車両用空調装置
【課題】省動力化と快適性との両立を図る。
【解決手段】複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット30と、空調ユニット30を制御する制御手段50とを備え、空調ユニット30は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段24a、25a、26a、27aを有し、制御手段50は、集中モードと全席モードとが時間とともに切り替わるように吹出口モード切替手段24a、25a、26a、27aを制御する。
【解決手段】複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット30と、空調ユニット30を制御する制御手段50とを備え、空調ユニット30は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段24a、25a、26a、27aを有し、制御手段50は、集中モードと全席モードとが時間とともに切り替わるように吹出口モード切替手段24a、25a、26a、27aを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の座席へ向けて空調風を吹き出す車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、省動力モードのときに、助手席の乗員が不在であると助手席への空調風の吹き出しを遮断して、運転席のみへ向けて空調風を吹き出す車両用空調装置が記載されている。
【0003】
この従来技術では、運転席の乗員のみをスポット的に空調することで、運転席の乗員の温感を効果的に向上させて省動力化(省燃費化)を図ることを狙っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−130913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術によると、省動力モードのときに運転席のみへ向けて空調風を吹き出すので、車室内全体で見ると空調性能が低下してしまう。このため、例えば夏季には車室内全体としては室温が上がってしまうので、運転席の乗員の快適性を必ずしも確保できないという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、省動力化と快適性との両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
空調ユニット(30)は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
制御手段(50)は、集中モードと全席モードとが時間とともに切り替わるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0008】
これによると、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるので、集中モードによって省動力化効果を得つつ、全席モードによって車室内全体の空調性能を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、全席モードになっている時間割合を空調負荷が高いほど増加させることを特徴とする。
【0010】
これにより、空調負荷の高いときに省動力化よりも車室内全体の空調性能を優先して乗員の快適性を確保することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、全席モードになっている時間割合を窓曇りの可能性が高いほど増加させることを特徴とする。
【0012】
これにより、窓曇りの可能性が高いときに省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先して防曇性を確保することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、車室内空気をバッテリ(81)へ供給してバッテリ(81)を冷却するようになっている車両に適用される車両用空調装置であって、
制御手段(50)は、全席モードになっている時間割合をバッテリ(81)の温度が高いほど増加させることを特徴とする。
【0014】
これによると、バッテリ(81)の冷却のために車室内空気をバッテリ(81)に供給しても車室内全体の空調能力不足を防止できるので、乗員の快適性を確保することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
空調ユニット(30)は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
制御手段(50)は、窓曇りの可能性が高いときは全席モードになり、窓曇りの可能性が低いときは集中モードになるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0016】
これによると、窓曇りの可能性が高いときに省動力化よりも除湿性能を優先して車室内の湿気感を低減できるので、乗員の快適性を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、車室内空気をバッテリ(81)へ供給してバッテリ(81)を冷却するようになっている車両に適用される車両用空調装置であって、
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
空調ユニット(30)は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
制御手段(50)は、バッテリ(81)の温度が高いときは全席モードになり、バッテリ(81)の温度が低いときは集中モードになるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0018】
これによると、バッテリ(81)の冷却のために車室内空気をバッテリ(81)に供給しても車室内全体の空調能力不足を防止できるので、乗員の快適性を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明では、複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
車室内の目標温度を設定する目標温度設定手段(60a)と、
目標温度設定手段(60a)で設定された設定温度に基づいて空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
空調ユニット(30)は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
制御手段(50)は、設定温度が所定範囲よりも高い又は低いときは全席モードになり、設定温度が所定範囲内のときは集中モードになるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0020】
これにより、空調負荷の高いときに省動力化よりも車室内全体の空調性能を優先して乗員の快適性を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、車室内の空調に必要とされる動力を省動力化するエコモードを設定するエコモード設定手段(60b)を備え、
制御手段(50)は、
エコモードが設定されている場合には集中モードと全席モードとが切り替わるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御し、
エコモードが設定されていない場合には集中モードと全席モードとが切り替わることなく全席モードになるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0022】
これにより、エコモードが設定されていないときに省動力化よりも車室内全体の空調性能を優先して乗員の快適性を確保することができる。
【0023】
なお、請求項9に記載の発明のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、助手席および後席の乗員の有無を検出する在席検出手段(59)を備え、
制御手段(50)は、在席検出手段(59)の検出結果に基づいて、複数の座席について乗員が着座しているか否かを推定するようにしてもよい。
【0024】
また、請求項10に記載の発明のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、乗員が着座していると推定される座席は、運転席または前席であってもよい。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態のPTCヒータの回路図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置の室内空調ユニットを示す模式図である。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置が適用された車両の車室内を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置の全席モードを説明する図である。
【図7】第1実施形態の車両用空調装置の前席集中モードを説明する図である。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の運転席集中モードを説明する図である。
【図9】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図11】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図13】第3実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図14】第4実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図15】第5実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図16】第6実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図17】第7実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図18】第8実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図19】第9実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図20】第10実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図21】第11実施形態の車両用空調装置の室内空調ユニットを示す模式図である。
【図22】第12実施形態の車両用空調装置の室内空調ユニットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
【0028】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81(高圧バッテリ)に充電することのできるプラグインハイブリッド車両として構成されている。
【0029】
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。
【0030】
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。
【0031】
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。
【0032】
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。
【0033】
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
【0034】
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
【0035】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30(空調ユニット)、図2に示す空調制御装置50、シート空調装置90等を備えている。まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0036】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
【0037】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
【0038】
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0039】
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0040】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
【0041】
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能するものである。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
【0042】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
【0043】
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0044】
凝縮器12は、ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0045】
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
【0046】
また、ケーシング31内において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0047】
加熱用冷風通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と蒸発器15通過後の送風空気とを熱交換させて、蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0048】
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0049】
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
【0050】
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
【0051】
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
【0052】
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
【0053】
一方、冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0054】
そこで、本実施形態では、蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。
【0055】
従って、エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0056】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す複数の吹出口と、複数の吹出口の開口面積を調整する複数の吹出口ドアとが配置されている。
【0057】
図1では、図示の都合上、複数の吹出口のうち一部の吹出口24〜26、および複数の吹出口ドアのうち一部の吹出口ドア24a〜26aのみを示している。具体的には、吹出口として、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26を示し、吹出口ドアとして、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、およびデフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aを示している。
【0058】
複数の吹出口ドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0059】
図4は、室内空調ユニット30を吹出口側から見た模式図であり、図5は、車室内を示す斜視図である。フェイス吹出口24は、運転席乗員(運転手)の上半身に向けて空調風を吹き出す運転席側フェイス吹出口241と、助手席乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す助手席側フェイス吹出口242とで構成されており、フェイスドア24aは、運転席側フェイス吹出口241の開口面積を調整する運転席側フェイスドア(図示せず)と、助手席側フェイス吹出口242の開口面積を調整する助手席側フェイスドア242aとで構成されている。
【0060】
フット吹出口25は、運転席乗員(運転手)の足元に向けて空調風を吹き出す運転席側フット吹出口251と、助手席乗員の足元に向けて空調風を吹き出す助手席側フット吹出口252とで構成されており、フットドア25aは、運転席側フット吹出口251の開口面積を調整する運転席側フットドア(図示せず)と、助手席側フット吹出口252の開口面積を調整する助手席側フットドア252aとで構成されている。
【0061】
さらに、図4に示すように、ケーシング31には、吹出口24〜26以外にも、後席乗員に向けて空調風を吹き出す後席吹出口27と、運転席側の乗員の膝部に向けて空調風を吹き出す運転席側ニー吹出口28とが配置され、吹出口ドア24a〜26a以外にも、後席側吹出口26の開口面積を調整する後席側吹出口ドア27aと、運転席側ニー吹出口28の開口面積を調整する運転席側ニードア(図示せず)とが配置されている。
【0062】
後席吹出口27は、運転席側後席乗員に向けて空調風を吹き出す運転席側後席吹出口271と、助手席側後席乗員に向けて空調風を吹き出す助手席側後席吹出口272とで構成されている。本例では、運転席側ニー吹出口28は運転席側フット吹出口251から分岐している。
【0063】
吹出口ドア24a〜27a(吹出口モード切替手段)によって切り替えられる吹出口モードには、集中モードと全席モードとがある。集中モードは、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い吹出口モードである。全席モードは、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い吹出口モードである。さらに集中モードには、前席集中モードと運転席集中モードとがある。
【0064】
図6〜8は、本例における全席モード、前席集中モードおよび運転席集中モードを示す図である。本例では、全席モード(図6)では全席に向けて空調風を吹き出し、前席集中モード(図7)では前席(運転席および助手席)のみに向けて空調風を吹き出し、運転席集中モード(図8)では運転席のみに向けて空調風を吹き出す。
【0065】
全席モードとしては、図6(a)に示す全席フェイスモード(全席FACEモード)、図6(b)に示す全席バイレベルモード(全席B/Lモード)、および図6(c)に示す全席フットモード(全席FOOTモード)がある。
【0066】
全席フェイスモードは、運転席側フェイス吹出口241、助手席側フェイス吹出口242、後席吹出口271、272および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、242、271、272、28から全席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0067】
全席バイレベルモードは、運転席側フェイス吹出口241、助手席側フェイス吹出口242、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252、後席吹出口271、272および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、242、251、252、271、272、28から全席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0068】
全席フットモードは、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252、後席吹出口271、272および運転席側ニー吹出口28を全開するとともに、デフロスタ吹出口26、運転席側フェイス吹出口241および助手席側フェイス吹出口242を小開度だけ開口して、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252および後席吹出口271、272から主に空気を吹き出す。
【0069】
前席集中モードとしては、図7(a)に示す前席集中フェイスモード(前席集中FACEモード)、図7(b)に示す前席集中バイレベルモード(前席集中B/Lモード)、および図7(c)に示す前席集中フットモード(前席集中FOOTモード)がある。
【0070】
前席集中フェイスモードは、運転席側フェイス吹出口241、助手席側フェイス吹出口242および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、242、28から前席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0071】
前席集中バイレベルモードは、運転席側フェイス吹出口241、助手席側フェイス吹出口242、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、242、251、252、28から前席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0072】
前席集中フットモードは、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252および運転席側ニー吹出口28を全開するとともに、デフロスタ吹出口26、運転席側フェイス吹出口241および助手席側フェイス吹出口242を小開度だけ開口して、運転席側フット吹出口251および助手席側フット吹出口252から主に空気を吹き出す。
【0073】
運転席集中モードとしては、図8(a)に示す運転席集中フェイスモード(運転席集中FACEモード)、図8(b)に示す運転席集中バイレベルモード(運転席集中B/Lモード)、および図8(c)に示す運転席集中フットモード(運転席集中FOOTモード)がある。
【0074】
運転席集中フェイスモードは、運転席側フェイス吹出口241および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、28から運転席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0075】
運転席集中バイレベルモードは、運転席側フェイス吹出口241、運転席側フット吹出口251および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、251、28から運転席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0076】
運転席集中フットモードは、運転席側フット吹出口251および運転席側ニー吹出口28を全開するとともに、デフロスタ吹出口26および運転席側フェイス吹出口241を小開度だけ開口して、運転席側フット吹出口251から主に空気を吹き出す。
【0077】
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0078】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0079】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段としてのシート空調装置90を備えている。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
【0080】
そして、室内空調ユニット30の各吹出口24〜28から吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
【0081】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50および駆動力制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0082】
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
【0083】
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABioutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
【0084】
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、PTCヒータ37、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
【0085】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度Twセンサ58、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0086】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
【0087】
さらに、空調制御装置50の入力側には、助手席および後席の乗員の有無を検出する在席検出用センサ59(在席検出手段)が接続されている。在席検出用センサ59としては、例えば圧力センサや赤外線センサを用いることができる。空調制御装置50は、在席検出用センサ59の検出結果に基づいて、助手席および後席について乗員が着座しているか否かを推定する。
【0088】
なお、在席検出用センサ59の代わりに、室内カメラを用いて助手席および後席の乗員の有無を判定するようにしてもよい。また、助手席や後席に設けられた各種スイッチの操作有無により助手席および後席の乗員の有無を判定するようにしてもよい。
【0089】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ60a、エコノミースイッチ60b、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
【0090】
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチ60aは、乗員の操作によって車室内の目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。また、エコノミースイッチ60bは、乗員の操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
【0091】
エコノミースイッチ60bが投入されているときの車両用空調装置1の作動モードを以下、エコモードという。したがって、エコノミースイッチ60bをエコモード設定手段と表現することもできる。
【0092】
さらに、エコノミースイッチ60bを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。
【0093】
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させること、あるいは、エンジンEGの回転数を変化させることができる。
【0094】
なお、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
【0095】
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段を構成する。さらに、駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、要求信号出力手段50aを構成している。
【0096】
次に、図9〜11により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図9は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1の作動スイッチが投入された状態で、オートスイッチが投入されるとスタートする。なお、図9〜11中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0097】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
【0098】
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ60aによって設定される車室内の目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号、エコノミースイッチ60bの操作に応じて出力される省動力化要求信号等がある。
【0099】
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58等の検出信号を読み込む。また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
【0100】
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60aによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0101】
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、エアミックス前の温風温度TWDに基づいて算出する。
【0102】
具体的には、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[{TAO−(TE+2)}/{TWD−(TE+2)}]×100(%)…(F2)
エアミックス前の温風温度TWDとは、加熱用冷風通路33に配置されたヒータコア36、およびPTCヒータ37の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、次の数式F3により算出できる。
TWD=Tw×0.8+TE×0.2+ΔTptc…(F3)
ここで、Twは冷却水温度Twセンサ58によって検出された冷却水温度Tw、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量、すなわち吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ37の作動が寄与した温度上昇量である。本実施形態では、具体的に、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動時には、10℃、非作動時には、0℃としている。
【0103】
つまり、式F3では、エアミックス前の温風温度TWDを、ヒータコア36による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)とPTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcとの合計値として求めている。
【0104】
ヒータコア36による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)は、ヒータコア36の熱交換効率が100%とすれば、送風空気はヒータコア36にて冷却水温度Twまで上昇すると考えられる。これに対して、実際のヒータコア36では、熱交換効率が80%前後となってしまうことから0.8という係数を決定している。
【0105】
また、本発明者らの検討により、ヒータコア36へ流入する送風空気の温度によっても、ヒータコア36による吹出温上昇量が変化することが判っている。ヒータコア36へ流入する送風空気の温度は、蒸発器15にて冷却された冷風の温度であるから、吹出空気温度TEを採用することができる。そして、このヒータコア36へ流入する送風空気の温度の吹出温上昇量に対する寄与度として実験的に求められた0.2という係数を採用している。
【0106】
一方、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcは、PTCヒータ37の消費電力W(Kw)、空気密度ρ(kg/m3)、空気比熱Cp、PTCヒータ37を通過する風量であるPTC通過風量Va(m3/h)を用いて、数式F4により演算できる。
ΔTptc=W/ρ/Cp/Va×3600…(F4)
ここで、PTC通過風量Vaとしては、送風機32の送風空気量に対して、前回のステップS5で算出したエアミックス開度SWを考慮したものを用いている。
【0107】
なお、SW=0%は、エアミックスドア39の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100%は、エアミックスドア39の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0108】
次のステップS6では、送風機32の送風能力(送風量)を決定する。具体的には、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。
【0109】
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0110】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
【0111】
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0112】
次のステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。
【0113】
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0114】
ステップS8の詳細については、図10のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS8001で、エコモードが設定されているか否かを判定する。本例では、操作パネル60に設けられたエコノミースイッチ60bが投入されている場合、エコモードが設定されていると判定する。
【0115】
NO判定の場合、ステップS8002へ進み、空調モードを全席モードに決定した後、ステップS8005へ進む。
【0116】
YES判定の場合、ステップS8003へ進み、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度に応じて空調モード補正量αを演算する。本例では、ステップS8003中に示す制御マップに基づいて空調モード補正量αを演算する。具体的には、設定温度の低温域および高温域で空調モード補正量αを大きな値とする。
【0117】
次いでステップS8004にて、空調モード(全席モードまたは集中モード)を時間とともに切り替える。切替時間は、空調モード補正量αに応じて補正される。
【0118】
本例では、全席モードが開始されるとタイマがスタートし、タイマが2+α分になると全席モードから集中モードに切り替え、タイマが6分になると集中モードから全席モードに切り替える。タイマが6分になるとタイマを再スタートする。これにより、設定温度の低温域および高温域では全席モードの時間割合が大きくなって集中モードの時間割合が小さくなる。
【0119】
続くステップS8005では、TAOに応じて仮の吹出口モードf(TAO)を決定する。本例では、ステップS8005中に示す制御マップに基づいて仮の吹出口モードを決定する。TAOの低温域ではフェイスモード(FACE)、TAOの高温域ではフットモード(FOOT)、TAOの中間域ではバイレベルモード(B/L)を仮の吹出口モードf(TAO)とする。
【0120】
次いでステップS8006では、ステップS8005で決定した仮の吹出口モードf(TAO)がバイレベルモード(B/L)か否かを判定する。バイレベルモード(B/L)の場合、ステップS8007にて、冷却水温度Twが45℃を超えているか否かを判定する(水温>45℃)。
【0121】
45℃以下の場合、ステップS8008にて空調モードの判定を行い、空調モードが全席モードの場合、ステップS8009にて吹出口モードを全席フットモード(全席FOOT)に設定する。
【0122】
ステップS8008にて空調モードが集中モードの場合、ステップS8010にて後席不在判定を行う。本例では、在席検出用センサ59からの検出信号に基づいて後席乗員が不在であるか否かを判定する。NO判定(後席在席)の場合、ステップS8009にて吹出口モードを全席フットモード(全席FOOT)に設定する。
【0123】
YES判定判定(後席不在)の場合、ステップS8011にて助手席不在判定を行う。本例では、在席検出用センサ59からの検出信号に基づいて助手席乗員が不在であるか否かを判定する。YES判定(助手席不在)の場合、ステップS8012にて吹出口モードを運転席集中フットモード(運転席集中FOOT)に設定する。NO判定(助手席在席)の場合、ステップS8013にて吹出口モードを前席集中フットモード(前席集中FOOT)に設定する。
【0124】
ステップS8005で仮の吹出口モードf(TAO)をバイレベルモードとしたにもかかわらず、ステップS8012、S8013でフットモードに設定する理由は、冷却水温度Twが45℃以下ではバイレベルモードにしてもフット吹出口から冷風が出てしまうからである。
【0125】
すなわち、本実施形態の車両用空調装置1では、フェイス吹出口およびフット吹出口の双方から送風空気を吹き出すバイレベルモード時に、頭寒足熱型の快適な空調フィーリングを実現するために、フェイス吹出口から吹き出す送風空気よりもフット吹出口から吹き出す送風空気の温度を高くしている。
【0126】
しかしながら、冷却水温度Twが45℃以下であると、フェイス吹出口およびフット吹出口の双方から送風空気を吹き出すバイレベルモードではフット吹出口から吹き出す送風空気の温度を高くすることが困難である。このため、フットモードに設定してフェイス吹出口からの吹き出しを行わないようにすることによって、その分フット吹出口から吹き出す送風空気の温度を高くさせるのである。
【0127】
ステップS8007で冷却水温度Twが45℃を超えていると判定した場合、ステップS8014にて空調モードの判定を行う。
【0128】
ステップS8014にて全席モードの場合、ステップS8015にて吹出口モードを全席バイレベルモード(全席B/L)に設定する。ステップS8014にて集中モードの場合、ステップS8016にて後席不在判定を行う。
【0129】
後席在席の場合、ステップS8015にて吹出口モードを全席バイレベルモード(全席B/L)に設定する。後席不在の場合、ステップS8017にて助手席不在判定を行う。助手席不在の場合、ステップS8018にて吹出口モードを運転席集中バイレベルモード(運転席集中B/L)に設定する。助手席在席の場合、ステップS8019にて吹出口モードを前席集中バイレベルモード(前席集中B/L)に設定する。
【0130】
ステップS8006にて仮の吹出口モードf(TAO)がバイレベルモード(B/L)以外の場合、ステップS8020にて、仮の吹出口モードf(TAO)を判定する。
【0131】
仮の吹出口モードf(TAO)がフェイスモード(FACE)の場合、ステップS8021にて、空調モードの判定を行い、全席モードの場合、ステップS8022にて吹出口モードを全席フェイスモード(全席FACE)に設定する。ステップS8021にて集中モードの場合、ステップS8023にて後席不在判定を行う。
【0132】
後席在席の場合、ステップS8022にて吹出口モードを全席フェイスモード(全席FACE)に設定する。後席不在の場合、ステップS8024にて助手席不在判定を行う。助手席不在の場合、ステップS8025にて吹出口モードを運転席集中フェイスモード(運転席集中FACE)に設定する。助手席在席の場合、ステップS8026にて吹出口モードを前席集中フェイスモード(前席集中FACE)に設定する。
【0133】
ステップS8020にて仮の吹出口モードf(TAO)がフットモード(FOOT)の場合、ステップS8027にて、空調モードの判定を行い、全席モードの場合、ステップS8028にて吹出口モードを全席フットモード(全席FOOT)に設定する。ステップS8027にて集中モードの場合、ステップS8029にて後席不在判定を行う。
【0134】
後席在席の場合、ステップS8028にて吹出口モードを全席フットモード(全席FOOT)に設定する。後席不在の場合、ステップS8030にて助手席不在判定を行う。助手席不在の場合、ステップS8031にて吹出口モードを運転席集中フットモード(運転席集中FOOT)に設定する。助手席在席の場合、ステップS8032にて吹出口モードを前席集中フットモード(前席集中FOOT)に設定する。
【0135】
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数(rpm))を決定する。このステップS9では、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器15からの吹出空気温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
【0136】
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
【0137】
また、本実施形態の空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールでは、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器15の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。さらに、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δf_Cを加算した値を今回の圧縮機回転数fnとして更新する。なお、この圧縮機回転数fnの更新は、1秒毎の制御周期で実行される。
【0138】
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、エアミックス開度SW、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
【0139】
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
【0140】
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)あるいはエンジンEGの作動停止信号(エンジンOFF要求信号)、さらに、エンジンEGの作動時あるいは作動を要求した際のエンジンEGの回転数の回転数要求信号等がある。
【0141】
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア14に流通させることで十分な暖房性能を発揮することができる。
【0142】
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、EV運転モードで走行している際に、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することがあり得る。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、冷却水温度Twを暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇していないことがある。
【0143】
そこで、本実施形態では、高い暖房性能が必要にもかかわらず冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度Twよりも低いときは、冷却水温度Twを所定温度以上に維持するため、空調制御装置50から駆動力制御装置70に対して、エンジンEGを適切な回転数が作動させるように、作動要求信号および回転数の変更要求信号をしている。これにより、冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。
【0144】
また、前述の如く、バッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上となっている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であるものとしてEV運転モードとし、バッテリの蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量より少ない際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが不充分であるものとして、HV運転モードとする。
【0145】
次のステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。
【0146】
このステップS12の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
【0147】
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
【0148】
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32(ブロワ)が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止させることを決定する(電動ウォータポンプOFF要求)。
【0149】
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動させることを決定する(電動ウォータポンプON要求)。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
【0150】
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、ステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動状態、ステップS2で読み込んだ車室内の目標温度Tset、外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0151】
具体的には、目標吹出温度TAOが100℃より低くなっており、かつ、PTCヒータ37が作動しているとき、すなわち、第1〜第3PTCヒータ37a、15b、15cのうち1本以上が作動しているときであって、かつ、外気温Tamが予め定めた基準外気温以下になっており、さらに、目標温度Tsetが予め定めた基準シート空調作動温度より低い場合には、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。
【0152】
さらに、目標吹出温度TAOが100℃以上になっている場合は、PTCヒータ37の作動状態、外気温Tam、目標温度Tsetによらず、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。さらに、上記のシート空調装置90を作動(ON)させる条件が成立しても、操作パネル60のエコノミースイッチ60bが投入されている際には、シート空調装置90を非作動(OFF)としてもよい。
【0153】
ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cからエンジン制御装置70に対して、ステップS11にて決定されたエンジンEGの作動およびエンジンEGの要求回転数の要求信号が送信される。
【0154】
次のステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
【0155】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
【0156】
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
【0157】
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
【0158】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS8にて説明したように、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるので、集中モードによって省動力化効果を得つつ、全席モードによって車室内全体の空調性能を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0159】
しかも、本実施形態では、設定温度の低温域および高温域では全席モードの時間割合が大きくなって集中モードの時間割合が小さくなるので、空調負荷の高いときに省動力化(省燃費化)よりも車室内全体の空調性能を優先して乗員の快適性を確保することができる。
【0160】
さらに、本実施形態では、乗員がエコモードを選択しているときに集中モードになり、乗員がエコモードを選択していないときには集中モードにならず全席モードになるので、乗員が省動力化(省燃費化)よりも快適性を優先する意思を示している場合に快適性を確実に確保することができる。
【0161】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、助手席および後席の在席状態に応じて前席モード、前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるが、本第2実施形態では、図12に示すように、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替える。
【0162】
左右独コンスイッチは、操作パネル60に設けられたスイッチであり、運転席側と助手席側とで空調制御を独立して行うか否かを選択するためのものである。
【0163】
本実施形態(図12)では、具体的には上記第1実施形態(図10)のステップS8010、S8011、S8016、S8017、S8023、S8024、S8029、S8030を変更している。
【0164】
ステップS8008にて集中モードの場合、ステップS8111にて左右独コンスイッチが解除(OFF)されているか否かを判定する。YES判定(独コンスイッチOFF)の場合、ステップS8012にて吹出口モードを運転席集中フットモード(運転席集中FOOT)に設定する。NO判定(独コンスイッチON)の場合、ステップS8013にて吹出口モードを前席集中フットモード(前席集中FOOT)に設定する。
【0165】
同様に、ステップS8014にて集中モードの場合、ステップS8116にて左右独コンスイッチが解除(OFF)されているか否かを判定する。YES判定(独コンスイッチOFF)の場合、ステップS8018にて吹出口モードを運転席集中バイレベルモード(運転席集中B/L)に設定する。NO判定(独コンスイッチON)の場合、ステップS8019にて吹出口モードを前席集中バイレベルモード(前席集中B/L)に設定する。
【0166】
同様に、ステップS8021にて集中モードの場合、ステップS8123にて左右独コンスイッチが解除(OFF)されているか否かを判定する。YES判定(独コンスイッチOFF)の場合、ステップS8025にて吹出口モードを運転席集中フェイスモード(運転席集中FACE)に設定する。NO判定(独コンスイッチON)の場合、ステップS8026にて吹出口モードを前席集中フェイスモード(前席集中FACE)に設定する。
【0167】
同様に、ステップS8027にて集中モードの場合、ステップS8129にて左右独コンスイッチが解除(OFF)されているか否かを判定する。YES判定(独コンスイッチOFF)の場合、ステップS8031にて吹出口モードを運転席集中フットモード(運転席集中FOOT)に設定する。助手席在席の場合、ステップS8032にて吹出口モードを前席集中フットモード(前席集中FOOT)に設定する。
【0168】
本実施形態によると、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるので、在席検出用センサ59が不要である。
【0169】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度に応じて空調モード補正量αを演算するが、本第3実施形態では、図13に示すように、窓近傍相対湿度に応じて空調モード補正量αを演算する。
【0170】
具体的には、上記第2実施形態(図12)のステップS8003を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8103へ進み、湿度センサで検出された窓近傍相対湿度に応じて空調モード補正量αを演算する。本例では、ステップS8103中に示す制御マップに基づいて空調モード補正量αを演算する。具体的には、窓近傍相対湿度が80%以上になると空調モード補正量αを大きくする。そして、ステップS8004へ進み、全席モードと集中モードとの切替時間を空調モード補正量αに応じて補正する。
【0171】
本実施形態によると、窓曇りの可能性が高いと判断されるほど、全席モードになっている時間割合が大きくなるので、窓曇りの可能性が高いときに省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先して防曇性を確保することができる。
【0172】
また、省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先することで、車室内の湿気感を低減できるので、乗員の快適性を確保することができる。
【0173】
(第4実施形態)
上記第2実施形態では、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度に応じて空調モード補正量αを演算するが、本第3実施形態では、図14に示すように、バッテリ温度に応じて空調モード補正量αを演算する。
【0174】
図示を省略しているが、本実施形態では、バッテリ81に車室内空気(冷却風)を送風することによってバッテリ81を冷却することができるようになっている。具体的には、バッテリ81は、車両の後席後方側のトランクルームの床下部に搭載されており、バッテリ冷却用送風機もトランクルームの床下部に搭載されている。
【0175】
後席の後方側に配置されているリヤートレイには、車室内空気(内気)を吸い込むための内気吸込み口が形成されており、バッテリ冷却用送風機は内気吸込み口から車室内空気(内気)を吸い込んでバッテリ81に送風するようになっている。
【0176】
さらに、バッテリ81の温度をバッテリ温度センサによって検出し、バッテリ温度センサで検出したバッテリ81の温度に応じてバッテリ冷却用送風機の送風量が制御されるようになっている。具体的には、バッテリ81の温度が高いほどバッテリ81への内気送風量が増加するようにバッテリ冷却用送風機が制御されるようになっている。
【0177】
本実施形態(図14)では、上記第2実施形態(図12)のステップS8003を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8203へ進み、バッテリ温度センサで検出されたバッテリ81の温度に応じて空調モード補正量αを演算する。本例では、ステップS8203中に示す制御マップに基づいて空調モード補正量αを演算する。具体的には、バッテリ温度が40℃以上になると空調モード補正量αを大きくする。そして、ステップS8004へ進み、全席モードと集中モードとの切替時間を空調モード補正量αに応じて補正する。
【0178】
本実施形態によると、バッテリ81の温度が高いほど、全席モードになっている時間割合が大きくなるので、バッテリ81の冷却のために車室内空気をバッテリ81に供給しても車室内全体の空調能力不足を防止でき、ひいては乗員の快適性を確保することができる。
【0179】
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるが、本第5実施形態では、図15に示すように、窓近傍相対湿度(窓曇りの可能性)に応じて全席モードと集中モードとを切り替える。
【0180】
具体的には、上記第1実施形態(図10)のステップS8003、S8004を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8104へ進み、空調モード(全席モードまたは集中モード)を決定する。本例では、ステップS8104中に示す制御マップに基づいて空調モードを決定する。具体的には、窓近傍相対湿度が高い(窓曇りの可能性が高い)ときに全席モードにし、窓近傍相対湿度が低い(窓曇りの可能性が低い)ときに集中モードにする。
【0181】
集中モードでは、全席モードに比べて、車室内全体で見ると空調性能(除湿性能)が低下するので、窓曇りの可能性が高いときには窓ガラスの曇り防止(防曇性)が不十分になることがある。
【0182】
本実施形態によると、窓曇りの可能性が高いときに全席モードにし、窓曇りの可能性が低いときに集中モードにするので、窓曇りの可能性が高いときに省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先して防曇性を確保することができる。
【0183】
また、省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先することで、車室内の湿気感を低減できるので、乗員の快適性を確保することができる。
【0184】
(第6実施形態)
本第6実施形態は、図16に示すように、上記第5実施形態(図15)のステップS8010、S8011、S8016、S8017、S8023、S8024、S8029、S8030を、上記第2実施形態(図12)のステップS8110、S8116、S8123、S8129に変更したものである。
【0185】
本実施形態によると、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるので、在席検出用センサ59が不要である。
【0186】
(第7実施形態)
上記第1実施形態では、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるが、本第7実施形態では、図17に示すように、バッテリ81の温度に応じて全席モードと集中モードとを切り替える。
【0187】
具体的には、上記第1実施形態(図10)のステップS8003、S8004を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8204へ進み、空調モード(全席モードまたは集中モード)を決定する。本例では、ステップS8204中に示す制御マップに基づいて空調モードを決定する。具体的には、バッテリ81の温度が高いときに全席モードにし、バッテリ81の温度が低いときに集中モードにする。
【0188】
本実施形態によると、バッテリ81の温度が高いときに全席モードにするので、バッテリ81の冷却のために車室内空気をバッテリ81に供給しても車室内全体の空調能力不足を防止でき、ひいては乗員の快適性を確保することができる。
【0189】
(第8実施形態)
本第8実施形態は、図18に示すように、上記第7実施形態(図17)のステップS8010、S8011、S8016、S8017、S8023、S8024、S8029、S8030を、上記第2実施形態(図12)のステップS8110、S8116、S8123、S8129に変更したものである。
【0190】
本実施形態によると、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるので、在席検出用センサ59が不要である。
【0191】
(第9実施形態)
上記第9実施形態では、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるが、本第7実施形態では、図19に示すように、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度に応じて全席モードと集中モードとを切り替える。
【0192】
具体的には、上記第1実施形態(図10)のステップS8003、S8004を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8304へ進み、空調モード(全席モードまたは集中モード)を決定する。本例では、ステップS8304中に示す制御マップに基づいて空調モードを決定する。具体的には、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度が所定範囲よりも低い又は高いときに全席モードにし、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度が所定範囲内のときに集中モードにする。
【0193】
本実施形態によると、空調負荷が高いときに全席モードにするので、車室内全体の空調能力不足を防止でき、ひいては乗員の快適性を確保することができる。
【0194】
(第10実施形態)
本第10実施形態は、図20に示すように、上記第9実施形態(図19)のステップS8010、S8011、S8016、S8017、S8023、S8024、S8029、S8030を、上記第2実施形態(図12)のステップS8110、S8116、S8123、S8129に変更したものである。
【0195】
本実施形態によると、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるので、在席検出用センサ59が不要である。
【0196】
(第11実施形態)
上記各実施形態では、運転席集中モード時に助手席側フェイス吹出口242および助手席側フット吹出口252からの吹き出しを遮断するが、図21に示すように、運転席集中モード時に助手席側フェイス吹出口242および助手席側フット吹出口252のうち少なくとも1つの吹出口から空調風を吹き出すようにしてもよい。
【0197】
図21(a)の例では、運転席集中モード時に助手席側フェイス吹出口242から冷風を吹き出すようにする。図21(b)の例のように、運転席集中モード時に助手席側フット吹出口252から空調風を吹き出すようにしてもよい。図21(c)の例のように、運転席集中モード時に助手席側フェイス吹出口242および助手席側フット吹出口252の両方から空調風を吹き出すようにしてもよい。
【0198】
これにより、例えば夏季には、助手席側空間の空気温度をある程度低減することができるので、助手席側空間の熱の影響を緩和する効果が得られる。また、内気吸込み温度を低減する効果も得られる。
【0199】
(第12実施形態)
上記各実施形態では、運転席側ニー吹出口28が運転席側フット吹出口251から分岐しているが、図22に示すように運転席側ニー吹出口28が助手席側フェイス吹出口242、助手席側フット吹出口252および後席吹出口27のいずれかから分岐し、運転席側ニー吹出口28の分岐部に運転席側ニードア28aが配置されているようにしてもよい。
【0200】
図22(a)の例では、運転席側ニー吹出口28が助手席側フェイス吹出口242から分岐している。図22(b)の例のように、運転席側ニー吹出口28が助手席側フット吹出口252から分岐していてもよい。図22(c)の例のように、運転席側ニー吹出口28が後席吹出口27から分岐していてもよい。
【0201】
これによると、運転席側ニー吹出口28が運転席側の吹出口(運転席側フェイス吹出口241または運転席側フット吹出口251)から分岐している場合と比較して運転席側ニー吹出口37からの吹出風量を増加させることができるので、運転席の乗員の温熱感を早期に向上できる。
【0202】
また、運転席側ニードア28aにより運転席側ニー吹出口37からの吹出風量を調整することができるので、快適性を向上させることができる。
【0203】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。
【0204】
例えば、上述の実施形態では、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に本発明を適用しているが、走行用電動モータのみから車両走行用の駆動力を得る電気自動車や、内燃機関(エンジン)EGのみから車両走行用の駆動力を得るエンジン車にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0205】
24a フェイスドア(吹出口モード切替手段)
25a フットドア(吹出口モード切替手段)
26a デフロスタドア(吹出口モード切替手段)
27a 後席側吹出口ドア(吹出口モード切替手段)
30 室内空調ユニット(空調ユニット)
50 空調制御装置(制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の座席へ向けて空調風を吹き出す車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、省動力モードのときに、助手席の乗員が不在であると助手席への空調風の吹き出しを遮断して、運転席のみへ向けて空調風を吹き出す車両用空調装置が記載されている。
【0003】
この従来技術では、運転席の乗員のみをスポット的に空調することで、運転席の乗員の温感を効果的に向上させて省動力化(省燃費化)を図ることを狙っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−130913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術によると、省動力モードのときに運転席のみへ向けて空調風を吹き出すので、車室内全体で見ると空調性能が低下してしまう。このため、例えば夏季には車室内全体としては室温が上がってしまうので、運転席の乗員の快適性を必ずしも確保できないという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、省動力化と快適性との両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
空調ユニット(30)は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
制御手段(50)は、集中モードと全席モードとが時間とともに切り替わるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0008】
これによると、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるので、集中モードによって省動力化効果を得つつ、全席モードによって車室内全体の空調性能を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、全席モードになっている時間割合を空調負荷が高いほど増加させることを特徴とする。
【0010】
これにより、空調負荷の高いときに省動力化よりも車室内全体の空調性能を優先して乗員の快適性を確保することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、制御手段(50)は、全席モードになっている時間割合を窓曇りの可能性が高いほど増加させることを特徴とする。
【0012】
これにより、窓曇りの可能性が高いときに省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先して防曇性を確保することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、車室内空気をバッテリ(81)へ供給してバッテリ(81)を冷却するようになっている車両に適用される車両用空調装置であって、
制御手段(50)は、全席モードになっている時間割合をバッテリ(81)の温度が高いほど増加させることを特徴とする。
【0014】
これによると、バッテリ(81)の冷却のために車室内空気をバッテリ(81)に供給しても車室内全体の空調能力不足を防止できるので、乗員の快適性を確保することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
空調ユニット(30)は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
制御手段(50)は、窓曇りの可能性が高いときは全席モードになり、窓曇りの可能性が低いときは集中モードになるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0016】
これによると、窓曇りの可能性が高いときに省動力化よりも除湿性能を優先して車室内の湿気感を低減できるので、乗員の快適性を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、車室内空気をバッテリ(81)へ供給してバッテリ(81)を冷却するようになっている車両に適用される車両用空調装置であって、
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
空調ユニット(30)は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
制御手段(50)は、バッテリ(81)の温度が高いときは全席モードになり、バッテリ(81)の温度が低いときは集中モードになるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0018】
これによると、バッテリ(81)の冷却のために車室内空気をバッテリ(81)に供給しても車室内全体の空調能力不足を防止できるので、乗員の快適性を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明では、複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
車室内の目標温度を設定する目標温度設定手段(60a)と、
目標温度設定手段(60a)で設定された設定温度に基づいて空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
空調ユニット(30)は、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
制御手段(50)は、設定温度が所定範囲よりも高い又は低いときは全席モードになり、設定温度が所定範囲内のときは集中モードになるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0020】
これにより、空調負荷の高いときに省動力化よりも車室内全体の空調性能を優先して乗員の快適性を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、車室内の空調に必要とされる動力を省動力化するエコモードを設定するエコモード設定手段(60b)を備え、
制御手段(50)は、
エコモードが設定されている場合には集中モードと全席モードとが切り替わるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御し、
エコモードが設定されていない場合には集中モードと全席モードとが切り替わることなく全席モードになるように吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする。
【0022】
これにより、エコモードが設定されていないときに省動力化よりも車室内全体の空調性能を優先して乗員の快適性を確保することができる。
【0023】
なお、請求項9に記載の発明のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、助手席および後席の乗員の有無を検出する在席検出手段(59)を備え、
制御手段(50)は、在席検出手段(59)の検出結果に基づいて、複数の座席について乗員が着座しているか否かを推定するようにしてもよい。
【0024】
また、請求項10に記載の発明のように、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、乗員が着座していると推定される座席は、運転席または前席であってもよい。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態のPTCヒータの回路図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置の室内空調ユニットを示す模式図である。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置が適用された車両の車室内を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置の全席モードを説明する図である。
【図7】第1実施形態の車両用空調装置の前席集中モードを説明する図である。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の運転席集中モードを説明する図である。
【図9】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図11】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図13】第3実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図14】第4実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図15】第5実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図16】第6実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図17】第7実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図18】第8実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図19】第9実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図20】第10実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図21】第11実施形態の車両用空調装置の室内空調ユニットを示す模式図である。
【図22】第12実施形態の車両用空調装置の室内空調ユニットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
【0028】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81(高圧バッテリ)に充電することのできるプラグインハイブリッド車両として構成されている。
【0029】
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。
【0030】
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。
【0031】
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。
【0032】
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。
【0033】
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
【0034】
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
【0035】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30(空調ユニット)、図2に示す空調制御装置50、シート空調装置90等を備えている。まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0036】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
【0037】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
【0038】
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0039】
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0040】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
【0041】
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能するものである。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
【0042】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
【0043】
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0044】
凝縮器12は、ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0045】
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
【0046】
また、ケーシング31内において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0047】
加熱用冷風通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と蒸発器15通過後の送風空気とを熱交換させて、蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0048】
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0049】
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
【0050】
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
【0051】
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
【0052】
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
【0053】
一方、冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0054】
そこで、本実施形態では、蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。
【0055】
従って、エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0056】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す複数の吹出口と、複数の吹出口の開口面積を調整する複数の吹出口ドアとが配置されている。
【0057】
図1では、図示の都合上、複数の吹出口のうち一部の吹出口24〜26、および複数の吹出口ドアのうち一部の吹出口ドア24a〜26aのみを示している。具体的には、吹出口として、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26を示し、吹出口ドアとして、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、およびデフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aを示している。
【0058】
複数の吹出口ドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0059】
図4は、室内空調ユニット30を吹出口側から見た模式図であり、図5は、車室内を示す斜視図である。フェイス吹出口24は、運転席乗員(運転手)の上半身に向けて空調風を吹き出す運転席側フェイス吹出口241と、助手席乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す助手席側フェイス吹出口242とで構成されており、フェイスドア24aは、運転席側フェイス吹出口241の開口面積を調整する運転席側フェイスドア(図示せず)と、助手席側フェイス吹出口242の開口面積を調整する助手席側フェイスドア242aとで構成されている。
【0060】
フット吹出口25は、運転席乗員(運転手)の足元に向けて空調風を吹き出す運転席側フット吹出口251と、助手席乗員の足元に向けて空調風を吹き出す助手席側フット吹出口252とで構成されており、フットドア25aは、運転席側フット吹出口251の開口面積を調整する運転席側フットドア(図示せず)と、助手席側フット吹出口252の開口面積を調整する助手席側フットドア252aとで構成されている。
【0061】
さらに、図4に示すように、ケーシング31には、吹出口24〜26以外にも、後席乗員に向けて空調風を吹き出す後席吹出口27と、運転席側の乗員の膝部に向けて空調風を吹き出す運転席側ニー吹出口28とが配置され、吹出口ドア24a〜26a以外にも、後席側吹出口26の開口面積を調整する後席側吹出口ドア27aと、運転席側ニー吹出口28の開口面積を調整する運転席側ニードア(図示せず)とが配置されている。
【0062】
後席吹出口27は、運転席側後席乗員に向けて空調風を吹き出す運転席側後席吹出口271と、助手席側後席乗員に向けて空調風を吹き出す助手席側後席吹出口272とで構成されている。本例では、運転席側ニー吹出口28は運転席側フット吹出口251から分岐している。
【0063】
吹出口ドア24a〜27a(吹出口モード切替手段)によって切り替えられる吹出口モードには、集中モードと全席モードとがある。集中モードは、複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い吹出口モードである。全席モードは、集中モードに比べてその他の座席への空調風吹出割合が多い吹出口モードである。さらに集中モードには、前席集中モードと運転席集中モードとがある。
【0064】
図6〜8は、本例における全席モード、前席集中モードおよび運転席集中モードを示す図である。本例では、全席モード(図6)では全席に向けて空調風を吹き出し、前席集中モード(図7)では前席(運転席および助手席)のみに向けて空調風を吹き出し、運転席集中モード(図8)では運転席のみに向けて空調風を吹き出す。
【0065】
全席モードとしては、図6(a)に示す全席フェイスモード(全席FACEモード)、図6(b)に示す全席バイレベルモード(全席B/Lモード)、および図6(c)に示す全席フットモード(全席FOOTモード)がある。
【0066】
全席フェイスモードは、運転席側フェイス吹出口241、助手席側フェイス吹出口242、後席吹出口271、272および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、242、271、272、28から全席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0067】
全席バイレベルモードは、運転席側フェイス吹出口241、助手席側フェイス吹出口242、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252、後席吹出口271、272および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、242、251、252、271、272、28から全席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0068】
全席フットモードは、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252、後席吹出口271、272および運転席側ニー吹出口28を全開するとともに、デフロスタ吹出口26、運転席側フェイス吹出口241および助手席側フェイス吹出口242を小開度だけ開口して、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252および後席吹出口271、272から主に空気を吹き出す。
【0069】
前席集中モードとしては、図7(a)に示す前席集中フェイスモード(前席集中FACEモード)、図7(b)に示す前席集中バイレベルモード(前席集中B/Lモード)、および図7(c)に示す前席集中フットモード(前席集中FOOTモード)がある。
【0070】
前席集中フェイスモードは、運転席側フェイス吹出口241、助手席側フェイス吹出口242および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、242、28から前席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0071】
前席集中バイレベルモードは、運転席側フェイス吹出口241、助手席側フェイス吹出口242、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、242、251、252、28から前席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0072】
前席集中フットモードは、運転席側フット吹出口251、助手席側フット吹出口252および運転席側ニー吹出口28を全開するとともに、デフロスタ吹出口26、運転席側フェイス吹出口241および助手席側フェイス吹出口242を小開度だけ開口して、運転席側フット吹出口251および助手席側フット吹出口252から主に空気を吹き出す。
【0073】
運転席集中モードとしては、図8(a)に示す運転席集中フェイスモード(運転席集中FACEモード)、図8(b)に示す運転席集中バイレベルモード(運転席集中B/Lモード)、および図8(c)に示す運転席集中フットモード(運転席集中FOOTモード)がある。
【0074】
運転席集中フェイスモードは、運転席側フェイス吹出口241および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、28から運転席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0075】
運転席集中バイレベルモードは、運転席側フェイス吹出口241、運転席側フット吹出口251および運転席側ニー吹出口28を全開してこれら吹出口241、251、28から運転席の乗員に向けて空気を吹き出す。
【0076】
運転席集中フットモードは、運転席側フット吹出口251および運転席側ニー吹出口28を全開するとともに、デフロスタ吹出口26および運転席側フェイス吹出口241を小開度だけ開口して、運転席側フット吹出口251から主に空気を吹き出す。
【0077】
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0078】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0079】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段としてのシート空調装置90を備えている。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
【0080】
そして、室内空調ユニット30の各吹出口24〜28から吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には座席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
【0081】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50および駆動力制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0082】
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
【0083】
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABioutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
【0084】
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、PTCヒータ37、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
【0085】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度Twセンサ58、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0086】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
【0087】
さらに、空調制御装置50の入力側には、助手席および後席の乗員の有無を検出する在席検出用センサ59(在席検出手段)が接続されている。在席検出用センサ59としては、例えば圧力センサや赤外線センサを用いることができる。空調制御装置50は、在席検出用センサ59の検出結果に基づいて、助手席および後席について乗員が着座しているか否かを推定する。
【0088】
なお、在席検出用センサ59の代わりに、室内カメラを用いて助手席および後席の乗員の有無を判定するようにしてもよい。また、助手席や後席に設けられた各種スイッチの操作有無により助手席および後席の乗員の有無を判定するようにしてもよい。
【0089】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ60a、エコノミースイッチ60b、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
【0090】
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチ60aは、乗員の操作によって車室内の目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。また、エコノミースイッチ60bは、乗員の操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
【0091】
エコノミースイッチ60bが投入されているときの車両用空調装置1の作動モードを以下、エコモードという。したがって、エコノミースイッチ60bをエコモード設定手段と表現することもできる。
【0092】
さらに、エコノミースイッチ60bを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。
【0093】
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させること、あるいは、エンジンEGの回転数を変化させることができる。
【0094】
なお、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
【0095】
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段を構成する。さらに、駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、要求信号出力手段50aを構成している。
【0096】
次に、図9〜11により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図9は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1の作動スイッチが投入された状態で、オートスイッチが投入されるとスタートする。なお、図9〜11中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0097】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
【0098】
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ60aによって設定される車室内の目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号、エコノミースイッチ60bの操作に応じて出力される省動力化要求信号等がある。
【0099】
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58等の検出信号を読み込む。また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
【0100】
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ60aによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0101】
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、エアミックス前の温風温度TWDに基づいて算出する。
【0102】
具体的には、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[{TAO−(TE+2)}/{TWD−(TE+2)}]×100(%)…(F2)
エアミックス前の温風温度TWDとは、加熱用冷風通路33に配置されたヒータコア36、およびPTCヒータ37の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、次の数式F3により算出できる。
TWD=Tw×0.8+TE×0.2+ΔTptc…(F3)
ここで、Twは冷却水温度Twセンサ58によって検出された冷却水温度Tw、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量、すなわち吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ37の作動が寄与した温度上昇量である。本実施形態では、具体的に、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動時には、10℃、非作動時には、0℃としている。
【0103】
つまり、式F3では、エアミックス前の温風温度TWDを、ヒータコア36による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)とPTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcとの合計値として求めている。
【0104】
ヒータコア36による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)は、ヒータコア36の熱交換効率が100%とすれば、送風空気はヒータコア36にて冷却水温度Twまで上昇すると考えられる。これに対して、実際のヒータコア36では、熱交換効率が80%前後となってしまうことから0.8という係数を決定している。
【0105】
また、本発明者らの検討により、ヒータコア36へ流入する送風空気の温度によっても、ヒータコア36による吹出温上昇量が変化することが判っている。ヒータコア36へ流入する送風空気の温度は、蒸発器15にて冷却された冷風の温度であるから、吹出空気温度TEを採用することができる。そして、このヒータコア36へ流入する送風空気の温度の吹出温上昇量に対する寄与度として実験的に求められた0.2という係数を採用している。
【0106】
一方、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcは、PTCヒータ37の消費電力W(Kw)、空気密度ρ(kg/m3)、空気比熱Cp、PTCヒータ37を通過する風量であるPTC通過風量Va(m3/h)を用いて、数式F4により演算できる。
ΔTptc=W/ρ/Cp/Va×3600…(F4)
ここで、PTC通過風量Vaとしては、送風機32の送風空気量に対して、前回のステップS5で算出したエアミックス開度SWを考慮したものを用いている。
【0107】
なお、SW=0%は、エアミックスドア39の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100%は、エアミックスドア39の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0108】
次のステップS6では、送風機32の送風能力(送風量)を決定する。具体的には、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。
【0109】
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0110】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
【0111】
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0112】
次のステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。
【0113】
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0114】
ステップS8の詳細については、図10のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS8001で、エコモードが設定されているか否かを判定する。本例では、操作パネル60に設けられたエコノミースイッチ60bが投入されている場合、エコモードが設定されていると判定する。
【0115】
NO判定の場合、ステップS8002へ進み、空調モードを全席モードに決定した後、ステップS8005へ進む。
【0116】
YES判定の場合、ステップS8003へ進み、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度に応じて空調モード補正量αを演算する。本例では、ステップS8003中に示す制御マップに基づいて空調モード補正量αを演算する。具体的には、設定温度の低温域および高温域で空調モード補正量αを大きな値とする。
【0117】
次いでステップS8004にて、空調モード(全席モードまたは集中モード)を時間とともに切り替える。切替時間は、空調モード補正量αに応じて補正される。
【0118】
本例では、全席モードが開始されるとタイマがスタートし、タイマが2+α分になると全席モードから集中モードに切り替え、タイマが6分になると集中モードから全席モードに切り替える。タイマが6分になるとタイマを再スタートする。これにより、設定温度の低温域および高温域では全席モードの時間割合が大きくなって集中モードの時間割合が小さくなる。
【0119】
続くステップS8005では、TAOに応じて仮の吹出口モードf(TAO)を決定する。本例では、ステップS8005中に示す制御マップに基づいて仮の吹出口モードを決定する。TAOの低温域ではフェイスモード(FACE)、TAOの高温域ではフットモード(FOOT)、TAOの中間域ではバイレベルモード(B/L)を仮の吹出口モードf(TAO)とする。
【0120】
次いでステップS8006では、ステップS8005で決定した仮の吹出口モードf(TAO)がバイレベルモード(B/L)か否かを判定する。バイレベルモード(B/L)の場合、ステップS8007にて、冷却水温度Twが45℃を超えているか否かを判定する(水温>45℃)。
【0121】
45℃以下の場合、ステップS8008にて空調モードの判定を行い、空調モードが全席モードの場合、ステップS8009にて吹出口モードを全席フットモード(全席FOOT)に設定する。
【0122】
ステップS8008にて空調モードが集中モードの場合、ステップS8010にて後席不在判定を行う。本例では、在席検出用センサ59からの検出信号に基づいて後席乗員が不在であるか否かを判定する。NO判定(後席在席)の場合、ステップS8009にて吹出口モードを全席フットモード(全席FOOT)に設定する。
【0123】
YES判定判定(後席不在)の場合、ステップS8011にて助手席不在判定を行う。本例では、在席検出用センサ59からの検出信号に基づいて助手席乗員が不在であるか否かを判定する。YES判定(助手席不在)の場合、ステップS8012にて吹出口モードを運転席集中フットモード(運転席集中FOOT)に設定する。NO判定(助手席在席)の場合、ステップS8013にて吹出口モードを前席集中フットモード(前席集中FOOT)に設定する。
【0124】
ステップS8005で仮の吹出口モードf(TAO)をバイレベルモードとしたにもかかわらず、ステップS8012、S8013でフットモードに設定する理由は、冷却水温度Twが45℃以下ではバイレベルモードにしてもフット吹出口から冷風が出てしまうからである。
【0125】
すなわち、本実施形態の車両用空調装置1では、フェイス吹出口およびフット吹出口の双方から送風空気を吹き出すバイレベルモード時に、頭寒足熱型の快適な空調フィーリングを実現するために、フェイス吹出口から吹き出す送風空気よりもフット吹出口から吹き出す送風空気の温度を高くしている。
【0126】
しかしながら、冷却水温度Twが45℃以下であると、フェイス吹出口およびフット吹出口の双方から送風空気を吹き出すバイレベルモードではフット吹出口から吹き出す送風空気の温度を高くすることが困難である。このため、フットモードに設定してフェイス吹出口からの吹き出しを行わないようにすることによって、その分フット吹出口から吹き出す送風空気の温度を高くさせるのである。
【0127】
ステップS8007で冷却水温度Twが45℃を超えていると判定した場合、ステップS8014にて空調モードの判定を行う。
【0128】
ステップS8014にて全席モードの場合、ステップS8015にて吹出口モードを全席バイレベルモード(全席B/L)に設定する。ステップS8014にて集中モードの場合、ステップS8016にて後席不在判定を行う。
【0129】
後席在席の場合、ステップS8015にて吹出口モードを全席バイレベルモード(全席B/L)に設定する。後席不在の場合、ステップS8017にて助手席不在判定を行う。助手席不在の場合、ステップS8018にて吹出口モードを運転席集中バイレベルモード(運転席集中B/L)に設定する。助手席在席の場合、ステップS8019にて吹出口モードを前席集中バイレベルモード(前席集中B/L)に設定する。
【0130】
ステップS8006にて仮の吹出口モードf(TAO)がバイレベルモード(B/L)以外の場合、ステップS8020にて、仮の吹出口モードf(TAO)を判定する。
【0131】
仮の吹出口モードf(TAO)がフェイスモード(FACE)の場合、ステップS8021にて、空調モードの判定を行い、全席モードの場合、ステップS8022にて吹出口モードを全席フェイスモード(全席FACE)に設定する。ステップS8021にて集中モードの場合、ステップS8023にて後席不在判定を行う。
【0132】
後席在席の場合、ステップS8022にて吹出口モードを全席フェイスモード(全席FACE)に設定する。後席不在の場合、ステップS8024にて助手席不在判定を行う。助手席不在の場合、ステップS8025にて吹出口モードを運転席集中フェイスモード(運転席集中FACE)に設定する。助手席在席の場合、ステップS8026にて吹出口モードを前席集中フェイスモード(前席集中FACE)に設定する。
【0133】
ステップS8020にて仮の吹出口モードf(TAO)がフットモード(FOOT)の場合、ステップS8027にて、空調モードの判定を行い、全席モードの場合、ステップS8028にて吹出口モードを全席フットモード(全席FOOT)に設定する。ステップS8027にて集中モードの場合、ステップS8029にて後席不在判定を行う。
【0134】
後席在席の場合、ステップS8028にて吹出口モードを全席フットモード(全席FOOT)に設定する。後席不在の場合、ステップS8030にて助手席不在判定を行う。助手席不在の場合、ステップS8031にて吹出口モードを運転席集中フットモード(運転席集中FOOT)に設定する。助手席在席の場合、ステップS8032にて吹出口モードを前席集中フットモード(前席集中FOOT)に設定する。
【0135】
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数(rpm))を決定する。このステップS9では、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器15からの吹出空気温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
【0136】
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
【0137】
また、本実施形態の空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールでは、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器15の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。さらに、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δf_Cを加算した値を今回の圧縮機回転数fnとして更新する。なお、この圧縮機回転数fnの更新は、1秒毎の制御周期で実行される。
【0138】
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、エアミックス開度SW、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
【0139】
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
【0140】
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)あるいはエンジンEGの作動停止信号(エンジンOFF要求信号)、さらに、エンジンEGの作動時あるいは作動を要求した際のエンジンEGの回転数の回転数要求信号等がある。
【0141】
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア14に流通させることで十分な暖房性能を発揮することができる。
【0142】
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、EV運転モードで走行している際に、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することがあり得る。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、冷却水温度Twを暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇していないことがある。
【0143】
そこで、本実施形態では、高い暖房性能が必要にもかかわらず冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度Twよりも低いときは、冷却水温度Twを所定温度以上に維持するため、空調制御装置50から駆動力制御装置70に対して、エンジンEGを適切な回転数が作動させるように、作動要求信号および回転数の変更要求信号をしている。これにより、冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。
【0144】
また、前述の如く、バッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上となっている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であるものとしてEV運転モードとし、バッテリの蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量より少ない際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが不充分であるものとして、HV運転モードとする。
【0145】
次のステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。
【0146】
このステップS12の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
【0147】
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
【0148】
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32(ブロワ)が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止させることを決定する(電動ウォータポンプOFF要求)。
【0149】
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動させることを決定する(電動ウォータポンプON要求)。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
【0150】
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、ステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動状態、ステップS2で読み込んだ車室内の目標温度Tset、外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0151】
具体的には、目標吹出温度TAOが100℃より低くなっており、かつ、PTCヒータ37が作動しているとき、すなわち、第1〜第3PTCヒータ37a、15b、15cのうち1本以上が作動しているときであって、かつ、外気温Tamが予め定めた基準外気温以下になっており、さらに、目標温度Tsetが予め定めた基準シート空調作動温度より低い場合には、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。
【0152】
さらに、目標吹出温度TAOが100℃以上になっている場合は、PTCヒータ37の作動状態、外気温Tam、目標温度Tsetによらず、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。さらに、上記のシート空調装置90を作動(ON)させる条件が成立しても、操作パネル60のエコノミースイッチ60bが投入されている際には、シート空調装置90を非作動(OFF)としてもよい。
【0153】
ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cからエンジン制御装置70に対して、ステップS11にて決定されたエンジンEGの作動およびエンジンEGの要求回転数の要求信号が送信される。
【0154】
次のステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
【0155】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
【0156】
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
【0157】
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
【0158】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS8にて説明したように、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるので、集中モードによって省動力化効果を得つつ、全席モードによって車室内全体の空調性能を確保することができる。このため、省動力化と快適性との両立を図ることができる。
【0159】
しかも、本実施形態では、設定温度の低温域および高温域では全席モードの時間割合が大きくなって集中モードの時間割合が小さくなるので、空調負荷の高いときに省動力化(省燃費化)よりも車室内全体の空調性能を優先して乗員の快適性を確保することができる。
【0160】
さらに、本実施形態では、乗員がエコモードを選択しているときに集中モードになり、乗員がエコモードを選択していないときには集中モードにならず全席モードになるので、乗員が省動力化(省燃費化)よりも快適性を優先する意思を示している場合に快適性を確実に確保することができる。
【0161】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、助手席および後席の在席状態に応じて前席モード、前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるが、本第2実施形態では、図12に示すように、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替える。
【0162】
左右独コンスイッチは、操作パネル60に設けられたスイッチであり、運転席側と助手席側とで空調制御を独立して行うか否かを選択するためのものである。
【0163】
本実施形態(図12)では、具体的には上記第1実施形態(図10)のステップS8010、S8011、S8016、S8017、S8023、S8024、S8029、S8030を変更している。
【0164】
ステップS8008にて集中モードの場合、ステップS8111にて左右独コンスイッチが解除(OFF)されているか否かを判定する。YES判定(独コンスイッチOFF)の場合、ステップS8012にて吹出口モードを運転席集中フットモード(運転席集中FOOT)に設定する。NO判定(独コンスイッチON)の場合、ステップS8013にて吹出口モードを前席集中フットモード(前席集中FOOT)に設定する。
【0165】
同様に、ステップS8014にて集中モードの場合、ステップS8116にて左右独コンスイッチが解除(OFF)されているか否かを判定する。YES判定(独コンスイッチOFF)の場合、ステップS8018にて吹出口モードを運転席集中バイレベルモード(運転席集中B/L)に設定する。NO判定(独コンスイッチON)の場合、ステップS8019にて吹出口モードを前席集中バイレベルモード(前席集中B/L)に設定する。
【0166】
同様に、ステップS8021にて集中モードの場合、ステップS8123にて左右独コンスイッチが解除(OFF)されているか否かを判定する。YES判定(独コンスイッチOFF)の場合、ステップS8025にて吹出口モードを運転席集中フェイスモード(運転席集中FACE)に設定する。NO判定(独コンスイッチON)の場合、ステップS8026にて吹出口モードを前席集中フェイスモード(前席集中FACE)に設定する。
【0167】
同様に、ステップS8027にて集中モードの場合、ステップS8129にて左右独コンスイッチが解除(OFF)されているか否かを判定する。YES判定(独コンスイッチOFF)の場合、ステップS8031にて吹出口モードを運転席集中フットモード(運転席集中FOOT)に設定する。助手席在席の場合、ステップS8032にて吹出口モードを前席集中フットモード(前席集中FOOT)に設定する。
【0168】
本実施形態によると、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるので、在席検出用センサ59が不要である。
【0169】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度に応じて空調モード補正量αを演算するが、本第3実施形態では、図13に示すように、窓近傍相対湿度に応じて空調モード補正量αを演算する。
【0170】
具体的には、上記第2実施形態(図12)のステップS8003を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8103へ進み、湿度センサで検出された窓近傍相対湿度に応じて空調モード補正量αを演算する。本例では、ステップS8103中に示す制御マップに基づいて空調モード補正量αを演算する。具体的には、窓近傍相対湿度が80%以上になると空調モード補正量αを大きくする。そして、ステップS8004へ進み、全席モードと集中モードとの切替時間を空調モード補正量αに応じて補正する。
【0171】
本実施形態によると、窓曇りの可能性が高いと判断されるほど、全席モードになっている時間割合が大きくなるので、窓曇りの可能性が高いときに省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先して防曇性を確保することができる。
【0172】
また、省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先することで、車室内の湿気感を低減できるので、乗員の快適性を確保することができる。
【0173】
(第4実施形態)
上記第2実施形態では、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度に応じて空調モード補正量αを演算するが、本第3実施形態では、図14に示すように、バッテリ温度に応じて空調モード補正量αを演算する。
【0174】
図示を省略しているが、本実施形態では、バッテリ81に車室内空気(冷却風)を送風することによってバッテリ81を冷却することができるようになっている。具体的には、バッテリ81は、車両の後席後方側のトランクルームの床下部に搭載されており、バッテリ冷却用送風機もトランクルームの床下部に搭載されている。
【0175】
後席の後方側に配置されているリヤートレイには、車室内空気(内気)を吸い込むための内気吸込み口が形成されており、バッテリ冷却用送風機は内気吸込み口から車室内空気(内気)を吸い込んでバッテリ81に送風するようになっている。
【0176】
さらに、バッテリ81の温度をバッテリ温度センサによって検出し、バッテリ温度センサで検出したバッテリ81の温度に応じてバッテリ冷却用送風機の送風量が制御されるようになっている。具体的には、バッテリ81の温度が高いほどバッテリ81への内気送風量が増加するようにバッテリ冷却用送風機が制御されるようになっている。
【0177】
本実施形態(図14)では、上記第2実施形態(図12)のステップS8003を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8203へ進み、バッテリ温度センサで検出されたバッテリ81の温度に応じて空調モード補正量αを演算する。本例では、ステップS8203中に示す制御マップに基づいて空調モード補正量αを演算する。具体的には、バッテリ温度が40℃以上になると空調モード補正量αを大きくする。そして、ステップS8004へ進み、全席モードと集中モードとの切替時間を空調モード補正量αに応じて補正する。
【0178】
本実施形態によると、バッテリ81の温度が高いほど、全席モードになっている時間割合が大きくなるので、バッテリ81の冷却のために車室内空気をバッテリ81に供給しても車室内全体の空調能力不足を防止でき、ひいては乗員の快適性を確保することができる。
【0179】
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるが、本第5実施形態では、図15に示すように、窓近傍相対湿度(窓曇りの可能性)に応じて全席モードと集中モードとを切り替える。
【0180】
具体的には、上記第1実施形態(図10)のステップS8003、S8004を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8104へ進み、空調モード(全席モードまたは集中モード)を決定する。本例では、ステップS8104中に示す制御マップに基づいて空調モードを決定する。具体的には、窓近傍相対湿度が高い(窓曇りの可能性が高い)ときに全席モードにし、窓近傍相対湿度が低い(窓曇りの可能性が低い)ときに集中モードにする。
【0181】
集中モードでは、全席モードに比べて、車室内全体で見ると空調性能(除湿性能)が低下するので、窓曇りの可能性が高いときには窓ガラスの曇り防止(防曇性)が不十分になることがある。
【0182】
本実施形態によると、窓曇りの可能性が高いときに全席モードにし、窓曇りの可能性が低いときに集中モードにするので、窓曇りの可能性が高いときに省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先して防曇性を確保することができる。
【0183】
また、省動力化(省燃費化)よりも除湿性能を優先することで、車室内の湿気感を低減できるので、乗員の快適性を確保することができる。
【0184】
(第6実施形態)
本第6実施形態は、図16に示すように、上記第5実施形態(図15)のステップS8010、S8011、S8016、S8017、S8023、S8024、S8029、S8030を、上記第2実施形態(図12)のステップS8110、S8116、S8123、S8129に変更したものである。
【0185】
本実施形態によると、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるので、在席検出用センサ59が不要である。
【0186】
(第7実施形態)
上記第1実施形態では、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるが、本第7実施形態では、図17に示すように、バッテリ81の温度に応じて全席モードと集中モードとを切り替える。
【0187】
具体的には、上記第1実施形態(図10)のステップS8003、S8004を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8204へ進み、空調モード(全席モードまたは集中モード)を決定する。本例では、ステップS8204中に示す制御マップに基づいて空調モードを決定する。具体的には、バッテリ81の温度が高いときに全席モードにし、バッテリ81の温度が低いときに集中モードにする。
【0188】
本実施形態によると、バッテリ81の温度が高いときに全席モードにするので、バッテリ81の冷却のために車室内空気をバッテリ81に供給しても車室内全体の空調能力不足を防止でき、ひいては乗員の快適性を確保することができる。
【0189】
(第8実施形態)
本第8実施形態は、図18に示すように、上記第7実施形態(図17)のステップS8010、S8011、S8016、S8017、S8023、S8024、S8029、S8030を、上記第2実施形態(図12)のステップS8110、S8116、S8123、S8129に変更したものである。
【0190】
本実施形態によると、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるので、在席検出用センサ59が不要である。
【0191】
(第9実施形態)
上記第9実施形態では、全席モードと集中モードとを時間とともに切り替えるが、本第7実施形態では、図19に示すように、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度に応じて全席モードと集中モードとを切り替える。
【0192】
具体的には、上記第1実施形態(図10)のステップS8003、S8004を変更している。ステップS8001でエコモードが設定されている場合(YES判定の場合)、ステップS8304へ進み、空調モード(全席モードまたは集中モード)を決定する。本例では、ステップS8304中に示す制御マップに基づいて空調モードを決定する。具体的には、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度が所定範囲よりも低い又は高いときに全席モードにし、車室内温度設定スイッチ60aの設定温度が所定範囲内のときに集中モードにする。
【0193】
本実施形態によると、空調負荷が高いときに全席モードにするので、車室内全体の空調能力不足を防止でき、ひいては乗員の快適性を確保することができる。
【0194】
(第10実施形態)
本第10実施形態は、図20に示すように、上記第9実施形態(図19)のステップS8010、S8011、S8016、S8017、S8023、S8024、S8029、S8030を、上記第2実施形態(図12)のステップS8110、S8116、S8123、S8129に変更したものである。
【0195】
本実施形態によると、左右独コンスイッチの操作状態に応じて前席集中モード、運転席集中モードを切り替えるので、在席検出用センサ59が不要である。
【0196】
(第11実施形態)
上記各実施形態では、運転席集中モード時に助手席側フェイス吹出口242および助手席側フット吹出口252からの吹き出しを遮断するが、図21に示すように、運転席集中モード時に助手席側フェイス吹出口242および助手席側フット吹出口252のうち少なくとも1つの吹出口から空調風を吹き出すようにしてもよい。
【0197】
図21(a)の例では、運転席集中モード時に助手席側フェイス吹出口242から冷風を吹き出すようにする。図21(b)の例のように、運転席集中モード時に助手席側フット吹出口252から空調風を吹き出すようにしてもよい。図21(c)の例のように、運転席集中モード時に助手席側フェイス吹出口242および助手席側フット吹出口252の両方から空調風を吹き出すようにしてもよい。
【0198】
これにより、例えば夏季には、助手席側空間の空気温度をある程度低減することができるので、助手席側空間の熱の影響を緩和する効果が得られる。また、内気吸込み温度を低減する効果も得られる。
【0199】
(第12実施形態)
上記各実施形態では、運転席側ニー吹出口28が運転席側フット吹出口251から分岐しているが、図22に示すように運転席側ニー吹出口28が助手席側フェイス吹出口242、助手席側フット吹出口252および後席吹出口27のいずれかから分岐し、運転席側ニー吹出口28の分岐部に運転席側ニードア28aが配置されているようにしてもよい。
【0200】
図22(a)の例では、運転席側ニー吹出口28が助手席側フェイス吹出口242から分岐している。図22(b)の例のように、運転席側ニー吹出口28が助手席側フット吹出口252から分岐していてもよい。図22(c)の例のように、運転席側ニー吹出口28が後席吹出口27から分岐していてもよい。
【0201】
これによると、運転席側ニー吹出口28が運転席側の吹出口(運転席側フェイス吹出口241または運転席側フット吹出口251)から分岐している場合と比較して運転席側ニー吹出口37からの吹出風量を増加させることができるので、運転席の乗員の温熱感を早期に向上できる。
【0202】
また、運転席側ニードア28aにより運転席側ニー吹出口37からの吹出風量を調整することができるので、快適性を向上させることができる。
【0203】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。
【0204】
例えば、上述の実施形態では、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に本発明を適用しているが、走行用電動モータのみから車両走行用の駆動力を得る電気自動車や、内燃機関(エンジン)EGのみから車両走行用の駆動力を得るエンジン車にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0205】
24a フェイスドア(吹出口モード切替手段)
25a フットドア(吹出口モード切替手段)
26a デフロスタドア(吹出口モード切替手段)
27a 後席側吹出口ドア(吹出口モード切替手段)
30 室内空調ユニット(空調ユニット)
50 空調制御装置(制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
前記空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
前記空調ユニット(30)は、前記複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、前記集中モードに比べて前記その他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
前記制御手段(50)は、前記集中モードと前記全席モードとが時間とともに切り替わるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(50)は、前記全席モードになっている時間割合を空調負荷が高いほど増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御手段(50)は、前記全席モードになっている時間割合を窓曇りの可能性が高いほど増加させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
車室内空気をバッテリ(81)へ供給して前記バッテリ(81)を冷却するようになっている車両に適用される車両用空調装置であって、
前記制御手段(50)は、前記全席モードになっている時間割合を前記バッテリ(81)の温度が高いほど増加させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
前記空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
前記空調ユニット(30)は、前記複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、前記集中モードに比べて前記その他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
前記制御手段(50)は、窓曇りの可能性が高いときは前記全席モードになり、窓曇りの可能性が低いときは前記集中モードになるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
車室内空気をバッテリ(81)へ供給して前記バッテリ(81)を冷却するようになっている車両に適用される車両用空調装置であって、
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
前記空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
前記空調ユニット(30)は、前記複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、前記集中モードに比べて前記その他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
前記制御手段(50)は、前記バッテリ(81)の温度が高いときは前記全席モードになり、前記バッテリ(81)の温度が低いときは前記集中モードになるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
車室内の目標温度を設定する目標温度設定手段(60a)と、
前記目標温度設定手段(60a)で設定された設定温度に基づいて前記空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
前記空調ユニット(30)は、前記複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、前記集中モードに比べて前記その他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
前記制御手段(50)は、前記設定温度が所定範囲よりも高い又は低いときは前記全席モードになり、前記設定温度が所定範囲内のときは前記集中モードになるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
車室内の空調に必要とされる動力を省動力化するエコモードを設定するエコモード設定手段(60b)を備え、
前記制御手段(50)は、
前記エコモードが設定されている場合には前記集中モードと前記全席モードとが切り替わるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御し、
前記エコモードが設定されていない場合には前記集中モードと前記全席モードとが切り替わることなく前記全席モードになるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
助手席および後席の乗員の有無を検出する在席検出手段(59)を備え、
前記制御手段(50)は、前記在席検出手段(59)の検出結果に基づいて、前記複数の座席について乗員が着座しているか否かを推定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記乗員が着座していると推定される座席は、運転席または前席であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項1】
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
前記空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
前記空調ユニット(30)は、前記複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、前記集中モードに比べて前記その他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
前記制御手段(50)は、前記集中モードと前記全席モードとが時間とともに切り替わるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(50)は、前記全席モードになっている時間割合を空調負荷が高いほど増加させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御手段(50)は、前記全席モードになっている時間割合を窓曇りの可能性が高いほど増加させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
車室内空気をバッテリ(81)へ供給して前記バッテリ(81)を冷却するようになっている車両に適用される車両用空調装置であって、
前記制御手段(50)は、前記全席モードになっている時間割合を前記バッテリ(81)の温度が高いほど増加させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
前記空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
前記空調ユニット(30)は、前記複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、前記集中モードに比べて前記その他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
前記制御手段(50)は、窓曇りの可能性が高いときは前記全席モードになり、窓曇りの可能性が低いときは前記集中モードになるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
車室内空気をバッテリ(81)へ供給して前記バッテリ(81)を冷却するようになっている車両に適用される車両用空調装置であって、
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
前記空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
前記空調ユニット(30)は、前記複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、前記集中モードに比べて前記その他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
前記制御手段(50)は、前記バッテリ(81)の温度が高いときは前記全席モードになり、前記バッテリ(81)の温度が低いときは前記集中モードになるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
複数の座席へ空調風を吹き出す空調ユニット(30)と、
車室内の目標温度を設定する目標温度設定手段(60a)と、
前記目標温度設定手段(60a)で設定された設定温度に基づいて前記空調ユニット(30)を制御する制御手段(50)とを備え、
前記空調ユニット(30)は、前記複数の座席のうち乗員が着座していると推定される座席への空調風吹出割合が、その他の座席への空調風吹出割合よりも多い集中モードと、前記集中モードに比べて前記その他の座席への空調風吹出割合が多い全席モードとを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を有し、
前記制御手段(50)は、前記設定温度が所定範囲よりも高い又は低いときは前記全席モードになり、前記設定温度が所定範囲内のときは前記集中モードになるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
車室内の空調に必要とされる動力を省動力化するエコモードを設定するエコモード設定手段(60b)を備え、
前記制御手段(50)は、
前記エコモードが設定されている場合には前記集中モードと前記全席モードとが切り替わるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御し、
前記エコモードが設定されていない場合には前記集中モードと前記全席モードとが切り替わることなく前記全席モードになるように前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a、27a)を制御することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
助手席および後席の乗員の有無を検出する在席検出手段(59)を備え、
前記制御手段(50)は、前記在席検出手段(59)の検出結果に基づいて、前記複数の座席について乗員が着座しているか否かを推定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記乗員が着座していると推定される座席は、運転席または前席であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−86680(P2012−86680A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235227(P2010−235227)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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