説明

車両用空調システム

【課題】省エネルギーの下、より好適に車内の好適な空調を実現可能な車両用空調システムを提供する。
【解決手段】実施例1の車両用空調システムは、エンジン3、エンジン用ラジエータ5、ケミカルヒートポンプ7、放熱用熱交換器9、吸熱用熱交換器11、温気案内路13、冷気案内路15及び電動フラッパ25a〜25eを備えている。ケミカルヒートポンプ7は、再生室41と吸収室42と凝縮室43と蒸発室44とを有している。この車両用空調システムでは、蒸発室44内の冷熱により、吸熱用熱交換器11が冷気案内路15内の内気を冷却して車内の冷房を行う。また、吸収室42及び凝縮室43の熱により、放熱用熱交換器9が温気案内路13内の内気を加熱して車内の暖房を行う。また、電動フラッパ25a〜25eにより、温気案内路13と冷気案内路15とが連通され、冷却された内気を放熱用熱交換器9によって直接再加熱して車内の除湿を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来の車両用空調システムが開示されている。この車両用空調システムは、車両を駆動させる駆動源としてのエンジンと、駆動源用ラジエータのエンジン用ラジエータと、エンジンとエンジン用ラジエータとを接続し、熱交換媒体としての冷却水が循環可能な駆動源用放熱流路と、化学物質及び反応物質を有するケミカルヒートポンプとを備えている。
【0003】
ケミカルヒートポンプは、化学物質を加熱し、反応物質を吸熱反応によって蒸気化する再生室と、第1接続流路により再生室と接続され、蒸気化した反応物質を凝縮する凝縮室と、第2接続流路により凝縮室と接続され、凝縮した反応物質を気化する蒸発室と、第3接続流路により蒸発室とされているとともに、第4接続流路及び第5接続流路により再生室と接続され、気化した反応物質を発熱反応によって化学物質に吸収させる吸収室とを有している。再生室は、駆動源用放熱流路を流通するエンジンの駆動によって加熱された冷却水等によって加熱されるようになっている。
【0004】
この車両用空調システムでは、暑い環境下において、蒸発室の冷熱によって空気を冷却し、得られた冷気を車内へ案内することにより、省エネルギーの下、車内の冷房を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−81910号公報
【特許文献2】特開平4−270871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の車両用空調システムでは、蒸発室の冷熱によって得られた冷気しか車内へ案内することができず、冷房しか行うことができない。
【0007】
この点、特開平11−83235号公報に記載されているように、ケミカルヒータポンプと接続されて空気を冷気にするための室内用熱交換器と、駆動源用ラジエータ等と接続されたヒータコアとを車内への案内路内に設けることが考えられる。この場合、室内用熱交換器によって車内の冷房を行うことができる他、ヒータコアによって車内の暖房も行うことができると考えられる。
【0008】
しかしながら、同公報記載の車両用空調システムは、2室で可逆な発熱反応及び吸熱反応を生じさせるケミカルヒータポンプを採用しているとともに、ケミカルヒートポンプの吸熱反応によって生じた熱によってモータ等の冷却も行うこととしている。このため、この車両用空調システムでは、暖房が損なわれる等、車内室を好適に空調し難い。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、省エネルギーの下、より好適に車内の好適な空調を実現可能な車両用空調システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用空調システムは、車両を駆動させる駆動源と、駆動源用ラジエータと、該駆動源と該駆動源用ラジエータとを接続する駆動源用放熱流路と、可逆な発熱反応及び吸熱反応を生じる化学物質及び反応物質を有するケミカルヒートポンプとを備え、
前記ケミカルヒートポンプは、前記駆動源の駆動により発生する熱を保有する熱媒によって前記化学物質を加熱し、前記反応物質を前記吸熱反応によって蒸気化する再生室と、
第1接続流路により該再生室と接続され、蒸気化した該反応物質を凝縮する凝縮室と、
第2接続流路により該凝縮室と接続され、凝縮した該反応物質を気化する蒸発室と、
第3接続流路により該蒸発室と接続されているとともに、第4接続流路及び第5接続流路により該再生室と接続され、気化した該反応物質を該第4接続流路を介して流入してくる該化学物質に発熱反応によって吸収させるとともに、吸収後の該化学物質を該第5接続流路を介して該再生室に流出させる吸収室とを有し、
該凝縮室及び該吸収室の少なくとも一方の熱によって空気を加熱し、温気とする放熱手段と、
該蒸発室内の熱によって空気を冷却し、冷気とする吸熱手段と、
該温気を車外又は該車内へ選択的に案内可能な温気案内路と、
該冷気を該温気案内路又は該車内へ選択的に案内可能な冷気案内路と、
該温気を該車外に案内しつつ、該冷気を該車内に案内する場合と、該冷気を該温気案内路へ案内して該冷気を再加熱した後に該車内に案内する場合とを切り替える切替手段とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の車両用空調システムでは、ケミカルヒートポンプにおいて、駆動源の駆動により発生する熱を保有した熱媒によって再生室を加熱すれば、再生室内の化学物質が加熱され、反応物質が蒸気化する。蒸気化した反応物質は、第1接続流路を経由して再生室から凝縮室へ至り、凝縮室で凝縮される。そして、凝縮した反応物質は、第2接続流路を経由して凝縮室から蒸発室へ至り、蒸発室で気化する。この際、蒸発室には気化熱によって冷熱が蓄えられる。蒸発室内で気化した反応物質は第3接続流路を経由して吸収室に至る。また、再生室内で反応物質が分離した化学物質は第4接続流路を経由して吸収室に至る。このため、吸収室では、気化した反応物質が発熱反応によって化学物質に吸収される。反応物質を吸収した化学物質は第5接続流路を経由して再生室に至る。
【0012】
そして、放熱手段は、凝縮室及び吸収室の少なくとも一方の熱によって周りの空気を加熱し、温気とする。温気は、温気案内路によって車外又は車内へ案内される。また、吸熱手段は、蒸発室内の熱によって周りの空気を冷却し、冷気とする。冷気は、冷気案内路によって車外又は車内へ案内される。
【0013】
ここで、切替手段が冷気を車内に案内すれば、車内を冷房できる。また、切替手段が温気を車内に案内すれば、車内を暖房できる。さらに、切替手段が冷気を温気案内路に案内して放熱手段又は温気によって再加熱した後、車内に案内すれば、車内の温度低下を抑制しつつ除湿を行うことができる。
【0014】
このように、この車両用空調システムでは、ケミカルヒートポンプが再生室、吸収室、凝縮室及び蒸発室の四室を有するものであるため、ケミカルヒートポンプにおいて発熱反応及び吸熱反応が連続的に生じる。そして、この車両用空調システムでは、ケミカルヒートポンプで生じた熱によって温気又は冷気を得、温気案内路、冷気案内路及び切替手段がその温気及び冷気を車内の暖房、冷房及び除湿に利用する。
【0015】
したがって、本発明の車両用空調システムによれば、省エネルギーの下、より好適に車内の空調を実現できる。
【0016】
この車両用空調システムにおいて、駆動源としては、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン及び天然ガスエンジン等の内燃式のエンジン、モータ、インバータやコンバータ等によって構成されたパワーコントロールユニット(PCU)等の駆動回路及びバッテリ等を採用することができる。また、これらを組み合わせて駆動源としても良い。
【0017】
熱媒としては、上記の駆動源が生じさせた熱の他、エンジンやモータ等の冷却に用いた冷却水やLLC(ロングライフクーラント)からなる冷却液等の他、排ガス、エンジンオイル等を採用することができる。
【0018】
ケミカルヒートポンプに用いる化学物質としては、LiBr水溶液やNH3水溶液等を採用することができる。例えば、化学物質としてLiBr水溶液を採用した場合、反応物質はH2Oとなり、発熱反応後の化学物質はLiBr水溶液となる。また例えば、化学物質としてNH3水溶液を採用した場合、反応物質はNH3となり、発熱反応後の化学物質はH2Oとなる。
【0019】
放熱手段が空気の加熱を行う際、凝縮室及び吸収室の少なくとも一方の熱に加えて、上記の熱媒の熱を補助的に利用しても良い。
【0020】
切替手段は、冷気を温気案内路へ案内する場合、冷気を放熱手段の上流側に案内することが好ましい(請求項2)。この場合、吸熱手段によって冷却されて除湿された状態の冷気を放熱手段によって直接再加熱することが可能となる。このため、除湿された冷気が温気によって間接的に再加熱される場合と比較して、より好適に再加熱されることとなり、より車室の温度低下を抑制しつつ好適に除湿を行うことが可能となる。
【0021】
再生室には熱媒が循環可能な熱媒流路が設けられ、再生室を熱媒が迂回可能な熱媒バイパス通路が設けられていることが好ましい(請求項3)。
【0022】
この場合には、熱媒流路を循環する熱媒により好適に再生室を加熱することができるとともに、再生室への加熱が必要ない場合、すなわち、ケミカルヒートポンプを作動させる必要がない場合には、熱媒をバイパスさせることで再生室内の化学物質を不必要に加熱することを防止できる。このため、再生室内の化学物質の劣化や変質を効果的に防止することが可能となる。なお、熱媒流路としては、例えば、マフラの他、上記の駆動源用放熱流路と接続された配管等が挙げられる。
【0023】
この車両用空調システムにおいて、放熱手段は放熱用熱交換器であり、吸熱手段は吸熱用熱交換器であり得る。また車両用空調システムは、凝縮室及び吸収室の少なくとも一方に設けられ、放熱用熱交換器と接続する放熱用流路と、蒸発室に設けられ、吸熱用熱交換器と接続する吸熱用流路とを有し得る。さらに、この車両用空調システムは、吸熱用流路と放熱用流路とに熱的に接合し、吸熱用流路内の熱を吸熱し、放熱用流路内に対して熱を放熱可能な熱電変換装置とを有し得る(請求項4)。
【0024】
この場合、放熱用熱交換器により空気を加熱することが可能となる。また、吸熱用熱交換器により空気を冷却することが可能となる。さらに、熱電変換装置による放熱作用及び吸熱作用によって、放熱用流路と吸熱用流路との間で熱の移動が可能なる。また、これによって、車内の除湿を行う冷気をより高い温度で再加熱することも可能となる。これらのため、車内の空調をより好適に行うことが可能となる。なお、熱電変換装置としては、例えば、熱電変換素子を備えた熱電変換モジュールを採用することができる。また、放熱用流路や吸熱用流路には、上記の冷却水やLLC等を熱交換媒体として流通させても良い。
【0025】
切替手段は、温気案内路を車外に連通又は非連通とし、温気案内路を車内に連通又は非連通とし、冷気案内路を車内に連通又は非連通とし、かつ温気案内路と冷気案内路とを連通又は非連通とする開閉装置であることが好ましい(請求項5)。この場合、開閉装置によって、温気案内路と冷気案内路とを非連通とすることにより、冷気や温気によって車内の冷房や暖房等を行う他、車内の空調に不必要な温気を車外に放出することが可能となる。また、開閉装置によって、温気案内路と冷気案内路とを連通させることにより、放熱手段や温気による冷気の再加熱を行なうことが可能となる。なお、開閉装置としては、例えば、開閉弁、電動フラッパ及び開閉扉等を採用することができる。又、これらを組み合わせて採用することもできる。
【0026】
また、切替手段は、放熱用熱交換器を冷気案内路内と温気案内路内との間で移動させるか又は吸熱用熱交換器を温気案内路内と冷気案内路内との間で移動させる移動装置を有し得る(請求項6)。
【0027】
この場合には、移動装置により放熱用熱交換器を冷気案内路内に移動させたり、吸熱用熱交換器を温気案内路内に移動させたりすることによって、放熱用熱交換器による冷気の再加熱を行なうことが可能となる。なお、移動装置としては、例えばモータや伸縮ロッド等を採用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の車両用空調システムによれば、省エネルギーの下、より好適に車内の空調を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1の車両用空調システムを示す模式構造図である。
【図2】実施例1の車両用空調システムに係り、空調ダクトを示す模式断面図である。
【図3】実施例1の車両用空調システムに係り、車内の空調時を示す模式構造図である。
【図4】実施例1の車両用空調システムに係り、冷房時における空調ダクトの状態を示す模式断面図である。
【図5】実施例1の車両用空調システムに係り、暖房時における空調ダクトの状態を示す模式断面図である。
【図6】実施例1の車両用空調システムに係り、除湿時における再加熱を示す模式断面図である。
【図7】実施例2の車両用空調システムに係り、空調ダクトを示す模式断面図である。
【図8】実施例2の車両用空調システムに係り、除湿時における再加熱を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。実施例1、2の車両用空調システムは、車内の空調としての冷房、暖房及び除湿を行う装置として車両に搭載されている。
【0031】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の車両用空調システムは、エンジン3と、エンジン用ラジエータ5と、ケミカルヒートポンプ7と、放熱用熱交換器9と、吸熱用熱交換器11と、温気案内路13と冷気案内路15とが形成された空調ダクト17と、熱電変換装置としての熱電変換モジュール19と、一面側熱交換器21と、他面側熱交換器23と、図2に示す電動フラッパ25a〜25eとを備えている。
【0032】
図1に示すように、エンジン3は、駆動源として車両を駆動させる。エンジン3には図示しないウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケット内を流通するエンジン冷却液によりエンジン3を冷却又は暖機することが可能となっている。また、エンジン3には排気ガスを車内外に放出するマフラ(図示しない)が設けられている。なお、エンジン3に替えて、モータ及びPCU)等の駆動回路を駆動源として採用することもできる。
【0033】
エンジン用ラジエータ5は、その内部をエンジン冷却液が流通可能に構成されており、エンジン用ラジエータ5内のエンジン冷却液と、エンジン用ラジエータ5周りの空気との間で熱交換を行うことでエンジン冷却液を冷却することが可能となっている。エンジン用ラジエータ5の近傍には電動ファン5aが設けられている。この電動ファン5aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。このエンジン用ラジエータ5が駆動源用ラジエータに相当する。
【0034】
エンジン3とエンジン用ラジエータ5とは配管27〜30によって接続されている。これらの配管27〜30が駆動源用放熱流路100である。これらの配管27〜30内にも上記のエンジン冷却液が流通しており、エンジン冷却液は、エンジン3とエンジン用ラジエータ5との間を循環することが可能となっている。また、配管28と配管29との間には分岐弁V1が設けられている。なお、分岐弁とは、一方の流路を他方の二つの流路に分岐可能、すなわち、一方の流路を他方の流路のうちのいずれかと連通させ、他方の残りの流路とは非連通とすることを切り替え可能な切替弁をいう。
【0035】
配管27はエンジン用ラジエータ5とエンジン3とを接続している。配管28はエンジン3と分岐弁V1とを接続している。配管30は配管29と接続し、配管29とエンジン用ラジエータ5とを接続している。この配管30には第1電動ポンプP1が設けられている。配管29は一端側で分岐弁V1と接続し他端側で配管30と接続しており、この配管24は熱媒バイパス通路としても機能する。分岐弁V1及び第1電動ポンプP1は、それぞれ図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第1電動ポンプP1は配管27又は配管28に設けられても良い。
【0036】
また、分岐弁V1には配管31の一端側が接続されており、配管31の他端側は配管30に接続されている。この配管31は、後述する再生室41内に延びており、配管31は、この再生室41内において、その一部が蛇行するように形成されている。この配管31が熱媒流路に相当する。そして、配管31内を流通する高温のエンジン冷却液は、再生室41を加熱する熱媒として機能する。
【0037】
ケミカルヒートポンプ7は吸収式ケミカルヒートポンプである。ケミカルヒートポンプ7は、化学物質としてのLiBr水溶液C1が充填された再生室41及び吸収室42と、反応物質としての水C2が貯留された凝縮室43及び蒸発室44と、第1〜5接続流路45〜49とを有している。この第4接続流路48と第5接続流路49との間には熱交換器51が設けられている。また、蒸発室44には、後述する配管53が接続されている。この蒸発室44内は、周囲の大気圧よりも減圧された状態となっている。なお、再生室41及び吸収室42に貯留される化学物質としては、NH3水溶液を採用することもできる。また、この場合、凝縮室43及び蒸発室44に貯留される反応物質はNH3となる。
【0038】
再生室41と凝縮室43とは、第1接続流路45によって接続されている。凝縮室43と蒸発室44とは、第2接続流路46によって接続されている。蒸発室44と吸収室42とは、第3接続流路47によって接続されている。再生室41と吸収室42とは、第4接続流路48及び第5接続流路49によって接続されている。第4接続流路48及び第5接続流路49にはそれぞれ第3、4電動ポンプP3、P4が設けられており、第2接続流路46には第5電動ポンプP5が設けられている。第3〜5電動ポンプP3〜P5は、それぞれ図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第2接続流路46には、第5電動ポンプP5に替えて開閉弁を設けても良く、また、第3接続流路47に開閉弁等を設けても良い。
【0039】
放熱用熱交換器9は、内部を熱交換媒体としての冷却水が流通可能に構成されて、放熱用熱交換器9内の冷却水と後述の温気案内路13内の空気との間で熱交換を行うことが可能となっている。この放熱用熱交換器9の近傍には、電動ファン9aが設けられている。電動ファン9aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、冷却水に替えて、LLCを熱交換媒体として採用しても良い。
【0040】
放熱用熱交換器9、凝縮室43、吸収室42及び他面側熱交換器23は、配管32〜36によって接続されている。これらの配管32〜36が放熱用流路200に相当する。これらの配管32〜36内にも上記の冷却水が流通しており、冷却水は、放熱用熱交換器9と凝縮室43と吸収室42と他面側熱交換器23とを経由しつつ、配管32〜36内を循環可能となっている。また、配管32と配管33との間には分岐弁V2が設けられている。配管32には、第2電動ポンプP2が設けられている。
【0041】
配管32は、放熱用熱交換器9と分岐弁V2とを接続している。配管34は配管33と他面側熱交換器23とに接続することで、配管33と他面側熱交換器23とを接続している。配管35は他面側熱交換器23と放熱用熱交換器9とを接続している。また、分岐弁V2には配管36の一端側が接続されており、配管36の他端側は配管34に接続されている。この配管36は、吸収室42及び凝縮室43と接続され、吸収室42内及び凝縮室43内に延びている。配管36は、吸収室42内及び凝縮室43内において、その一部がそれぞれ蛇行するように形成されている。分岐弁V2及び第2電動ポンプP2は、それぞれ図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第2電動ポンプP2は配管34又は配管35に設けられても良い。
【0042】
吸熱用熱交換器11は、内部を冷却水が流通可能に構成されて、吸熱用熱交換器11内の冷却水と後述の冷気案内路15内の空気との間で熱交換を行うことが可能となっている。この吸熱用熱交換器11の近傍には、電動ファン11aが設けられている。電動ファン11aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。
【0043】
吸熱用熱交換器11と蒸発室44と一面側熱交換器21とは、配管53、54によって接続されている。これらの配管53、54内にも上記の冷却水が流通しており、冷却水は、吸熱用熱交換器11と、蒸発室44と一面側熱交換器21とを経由しつつ、配管53、54内を循環可能となっている。
【0044】
配管53は、蒸発室44と吸熱用熱交換器11と一面側熱交換器21とを接続している。この配管53は蒸発室44内に延びており、蒸発室44内で蛇行するように形成されている。配管54は、一面側熱交換器21と吸熱用熱交換器11とを接続している。これらの配管53、54が吸熱用流路300に相当している。また、配管53には第6電動ポンプP6が設けられている。第6電動ポンプP6は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第6電動ポンプP6は、配管54に設けられても良い。
【0045】
熱電変換モジュール19は、その一面と他面とを構成する一対の基板と、各基板に挟持された状態で、各基板に設けられた電極と電気的に接続された複数の熱電変換素子とで構成されている。この熱電変換モジュール19は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、印加される電流の向きを切り替えることにより、その一面側と他面側とで吸熱面と放熱面とを切り替えることが可能になっている。
【0046】
熱電変換モジュール19は、熱電変換モジュール19の一面側に設けられた上記の一面側熱交換器21と、他面側に設けられた上記の他面側熱交換器23との間に位置しており、吸熱用流路300内の冷却水と放熱用流路200内の冷却水との間で熱移動させることが可能になっている。なお、熱電変換モジュール19、一面側熱交換器21及び他面側熱交換器23は、それぞれ公知のものが採用されており、熱電変換モジュール19等の構成に関する詳細な説明は省略する。また、熱電変換モジュール19としては、各基板を有さない、いわゆるスケルトン式の熱電変換モジュールを採用することもできる。
【0047】
図2に示すように、空調ダクト17は筒状に形成され、両端がそれぞれ車内と連通している。また、空調ダクト17内には遮蔽板17a、17bが設けられており、この遮蔽板17a、17bにより、空調ダクト17内が分割され、上記の温気案内路13と冷気案内路15とがそれぞれ形成されている。遮蔽板17a、17bとの間には、温気案内路13と冷気案内路15とを連通させる連通口17cが形成されており、この連通口17cには開閉装置としての電動フラッパ25aが設けられている。電動フラッパ25aは、連通口17cの開閉によって温気案内路13と冷気案内路15とを連通させる場合と、温気案内路13と冷気案内路15とを非連通とさせる場合とを切り替える。電動フラッパ25aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。
【0048】
温気案内路13には、放熱用熱交換器9が設けられており、冷気案内路15には、吸熱用熱交換器11が設けられている。温気案内路13において放熱用熱交換器9は、冷気案内路15において吸熱用熱交換器11が設けられている位置よりも空気(後述の内気及び外気)の流通方向で下流となる位置に設けられている。なお、図2では、放熱用熱交換器9と接続する配管32、35及び吸熱用熱交換器11と接続する配管53、54の図示を省略している。後述の図4〜図8も同様である。
【0049】
また、空調ダクト17には、外気ダクト27a〜27dが接続されている。外気ダクト27a、27bは、一端側が車外と連通しており、他端側が温気案内路13と連通している。同様に、外気ダクト27c、27dは、一端側が車外と連通しており、他端側が冷気案内路15と連通している。外気ダクト27a、27bと温気案内路13と間には電動フラッパ25b、25cが設けられており、外気ダクト27c、27dと冷気案内路15と間には電動フラッパ25d、25eが設けられている。各電動フラッパ25b〜25eは、それぞれ、温気案内路13及び冷気案内路15を車外と連通させる場合と車内に連通させる場合とを切り替える。これらの電動フラッパ25b〜25eも、それぞれ図示しない制御装置と電気的に接続されている。上記の電動フラッパ25a及び電動フラッパ25b〜25dが開閉装置に相当する。なお、電動フラッパ25b〜25eに替えて、例えば開閉弁等を採用することもできる。
【0050】
以上のように構成された車両用空調システムでは、エンジン3の駆動による車両の駆動時において、図3に示すような状態で車内の空調を行う。なお、図3中の破線矢印は熱の移動方向を示している。他の矢印については、以下において適宜説明する。
【0051】
(車両の駆動時における冷房)
この場合、制御装置は、分岐弁V1、V2を作動させる。これにより、図3に示すように、駆動源用放熱流路100では、配管28と配管31とが連通され、配管28、30と配管29とが非連通とされる。また、放熱用流路200では、配管32と配管36とが連通され、配管32、34と配管33とが非連通とされる。また、制御装置は第1〜6電動ポンプP1〜P6を作動させるとともに、制御装置は電動ファン5a、9a、11aをそれぞれ作動させる。これらのため、駆動源用放熱流路100、放熱用流路200及び吸熱用流路300では、それぞれ図3中の実線矢印方向で冷却水がそれぞれ循環する。
【0052】
さらに、制御装置は、図4に示すように、電動フラッパ25a〜25eをそれぞれ作動させる。これにより、空調ダクト17内において、温気案内路13と冷気案内路15とが非連通とされる。また、温気案内路13は、外気ダクト27a、27bと連通され、車内と非連通とされる。これにより、車外の空気である外気が電動ファン9aによって温気案内路13内に案内され、温気案内路13内を流通する流通する。一方、冷気案内路15は、車内と連通され、外気ダクト27c、27dと非連通とされる。これにより、車内の空気である内気が電動ファン11aによって冷気案内路15内に案内され、冷気案内路15内を流通する。
【0053】
これらにより、この車両用空調システムでは、図3に示すように、駆動中のエンジン3によって加熱されたエンジン冷却液が配管31内を流通し、再生室41内のLiBr水溶液C1を加熱する。このため、LiBr水溶液C1では、LiBr水溶液C1から水C2が水蒸気の状態で分離される(加熱脱水)。この水蒸気となった水C2は、第1接続流路45を経由して再生室41から凝縮室43へ至る(同図中の一点鎖線矢印参照。)。この凝縮室43において、水(水蒸気)C2は、配管36内の水によって冷却されて凝縮し、液体の状態で凝縮室43内に貯留される。この凝縮室43内に貯留された水C2は、第5電動ポンプP5により、第2接続流路46を経由して凝縮室43から蒸発室44へ至ることとなる(同図中の一点鎖線矢印参照。)。一方、水C2が分離し、脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1は、第3電動ポンプP3により、第4接続流路48を経由して吸収室42に至ることとなる(同図中の二点鎖線矢印参照。)。
【0054】
上記のように、蒸発室44内は周囲よりも減圧された状態となっているため、蒸発室44へ至った水C2は、蒸発室44で気化する。この際、蒸発室44内には気化熱によって冷熱が蓄えられる。この気化した水(水蒸気)C2は第3接続流路47を経由して吸収室42に至る(同図中の一点鎖線矢印参照。)。このため、吸収室42では、気化した水C2が脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1に吸収される。この際、発熱反応が生じることとなるが、配管36内の冷却水によって吸収室42が高温となることが防止されている。このため、水C2が好適に吸収されることとなり、蒸発室44における水C2の気化が促進される。一方、水C2を吸収したLiBr水溶液C1は、第4電動ポンプP4により、第5接続流路49を経由して再生室41に至る(同図中の白色矢印参照。)。
【0055】
上記の気化熱によって蒸発室44内に蓄えられた冷熱により、配管53内の冷却水が冷却される。この冷却された冷却水が配管53、54を介して吸熱用熱交換器11内に至り、熱交換により冷気案内路15内の空気、すなわち、内気を冷却して冷気とする。この冷気が電動ファン11a及び冷気案内路15に案内されて車内に至る(図4中の白色矢印参照)。こうして、この車両用空調システムでは、車内の冷房を行う。
【0056】
一方、図3に示すように、第4接続流路48を流通する脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1と、第5接続流路49を流通するLiBr水溶液C1とは、熱交換器51内において熱交換を行う。この際、第4接続流路48を流通する脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1は、再生室41における上記の加熱脱水によって高温となっていることから、第5接続流路49内を流通するLiBr水溶液C1は熱交換器51内で加熱され、より高温の状態で再生室41に至ることとなる。一方、第4接続流路48を流通する脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1は熱交換器51内で冷却されて吸収室42に至ることとなる。これらのため、吸収室42内では、脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1に水C2が吸収され易くなり、また、再生室41ではLiBr水溶液C1の加熱脱水が生じ易くなる。このため、この車両用空調システムでは、ケミカルヒートポンプ7において、LiBr水溶液C1と水C2との分離及び吸収が好適に行われ、蒸発室44内に冷熱が好適に蓄えられる。なお、再生室41の加熱を終えた配管31内のエンジン冷却液は、配管30からエンジン用ラジエータ5に至り、エンジン用ラジエータ5の周りの空気と熱交換されて冷却されることとなる。
【0057】
また、吸収室42及び凝縮室43を経て加熱された配管36内の冷却水は、配管35から放熱用熱交換器9に至り、温気案内路13内の空気、すなわち外気と熱交換されることとなる。この際、放熱用熱交換器9からの放熱を受けて加熱された外気、すなわち、温気は、電動ファン9a、温気案内路13及び外気ダクト27bに案内されて車外に至ることとなる(図4中の白色矢印参照)。
【0058】
さらに、この車両用空調システムでは、蒸発室44内の冷熱だけでは冷房能力が不足する場合に、制御装置が熱電変換モジュール19の一面側を吸熱面とし、他面側を放熱面とさせて作動させる。これにより、蒸発室44内の冷熱によって冷却された配管53内の冷却水が一面側熱交換器21内において、熱電変換モジュール19による吸熱を受けて更に冷却される。これにより、この車両用空調システムでは、蒸発室44内の冷熱だけでは冷房能力が不足する場合であっても、車内を好適に冷房することが可能となっている。この際、熱電変換モジュール19からの放熱を受けて加熱された放熱用流路200内の冷却水は、放熱用熱交換器9における熱交換によって冷却される。
【0059】
(車両の駆動時における暖房)
この場合も上記の冷房時と同様に、制御装置は、分岐弁V1、V2、第1〜6電動ポンプP1〜P6及び電動ファン5a、9a、11aをそれぞれ作動させる。これらのため、冷房時と同様に、駆動源用放熱流路100、放熱用流路200及び吸熱用流路300では、それぞれ図3中の実線矢印方向で冷却水がそれぞれ循環する。
【0060】
また、制御装置は、図5に示すように、電動フラッパ25a〜25eをそれぞれ作動させる。これにより、空調ダクト17内において、温気案内路13と冷気案内路15とが非連通とされる。また、温気案内路13は、車内と連通され、外気ダクト27a、27bと非連通とされる。これにより、温気案内路13内には電動ファン9aによって案内された内気が流通する。一方、冷気案内路15は、外気ダクト27c、27dと連通され、車内と非連通とされる。これにより、冷気案内路15内には電動ファン11aによって案内された外気が流通する。
【0061】
こうして、暖房時には、吸収室42及び凝縮室43を経て加熱された配管36内の冷却水が配管35から放熱用熱交換器9に至り、熱交換により温気案内路13内の内気を加熱して温気とする。この温気が電動ファン9a及び温気案内路13に案内されて車内に至る(図5中の白色矢印参照)。こうして、この車両用空調システムでは、車内の暖房を行う。
【0062】
一方、蒸発室44内の冷熱によって冷却された配管53内の冷却水は、配管54から吸熱用熱交換器11に至り、冷気案内路15内の外気と熱交換される。そして、吸熱用熱交換器11からの吸熱を受けて冷却された外気、すなわち、冷気は、電動ファン11a、冷気案内路15及び外気ダクト27dに案内されて車外に至ることとなる(図5中の白色矢印参照)。
【0063】
また、吸収室42及び凝縮室43の熱だけでは暖房能力が不足する場合には、制御装置が熱電変換モジュール19の一面側を放熱面とし、他面側を吸熱面とさせて作動させる。これにより、吸収室42及び凝縮室43を経て加熱された配管36内の冷却水が他面側熱交換器23において、熱電変換モジュール19による放熱を受けて更に加熱される。これにより、この車両用空調システムでは、吸収室42及び凝縮室43の熱だけでは暖房能力が不足する場合であっても、車内を好適に暖房することが可能となっている。この際、熱電変換モジュール19からの放熱によって加熱された吸熱用流路300内の冷却水は、吸熱用熱交換器11における熱交換によって冷却される。
【0064】
(車両の駆動時における除湿)
この場合、冷房時と同様に、蒸発室44内に蓄えられた冷熱によって冷気案内路15内の内気を冷却し、内気中の湿度を低下させる。そして、電動ファン11a及び冷気案内路15によって、この内気(冷気)を車内に案内することで、この車両用空調システムでは、車内の除湿を行うことが可能となる(図4参照)。
【0065】
また、車内の除湿を行う際、制御装置は、図6に示すように、電動フラッパ25a〜25eをそれぞれ作動させる。これにより、空調ダクト17内において、温気案内路13と冷気案内路15とが連通される。また、温気案内路13は、車内と連通され、外気ダクト27a、27bと非連通とされる。これにより、温気案内路13内には電動ファン9aによって案内された内気が流通する。同様に、冷気案内路15も車内と連通され、外気ダクト27c、27dと非連通とされる。これにより、温気案内路13内にも電動ファン11aによって案内された内気が流通する。
【0066】
これにより、冷気案内路15内の内気は、上記のように、吸熱用熱交換器11により冷却されて、除湿されるとともに、この除湿された内気は、連通口17cから温気案内路13内に至ることとなる。
【0067】
この際、上記のように、温気案内路13内において放熱用熱交換器9は、冷気案内路15内において吸熱用熱交換器11が設けられている位置及び連通口17cよりも内気等の流通方向で下流側となる位置に設けられていることから、冷気は電動フラッパ25aによって、温気案内路13において放熱用熱交換器9の上流側に案内されることとなる。このため、除湿された状態の冷気は、放熱用熱交換器9によって直接再加熱されることとなる。こうして、温度調整がされた内気が車内に案内されることで、車内の温度低下を抑制しつつ好適に車内の除湿を行うことが可能となる。
【0068】
このように、この車両用空調システムでは、ケミカルヒートポンプ7が再生室41、吸収室42、凝縮室43及び蒸発室44の四室を有するものであるため、ケミカルヒートポンプ7において発熱反応及び吸熱反応が連続的に生じる。そして、この車両用空調システムでは、ケミカルヒートポンプ7で生じた熱によって温気又は冷気を得、温気案内路13、冷気案内路15及び電動フラッパ25a〜25eがその温気及び冷気を車内の暖房、冷房及び除湿に利用している。
【0069】
したがって、本発明の車両用空調システムによれば、省エネルギーの下、より好適に車内の空調を実現できる。
【0070】
特に、この車両用空調システムでは、エンジン冷却液の温度が未だ低く、再生室41を十分に加熱できない場合や車内の空調を行う必要がない場合、制御装置は第2〜6電動ポンプP2〜P6の作動を停止させるとともに、分岐弁V1の切り替えを行う。これにより、駆動源用放熱流路100では、配管28と配管29とが連通され、配管28、29と配管26とが非連通とされる。これらのため、駆動源用放熱流路100では、エンジン冷却液が配管31を迂回することで、エンジン冷却液が配管31を経由しないこととなり、駆動源用放熱流路100におけるエンジン冷却液の流路抵抗が低減されるとともに、配管31内のエンジン冷却液によって再生室41が不必要に加熱されることが防止される。このため、この車両用空調システムでは、LiBr水溶液C1の劣化や変質を効果的に防止できる。
【0071】
この状態において、制御装置が分岐弁V2の切り替えを行い、放熱用流路200において、配管32と配管33とを連通させ、配管32、33と配管36とを非連通とさせる。また、制御装置は第2電動ポンプP2及び第6電動ポンプP6を作動させるとともに、電動ファン9a、11aを作動させる。さらに、制御装置は、熱電変換モジュール19の一面側を吸熱面とし、他面側を放熱面とさせて作動させる。これらより、熱電変換モジュール19の吸熱を受けて吸熱用流路300内の冷却水が冷却されるとともに、熱電変換モジュール19の放熱を受けて放熱用流路200内の冷却水が加熱される。これにより、この車両用空調システムでは、吸熱用流路300内の冷却水や放熱用流路200内の冷却水により、冷気案内路15内の内気を冷却して車内の冷房を行う他、温気案内路13内の内気を加熱して車内の暖房を行うことも可能となっている。また、除湿時における内気の再加熱を行うことも可能である。この場合において、放熱用流路200では、冷却液が配管36を迂回し、冷却水が配管36を経由しないで循環するため、吸収室42及び凝縮室43が不必要に加熱されることも防止されている。
【0072】
(実施例2)
実施例2の車両用空調システムは、実施例1の車両用空調システムにおける電動フラッパ25aに替えて、図7に示すように、開閉装置としての電動開閉扉55と、移動装置57とを備えている。電動開閉扉55は、連通口17cに設けられており、連通口17cの開閉によって温気案内路13と冷気案内路15とを連通又は非連通とさせる。電動開閉扉55は図示しない制御装置と電気的に接続されている。
【0073】
移動装置57は、公知のモータ57a及び伸縮ロッド57bによって構成されている。移動装置57は伸縮ロッド57bを介して放熱用熱交換器9と接続されている。また、移動装置57はモータ57aを介して図示しない制御装置と電気的に接続されている。これらの電動開閉扉55、移動装置57及び電動フラッパ25b〜25dが切替手段に相当する。なお、空調ダクト17には、伸縮ロッド57bが挿通される挿通孔17dが形成されている。他の構成は実施例1の車両用空調システムと同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0074】
この車両用空調システムでは、実施例1の車両用空調システムと同様の方法により、車両の駆動時における冷房及び暖房を行う(図3〜6参照)。すなわち、この車両用空調システムでは、車両の駆動時における冷房及び暖房時において、制御装置が電動開閉扉55の閉制御を行う。これにより、温気案内路13と冷気案内路15とが非連通とされる。
【0075】
一方、車内の除湿時において、除湿された内気の再加熱を行う場合、この車両空調システムでは、図8に示すように、制御装置が電動開閉扉55の開制御を行うとともに、モータ57a及び伸縮ロッド57bを駆動させる。これにより、連通口17c経由で温気案内路13から冷気案内路15へ放熱用熱交換器9を移動させる。この際、冷気案内路15において、放熱用熱交換器9は吸熱用熱交換器11よりも、内気等の流通方向で上流側に位置する。また、制御装置は電動ファン9aの作動を停止させる。これにより、冷気案内路15内の内気は吸熱用熱交換器11により冷却されて、除湿されるとともに、放熱用熱交換器9によって直接再加熱されることとなる。こうして、この車両用空調システムでは、温度調整がされた内気を車内に案内することで、好適に車内の除湿を行うことが可能となっている。この際、電動ファン9aが停止していることから、温気案内路13内を外気又は内気が流通しなくなっている。なお、除湿空気の再加熱を行わない場合には、上記の冷房時と同様である。他の作用効果は実施例1の車両用空調システムと同様である。
【0076】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0077】
例えば、実施例1、2の車両用空調システムにおいて、車両に搭載されるバッテリやPCU9等、車両の走行に必要な各種の駆動装置が配置されている箇所に冷気案内路15を連通させる構成とすることもできる。この場合、冷気によって、上記のバッテリ等の冷却を行うことが可能となる。
【0078】
また、実施例1、2の車両用空調システムにおいて、冷気案内路15に外気ダクト27c、27dを接続させずに構成することもできる。これにより、車両用空調システムが簡素化され、製造コストを削減することが可能となる。なお、この場合、暖房時には、吸熱用熱交換器11によって冷却されて除湿された冷気は、常に放熱用熱交換器9によって直接再加熱されることが好ましい。
【0079】
さらに、実施例1、2の車両用空調システムにおいて、冷気案内路15と外気ダクト27cとを連通させ、冷気案内路15と外気ダクト27dとを非連通とさせることで、外気を冷却して冷気とし、この冷気によって車内の冷房を行うこともできる。また、温気案内路13と外気ダクト27aとを連通させ、温気案内路13と外気ダクト27bとを非連通とさせることで、外気を加熱して温気とし、この温気によって車内の暖房を行うこともできる。同様に、外気を除湿又は再加熱することで車内の除湿を行うこともできる。
【0080】
また、実施例2の車両用空調システムにおいて、移動装置57は、伸縮ロッド57bを介して吸熱用熱交換器11と接続される構成としても良い。この場合には、吸熱用熱交換器11が温気案内路13に移動させられることから、温気案内路13内において内気の除湿が行われ、また、再加熱が行われることとなる。この際、放熱用熱交換器9によって冷気が直接再加熱されるように、温気案内路13において、吸熱用熱交換器11は放熱用熱交換器9よりも、内気等の流通方向で下流側に位置することが好ましい。
【0081】
さらに、実施例1、2の車両用空調システムにおいて、放熱用熱交換器9の放熱により、配管32内の冷却水は冷却された状態となることから、この配管32に対して車両に搭載されているバッテリ等を接続し、バッテリ等の冷却を同時に可能な構成とすることもできる。
【0082】
同様に、この配管32に対して駆動源としてのモータ及びPCUを接続する構成とすることで、実施例1、2の車両用空調システムをハイブリッド車両における車両用空調システムとして採用することもできる。さらに、この場合、内部を冷却液等が流通可能な配管によって、モータ及びPCUと再生室41とを接続することもできる。これにより、エンジン冷却液に加えて、モータ及びPCUで加熱された冷却液等によっても再生室41を加熱することが可能となる。
【0083】
また、実施例1、2の車両用空調システムにおいて、エンジン3に設けられたマフラを再生室41に挿通し、マフラ内を流通する排ガスを熱媒として再生室41を加熱させる構成としても良い。この際、マフラにも熱媒バイパス通路を設け、排ガスによって再生室41を加熱する場合と加熱しない場合とを切り替え可能に構成しても良い。
【0084】
さらに、実施例1、2の車両用空調システムにおいて、オイル流路を設け、エンジン3の駆動によって高温となったエンジンオイルを熱媒とすることで再生室41の加熱を行う構成としても良い。
【0085】
また、エンジン3と再生室41とを隣接させ、駆動によるエンジン3の熱によって再生室41が直接加熱される構成としても良い。
【0086】
さらに、ケミカルヒートポンプ7は、空気等の不純ガスが混入すると性能が低下するおそれがあることから、例えば不純ガスの溜まりやすい吸収室42や蒸発室44に真空ポンプや追加の冷媒を入れるポート等を設けても良い。また、ケミカルヒートポンプ7は、これらに加えて冷媒のリザーバータンクを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、エンジンによって走行される車両、エンジンとモータとによって走行される車両及びモータによって走行される車両における空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
3…エンジン(駆動源)
5…エンジン用ラジエータ(駆動源用ラジエータ)
7…ケミカルヒートポンプ
9…放熱用熱交換器(放熱手段)
11…吸熱用熱交換器(吸熱手段)
13…温気案内路
15…冷気案内路
25a〜25e…電動フラッパ(切替手段)
29…配管(熱媒バイパス通路)
31…配管(熱媒流路)
41…再生室
42…吸収室
43…凝縮室
44…蒸発室
45…第1接続流路
46…第2接続流路
47…第3接続流路
48…第4接続流路
49…第5接続流路
55…電動開閉扉(切替手段)
57…移動装置(切替手段)
100…駆動源用放熱流路
200…放熱用流路
300…吸熱用流路
C1…Libr水溶液
C2…水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動させる駆動源と、駆動源用ラジエータと、該駆動源と該駆動源用ラジエータとを接続する駆動源用放熱流路と、可逆な発熱反応及び吸熱反応を生じる化学物質及び反応物質を有するケミカルヒートポンプとを備え、
前記ケミカルヒートポンプは、前記駆動源の駆動により発生する熱を保有する熱媒によって前記化学物質を加熱し、前記反応物質を前記吸熱反応によって蒸気化する再生室と、
第1接続流路により該再生室と接続され、蒸気化した該反応物質を凝縮する凝縮室と、
第2接続流路により該凝縮室と接続され、凝縮した該反応物質を気化する蒸発室と、
第3接続流路により該蒸発室と接続されているとともに、第4接続流路及び第5接続流路により該再生室と接続され、気化した該反応物質を該第4接続流路を介して流入してくる該化学物質に発熱反応によって吸収させるとともに、吸収後の該化学物質を該第5接続流路を介して該再生室に流出させる吸収室とを有し、
該凝縮室及び該吸収室の少なくとも一方の熱によって空気を加熱し、温気とする放熱手段と、
該蒸発室内の熱によって空気を冷却し、冷気とする吸熱手段と、
該温気を車外又は該車内へ選択的に案内可能な温気案内路と、
該冷気を該温気案内路又は該車内へ選択的に案内可能な冷気案内路と、
該温気を該車外に案内しつつ、該冷気を該車内に案内する場合と、該冷気を該温気案内路へ案内して該冷気を再加熱した後に該車内に案内する場合とを切り替える切替手段とを備えていることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記切替手段は、前記冷気を前記温気案内路へ案内する場合、該冷気を前記放熱手段の上流側に案内する請求項1記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記再生室には前記熱媒が循環可能な熱媒流路が設けられ、
該再生室を該熱媒が迂回可能な熱媒バイパス通路が設けられている請求項1又は2記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記放熱手段は放熱用熱交換器であり、前記吸熱手段は吸熱用熱交換器であり、
前記凝縮室及び前記吸収室の少なくとも一方に設けられ、該放熱用熱交換器と接続する放熱用流路と、
前記蒸発室に設けられ、該吸熱用熱交換器と接続する吸熱用流路と、
該吸熱用流路と該放熱用流路とに熱的に接合し、該吸熱用流路内の熱を吸熱し、該放熱用流路内に対して該熱を放熱可能な熱電変換装置とを有する請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用空調システム。
【請求項5】
前記切替手段は、前記温気案内路を前記車外に連通又は非連通とし、該温気案内路を前記車内に連通又は非連通とし、前記冷気案内路を該車内に連通又は非連通とし、かつ該温気案内路と該冷気案内路とを連通又は非連通とする開閉装置である請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用空調システム。
【請求項6】
前記切替手段は、前記放熱用熱交換器を前記冷気案内路内と前記温気案内路内との間で移動させるか又は前記吸熱用熱交換器を該温気案内路内と該冷気案内路内との間で移動させる移動装置を有している請求項4記載の車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−214105(P2012−214105A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80246(P2011−80246)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】