説明

車両用縦ビーム

車両用縦ビーム(1)を異形棒材(2)と閉鎖異形部材(3)により形成させる。異形棒材(2)と閉鎖異形部材(3)とはほぼL字状の横断面を備えた開口した異形部材として構成されている。異形棒材(2)の内面には、縦ビーム(1)の長手方向において部分的に切除した中空室(6)があり、車両衝突時に縦ビーム(1)が合目的に押しつぶされる(褶曲する)ようになっている。異形棒材(2)には、走行装置部品を受容するためのブシュ(8)が挿入される。これは、中空室(6)を部分的に弱化させるのと同様に縦ビーム(1)を閉鎖させる前に行なう。(図1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの異形棒材を有している車両用縦ビームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の縦ビームは周知であり、製造が簡単であることを特徴としている。しかしながら、長手延在方向に沿って横断面の延在態様を異ならせることはそれほど容易ではない。また、たとえば特許文献1から明らかであるように、ブシュの挿着は困難である。
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第19645962A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、異形棒材を使用して簡単に製造できる車両用高剛性縦ビームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は請求項1の構成により解決される。
【0006】
本発明の主要な思想は、開口した横断面と内面の中空室とを備えた異形棒材を使用し、開口した横断面を閉鎖異形部材により補完して閉じた横断面を形成させることである。あらゆる機械的応力に対する縦ビームの閉じた横断面の優れた剛性特性は、内側にある中空室によりさらに改善される。さらに、本発明による縦ビームでは、閉鎖異形部材を縦ビームの内側に取り付ける前に、閉じた異形棒材では不可能な変更または大きなコストを要しなければできないような変更を行なうことが可能である。このような変更とはたとえば補強手段の装着、材料の部分的な除去、固定要素の取り付けなどである。
【0007】
内面を中空室で補剛して薄板シェル構造で製造された縦ビームに比べると、本発明にしたがって中空室を異形棒材に一体的に設けることにより部品点数が低減し、よって必要な組付け工程数が低減する。
【0008】
独国特許出願公開第3918280A1号明細書から知られている自動車両の車体では、異形棒材により形成されるフレーム部材が設けられ、該フレーム部材は予め成形した薄板部材により覆われている。この公知の解決手段の場合、横断面が複雑に変化している視認面を自動車両の外面方向にて提供するために、閉じた異形棒材を薄板部材で覆う。本発明はこれとは異なり、内面に補剛用の中空室を有する開口した異形棒材を使用し、異形棒材と閉鎖異形部材とで担持用横断面を形成させる。
【0009】
本発明の他の好ましい構成では、中空室は部分的に切除される。これは種々の態様で行なうことができる。たとえば中空室の長手方向に対し垂直に或いは傾斜させて少なくとも1つのスリットを設ける態様、中空室に少なくとも1つの穴状の開口部を設ける態様、中空室の少なくとも1つの壁を部分的に切除する態様等が可能である。目的に応じて材料を切除することにより、特にフライス工具により切除することにより、自動車両衝突時の縦ビームの変形を、縦ビームが合目的に押しつぶされる(褶曲する)ことによって可能な限り最適なエネルギー減少が達成されるよう設定することができる。
【0010】
対応的に、縦ビームの内側の一部に補強材料を取付けてもよい。この種の局部的な補強手段によっても前記材料切除による補強手段の場合と同様に衝突力による縦ビームの変形特性を制御することができる。
【0011】
さらに、開口した異形棒材は固定要素(たとえば縦ビームの組み付け部材を受容するためのブシュ等)の取り付けを簡単にさせる。この種のブシュはアクセス性に優れ、開口した異形棒材のなかに溶接することができる。これにより、前記特許文献1に記載されているような、ブシュを縦ビームに遊隙なしに着座させるための面倒な処置を省くことができる。
【0012】
閉鎖異形部材は多様に製造、構成されていてよい。閉鎖異形部材は薄板成形部材であるのが有利であり、好ましくは幾何学的形態を広範囲に自在に構成できる深絞り薄板部材である。もちろん閉鎖異形部材として、場合によってはたとえば深絞り法により成形される異形棒材を使用してもよい。
【0013】
中空室を備えた異形棒材にも深絞りによりその長手方向において変化する横断面を備えさせてもよい。なお深絞りは通常、異形棒材の、中空異形部により補剛されてない領域に限られる。
【0014】
本発明の有利な実施態様では、異形棒材と閉鎖異形部材とはそれぞれL字状であり、その結果縦ビーム内部へのアクセス性に優れている。さらにこのL字状構成の場合、縦ビームの両半部分はフランジに沿って簡単に互いに結合させることができ、たとえばリベット結合により結合させることができる。リベット固定部は接着部により補強するのが好ましい。
【0015】
縦ビームの両半部分を補助的に穴溶接により結合させてもよい。このため、好ましくは閉鎖異形部材に設けた少なくとも1つの開口部を通じて該閉鎖異形部材をその下にあって閉鎖異形部材の内面まで達している異形棒材の中空室と溶接させる。
【0016】
本発明による縦ビームはその構成により、特に自動車両の前部縦ビームまたは後部縦ビームとして使用するのに適している。縦ビームの内部に簡単に溶接されるブシュを用いれば、走行装置部品を遊隙なしに固定させることができる。
【0017】
縦ビームの両半部分は好ましくは軽金属から成っており、たとえばアルミニウム合金から成っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面には本発明の1つの可能な実施形態が図示されており、以下にこれを詳細に説明する。
全体を1で示した車両用縦ビームは異形棒材2と閉鎖異形部材3とから組み立てられる。縦ビーム1の車両への取り付け状態を明確にするため、走行方向をFRで示した。異形棒材2と閉鎖異形部材3とはそれぞれ横断面がほぼL字状であり、互いに補完しあってほぼ矩形の閉じた横断面を持った縦ビーム1を形成する。両異形材2と3はフランジ4と5に沿ってリベット固定方法により互いに連結される。図ではリベットの位置を4aと5aで示唆した。
【0019】
異形棒材2はその内面に中空室6を有している。中空室6は異形棒材2の側壁14の一部分のみを覆っている。中空室6は、側壁14に対しほぼ垂直に延びている2つの脚部15と、これら脚部15を結合させている1つのウェブ16とを有している。中空室6は開口する異形棒材2の補剛の用を成し、よって縦ビーム1全体の補剛の用を成しているので合目的である。中空室6は異形棒材2の中央領域において縦方向に数センチメートルにわたり切除されている(フライス削り部7)。この場合フライス削り部7は、中空室6のウェブ16が完全に切除され、且つ残った低い高さの足部分15aを除いて両脚部15が切除されるようにフライス削りされている。縦ビーム1の走行方向とは逆の側の端部部分と縦ビーム1の最前端領域とにおいて中空室6は完全に切除されており、図では、脚部15が本来異形棒材2に沿って延びていることを示唆する破線でこれを示した。
【0020】
ほぼ水平方向に延びている異形棒材2の下面9に設けた貫通穴を介してブシュ8が挿着されている。ブシュ8はシャーシーおよびサスペンション等の走行装置の個々の部品を受容するために用いる。ブシュ8は中空室6に設けた貫通穴を貫通し、溶接継ぎ目10を介して異形棒材2の下面9および中空室6の両脚部15と遊隙なしに結合されている。
【0021】
閉鎖異形部材3は薄板部材として深絞り成形法により製造され、その側壁18に補剛溝11と12を有している。補剛溝11と12の領域には少なくとも1つの貫通穴が設けられており、該貫通穴を介して閉鎖異形部材3とその下にある、中空室6の前記ウェブ16との穴溶接を行なう。これにより、1つまたは複数の局部穴溶接部によって荷重による縦ビーム1の座屈が回避されるので、縦ビーム1の剛性がさらに向上し合目的である。
【0022】
両異形材2と3は走行方向とは逆の側の端部部分において釣鐘状に拡大しており、その端部が車体の支持構造部に組み付けられる。両異形材2と3には、組み付け部品を螺着させるために複数個の貫通穴が設けられている。
【0023】
異形材2と3はたとえばAC300HFのようなアルミニウム合金から成っている。ブシュ8はミグ溶接により縦ビームに取付けられる。場合によっては穴溶接もミグ方法で行なわれる。
【0024】
リベット固定方法により両異形材2と3をフランジ4と5に沿って結合させることにより、溶接方法とは異なり熱が供給されないので、衝突時に高荷重を受ける縦ビーム1の製造の際に後で熱処理を行なう必要がない。縦ビーム1を密封し且つその剛性をさらに向上させるため、フランジ4と5に沿って補助的に接着剤を挿入する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による縦ビームの両半部分の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの異形棒材を有している車両用縦ビームにおいて、
異形棒材(2)が開口した横断面を有し、且つ開口した横断面の内面に少なくとも1つの中空室(6)を備え、縦ビーム(1)を補完して閉じた横断面を形成させる閉鎖異形部材(3)が設けられていることを特徴とする車両用縦ビーム。
【請求項2】
中空室(6)が部分的に切除されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両用縦ビーム。
【請求項3】
中空室(6)がその長手延在方向の少なくとも一部分においてフライス削り法により切除されていることを特徴とする、請求項2に記載の車両用縦ビーム。
【請求項4】
異形棒材(2)に少なくとも1つのブシュ(8)が挿着されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載の車両用縦ビーム。
【請求項5】
ブシュ(8)が中空室(6)と結合されていることを特徴とする、請求項4に記載の車両用縦ビーム。
【請求項6】
閉鎖異形部材(3)が板成形部材であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載の車両用縦ビーム。
【請求項7】
異形棒材(2)が少なくとも中空室(6)外側の領域において深絞り法により成形されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の車両用縦ビーム。
【請求項8】
異形棒材(2)と閉鎖異形部材(3)とがそれぞれ実質的にL字状の横断面を有していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一つに記載の車両用縦ビーム。
【請求項9】
異形棒材(2)と閉鎖異形部材(3)とがそのエッジ側のフランジ(4,5)に沿ってリベットを介して互いに結合されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一つに記載の車両用縦ビーム。
【請求項10】
異形棒材(2)と閉鎖異形部材(3)とがそのフランジ(4,5)に沿って接着剤を介して互いに結合されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一つに記載の車両用縦ビーム。
【請求項11】
異形棒材(2)と閉鎖異形部材(3)とが少なくとも1つの穴溶接部を介して互いに結合されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一つに記載の車両用縦ビーム。
【請求項12】
縦ビーム(1)が自動車両の前部縦ビームまたは後部縦ビームとして形成され、車両アッセンブリおよび/または走行装置部品を受容するための少なくとも1つのブシュ(8)を備えていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一つに記載の車両用縦ビーム。

【図1】
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【公表番号】特表2006−515244(P2006−515244A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500544(P2006−500544)
【出願日】平成16年1月10日(2004.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000133
【国際公開番号】WO2004/062988
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】