説明

車両用経路案内装置

【課題】充放電を希望する車両のニーズに応えることができ、加えて、渋滞時にあっては、交通量の分散を図ることができる車両用経路案内装置を提供する。
【解決手段】車両用経路案内装置によって、EV、HV、PHVを含む電力の授受が可能な車両であって電力の授受を希望する車両を、車車間充電が可能な電力授受経路Eへ誘導することで、当該電力の授受が可能な車両の特性を考慮した経路案内を行い得るようにし、加えて、渋滞時にあっては、交通量を平準化するための案内経路である交通量平準化経路A1,A2とは別の案内経路として電力授受経路Eを設定することで、案内経路のバリエーションを増やす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用経路案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用経路案内装置として以下の特許文献1に記載の装置が知られている。この車両用経路案内装置は、複数の車両の目的地情報と燃費特性を取得し、複数の車両ごとの燃費特性に応じて、対応する車両に提供する案内経路を決定し、この決定した経路案内を複数の車両に行うことで、全体としての排出ガス総量を低減しつつ、渋滞を回避できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−128065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記装置は、今後普及すると見込まれるEV(Electric Vehicle;電気自動車)、HV(HybridVehicle;ハイブリッド車)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle;プラグインハイブリッド車)を含む、電力の授受が可能な車両の特性を考慮した経路案内を行える機能を有していない。
【0005】
また、上記装置にあっては、渋滞時の案内経路のバリエーションを増やすことが望まれているが、限界があり、交通量の分散が十分には図れない。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、EV、HV、PHVを含む電力の授受が可能な車両の特性を考慮した経路案内を行うことができ、加えて、渋滞時の案内経路のバリエーションを増やすことができ交通量の分散を図ることができる車両用経路案内装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車両用経路案内装置は、車両の経路を案内する車両用経路案内装置であって、電力の授受を希望する車両を、車車間充電が可能な電力授受経路へ誘導する手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような本発明によれば、車両用経路案内装置によって、EV、HV、PHVを含む電力の授受が可能な車両であって電力の授受を希望する車両が、車車間充電が可能な電力授受経路へ誘導されるため、当該電力の授受が可能な車両の特性を考慮した経路案内が行われ、充放電を希望する車両のニーズに応えられるようになる。加えて、渋滞時にあっては、交通量を平準化するための案内経路である交通量平準化経路とは別の案内経路として電力授受経路を設定することで、案内経路のバリエーションが増え、交通量の分散が図られる。
【0009】
ここで、電力授受経路で充電車両と放電車両が交互となるように、車両の経路、速度を制御する手段を備えていると、電力授受経路には、充電車両と放電車両が誘導されて交互に並び、その結果、最適に車車間充電を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、EV、HV、PHVを含む電力の授受が可能な車両の特性を考慮した経路案内を行うことができ、充放電を希望する車両のニーズに応えることができる。加えて、渋滞時にあっては、案内経路のバリエーションを増やすことができ、交通量の分散を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用経路案内装置及びこれが適用される経路案内システムを示すブロック図である。
【図2】図1中の車両用経路案内装置が実行する経路誘導処理を示すフローチャートである。
【図3】誘導経路である交通量平準化経路及び電力授受経路を渋滞区間と共に示す概略経路図である。
【図4】電力授受経路の充電希望経路及び放電希望経路を示すための概略経路図である。
【図5】電力授受経路で前後に並走する充電車両及び放電車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による車両用経路案内装置の好適な実施形態について図1〜図5を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両用経路案内装置100及びこれが適用される経路案内システム1を示すブロック図である。
【0013】
車両用経路案内装置(以下単に経路案内装置と呼ぶ)100は、EV、HV、PHVを含む電力の授受が可能な車両V1に搭載されたカーナビゲーション装置として構成され、GPS受信機等により車両V1の現在位置を検出し地図情報に基づく地図を画面に表示しながら、目的地に向けて設定された誘導経路に従い運転者を誘導する経路案内機能を有すると共に、誘導経路上に渋滞がある場合には、これを迂回する経路に運転者を誘導する経路案内機能を有し、さらに、渋滞がある場合に、交通管制センター200との連携による交通量平準化経路へ運転者を誘導する経路案内機能も有する。また、特に本実施形態の経路案内装置100は、電力の授受を希望する車両を、交通管制センター200との連携による電力授受経路へ誘導する経路案内機能を有する。以下、その構成を具体的に詳説する。
【0014】
経路案内装置100は、当該経路案内装置100の全体を統括的に制御するCPU等の制御部101、通信回線等に接続するための通信制御インターフェース部102、目的地入力装置11〜VICS受信部15に接続される入出力制御インターフェース部103、各種のデータベースやテーブルなどを格納する記憶部104、及び、ドライバ伝達部105を備えて構成され、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0015】
記憶部104は、地図データベース104aを備え、この地図データベース104aは、経路案内に必要な地図情報を記憶する地図情報記憶手段として機能する。
【0016】
ドライバ伝達部105は、表示を制御するための表示制御部105a、音声を制御するための音声制御部105b、A(アクセル)ペダルを制御するためのAペダル制御部105cを備える。
【0017】
通信制御インターフェース部102は、経路案内装置100とネットワーク300や通信装置との間の通信制御を行う。すなわち、通信制御インターフェース部102は、交通管制センター200や他の車両V2,V3等に対して、無線又は有線の通信回線を介して、直接又は間接にデータを通信(車車間通信、路車間通信等)する機能を有する。
【0018】
入出力制御インターフェース部103は、目的地入力装置11、充電・放電入力装置12、車速センサ13、充電量入力装置14、VICS受信部15の入出力制御を行う。
【0019】
目的地入力装置11〜VICS受信部15は、車両V1に設けられているものであって、目的地入力装置11は、目的地を入力するためのものであり、充電・放電入力装置12は、充電又は放電を希望する際の入力を行うものであり、車速センサ13は、自車の走行速度を検出するものであり、充電量入力装置14は、車両のバッテリ充電量に対応するバッテリ充電量信号を入力するものであり、VICS受信部15は、渋滞情報を主とした交通情報を受信するものである。
【0020】
制御部101は、OS(Operating System)等の制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラム、及び、所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。この制御部101は、取得部101a、渋滞予測部101b、ルート決定部101c、車速決定部101d、右左折タイミング決定部101eを備えて構成される。
【0021】
取得部101aは、上記目的地入力装置11、充電・放電入力装置12、車速センサ13、充電量入力装置14、VICS受信部15からの情報や、交通管制センター200、他の車両V2,V3からの情報を取得する。
【0022】
渋滞予測部101bは、取得部101aによって取得された目的地情報に基づいて、渋滞発生の可能性を予測する。
【0023】
ルート決定部101cは、取得部101aにより取得された目的地情報に基づいて、地図データベース104aに記憶された地図情報からルートを決定する。
【0024】
車速決定部101dは、取得部101aによって取得された情報に基づいて、車速を決定する。
【0025】
右左折タイミング決定部101eは、取得部101aによって取得された情報に基づいて右折又は左折のタイミングを決定する。
【0026】
そして、上述した構成の経路案内装置100と共に経路案内システム1を構成する交通管制センター200は、渋滞区間を避けるための誘導経路である交通量平準化経路や、電力の授受を行うための誘導経路である電力授受経路を、ネットワーク300を介して、車両に対して提供する。
【0027】
次に、上記経路案内システム1に適用された経路案内装置100の動作について図2を参照しながら説明する。図2は、経路案内装置100が実行する経路誘導処理を示すフローチャートである。
【0028】
図2に示すように、処理を開始すると、先ず、ステップ1(S1)において、VICS受信部15から渋滞情報を受信し、次いで、ステップ2において、充電量入力装置14からバッテリ充電量信号を入力し、次いで、ステップ3において、充電・放電入力装置12からの入力に基づき充電・放電を希望か否かを判定する。
【0029】
ステップ3において、充放電を希望しない場合には、ステップ8において、交通管制センター200から指示された交通量平準化経路A1又はA2に自車両を誘導する。
【0030】
図3は、誘導経路である交通量平準化経路A1,A2及び電力授受経路Eを渋滞区間C1,C2と共に示す概略経路図、図4は、電力授受経路Eの充電希望経路EA及び放電希望経路EBを示すための概略経路図、図5は、電力授受経路Eで前後に並走する充電車両V4(V6)及び放電車両V5(V7)を示す図である。
【0031】
図3に示すように、交通量平準化経路A1,A2は、目的地へ向かう途中にある渋滞区間C1,C2を迂回するように設定され、ステップ8を実行することにより、交通量の平準化を図ることができる。
【0032】
そして、ステップ8で自車両を交通量平準化経路A1又はA2に誘導したら、処理を終了し、一方、ステップ3において、充放電を希望する場合には、ステップ4において、交通管制センター200から指示された電力授受経路E(図4参照)に自車両を誘導し、ステップ5に進む。
【0033】
ステップ5では、充電を希望か否かを判定し、充電を希望の場合には、ステップ6において、交通管制センター200から指示された充電希望経路EA(図4参照)に自車両を誘導し、一方、ステップ5において、放電を希望の場合には、ステップ9において、交通管制センター200から指示された放電希望経路EB(図4参照)に自車両を誘導する。
【0034】
そして、ステップ6において、自車両を充電希望経路EAに誘導したら、ステップ7において、放電希望経路EBとの合流地点より先の電力授受経路Eの地点で放電希望車両の先行車となるように速度を指示し、処理を終了する。一方、ステップ9において、自車両を放電希望経路EBに誘導したら、ステップ10において、充電希望経路EAとの合流地点より先の電力授受経路Eの地点で充電希望車両の後続車となるように速度を指示し、処理を終了する。
【0035】
このようなステップ7,10の処理を行うことにより、図5に示すように、電力授受経路Eにおいて、充電車両V4(V6)、放電車両V5(V7)がこの順で前後に並走し、従って、充放電が容易に行われる。なお、ここでは、電力授受経路Eにおいて、充電車両V4(V6)が前、放電車両V5(V7)が後とされているが、この順に限定されるものではなく、充電車両V4(V6)と放電車両V5(V7)が交互となるように並走すれば良い。
【0036】
因みに、この実施形態では、制御部101及びドライバ伝達部105が、電力の授受を希望する(充電又は放電を希望する)車両を、車車間充電が可能な電力授受経路Eへ誘導する手段に相当し、制御部101が、電力授受経路Eで充電車両と放電車両が交互となるように、車両の経路、速度を制御する手段に相当する。
【0037】
このように、本実施形態においては、経路案内装置100によって、EV、HV、PHVを含む電力の授受が可能な車両であって電力の授受を希望する車両が、車車間充電が可能な電力授受経路Eへ誘導されるため、当該電力の授受が可能な車両の特性を考慮した経路案内が行われ、充放電を希望する車両のニーズに応えられるようになる。加えて、渋滞時にあっては、交通量を平準化するための案内経路である交通量平準化経路A1,A2とは別の案内経路として電力授受経路Eを設定することで、案内経路のバリエーションが増え、交通量の分散が図られる。
【0038】
また、電力授受経路Eで充電車両V4(V6)と放電車両V5(V7)が交互となるように、車両の経路、速度を制御する手段を備えているため、電力授受経路Eには、充電車両V4(V6)と放電車両V5(V7)が誘導されて交互に並び、その結果、最適に車車間充電を行うことができる。
【0039】
なお、本実施形態では、経路案内装置100を、車両に搭載するカーナビゲーション装置として構成しているが、車両とは別構成にルート提供を行うセンター(サーバー装置)として構成しても良い。
【0040】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、渋滞時に適用し、案内経路のバリエーションを増やすことで、交通量を分散できるとしているが、渋滞が無い時であっても、電力の授受を希望する車両を、車車間充電が可能な電力授受経路へ誘導する経路案内装置としても勿論良い。
【符号の説明】
【0041】
1…経路案内システム、100…経路案内装置、101…制御部、105…ドライバ伝達部、A1,A2…交通量平準化経路、E…電力授受経路、EA…充電希望経路、EB…放電希望経路、V1,V2,V3…車両、V4,V6…充電車両、V5,V7…放電車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の経路を案内する車両用経路案内装置において、
電力の授受を希望する車両を、車車間充電が可能な電力授受経路へ誘導する手段を備えたことを特徴とする車両用経路案内装置。
【請求項2】
前記電力授受経路で充電車両と放電車両が交互となるように、車両の経路、速度を制御する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両用経路案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−94995(P2011−94995A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246550(P2009−246550)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】