説明

車両用荷重検出装置

【課題】シートに着座している乗員がアシストグリップを握っている場合やドアサイドモールに手を掛けている場合であっても、乗員の体重を正確に検出できること。
【解決手段】車両10のシート20に着座した乗員Mnの体重を検出する車両用荷重検出装置50において、シートに設けられて乗員の体重W1を検出する第1のセンサ51と、シートの上方で車室11の内壁面17、例えばアシストグリップ16に設けられて、内壁面に加わる乗員の荷重W2を検出する第2のセンサ52と、第1及び第2のセンサの各検出信号に基づいて乗員の体重を判定する体重判定部とを備えた。体重判定部は制御部53に有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに着座した乗員の体重を検出する車両用荷重検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用荷重検出装置は、シートに着座した乗員を拘束するときに、乗員の体重に基づいてエアバッグ装置等の拘束装置を適切に制御する場合に用いられる。そのためには、乗員の体重をできるだけ正確に検出することが求められる。このような車両用荷重検出装置としては、例えば下記の特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
この特許文献1で知られている車両用荷重検出装置は、体重センサと傾斜センサと足センサと制御部とを備えたというものである。体重センサは、シートクッションに設けられており、シートクッションに掛かる体重を検出する。傾斜センサは、シートバックの傾斜角度を検出する。足センサは、フロアに設けられており、フロアに掛かる乗員の足の重量を検出する。制御部は、体重センサによって検出された体重と、傾斜センサによって検出されたシートバックの傾斜角度と、足センサによって検出された足の重量とを関数として、乗員の計算体重を求める。
【0004】
ところで、シートの上方において、車室の内壁面にはアシストグリップ(グラブレール)やドアサイドモールが設けられている。例えば車両の急制動、急発進、急旋回など、走行状態に急激な変化が発生した場合に、シートに着座している乗員は、アシストグリップを強い力で引っ張ったりドアサイドモールに手を掛けることによって、自分の姿勢を保持しようとする。この結果、シートに掛かっていた乗員の体重は、車室の内壁面側へ多少分散される。いわゆる、荷重逃げ現象が発生する。車両の緊急状態においては、荷重逃げ現象が発生した場合であっても、乗員の体重を正確に検出できることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−186880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シートに着座している乗員がアシストグリップを握っている場合やドアサイドモールに手を掛けている場合であっても、乗員の体重を正確に検出できる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車両のシートに着座した乗員の体重を検出する車両用荷重検出装置において、前記シートに設けられて、前記乗員の体重を検出する第1のセンサと、前記シートの上方で車室の内壁面に設けられて、この内壁面に加わる前記乗員の荷重を検出する第2のセンサと、前記第1及び第2のセンサの各検出信号に基づいて前記乗員の体重を判定する体重判定部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、請求項1において、前記体重判定部は、前記第1のセンサによって検出された体重と、前記第2のセンサによって検出された荷重との、合算した値に基づいて前記乗員の体重を判定する構成であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、請求項1において、前記体重判定部は、前記第2のセンサによって検出された荷重が、予め設定されている一定の基準値を下回っていると判断した場合にだけ、前記第1のセンサによって検出された体重に基づいて、前記乗員の体重を判定するとともに、この判断結果を記憶する構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、シートに着座した乗員の体重を第1のセンサによって検出する他に、シートの上方で車室の内壁面に加わる乗員の荷重(つまり、乗員がシートの上方で車室の内壁面に手を掛けているか否か)を第2のセンサによって検出し、これらのセンサの各検出信号に基づいて、体重判定部が乗員の体重を判定するようにした。このため、着座している乗員が、例えばアシストグリップを握ったりドアサイドモールに手を掛けて、自分の姿勢を保持している場合であっても、乗員の体重をより適切に求めることができる。この結果、乗員の体重をより正確に検出することができる。例えば車両の急制動、急発進、急旋回など、走行状態に急激な変化が発生した場合に、シートに着座している乗員が、アシストグリップを強い力で引っ張ったりドアサイドモールに手を掛けることによって、自分の姿勢を保持したときであっても、乗員の体重を正確に検出できる。
【0011】
従って、車両に緊急状態が発生したときに、シートに掛かっていた乗員の体重が、車室の内壁面側へ多少分散された場合(いわゆる、荷重逃げ現象が発生した場合)であっても、例えばシートベルト装置やエアバッグ装置を適切に作動させることができる。つまり、シートベルト装置においては、体重判定部が判定した乗員の体重に基づき、ベルトの緩み部分を、適切な張力で迅速に巻き取ることによって、乗員を拘束することができる。また、エアバッグ装置においては、体重判定部が判定した乗員の体重に基づき、エアバッグを適切に膨張して、乗員の前に展開することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、体重判定部は、第1のセンサによって検出された体重と、第2のセンサによって検出された荷重との、合算した値に基づいて乗員の体重を判定する構成である。このため、シートに掛かっていた乗員の体重が、車室の内壁面側へ分散された場合であっても、合算した値に基づいて、乗員の体重をより正確に検出することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、体重判定部は、第2のセンサによって検出された荷重が、予め設定されている一定の基準値を下回っていると判断した場合にだけ、第1のセンサによって検出された体重に基づいて、乗員の体重を判定するとともに、この判断結果を記憶する。
【0014】
シートに着座している乗員が、例えばアシストグリップを引いたりドアサイドモールに手を掛けたりすると、その荷重は第2のセンサによって検出される。乗員が車室の内壁面に手を掛けていないとき、又は内壁面に手を掛けて弱い荷重を加えているときには、第2のセンサによって検出された荷重は、予め設定されている一定の基準値を下回る。体重判定部は、第2のセンサによって検出された荷重が基準値を下回ると判断した場合は、第1のセンサによって検出された体重に基づいて、乗員の体重を判定するとともに、この判断結果を記憶する。この記憶された判断結果は、シートに掛かっていた乗員の体重が車室の内壁面に、全く分散されない状態又はほとんど分散されない状態の結果なので、極めて正確である。
【0015】
その後、乗員が、例えばアシストグリップを強い力で引いたとき、又は内壁面に手を掛けて強い荷重を加えているときには、第2のセンサによって検出された荷重は、基準値に達する。この結果、シートに掛かっていた乗員の体重は、車室の内壁面側に一定以上分散される。いわゆる、荷重逃げ現象が発生する。体重判定部は、荷重が基準値に達したと判断して、乗員の体重を判定しない。このため、荷重が基準値を下回っているときに記憶された判断結果(旧の判断結果)を、現時点の判断結果として用いることができる。
【0016】
このように、シートに掛かっていた乗員の体重が、車室の内壁面側へ多少分散された場合であっても、乗員の体重をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施例1の車両用荷重検出装置を備えた車両の側面図である。
【図2】図1に示された制御部の制御フローチャート(メインルーチン)である。
【図3】図2に示された乗員拘束制御の処理を実行するためのサブルーチンの制御フローチャートである。
【図4】本発明に係る実施例2の制御フローチャート(メインルーチン)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は乗員から見た方向に従う。
【実施例1】
【0019】
実施例1に係る車両用荷重検出装置について、図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、車両10は、車室11の前部に、乗員Mnが着座するシート20(助手席20)、乗員Mnを拘束するシートベルト装置30及びエアバッグ装置40を備えている。
【0020】
シート20は、車体12のフロア13に設けられたシートフレーム21と、シートフレーム21に取り付けられたシートクッション22及びシートバック23とからなる。
【0021】
車両用シートベルト装置30は、シート20に着座した乗員Mnをベルト31(シートベルト、ウェビングとも言う。)によって拘束するものであり、リトラクタ37(ベルト巻取り器37)を備えている。シートベルト装置30によれば、乗員Mnの一方の肩部と腰部を同時に拘束するベルト31を、リトラクタ37によって巻き取ることができる。
【0022】
このシートベルト装置30は、例えば、ベルト31をアッパアンカ32とセンタアンカ33とロアアンカ(図示せず)の、3つのアンカによって支持する3点支持式の構成である。アッパアンカ32は、車体12の側部において、上部に設けられている。センタアンカ33は、シート20に対し、アッパアンカ32とは反対側の下部に設けられている。ロアアンカは、アッパアンカ32側の下部に設けられている。
【0023】
ベルト31は、乗員Mnの一方の肩部を拘束するショルダベルト31aと、乗員Mnの腰部を拘束するラップベルト31bとからなる。ショルダベルト31aとラップベルト31bとの間(ベルト31の折返し部)には、タング35がベルト長手方向へ移動可能に設けられている。このタング35は、センタアンカ33に固定されたバックル36に対して、取外し可能にワンタッチで装着される構成である。
【0024】
リトラクタ37は、ベルト31を巻回するベルトリール38と、このベルトリール38を回転駆動する電動モータ39(以下、単に「モータ39」と言う)とからなる。つまり、リトラクタ37は、車両10の運転状態に応じて(車両10の緊急時を含む)、モータ39によりベルトリール38を回転駆動することによって、ベルト31の緩み部分を迅速に巻き取る機構、いわゆる電動式プリテンショナを有している。
【0025】
エアバッグ装置40は、車室11の前部に有しているダッシュボード15の内部に装備されている。このエアバッグ装置40は、車両10に一定以上の衝撃力を受けたときに、インフレータ41からガスを発生し、このガスをエアバッグ42に供給することにより、エアバッグ42がダッシュボード15から車室11側へ膨張して、乗員Mnの前部に展開するものである。
【0026】
ところで、車両10は車両用荷重検出装置50を備えている。この車両用荷重検出装置50は、シート20に着座した乗員Mnの体重を検出する装置であり、第1のセンサ51と第2のセンサ52と制御部53とからなる。
【0027】
第1のセンサ51は、シート20に着座している乗員Mnの体重W1(乗員Mnからシートクッション22に掛かる下方向の荷重W1)を検出するための荷重センサからなり、シート20に1個又は複数個設けられている。荷重センサは、例えば歪みゲージによって構成される。より詳しくは、第1のセンサ51は、シートフレーム21又はシートクッション22に設けられる。このような第1のセンサ51は、シートクッション22に伝えられた乗員Mnの体重W1を、より適切に検出する位置に配置される。
【0028】
第2のセンサ52は、アシストグリップ16に設けられている。このアシストグリップ16は、乗員Mnが例えば乗り降りするときに、手Haで掴むことが可能な部材であって、側面視略コ字状(門形状)に形成されている。このようなアシストグリップ16は、シート20の上方で車室11の内壁面17に有している。
【0029】
詳しく述べると、第2のセンサ52は、アシストグリップ16を乗員Mnが把持したことを検出するものであって、例えばアシストグリップ16に掛かる下方向の荷重W2を検出する荷重センサからなる。この荷重センサは、例えば歪みゲージによって構成される。このような第2のセンサ52は、例えばアシストグリップ16の外表面に配置される、又はアシストグリップ16の内部に埋設される。
【0030】
このように、第2のセンサ52は、シート20の上方において、アシストグリップ16を介して車室11の内壁面17に設けられる。このため、第2のセンサ52は、アシストグリップ16を介して内壁面17に加わる、乗員Mnの荷重W2(アシストグリップ16に掛かる下方向の荷重W2)を検出することになる。なお、第2のセンサ52は、内壁面17に直接に設けられてもよい。
【0031】
制御部53は、車体12に設置された加速度センサ61の信号に基づいて、シートベルト装置30及びエアバッグ装置40を制御するとともに、第1及び第2のセンサ51,52の各検出信号に基づいて乗員Mnの体重を判定する機能を有している。その詳細については後述する。
【0032】
次に、制御部53(図1参照)をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図1を参照しつつ、図2〜図3に基づき説明する。図2は、制御部53によって実行される制御フローチャート(メインルーチン)を示している。制御部53は、例えば図示せぬイグニッションスイッチ(メインスイッチ)がオン作動したときに制御を開始する。
【0033】
制御部53は制御を開始すると、先ず、シート20に着座している乗員Mnの体重W1を、第1のセンサ51によって検出する(ステップST01)。
次に、アシストグリップ16に掛かる下方向の荷重W2を、第2のセンサ52によって検出する(ステップST02)。
次に、第1のセンサ51によって検出された体重W1と、第2のセンサ52によって検出された荷重W2との、合算した値W3を求める(ステップST03)。つまり、「W3=W1+W2」である。
【0034】
次に、合算した値W3に基づいて、乗員Mnの体重W4(実際の体重W4)を判定する(ステップST04)。この実際の体重W4は、例えば次の方法によって求められる。第1の方法は、予め設定されて制御部53に記憶されている換算マップを用いる方法である。第1の方法によれば、合算した値W3から実際の体重W4を換算して求めることができる。第2の方法は、合算した値W3と実際の体重W4とを、同一に設定する方法である(W4=W3)。
【0035】
次に、乗員Mnの実際の体重W4に基づいて、乗員拘束制御を実行する(ステップST05)。この処理については、後述するサブルーチン(図3参照)によって実行される。
次に、この制御フローによる制御を継続するか否かを判断する(ステップST06)。制御を継続すると判断した場合には、ステップST01に戻って、制御を繰り返す。一方、制御を終了すると判断した場合には、この制御フローによる制御を終了する。例えば、図示せぬイグニッションスイッチがオン状態のままであれば制御を継続すると判断し、イグニッションスイッチがオフ操作された場合には制御を終了と判断する。
【0036】
ここで、図2において、ステップST01〜ST04の集合は、体重判定部71を構成している。この体重判定部71は、第1及び第2のセンサ51,52の各検出信号に基づいて乗員Mnの体重W4を判定するものである。つまり、体重判定部71は、第1のセンサ51によって検出された体重W1と、第2のセンサ52によって検出された荷重W2との、合算した値W3に基づいて乗員Mnの体重W4を判定する構成である。
【0037】
図3は、図2に示されたステップST05、つまり、乗員拘束制御の処理を実行するための、サブルーチンを示している。図3に示すサブルーチンにおいては、先ず、上記図2のステップST04において判定された、乗員Mnの実際の体重W4に基づいて、乗員Mnの種類を判断する(ステップST11)。つまり、種類が大か、中か、又は小かを特定する。
【0038】
例えば、実際の体重W4が所定の第1基準値よりも大きい場合には、種類が大、つまり乗員Mnが大柄な乗員であると判断する。また、実際の体重W4が第1基準値以下で且つ所定の第2基準値よりも大きい場合には、種類が中、つまり乗員Mnが小柄な乗員であると判断する。また、実際の体重W4が第2基準値以下の場合には、種類が小、つまりシート20に載っているものが乳幼児、チャイルドシート、荷物等であると判断する。なお、種類が小の場合には、シート20が空席の場合を含む。
【0039】
ステップST11において、種類が大であると判断した場合には、第1制御パラメータを選択した上で(ステップST12)、ステップST14に進む。第1制御パラメータは、大柄な乗員を拘束するのに最適なようにシートベルト装置30及びエアバッグ装置40を制御するためのパラメータである。
【0040】
ステップST11において、種類が中であると判断した場合には、第2制御パラメータを選択した上で(ステップST13)、ステップST14に進む。第2制御パラメータは、小柄な乗員を拘束するのに最適なようにシートベルト装置30及びエアバッグ装置40を制御するためのパラメータである。
【0041】
ステップST11において、種類が小であると判断した場合には、乗員拘束制御を実行する必要がないので、このサブルーチンを終了して、図2に示されたステップST05に戻る。
【0042】
ステップST14においては、車両10に対する加速度αrを加速度センサ61(図1参照)によって検出する。次に、検出された加速度αrが、予め設定されている所定の基準加速度αsを越えたか否かを判断する(ステップST15)。
【0043】
ステップST15において、検出された加速度αrが基準加速度αs以下と判断した場合には、乗員拘束制御を実行する必要がないので、このサブルーチンを終了して、図2に示されたステップST05に戻る。一方、ステップST15において、検出された加速度αrが基準加速度αsを越えたと判断した場合には、ステップST16において、シートベルト装置30の拘束制御を実行するとともに、エアバッグ装置40の展開制御を実行して、エアバッグ42を乗員Mnの前部に展開する。その後、このサブルーチンを終了して、図2に示されたステップST05に戻る。
【0044】
実施例1の説明をまとめると、次の通りである。
実施例1では、シート20に着座した乗員Mnの体重W1を第1のセンサ51によって検出する(図2のステップST01)他に、アシストグリップ16を乗員Mnが把持していることを第2のセンサ52によって検出し(図2のステップST02)、これらのセンサ51,52の各検出信号に基づいて、体重判定部71が乗員Mnの体重W4を判定する(図2のステップST04)ようにした。
【0045】
つまり、体重W1を第1のセンサ51によって検出する他に、シート20の上方で車室11の内壁面17に加わる乗員Mnの荷重W2(つまり、乗員Mnがシート20の上方で内壁面17に手を掛けているか否か)を第2のセンサ52によって検出し、第1・第2のセンサ51,52の各検出信号に基づいて、体重判定部71が乗員Mnの体重W4を判定するようにした。
【0046】
このため、着座している乗員Mnがアシストグリップ16を握って、自分の姿勢を保持している場合であっても、乗員Mnの体重W4をより適切に求めることができる。この結果、乗員Mnの体重W4をより正確に検出することができる。例えば車両10の急制動、急発進、急旋回など、走行状態に急激な変化が発生した場合に、シート20に着座している乗員Mnが、アシストグリップ16を強い力で引っ張ることによって、自分の姿勢を保持したときであっても、乗員Mnの体重W4を正確に検出できる。
【0047】
従って、車両10に緊急状態が発生したときに、シート20に掛かっていた乗員Mnの体重W1が、アシストグリップ16側へ多少分散された場合(いわゆる、荷重逃げ現象が発生した場合)であっても、例えばシートベルト装置30やエアバッグ装置40を適切に作動させることができる。つまり、シートベルト装置30においては、体重判定部71が判定した乗員Mnの体重W4に基づき、ベルト31の緩み部分を、適切な張力で迅速に巻き取ることによって、乗員Mnを拘束することができる。また、エアバッグ装置40においては、体重判定部71が判定した乗員Mnの体重W4に基づき、エアバッグ42を適切に膨張して、乗員Mnの前に展開することができる。
【0048】
さらに、実施例1では、第2のセンサ52を、アシストグリップ16に掛かる下方向の荷重W2を検出する荷重センサによって構成したものである。また、体重判定部71は、第1のセンサ51によって検出された体重W1と、第2のセンサ52によって検出された荷重W2との、合算した値W3(図2のステップST03)に基づいて乗員Mnの体重W4を判定する(図2のステップST04)構成である。このため、シート20に掛かっていた乗員Mnの体重W1が、アシストグリップ16側へ分散された場合であっても、合算した値W3に基づいて、乗員Mnの体重W4をより正確に検出することができる。
【実施例2】
【0049】
実施例2に係る車両用荷重検出装置について、図4に基づいて説明する。図4は、上記図2に示された実施例1の制御フローチャート(メインルーチン)の変形例を示している。制御部53は、例えば図示せぬイグニッションスイッチ(メインスイッチ)がオン作動したときに制御を開始する。
【0050】
制御部53は制御を開始すると、先ず初期設定をする(ステップST101)。例えば「実際の体重W4」の値を、予め設定されている初期値Wnsとする。この初期値Wnsについては、例えば標準的な小柄な乗員の体重の値に設定される。
次に、シート20に着座している乗員Mnの体重W1を、第1のセンサ51によって検出する(ステップST102)。
次に、アシストグリップ16に掛かる下方向の荷重W2を、第2のセンサ52によって検出する(ステップST103)。
【0051】
次に、第2のセンサ52によって検出された荷重W2が、予め設定されている一定の基準値Wsを下回っているか否かを判断する(ステップST104)。ここで、「基準値Ws」については、乗員Mnがアシストグリップ16を把持することによって、シート20に掛かっていた乗員Mnの体重が、アシストグリップ16側へ分散される現象、いわゆる荷重逃げ現象が発生したか否かを判断する値に、設定されている。このステップST104において、荷重W2が基準値Wsを下回っていると判断した場合には、第1のセンサ51によって検出された乗員Mnの体重W1に基づいて、乗員Mnの体重W14(実際の体重W14)を判定する(ステップST105)。
【0052】
この判定された体重W14は、例えば次の方法によって求められる。第1の方法は、予め設定されて制御部53に記憶されている換算マップを用いる方法である。第1の方法によれば、検出された値W1から体重W14を換算して求めることができる。第2の方法は、検出された値W1と体重W14とを、同一に設定する方法である(W14=W1)。
【0053】
次に、判定された体重W14を、新たな「実際の体重W4」と置換するとともに、この実際の体重W4の値をメモリに記憶した後に(ステップST106)、ステップST108に進む。
【0054】
一方、上記ステップST104において、第2のセンサ52によって検出された荷重W2が基準値Wsに達したと判断した場合には、乗員Mnの体重W4を判定することなく、ステップST107に進む。ステップST107では、上記ステップST101又はステップST106において記憶されている実際の体重W4(旧体重W4)をそのまま維持して、ステップST108に進む。つまり、荷重W2が基準値Wsを下回っているときに記憶された、判断結果(旧の判断結果)を、現時点の判断結果とする。
【0055】
次に、乗員Mnの実際の体重W4に基づいて、乗員拘束制御を実行する(ステップST108)。この処理の内容については、上記図2に示すステップST05と同じである。
次に、この制御フローによる制御を継続するか否かを判断する(ステップST109)。制御を継続すると判断した場合には、ステップST102に戻って、制御を繰り返す。一方、制御を終了すると判断した場合には、この制御フローによる制御を終了する。例えば、図示せぬイグニッションスイッチがオン状態のままであれば制御を継続すると判断し、イグニッションスイッチがオフ操作された場合には制御を終了と判断する。
【0056】
ここで、図4において、ステップST101〜ST107の集合は、体重判定部81を構成している。この体重判定部81は、第1及び第2のセンサ51,52の各検出信号に基づいて乗員Mnの体重W4を判定するものである。つまり、体重判定部71は、第2のセンサ52によって検出された荷重W2が、予め設定されている一定の基準値Wsを下回っていると判断した場合にだけ、第1のセンサ51によって検出された体重W1に基づいて、乗員Mnの体重W4を判定するとともに、この判断結果を記憶する構成である。
【0057】
実施例2の説明をまとめると、次の通りである。
実施例2では、シート20に着座した乗員Mnの体重W1を第1のセンサ51によって検出する(図4のステップST102)他に、アシストグリップ16を乗員Mnが把持していることを第2のセンサ52によって検出し(図4のステップST103)、これらのセンサ51,52の各検出信号に基づいて、体重判定部71が乗員Mnの体重W4を判定する(図4のステップST105〜ST106)ようにした。
【0058】
つまり、体重W1を第1のセンサ51によって検出する他に、シート20の上方で車室11の内壁面17に加わる乗員Mnの荷重W2(つまり、乗員Mnがシート20の上方で内壁面17に手を掛けているか否か)を第2のセンサ52によって検出し、第1・第2のセンサ51,52の各検出信号に基づいて、体重判定部71が乗員Mnの体重W4を判定するようにした。
【0059】
このため、着座している乗員Mnがアシストグリップ16を握って、自分の姿勢を保持している場合であっても、乗員Mnの体重W4をより適切に求めることができる。この結果、乗員Mnの体重W4をより正確に検出することができる。例えば車両10の急制動、急発進、急旋回など、走行状態に急激な変化が発生した場合に、シート20に着座している乗員Mnが、アシストグリップ16を強い力で引っ張ることによって、自分の姿勢を保持したときであっても、乗員Mnの体重W4を正確に検出できる。
【0060】
従って、車両10に緊急状態が発生したときに、シート20に掛かっていた乗員Mnの体重W1が、アシストグリップ16側へ多少分散された場合(いわゆる、荷重逃げ現象が発生した場合)であっても、例えばシートベルト装置30やエアバッグ装置40を適切に作動させることができる。つまり、シートベルト装置30においては、体重判定部71が判定した乗員Mnの体重W4に基づき、ベルト31の緩み部分を、適切な張力で迅速に巻き取ることによって、乗員Mnを拘束することができる。また、エアバッグ装置40においては、体重判定部71が判定した乗員Mnの体重W4に基づき、エアバッグ42を適切に膨張して、乗員Mnの前に展開することができる。
【0061】
さらに、実施例2では、第2のセンサ52を、アシストグリップ16に掛かる下方向の荷重W2を検出する荷重センサによって構成したものである。また、図4に示すように、体重判定部81は、第2のセンサ52によって検出された荷重W2が、予め設定されている一定の基準値Wsを下回っていると判断した場合にだけ(ステップST104)、第1のセンサ51によって検出された体重W1に基づいて、乗員Mnの体重W4を判定するとともに(ステップST105)、この判断結果を記憶する(ステップST106)。
【0062】
シート20に着座している乗員Mnがアシストグリップ16を引くと、その引き荷重W2は第2のセンサ52によって検出される。乗員Mnがアシストグリップ16を把持していないとき、又は弱い力で引いているときには、第2のセンサ52によって検出された荷重W2は、基準値Wsを下回る。体重判定部81は、荷重W2が基準値Wsを下回ると判断し(ステップST104)、第1のセンサ51によって検出された体重W1に基づいて、乗員Mnの体重W4を判定するとともに(ステップST105)、この判断結果を記憶する(ステップST106)。この記憶された判断結果は、シート20に掛かっていた乗員Mnの体重W1がアシストグリップ16側に、全く分散されない状態又はほとんど分散されない状態の結果なので、極めて正確である。
【0063】
その後、乗員Mnがアシストグリップ16を強い力で引いたときには、第2のセンサ52によって検出された荷重W2は、基準値Wsに達する。この結果、シート20に掛かっていた乗員Mnの体重W1は、アシストグリップ16側に一定以上分散される。いわゆる、荷重逃げ現象が発生する。体重判定部81は、荷重W2が基準値Wsに達したと判断して(ステップST104)、乗員Mnの体重W4を判定しない。このため、荷重W2が基準値Wsを下回っているときに記憶された判断結果(旧の判断結果)を、現時点の判断結果として用いることができる(ステップST107)。
【0064】
このように、シート20に掛かっていた乗員Mnの体重W4が、アシストグリップ16側へ多少分散された場合であっても、乗員Mnの体重W4をより正確に検出することができる。
【0065】
なお、本発明では、第2のセンサ52は、アシストグリップ16に設けた構成に限定されるものではなく、シート20の上方において、車室11の内壁面17(ドアの内側面を含む)に設けた構成であればよい。
【0066】
例えば、ドアに第2のセンサ52を設ける場合には、この第2のセンサ52をドアサイドモールの上面に設けることが好ましい。この場合における第2のセンサ52は、下方向の荷重W2を検出する荷重センサによって、構成されることが好ましい。この場合には、シート20に着座している乗員Mnがドアサイドモールに手を掛けて、自分の姿勢を保持している場合であっても、乗員Mnの体重W4を、より適切に求めることができる。
【0067】
この他にも、ドアにおいて、シート20に着座している乗員Mnが、もたれ掛かり得る位置に、第2のセンサ52を設けてもよい。この場合における第2のセンサ52は、シート20からドア側へ分散される乗員Mnの荷重、例えば横方向(車幅方向)の荷重を検出する荷重センサによって、構成されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の車両用荷重検出装置50は、助手席20に着座している乗員Mnの体重を適切に検出するのに好適である。
【符号の説明】
【0069】
10…車両、11…車室、16…アシストグリップ、17…内壁面、20…シート、50…車両用荷重検出装置、51…第1のセンサ、52…第2のセンサ(荷重センサ)、53…制御部、71,81…体重判定部、Mn…乗員。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに着座した乗員の体重を検出する車両用荷重検出装置において、
前記シートに設けられて、前記乗員の体重を検出する第1のセンサと、
前記シートの上方で車室の内壁面に設けられて、この内壁面に加わる前記乗員の荷重を検出する第2のセンサと、
前記第1及び第2のセンサの各検出信号に基づいて前記乗員の体重を判定する体重判定部とを、備えたことを特徴とする車両用荷重検出装置。
【請求項2】
前記体重判定部は、前記第1のセンサによって検出された体重と、前記第2のセンサによって検出された荷重との、合算した値に基づいて前記乗員の体重を判定する構成であることを特徴とした請求項1記載の車両用荷重検出装置。
【請求項3】
前記体重判定部は、前記第2のセンサによって検出された荷重が、予め設定されている一定の基準値を下回っていると判断した場合にだけ、前記第1のセンサによって検出された体重に基づいて、前記乗員の体重を判定するとともに、この判断結果を記憶する構成であることを特徴とした請求項1記載の車両用荷重検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−271106(P2010−271106A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121687(P2009−121687)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】