説明

車両用走行制御装置

【課題】ECU間のネットワーク伝送路での通信負荷状況に応じて車両制御のタイミングを変化させることができる車両用走行制御装置の提供。
【解決手段】車両走行を制御する第1のECUと、車両周辺監視の障害物に関する情報を処理する第2のECUと、前記第1及び第2のECU間での通信のためのネットワーク伝送路とを備える車両用走行制御装置において、前記ネットワーク伝送路の通信負荷を判断する通信負荷判断手段と、前記第2のECUで検知した車両周辺情報に基づいて前記第1のECUにて実行されるべき車両の走行制御態様を決定する走行制御態様決定手段と、前記通信負荷判断手段により判断された通信負荷が所定基準以上の高い通信負荷である場合に、前記走行制御態様決定手段で決定された走行制御態様における走行制御のタイミングを前出しするタイミング前出し手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行を制御する第1のECUと、車両周辺監視センサの信号を処理する第2のECUと、前記第1及び第2のECU間での通信のためのネットワーク伝送路とを備える車両用走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、前車と自車との車間距離等を検出する車両周辺監視センサ(レーダ装置等)と、車両周辺監視センサからの情報に基づいて、前車車速及び車間距離から目標位置での目標車速を実現するための目標加減速度を演算し、この目標加減速度と実際の加減速度との差に応じてエンジン出力調整又はブレーキ力調整をスロットル弁アクチェータ又は圧力制御弁の制御を介して行うコントローラとを備えた車両用走行制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−310059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両周辺監視センサの検出信号の受信からアクチェータへの駆動信号の印加までのネットワーク伝送路に、2つ以上のECU(コントローラ)が関連している場合、ECU間のネットワーク伝送路での通信負荷状況によっては、通信遅れが発生し、所期のタイミングで車両制御を実現できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、ECU間のネットワーク伝送路での通信負荷状況に応じて車両制御のタイミングを変化させることができる車両用走行制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、車両走行を制御する第1のECUと、車両周辺監視の障害物に関する情報を処理する第2のECUと、前記第1及び第2のECU間での通信のためのネットワーク伝送路とを備える車両用走行制御装置において、
前記ネットワーク伝送路の通信負荷を判断する通信負荷判断手段と、
前記第2のECUで検知した車両周辺情報に基づいて前記第1のECUにて実行されるべき車両の走行制御態様を決定する走行制御態様決定手段と、
前記通信負荷判断手段により判断された通信負荷が所定基準以上の高い通信負荷である場合に、前記走行制御態様決定手段で決定された走行制御態様における走行制御のタイミングを前出しするタイミング前出し手段とを含むことを特徴とする、車両用走行制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ECU間のネットワーク伝送路での通信負荷状況に応じて車両制御のタイミングを変化させることができる車両用走行制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による車両用走行制御装置1の一実施例に関連する全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】相対速度と相対距離に関する判定マップを示す図である。
【図3】相対進行方向に関する閾値(領域T)を示す図である。
【図4】衝突不可避判定後の減速度要求値と衝突位置(TTC)の関係の時系列を示す図である。
【図5】本実施例により前出しされる減速度要求値と衝突位置(TTC)の関係の時系列を示す。
【図6】通信負荷状況に応じた減速要求値の前出し方法の第1の具体例を示す説明図である。
【図7】通信負荷状況に応じた減速要求値の前出し方法の第2の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明による車両用走行制御装置1の一実施例に関連する全体構成を示すシステム構成図である。
【0011】
車両用走行制御装置1は、車両周辺監視センサ10を備える。車両周辺監視センサ10は、レーダーセンサ12、CCDカメラを含む画像センサ14等であってよい。レーダーセンサ12の場合、ミリ波レーダーセンサ、レーザーレーダーセンサ、超音波レーダーセンサ等であってよい。また、走査方法は、電子的であっても機械式であってもよい。また、レーダーセンサ12及び画像センサ14は、車両前方監視用及び車両側方監視用のいずれかの任意のセンサであってよく、或いは、それぞれ車両前方監視用及び車両側方監視用として複数個設定されてもよい。
【0012】
車両周辺監視センサ10には、周辺監視系CAN(controller area network)を介して、DSS#1ECU20が接続される。車両周辺監視センサ10で得られたセンサ情報は、DSS#1ECU20に供給され処理される。尚、車両周辺監視センサ10で得られたセンサ情報は、所定処理を受けた上でDSS#1ECU20に供給されてもよい。
【0013】
DSS#1ECU20(他のECU24等も同様)は、マイクロコンピュータによって構成されており、例えば、CPU,制御プログラムを格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有してよい。
【0014】
DSS#1ECU20は、車両周辺監視センサ10で得られたセンサ情報(画像センサから得られる画像認識情報を含む)に基づいて、車両周辺の障害物に対する自車の相対速度、距離、方位等を検出し、この検出結果に基づいて障害物との衝突が不可避であるか否かを判定する。例えば、DSS#1ECU20は、検出された他車の相対距離が、図2に示すような相対速度に対して定まる相対距離の閾値ラインを自車側に越えた場合であって、且つ、検出された他車の相対進行方向が、図3に示す領域T(2本のラインが定める角度範囲)内に属する場合に、当該他車による自車への側面衝突に関して衝突不可避と判定する。前方の他車との前面衝突やオフセット衝突等についても領域T等が異なるだけで基本的な考え方は同様であってよい。但し、本実施例は、自車と障害物との衝突が不可避であるか否かを判定するものであれば、その手法や精度に関係なく如何なる衝突不可避判定に対しても適用可能である。また、本実施例は、衝突の可能性を段階的に評価する衝突不可避判定に対しても適用可能である。
【0015】
DSS#1ECU20には、バス42(以下、V1バス42という)を介して、シートベルトプリテンショナ機能を実現するシートベルトECU22や、ゲートウェイ機能を実現するG/W・ECU24が接続される。DSS#1ECU20は、衝突が不可避であると判定した場合、衝突不可避判定時に作動すべきデバイスを作動させる作動指示フラグと、作動時の目標値とを含む信号を、G/W・ECU24に供給する。衝突不可避判定時に作動すべきデバイスは、シートベルトプリテンショナ、アクティブドアトリムや、ブレーキアクチュエータ50等を含んでよいが、ここでは、ブレーキアクチュエータ50を代表として想定する。従って、作動時の目標値は、減速度要求値(目標減速度)(ひいてはそれに対応するブレーキ圧の要求値)である。この場合、DSS#1ECU20は、車両周辺監視センサ10で得られたセンサ情報に基づいて、衝突予測時間(TTC)を算出すると共に、衝突予測時間での減速度要求値又は衝突予測時間に至るまでの逐次の減速度要求値を算出・決定することになる。尚、DSS#1ECU20とG/W・ECU24の間では、V1バス42を介して、所定周期毎に信号のやり取りが実行されていてよい。この場合、DSS#1ECU20は、衝突不可避であるか否かを表す信号及び減速度要求値(衝突不可避判定時以外はゼロ)と共に、通信が成功したか否かを確認するための例えば宿題を含んだ信号をG/W・ECU24に送ると共に、G/W・ECU24からの宿題に対する解答を受信して、G/W・ECU24との通信が成功したか否かを判断してもよい。
【0016】
G/W・ECU24には、バス44(以下、V2バス44という)を介して、車両の制動力を制御するブレーキECU26や、メータの各種表示を制御するメータECU28が接続される。ブレーキECU26には、ブレーキアクチュエータ50や警報ブザー52が接続される。G/W・ECU24は、DSS#1ECU20からの信号を中継して、ブレーキECU26に転送する。尚、G/W・ECU24は、DSS#1ECU20から衝突不可避であることを表す信号を受信したときのみ、DSS#1ECU20からの信号を転送することとしてもよい。ブレーキECU26は、DSS#1ECU20からの信号に含まれる減速度要求値に従って、当該減速度要求値に対応した減速度が実現されるようにブレーキアクチュエータ50を制御する。また、ブレーキECU26は、DSS#1ECU20から衝突不可避であることを示す情報(作動指示フラグ)を受信した場合に、警報ブザー52により注意喚起のための警報(或いはブレーキ操作を促すための警報)を出力してもよい。
【0017】
図4は、衝突不可避判定後の減速度要求値と衝突位置(TTC)の関係の時系列を示す。減速要求値は、実線で示すように、衝突予測時間(TTC=0)にて最終的な減速要求値Xに達するような態様で減速要求値が時間変化されていく。通信遅れが発生しない場合は、ブレーキECU26により参照される減速要求値は、実線で示す波形に従ったものとなる。しかしながら、通信負荷状況によっては通信遅れが発生し、この場合、ブレーキECU26により参照される減速要求値は、通信遅れ分(TTC=B)だけ破線で示すように遅れが生じ、その結果、衝突予測時間(TTC=0)にて最終的な減速要求値Xに到達できなくなる場合が生じうる。
【0018】
そこで、本実施例では、通信負荷状況によって有意な通信遅れが発生する場合には、図5にて破線で示すように、通信遅れ分(TTC=B)を補償するような態様で、減速要求値が前出しされる。減速要求値の前出しは、図5にて破線で示す通り、減速要求値の時間変化の傾きを急勾配に変化させることで実現されてもよい。或いは、減速要求値の前出しは、特に通信負荷状況によって有意な通信遅れが発生することが予見できる場合、通信遅れ分だけ衝突予測時間を短めに算出しておくことで実現されてもよい。
【0019】
これにより、本実施例によれば、通信負荷状況によって有意な通信遅れが発生する場合でも、該通信遅れ分(即ち通信負荷)に応じた減速要求値の前出しが実施されるので、所期の所望のタイミングで自動ブレーキ機能を働かすことができる。即ち、車両の減速度を、衝突予測時間にて又は衝突予測時間までに最終的な減速要求値Xに到達させることができる。
【0020】
次に、通信負荷状況に応じた減速要求値の前出し方法の幾つかの具体例を説明する。
【0021】
図6は、通信負荷状況に応じた減速要求値の前出し方法の第1の具体例を示す説明図である。
【0022】
図6に示す例では、ブレーキECU26は、G/W・ECU24から減速要求値のIDフレームを受信できなかった場合に、未受信フラグ2をブレーキECU26に送信する。
【0023】
G/W・ECU24は、DSS#1ECU20から減速要求値のIDフレームを受信できなかった場合に、未受信フラグ1をブレーキECU26に送信する。また、G/W・ECU24は、ブレーキECU26から未受信フラグ2を受信した場合、ブレーキECU26が減速要求値を受信できていないと判断して、未受信フラグ1をブレーキECU26に送信する。
【0024】
図6に示す例では、DSS#1ECU20は、G/W・ECU24から未受信フラグ1を受信した場合は、バス負荷によりG/W・ECU24が減速要求値を受信できていない、又は、ブレーキECU26が減速要求値を受信できていないと判断する。この場合、DSS#1ECU20は、次回周期のタイミングで送信すべき減速要求値に遅れ補償用減速度αを加算して、再度減速要求値をG/W・ECU24に送信する。即ち、DSS#1ECU20は、図5に点線で示したような態様で、遅れ補償用減速度αにより減速要求値を補正(前出し)する。ここで、遅れ補償用減速度αは、DSS#1ECU20内のカウンタ値により未受信に係る減速要求値の送信タイミングから未受信フラグ1の受信タイミングまでの時間を算出し、当該算出した時間に応じて算出されてもよい。例えば、DSS#1ECU20は、算出した時間が所定基準時間よりも長い場合は、通信負荷が高いと判断して、当該算出した時間に応じた遅れ補償用減速度αを加算することとしてもよい。或いは、DSS#1ECU20は、未受信フラグを受信したこと自体が、通信負荷が所定基準より高い状態であることを意味すると判断して、当該算出した時間に応じた遅れ補償用減速度αを加算することとしてもよい。尚、遅れ補償用減速度αは、減速要求値に一気に加算する必要は無い。例えば、減速度の急変を防止する必要がある場合は、遅れ補償用減速度αは、複数の送信周期に亘って分割的に加算することとしてもよい。
【0025】
尚、図6に示す例では、未受信フラグによりG/W・ECU24又はブレーキECU26での減速要求値の未受信を検出しているが、例えばG/W・ECU24又はブレーキECU26からの応答信号の有無や応答信号に含まれる解答(宿題に対する解答)に基づいて、G/W・ECU24又はブレーキECU26での減速要求値の未受信を検出してもよい。
【0026】
図7は、通信負荷状況に応じた減速要求値の前出し方法の第2の具体例を示す説明図である。
【0027】
図7に示す例では、DSS#1ECU20、G/W・ECU24及びブレーキECU26は、同一のカウンタ値を共有することを前提とする。即ち、DSS#1ECU20、G/W・ECU24及びブレーキECU26は、同期が取れたカウンタ(時計)を有することを前提とする。
【0028】
図7に示す例では、DSS#1ECU20は、減速要求値の送信時に、そのときのDSS#1ECU20内のカウンタ値(DSS#1ECUカウンタ値)を送信信号に重畳して、G/W・ECU24に送信する。これを受信したG/W・ECU24は、DSS#1ECUカウンタ値と、そのときのG/W・ECU24内のカウンタ値(G/W・ECUカウンタ値)とを比較し、その差(=G/W・ECUカウンタ値−DSS#1ECUカウンタ値)を通信遅れ時間Aとして算出する。そして、G/W・ECU24は、G/W・ECUカウンタ値に算出した通信遅れ時間Aを加えた値(即ちDSS#1ECUカウンタ値)を、DSS#1ECU20からの減速要求値と共に、ブレーキECU26に送信する。これを受信したブレーキECU26は、そのときのブレーキECU26内のカウンタ値と、G/W・ECU24から受信したカウンタ値(即ちDSS#1ECUカウンタ値)の差分を演算し、当該差分値に応じた遅れ補償用減速度αを、減速要求値に加算して減速要求値を補正する。即ち、ブレーキECU26は、図5に点線で示したような態様で、遅れ補償用減速度αにより減速要求値を補正(前出し)する。例えば、ブレーキECU26は、算出したカウンタ値の差分値(遅れ量)が所定基準時間よりも長い場合は、通信負荷が高いと判断して、当該算出した差分値に応じた遅れ補償用減速度αを加算して減速要求値を補正する一方、算出したカウンタ値の差分値が所定基準時間よりも短い場合は、通信負荷が通常又は低いと判断して、減速要求値の補正を行わないこととしてもよい。或いは、ブレーキECU26は、算出したカウンタ値の差分値が所定基準時間よりも短い場合でも、当該算出したカウンタ値の差分値に応じた遅れ補償用減速度αを加算することとしてもよい。尚、遅れ補償用減速度αは、減速要求値に一気に加算する必要は無い。例えば、減速度の急変を防止する必要がある場合は、遅れ補償用減速度αは、複数の送信周期に亘って分割的に加算することとしてもよい。
【0029】
以上説明した本実施例の車両用走行制御装置1によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0030】
上述の如くDSS#1ECU20、G/W・ECU24及びブレーキECU26間のネットワーク伝送路における通信負荷状況に依存してDSS#1ECU20からG/W・ECU24を介したブレーキECU26への減速要求値の伝送に有意な通信遅れが発生する場合でも、該通信遅れ分(即ち通信負荷)に応じて減速要求値が補正されるので、所期の所望のタイミングで自動ブレーキ機能を働かすことができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0032】
例えば、上述した実施例は、衝突不可避時にブレーキアクチュエータ50による自動ブレーキにより車両の減速を実現する制御に関するものであったが、本発明は、これに限られず、衝突不可避判定時若しくはその前段階でのエンジンブレーキ(スロットル開度の調整)による制動制御等にも適用可能である。例えば、エンジンブレーキによる制動制御では、上述の実施例と同様の態様で、通信負荷状況に応じて減速要求値(減速のためのスロットル開度の要求値)の前出しを実行すればよい。
【0033】
また、上述した実施例では、通信遅れを補償する観点から減速要求値を補正しているが、これに加えて他の補正を実施してもよい。例えば、衝突不可避判定後から変化しうる車速や相対速度、相対位置に応じて減速要求値を補正してもよいし、車両周辺監視センサ10でのセンシング遅れを補償する観点から減速要求値を補正してもよい。
【0034】
また、上述した実施例では、減速要求値の未受信の発生の有無等に基づいて通信負荷状況を判断しているが、V1バス42やV2バス44のトラフィックを常時監視していてもよい。この場合、V1バス42やV2バス44のトラフィックが所定値以上である場合には、減速要求値の未受信又は送信遅れが発生すると予見して、上述の実施例と同様の態様で減速要求値の前出しを実行することとしてもよい。
【0035】
また、上述した実施例では、DSS#1ECU20は、車両周辺監視センサ10で得られたセンサ情報を処理して、衝突不可避判定及び減速要求値演算等を実行しているが、車両周辺監視センサ10で得られたセンサ情報に代えて若しくは加えて、車車間通信を介して得られる障害物(車車間通信の相手の先行車等の他車を含む)に関する情報を用いることも可能である。例えば、他車の相対距離は、上述の車両周辺監視センサ10の検出結果、及び/又は、自車の位置情報及び車車間通信から得られる他車の位置情報に基づいて算出されてよい。同様に、他車の相対速度及び相対進行方向についても、自車の位置情報の履歴(走行ベクトル)と共に、車両周辺監視センサ10の検出結果の履歴、及び/又は、車車間通信から得られる他車の位置情報の履歴(走行ベクトル)に基づいて算出されてよい。
【0036】
また、上述した実施例では、G/W・ECU24(即ち、2つのV1バス42及びV2バス44)を介してDSS#1ECU20からの減速要求値がブレーキECU26に伝送されているため、V1バス42及びV2バス44の少なくともいずれか一方で高い通信負荷状態であるときに通信遅れが発生しやすい。従って、本発明は、通信遅れを補償できるため、かかる構成に対して好適であるが、G/W・ECU24が介在しない構成に対しても適用可能である。
【0037】
また、上述した実施例では、遅れ補償用減速度αを加算することで減速要求値の補正を行っているが、通信遅れを補償する態様である限り、具体的な補正態様は任意である。例えば、等価的に、減速要求値に対して所定の係数(1よりも大きい係数)を乗算して減速要求値の補正を行ってもよい。この場合、所定の係数は通信負荷状況に応じて可変されてよい。
【符号の説明】
【0038】
1 車両用走行制御装置
10 車両周辺監視センサ
12 レーダーセンサ
14 画像センサ
20 DSS#1ECU
22 シートベルトECU
24 G/W・ECU
26 ブレーキECU
28 メータECU
42 V1バス
44 V2バス
50 ブレーキアクチュエータ
52 警報ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行を制御する第1のECUと、車両周辺監視の障害物に関する情報を処理する第2のECUと、前記第1及び第2のECU間での通信のためのネットワーク伝送路とを備える車両用走行制御装置において、
前記ネットワーク伝送路の通信負荷を判断する通信負荷判断手段と、
前記第2のECUで検知した車両周辺情報に基づいて前記第1のECUにて実行されるべき車両の走行制御態様を決定する走行制御態様決定手段と、
前記通信負荷判断手段により判断された通信負荷が所定基準以上の高い通信負荷である場合に、前記走行制御態様決定手段で決定された走行制御態様における走行制御のタイミングを前出しするタイミング前出し手段とを含むことを特徴とする、車両用走行制御装置。
【請求項2】
前記第1のECUは、前記車両の走行制御として、ブレーキアクチュエータを介した車両の制動力制御を実行するブレーキ制御ECUであり、
前記走行制御態様決定手段は、他車との衝突予測時間に所定の目標減速度が実現されるように前記制動力制御のタイミングを決定する、請求項1に記載の車両用走行制御装置。
【請求項3】
前記第1のECUは、前記車両の走行制御として、前記走行制御態様決定手段により決定された前記走行制御態様における目標減速度に基づいて、ブレーキアクチュエータを介した車両の制動力制御を実行するブレーキ制御ECUであり、
前記タイミング前出し手段は、前記走行制御態様決定手段により決定される目標減速度の時間変化の傾きを急な傾きに変化させることで、前記前出しを実現する、請求項1に記載の車両用走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173349(P2010−173349A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15225(P2009−15225)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】