説明

車両用空気調和システム

【課題】暖房効率の低下を伴わず、しかも、質の高い暖房風を車室内に供給することができる暖房運転ができる車両用空気調和システムを提供する。
【解決手段】空気導入口16から導入した送風が流れる第1送風路14及び第2送風路15と、第1送風路14に配置され、冷凍サイクルの高圧側を熱源とし送風を加熱するたヒータコア52と、第2送風路15に配置され、冷凍サイクルの低圧側を熱源とし送風を冷却するエバポレータ46とを備え、暖房運転では、エバポレータ46の出口側冷風温度が外気温度より低い場合にはエバポレータ46を通過した冷風の少なくとも一部を車室外に排気し、エバポレータ46の出口側冷風温度が外気温度より高い場合にはエバポレータ46を通過した冷風をヒータコア52の上流側に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷房運転と暖房運転ができる車両用空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の車両用空気調和システムとしては、特許文献1に開示されたものがある。この車両用空気調和システム100は、図10に示すように、フロントユニット101とリアユニット110を有する。フロントユニット101にはヒートポンプ式冷房装置120のフロント側内部熱交換器121とエンジン冷却用循環装置130のヒータコア131がこの順で配置されている。フロントユニット101の上流端には空気導入口102が、フロントユニット101の下流端には複数の室内吹出口103が設けられている。リアユニット110には、ヒートポンプ式冷房装置120のリア側内部熱交換器122が配置されている。リアユニット110の上流端には空気導入口111が、リアユニット110の下流端には室内吹出口112と共に室外排出口113が設けられている。室内吹出口112と室外排出口113は排気ドア114によって互いの開閉割合が調整される。
【0003】
ヒートポンプ式冷房装置120は、冷媒を圧縮するコンプレッサ123と、外部コンデンサ124と、前記したフロント側内部熱交換器121と、前記したリア側内部熱交換器122と、サブ熱交換器125とを有し、冷房運転ではフロント側内部熱交換器121及びリア側内部熱交換器122がエバポレータとして機能し、暖房運転ではフロント側内部熱交換器121及びリア側内部熱交換器122がコンデンサとして機能し、熱回収暖房運転ではフロント側内部熱交換器121がコンデンサとし、且つ、リア側内部熱交換器122がエバポレータとして機能するよう冷媒経路及び冷媒圧力を調整できるよう構成されている。
【0004】
暖房運転では、リアユニット110に導入された送風は、リア側内部熱交換器122で加熱され、この加熱によって得られた温風が室内吹出口112から車室内に供給される。これによって、リア側室内が暖房される。
【0005】
熱回収暖房運転では、リアユニット110に導入された送風は、リア側内部熱交換器122で冷媒と熱交換され、熱交換によって得られた冷風が室外排出口113から車外に排気される。
【0006】
リア側内部熱交換器122を通過した冷媒は、送風との熱交換によって吸熱して高温となる。この高温の冷媒がコンプレッサ123で圧縮されると、更に高温の冷媒が吐出されるため、暖房性能の向上となる。つまり、車室外に排出する送風の熱を冷媒によって回収し、暖房性能の向上を図らんとするものである。
【特許文献1】特開2000−62449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車室内の空気を車室外に排気すると、それと同量の外気が車室内に導入される。従って、リア側内部熱交換器122を通過した送風の温度が外気温度より高い場合には、排気した空気温度よりも低い温度の外気が車室内に導入されるため、その分だけ暖房性能が低下するという問題がある。特に、外気温が極低温の場合には、排気する送風の温度と外気温の差が大きくなる場合があり、この場合には暖房性能が大きく低下する事態が発生することになる。
【0008】
ここで、リア側内部熱交換器122を通過した送風の温度が外気温度より高い場合には、排気せずに車室内に導入することが考えられるが、リア側内部熱交換器122を通過した空気は冷風であるため、この冷風をそのまま車室内に導入すると暖房感が著しく阻害され、室の高い暖房風が車室内に供給されない。
【0009】
そこで、本発明は、暖房効率の低下を伴わず、しかも、質の高い暖房風を車室内に供給することができる暖房運転ができる車両用空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する請求項1の発明は、空気導入口から導入した送風がそれぞれ流れる第1送風路及び第2送風路と、第1送風路に配置され、冷凍サイクルの高圧側を熱源とし送風を加熱するヒータコアと、第2送風路に配置され、冷凍サイクルの低圧側を熱源とし送風を冷却するエバポレータと、ヒータコアとエバポレータの双方の下流に設けられ、流入した送風を車室内に導く送風出口と、エバポレータの出口側冷風温度を検知するエバ出口冷風温度検知手段と、外気温度を検知する外気温検知手段とを有し、ヒータコアとエバポレータの内、少なくともエバポレータを通過した冷風を用いて車室内温度を降下させる冷房運転と、ヒータコアとエバポレータの内、少なくともヒータコアを通過した温風を用いて車室内温度を上昇させる暖房運転とを行うことができ、暖房運転では、エバポレータの出口側冷風温度が外気温度より低い場合にはエバポレータを通過した冷風の少なくとも一部を車室外に排気し、エバポレータの出口側冷風温度が外気温度より高い場合にはエバポレータを通過した冷風をヒータコアの上流側に戻すことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用空気調和システムであって、ヒータコア及びエバポレータは、冷暖房用冷媒循環装置のサイクル構成部品であり、冷暖房用冷媒循環装置は、潜熱変化によって熱交換を行う第1の冷媒が循環する第1循環経路を有するヒートポンプ式冷房装置と、第1循環経路とは別に、流体で、且つ、顕熱変化によって熱交換を行う第2の冷媒が循環する第2循環経路を有する暖房循環装置とを備え、ヒートポンプ式冷房装置の第1循環経路は、第1の冷媒を圧縮するコンプレッサと、第2循環経路内に配置され、第1の冷媒の熱を第2の冷媒に放熱するコンデンサと、第1の冷媒を膨張させる膨張手段と、膨張手段で膨張された第1の冷媒と送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータとを有し、暖房循環装置の第2循環経路は、第2の冷媒を循環させるポンプと、第2の冷媒を加熱するヒータと、第2の冷媒と送風との間で熱交換して送風を加熱するヒータコアと、第2の冷媒の熱を放熱させる放熱器とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2記載の車両用空気調和システムであって、暖房運転では、コンプレッサの入口側冷媒圧力が大気圧未満となる可能性のある車室内温度では、コンプレッサを停止状態とし、コンプレッサの入口側冷媒圧力が大気圧以上となる車室内温度となった場合に、コンプレッサを駆動させることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3記載の車両用空気調和システムであって、暖房運転で、且つ、コンプレッサの駆動状態では、コンプレッサによる暖房能力の不足分を補うだけの出力にヒータの暖房出力を制御したことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項2又は請求項3記載の車両用空気調和システムであって、暖房運転で、且つ、前記コンプレッサの駆動状態では、ヒータコアの出口側冷媒温度がコンプレッサの出口側冷媒温度より低くなるようにヒータの暖房能力を制御したことを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項2〜請求項5のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、第2の冷媒は、液体であり、コンデンサは、第2循環経路中に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項2〜請求項6のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、コンデンサは、第2循環流路内で、ヒータの上流でかつ放熱器の下流に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明は、請求項2〜請求項7のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、第1の冷媒は、二酸化炭素であることを特徴とする。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、エバポレータの出口側冷風温度が外気温度より低く、且つ、その温度差が小さい場合には、エバポレータを通過した冷風の一部のみを車室外に排気し、他の冷風を車室内に導入し、エバポレータの出口側冷風温度が外気温度より低く、且つ、その温度差が大きい場合には、エバポレータを通過した冷風の全てを車室外に排気することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、エバポレータの出口側冷風温度が外気温度より低い場合には、エバポレータを通過した冷風の少なくとも一部が車室外に排気されるが、車室外に排気した冷風より高温の外気が車室内に導入されるので、暖房効率が向上する。又、エバポレータの出口側冷風温度が外気温度より高い場合には、エバポレータを通過した冷風がヒータコアの上流側に戻されるので、エバポレータの出口側冷風よりも低温の外気が車室内に導入されることがない。その上、エバポレータを通過した冷風は、ヒータコアを通過した温風と混合等されて車室内に導入されるのではなく、再びヒータコアを通って加熱された後に車室内に導入されるため、温風として温度ムラのない質の高い暖房風を車室内に導入することができる。以上より、暖房効率の低下を伴わず、しかも、質の高い暖房風を車室内に供給することができる暖房運転が可能である。
【0020】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、ヒートポンプ式冷房装置の第1の冷媒は、暖房運転と冷房運転に係わらず第1循環経路を一定の経路で循環させれば良いため、ヒートポンプ式冷房装置の構成が簡単で良い。又、暖房用循環装置もコンデンサから熱を受ける第2の冷媒をヒータコアと放熱器を通る経路で循環させる構成であれば良い。そして、コンデンサから受けた熱を放熱器で車室外空気に放熱したり、コンデンサから受けた熱をヒータコアから車室内に放熱したりすることにより、冷房と暖房を兼用できる。以上より、ヒートポンプ式冷房装置を用いて暖房と冷房を行うシステムにあって、ヒートポンプ式冷房装置の構成を簡略化できると共に空調システム全体としても簡単な構成で済む。
【0021】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明の効果に加え、コンプレッサの入口側冷媒圧力が大気圧未満となると、ヒートポンプ式冷房装置の第1循環経路内に水分、空気などが浸入し腐食等の不具合が発生するが、このような不具合を防止できる。又、コンプレッサの入口側冷媒圧力が大気圧未満になると、冷媒流量が著しく少なくなり、これに伴ってコンプレッサへの戻りオイル量が減少し、潤滑不良によるコンプレッサの破壊等を招来する可能性があるが、このような不具合を防止できる。
【0022】
請求項4の発明によれば、請求項2又は請求項3の発明の効果に加え、ヒータに比べて成績係数(COP)の高いコンプレッサを最大限有効に稼動して、省動力化を図ることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、請求項2又は請求項3の発明の効果に加え、コンデンサで第1の冷媒の熱を第2の冷媒に確実に放熱させることができ、ヒートポンプ式冷房装置の暖房源としての稼動効率を向上させることができる。これにより、システムとしても省動力化になる。
【0024】
請求項6の発明によれば、請求項2〜請求項5の発明の効果に加え、コンデンサはいわゆる水冷式であるため、空冷式に比べて熱伝導率が高いためにコンパクト化でき、第1の冷媒の通路抵抗を減少させることができる。よって、通路抵抗が減少した分だけコンプレッサの所要動力が小さくなり、コンプレッサの駆動力を省力化できるとともにコンプレッサを小型化することができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、請求項2〜請求項6の発明の効果に加え、表面温度がヒータより低いコンデンサがヒータより先に第2の冷媒と熱交換を行うこととなり、コンデンサと第2の冷媒との温度差を極力大きくとることができ、コンデンサにおける熱交換効率を向上させることができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、請求項2〜請求項7の発明の効果に加え、第1の冷媒は二酸化炭素であるので、冷媒密度が大きく、コンプレッサの吐出温度も高いため、ヒートポンプ式冷房装置の暖房性能が優れたものとなる。又、低温状態でも飽和圧力が高いため、その分冷媒の流量をより確実に確保することができ、低温の環境下でもヒートポンプ式冷房装置を熱源として利用可能である。
【0027】
請求項9の発明によれば、請求項1〜請求項8の発明の効果に加え、外気導入から内気導入への移行時において、暖房感の違和感を極力防止ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
(実施形態)
図1〜図9は本発明の一実施形態を示す。図1は車両用空気調和システムの空調ユニットの概略構成図、図2は車両用空気調和システムの冷暖房用冷媒循環装置の概略構成図、図3は車両用空気調和システムの概略制御ブロック図、図4は暖房運転時における冷暖房用冷媒循環装置の制御フローチャート、図5は暖房運転時における空調ユニットのインテーク側制御フローチャート、図6は暖房運転時におけるコンプレッサと電気ヒータの制御を説明する特性線図、図7は空調ユニットのフル外気導入状態を示す概略構成図、図8は空調ユニットの半外気/内気導入状態を示す概略構成図、図9は空調ユニットのフル内気導入状態を示す概略構成図である。
【0030】
図1及び図2において、車両用空気調和システムは、車両の車室外に配置された空調ユニット10と、この空調ユニット10に配置されたエバポレータ46及びヒータコア52をサイクル構成部品とする冷暖房用冷媒循環装置40とを備えている。
【0031】
空調ユニット10は、図1に詳しく示すように、ユニットケース11を有する。このユニットケース11は、インテークケース12とこれが連結される本体ケース13とから構成されている。インテークケース12と本体ケース13内には、空調風を作成するための第1送風路14と第2送風路15がそれぞれ設けられている。インテークケース12には、第1送風路14と第2送風路15に空気を導入するための空気導入口16が設けられている。
【0032】
空気導入口16は、第1送風路14に開口する第1内気導入口17と、同じく第1送風路14に開口する外気導入口18と、第2送風路15に開口する第2内気導入口19とから構成されている。第1内気導入口17及び第2内気導入口19はそれぞれ車室内に開口し、外気導入口18は車室外に開口している。インテークケース12には、第1内気導入口17から導入する内気量(車室内の空気量)と外気導入口から導入する外気量を調整する内外気切替ドア20が設けられている。内外気切替ドア20は、図1にて実線位置のフル内気導入位置(図9参照)と図1にて仮想線位置のフル外気導入位置(図7参照)との間を変移し、第1内気導入口17と外気導入口18の開閉割合を調整できる。フル内気位置とフル外気位置の中間位置は半外気/内気導入位置(図8参照)である。
【0033】
インテークケース12の第1送風路14と第2送風路15には、第1ブロアファン21と第2ブロアファン22がそれぞれ配置されている。第1ブロアファン21は、第1送風路14に内気や外気を吸引する。第2ブロアファン22は、第2送風路15に内気を吸引する。
【0034】
本体ケース13の第1送風路14内には、冷暖房用冷媒循環装置40のヒータコア52が、第2送風路15内には冷暖房用冷媒循環装置40のエバポレータ46がそれぞれ配置されている。ヒータコア52は、第1送風路14の送風を加熱し、温風とする。エバポレータ46は、第2送風路15の送風を冷却し、冷風とする。冷暖房用冷媒循環装置40の構成については、下記に詳述する。
【0035】
本体ケース13のヒータコア52及びエバポレータ46の直ぐ上流には、配風ドア23が設けられている。配風ドア23は、第1送風路14と第2送風路15に導入された送風を全てヒータコア52に送る位置と、逆に全てエバポレータ46に送る位置との間を変移でき、ヒータコア52への送風量とエバポレータ46への送風量の割合を調整できる。図1にて実線の中間位置では、第1送風路14から導入された送風はヒータコア52に、第2送風路15から導入された送風はエバポレータ46にそれぞれ配風する。
【0036】
本体ケース13のヒータコア52及びエバポレータ46の直ぐ下流には、第1送風路14と第2送風路15が合流するミックス室24が設けられていると共にミックスドア25が設けられている。ミックス室24では、ミックスドア25の位置によってヒータコア52からの温風とエバポレータ46からの冷風がミックスされたり、ミックスされることなく排出されたりする。ミックスドア25は、図1にて実線位置のフル暖房位置と、図1にて仮想線のフル冷房位置の間を変移できる。又、ミックス室24には、送風出口であるデフ吹出口26、ベント吹出口27、フット吹出口28が開口され、これら吹出口26,27,28より送風が車室内に導かれる。デフ吹出口26はデフドア29によって、ベント吹出口27はベントドア30によって、フット吹出口28はフットドア31によって吹き出しモードに応じてそれぞれ開閉される。
【0037】
また、インテークケース12と本体ケース13には、冷風還流路32が設けられている。冷風還流路32は、エバポレータ46の直ぐ下流に冷風還流入口32aを有し、第1送風路14の第1ブロアファン21の更に上流位置(ヒータコア52より上流位置)に冷風還流出口32bを有する。冷風還流入口32aは、還流ドア33によって開閉される。冷風還流路32の冷風還流出口32bの直ぐ上流には車室外に開口する排気口34が設けられている。排気口34は、ラム圧が作用しない位置に設定されている。冷風還流出口32bと排気口34は、排気ドア35によって互いの開閉割合が調整できるようになっている。排気ドア35は、図1の実線位置では全ての還流冷風を第1送風路14に還流し、図1の仮想線位置では全ての還流冷風を車室外に排気する。図1の実線位置と図1の仮想線位置の中間位置では、還流冷風の半分を第1送風路14に還流し、他の半分を車室外に排気する。
【0038】
また、車両用空気調和システムには、車室内の温度を検知する車室内温度検知センサ36、外気の温度を検知する外気温検知手段である外気温検知センサ37、エバポレータ46の出口側冷風温度を検知するエバ出口冷風温度検知手段であるエバ出口冷風温度検知センサ38等が設けられている。
【0039】
次に、冷暖房用冷媒循環装置40を説明する。図2に示すように、冷暖房用冷媒循環装置40は、ヒートポンプ式冷房装置Aと暖房循環装置Bとの組み合わせによって構成されている。
【0040】
ヒートポンプ式冷房装置Aは、第1の冷媒としての二酸化炭素が封入された第1循環経路41を有し、この第1循環経路41中に、コンプレッサ42,コンデンサである水冷コンデンサ43、内部熱交換器44,膨張手段である膨張弁45、エバポレータ46及びアキュームレータ47が順に設けられている。つまり、冷凍サイクルが構成されている。
【0041】
コンプレッサ42は、吸入した比較的低温低圧の第1の冷媒を圧縮して高温高圧の冷媒として吐出する。
【0042】
水冷コンデンサ43は、下記する第2循環経路48中の機器収容室55内に配置されており、コンプレッサ42から圧送された第1の冷媒を第2の冷媒によって冷却する。すなわち、水冷コンデンサ43において第1の冷媒と第2の冷媒との間で熱交換が行われ、第2の冷媒は第1の冷媒によって加熱される。
【0043】
内部熱交換器44は、水冷コンデンサ43から送出された第1の冷媒とアキュームレータ47から送出されたより冷温の第1の冷媒との間で熱交換させ、水冷コンデンサ43から送出された第1の冷媒はさらに冷却される。
【0044】
膨張弁45は、内部熱交換器44を通過した第1の冷媒を膨張(減圧)させて低温低圧のガスとしてエバポレータ46へと送出する。
【0045】
エバポレータ46は、冷凍サイクルの低圧側を熱源とし、膨張弁45から送出された第1の冷媒とエバポレータ46を通過する送風を熱交換させて送風を冷却する。
【0046】
アキュームレータ47は、エバポレータ46から送出された第1の冷媒を気液分離して気相状態の第1の冷媒のみを内部熱交換器44へと送出し、液相状態の第1の冷媒を一時的に貯留する。
【0047】
暖房循環装置Bは、第2の冷媒としての水や不凍液などの液体が封入された第2循環経路48を有し、この第2循環経路48中に、ポンプ49、放熱器50、機器収容室55及びヒータコア52が順に設けられている。機器収容室55は、第2循環経路48よりも大きな断面積を有するスペースであり、この内部に上記した水冷コンデンサ43と共にヒータである電気ヒータ51が収納されている。
【0048】
ポンプ49は、第2の冷媒を第2循環経路48内に循環させるため、吸入した第2の冷媒を加圧して圧送する。ポンプ49で圧送された液体の冷媒は、相変化することなく液相のまま第2循環経路48内を循環し、熱交換により顕熱変化する。
【0049】
放熱器50は、第2の冷媒の熱を外気に放熱させるものであり、電動ファンや走行風によって外気が吹き付けられ、第2の冷媒と外気との間で熱交換が行われる。
【0050】
電気ヒータ51は、水冷コンデンサ43の下流側に設けられ、通電することで発熱して第2の冷媒を加熱する。
【0051】
ヒータコア52は、冷凍サイクルの高圧側と電気ヒータ51を熱源とし、第2の冷媒とヒータコア52を通過する送風を熱交換させて送風を加熱する。
【0052】
第2循環経路48には、放熱器50をバイパスする放熱器バイパス流路53が設けられ、放熱器バイパス流路53の上流側に設けられた流路切換弁54を切り換えることで、第2の冷媒の流れを放熱器50側又は放熱器バイパス流路53側へと切り換えることができる。
【0053】
又、ヒートポンプ式冷房装置Aには、コンプレッサ42の出口側冷媒温度を検知するコンプ出口冷媒温度検知センサ56が設けられている。暖房循環装置Bには、ヒータコア52の出口側冷媒温度を検知するヒータコア出口冷媒温度検知センサ57が設けられている。
【0054】
次に、車両用空気調和システムの制御系を簡単に説明する。図3に示すように、制御部39には、車室内温度検知センサ36、外気温検知センサ37、エバ出口冷風温度検知センサ38、コンプ出口冷媒温度検知センサ56、ヒータコア出口冷媒温度検知センサ57の各検知データが入力されている。制御部39は、コンプレッサ42、ポンプ49、電気ヒータ51、第1ブロアモータ21a、第2ブロアモータ22aの駆動を制御すると共に、流路切換弁54の切り換えを制御する。又、制御部39は、各種ドアモータ20a,23a,25a,29a,30a,31a,33a,35aの駆動を制御する。そして、暖房モードでは図4及び図5に示すフローチャートを実行する。これらフローチャートの具体的内容については、次の動作で説明する。
【0055】
次に、車両用空気調和システムの動作を説明する。この車両用空気調和システムでは、ヒータコア52とエバポレータ46の内、少なくともエバポレータ46を通過した冷風を用いて車室内温度を降下させる冷房運転と、ヒータコア52とエバポレータ46の内、少なくともヒータコア52を通過した温風を用いて車室内温度を上昇させる暖房運転とを行うことができる。
【0056】
冷房運転が選択されると、ヒートポンプ式冷房装置Aのコンプレッサ42が駆動されると共に、暖房循環装置Bのポンプ49が駆動されるが、電気ヒータ51はオンされない。又、流路切換弁54は、通常では放熱器50側とされる。これにより、ヒートポンプ式冷房装置Aは、その水冷コンデンサ43の熱が暖房循環装置Bのヒータコア52と放熱器50を介して放熱されるため、エバポレータ46が第2送風路15を通過する送風より吸熱し、第2送風路15を通過する送風が冷風とされる。このように得られた冷風がそのまま、又は、ヒータコア52を通過した温風とエアミックスされて所望温度の冷風として車室内に導入される。
【0057】
図4に示すように、暖房運転が選択されると(ステップS1)、暖房循環装置Bのポンプ49が駆動されると共に電気ヒータ51がオンされる(ステップS2)。又、流路切換弁54は、通常では放熱器バイパス流路53側とされる。
【0058】
電気ヒータ51がオンされると(ステップS2)、車室内温度TrがA℃(例えば−10℃)を超える温度であるか否かをチェックする。(ステップS3)。そして、車室内温度TrがA℃を超える温度であればコンプレッサ42の駆動を開始する(ステップS4)。
【0059】
ここで、A℃は、コンプレッサ42の入口側冷媒圧力が大気圧未満となる可能性のない最低温度であり、この実施形態では、第1の冷媒が二酸化炭素(例えばR134a)であるため、例えば−10℃に設定されている。つまり、R134aは−26.5℃で冷媒の飽和圧力が1気圧となるため、車室内温度Trが−10℃以上あればエバポレータ46の出口側冷媒圧力が大気圧以上になることから−10度に設定されている。
【0060】
コンプレッサ42が駆動されると(ステップS4)、電気ヒータ51の出力を徐々に小さくする制御を行う(ステップS5)。具体的には、コンプレッサ42による暖房能力の不足分を補うだけの出力に電気ヒータ51の暖房出力を制御する。例えば、冷暖房用冷媒循環装置40のコンプレッサ42と暖房循環装置Bの電気ヒータ51のトータル熱量を設定し、この設定したトータル熱量となるよう電気ヒータ51の出力を調整する。つまり、コンプレッサ42の熱量は作動開始してから時間と共に徐々に大きくなるため、電気ヒータ51の熱量をこれに合わせて徐々に微減する。
【0061】
又、コンプレッサ42が駆動されると、車室内温度Trが室内目標温度Ttを超えたか否かをチェックする(ステップS6)。そして、車室内温度Trが室内目標温度Ttを超えると(ステップS6)、ヒータコア52の出口側冷媒温度Thがコンプレッサ42の出口側冷媒温度Tdを超えたか否かをチェックする(ステップS7)。そして、ヒータコア52の出口側冷媒温度Thがコンプレッサ42の出口側冷媒温度Tdを超えると、電気ヒータ51をオフする(ステップS8)。これにより、ヒータコア52の出口側冷媒温度Thがコンプレッサ42の出口側冷媒温度Tdより低くなるよう制御する。
【0062】
暖房運転にあって、車両のドアが開放される等して車室内温度TrがA℃以下になると、コンプレッサ42の駆動が停止される(ステップS9)。又、暖房運転が解除されると(ステップS1)、コンプレッサ42及び電気ヒータ51の駆動が共に停止される(ステップS9)。
【0063】
次に、外気が極低温(例えば−20℃)の場合に車両用空気調和システムが始動される場合の具体例を説明する。図6に示すように、外気温が−20度であると車室内温度もほぼ−20℃である。暖房運転が選択されると(ステップS1)、電気ヒータ51のみが駆動される(ステップS2)。コンプレッサ42は駆動されない。車両用空気調和システムの始動時には、車室内温度は外気とほぼ同一の極低温(例えば−20℃)であるため、電気ヒータ51の熱のみで第1送風路14を通過する送風が加熱され、この加熱によって得られた温風が車室内に導入される。
【0064】
そして、車室内温度TrがA℃(例えば−10℃)を超える温度になって初めてコンプレッサ42が駆動される(ステップS3,S4)。これにより、コンプレッサ42の熱と電気ヒータ51の熱によって第1送風路14を通過する送風が加熱され、この加熱によって得られた温風が車室内に導入される。
【0065】
車室内温度TrがA℃(例えば−10℃)を超えると、電気ヒータ51の出力を微減とする制御が行われる(ステップS5)。又、ヒータコア52の出口側冷媒温度Thがコンプレッサ42の出口側冷媒温度Td以上になると、電気ヒータ51がオフされる(ステップS8)。これによって、ヒートポンプ式冷房装置Aのコンデンサ43の熱が暖房循環装置Bに確実に放熱される。
【0066】
又、車両用空気調和システムの始動時の外気温がA℃(例えば−10℃)以上の場合には、電気ヒータ51とコンプレッサ42が共に始動時から駆動される。
【0067】
次に、暖房運転における空気導入・排気に関する動作を説明する。ここで、暖房運転では、ミックスドア25はフル暖房位置に位置され、還流ドア33は冷風還流入口32aの開放位置に位置される。これにより、エバポレータ46を通過した冷風は、全て冷風還流路32に導かれ、ヒータコア52を通過した温風のみが車室内に導入される。これを踏まえて、エバポレータ46の還流冷風の流れと空気導入・排気について説明する。
【0068】
図5に示すように、暖房運転が選択されると(ステップS20)、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambを超える温度か否かチェックされる(ステップS21)。エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより高ければ、図9に示すように、排気ドア35及び内外気切替ドア20がフル内気位置とされる(ステップS23)。
【0069】
エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより低ければ、その温度差がB℃(例えば10℃)以上であるか否かがチェックされる(ステップS22)。温度差がB℃以上であれば、図7に示すように、排気ドア35及び内外気切替ドア20がフル外気位置とされる(ステップS24)。温度差がB℃(例えば10℃)未満であれば、図8に示すように、排気ドア35及び内外気切替ドア20が半内気/外気位置とされる(ステップS25)。
【0070】
次に、車両用空気調和システムの始動時の外気温度が極低温(例えば−20℃)の場合の具体例を説明する。外気温度Tambが−20℃であれば車室内温度もほぼ−20℃である。暖房運転が選択されると(ステップS20)、電気ヒータ51が駆動して車室内温度が徐々に加熱される。車室内温度Trが−10℃になるとコンプレッサ42が駆動し、第2送風路15を通過する送風がエバポレータ46で冷却され、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapは外気温度TambよりB℃(例えば10℃)以上も低い温度となる。すると、排気ドア35及び内外気切替ドア20が図7に示すフル外気位置とされ、エバポレータ46を通過した冷風は、冷風還流路32を通って排気口34より車室外に排気される。そして、外気導入口18から−20℃の外気が導入される。導入された外気はエバポレータ46を通過した冷風より高温であるため、外気を加熱する場合に比べて効率の良い暖房ができる。
【0071】
車室内温度が徐々に暖まってくると、エバポレータ46を通過した冷風の温度も徐々に高くなり、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより温度差がB℃(例えば10℃)未満の温度となる。すると、排気ドア35及び内外気切替ドア20が図8に示す半外気/内気位置とされ、エバポレータ46を通過した冷風は、冷風還流路32を通って排気口34より半分だけ排気され、後の半分はヒータコア52の上流に還流される。第1送風路14には外気と還流冷風のミックスされた送風が流れ込み、このミックスされた送風がヒータコア52で加熱され、加熱された温風が車室内に導入される。
【0072】
車室内温度が更に暖まってくると、エバポレータ46を通過した冷風の温度も更に高くなり、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapは外気温度Tambより高温となる。すると、排気ドア35及び内外気切替ドア20が図9に示すフル内気位置とされ、エバポレータ46を通過した冷風は、全てヒータコア52の上流に還流される。この還流冷風がヒータコア52で加熱され、加熱された温風が車室内に導入される。エバポレータ46を通過した冷風は、外気よりも高温であるため、外気を加熱するよりも効率の良い暖房ができる。
【0073】
また、エバポレータ46を通過した冷風は、ヒータコア52を通過した温風とヒータコア52の下流で混合等されて車室内に導入されるのではなく、再びヒータコア52を通って加熱された後に車室内に導入されるため、温風として温度ムラのない質の高い暖房風が車室内に導かれる。
【0074】
以上説明したように、この車載用空気調和システムでは、暖房運転では、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより低い場合にはエバポレータ46を通過した冷風の少なくとも一部が車室外に排気され、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより高い場合にはエバポレータ46を通過した冷風がヒータコア52の上流側に戻されるよう構成されている。従って、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより低い場合には、エバポレータ46を通過した冷風の少なくとも一部が車室外に排気されるが、車室外に排気した冷風より高温の外気が車室内に導入されるため、暖房効率が向上する。又、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより高い場合には、エバポレータ46を通過した冷風がヒータコア52の上流側に戻されるため、エバポレータ46の出口側冷風よりも低温の外気が車室内に導入されることがない。その上、エバポレータ46を通過した冷風は、ヒータコア52を通過した温風とヒータコア52の下流で混合等されて車室内に導入されるのではなく、再びヒータコア52を通って加熱された後に車室内に導入されるため、温風として温度ムラのない質の高い暖房風が車室内に導かれる。以上より、暖房効率の低下を伴わず、しかも、質の高い暖房風を車室内に供給することができる暖房運転が可能である。
【0075】
この実施形態では、ヒータコア52は、冷凍サイクルの高圧側と電気ヒータ51を熱源としているが、冷凍サイクルの高圧側のみを熱源とし、第2の冷媒とヒータコア52を通過する送風を熱交換させて送風を加熱するよう構成しても良い。
【0076】
この実施形態では、ヒータコア52及びエバポレータ46は、冷暖房用冷媒循環装置40のサイクル構成部品であり、冷暖房用冷媒循環装置40は、潜熱変化によって熱交換を行う第1の冷媒が循環する第1循環経路41を有するヒートポンプ式冷房装置Aと、第1循環経路41とは別に、流体で、且つ、顕熱変化によって熱交換を行う第2の冷媒が循環する第2循環経路48を有する暖房循環装置Bとを備え、ヒートポンプ式冷房装置Aの第1循環経路41は、第1の冷媒を圧縮するコンプレッサ42と、第2循環経路48内に配置され、第1の冷媒の熱を第2の冷媒に放熱する水冷コンデンサ43と、第1の冷媒を膨張させる膨張弁45と、膨張弁45で膨張された第1の冷媒と送風との間で熱交換して送風を冷却するエバポレータ46とを有し、暖房循環装置Bの第2循環経路48は、第2の冷媒を循環させるポンプ49と、第2の冷媒を加熱する電気ヒータ51と、第2の冷媒と送風との間で熱交換して送風を加熱するヒータコア52と、第2の冷媒の熱を放熱させる放熱器50とを有する。
【0077】
従って、ヒートポンプ式冷房装置Aの第1の冷媒は、暖房運転と冷房運転に係わらず第1循環経路41を一定の経路で循環させれば良いため、ヒートポンプ式冷房装置Aの構成が簡単で良い。又、暖房循環装置Bも水冷コンデンサ43から熱を受ける第2の冷媒をヒータコア52と放熱器50を通る経路で循環させる構成であれば良い。そして、水冷コンデンサ43から受けた熱を放熱器50で車室外空気に放熱したり、水冷コンデンサ43から受けた熱をヒータコア52から車室内に放熱したりすることにより、冷房と暖房を兼用できる。以上より、ヒートポンプ式冷房装置Aを用いて暖房と冷房を行うシステムにあって、ヒートポンプ式冷房装置Aの構成を簡略化できると共に空調システム全体としても簡単な構成で済む。
【0078】
この実施形態では、ヒータコア52及びエバポレータ46は、上記構成の冷暖房用冷媒循環装置40のサイクル構成部品で、且つ、ヒータコア52は冷凍サイクルの高圧側を熱源とし送風を加熱するものであり、エバポレータ46は冷凍サイクルの低圧側を熱源とし送風を冷却するものである。そして、ヒータコア52は冷凍サイクルの冷媒と室内に導く送風の間に二次冷媒を用いて熱交換するよう構成されているが、冷凍サイクルの冷媒と室内に導く送風との間で直接熱交換するよう構成しても良い。又、エバポレータ46は冷凍サイクルの冷媒と室内に導く送風との間で直接熱交換するよう構成されているが、冷凍サイクルの冷媒と室内に導く送風の間に二次冷媒を用いて熱交換するよう構成しても良い。
【0079】
この実施形態では、暖房運転では、コンプレッサ42の入口側冷媒圧力が大気圧未満となる可能性のある車室内温度では、コンプレッサ42を停止状態とし、コンプレッサ42の入口側冷媒圧力が大気圧以上となる車室内温度となった場合に、コンプレッサ42を駆動するよう構成した。従って、コンプレッサ42の入口側冷媒圧力が大気圧未満となると、ヒートポンプ式冷房装置Aの第1循環経路41内に水分、空気などが浸入し腐食等の不具合が発生するが、このような不具合を防止できる。又、コンプレッサ42の入口側冷媒圧力が大気圧未満になると、冷媒流量が著しく少なくなり、これに伴ってコンプレッサ42への戻りオイル量が減少し、潤滑不良によるコンプレッサ42の破壊等を招来する可能性があるが、このような不具合を防止できる。
【0080】
この実施形態では、暖房運転で、且つ、コンプレッサ42の駆動状態では、コンプレッサ42による暖房能力の不足分を補うだけの出力に電気ヒータ51の暖房出力を制御した。従って、電気ヒータ51より成績係数(COP)の高いコンプレッサ42を最大限有効に稼動させるため、省動力化を図ることができる。
【0081】
尚、この実施形態では、車室内温度TrがA℃(例えば−10℃)を超えた時点で電気ヒータ51の出力を低減するよう制御したが、車室内温度Trが室内目標温度Ttを超えた時点で電気ヒータ51の出力を低減するよう制御しても良い。このように制御すれば、即暖性能が向上する。
【0082】
この実施形態では、暖房運転で、且つ、コンプレッサ42の駆動状態にあって、車室内温度Trが室内目標温度Ttを超えると、ヒータコア52の出口側冷媒温度Thがコンプレッサ42の出口側冷媒温度Tdより低くなるように電気ヒータ51の暖房出力を制御した。従って、コンデンサ43で第1の冷媒の熱を第2の冷媒に確実に放熱させることができ、ヒートポンプ式冷房装置Aの暖房源としての稼動効率を向上させることができる。これにより、システムとしても省動力化になる。
【0083】
この実施形態では、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより低く、且つ、その温度差が小さい場合(B℃未満)には、エバポレータ46を通過した冷風の一部のみを車室外に排気し、他の冷風を車室内に導入し、エバポレータ46の出口側冷風温度Tevapが外気温度Tambより低く、且つ、その温度差が大きい場合(B℃以上)には、エバポレータ46を通過した冷風の全てを車室外に排気するよう構成した。従って、外気導入から内気導入への移行時において、暖房感の違和感を極力防止ができる。
【0084】
この実施形態では、排気ドア35と連動して内外気切替ドア20が同様に切替されるため、排気口34から内気が車室外に排出される場合には、外気が外気導入口18から入り込み、入り込んだ外気は常にヒータコア52を通過して車室内に導入される。従って、外気が車両のドアの隙間等から入り込むような事態を極力回避でき、車室内を質の高い暖房空間とすることができる。
【0085】
この実施形態では、コンデンサは、いわゆる水冷式、つまり水冷コンデンサ43であるため、空冷式に比べて熱伝導率が高いためにコンパクト化でき、第1の冷媒の通路抵抗を減少させることができる。よって、通路抵抗が減少した分だけコンプレッサ42の所要動力が小さくなり、コンプレッサ42の駆動力を省力化できるとともにコンプレッサ42を小型化することができる。
【0086】
この実施形態では、水冷コンデンサ43は電気ヒータ51の上流側に配置されるので、表面温度が電気ヒータ51より低い水冷コンデンサ43が電気ヒータ51より先に第2の冷媒と熱交換を行うこととなり、水冷コンデンサ43と第2の冷媒との温度差を極力大きくとることができ、水冷コンデンサ43における熱交換効率を向上させることができる。
【0087】
この実施形態では、第1の冷媒は二酸化炭素であるので、冷媒密度が大きく、コンプレッサ42の吐出温度も高いため、ヒートポンプ式冷房装置Aの暖房性能が優れたものとなる。又、低温状態(例えば−10℃)でも飽和圧力が高いため、その分冷媒の流量をより確実に確保することができ、低温の環境下でもヒートポンプ式冷房装置Aを熱源として利用可能である。
【0088】
この実施形態では、冷風還流路32は、第1ブロアファン21よりも更に上流に冷風を戻すので、冷風還流路32より還流された冷風と空気導入口16より導入された送風が第1ブロアファン21によって攪拌された後にヒータコア52に導かれるため、ヒータコア52には温度ムラのない冷風が導かれることになり、ヒータコア52より温度ムラのない温風が排出される。従って、エアミックス性が向上する。
【0089】
本発明は、暖房運転にあって、エバポレータ46を通過した冷風の温度と外気温度の高低比較によって、エバポレータ46を通過した冷風を車室内に導入したり、ヒータコア52の上流に戻したりするが、暖房運転は前記実施形態に示した暖房運転に限定されるものではなく、ヒータコア52とエバポレータ46の内、少なくともヒータコア52を通過した温風を用いて車室内温度を上昇させる運転であれば良い。
【0090】
また、暖房運転を行うか否かはユーザがマニュアルで選択するよう構成しても良く、又、暖房運転を行うか否かを自動で判定するよう構成しても良い。暖房運転を自動で判定する方法としては、検知した外気温が所定温度より低いか否かによって判定したり、検知した室内温度と目標室内温度との差が所定温度以上あるか否かによって判定したり、種々の判定方法がある。
【0091】
(その他)
前記実施形態では、ヒータとして電気ヒータ51を使用しているが、燃焼ヒータなどを用いても同様の作用・効果を得ることができる。
【0092】
前記実施形態では、第1の冷媒として二酸化炭素を、第2の冷媒として水や不凍液などの液体をそれぞれ使用しているが、これら以外を冷媒として使用しても良いことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施形態を示し、車両用空気調和システムの空調ユニットの概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、車両用空気調和システムの冷暖房用冷媒循環装置の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略制御ブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、暖房運転時における冷暖房用冷媒循環装置の制御フローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態を示し、暖房運転時における空調ユニットのインテーク側制御フローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態を示し、暖房運転時におけるコンプレッサと電気ヒータの制御を説明する特性線図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、空調ユニットのフル外気導入状態を示す概略構成図である。
【図8】本発明の一実施形態を示し、空調ユニットの半外気/内気導入状態を示す概略構成図である。
【図9】本発明の一実施形態を示し、空調ユニットのフル内気導入状態を示す概略構成図である。
【図10】従来例の車両用空気調和システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0094】
A ヒートポンプ式冷房装置
B 暖房循環装置
14 第1送風路
15 第2送風路
16 空気導入口
26 デフ吹出口(送風出口)
27 ベント吹出口(送風出口)
28 フット吹出口(送風出口)
37 外気温検知センサ(外気温検知手段)
38 エバ出口冷風温度検知センサ(エバ出口冷風温度検知手段)
40 冷暖房用冷媒循環装置
41 第1循環経路
42 コンプレッサ
43 水冷コンデンサ(コンデンサ)
45 膨張弁(膨張手段)
46 エバポレータ
48 第2循環経路
49 ポンプ
50 放熱器
51 電気ヒータ(ヒータ)
52 ヒータコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気導入口(16)から導入した送風がそれぞれ流れる第1送風路(14)及び第2送風路(15)と、前記第1送風路(14)に配置され、冷凍サイクルの高圧側を熱源とし送風を加熱するヒータコア(52)と、前記第2送風路(15)に配置され、冷凍サイクルの低圧側を熱源とし送風を冷却するエバポレータ(46)と、前記ヒータコア(52)と前記エバポレータ(46)の双方の下流に設けられ、流入した送風を車室内に導く送風出口(26),(27),(28)と、前記エバポレータ(46)の出口側冷風温度を検知するエバ出口冷風温度検知手段(38)と、外気温度を検知する外気温検知手段(37)とを有し、
前記ヒータコア(52)と前記エバポレータ(46)の内、少なくとも前記エバポレータ(46)を通過した冷風を用いて車室内温度を降下させる冷房運転と、前記ヒータコア(52)と前記エバポレータ(46)の内、少なくとも前記ヒータコア(52)を通過した温風を用いて車室内温度を上昇させる暖房運転とを行うことができ、
暖房運転では、前記エバポレータ(46)の出口側冷風温度が外気温度より低い場合には前記エバポレータ(46)を通過した冷風の少なくとも一部を車室外に排気し、前記エバポレータ(46)の出口側冷風温度が外気温度より高い場合には前記エバポレータ(46)を通過した冷風を前記ヒータコア(52)の上流側に戻すことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空気調和システムであって、
前記ヒータコア(52)及び前記エバポレータ(46)は、冷暖房用冷媒循環装置(40)のサイクル構成部品であり、
前記冷暖房用冷媒循環装置(40)は、潜熱変化によって熱交換を行う第1の冷媒が循環する第1循環経路(41)を有するヒートポンプ式冷房装置(A)と、前記第1循環経路(41)とは別に、流体で、且つ、顕熱変化によって熱交換を行う第2の冷媒が循環する第2循環経路(48)を有する暖房循環装置(B)とを備え、
前記ヒートポンプ式冷房装置(A)の前記第1循環経路(41)は、第1の冷媒を圧縮するコンプレッサ(42)と、前記第2循環経路(48)内に配置され、第1の冷媒の熱を第2の冷媒に放熱するコンデンサ(43)と、第1の冷媒を膨張させる膨張手段(45)と、前記膨張手段(45)で膨張された第1の冷媒と送風との間で熱交換して送風を冷却する前記エバポレータ(46)とを有し、
前記暖房循環装置(B)の前記第2循環経路(48)は、第2の冷媒を循環させるポンプ(49)と、第2の冷媒を加熱するヒータ(51)と、第2の冷媒と送風との間で熱交換して送風を加熱するヒータコア(52)と、第2の冷媒の熱を放熱させる放熱器(50)とを有することを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項3】
請求項2記載の車両用空気調和システムであって、
暖房運転では、前記コンプレッサ(42)の入口側冷媒圧力が大気圧未満となる可能性のある車室内温度では、前記コンプレッサ(42)を停止状態とし、前記コンプレッサ(42)の入口側冷媒圧力が大気圧以上となる車室内温度となった場合に、前記コンプレッサ(42)を駆動させることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の車両用空気調和システムであって、
暖房運転で、且つ、前記コンプレッサ(42)の駆動状態では、前記コンプレッサ(42)による暖房能力の不足分を補うだけの出力に前記ヒータ(51)の暖房出力を制御したことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項5】
請求項2又は請求項3記載の車両用空気調和システムであって、
暖房運転で、且つ、前記コンプレッサ(42)の駆動状態では、前記ヒータコア(52)の出口側冷媒温度が前記コンプレッサ(42)の出口側冷媒温度より低くなるように前記ヒータ(51)の暖房能力を制御したことを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
第2の冷媒は、液体であり、前記コンデンサ(43)は、第2循環経路(48)中に配置されていることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項7】
請求項2〜請求項6のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記コンデンサ(43)は、第2循環流路(48)内で、前記ヒータ(51)の上流でかつ前記放熱器(50)の下流に設けられていることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項8】
請求項2〜請求項7のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
第1の冷媒は、二酸化炭素であることを特徴とする車両用空気調和システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の車両用空気調和システムであって、
前記エバポレータ(46)の出口側冷風温度が外気温度より低く、且つ、その温度差が小さい場合には、エバポレータ(46)を通過した冷風の一部のみを車室外に排気し、他の冷風を車室内に導入し、前記エバポレータ(46)の出口側冷風温度が外気温度より低く、且つ、その温度差が大きい場合には、前記エバポレータ(46)を通過した冷風の全てを車室外に排気することを特徴とする車両用空気調和システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−13044(P2010−13044A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176810(P2008−176810)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】