説明

車両用空調装置

【課題】冷凍サイクルが運転した状態から停止する場合において、車室内へ吹き出す空調風の湿度が高くなるときは、DEF吹出口からの空調風の吹出しを適切に制御することで窓ガラスの曇りを防止できるようにした車両用空調装置を提供する。
【解決手段】蒸気圧縮式冷凍サイクルを有するとともに、車室内へ吹き出す空調風の吹出口を選択し制御する吹出口制御手段を有する車両用空調装置において、窓ガラス近傍より空調風が吹き出されるDEF吹出口から空調風が吹き出される空調状態で、冷凍サイクルが運転された状態から停止される時、所定時間、吹出口制御手段によりDEF吹出口からの吹出しを禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に、窓ガラスの曇りを効果的に防止するようにした車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内に設置した湿度検出手段(湿度センサ)により検出される湿度に応じて、車室内の窓ガラスが曇るかどうかを判定する車両用空調装置が、例えば特許文献1に提案されている。また、この提案では、窓ガラス内面付近の湿度を検出することで、より曇り易さを正確に判定できるようにしている。しかしながら、湿度センサは、その湿度変化に対する応答性や、結露した状態での測定精度の問題など、実際の車室内環境では測定に不具合が生じることも考えられる。
【0003】
特に、低外気温度時で車両用空調装置の蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転した状態から停止した状態へ変更する場合において、車両のフロントガラスが曇ることがある。一般的な車両用空調装置では、低外気温度時には車室内へ吹き出す空調風の吹出口が乗員の足元近傍から吹き出すFOOTモードであることが多く、そのFOOTモードではフロントガラス近傍の吹出口から吹き出すDEF吹出口からも送風されることが多い。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転状態から停止状態への移行により、蒸発器に残った凝縮水が気化する(蒸発器自体の温度は上昇してしまうため)ことで瞬間的に車両用空調装置から吹き出される空調風に含まれる水分量が増加してしまう。その結果、吹出空気の湿度が上昇し、DEF吹出口から空調風が吹き出されている場合では、吹出空気の露点温度が上昇することで窓ガラスに曇りが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−8449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、上記のような問題に着目し、車両用空調装置の蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転した状態から停止する場合において、車室内へ吹き出す空調風の湿度が高くなるときは、DEF吹出口からの空調風の吹出しを適切に制御することで窓ガラスの曇りを防止できるようにした車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用空調装置は、少なくとも、冷媒を圧縮する圧縮機と、高温高圧の冷媒を放熱させる放熱器と、冷却器として車室内に吹き出す空気を冷却する冷媒の蒸発器とを備えた蒸気圧縮式冷凍サイクルを有するとともに、車室内へ吹き出す空調風の吹出口を選択し制御する吹出口制御手段を有する車両用空調装置において、複数の吹出口のうち車室内において窓ガラス近傍より空調風が吹き出されるDEF吹出口から空調風が吹き出される空調状態で、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時、所定時間、前記吹出口制御手段によりDEF吹出口からの吹出しを禁止することを特徴とするものからなる。
【0007】
このような本発明に係る車両用空調装置においては、窓ガラス(特に、フロントガラス)近傍より空調風が吹き出されるDEF吹出口から空調風が吹き出される空調状態で、蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時に、つまり、前述した如く、吹出空気の湿度が上昇し、DEF吹出口から空調風が吹き出されている場合において吹出空気の露点温度が上昇することで窓ガラスに曇りが発生してしまう可能性が高い条件時に、吹出口制御手段によりDEF吹出口からの吹出しが所定時間禁止される。この禁止制御により、DEF吹出口からの吹出しは無くなるので、窓ガラスの曇りの発生は確実に回避されることになる。
【0008】
上記本発明に係る車両用空調装置においては、上記吹出口制御手段により上記DEF吹出口からの吹出しを禁止し、所定時間A経過後に、上記吹出口制御手段による禁止を解除して禁止前の吹出口の状態に制御することが好ましい。すなわち、窓ガラスの曇りの発生のおそれがある場合だけ、DEF吹出口からの吹出しを禁止し、そのおそれが無くなるであろう所定時間A経過後には、通常の吹出口制御状態に復帰させるのである。
【0009】
また、上記本発明に係る車両用空調装置が、外気温度に相関のある物理量を検知または推定する外気温度検知手段と、車室外空気と車室内空気との導入割合を調節する内外気切替手段とを有する場合、上記所定時間Aは、外気温度検知手段により検知または推定される外気温度、前記内外気切替手段により調節される内外気の導入割合、外気湿度、降雨状態、車室内温度、車室内湿度、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の前記蒸発器の温度、蒸発器出口空気温度のうち少なくとも一つを参照することにより、決定することができる。
【0010】
この場合、上記所定時間Aは、外気温度及び外気湿度、または内外気の導入割合、または降雨状態、または車室内温度及び車室内湿度のうち少なくとも一つを参照することで、蒸発器の吸込み空気の露点温度を推定し、蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度と、推定した露点温度を参照することにより、決定することができる。すなわち、蒸発器の結露状態により上記所定時間Aを決定することができる。
【0011】
またこの場合、上記所定時間Aは、外気温度及び外気湿度、または内外気の導入割合、または降雨状態、または車室内温度及び車室内湿度のうち少なくとも一つを参照することで、蒸発器の吸込み空気の露点温度を推定し、蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の前記蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度と、推定した露点温度を参照し、吸込み空気の露点温度から蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度を減じた値が正の値となるときは、上記所定時間Aを前記減じた値に応じて決定することができる。すなわち、蒸発器の結露の度合いにより、DEF吹出口からの吹出しの禁止時間を調節するのである。
【0012】
あるいは、外気温度及び外気湿度、または内外気の導入割合、または降雨状態、または車室内温度及び車室内湿度のうち少なくとも一つを参照することで、蒸発器の吸込み空気の露点温度を推定し、蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度と、推定した露点温度を参照し、吸込み空気の露点温度から蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度を減じた値が負の値となるときは、DEF吹出口からの吹出し禁止を解除することができる。すなわち、蒸発器が結露していないときには、窓ガラスの曇りの発生の可能性が低いとして、本発明によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を解除するのである。
【0013】
また、本発明に係る車両用空調装置においては、上記DEF吹出口から空調風が吹出される空調状態で、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時、停止前の蒸発器温度または蒸発器出口空気温度が予め定めた所定値以上である場合には、上記吹出口制御手段によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施せず、停止前の蒸発器温度または蒸発器出口空気温度が前記所定値未満である場合には、上記吹出口制御手段によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施するようにすることができる。このようにすれば、湿度センサが無くても、本発明に係る制御の実施が可能になり、湿度センサレスの構成とすることができる。
【0014】
この場合、さらに、外気温度が予め定めた所定値以下である場合には、上記吹出口制御手段によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施するようにすることができる。また、窓ガラス温度に相関のある物理量を検知または推定する窓ガラス温度検知手段を有し、窓ガラス温度が予め定めた所定値以下である場合には、上記吹出口制御手段によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施するようにすることができる。
【0015】
また、本発明に係る車両用空調装置においては、蒸気圧縮式冷凍サイクル停止後の状態から運転状態へと移行する場合には、運転後から所定時間Bの間DEF吹出口からの吹出し禁止制御を続行するようにすることができる。すなわち、本発明では、基本的に、DEF吹出口から空調風が吹き出される空調状態で、蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時に、窓ガラスの曇りを防止するためにDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施するのであるが、蒸気圧縮式冷凍サイクルが停止後の状態から運転状態へと復帰された時に、未だ窓ガラスの曇りの発生の可能性が残っていると判断された場合には、窓ガラスの曇り防止のためのDEF吹出口からの吹出し禁止制御を所定時間Bの間続行することができるようにしたものである。
【0016】
この場合、窓ガラス温度に相関のある物理量を検知または推定する窓ガラス温度検知手段を有し、窓ガラス温度が蒸発器温度または蒸発器出口空気温度より低い場合には、蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転後所定時間Bの間DEF吹出口からの吹出し禁止制御を続行し、また、蒸発器温度または蒸発器出口空気温度が窓ガラス温度より低くなった場合には、DEF吹出口からの吹出し禁止制御を解除し、通常制御とすることができる。つまり、蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転後のDEF吹出口からの吹出し禁止制御の続行時間は原則として所定時間Bとするが、蒸発器温度または蒸発器出口空気温度が窓ガラス温度より低くなって窓ガラスの曇りの発生の可能性が低くなったと判断された場合には、DEF吹出口からの吹出し禁止制御を解除し、通常制御に戻すのである。
【0017】
また、本発明に係る車両用空調装置においては、上記蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧縮機がその駆動源からの動力伝達機構による駆動力を随時切断、連結できる場合においては、上記蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時とは、蒸発器の温度を制御するために前記動力伝達機構を断続的に切断及び連結する場合は含まず、この動力伝達機構の断続的な切断及び連結以外の場合について本発明に係る禁止制御を適用する。すなわち、いわゆるクラッチサイクリング状態での動作は、蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時には含まれない。
【0018】
また、上記蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧縮機の駆動源が停止した場合にも、DEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施するようにすることができる。すなわち、冷凍サイクルの圧縮機の駆動源が停止した状態、例えば、アイドルストップした状態においても、DEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施するようにし、窓ガラスの曇りの発生を防止できるようにしたものである。
【0019】
また、上記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転状態として、冷房サイクルモードから暖房サイクルモードへ移行した場合には、一旦冷凍サイクルが運転された状態から停止された状態に移行されたとみなし、所定時間、DEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施するようにすることができる。すなわち、このようなモード移行時においても、本発明に係るDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施することにより、窓ガラスの曇りの発生を防止できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明に係る車両用空調装置によれば、蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転状態から停止した場合に、窓ガラスの曇り発生の原因となるDEF吹出口からの吹出しを原則として所定時間禁止するようにしたので、窓ガラスの曇りの発生を確実に効果的に防ぐことができる。また、禁止時間を適切に決めることにより、さらに、所定時間の禁止制御後の該制御の続行時間を適切に決めることにより、一層確実に窓ガラスの曇りの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施態様に係る車両用空調装置の機器系統図である。
【図2】従来の冷凍サイクル停止後のDEF吹出し空気湿度の変化例を示す特性図である。
【図3】本発明の実施例1における特性図である。
【図4】本発明の実施例2における特性図である。
【図5】本発明の実施例3における特性図である。
【図6】本発明の実施例4における特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る車両用空調装置の機械的な構成部分全体を示しており、通風回路と冷凍回路(蒸気圧縮式冷凍サイクル)が設けられている。この蒸気圧縮式冷凍サイクル11には、駆動源としての車両のエンジン1(但し、電動モータ等、他の駆動源も可能である)により、プーリ2、3を介してベルト12によって駆動される圧縮機4(例えば、可変容量圧縮機または固定容積式圧縮機)を有しており、圧縮機4は、エンジン1からの駆動力の伝達をコントロールする動力伝達機構としてのクラッチ13を介して駆動されるようになっている。冷凍サイクル11は、さらに、圧縮機4から吐出される高温、高圧の冷媒と外部空気との熱交換により冷媒を冷却する放熱器6(例えば、凝縮器)と、放熱器冷却ファン7と、圧縮機4から吐出される高圧冷媒の圧力を放熱器6の出口側で検出する高圧側圧力検出手段5と、放熱器6から流出した高圧冷媒を気液分離する受液器8(レシーバ)と、受液器8から流出した冷媒を断熱膨張させる膨張手段9(膨張弁)と、膨張手段9からの冷媒を蒸発させ送られてくる空調風を冷却する蒸発器10とを備えており、蒸発器10から流出した冷媒は、圧縮機4に送られて再び圧縮される。冷凍サイクル11の高圧側圧力は、図示のように、圧縮機吐出冷媒圧力から放熱器出口冷媒圧力に至る冷媒圧力を検知することが好ましい。
【0023】
蒸発器10は、車室内へと空調風を送る空気通路を形成する通風ダクト14内に配置されている。通風ダクト14には、外気導入口15と内気導入口16から、内外気切替ダンパ17を介して空気が導入され、内外気切替ダンパ17は内外気切替ダンパアクチュエータ18によって作動が制御される。導入された空気は送風機としてのブロワファン19によって吸入され下流側の蒸発器10に向けて圧送される。蒸発器10の出口側には、蒸発器出口空気温度センサ20(蒸発器温度センサ)が設けられており、蒸発器10の下流側には、加熱器としてのヒータコア21が設けられている。このヒータコア21を通過する空気とバイパスする空気の割合がエアミックスダンパ22によって調節され、エアミックスダンパ22の開度はエアミックスダンパアクチュエータ23によって制御される。温調された空調風は、各ダンパ24、25、26を介して各吹出口27、28、29から車室内に向けて吹き出される。吹出口27、28、29においては、吹出口27が、窓ガラス(特に、フロントガラス)近傍より空調風が吹き出されるDEFモードの吹出口に、吹出口28が、乗員の胴体方向に向けて空調風が吹き出されるVENTモードの吹出口に、吹出口29が、乗員の足元近傍から吹き出すFOOTモードの吹出口に、それぞれ構成されている。吹出口の選択制御は吹出口制御手段30によって行われ、吹出口制御手段30は本実施態様では空調制御装置31内に組み込まれている。
【0024】
空調制御装置31には、外気温度センサ32からの外気温度信号、日射センサ33からの車室内への日射量信号、車室内温度センサ34からの車内温度信号、湿度センサ35からの車室内湿度信号、エンジン回転数センサ36からのエンジン回転数信号(エンジンの運転、停止信号、アイドルストップ信号を含む)、高圧側圧力検出手段5の高圧側冷媒圧力信号37、蒸発器出口空気温度センサ20からの蒸発器出口空気温度信号(蒸発器温度信号)38が、それぞれ入力される。空調制御装置31からは、本実施態様では、圧縮機4の駆動を制御するクラッチコントローラ39へクラッチ制御信号40が、圧縮機4の容量を制御可能な外部信号としての圧縮機容量制御信号41が圧縮機4へ、エアミックスダンパアクチュエータ23へエアミックスダンパ制御信号42が、内外気切替ダンパアクチュエータ18へ内外気切替ダンパ制御信号43が、ブロワファン19の駆動用電圧信号44(ブロワ電圧信号)が、それぞれ出力される。
【0025】
なお、上記実施態様では、蒸気圧縮式冷凍サイクルはフロン系冷媒を適用しているが、二酸化炭素冷媒としてもよい。また、上記蒸気圧縮式冷凍サイクルでは、圧縮機の駆動をコントロールできるクラッチを装備しているが、クラッチレスとしてもよい。また、上記圧縮式冷凍サイクルの膨張手段としては、機械式膨張弁の他、電子膨張弁あるいは温度式膨張弁あるいは差圧式膨張弁などを用いてもよい。また、上記の蒸気圧縮式冷凍サイクルでは、外部制御信号により圧縮機の容量を変化させることのできる外部可変容量圧縮機としているが、固定容量圧縮機であってもよい。さらに、蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧縮機として、エンジンにより駆動するもの、あるいは電動モータにより駆動するもの、さらには両駆動源により選択的にあるいは同時に駆動可能なハイブリッド式圧縮機であってもよい。
【0026】
上記のような車両用空調装置において、本発明においては、例えば、DEF吹出口27から空調風が吹き出している状態で、蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時、例えば、窓ガラス温度を参照し、また、空調装置OFF状態による吹出空気の水分量の上昇を想定することで、窓ガラス温度に対して吹出空気の露点温度が高くなる場合には、一時的にDEF吹出しを禁止し、BI−LEVELまたはVENT吹出しモードとする、あるいは、DEF吹出しのみを止めることができればFOOTとする。この場合、湿度センサを要する構成、湿度センサがなくてもよい構成のいずれも可能とする。また、内気より外気の湿度が低い場合には、外気導入モードとすることもできる。
【0027】
上記実施態様について以下に説明する。
車両用空調装置の蒸気圧縮式冷凍サイクル11が運転しているとき、車室内へ空調風を吹き出す吹出口のうち、窓ガラス、とくにフロントガラス近傍より吹出されるDEF吹出口27から空気が吹き出されている状態である場合において、図2に従来制御のままの状態を示すように冷凍サイクルの運転が停止される場合には、蒸発器の温度が上昇することで蒸発器に付着した凝縮水が気化することで一時的に吹出す空気の湿度が上昇する。そこで、冷凍サイクルの運転が停止される場合にはDEF吹出口27からの空気の吹出しを禁止することで、湿度が上昇した吹出空気をフロントガラス近傍へ供給することはなくなるため、フロントガラスの曇りを確実にかつ効果的に防止することが可能となる。以下、各実施例について説明する。
【0028】
実施例1(冷凍サイクル停止時DEF吹出禁止)
図3に示すように、蒸気圧縮式冷凍サイクル11の圧縮機4の運転が停止するときに、吹出口制御手段30によりDEF吹出口27からの吹出しを禁止しDEF吹出口27からの吹出しを無くすことにより、DEF吹出空気部分の湿度の上昇を抑制することができる。禁止制御は、少なくとも予め定めた所定時間Aの間行われる。これによって、窓ガラスの曇りの発生を効果的に防止できる。
【0029】
実施例2(DEF吹出禁止からDEF吹出再開)
図4に示すように、蒸気圧縮式冷凍サイクル11の圧縮機4の運転が停止するときに、吹出口制御手段30によりDEF吹出口27からの吹出しを禁止しDEF吹出口27からの吹出しを無くすことにより、DEF吹出空気の湿度の上昇を抑制することができる。さらに、上記予め定めた所定時間Aに所定時間Bを加えた時間である予め定めたΔtまで吹出禁止制御を続行し、Δt後にDEF吹出口27からの吹出しを許可して再開する。Δt後には蒸発器からの吹出し空気の湿度が低下することが予測されるため、DEF吹出口27からの吹出しを行ってもフロントガラスの曇りを防ぐことができる。
【0030】
実施例3(冷凍サイクル再運転時のDEF吹出再開)
図5に示すように、蒸気圧縮式冷凍サイクル11の圧縮機4の運転が停止するときに、吹出口制御手段30によりDEF吹出口27からの吹出しを禁止しDEF吹出口27からの吹出しを無くすことにより、DEF吹出空気の湿度の上昇を抑制することができる。さらに、冷凍サイクルの圧縮機4の運転が再開される場合、冷凍サイクルの圧縮機4の運転が再開されてから予め定めたΔt’後にDEF吹出口27からの吹出しを許可して再開する。冷凍サイクルの圧縮機4の運転初期では蒸発器からの吹出し空気の湿度が高い可能性があるため、運転してから所定時間経過後にDEF吹出を再開することで、Δt’後には蒸発器からの吹出し空気の湿度が低下することが予測されるため、DEF吹出しの空気の湿度を低下することができ、確実にフロントガラスの曇りを防ぐことができる。
【0031】
実施例4(内外気変更及び気象状態に対する冷却量の変化)
図6に示すように、蒸気圧縮式冷凍サイクル11の圧縮機4の運転が停止するときに、蒸発器出口空気温度が予め定めた所定値A以下であるとき、DEF吹出口27からの吹出しを禁止しDEF吹出口27からの吹出しを無くすことにより、DEF吹出空気の湿度の上昇を抑制することができる。これは、蒸発器出口空気温度が所定値A以下である場合には、蒸発器の吸込み空気の露点温度が、蒸発器の出口空気より高い場合を想定しており、蒸発器には凝縮水が発生した状態である。そのため、冷凍サイクルの圧縮機4の運転が停止したときに、蒸発器の温度が上昇することで蒸発器から吹出される空気の湿度が上昇することが想定され、その結果DEF吹出口27から空気を吹き出すことでフロントガラスが曇る恐れがある。本実施例では、蒸発器出口空気温度が予め定めた所定値A以下である状態で、蒸気圧縮式冷凍サイクル11の圧縮機4の運転が停止するときには、吹出口制御手段30によりDEF吹出口27からの吹出しを禁止しDEF吹出口27からの吹出しを無くすことにより、フロントガラス近傍の湿度の上昇を抑制でき、フロントガラスの曇りを防ぐことができる。
【0032】
また、上記の実施例以外にも、例えば、窓ガラス温度を検知または推定することで、予め定めたガラス温度以下である場合には、冷凍サイクルが停止した場合に、DEF吹出口27からの吹出しを禁止することもフロントガラスの曇りを防ぐために有効である。さらに、蒸発器出口空気温度が窓ガラス温度より低下した場合にはDEF吹出禁止制御を解除することで、通常の空調制御に影響を与えることはなく、効果的にフロントガラスの曇りを抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る車両用空調装置の構成は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを備えたあらゆる車両用空調装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 エンジン
2、3 プーリ
4 圧縮機
5 高圧側圧力検出手段
6 放熱器
7 放熱器冷却ファン
8 受液器
9 膨張手段
10 蒸発器
11 蒸気圧縮式冷凍サイクル
12 ベルト
13 クラッチ
14 通風ダクト
15 外気導入口
16 内気導入口
17 内外気切替ダンパ
18 内外気切替ダンパアクチュエータ
19 ブロワファン
20 蒸発器出口空気温度センサ
21 ヒータコア
22 エアミックスダンパ
23 エアミックスダンパアクチュエータ
24、25、26 ダンパ
27 DEF吹出口
28、29 吹出口
30 吹出口制御手段
31 空調制御装置
32 外気温度センサ
33 日射センサ
34 車室内温度センサ
35 湿度センサ
36 エンジン回転数センサ
37 高圧側冷媒圧力信号
38 蒸発器出口空気温度信号(蒸発器温度信号)
39 クラッチコントローラ
40 クラッチ制御信号
41 圧縮機容量制御信号
42 エアミックスダンパ制御信号
43 内外気切替ダンパ制御信号
44 ブロワ電圧信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、冷媒を圧縮する圧縮機と、高温高圧の冷媒を放熱させる放熱器と、冷却器として車室内に吹き出す空気を冷却する冷媒の蒸発器とを備えた蒸気圧縮式冷凍サイクルを有するとともに、車室内へ吹き出す空調風の吹出口を選択し制御する吹出口制御手段を有する車両用空調装置において、複数の吹出口のうち車室内において窓ガラス近傍より空調風が吹き出されるDEF吹出口から空調風が吹き出される空調状態で、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時、所定時間、前記吹出口制御手段によりDEF吹出口からの吹出しを禁止することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記吹出口制御手段により前記DEF吹出口からの吹出しを禁止し、所定時間A経過後に、前記吹出口制御手段による禁止を解除して禁止前の吹出口の状態に制御する、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
外気温度に相関のある物理量を検知または推定する外気温度検知手段と、車室外空気と車室内空気との導入割合を調節する内外気切替手段とを有し、前記所定時間Aは、前記外気温度検知手段により検知または推定される外気温度、前記内外気切替手段により調節される内外気の導入割合、外気湿度、降雨状態、車室内温度、車室内湿度、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の前記蒸発器の温度、蒸発器出口空気温度のうち少なくとも一つを参照することにより、決定される、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記所定時間Aは、外気温度及び外気湿度、または内外気の導入割合、または降雨状態、または車室内温度及び車室内湿度のうち少なくとも一つを参照することで、前記蒸発器の吸込み空気の露点温度を推定し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の前記蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度と、推定した露点温度を参照することにより、決定される、請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記所定時間Aは、外気温度及び外気湿度、または内外気の導入割合、または降雨状態、または車室内温度及び車室内湿度のうち少なくとも一つを参照することで、前記蒸発器の吸込み空気の露点温度を推定し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の前記蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度と、推定した露点温度を参照し、前記吸込み空気の露点温度から前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の前記蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度を減じた値が正の値となるときは、前記所定時間Aを前記減じた値に応じて決定する、請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
外気温度及び外気湿度、または内外気の導入割合、または降雨状態、または車室内温度及び車室内湿度のうち少なくとも一つを参照することで、前記蒸発器の吸込み空気の露点温度を推定し、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の前記蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度と、推定した露点温度を参照し、前記吸込み空気の露点温度から前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転停止前の前記蒸発器の温度または蒸発器出口空気温度を減じた値が負の値となるときは、DEF吹出口からの吹出し禁止を解除する、請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記DEF吹出口から空調風が吹出される空調状態で、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時、停止前の蒸発器温度または蒸発器出口空気温度が予め定めた所定値以上である場合には、前記吹出口制御手段によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施せず、停止前の蒸発器温度または蒸発器出口空気温度が前記所定値未満である場合には、前記吹出口制御手段によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施する、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
さらに、外気温度が予め定めた所定値以下である場合には、前記吹出口制御手段によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施する、請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
窓ガラス温度に相関のある物理量を検知または推定する窓ガラス温度検知手段を有し、窓ガラス温度が予め定めた所定値以下である場合には、前記吹出口制御手段によるDEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施する、請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
蒸気圧縮式冷凍サイクル停止後の状態から運転状態へと移行する場合には、運転後から所定時間Bの間DEF吹出口からの吹出し禁止制御を続行する、請求項1〜9のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
窓ガラス温度に相関のある物理量を検知または推定する窓ガラス温度検知手段を有し、窓ガラス温度が蒸発器温度または蒸発器出口空気温度より低い場合には、蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転後所定時間Bの間DEF吹出口からの吹出し禁止制御を続行し、また、蒸発器温度または蒸発器出口空気温度が窓ガラス温度より低くなった場合には、DEF吹出口からの吹出し禁止制御を解除し、通常制御とする、請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧縮機がその駆動源からの動力伝達機構による駆動力を随時切断、連結できる場合においては、前記蒸気圧縮式冷凍サイクルが運転された状態から停止される時とは、蒸発器の温度を制御するために前記動力伝達機構を断続的に切断及び連結する場合は含まず、この動力伝達機構の断続的な切断及び連結以外の場合について適用する、請求項1〜11のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの圧縮機の駆動源が停止した場合にも、DEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施する、請求項1〜12のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記蒸気圧縮式冷凍サイクルの運転状態として、冷房サイクルモードから暖房サイクルモードへ移行した場合には、一旦冷凍サイクルが運転された状態から停止された状態に移行されたとみなし、所定時間、DEF吹出口からの吹出し禁止制御を実施する、請求項1〜13のいずれかに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−167925(P2010−167925A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12877(P2009−12877)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】