接して配置されて1つの照度検出ユニット(例えば、後述する実施例における照度検出ユニット1)にまとめられ、該照度検出ユニットがフロントウィンドシールドガラス(例えば、後述する実施例におけるフロントウィンドシールドガラス3)との境界(例えば、後述する実施例における境界4)付近のインストルメントパネル(例えば、後述する実施例におけるインストルメントパネル2)であって運転者の所定の視野角外に設置されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成することにより、車両前方の照度を検出する第1の照度検出手段と、車両周辺の照度を検出する第2の照度検出手段とを同一位置に設置することができるので、外乱があってもその外乱の影響を共有することができ、第1および第2の照度検出手段の検出結果を常に同期させることができる。
また、第1の照度検出手段と第2の照度検出手段を1つの照度検出ユニットにまとめ、この照度検出ユニットをインストルメントパネルに設置するので、第1および第2の照度検出手段の取り付けが容易である。
さらに、照度検出ユニットがフロントウィンドシールドガラスとの境界付近のインストルメントパネルであって運転者の所定の視野角外に設置されているので、運転者の前方視界を妨げることがない。なお、運転者の所定の視野角外は、例えば、車速約40km/hrでの走行中における運転者の視野範囲外とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、第1および第2の照度検出手段を同一位置に設置することができるので、第1および第2の照度検出手段の検出結果を常に同期させることができ、灯具の作動精度を向上させることができる。
また、第1および第2の照度検出手段を1つにまとめた照度検出ユニットをインストルメントパネルに設置すればよいので、取り付けが容易であり、取り付け工数も少なくて済み、製造コストの削減を図ることができる。
さらに、照度検出ユニットは運転者の所定の視野角外に設置されているので、運転者の前方視界を妨げることがなく、前方視界を良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明に係る車両用照度検出装置の一実施例を図1から図5の図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、前後、左右、上下の方向は、特に断りのない限り、車体の前後、左右、上下方向と一致する。
図1は車室前部の斜視図であり、車両用照度検出装置としての照度検出ユニット1はインストルメントパネル2上であって運転者の所定の視野角外に設置されている。ここで、運転者の所定の視野角外とは、例えば、車速約40km/hrでの走行中における運転者の視野範囲外とすることができる。具体的には、照度検出ユニット1は、フロントウィンドシールドガラス(以下、フロントガラスと略す)3との境界4の近傍であって、且つ、運転席側のフロントピラー5の近傍のインストルメントパネル2に設置されている。
【0010】
図2に示すように、フロントガラス3の内面周囲には車外からの中見えを防止するためのクロセラ塗装7が施されている。
照度検出ユニット1は、インストルメントパネル2に設けられた取付孔6に装着されるハウジング10を備えている。ハウジング10は、断面U字形のベース部11と、ベース部11の上端から水平方向へ広がるフランジ部12とから構成されている。ハウジング10は、ベース部11を取付孔6に挿入し、フランジ部12をインストルメントパネル2の上面に載置して、所定の固定手段(例えば、嵌合等)によってインストルメントパネル2に固定される。
【0011】
ベース部11の底板部13には、車両の前方の照度を検出する受光素子(例えば、フォトダイオード)からなる前方照度センサ21と、車両の周辺の照度を検出する受光素子(例えば、フォトダイオード)からなる周囲照度センサ22とが、互いに隣接して設置されている。詳述すると、前方照度センサ21は底板部13の中央よりも前方に配置され、周囲照度センサ22は前方照度センサ21の後方に若干離れて配置されていて、前方照度センサ21は所定高さを有する環状の遮光リブ14によって包囲されている。
【0012】
また、ハウジング10のフランジ部12には、前後2つのレンズ31,32がベース部11を覆うように取り付けられている。前方に配置されたレンズ31は、車両前方の挟角な範囲(例えば、集光角度が20度以内)の光を集光して前方照度センサ21に入射させるレンズであり、後方に配置されたレンズ32は、車両周囲の広角な範囲(例えば、集光角度45度以上)の光を集光して周囲照度センサ22に入射させるレンズである。以下、レンズ31を挟角レンズ31と称し、レンズ32を広角レンズ32と称す。挟角レンズ31は上述した機能を有するように所定形状にカットされて形成されており、広角レンズ32は所定厚さの曲面状に形成されている。
【0013】
挟角レンズ31の出射面33は、遮光リブ14内に挿入され、前方照度センサ21に対向して配置されている。また、挟角レンズ31において広角レンズ32に対向する面34には非透明な塗装が施されて遮光されており、挟角レンズ31に入射した光が広角レンズ32側に出射して広角レンズ32に干渉するのを阻止している。
なお、遮光リブ14は、広角レンズ32に入射した光等が挟角レンズ31に入射するのを阻止し、挟角レンズ31の出射面33から出射された光だけが前方照度センサ21に入射するようにしている。
この実施例において、前方照度センサ21と挟角レンズ31は第1の照度検出手段41を構成し、周囲照度センサ22と広角レンズ32は第2の照度検出手段42を構成する。
【0014】
このように構成された照度検出ユニット1によれば、前方照度センサ21と周囲照度センサ22を同一位置に設置することができるので、照度検出に影響を与える外乱があってもその外乱の影響を共有することができ、前方照度センサ21と周囲照度センサ22の検出結果を常に同期させることができる。その結果、前方照度センサ21と周囲照度センサ22で検出した照度に基づいて前照灯などの灯具を作動する際の作動精度を向上させることができる。
【0015】
また、前方照度センサ21と周囲照度センサ22を1つの照度検出ユニット1にまとめ、この照度検出ユニット1をインストルメントパネル2に設置するので、照度検出ユニット1の取り付けが容易であり、取り付け工数も少なくて済み、製造コストの削減を図ることができる。
【0016】
さらに、照度検出ユニット1はフロントガラス3との境界付近のインストルメントパネル2であって運転者の視野角外に設置されているので、運転者の前方視界を妨げることがなく、前方視界を良好に維持することができる。
【0017】
次に、この照度検出ユニット1を用いて車両前方の照度と車両周辺の照度を検出し、その検出結果に基づいて車両の前照灯や車幅灯の灯具(いずれも図示略)を自動点灯および自動消灯する制御の一例を、図3のフローチャートに従って説明する。図3のフローチャートに示す自動点灯・消灯制御ルーチンは、図示しない制御装置によって繰り返し実行される。
【0018】
まず、ステップS101において、周囲照度センサ22により検出された車両の周辺の照度(以下、周囲照度と称す)を読み込み、ステップS102において前方照度センサ21により検出された車両前方の照度(以下、前方照度と称す)を読み込む。
【0019】
次に、ステップS103に進み、ステップS101,102の処理を所定回数(N回)実行したか否か、換言すると、周囲照度および前方照度の読み込み回数が所定回数Nに達したか否かを判定する。なお、所定回数Nは予め設定されており、例えば5回、あるいは10回、あるいは15回など適宜の回数に設定が可能である。
【0020】
ステップS103における判定結果が「NO」(N回未満)である場合には、ステップS101に戻り、ステップS101〜S103の処理を繰り返す。なお、ステップS101〜S103の一連の処理は例えば100msec間隔等の短い時間間隔で実行する。
【0021】
ステップS103における判定結果が「YES」(N回)である場合には、ステップS104に進み、ステップS101で読み込んだ周囲照度のN回分の平均値(以下、周囲照度の移動平均値と称す)を算出する。
次に、ステップS105に進み、ステップS102で読み込んだ前方照度のN回分の平均値(以下、前方照度の移動平均値と称す)を算出する。
【0022】
次に、ステップS106に進み、ステップS104において算出した周囲照度の移動平均値が予め設定した閾値Xよりも小さいか否かを判定する。
ステップS106における判定結果が「NO」(周囲照度の移動平均値≧X)である場合には、ステップS107に進み、前照灯等の灯具を消灯して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0023】
ステップS106における判定結果が「YES」(周囲照度の移動平均値<X)である場合には、ステップS108に進み、ステップS105において算出した前方照度の移動平均値が予め設定した閾値Yよりも小さいか否かを判定する。
ステップS108における判定結果が「NO」(前方照度の移動平均値≧Y)である場合には、ステップS107に進み、前照灯等の灯具を消灯して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0024】
ステップS108における判定結果が「YES」(前方照度の移動平均値<Y)である場合には、ステップS109に進み、前照灯等の灯具を点灯して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0025】
すなわち、この実施例では、周囲照度の移動平均値が閾値Xよりも小さく、且つ、前方照度の移動平均値が閾値Yよりも小さいときには灯具を自動点灯し、周囲照度の移動平均値と前方照度の移動平均値のいずれか一方でも閾値XあるいはYよりも大きいときには灯具を自動消灯する。これにより、例えば、距離の短いトンネルや、ビルの谷間を走行する場合のように灯具を点灯する必要がない場合に灯具が自動点灯するのを防止することができる。
【0026】
また、周囲照度センサ22で検出した周囲照度や前方照度センサ21で検出した前方照度の1つ1つのデータを直接に閾値X,Yと比較して点灯・消灯の判定をするのではなく、N回分の照度データの平均値(移動平均値)を算出し、この移動平均値を閾値X,Yと比較して点灯・消灯の判定を行っているので、短時間の間に点灯と消灯が繰り返されるハンチングを抑制することができる。
そして、移動平均値を算出するときのデータ数(すなわち所定回数N)を変更することによって、照度検出ユニット1の感度を容易に変更することができる。従来は、例えば照度センサのゲイン抵抗を変更することによって感度を変更していたので、感度を変更するのは容易でなかった。
【0027】
図4および図5は、例えば前方照度センサ21で100msec毎に検出した前方照度と、この前方照度を平均化した移動平均値の時間的な変化を示したもので、図中実線は100msec毎に検出した前方照度、破線は移動平均値を示す。そして、100msec毎に検出した前方照度のデータを同じとして、図4はN=5回で移動平均値を算出した例であり、図5はN=15回で移動平均値を算出した例である。
例えば、灯具点灯の閾値Yを1000Luxとした場合、図4のN=5で移動平均値を算出した場合には約3000msecの時点で灯具を一時的に点灯するが、図5のN=15で移動平均値を算出した場合には同じ時点(約3000msec)でも灯具は点灯しない。すなわち、回数Nを大きく設定することによって、感度を鈍くすることができる。
【0028】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、入射方向の異なる挟角レンズおよび広角レンズを複数用意しておき、車体に対する照度検出ユニットの取り付け角度に応じて(すなわち、車種に応じて)、挟角レンズと広角レンズを適宜組み合わせて最適な入射角を設定するのが好ましい。
【0029】
前述した実施例では、照度検出ユニットを、運転席側のフロントピラーの近傍のインストルメントパネルに設置したが、フロントウィンドシールドガラスとの境界付近のインストルメントパネルであって運転者の所定の視野角外であれば、照度検出ユニットをインストルメントパネル上の他の位置に配置しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に係る車両用照度検出装置を備えた車両の車室前部の斜視図である。
【図2】車両用照度検出装置の断面図である。
【図3】実施例における自動点灯・消灯制御のフローチャートである
【図4】検出した照度と、これを平均化処理した結果を比較したタイムチャート(その1)である。
【図5】検出した照度と、これを平均化処理した結果を比較したタイムチャート(その2)である。
【符号の説明】
【0031】
1 照度検出ユニット(車両用照度検出装置)
2 インストルメントパネル
3 フロントウィンドシールドガラス
4 境界
21 前方照度センサ(第1の照度検出手段)
22 周囲照度センサ(第2の照度検出手段)
31 挟角レンズ(第1の照度検出手段)
32 広角レンズ(第2の照度検出手段)
41 第1の照度検出手段
42 第2の照度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方の照度を検出する第1の照度検出手段と、車両周辺の照度を検出する第2の照度検出手段とを備え、前記第1および第2の照度検出手段により検出された照度と予め設定した閾値との比較結果に基づいて車両の灯具を制御する車両用照度検出装置において、
前記第1および第2の照度検出手段が互いに隣接して配置されて1つの照度検出ユニットにまとめられ、該照度検出ユニットがフロントウィンドシールドガラスとの境界付近のインストルメントパネルであって運転者の所定の視野角外に設置されていることを特徴とする車両用照度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−162305(P2008−162305A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350761(P2006−350761)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】