説明

車両用画像表示装置

【課題】より小さな設置スペースで、かつ、運転者が車外の遠方に輻輳点を合わせたままでも車両情報画像中の表示を容易に視認することができる車両用画像表示装置を提供すること。
【解決手段】表示部8は、左目用表示領域と右目用表示領域を備えており、左目用画像フレームバッファ5に書き込まれた情報信号受信部2が周期的に送信する車両情報データを受信して車両速度やエンジン回転数などの車両情報の表示を含む車両情報画像を左目用表示領域に表示し、右目用画像フレームバッファ6に書き込まれた背景画像を左目用表示領域に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報等の画像を表示する車両用画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両速度やエンジン回転数などの車両情報を表示する従来の車両用表示装置として、ダッシュボードの上に設置し、利用者が運転しながら表示を見る際の視線移動を小さくすることができる車両用表示装置が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−212490号公報
【特許文献2】特開2010−230967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらダッシュボードの上に設置する従来の車両用表示装置は、車外を見ている利用者の視線の交点(視点=輻輳点)と比較して近距離にある。このため、利用者が車外の遠方に視点を合わせたまま視界に入る車両用表示装置に表示されている数字や図形などを視認しようとすると、車両用表示装置に表示されている数字や図形などが二重にぶれて見えてしまうという問題点がある。このように、車外を見ている利用者が、数字や図形などをはっきりと視認するためには、若干の視線移動が必要となる。すなわち、車外を見ている利用者は、視点を車外から近くの車両用表示装置に移さなければ表示されている数字や図形が二重に重なって見えることから、表示をはっきりと視認することができない。このことについて図面を用いて説明する。
【0005】
図19は、利用者が車外の遠方に視点を合わせた場合の、車両用表示装置に表示されている車両情報画像の利用者への見え方を説明するための説明図である。利用者の両目の視線の交点である輻輳点が車両用表示装置よりも遠方にある場合(図中にAで示す)は、輻輳点が車両用表示装置の表示面にある場合(図中にBで示す)と比較して、破線で示したとおり、表示面と視線との交点が、右目では右側にずれ左目では左側にずれる。したがって、利用者が車外の遠方に視点を合わせたままの状態では、右目に見える車両情報画像は相対的に左にずれ、左目に見える車両情報画像は相対的に右にずれて見えるため、車両情報画像がずれて表示が二重に見える。
【0006】
本発明は、上述した従来の問題を解決するためになされたもので、利用者が車外の遠方に視点を合わせたままでも、車両情報等のコンテンツを表す画像を容易に視認することができる車両用画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、右目用画像と左目用画像とを表示する表示部を備え、前記右目用画像と前記左目用画像とは、それぞれ異なるコンテンツを表す画像である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、利用者は両目の視線の交点である輻輳点(視点)をディスプレイの表示面に合わせずに車外に合わせたまま、画像の表示を二重でない画像として見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における車両用画像表示装置1の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における車両情報画像の一例を示す外観図
【図3】本発明の実施の形態1における背景画像の一例を示す外観図
【図4】画像信号変換部7による画像変換を示す図
【図5】レンチキュラレンズを備えたディスプレイによる立体視の原理の説明図
【図6】本発明の実施の形態1における表示部8の設置位置の一例を示す外観図
【図7】本発明の実施の形態1における車両用画像表示装置1が車両情報画像の生成を行う場合の動作フロー図
【図8】利用者が表示部8の表示面を見ている様子を上からの視点で示した模式図
【図9】利用者が輻輳点を表示部8に合わせた場合における、画像の利用者への見え方を説明するための説明図
【図10】利用者が表示部8よりも遠方を見ている様子を横からの視点で示した模式図
【図11】図10を上からの視点で示した模式図
【図12】利用者が輻輳点を表示部8よりも遠方に合わせた場合の、画像の利用者への見え方を説明するための説明図
【図13】本発明の実施の形態2における車両用画像表示装置1の構成を示すブロック図
【図14】本発明の実施の形態2における撮像部12の設置位置の一例を示す外観図
【図15】本発明の実施の形態2における車両用画像表示装置1が車両情報画像の生成を行う場合の動作フロー図
【図16】左目用画像と右目用画像との組み合わせの一例を示す図
【図17】左目用画像と右目用画像との組み合わせの一例を示す図
【図18】左目用画像と右目用画像との組み合わせの一例を示す図
【図19】利用者が車外の遠方に視点を合わせた場合の車両情報画像の利用者への見え方を説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における車両用画像表示装置について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態1における車両用画像表示装置1の構成を示すブロック図である。車両用画像表示装置1は、情報信号受信部2、部品画像蓄積部3、画像生成部4、左目用画像フレームバッファ5、右目用画像フレームバッファ6、画像信号変換部7、表示部8および車両速度検出部としての検出部9を備える。
【0011】
情報信号受信部2は、車両内の情報通信システムであるCAN(Controller Area Network)20からCAN通信データを受信し、CAN通信データに含まれる車両速度やエンジン回転数、燃料残量などの車両情報データを抽出して出力する。ここで、「車両情報データ」とは、自装置である車両用画像表示装置1の搭載された車両に関するデータをいう。そして、情報信号受信部2により抽出される車両情報データの内容は、車両用画像表示装置1の初期設定や、利用者による設定に基づいて決定される。
【0012】
情報信号受信部2は、車両に関する情報に加えて、道路交通情報に関するVICS(Vehicle Information and Communication System)から渋滞や交通規制などに関するデータを受信することとしてもよい。この場合、情報信号受信部2が道路交通情報のデータを抽出するか否か、道路交通情報のデータのうち何を抽出するかについては、初期設定や、利用者による設定に基づいて決定される。
【0013】
部品画像蓄積部3は、文字データや警告灯データなど、表示部8に表示する車両情報画像の部品である車両情報部品画像データを記憶するフラッシュメモリなどの記憶装置である。情報信号受信部2がVICSからデータを受信する構成とした場合、渋滞や交通規制などについて表示部8に表示するコンテンツを表す画像の部品であるVICS情報部品画像データをも合せて、記憶する。
【0014】
画像生成部4は、例えばCPUで動作するタスクで実現され、情報信号受信部2が出力する車両情報データを周期的に読み、情報信号受信部2により抽出された車両情報データの値に基づき、部品画像データを用いて車両情報に関する表示を含む車両情報画像を生成する。また、すべての画素が車両情報画像の背景色である背景画像も生成する。車両の状況に関する情報以外の情報として、情報信号受信部2が道路状況データを受信した場合、画像生成部4は、道路情報データの値に基づき、部品画像データを用いて車両情報に加えて道路状況に関する表示をも含む画像を生成する。
【0015】
図2は、表示部8の左目用表示領域または右目用表示領域の何れかに表示される車両情報画像の一例を示す外観図である。同図に示すように、車両情報画像には、部品画像蓄積部3に車両情報の部品画像データとして記憶されているスピードメーター、タコメーター、シフトレバー位置、警告灯などの車両情報データの値を反映したコンテンツ(内容、中身)を表す画像表示が含まれる。この場合の「コンテンツを表す画像」とは、利用者に対して車両に関する情報を提示する文字・数字、シンボルなどの画像表示が含まれる画像をいう。
【0016】
例えば、表示部8にスピードメーターを表示する場合、画像生成部4が車両情報データの車両速度の値を、部品画像蓄積部3に記憶されている文字データを用いて生成する。また、画像生成部4は、情報信号受信部2が車両情報データの燃料残量の値が所定値以下であるとの車両情報データを受信した場合には、当該車両情報データに基づいて部品画像蓄積部3に記憶されている燃料残量警告灯データが表示された車両情報画像を生成する。
【0017】
図3は背景画像の一例を示す外観図である。同図に示すように、画像生成部4は、表示部8の左目用表示領域と右目用表示領域のうち、上述した車両情報画像を表示しないほうに表示する画像として、部品画像蓄積部3に記憶されている車両情報の部品画像データの表示を含まない画像を作成する。ここで、「表示領域」とは、ひとまとまりの画像として視認される画像が表示される複数の画素により構成される範囲をいう。本実施形態の表示部8は、利用者の左目に認識させるための画像を表示する左目用表示領域と、利用者の右目に認識させるための画像を表示する右目用表示領域とから構成されている。
【0018】
左目用表示領域と右目用表示領域に表示される画像として、車両情報画像と背景画像とを組み合わせることにより、車両情報データを反映した部品画像の表示を含む車両情報画像を一方の目にのみ視認させることができる。これにより、利用者の視点が車外に位置したままであっても、車両に関する情報を提示する文字・数字、シンボルなどの画像表示が重なった状態として利用者に視認されることがない。したがって、利用者は表示部8に表示されたコンテンツを表す画像を容易に視認することができる。
【0019】
ここで、背景画像とは上述したとおり、すべての画素が車両情報画像の背景色である画像をいうが、本実施の形態においては、背景画像も「コンテンツを表す画像」として扱う。
また、左目用表示領域と右目用表示領域の一方にのみ車両情報画像を表示し、他方に何ら画像を表示しない組み合わせであっても、車両情報画像を容易に視認することができる。このため、車両情報画像を表示しない方の領域の画素の全てを発光させないこととしてもよい。
【0020】
左目用画像フレームバッファ5は、表示部8の左目用表示領域に表示する利用者の左目用の画像を一時的に保存するフレームバッファであり、右目用画像フレームバッファ6は、表示部8の右目用表示領域に表示する利用者の右目用の画像を一時的に保存するフレームバッファである。左目用画像フレームバッファ5、右目用画像フレームバッファ6として、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を用いることができる。
【0021】
画像信号変換部7は、右目用画像と左目用画像とを表示部8に表示するための画像信号に変換して、表示部8に出力するものであり、左目用画像フレームバッファ5と右目用画像フレームバッファ6に保存されている画像を読み出して画像を生成し、表示部8に表示するための画像信号に変換して表示部8に出力する。
【0022】
図4は画像信号変換部7が生成する画像を示す図である。画像信号変換部7は、左目用画像フレームバッファ5に保存されている左目用画像と、右目用画像フレームバッファ6に保存されている右目用画像を、縦1画素のラインずつ交互に配置する。図4に示すように、表示部8は、右目用表示領域8R1〜Rnと左目用表示領域8L1〜Lnとを備えている。そして、左目用表示領域と右目用表示領域とは、縦方向には同じ領域が連続し、横方向には一画素毎に交互に異なる領域となるように配置されている。表示部8は、液晶ディスプレイなどの表示装置を用いることができ、表示面にレンチキュラレンズ10を備えている。
【0023】
図5はレンチキュラレンズを備えたディスプレイによる立体視の原理の説明図である。表示部8の前面にはレンチキュラレンズ10が配置されている。表示部8に表示された画像を、利用者が最適な位置で観察すると、利用者の左目は左目用表示領域8L1〜Lnに表示された左目用画像を、右目は右目用表示領域8R1〜Rnに表示された右目用画像を見ることになる。この左目用画像と右目用画像が、ステレオカメラで撮影した画像のような立体視用の画像であれば、利用者には裸眼で立体感のある画像に見える。
【0024】
利用者が裸眼で立体視を行うことを目的として用いられるこの構成によれば、利用者の左目と右目に異なる画像を視認させることができる。したがって、左目用表示領域8L1〜Lnと右目用表示領域8R1〜Rnのうちの一方に情報画像を表示し他方に背景画像を表示することにより、利用者は、視点を車外に位置させたままで表示部8のコンテンツを表す画像中の車両情報に関する画像表示を容易に視認することができる。
【0025】
表示部8は、利用者が前方の車外を見ている際に表示内容が認識できるよう、例えば図6に示すようにダッシュボードの上に設置する。
【0026】
検出部9は、情報信号受信部2により受信された車両の速度に関するデータに基づいて、車両速度が所定の値以下か否かを検出して、検出結果を画像生成部4に出力するものである。
【0027】
以上のように構成された車両用画像表示装置について、以下にその処理動作を説明する。
図7は車両用画像表示装置1が車両情報画像の生成と表示を行う場合の動作フロー図である。
【0028】
画像生成部4は、情報信号受信部2が周期的に送信する車両情報データを受信して、当該受信した車両情報データから車両速度やエンジン回転数などの車両情報を読み出し(S101)、読み出した車両情報に基づいて車両情報画像を生成し(S102)、左目用画像フレームバッファ5に車両情報画像を書き込む(S103)。情報信号受信部2が道路状況データを受信した場合、画像生成部4は、道路情報データの値に基づき、部品画像データを用いて車両情報に加えて道路状況の画像表示を含んだ画像を書き込む。
【0029】
画像生成部4は、検出部9の検出結果に基づいて、右目用画像フレームバッファ6に書き込む画像データを生成する。すなわち、車両速度の数値が事前に定めた所定の値Vより小さいことが検出されているか否かにより生成する画像データを変える(S104)。車両速度の数値が事前に定めた所定の値Vより小さいと検出されている場合は、左目用画像フレームバッファ5に書き込んだ車両情報画像を、右目用画像フレームバッファ6に書き込み(S105)、検出されていない場合は、背景画像を右目用画像フレームバッファ6に書き込む(S106)。
【0030】
その後、画像生成部4は車両情報画像生成処理の終了かどうかを判定し(S107)、終了まで車両情報画像生成処理を継続する。
【0031】
S104では、車両速度の数値が所定の値Vより小さいことが検出されていない場合に、画像生成部4は左目用画像フレームバッファ5に車両情報画像を書き込み、右目用画像フレームバッファ6に背景画像を書き込むが、その場合に表示部8に表示される画像が利用者にどのように見えるかを図面を用いて説明する。
【0032】
図8は利用者が表示部8の表示面を見ている様子を上からの視点で示した模式図であり、利用者の両目の視線の交点である輻輳点は表示部8の表示面にある。
【0033】
図9は、図8のように利用者が輻輳点を表示部8に合わせた場合における画像の利用者への見え方を説明するための説明図である。このように、利用者が輻輳点を表示部8に合わせている場合、利用者の視線が表示部8にあるという。
利用者が最適な位置すなわち表示部8正面中央付近で表示部8を観察すると、左目には(a)の車両情報画像のみが見え、右目には(b)の背景画像のみが見える。その位置で利用者が輻輳点を表示部8の表示面に合わせた場合(図8参照)は、(c)のように利用者には左目用画像と右目用画像が同じ位置に見える。車両情報画像と背景画像が重なるが、背景画像には文字や図形などの画像がないため、車両情報画像が図19のように二重に重なることなく見える。ただし、図8に示すように、輻輳点が表示部8の表示面にあるときは、表示部8を左目用と右目用の画像領域に分けることなく、全体を一つの領域として画像を表示する構成としても利用者には同様の画像として視認される。
【0034】
図10は利用者が表示部8よりも遠方を見ている様子を横からの視点で示した模式図である。利用者は表示部8の上方越しに遠方を見ているが、視界内に表示部8の画面があり、利用者は表示部8の表示内容を認識できる状態とする。
【0035】
図11は図10を上からの視点で示した模式図であり、利用者の輻輳点は図11中にBで示した表示部8よりもAで示したように遠方にある。
図12は、図10および図11のように利用者が輻輳点を表示部8よりも遠方に合わせた場合の、画像の利用者への見え方を説明するための説明図である。利用者が最適な位置で表示部8に表示された画像を観察すると、左目には車両情報画像のみ、右目には背景画像のみが見える。その位置で利用者が図11のように輻輳点を表示部8より遠方に合わせた場合は、表示部8における左目の視線が左側に、右目の視線が右側にそれぞれ移動する。この結果、利用者には、図8に示した輻輳点を表示部8の表示面に合わせた場合と比較して、左目用画像は右側に、右目用画像は左側に移動したように見える。したがって、図9に示すように右目用画像と左目用画像とが完全に重なるのではなく、図12に示すように(a)の左目用画像が右にずれ、(b)の右目用画像が左にずれて、(c)に示すようにその全部ではなくその一部が重なって見える。しかしながら、背景画像は、は文字や図形などの画像表示を含まないため、車両情報画像が図19のように二重に重なることなく見える。
【0036】
以上のように本実施の形態によれば、画像生成部が左目用画像フレームバッファに車両情報画像を書き込み、右目用画像フレームバッファに背景画像を書き込むことにより、利用者の左目には車両情報画像が、右目には背景画像が見える。このため、輻輳点をディスプレイの表示面に合わせずに車外に合わせたまま、利用者は車両情報画像を二重でない画像で見ることができる。
【0037】
また、S104で用いた値である所定の速度V未満での走行中の場合は、画像生成部4が左目用画像フレームバッファと右目用画像フレームバッファに背景画像を書き込むことにより、利用者の両目に車両情報画像が見える。このため、利用者が輻輳点をディスプレイの表示面に合わせる余裕がある状況では、車両情報画像をより鮮明に表示することができる。
また、ヘッドアップディスプレイのようにミラーなどの反射を用いずに、利用者がディスプレイ画面を直接見られるようにしたため、設置スペースをより小さくすることができる。
【0038】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における車両用画像表示装置について図面を参照しながら説明する。
図13は本発明の実施の形態2における車両用画像表示装置1の構成を示すブロック図である。車両用画像表示装置1は、実施の形態1の構成に加え、撮像部12、視線検出部13および判定部14を備える。
【0039】
撮像部12は、運転手の顔全体を含む画像を連続撮影(動画撮影)するものであり、例えばNTSC(National Television Standards Committee)信号のような映像信号を出力するカメラを用いることができる。撮像部12を設置する位置は、例えば図14に示したような表示部8の上など、運転手の顔全体を撮影できる位置とすればよい。
【0040】
視線検出部13は、撮像部12により出力された映像信号から利用者の顔の向きと目領域と瞳孔領域を検出し、利用者の視線方向を3次元ベクトルで表した視線ベクトルを算出して、判定部14に出力する。
【0041】
視線ベクトルの算出方法としては、例えば、次の方法を用いることができる。まず、事前に利用者が複数の異なる方向を向いた場合の、利用者の顔を撮影し、比較用画像として保存しておき、撮像部12により出力された映像信号から利用者の顔部分を抽出し、比較用画像と比較して、顔の向きを推定する。次に、撮像部12により出力された映像信号から利用者の目領域を抽出し、さらに目領域から瞳孔領域を抽出する。そして、目領域と瞳孔領域の位置関係から、顔の正面方向に対する視線方向を推定する。最後に、推定した顔の向きと視線方向に基づいて、視線ベクトルを算出する。
【0042】
判定部14は、視線検出部13により算出された視線ベクトルに基づいて、利用者の視線が表示部8上に所定時間以上連続してあるか否か、すなわち利用者が表示部8を注視しているか否かについて判断し、判断結果を画像生成部4に出力するものである。
【0043】
判定部14は、利用者が真正面を向いたときの視線ベクトルに対する、受信した視線ベクトルの垂直方向と水平方向の角度が両方とも所定の範囲内である場合に、利用者の視点が表示部8上にあると判断する。ここで、所定の範囲の境界値は、事前に、利用者の視線が表示部8の方向を向いていると判断できる場合と、判断できない場合の視線ベクトルの値を計測して、統計的に定めておく。判定部14は、例えばCPUで動作するタスクで実現することができる。また、画像生成部4と一体のものとして構成しても、別体のものとして構成してもよい。
【0044】
以上のように構成された車両用画像表示装置1について、以下にその処理動作を説明する。
図15は車両用画像表示装置1が車両情報画像の生成と表示を行う場合の動作フロー図である。
【0045】
画像生成部4は、情報信号受信部2が周期的に送信する車両情報データを受信して車両速度やエンジン回転数などの車両情報を読み出し(S201)、読み出した車両情報に基づいて車両情報画像を生成し(S202)、左目用画像フレームバッファ5に車両情報画像を書き込む(S203)。
【0046】
次に、画像生成部4は、右目用画像フレームバッファ6に書き込む画像データとして、利用者が表示部8を注視しているか否かによって異なる画像データを生成する。
利用者が表示部8を注視しているか否かを判断する処理動作について、以下に説明する。視線検出部13が撮像部12により撮影された画像に基づいて視線ベクトルを算出し、算出した視線ベクトルのデータを判定部14に出力する(S204)。この視線ベクトルが所定の範囲内にあるか否かについは、判定部14が判定する(S205)。
【0047】
判定部14は、視線検出部13により算出された視線ベクトルが所定の範囲内である場合と判定したとき、視線ベクトルが所定の範囲内に連続して含まれている時間である連続注視時間を計測し(S206)、連続注視時間が事前に定めた所定の値T以上か否かを判定する(S207)。そして、判定部14は、連続注視時間が事前に定められた所定の値T以上であると判定した場合、利用者が表示部8を注視していることを知らせる信号を画像生成部4に対して出力する。
【0048】
このように、利用者が真正面を向いたときの視線ベクトルに対する、受信した視線ベクトルの垂直方向と水平方向の角度が両方とも所定の範囲内である時間が所定の時間以上連続した場合、判定部14から画像生成部4に対して所定の信号が出力される。そして、連続注視時間がT以上である場合は、画像生成部4は左目用画像フレームバッファ5に書き込んだ車両情報画像を右目用画像フレームバッファ6に書き込み(S208)、T未満の場合は、画像生成部4はすべての画素が車両情報画像の背景色である背景画像を右目用画像フレームバッファ6に書き込む(S210)。
【0049】
また、S205で視線ベクトルが所定の範囲外であると判断した場合は、判定部14は連続注視時間をクリアする(S209)。この場合も、画像生成部4は、背景画像を右目用画像フレームバッファ6に書き込む(S210)。
その後、画像生成部4は車両情報画像生成処理の終了かどうかを判定し(S211)、終了まで車両情報画像生成処理を継続する。
【0050】
以上のように本実施の形態によれば、利用者がS207で用いた値である所定の時間T以上ディスプレイ画面を見続けた場合は、利用者が輻輳点をディスプレイの表示面に合わせる余裕がある状況であると判断して、利用者の両目に車両情報画像が見えるように表示するため、車両情報画像をより鮮明に表示することができる。
【0051】
なお、本実施の形態において、左目用の画像は車両情報画像、右目用の画像は背景画像と分離したが、左目用の画像と右目用の画像をそれぞれ、利用者に車両情報の表示同士が重なって見えないように、車両情報画像と背景画像を混在させた画像を1つのコンテンツとして扱っても同じ効果が得られる。図16〜図18に、図12以外の左目用画像と右目用画像との組み合わせの例を示す。
【0052】
例えば、図16に示すように、(a)上半分に車両情報が表示された画像(この場合、車速と背景画像とを1つのコンテンツとして扱う)と、(b)下半分に車両情報が表示された画像(この場合、エンジン回転数と背景画像とを1つのコンテンツとして扱う)の組み合わせとすると、(c)に示すように輻輳点が表示部よりも遠くにある場合に左目用画像と右目用画像が横方向にずれて見える横方向のずれが生じても、車両情報の表示は重ならない。したがって、車両情報画像と背景画像とを組み合わせた場合と同じ効果を得ることができる。
【0053】
また、図17に示すように、輻輳点が表示部よりも遠くにあることによる、横方向のずれは、左目は右方向へ、左目は左方向へと、反対方向に生じることから、(a)右半分に車両情報が表示された画像を左目用画像とし、(b)左半分に車両情報が表示された画像を右目用画像としても、(c)に示すように、輻輳点が表示部よりも遠くにあることにより左目と右目に見える画像の間に横方向のずれが生じても、車両情報の表示が重なることがない。
【0054】
また、図18に示すように、無限遠を見たときのように両目の視線が平行である場合に生じる表示面における視線のずれ幅に対応した緩衝領域Xを表示面の中央付近に設ければ、緩衝領域Xの(a)右半分に車両情報が表示された画像を左目用とし、(b)左半分に車両情報が表示された画像を右目用として組み合わせても、(c)に示すように、輻輳点が表示部よりも遠くにあることにより横方向のずれが生じても、車両情報の表示が重なることがない。
【0055】
なお、図16〜図18に示したように、左目用画像と右目用画像の両方に車両情報に関する表示を含む場合、左フレームバッファに車両情報画像を書き込むステップ(図7のS103、図15のS203)をスキップし、右フレームバッファに車両情報画像を書き込むステップ(図7のS105、図15のS208)では、左目用画像フレームバッファおよび右目用画像フレームバッファに、左目用画像と右目用画像とを組み合わせた画像を書き込み、右フレームバッファに背景画像を書き込むステップ(図7のS106、図15のS210)では、左目用画像フレームバッファに左目用画像を書き込み、右目用画像フレームバッファに右目用画像を書き込む構成とすれば良い。
【0056】
また、図7の動作フローでは、左目用画像フレームバッファに車両情報画像、右目用画像フレームバッファに背景画像を書き込んだが、左右逆でも同じ効果が得られる。
【0057】
また、表示部8の立体視方式の一例としてレンチキュラ方式を示したが、パララックスバリア方式、フレームシーケンシャル方式など、その他の方式でも同じ効果が得られる。
【0058】
また、視線検出方式の一例として画像解析のみで行う方法を示したが、赤外線を照射する角膜反射法や、目の周辺の電位差を測定する網膜角膜電位法など、他の方法でも同じ効果が得られる。
【0059】
本発明の第1の車両用画像表示装置は、右目用画像と左目用画像とを表示する表示部を備え、前記右目用画像と前記左目用画像とは、それぞれ異なるコンテンツを表す画像である。この構成により、表示領域毎に異なる画像を表示して、左右の目に異なるコンテンツを表す画像を視認させることができる。
【0060】
本発明の第2の車両用画像表示装置は、第1の車両用画像表示装置において、入力されたデータに基づいて前記右目用画像と前記左目用画像とを生成する画像生成部を備え、前記画像生成部が前記右目用画像と前記左目用画像とを前記表示部の所定の領域に表示させる。この構成により、車両に搭乗している利用者が遠方を見ている状態のまま視界に入ってくる画像として、左右の目で反対方向に生じる視線のずれを考慮して、画像生成部により右目用と左目用とで画像を生成し、左右の目に別の画像を視認させることができる。
【0061】
前記第1の車両用画像表示装置の前記表示部は、前記右目用画像を表示する右目用表示領域と前記左目用画像を表示する左目用表示領域とが交互に配置されたものであり、前記表示部を覆うレンチキュラーレンズをさらに備えた構成とすることができる。この構成により、左目用表示領域と右目用表示領域に表示した異なる画像を、右目と左目にそれぞれ認識させることができる。
【0062】
前記第1の車両用画像表示装置の前記右目用画像および前記左目用画像のいずれか一方は、自装置が搭載される車両に関するコンテンツを表す車両情報画像とすることができる。この構成により、輻輳点が表示部よりも遠くにあることにより左目と右目に見える画像の間にずれが生じた場合であっても、情報の表示が重なって視認される現象の発生を防止することができる。
【0063】
前記第2の車両用画像表示装置は、自装置が搭載される車両の速度を検出する車両速度検出部をさらに備え、前記画像生成部は、前記車両速度検出部により車両速度が所定の値以下であることが検出された場合に、前記右目用画像と前記左目用画像とを同一のコンテンツを表す画像として生成する構成とすることができる。この構成により、注視点までの距離が小さいことから、上述した視線のずれが小さい所定の車両速度以下の場合は、両目で一つのコンテンツを表す同一の画像を視認することができる。
【0064】
前記第2の車両用画像表示装置は、利用者の視線が前記表示部にあるか否かを検出する視線検出部をさらに備え、前記画像生成部は、前記視線検出部により利用者の視線が所定の時間以上前記表示部にあると検出された場合に、前記右目用画像と前記左目用画像とを同一のコンテンツを表す画像として生成する構成とすることができる。この構成により、利両者の視線が表示部の表示面にある場合は、両目で一つのコンテンツを表す同一の画像を視認することができる。
【0065】
前記視線検出部は、利用者の顔の向きと目領域と瞳孔領域を検出し、利用者の視線方向を算出するものとして構成することができる。この構成により、利用者の注視点の移動を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の車両用画像表示装置は、メーターパネルなどの車載情報表示システムとして有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用画像表示装置
2 情報信号受信部
3 部品画像蓄積部
4 画像生成部
5 左目用画像フレームバッファ
6 右目用画像フレームバッファ
7 画像信号変換部
8 表示部
8L 左目用画像表示領域
8R 右目用画像表示領域
9 検出部
10 レンチキュラーレンズ
12 撮像部
13 視線検出部
14 判定部
20 CAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右目用画像と左目用画像とを表示する表示部を備え、
前記右目用画像と前記左目用画像とは、それぞれ異なるコンテンツを表す画像であることを特徴とする車載用画像表示装置。
【請求項2】
入力されたデータに基づいて前記右目用画像と前記左目用画像とを生成する画像生成部を備え、
前記画像生成部が前記右目用画像と前記左目用画像とを前記表示部の所定の領域に表示させることを特徴とする請求項1に記載の車載用画像表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記右目用画像を表示する右目用表示領域と前記左目用画像を表示する左目用表示領域とが交互に配置されたものであり、
前記表示部を覆うレンチキュラーレンズをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の車載用画像表示装置。
【請求項4】
前記右目用画像および前記左目用画像のいずれか一方は、自装置が搭載される車両に関するコンテンツを表す車両情報画像であることを特徴とする請求項1に記載の車載用画像表示装置。
【請求項5】
自装置が搭載される車両の速度を検出する車両速度検出部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記車両速度検出部により車両速度が所定の値以下であることが検出された場合に、前記右目用画像と前記左目用画像とを同一のコンテンツを表す画像として生成することを特徴とする請求項2に記載の車両用画像表示装置。
【請求項6】
利用者の視線が前記表示部にあるか否かを検出する視線検出部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記視線検出部により利用者の視線が所定の時間以上前記表示部にあると検出された場合に、前記右目用画像と前記左目用画像とを同一のコンテンツを表す画像として生成することを特徴とする請求項2に記載の車両用画像表示装置。
【請求項7】
前記視線検出部は、利用者の顔の向きと目領域と瞳孔領域を検出し、利用者の視線方向を算出するものであることを特徴とする請求項6に記載の車両用画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−19964(P2013−19964A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151120(P2011−151120)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】