説明

車両用警報装置

【課題】歩行者の存在の報知が不要な相手に報知することなく、適切な相手に歩行者の存在を報知することを目的とする。
【解決手段】カメラの撮影結果から対向車及び歩行者を検出し、対向車を検出した場合に対向車に対応する前照灯の分割領域を消灯する。また、自車両に向かって走行する対向車と歩行者を検出した場合には、対向車を検出して消灯した分割領域を点滅することによって、歩行者の存在を対向車に報知する。すなわち、歩行者の存在を自車両に向かって走行する対向車に選択的に報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用警報装置にかかり、特に、自車両近傍の歩行者等を検出して、他車両に対して歩行者の存在を報知する車両用警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両近傍の歩行者等の物体を検出して、他車両に歩行者の存在を報知する車両用警報装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、車速センサによって停止または徐行を検出し、周辺監視器(ミリ波レーダー、画像センサ)によって道路の渋滞を判定して、渋滞時に、周辺監視器(クリアランスソナー)によって自車両の前方または後方を横切る歩行者等の物体を検出して、警報器を作動させて他車両に警報することが提案されている。また、警報器としては、ホーン、ウィンカランプ、ヘッドライト等が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、車速センサと、自車位置検出手段と、地図情報記憶手段とから得られた情報により、自車両が道路上に停車しており、かつ外界検知手段により検出した歩行者等の移動体が、停車中の自車両の前後どちらかを移動して車道方向へ移動しつつあり、該車両の周囲に報知するべき移動体があると判断した場合に、警告手段により警告を発することが提案されている。また、警告手段としては、ハザードランプ等のランプにより警告を行うことが提案されている。
【特許文献1】特開2005−271756号公報
【特許文献2】特開2004−42678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、歩行者の存在を報知する相手が任意の相手であり、関係ない車両等に対して報知することが考えられるため、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、歩行者の存在の報知が不要な相手に報知することなく、適切な相手に歩行者の存在を報知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、配光領域を複数に分割したそれぞれの分割領域毎に配光を変更可能な車両用照明手段と、自車両に向かって走行する対向車を検出する対向車検出手段と、自車両近傍の歩行者を検出する歩行者検出手段と、前記対向車検出手段によって対向車が検出され、かつ前記歩行者検出手段によって歩行者が検出された場合に、前記対向車検出手段によって検出された対向車に対応する前記車両用照明手段の分割領域への配光が歩行者が存在することを表す予め定めた配光となるように、前記車両用照明手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、車両用照明手段は、配光領域を複数に分割したそれぞれの分割領域毎に配光が変更可能とされている。車両用照明手段は、例えば、車両用の前照灯を適用することができる。また、車両用照明手段は、例えば、LED光源などの光源を複数備えて各光源によって分割領域に分割可能としたものや、光源からの光をDMD(Digital Micromirror Device)や液晶素子等の光変調素子を用いて分割可能としたものや、シャッタ等を用いて分割可能としたものなどを適用することが可能である。
【0009】
対向車検出手段では自車両に向かって走行する対向車が検出され、歩行者検出手段では自車両近傍の歩行者が検出される。例えば、カメラ等の撮影画像を画像処理を行うことによって対向車や歩行者を検出することができる。また、ミリ波レーダー等の他のセンサ等を用いて対向車や歩行者を検出するようにしてもよい。
【0010】
そして、制御手段では、対向車検出手段によって対向車が検出され、歩行者検出手段によって歩行者が検出された場合に、対向車検出手段によって検出された対向車に対応する車両用照明手段の分割領域への配光が歩行者が存在することを表す予め定めた配光となるように、車両用照明手段が制御される。
【0011】
制御手段は、例えば、請求項3に記載の発明のように、対向車に対応する分割領域へ照射される光が点滅するように、車両用照明手段を制御することによって、歩行者が存在することを表す配光とするようにしてよい。
【0012】
すなわち、自車両に向かって走行する対向車に対応する分割領域のみが選択的に歩行者が存在することを表す配光とされるので、自車両に向かって走行する対向車は、制御された配光から歩行者の存在を理解することができる。また、自車両に向かって走行する対向車のみに歩行者の存在が選択的に報知されるので、歩行者に関係ない他の車両に余計な信号を伝達することない。従って、歩行者の存在の報知が不要な相手に報知することなく、適切な相手に歩行者の存在を報知することができる。
【0013】
なお、請求項2に記載の発明のように、車両用照明手段が自車両の前部に左右一対設けられ、歩行者検出手段が、歩行者の進行方向を更に検出する場合には、制御手段が、歩行者検出手段によって検出された進行方向を表すように、左右の車両用照明手段の光照射タイミングを制御するようにしてもよい。例えば、歩行者の進行方向に応じて、一方を点滅させた後に他方を点滅する等のように、光照射タイミングを制御することで、歩行者の進行方向も報知することが可能となる。
【0014】
また、制御手段は、請求項4に記載の発明のように、対向車検出手段によって対向車が検出された場合に、対向車に対応する分割領域へ照射される光が、非照射状態または減光されるように車両用照明手段の配光を更に制御するようにしてもよい。すなわち、対向車のみを検出する場合には、対向車に対応する分割領域へ照射される光が消灯または減光されるので、対向車へのグレア光を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、対向車及び歩行者を検出した場合に、自車両に向かって走行する対向車に対応する分割領域を歩行者が存在することを表す予め定めた配光となるように制御することにより、歩行者の存在の報知が不要な相手に報知することなく、適切な相手に歩行者の存在を報知することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態は、本発明を車両用照明装置に適用したものである。
【0017】
本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置10は、車両に設けられた前照灯12が、図1に示すように、前照灯ドライバ20を介して配光制御ECU14に接続されており、配光制御ECU14によって前照灯12の点灯や消灯が制御される。
【0018】
本実施の形態では、配光制御ECU14は、前照灯12の配光領域のうち前方の対向車等の他車両に対応する領域を消灯するように配光制御を行う。また、歩行者を検出した場合に、対向車を検出して消灯した領域を点滅するように配光制御を行う。
【0019】
配光制御ECU14のROM14Cには、前照灯12の配光制御を行うためのテーブルや後述する配光制御ルーチンを実行するためのプログラム等が記憶され、RAM14Bは、CPU14Aによって行われる各種演算等を行うメモリ等として使用される。
【0020】
I/O14Dには、スイッチ16、カメラ18、及び前照灯ドライバ20が接続されており、スイッチ16の操作状態や、カメラ18による車両前方の撮影結果が配光制御ECU14に入力される。
【0021】
スイッチ16は、前照灯12のオンオフを指示すると共に、ロービームとハイビームを指示し、指示結果を配光制御ECU14に出力する。また、カメラ18は、車両前方を撮影して撮影結果を配光制御ECU14に出力する。
【0022】
そして、配光制御ECU14は、スイッチ16の状態に応じて前照灯ドライバ20を制御して、前照灯12の点灯を行うと共に、対向車に対応する領域への前照灯からの光を非照射状態とするように、前照灯12の配光を制御する。また、配光制御ECU14は、カメラ18の撮影結果を画像処理することによって、自車両近傍の移動物体を検出することによって歩行者を検出し、歩行者を検出した場合に、非照射状態とした領域を点滅するように、前照灯12を制御し、歩行者の存在を対向車に報知する。
【0023】
前照灯12は、車両の前端部に2つ設けられており、図2に示すように、前照灯12の配光領域を車幅方向に複数に分割してそれぞれの分割領域22に対して光の照射や非照射が可能とされることによって、各分割領域毎に配光が変更可能とされ、配光制御ECU14によって各分割領域への光の照射や非照射が制御される。
【0024】
図3(A)、(B)は、本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置10に適用可能な前照灯の一例を示す図である。
【0025】
前照灯12は、例えば、図3(A)に示すように、複数のLED光源24を備えたものを適用可能で、前照灯ドライバ20が複数のLED光源24の点灯や消灯を制御することによって、図2に示す各分割領域22への光の照射や非照射を行うことが可能である。図3(A)では、複数のLED光源24を備えたLEDランプ26を2灯備えた前照灯の一例を示し、例えば、一方のLEDランプ26をロービーム用、他方のLEDランプ26をハイビーム用として使い分けるようにしてもよい。
【0026】
また、前照灯12は、図3(B)に示すように、1つの光源28からの光をDMD(Digital Micromirror Device)30によって反射して、レンズ31を介して車両前方を照射するものを適用するようにしてもよい。DMD30は、図3(C)に示すように複数のマイクロミラー32を備えており、各マイクロミラー32の回転が制御可能なデバイスである。すなわち、前照灯ドライバ20として光源28を点灯する光源ドライバ34と、DMD30の各マイクロミラー32の回転を駆動するDMDドライバ36と、を設け、光源ドライバ34によって光源28を点灯して、DMDドライバ36によってDMD30の各マイクロミラー32の回転を制御することによって、図2に示す各分割領域への光の照射や非照射を制御することが可能である。
【0027】
なお、本実施の形態では、複数のLED光源24を備えたものとして、以下の説明を行う。また、前照灯12の構成を上記に限るものではなく、例えば、単一の光源から車両前方を照らす光を遮断する複数のシャッタ等を設けて、各シャッタの大きさを分割領域に対応させて、図2に示す各分割領域の点灯や消灯を可能としてもよいし、DMD30の代りにDMD30以外の液晶素子等の光変調素子等を用いるようにしてもよい。
【0028】
図4(A)は、本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置10の前照灯12の分割領域を説明するための図である。
【0029】
本実施の形態の前照灯12の分割領域の分割パターンは、図4(A)に示すように、車幅方向の略中央部分の分割領域の分割幅が車幅方向端部よりも車幅方向に短く設定され、車幅方向外側に向かって徐々に車幅方向に長い分割領域となるように設定されている。なお、分割パターンは、これに限るものではない。
【0030】
また、前照灯12は、各分割領域に対応するLED光源24が予め設定されており、複数のLED光源24を選択的に点灯することによって、各分割領域毎の点灯や消灯を行う。
【0031】
例えば、本実施の形態では、図4(B)に示すように、分割領域No.1に対応するLED光源24は、LED光源No.1〜8を対応させ、分割領域No.2に対応するLED光源24は、LED光源No.9〜12を対応させ、分割領域No.3に対応するLED光源24は、LED光源No.13〜15を対応させ、分割領域No.4に対応するLED光源24は、LED光源No.16を対応させ、分割領域No.5に対応するLED光源24は、LED光源No.17を対応させ、分割領域No.6に対応するLED光源24は、LED光源No.18,19を対応させ、分割領域No.7に対応するLED光源24は、LED光源No.20〜22を対応させ、分割領域No.8に対応するLED光源24は、LED光源No.23〜27を対応させる。そして、各分割領域に対応させたLED光源24の点灯や消灯を制御することで、各分割領域毎の光の照射や非照射が可能となるので、図4(B)に示す対応を光源分割領域対応関係テーブル38としてROM14C等に記憶しておき、配光制御ECU14が当該光源分割領域対応関係テーブル38を用いて点灯制御することで、各領域毎に前照灯12の点灯や消灯が可能となる。
【0032】
なお、本実施の形態では、LED光源24の点灯数で分割領域を決定するが、これに限るものではなく、例えば、レンズや光源の大きさ、或いは特性等で分割領域の大きさを決定するようにしてもよい。
【0033】
(第1実施形態)
ここで、本発明の第1実施形態における配光制御ECU14で行われる配光制御について説明する。
【0034】
本実施形態では、カメラ18の撮影結果を画像処理等を行うことによって対向車を検出する。例えば、対向車の前照灯の光輝点等を検出することによって対向車を検出する。また、対向車の移動方向等を複数のサンプリング画像の差分画像等を算出することによって求め、自車両に向かって走行する対向車を検出する。なお、この時、赤色フィルタを介して撮影した撮影画像と、赤フィルタなしの撮影画像の差分画像等を用いることによって、前方車両の制動灯等を排除することによって対向車の前照灯からの光輝点のみを検出することが可能である。また、既知の他の技術を適用して対向車を検出するようにしてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、カメラ18の撮影画像を画像処理等を行うことによって、自車両近傍の移動物体等を検出することで歩行者を検出する。例えば、側方の歩行者は、自車が追い越す際にカメラ18で撮影することによって撮影画像から検出することができ、差分画像等によって歩行者の移動方向等も検出することができる。
【0036】
そして、配光制御ECU14が、検出した対向車に対応する前照灯12の分割領域22を特定し、特定した分割領域22に対応するLED光源24を消灯するように前照灯を制御すると共に、歩行者が検出された場合には、消灯した分割領域22に対応するLED光源24を点滅(例えば、所定回数点滅)する。これによって、対向車に歩行者の存在を報知することができる。
【0037】
図5は、本発明の第1実施形態に係わる車両用照明装置10の配光制御ECU14で行われる配光制御ルーチンを示すフローチャートである。なお、図5に示す配光制御ルーチンは、乗員のスイッチ16の操作によって、前照灯12の点灯が指示された場合等に開始する。また、スイッチ16に自動点灯モードを備える場合には、乗員によって自動点灯が指示されて、前照灯12を点灯する所定の条件が満たされた場合に開始するようにしてもよい。
【0038】
乗員のスイッチ16の操作によって前照灯12の点灯が指示されると、ステップ100では、前照灯12が点灯される。すなわち、CPU14AがI/O14Dを介して前照灯ドライバ20を制御することによって、2つの前照灯12の各LED光源24が駆動されることによって前照灯12を点灯させる。
【0039】
ステップ102では、カメラ18によって車両前方を撮影した撮影結果がI/O14Dを介しては配光制御ECU14に取得されてステップ104へ移行する。
【0040】
ステップ104では、カメラ18の撮影画像に基づいて側方の歩行者及び対向車がCPU14Aによって検出されてステップ106へ移行する。例えば、上述したように、複数のサンプリング画像の差分画像等を算出することによって、自車両に向かって走行する対向車を検出すると共に、自車両近傍の移動物体を歩行者として検出することができる。
【0041】
ステップ106では、対向車を検出したか否かCPU14Aによって判定され、該判定が肯定された場合にはステップ108へ移行し、否定された場合にはステップ116へ移行する。
【0042】
ステップ108では、対向車に対応する前照灯12の分割領域22がCPU14Aによって特定されてステップ110へ移行する。
【0043】
ステップ110では、特定した分割領域22が消灯され他の分割領域が点灯されてステップ112へ移行する。すなわち、配光制御ECU14が前照灯ドライバ20を制御することによって、対向車に対応する分割領域22へ光を照射するLED光源24が消灯されるので、ハイビームで走行しても対向車へのグレア光を抑制することができる。
【0044】
ステップ112では、歩行者が検出されているか否かがCPU14Aによって判定され、該判定が肯定された場合にはステップ114へ移行し、否定された場合にはステップ116へ移行する。
【0045】
ステップ114では、消灯した分割領域22が所定回数点滅されてステップ118へ移行する。すなわち、歩行者を検出した場合に、配光制御ECU14が前照灯ドライバ20を制御することによって、対向車に対応して消灯した分割領域22へ光を照射するLED光源24を所定回数点滅される。これによって対向車は、自車両の前照灯12が点滅して見えるので、点滅する前照灯12の近傍に歩行者がいると直感的に理解できる。なお、点滅後は、対向車へのグレア光を抑制するために、対向車に対応する分割領域22は消灯する。
【0046】
一方、ステップ116では、配光がリセット、すなわち、配光制御が行われて分割領域22が消灯されている場合があるので、配光をリセットすることにより、全ての分割領域22を点灯してステップ118へ移行する。
【0047】
そして、ステップ118では、スイッチ16がオフされたか否かがCPU14Aによって判定され、該判定が否定された場合にはステップ102に戻って上述の処理が繰り返され、ステップ118の判定が肯定されたところでステップ120へ移行して、前照灯12を消灯して一連の処理を終了する。
【0048】
すなわち、本実施形態では、自車両に向かって走行する対向車を検出して対向車に対応する前照灯12の分割領域22を消灯するので、ハイビームで走行しても対向車へのグレア光を抑制することができる。
【0049】
また、図6に示すように、走行中に自車両近傍に歩行者の存在を検出した場合には、対向車に対して歩行者の存在を報知するために、前照灯12の消灯した分割領域22を点滅するように制御するので、これによって対向車に歩行者の存在を報知することができる。また、本実施の形態では、自車両に向かって走行する対向車を検出して、当該対向車のみに対して選択的に分割領域22を点滅して歩行者の存在を報知するので、歩行者に関係ない他の車両(例えば、図6では、測道の車)に余計な信号を伝達することない。従って、歩行者の存在の報知が不要な相手に報知することなく、適切な相手に歩行者の存在を報知することができる。
【0050】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に係わる車両用照明装置について説明する。なお、車両用照明装置の構成自体は、第1実施形態と基本的に同様であるため、差異のみ説明し詳細な説明を省略する。
【0051】
第1実施形態では、自車両に向かって走行する対向車を検出して、対向車に対応する前照灯12の分割領域を消灯すると共に、自車両近傍に歩行者を検出した場合には、消灯した前照灯12の分割領域を点滅するように制御することによって、歩行者の存在を対向車に報知するようにしたが、第2実施形態では、更に、歩行者の移動方向についても報知するようにしたものである。
【0052】
本実施形態では、カメラ18の撮影画像から歩行者を検出する際に、歩行者の移動方向についても検出する。例えば、複数のサンプリング画像の差分画像等から移動物体を検出すると共に、移動方向を検出することによって、自車両近傍の歩行者、及び当該歩行者の移動方向を検出する。なお、本実施形態では、歩行者が道路を横断する方向に移動しているか否かを検出する。すなわち、自車両から見て左右方向の移動方向を検出するものとして説明する。
【0053】
そして、対向車に対して前照灯12の分割領域22を点滅させて歩行者の存在を報知する際に、方向車の移動方向に応じて、左右の前照灯12の点滅タイミングをずらして、歩行者の存在と、当該歩行者の移動方向を報知する。例えば、歩行者の移動方向が、自車両の右側から左側に向かって移動していることを検出した場合には、右側の前照灯12を点滅させた後に、左側の前照灯12を点滅させる。これによって対向車からは、左側から右側に点滅が移動するように見えるので、歩行者と該歩行者の移動方向を確認することができる。また、自車両の左側から右側に向かって移動していることを検出した場合には、左側の前照灯12を点滅させた後に、右側の前照灯12を点滅させる。これによって対向車からは、右側から左側に点滅が移動するように見えるので、歩行者と該歩行者の移動方向を確認することができる。
【0054】
図7は、本発明の第2実施形態に係わる車両用照明装置10の配光制御ECU14で行われる配光制御ルーチンを示すフローチャートである。なお、図7に示す配光制御ルーチンは、乗員のスイッチ16の操作によって、前照灯12の点灯が指示された場合等に開始する。また、スイッチ16に自動点灯モードを備える場合には、乗員によって自動点灯が指示されて、前照灯12を点灯する所定の条件が満たされた場合に開始するようにしてもよい。
【0055】
乗員のスイッチ16の操作によって前照灯12の点灯が指示されると、ステップ200では、前照灯12が点灯される。すなわち、CPU14AがI/O14Dを介して前照灯ドライバ20を制御することによって、2つの前照灯12の各LED光源24が駆動されることによって前照灯12を点灯させる。
【0056】
ステップ202では、カメラ18によって車両前方を撮影した撮影結果がI/O14Dを介しては配光制御ECU14に取得されてステップ204へ移行する。
【0057】
ステップ204では、カメラ18の撮影画像に基づいて側方の歩行者及び対向車がCPU14Aによって検出されてステップ206へ移行する。例えば、上述したように、複数のサンプリング画像の差分画像等を算出することによって、自車両に向かって走行する対向車を検出すると共に、自車両近傍の移動物体を歩行者として検出することができる。
【0058】
ステップ206では、対向車を検出したか否かCPU14Aによって判定され、該判定が肯定された場合にはステップ208へ移行し、否定された場合にはステップ222へ移行する。
【0059】
ステップ208では、対向車に対応する前照灯12の分割領域22がCPU14Aによって特定されてステップ210へ移行する。
【0060】
ステップ210では、特定した分割領域22が消灯され他の分割領域が点灯されてステップ212へ移行する。すなわち、配光制御ECU14が前照灯ドライバ20を制御することによって、対向車に対応する分割領域22へ光を照射するLED光源24が消灯されるので、ハイビームで走行しても対向車へのグレア光を抑制することができる。
【0061】
ステップ212では、歩行者が検出されているか否かがCPU14Aによって判定され、該判定が肯定された場合にはステップ214へ移行し、否定された場合にはステップ224へ移行する。
【0062】
ステップ214では、歩行者の移動方向がCPU14Aによって検出されてステップ216へ移行する。例えば、上述したように、歩行者の移動方向は、複数のサンプルリング画像の差分画像を求めることによって、移動体の移動方向を検出することによって歩行者の移動方向を検出することができる。
【0063】
ステップ216では、移動方向が右方向か否かCPU14Aによって判定され、該判定が否定された場合には歩行者の移動方向が左方向としてステップ218へ移行し、肯定された場合にはステップ220へ移行する。
【0064】
ステップ218では、右側の前照灯12の消灯した分割領域を点滅した後に、左側の前照灯12の消灯した分割領域を点滅されてステップ224へ移行する。すなわち、配光制御ECU14が前照灯ドライバ20を制御することによって、右側の前照灯12、左側の前照灯12の順に点滅するように、消灯した分割領域22への光の照射が制御される。これによって対向車側からは、点滅が左から右に点滅が移動しているように見えるので、歩行者と該歩行者の移動方向を直感的に理解することができる。
【0065】
また、ステップ220では、左側の前照灯12の消灯した分割領域を点滅した後に、右側の前照灯12の消灯した分割領域を点滅されてステップ224へ移行する。すなわち、配光制御ECU14が前照灯ドライバ20を制御することによって、左側の前照灯12、右側の前照灯12の順に点滅するように、消灯した分割領域22への光の照射が制御される。これによって対向車側からは、点滅が右から左に点滅が移動しているように見えるので、歩行者と該歩行者の移動方向を直感的に理解することができる。
【0066】
なお、ステップ218、220において、前照灯12の点滅後は、対向車へのグレア光を抑制するために、対向車に対応する分割領域22は消灯する。
【0067】
一方、ステップ222では、配光がリセット、すなわち、配光制御が行われて分割領域22が消灯されている場合があるので、配光をリセットすることにより、全ての分割領域22を点灯してステップ224へ移行する。
【0068】
そして、ステップ224では、スイッチ16がオフされたか否かがCPU14Aによって判定され、該判定が否定された場合にはステップ202に戻って上述の処理が繰り返され、ステップ224の判定が肯定されたところでステップ226へ移行して、前照灯12を消灯して一連の処理を終了する。
【0069】
このように制御することによって、対向車側では、図8(A)、(B)に示すように、対向車の検出に伴って点灯していた分割領域が消灯されて見える。そして、前方に歩行者が存在し、歩行者の移動方向が対向車側から見て左から右に移動している場合には、図8(A)に示すように、対向車から見て左側の前照灯12が点滅した後に、右側の前照灯12が点滅するので、点滅が左から右に移動しているように見え、直感的に歩行者の存在と歩行者が左から右に移動していることを理解することができる。また、前方に歩行者が存在し、歩行者の移動方向が対向車側から見て右から左に移動している場合には、図8(B)に示すように、対向車から見て右側の前照灯12が点滅した後に、左側の前照灯12が点滅するので、点滅が右から左に移動しているように見え、直感的に歩行者の存在と歩行者が右から左に移動していることを理解することができる。
【0070】
すなわち、本実施形態では、第1実施形態と同様に、自車両に向かって走行する対向車を検出して対向車に対応する前照灯12の分割領域22を消灯するので、ハイビームで走行しても対向車へのグレア光を抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態と同様に、走行中に自車両近傍に歩行者の存在を検出した場合には、対向車に対して歩行者の存在を報知するために、前照灯12の消灯した分割領域22を点滅するように制御するので、これによって対向車に歩行者の存在を報知することができる。また、自車両に向かって走行する対向車のみに対して選択的に歩行者の存在を報知するので、歩行者に関係ない他の車両に余計な信号を伝達することなく、歩行者の存在の報知が不要な相手に報知することなく、適切な相手に歩行者の存在を報知することができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、歩行者の移動方向を検出して、移動方向に応じて、左右の前照灯12の点滅タイミングを制御するので、左右の点滅タイミングから歩行者の存在と該歩行者の移動方向も報知することができる。
【0073】
なお、上記の各実施形態では、カメラ18の撮影画像から対向車や歩行者を検出するようにしたが、これに限るものではなく、各種技術を適用することができ、例えば、ミリ波レーダー等の各種センサを用いて対向車や歩行者を検出するようにしてもよい。
【0074】
また、上記の各実施形態では、前照灯12の対向車に対応する分割領域22を点滅することによって歩行者の存在を対向車に報知するが、分割領域22の点滅回数は1回でもよいし、2回以上でもあってもよく、適宜設定可能である。
【0075】
また、上記の各本実施形態では、対向車を検出した場合に、対向車へのグレア光を抑制するために、前照灯12の配光領域のうち対向車に対応する分割領域へ照射される光を非照射となるように配光制御を行う場合を例として説明したが、これに限るものではなく、例えば、前照灯12の配光領域のうち対向車に対応する分割領域22へ照射される光が減光するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の前照灯の配光範囲の分割領域を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置に適用可能な前照灯の一例を示す図である。
【図4】(A)は本発明の実施の形態に係わる車両用照明装置の前照灯の分割領域を説明するための図であり、(B)は光源分割領域対応関係テーブルを示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係わる車両用照明装置の配光制御ECUで行われる配光制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態に係わる車両用照明装置の配光制御を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係わる車両用照明装置の配光制御ECUで行われる配光制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係わる車両用照明装置の配光制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0077】
10 車両用照明装置
12 前照灯
14 配光制御ECU
18 カメラ
20 前照灯ドライバ
22 分割領域
24 LED光源
28 光源
30 DMD
32 マイクロミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配光領域を複数に分割したそれぞれの分割領域毎に配光を変更可能な車両用照明手段と、
自車両に向かって走行する対向車を検出する対向車検出手段と、
自車両近傍の歩行者を検出する歩行者検出手段と、
前記対向車検出手段によって対向車が検出され、かつ前記歩行者検出手段によって歩行者が検出された場合に、前記対向車検出手段によって検出された対向車に対応する前記車両用照明手段の分割領域への配光が歩行者が存在することを表す予め定めた配光となるように、前記車両用照明手段を制御する制御手段と、
を備えた車両用警報装置。
【請求項2】
前記車両用照明手段が自車両の前部に左右一対設けられ、前記歩行者検出手段が、歩行者の進行方向を更に検出し、前記制御手段が、前記歩行者検出手段によって検出された進行方向を表すように、左右の前記車両用照明手段の光照射タイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用警報装置。
【請求項3】
前記制御手段は、歩行者が存在することを表す予め定めた配光として、対向車に対応する前記分割領域へ照射される光が点滅するように、前記車両用照明手段を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用警報装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記対向車検出手段によって対向車が検出された場合に、対向車に対応する前記分割領域へ照射される光が、非照射状態または減光されるように前記車両用照明手段の配光を更に制御することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用警報装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−143350(P2009−143350A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321985(P2007−321985)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】