説明

車両用空調装置

【課題】空調ユニット自体の小型、軽量化を達成しつつ、エンジン始動直後であっても迅速に暖房できるようにした車両用空調装置を提供する。
【解決手段】冷媒の蒸発器とエンジン冷却水を温水として用いるヒータコアを組み込んだ空調ユニットを備えた車両用空調装置において、空調ユニット自体の内部に、赤外線ヒータを代表とする電気ヒータと、該電気ヒータによる輻射熱を予め設定した車室内の特定方向に向けて反射させる反射板とを組み込んだことを特徴とする車両用空調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、とくに、エンジン始動直後であっても迅速に暖房することが可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置としては、送風ダクト内に、空気冷却を行うための冷媒の蒸発器と、空気加熱を行うためのヒータを配置したものが一般的な構造であり、このヒータには、通常、エンジン冷却水を温水として通水するヒータコアが用いられる。このヒータコアにより、車室内に送られる空調風が温められ、暖房に供される。
【0003】
このような暖房機能を有する車両用空調装置として、車両への組み付け性、搭載性を向上し、車両用空調装置全体の小型、軽量化をはかるために、少なくとも冷媒の蒸発器と上記のようなヒータコアを一つのユニット内に組み込んだ空調ユニットの構成が知られている。
【0004】
従来のこのような空調ユニットは、通常、車室内側から見てインスツルメントパネルの背面側に配置されており、空調ユニットの車室内側部位の下部側には、車両の前席乗員の足元に向けて暖房用の温風を導いて吹き出すためのダクト(以降、FOOTダクトと呼ぶこともある。)が下方に向けて延設されている。
【0005】
ところが、上記のようなエンジン冷却水を温水として用いるヒータコアを組み込んだ空調ユニットの場合、エンジンを始動したばかりのときには、エンジン冷却水が未だ十分に温められていないため、すぐには温風が出てこない。とくに乗員の足元が温まらないため、エンジン始動時には十分な暖房機能を発揮することができない。
【0006】
また、上記のような従来の空調ユニットの構造では、車両の前席乗員の足元に向けてFOOTダクトが延びているため、車室内の前席乗員の足元近辺のスペースが狭くなるとともに、FOOTダクトの延設分、空調ユニットの大型化、重量増大は避けられない。
【0007】
本発明に関連して、車室内の前席乗員の足元近辺の暖房を迅速に行うために、その部位に、上記のような空調ユニットとは別個に、赤外線ヒータを配置したり、反射板を設けて赤外線ヒータ管の輻射熱を反射させるようにした構造が提案されている(例えば、特許文献1、2)。しかし、これらの提案では、いずれも、上記のような空調ユニットとは別個に赤外線ヒータが設けられ、空調ユニット自体にはFOOTダクトが残されることとなるため、空調ユニット自体の小型、軽量化は達成されず、その状態で赤外線ヒータが付加配置されるため、乗員の足元近辺のスペースは一層狭くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平2−19597号公報
【特許文献2】特開2007−1355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、空調ユニット自体の小型、軽量化を達成しつつ、エンジン始動直後であっても迅速に暖房できるようにした車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用空調装置は、冷媒の蒸発器とエンジン冷却水を温水として用いるヒータコアを組み込んだ空調ユニットを備えた車両用空調装置において、前記空調ユニット自体の内部に、電気ヒータと、該電気ヒータによる輻射熱を予め設定した車室内の特定方向に向けて反射させる反射板とを組み込んだことを特徴とするものからなる。
【0011】
このような本発明に係る車両用空調装置においては、電気ヒータとその輻射熱を反射させる反射板とが、空調ユニット自体の内部に組み込まれる。そして、電気ヒータによる輻射熱は、反射板を介して、予め設定した車室内の特定方向、とくに乗員の特定部位方向に向けて放射される。電気ヒータは、作動直後にあっても急速加熱可能であるから、エンジン始動直後で、エンジン冷却水が未だ十分に温まっておらず、ヒータコアによる空気加熱が期待できないときにあっても、電気ヒータの作動により迅速な暖房が可能になる。この迅速な暖房は輻射熱によるものであるから、温風を特定方向に導くダクトの不要化が可能になり、とくに、従来の空調ユニットにおける、乗員の足元に向けて延びていたFOOTダクトの不要化が可能になる。その結果、本発明における空調ユニットでは、従来の空調ユニットに比べ、小型、軽量化が可能となる。また、電気ヒータと反射板を空調ユニット自体の内部に組み込むに際し、空調ユニット内のスペースを有効に利用することにより、電気ヒータおよび反射板を暖房機能にとって適切な位置に配置することが可能になり、エンジン始動直後の迅速な暖房を可能にしつつ、電気ヒータと反射板まで含めた車両用空調装置全体の小型、軽量化まではかることが可能になる。さらに、上記電気ヒータを主暖房用に使用すれば、エンジン冷却水を温水として用いるヒータコアの能力低減が可能になり、ヒータコアの小型、軽量化も可能になる。さらにまた、上述の如くFOOTダクトの不要化が可能になることで、空調ユニット自体の内部を通過させる風量の低減も可能になり、送風機の能力低減も可能となる。
【0012】
上記本発明に係る車両用空調装置においては、上記空調ユニットが、車室内側から見てインスツルメントパネルの背面側に配置される構成とすることができる。この場合、電気ヒータと反射板が空調ユニット自体の内部に組み込まれるので、容易に、乗員が直接電気ヒータに触れない構造に構成できる。
【0013】
また、上記車室内の特定方向としては、車両の前席乗員の脚方向とすることが好ましい。脚方向としては、例えば、前席乗員の太もも方向とすればよい。このように構成すれば、暖房効果の大きい、前席乗員の太もも以下の部位が迅速に温められることになる。
【0014】
また、上記空調ユニットに、上記反射板により反射された輻射熱を上記車室内の特定方向に向けて放射させるための間口が開設されている構成を採用することができる。輻射熱を間口を通して特定方向に放射させることにより、迅速な暖房が要求される部位に対して、無駄なエネルギーを使用せずに効率よく迅速な暖房を行うことが可能になる。このような間口を空調ユニットの壁の側部に開設することにより、空調ユニットの車室内に近い側の壁には電気ヒータ設置、固定機能を持たせるとともに、車室内の乗員側からは直接電気ヒータに触れ得ない構造を容易に達成できるとともに、間口を通して輻射熱を望ましい特定方向に放射させることが可能になり、電気ヒータ設置の際の安全性確保と、本発明における基本的課題であるエンジン始動時の迅速な暖房との両立を効率よく達成できる。
【0015】
このような本発明に係る車両用空調装置における上記電気ヒータとしては、赤外線ヒータやセラミックヒータ等の任意の電気ヒータが適用可能であるが、急速加熱性やコスト面などから、赤外線ヒータを用いることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る車両用空調装置における上記電気ヒータは、主暖房用、補助暖房用のいずれの形態でも使用可能である。つまり、上記電気ヒータを主暖房用として使用し、エンジン冷却水を温水として用いるヒータコアへの通風による暖房を補助暖房とする場合と、上記電気ヒータを補助暖房用として使用し、エンジン冷却水を温水として用いるヒータコアへの通風による暖房を主暖房とする場合のいずれの形態を採用することも可能である。
【0017】
上記電気ヒータが主暖房用に使用される場合においては、暖房のための制御条件(起動条件、停止条件)として、例えば次のような起動、停止条件を採用することができる。
(A)外気温度が規定値未満(例えば、18℃未満)、
車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上(例えば、6deg以上)、
上記電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値以上(例えば、12V以上)、
の少なくとも1つ以上を含む起動条件のand条件で、上記電気ヒータを起動し、
(B)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上(例えば、1deg以上)、かつ、上記エンジン冷却水の温度が所定値以上(例えば、40℃以上)の条件で、上記ヒータコアへの通風による暖房(ブロワ送風による暖房)を起動し、
(C)外気温度が規定値以上(例えば、18℃以上)、
車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値未満(例えば、6deg未満)、
上記電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値未満(例えば、12V未満)、
上記エンジン冷却水の温度が所定値以上(例えば、60℃以上)、
車室内温度検出値が所定値以上(例えば、25℃以上)、
の少なくとも1つ以上を含む停止条件のand条件で、上記電気ヒータを停止するようにすることができる。
【0018】
また、上記電気ヒータが補助暖房用に使用される場合においては、例えば次のような起動、停止条件を採用することができる。
(A)外気温度が規定値未満(例えば、18℃未満)、
上記エンジン冷却水の温度が所定値未満(例えば、60℃未満)、
車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上(例えば、6deg以上)、
上記電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値以上(例えば、12V以上)、
の少なくとも1つ以上を含む起動条件のand条件で、上記電気ヒータを起動し、
(B)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上(例えば、1deg以上)、かつ、上記エンジン冷却水の温度が所定値以上(例えば、40℃以上)の条件で、上記ヒータコアへの通風による暖房(ブロワ送風による暖房)を起動し、
(C)外気温度が規定値以上(例えば、18℃以上)、
上記エンジン冷却水の温度が所定値以上(例えば、60℃以上)、
上記電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値未満(例えば、12V未満)、
車室内温度検出値が所定値以上(例えば、25℃以上)、
の少なくとも1つ以上を含む停止条件のand条件で、上記電気ヒータを停止するようにすることができる。
【0019】
さらに、上述の電気ヒータを主暖房用、補助暖房用のいずれの形態で使用する場合においても、上記ヒータコアへの通風による暖房は、一旦起動した後には暖房停止するまで通風を継続するが、上記電気ヒータによる暖房は、上記のような起動条件、停止条件に基づき起動、停止するようにすることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両用空調装置によれば、電気ヒータと反射板を空調ユニット自体の内部に組み込み、従来のFOOTダクトの不要化を可能としたので、空調ユニット自体の小型、軽量化をはかりつつ、電気ヒータの輻射熱を反射板を介して車室内特定方向への暖房に供することにより、エンジン始動直後であっても望ましい暖房を迅速に開始することができるようになる。
【0021】
また、エンジン冷却水を温水として用いるヒータコアの能力低減や、空調ユニット用の送風機の能力低減をはかることも可能となる。
【0022】
さらに、電気ヒータによる暖房、エンジン冷却水を温水として用いるヒータコアによる暖房の起動条件、停止条件等を適切に設定することにより、エンジン始動直後および時間経過後の両方について、より望ましい条件で暖房を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施態様に係る車両用空調装置の車両搭載状態における概略縦断面図である。
【図2】図1の車両用空調装置の空調ユニット部の概略拡大縦断面図である。
【図3】図2の空調ユニットの概略拡大部分縦断面図である。
【図4】図2の空調ユニットの概略拡大部分透視斜視図である。
【図5】従来の空調ユニット(A)と図2の空調ユニット(B)とを比較した概略縦断面図である。
【図6】本発明における電気ヒータを主暖房用に使用した場合の作動・制御例を示すタイムチャートである。
【図7】本発明における電気ヒータを補助暖房用に使用した場合の作動・制御例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図4は、本発明の一実施態様に係る車両用空調装置を示しており、本実施態様では、図1に示すように、車両用空調装置1は通常の乗用車2のインスツルメントパネル3の前部側(車室内4側から見てインスツルメントパネル3の背面側)に設けられている。車両用空調装置1は、冷媒の蒸発器5とエンジン冷却水を温水として用いるヒータコア6を組み込んだ空調ユニット7を備えている。この空調ユニット7自体の内部に、図2〜図4に示すように、電気ヒータとしての赤外線ヒータ8と、該赤外線ヒータ8による輻射熱を予め設定した車室内4の特定方向に向けて反射させる反射板9とが組み込まれており、かつ、反射板9により反射された輻射熱を上記車室内の特定方向に向けて放射させるための間口10が、空調ユニット7の壁の両側部に開設されている。この間口10を通して輻射熱が放射される車室内の特定方向は、車両の前席乗員11(図1)の脚方向、例えば前席乗員11の太もも以下の部位方向に設定されている。
【0025】
空調ユニット7は、図2に示すように、上記の間口10を通して反射板9により反射された輻射熱を車室内4の特定方向、とくに前席乗員11の脚方向に向けて放射させる構成に加え、空調風を前席乗員11の顔方向に向けて送ることが可能な吹出口(FACE吹出口12)と、フロントガラス内面方向に向けて送ることが可能な吹出口(DEF吹出口13)とを有している。また、図示を省略したが、空調ユニット7内部または外部には、空調ユニット7を通過する空気を送風する送風機が設けられている。
【0026】
本実施態様では、赤外線ヒータ8は、とくに図3、図4に明示するように、空調ユニット7の最も車室内4に近い部位の下部壁14の内面側に固定、配置されており、上方の壁15の内面側に、赤外線ヒータ8からの輻射熱を間口10を通して前席乗員11の脚方向に向けて反射させる反射板9が固定、配置されている。
【0027】
このように構成された本実施態様に係る車両用空調装置1においては、空調ユニット7内部に赤外線ヒータ8と反射板9が組み込まれ、赤外線ヒータ8からの輻射熱が反射板9で反射された後、間口10を通して前席乗員11の脚方向に向けて放射される。赤外線ヒータ8は急速加熱可能なものであるから、車両のエンジン始動直後で、エンジン冷却水が未だ十分に温まっておらず、ヒータコア6による空気加熱が期待できないときにあっても、赤外線ヒータ8の作動により迅速な暖房が可能になる。とくに、前席乗員11の脚方向に向けて放射される輻射熱による暖房であり、温感が最も得られやすい太もも以下の部位が温められるので、迅速な暖房を効果的に行うことが可能になる。
【0028】
また、図5に、従来の空調ユニット100、つまり乗員の足元に向けて延び該足元に向けて温風を吹き出すことが可能なFOOTダクト101を有する空調ユニット100(図5(A))と、上記の本実施態様に係る空調ユニット7(図5(B))とを比較して示すように、暖房用赤外線ヒータ8の設置により、乗員の足元に向けて温風を吹き出すことが不要になり、従来構造におけるFOOTダクト101の不要化(廃止)が可能になる。その結果、図5の(A)、(B)の比較から明らかなように、本発明における空調ユニット7は、従来の空調ユニット100に比べ、FOOTダクト101を廃止した分、小型、軽量化が可能となる。また、従来の赤外線ヒータを空調ユニットとは別個に設けた構造と比べても、赤外線ヒータ8と反射板9を空調ユニット7自体の内部スペースを有効に利用して組み込んだことにより、赤外線ヒータ8と反射板9まで含めた車両用空調装置1全体の小型、軽量化をはかることも可能になる。
【0029】
また、赤外線ヒータ8を主暖房用に使用することにより、エンジン冷却水を温水として用いるヒータコア6の能力を低減させることも可能になる。その結果、ヒータコア6の小型、軽量化が可能になり、車両用空調装置1全体の小型、軽量化、省エネルギー化に寄与できることとなる。さらに、上述の如くFOOTダクト101の不要化が可能になることで、FACE,DEFモードでの空調風の風量のみを考慮すればよいので、空調ユニット7自体の内部を通過させる風量の低減も可能になる。その結果、送風機の能力低減も可能となり、このこともまた、車両用空調装置1全体の小型、軽量化、省エネルギー化に寄与できることとなる。
【0030】
本発明に係る車両用空調装置においては、前述の如く、電気ヒータ(例えば、上述の赤外線ヒータ8)を主暖房用として使用し、エンジン冷却水を温水として用いるヒータコア6への通風による暖房(ヒータコアによる車室内への吹き出し暖房)を補助暖房とする場合と、電気ヒータを補助暖房用として使用し、ヒータコアによる吹き出し暖房を主暖房とする場合のいずれの形態を採用することも可能である。各形態の実施例について以下に説明する。
【0031】
制御の実施例1(電気ヒータを主暖房用として使用):
(A)電気ヒータの起動条件:
例えば以下の起動条件の少なくとも1つ以上を含むand条件で電気ヒータを起動する。
(1)イグニッションスイッチON
(2)空調ユニット用送風機ONモード(ブロワONモード)
(3)電気ヒータONモード
これら(1)、(2)、(3)はマニュアル操作による。
(4)外気温度が規定値未満(例えば、18℃未満)
(5)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上(例えば、6deg以上)
(6)電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値以上(例えば、12V以上、このバッテリー電圧の規定値は、電気ヒータ用の電力をとるバッテリーの規定電圧とすればよく、例えば200Vバッテリーの場合には、バッテリー電圧の規定値は200Vとすればよい。以下のバッテリー電圧の規定値を基準とする全ての条件において同じ。)
(7)電気ヒータの温度が所定値未満(例えば、200℃未満)
これら(1)〜(7)の起動条件のうち、前述の如く、とくに(4)〜(6)の起動条件の少なくとも1つ以上を含むand条件で電気ヒータを起動するようにすることもできる。
【0032】
(B)ブロワ送風による暖房の起動条件:
(1)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上(例えば、1deg以上)
(2)エンジン冷却水(例えば、ラジエータ水)の温度が所定値以上(例えば、40℃以上)
これら(1)、(2)の条件を満たすときに、ヒータコアへの通風による補助暖房(ブロワ送風による暖房、つまり、ヒータコアによる吹き出し暖房)を起動する。
【0033】
(C)電気ヒータの停止条件:
例えば以下の停止条件の少なくとも1つ以上を含むand条件で電気ヒータを停止する。
(1)イグニッションスイッチOFF
(2)空調ユニット用送風機OFFモード(ブロワOFFモード)
(3)電気ヒータOFFモード
これら(1)、(2)、(3)はマニュアル操作による。
(4)外気温度が規定値以上(例えば、18℃以上)
(5)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値未満(例えば、6deg未満)
(6)電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値未満(例えば、12V未満)
(7)電気ヒータの温度が所定値以上(例えば、200℃以上)
(8)エンジン冷却水(例えば、ラジエータ水)の温度が所定値以上(例えば、60℃以上)
(9)車室内温度検出値が所定値以上(例えば、25℃以上)
これら(1)〜(9)の停止条件のうち、前述の如く、とくに(4)〜(6)、(8)、(9)の停止条件の少なくとも1つ以上を含むand条件で電気ヒータを停止するようにすることもできる。
【0034】
このように電気ヒータを主暖房用として使用する場合の起動・停止例を図6に示す。図6に示す例では、暖房がスタートすると、先ず、主暖房用の電気ヒータが起動され、車室内がある程度暖まると、電気ヒータを起動した状態で、補助暖房用のヒータコアによる吹き出し暖房が加えられている。そして、さらに車室内が暖められると、主暖房用の電気ヒータが停止され、電気エネルギーを節約した状態にて、ヒータコアによる吹き出し暖房のみが継続され、車室内温度が安定した温度に維持される。しかし、車室内温度が低下すると、再び電気ヒータが起動され、ヒータコアによる吹き出し暖房と併せて車室内温度が所定温度となるように制御される。このように電気ヒータの起動、停止は必要に応じて行われる。暖房を停止する場合には、電気ヒータによる主暖房、ヒータコアによる吹き出し暖房の補助暖房ともに、停止される。なお、図6に示した例は単なる一例であって、前述の如き起動、停止条件によって、種々の動作パターンが存在する。
【0035】
制御の実施例2(電気ヒータを補助暖房用として使用):
(A)電気ヒータの起動条件:
(1)イグニッションスイッチOFF
(2)空調ユニット用送風機OFFモード(ブロワOFFモードで、風は出ていなくても可)
(3)電気ヒータOFFモード
これら(1)、(2)、(3)はマニュアル操作による。
(4)外気温度が規定値未満(例えば、18℃未満)
(5)エンジン冷却水(例えば、ラジエータ水)の温度が所定値未満(例えば、60℃未満)
(6)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上(例えば、6deg以上)
(7)電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値以上(例えば、12V以上)
(8)電気ヒータの温度が所定値未満(例えば、200℃未満)
これら(1)〜(8)の起動条件のうち、前述の如く、とくに(4)〜(7)の起動条件の少なくとも1つ以上を含むand条件で電気ヒータを起動するようにすることもできる。
【0036】
(B)ブロワ送風による暖房の起動条件:
(1)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上(例えば、1deg以上)
(2)エンジン冷却水(例えば、ラジエータ水)の温度が所定値以上(例えば、40℃以上)
これら(1)、(2)の条件を満たすときに、ヒータコアへの通風による主暖房(ブロワ送風による暖房、つまり、ヒータコアによる吹き出し暖房)を起動する。
【0037】
(C)電気ヒータの停止条件:
例えば以下の停止条件の少なくとも1つ以上を含むand条件で電気ヒータを停止する。
(1)イグニッションスイッチOFF
(2)空調ユニット用送風機OFFモード(ブロワOFFモード)
(3)電気ヒータOFFモード
これら(1)、(2)、(3)はマニュアル操作による。
(4)外気温度が規定値以上(例えば、18℃以上)
(5)エンジン冷却水(例えば、ラジエータ水)の温度が所定値以上(例えば、60℃以上)、
(6)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値未満(例えば、6deg未満)
(7)電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値未満(例えば、12V未満)
(8)電気ヒータの温度が所定値以上(例えば、85℃以上)
(9)車室内温度検出値が所定値以上(例えば、25℃以上)
これら(1)〜(9)の停止条件のうち、前述の如く、とくに(4)、(5)、(7)、(9)の停止条件の少なくとも1つ以上を含むand条件で電気ヒータを停止するようにすることもできる。
【0038】
このように電気ヒータを補助暖房用として使用し、ヒータコアによる吹き出し暖房を主暖房とする場合の起動・停止例を図7に示す。図7に示す例では、暖房がスタートすると、先ず、急速暖房可能な補助暖房用の電気ヒータが起動され、エンジン冷却水(例えば、ラジエータ水)の温度が所定値以上に上昇すると、例えば電気ヒータを起動した状態で、主暖房用のヒータコアによる吹き出し暖房が起動される。そして、車室内が暖まると、補助暖房用の電気ヒータが停止され、電気エネルギーを節約した状態にて、ヒータコアによる吹き出し暖房の主暖房のみが継続され、車室内温度が安定した温度に維持される。暖房を停止する場合には、起動状態が継続されていたヒータコアによる吹き出し暖房の主暖房を停止すればよい。なお、図7に示した例は単なる一例であって、前述の如き起動、停止条件によって、種々の動作パターンが存在する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る車両用空調装置の構成は、あらゆる車両用空調装置に適用可能であり、とくに通常の乗用車における前席乗員の足元の迅速な暖房が要求される場合に好適なものである。
【符号の説明】
【0040】
1 車両用空調装置
2 乗用車
3 インスツルメントパネル
4 車室内
5 冷媒の蒸発器
6 ヒータコア
7 空調ユニット
8 電気ヒータとしての赤外線ヒータ
9 反射板
10 間口
11 前席乗員
12 FACE吹出口
13 DEF吹出口
14、15 空調ユニットの壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の蒸発器とエンジン冷却水を温水として用いるヒータコアを組み込んだ空調ユニットを備えた車両用空調装置において、前記空調ユニット自体の内部に、電気ヒータと、該電気ヒータによる輻射熱を予め設定した車室内の特定方向に向けて反射させる反射板とを組み込んだことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調ユニットが、車室内側から見てインスツルメントパネルの背面側に配置される、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記車室内の特定方向が、車両の前席乗員の脚方向である、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調ユニットに、前記反射板により反射された輻射熱を前記車室内の特定方向に向けて放射させるための間口が開設されている、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記間口が前記空調ユニットの壁の側部に開設されている、請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記電気ヒータが赤外線ヒータからなる、請求項1〜5のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記電気ヒータが主暖房用に使用される、請求項1〜6のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記電気ヒータが補助暖房用に使用される、請求項1〜6のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記電気ヒータが主暖房用に使用される場合において、
(A)外気温度が規定値未満、
車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上、
前記電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値以上、
の少なくとも1つ以上を含む起動条件のand条件で、前記電気ヒータを起動し、
(B)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上、かつ、前記エンジン冷却水の温度が所定値以上の条件で、前記ヒータコアへの通風による暖房を起動し、
(C)外気温度が規定値以上、
車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値未満、
前記電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値未満、
前記エンジン冷却水の温度が所定値以上、
車室内温度検出値が所定値以上、
の少なくとも1つ以上を含む停止条件のand条件で、前記電気ヒータを停止する、請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記電気ヒータが補助暖房用に使用される場合において、
(A)外気温度が規定値未満、
前記エンジン冷却水の温度が所定値未満、
車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上、
前記電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値以上、
の少なくとも1つ以上を含む起動条件のand条件で、前記電気ヒータを起動し、
(B)車室内温度検出値と目標車室内温度制御値の偏差が所定値以上、かつ、前記エンジン冷却水の温度が所定値以上の条件で、前記ヒータコアへの通風による暖房を起動し、
(C)外気温度が規定値以上、
前記エンジン冷却水の温度が所定値以上、
前記電気ヒータの電源電圧としてのバッテリー電圧が規定値未満、
車室内温度検出値が所定値以上、
の少なくとも1つ以上を含む停止条件のand条件で、前記電気ヒータを停止する、請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記ヒータコアへの通風による暖房は、一旦起動した後には暖房停止するまで通風を継続するが、前記電気ヒータによる暖房は、起動条件、停止条件に基づき起動、停止する、請求項9または10に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−136625(P2011−136625A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297158(P2009−297158)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】