説明

車両用運転支援装置

【課題】道路上の制限速度が変化した場合のセット車速の変更を、ドライバの意思を尊重しつつ容易に行うことができる車両用運転支援装置を提供する。
【解決手段】走行制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4でセット車速Vsetと異なる制限速度Vlimを検出したとき、セット車速Vsetの値を制限速度Vlimに切換可能なスタンバイモードを一時的に実行し、スタンバイモードの実行中はセット車速Vsetと制限速度Vlimとを対比可能に表示するとともに、ドライバの操作状態に応じてセット車速Vsetの維持或いは制限速度Vlimへの切換を選択的に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバが設定したセット車速で定速走行を行うクルーズコントロール機能を備えた車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波レーダ、赤外線レーザレーダ、ステレオカメラや単眼カメラ等を用いて車両前方の車外環境を認識し、認識した車外環境に基づいて自車両の走行制御等を行う運転支援装置について様々な提案がなされている。このような走行制御の機能の一つとして、自車両の前方で先行車を検出(捕捉)したとき、検出した先行車に対する追従走行制御を行う機能が広く知られている。一般に、このような追従走行制御は車間距離制御付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)の一環として広く実用化されており、ACCでは、自車両の前方に先行車を検出している状態では追従制御が行われ、先行車を検出していない状態ではドライバが設定したセット車速での定速走行制御が行われる。
【0003】
ところで、ACCを行う際には道路上の制限速度を遵守する必要があるが、制限速度は高速道路や一般道等の道路種別に応じて異なり、また、天候等によっても変更される場合がある。従って、ACCの実行中においても、ドライバは常に道路上に表記されている制限速度に注意を払う必要があり、制限速度が変わる度にセット車速を再入力するための煩雑な操作を行う必要がある。このようなドライバの負担を軽減するための技術として、例えば、特許文献1には、CCDカメラで撮像した車両前方の画像に基づいて道路標識や路面標識に表示されている制限速度を認識し、得られた制限速度を適宜更新し、車速が制限速度を超過しているとき警報を出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−128790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術をそのままACCに適用した場合、制限速度に対してセット車速が大きく乖離した場合等に、ドライバの意に反した加減速が行われる虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、道路上の制限速度が変化した場合のセット車速の変更を、ドライバの意思を尊重しつつ容易に行うことができる車両用運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による車両用運転支援装置は、操作入力手段に対するドライバの操作状態に応じてセット車速を設定する車速設定手段と、前記セット車速を目標車速として定速走行制御を行う定速走行制御手段と、自車両前方を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した画像に基づいて道路上の標識に表示された制限速度を認識する制限速度認識手段と、前記制限速度認識手段で前記セット車速と異なる制限速度を認識したとき、前記セット車速を前記制限速度に切換可能なスタンバイモードを一時的に実行して、前記セット車速と前記制限速度とを表示手段に対比可能に表示するとともに、選択指示手段に対するドライバの操作状態に応じて前記セット車速の維持或いは前記制限速度への切換を選択的に行う車速切換手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用運転支援装置によれば、道路上の制限速度が変化した場合のセット車速の変更を、ドライバの意思を尊重しつつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わり、車両に搭載した運転支援装置の概略構成図
【図2】同上、セット車速設定ルーチンを示すフローチャート
【図3】同上、(a)はクルーズコントロール用表示装置上の各インジケータを示す説明図であって(b)は通常モードにおける表示装置上の表示例を示す説明図であって(c)はスタンバイモードにおける表示装置上の表示例を示す説明図
【図4】同上、クルーズコントロールスイッチの一例を示す平面図
【図5】本発明の第2の実施形態に係わり、車速設定ルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の第1の実施形態に係わり、図1は車両に搭載した運転支援装置の概略構成図、図2はセット車速設定ルーチンを示すフローチャート、図3(a)はクルーズコントロール用表示装置上の各インジケータを示す説明図であって(b)は通常モードにおける表示装置上の表示例を示す説明図であって(c)はスタンバイモードにおける表示装置上の表示例を示す説明図、図4はクルーズコントロールスイッチの一例を示す平面図である。
【0011】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)を示し、この車両1には、例えば、車間距離制御機能付クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)機能を備えた運転支援装置2が搭載されている。
【0012】
この運転支援装置2は、例えば、撮像手段としてのステレオカメラ3と、ステレオ画像認識装置4と、走行制御ユニット5と、を一体的に備えたステレオカメラアセンブリ2aを中心として主要部が構成されている。そして、このステレオカメラアセンブリ2aの走行制御ユニット5には、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)7、ブレーキ制御ユニット(BRK_ECU)8、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)9等の各種制御ユニットが相互通信可能に接続されている。
【0013】
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を備えた左右1組のCCDカメラで構成されている。このステレオカメラ3を構成する各CCDカメラは、車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、撮像した画像情報をステレオ画像認識装置4に出力する。
【0014】
ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報が入力されるとともに、例えば、T/M_ECU9から自車速V等が入力される。このステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報に基づいて自車両1前方の立体物データや白線データ等の前方情報を認識し、これら認識情報等に基づいて自車走行路を推定する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、認識した立体物データ等に基づいて自車走行路上の先行車検出を行う。
【0015】
すなわち、ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報の処理を、例えば以下のように行う。すなわち、ステレオカメラ3で自車進行方向を撮像した左右1組の画像(ステレオ画像対)に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を生成する。具体的には、ステレオ画像認識装置4は、基準画像(例えば、右側の画像)を例えば4×4画素の小領域に分割し、それぞれの小領域の輝度或いは色のパターンを比較画像と比較して対応する領域を見つけ出し、基準画像全体に渡る距離分布を求める。さらに、ステレオ画像認識装置4は、基準画像上の各画素について隣接する画素(例えば右側及び下側で隣接する画素)との輝度差を調べ、これらの輝度差がともに閾値を超えているものをエッジとして抽出するとともに、抽出した画素(エッジ)に距離情報を付与することで、距離情報を備えたエッジの分布画像(距離画像)を生成する。そして、ステレオ画像認識装置4は、例えば、距離画像に対して周知のグルーピング処理を行い、予め設定された各種テンプレートとのパターンマッチングを行うことにより、自車前方の白線、側壁、立体物等を認識する。そして、ステレオ画像認識装置4は、認識した各データに、それぞれ異なるIDを割り当て、これらをID毎にフレーム間で継続して監視する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、白線データや側壁データ等に基づいて自車走行路を推定し、自車走行路上に存在する立体物であって、自車両1と略同じ方向に所定の速度(例えば、0Km/h以上)で移動するものを先行車として抽出(検出)する。そして、先行車を検出した場合には、その先行車情報として、先行車距離D(=車間距離)、先行車速度Vf(=(車間距離Dの変化の割合)+(自車速V))、先行車加速度af(=先行車速Vfの微分値)等を演算する。なお、先行車の中で、特に速度Vfが所定値以下(例えば、4Km/h以下)で、且つ、加速していないものは、略停止状態の先行車として認識される。
【0016】
このような画像情報の処理において、ステレオ画像認識装置4は、道路上の標識に表示された制限速度Vlimについても認識を行う。すなわち、ステレオ画像認識装置4には、例えば、道路標識や路面標識等の各種標識に関するテンプレートデータが格納されており、これらテンプレートとのパターンマッチングによって標識を認識し、さらに、認識した標識が速度標識である場合には当該標識上に表示されている制限速度Vlimを認識する。このように、本実施形態において、ステレオ画像認識装置4は、制限速度認識手段としての機能を有する。
【0017】
走行制御ユニット5には、例えば、ステレオ画像認識装置4から車外前方に関する各種認識情報が入力されるとともに、T/M_ECU9から自車速Vが入力される。
【0018】
また、走行制御ユニットには、例えば、操作入力手段としてのクルーズコントロール用スイッチ15を通じてドライバにより操作入力される各種入力信号が、E/G_ECU7を介して入力される。本実施形態において、クルーズコントロール用スイッチ15は、例えば、ステアリング20に配置されたプッシュスイッチ及びトグルスイッチ等からなる操作スイッチであり、ACCの作動をON/OFFするメインスイッチであるクルーズスイッチ(CRUISE)15a、その時の自車両1の速度をセット車速Vsetとして設定するためのセットスイッチ(SET)15b、前回の記憶してあるセット車速Vsetを再セットするためのリジュームスイッチ(RES)15c、先行車と自車両との車間距離のモードを設定するための車間距離設定スイッチ15d、ACCを解除するためのキャンセルスイッチ(CANCEL)15eを有している。ここで、本実施形態において、セットスイッチ15bは、自車両1の減速を指示する減速スイッチ(▽)、及び、セット車速を低速側に設定車速毎にタップダウンさせるダウンスイッチ(−)としての機能を兼用する。また、リジュームスイッチ15cは、自車両1の加速を指示する加速スイッチ(△)、及び、セット車速を高速側に設定車速毎にタップアップさせるアップスイッチ(+)としての機能を兼用する。
【0019】
また、走行制御ユニット5には、ACCに関する設定情報や制御情報等を表示するための表示手段としてのクルーズコントロール用表示装置21が接続されている。例えば図3(a)に示すように、本実施形態において、表示装置21は、セット車速Vsetを表示するためのセット車速表示用インジケータ21a、ステレオ画像認識装置4で先行車を捕捉した際に点灯する先行車表示用インジケータ21b及び車間距離モード表示用インジケータ21c、ステレオ画像認識装置4で制限速度Vlimを認識した際に点灯する制限速度表示用インジケータ21d等を備え、この表示装置21は、例えば、コンビネーションメータ上に配置されている。
【0020】
走行制御ユニット5は、例えば、ドライバによりクルーズスイッチ15aがオンされた後、セットスイッチ15bが操作されると、当該操作時の自車速Vをセット車速Vsetとして設定する。或いは、例えば、ドライバによりリジュームスイッチ15cが操作されると、走行制御ユニット5は、前回設定されていたセット車速を今回のセット車速Vsetとして設定する。このとき、走行制御ユニット5は、表示装置21上のセット車速表示用インジケータ21aを構成するセグメントを選択的に点灯させてセット車速Vsetを表示し、当該表示状態を維持する。
【0021】
また、ドライバにより車間距離設定スイッチ15dが操作されると、走行制御ユニット5は、後述する追従目標距離Dtrgを設定のための車間距離モード(例えば、「長」、「中」、「短」の何れかの車間距離モード)を設定する。このとき、走行制御ユニット5は、表示装置21上の車間距離モード表示用インジケータ21cを構成するセグメントの点灯数を変化させて現在の車間距離モードを表示する。
【0022】
そして、このようにセット車速Vset及び車間距離モードが設定されると、走行制御ユニット5は、ACCを実行する。
【0023】
このACCとして、走行制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4で先行車が検出されていない場合には、自車速Vをセット車速Vsetに収束させる定速走行制御を行う。また、走行制御ユニット5は、定速走行制御中にステレオ画像認識装置4にて先行車を認識した場合には、当該先行車との車間距離Dを追従目標距離Dtrgに収束させる追従走行制御(追従停止、追従発進も含む)を行う。
【0024】
すなわち、定速走行制御が開始されると、走行制御ユニット5は、自車速Vをセット車速Vsetに収束させるための目標加速度asetを演算する。
【0025】
具体的に説明すると、走行制御ユニット5は、例えば、自車速Vとセット車速Vsetとの車速偏差Vsrel(=Vset−V)を演算し、予め設定されたマップ等を参照することにより、車速偏差Vsrelと自車速Vとに応じた目標加速度asetを演算する。なお、例えば、車速偏差Vsrelが正値である場合、目標加速度asetは、自車速Vに応じた上限値の範囲内において、車速偏差Vsrelが大きくなるほど大きな値が設定される。一方、例えば、車速偏差Vsrelが負値である場合、目標加速度asetは、自車速Vに応じた下限値の範囲内において、速度偏差Vsrelが小さくなるほど小さな値が設定される(車速偏差Vsrelが負側に大きくなるほど減速側に大きな値が設定される)。
【0026】
また、定速走行制御から追従走行制御に移行すると、走行制御ユニット5は、上述の目標加速度asetに加え、車間距離Dを追従目標距離Dtrgに収束させるための目標加速度acarを演算する。
【0027】
具体的に説明すると、走行制御ユニット5には、例えば、車間距離のモード「短」及び「長」に対応する追従目標距離Dtrg設定用のマップが予め設定されて格納されている。そして、走行制御ユニット5は、モードが「短」或いは「長」である場合には該当するマップを用いて自車速Vに応じた追従目標距離Dtrgを設定し、モードが「中」の場合にはモードが「短」及び「長」のときにそれぞれ演算される値の中間値を追従目標距離Dtrgとして設定する。また、走行制御ユニット5は、例えば、追従目標距離Dtrgと車間距離Dとの距離偏差ΔD(=Dtrg−D)を演算するとともに、先行車速度Vfと自車速Vとの相対速度Vfrel(=Vf−V)を演算し、これらをパラメータとして予め設定されたマップ等を参照して目標加速度acarを演算する。
【0028】
そして、走行制御ユニット5は、定速走行制御時においては目標加速度asetを最終的な目標加速度aとして設定し、追従走行制御時においては目標加速度aset,acarのうちの何れか小値を最終的な目標加速度aとして設定する。
【0029】
目標加速度aを設定すると、走行制御ユニット5は、E/G_ECU7を通じて電子制御スロットル弁17の開度制御(エンジンの出力制御)を行うことにより、目標加速度aに応じた加速度を発生させる。さらに、走行制御ユニット5は、エンジンの出力制御のみでは十分な加速度(減速度)が得られないと判断した場合に、BRK_ECU8を通じてブレーキブースタ18からの出力液圧制御(自動ブレーキの介入制御)を行う。なお、低速走行制御時において、走行制御ユニット5は、表示装置21上のセット車速表示用インジケータ21aにセット車速Vsetを表示する。また、追従走行制御時において、走行制御ユニット5は、セット車速Vsetの表示に加え、先行車表示用インジケータ21b及び車間距離モード表示用インジケータ21cの表示を行う(図3(b)参照)。
【0030】
ここで、セット車速Vsetは、ACCの実行中においても適宜変更可能となっている。すなわち、例えば、ACCの実行中にセットスイッチ15bが操作される毎に、走行制御ユニット5は、セット車速Vsetを5Km/hずつ低速側にタップダウンさせる。或いは、例えば、ACCの実行中にセットスイッチ15bが連続的に操作されると、走行制御ユニット5は、電子制御スロットル弁17の開度制御等を通じた減速制御を行い、セットスイッチ15bが解放されたタイミングの自車速Vをセット車速Vsetとして設定する。一方、例えば、ACCの実行中にリジュームスイッチ15cが操作される毎に、走行制御ユニット5は、セット車速Vsetを5Km/hずつ高速側にタップアップさせる。或いは、例えば、ACCの実行中にリジュームスイッチ15cが連続的に操作されると、走行制御ユニット5は、電子制御スロットル弁17の開度制御等を通じた加速制御を行い、リジュームスイッチ15cが解放されたタイミングの自車速Vをセット車速Vsetとして設定する。
【0031】
さらに、ステレオ画像認識装置4によって制限速度Vlimが認識されると、走行制御ユニット5は、セット車速Vsetを制限速度Vlimに切換可能なスタンバイモードを一時的に(例えば、3秒間)実行する。すなわち、スタンバイモードに移行すると、走行制御ユニット5は、例えば、図3(c)に示すように、表示装置21上のセット車速表示用インジケータ21a及び制限速度表示用インジケータ21dを対比可能に点滅表示させ、ドライバに対し、セット車速Vsetの維持或いは制限速度Vlimへの変更の選択を促す。そして、走行制御ユニット5は、スタンバイモード中のドライバによる所定の操作状態に応じて、セット車速Vsetの維持或いは制限速度Vlimへの変更を選択的に行う。この場合、選択指示手段として新たなスイッチ類を設けることも可能であるが、構造を簡素化するため、例えば、選択指示手段をクルーズコントロール用スイッチ15で兼用することが望ましい。本実施形態において、具体的には、リジュームスイッチ15cが選択指示手段として兼用され、走行制御ユニット5は、例えば、スタンバイモード中にリジュームスイッチ15cが操作された場合には現在のセット車速Vsetを維持し、スタンバイモード中にリジュームスイッチ15cが操作されなかった場合にはセット車速Vsetを制限速度Vlimに変更する。
【0032】
このように、本実施形態において、走行制御ユニット5は、車速設定手段、定速走行制御手段、及び、車速切換手段としての各機能を実現する。
【0033】
次に、走行制御ユニット5で実行されるセット車速の設定制御について、図2のセット車速設定ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは設定時間毎に繰り返し実行されるもので、ルーチンがスタートすると、走行制御ユニット5は、先ず、ステップS101において、自車走行路の制限速度Vlimがステレオ画像認識装置4で認識されたか否かを調べる。
【0034】
そして、走行制御ユニット5は、ステップS101において、制限速度Vlimがステレオ画像認識装置4で認識されたと判定した場合にはステップS102に進み、制限速度Vlimが認識されていないと判定した場合にはステップS103に進む。
【0035】
ステップS101からステップS102に進むと、走行制御ユニット5は、認識した制限速度Vlimが現在のセット車速Vsetと一致しているか否かを調べる。
【0036】
そして、走行制御ユニット5は、ステップS102において、制限速度Vlimがセット車速Vsetと一致していると判定した場合にはステップS103に進み、一致していないと判定した場合にはステップS104に進む。
【0037】
ステップS101或いはステップS102からステップS103に進むと、走行制御ユニット5は、セット車速設定用のモードとして通常モードを実行し、クルーズコントロール用スイッチ15に対するドライバの操作入力に応じたセット車速Vsetの設定或いは変更等を適宜行う。すなわち、例えば、ドライバによりクルーズスイッチ15aがオンされた直後のACC実行前において、走行制御ユニット5は、セットスイッチ15bが操作された場合には当該操作時の自車速Vをセット車速Vsetとして設定し、或いは、リジュームスイッチ15cが操作された場合には前回設定されていたセット車速を今回のセット車速Vsetとして設定する。また、例えば、ACCの実行中において、走行制御ユニット5は、セットスイッチ15b或いはリジュームスイッチ15cが操作される毎にセット車速Vsetをタップダウン或いはタップアップさせ、セットスイッチ15b或いはリジュームスイッチ15cが連続的に操作された場合には自車両1の減速制御或いは加速制御を行い操作が解放されたタイミングの自車速Vをセット車速Vsetとして設定する。
【0038】
一方、ステップS102からステップS104に進むと、走行制御ユニット5は、セット車速設定用のモードを通常モードからスタンバイモードへと移行し、続くステップS105において、セット車速表示用インジケータ21a及び制限速度表示用インジケータ21dを通じてセット車速Vset及び制限速度Vlimを対比可能に点滅表示する(図3(c)参照)。
【0039】
ステップS105からステップS106に進むと、走行制御ユニット5は、スタンバイモードへと移行後の経過時間Tをカウントし、続くステップS107において、経過時間Tが設定時間Tth(例えば、Tth=3s)以上であるか否かを調べる。
【0040】
そして、ステップS107において、経過時間Tが設定時間Tth以上であると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS112に進み、セット車速Vsetの値を制限速度Vlimに切り換えた後、ルーチンを抜ける。
【0041】
一方、ステップS107において、経過時間Tが設定時間Tth未満であると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS108に進み、リジュームスイッチ15cに対するドライバの操作が行われたか否かを調べる。
【0042】
そして、ステップS108において、リジュームスイッチ15cに対する操作が行われたと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS111に進み、現在のセット車速Vsetを維持したまま、ルーチンを抜ける。
【0043】
一方、ステップS108において、リジュームスイッチ15cに対するドライバの操作が行われていないと判定すると、走行制御ユニット5は、ステップS109に進み、ステレオ画像認識装置4によって新たな制限速度Vlimが認識されたか否かを調べる。
【0044】
そして、走行制御ユニット5は、ステップ109において、新たな制限速度Vlimが認識されていないと判定した場合にはステップS105に戻り、新たな制限速度Vlimが認識されたと判定した場合にはステップS110に進み、スタンバイモードの実行時間を新たにカウントすべく(実行時間を延長すべく)、経過時間Tを「0」にリセットした後、ステップS105に戻る。
【0045】
このような実施形態によれば、ステレオ画像認識装置4でセット車速Vsetと異なる制限速度Vlimを検出したとき、セット車速Vsetの値を制限速度Vlimに切換可能なスタンバイモードを一時的に実行し、スタンバイモードの実行中はセット車速Vsetと制限速度Vlimとを対比可能に表示するとともに、ドライバの操作状態に応じてセット車速Vsetの維持或いは制限速度Vlimへの切換を選択的に行うことにより、道路上の制限速度が変化した場合のセット車速Vsetの変更を、ドライバの意思を尊重しつつ容易に行うことができる。
【0046】
すなわち、ステレオ画像認識装置4で制限速度Vlimを認識することにより、ドライバの監視負担等を軽減することができる。その上で、セット車速Vsetと異なる制限速度Vlimを検出した場合には、セット車速Vsetと制限速度Vlimとを対比可能に表示し、予め設定されたドライバの操作状態に応じてセット車速Vsetの維持或いは制限速度Vlimへの切換を選択的に行うことにより、セット車速Vsetの制限速度Vlimへの切換をドライバの意思に委ねることができる。しかも、セット車速Vsetを制限速度Vlimに切り換える場合において、ドライバは制限速度Vlimの値を操作入力等する必要がなく、セット車速Vsetの変更を容易に実現することができる。
【0047】
より具体的には、スタンバイモードの実行中に、リジュームスイッチ15cに対するドライバの操作が行われたときセット車速Vsetを維持し、リジュームスイッチ15cに対するドライバの操作が行われなかったときセット車速Vsetの値を制限速度Vlimに切り換えることにより、ドライバは、フィーリングに合致した簡便な操作を必要に応じて行うだけで、道路上の制限速度Vlimが変更された場合にも、自らの意思をセット車速Vsetに反映させることができる。
【0048】
次に、図5は本発明の第2の実施形態に係わり、図5は車速設定ルーチンを示すフローチャートである。なお、本実施形態は、セット車速Vsetの維持或いは制限速度Vlimへの切換を選択的に行う際のドライバの操作方法が、上述の第1の実施形態に対して主として異なる。その他、同様の点については、説明を省略する。
【0049】
本実施形態において、クルーズコントロール用スイッチ15のセットスイッチ(ダウンスイッチ)15b及びリジュームスイッチ(アップスイッチ)15cが選択指示手段として兼用される。
【0050】
走行制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4による制限速度Vlimの認識に伴いスタンバイモードに移行すると、表示装置21上のセット車速表示用インジケータ21a及び制限速度表示用インジケータ21dを対比可能に点滅表示させ、ドライバに対し、セット車速Vsetの維持或いは制限速度Vlimへの変更の選択を促す。そして、セット車速Vsetよりも高い制限速度Vlimが認識されたスタンバイモードの実行中において、走行制御ユニット5は、リジュームスイッチ(アップスイッチ)15cに対するドライバの操作が行われた場合にはセット車速Vsetを制限速度Vlimの値に切り換えた後通常モードへと移行し、セットスイッチ(ダウンスイッチ)15bに対するドライバの操作が行われた場合にはセット車速Vsetを維持したまま通常モードへと移行する。一方、セット車速Vsetよりも低い制限速度Vlimが認識されたスタンバイモードの実行中において、走行制御ユニット5は、リジュームスイッチ(アップスイッチ)15cに対するドライバの操作が行われた場合にはセット車速Vsetを維持したまま通常モードへと移行し、セットスイッチ(ダウンスイッチ)15bに対するドライバの操作が行われた場合にはセット車速Vsetを制限速度Vlimの値に切り換えた後通常モードへと移行する。なお、スタンバイモードに移行した後、リジュームスイッチ(アップスイッチ)15c及びセットスイッチ(ダウンスイッチ)15bへの操作が行われないまま設定時間(例えば、3秒)を経過した場合、走行制御ユニット5は、セット車速Vsetを維持したまま通常モードへと移行する。
【0051】
次に、走行制御ユニット5で実行されるセット車速の設定制御について、図5のセット車速設定ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは設定時間毎に繰り返し実行されるもので、ルーチンがスタートすると、走行制御ユニット5は、ステップS201からステップS206において、上述の第1の実施形態で説明したステップS101からステップS106と同様の処理を行う。
【0052】
ステップS206からステップS207に進むと、走行制御ユニット5は、スタンバイモードへと移行後の経過時間Tが設定時間Tth(例えば、Tth=3s)以上であるか否かを調べる。
【0053】
そして、ステップS207において、経過時間Tが設定時間Tth以上であると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS213に進み、現在のセット車速Vsetを維持したまま、ルーチンを抜ける。
【0054】
一方、ステップS207において、経過時間Tが設定時間Tth未満であると判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS208に進み、リジュームスイッチ(アップスイッチ)15c或いはセットスイッチ(ダウンスイッチ)15bに対するドライバの操作が行われたか否かを調べる。
【0055】
そして、ステップS208において、リジュームスイッチ15c或いはセットスイッチ15bに対する操作が行われたと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS211に進み、当該操作が制限速度Vlim側の操作であるか否かを調べる。
【0056】
すなわち、走行制御ユニット5は、ステップS211において、セット車速Vsetよりも高い制限速度Vlimが認識されている場合においてリジュームスイッチ(アップスイッチ)15cが操作されたか否か、或いは、セットスイッチVsetよりも低い制限速度Vlimが認識されている場合においてセットスイッチ(ダウンスイッチ)15bが操作されたか否かを調べる。
【0057】
そして、ステップS211において、制限速度Vlim側の操作が行われたと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS212に進み、セット車速Vsetの値を制限速度Vlimに変更した後、ルーチンを抜ける。
【0058】
一方、ステップS211において、制限速度Vlim側の操作が行われていないと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS213に進み、現在のセット車速Vsetを維持したまま、ルーチンを抜ける。なお、ステップS211からステップS213に進んだ場合には、操作されたスイッチがリジュームスイッチ(アップスイッチ)15cであるか或いはセットスイッチ(ダウンスイッチ)15bであるかに応じて、セット車速Vsetをアップアップ或いはタップダウンさせることも可能である。
【0059】
また、ステップS208において、リジュームスイッチ15c及びセットスイッチ15bに対する操作が行われていないと判定した場合、走行制御ユニット5は、ステップS209に進み、ステレオ画像認識装置4によって新たな制限速度Vlimが認識されたか否かを調べる。
【0060】
そして、走行制御ユニット5は、ステップ209において、新たな制限速度Vlimが認識されていないと判定した場合にはステップS205に戻り、新たな制限速度Vlimが認識されたと判定した場合にはステップS210に進み、スタンバイモードの実行時間を新たにカウントすべく(実行時間を延長すべく)、経過時間Tを「0」にリセットした後、ステップS205に戻る。
【0061】
このような実施形態によれば、上述の第1の実施形態と略同様の効果に加え、セット車速Vsetの維持及び制限速度Vlimへの切換の何れの場合にもドライバの操作を要求することにより、セット車速Vsetの切り換えの可否に対してドライバの意思をより明確に反映させることができる。この場合において、セット車速Vsetの切り換えの可否の指示は、アップスイッチ及びダウンスイッチを通じて行うものであるため、ドライバは直感的な操作によって意思表示を行うことが可能となる。
【0062】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
【符号の説明】
【0063】
1 … 車両(自車両)
2 … 運転支援装置
2a … ステレオカメラアセンブリ
3 … ステレオカメラ(撮像手段)
4 … ステレオ画像認識装置(制限速度認識手段)
5 … 走行制御ユニット(車速設定手段、定速走行制御手段、車速切換手段)
15 … クルーズコントロール用スイッチ(操作入力手段)
15a … クルーズスイッチ
15b … セットスイッチ((ダウンスイッチ)選択指示手段)
15c … リジュームスイッチ((アップスイッチ)選択指示手段)
15d … 車間距離設定スイッチ
17 … 電子制御スロットル弁
18 … ブレーキブースタ
20 … ステアリング
21 … クルーズコントロール用表示装置(表示手段)
21a … セット車速表示用インジケータ
21b … 先行車表示用インジケータ
21c … 車間距離モード表示用インジケータ
21d … 制限速度表示用インジケータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作入力手段に対するドライバの操作状態に応じてセット車速を設定する車速設定手段と、
前記セット車速を目標車速として定速走行制御を行う定速走行制御手段と、
自車両前方を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像に基づいて道路上の標識に表示された制限速度を認識する制限速度認識手段と、
前記制限速度認識手段で前記セット車速と異なる制限速度を認識したとき、前記セット車速を前記制限速度に切換可能なスタンバイモードを一時的に実行して、前記セット車速と前記制限速度とを表示手段に対比可能に表示するとともに、選択指示手段に対するドライバの操作状態に応じて前記セット車速の維持或いは前記制限速度への切換を選択的に行う車速切換手段と、を備えたことを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記操作入力手段は選択指示手段を兼用することを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記操作入力手段は、現在のセット車速を前回のセット車速に戻すためのリジュームスイッチを備え、
前記車速切換手段は、前記スタンバイモードの実行中に、前記リジュームスイッチに対するドライバの操作が行われたとき前記セット車速を維持し、前記リジュームスイッチに対するドライバの操作が行われなかったとき前記セット車速を前記制限速度に切り換えることを特徴とする請求項2記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記操作入力手段は、現在のセット車速を高速側に変更するアップスイッチと、現在のセット車速を低速側に変更するダウンスイッチと、を備え、
前記車速切換手段は、前記セット車速よりも高い前記制限速度が認識された前記スタンバイモードの実行中に、前記アップスイッチに対するドライバの操作が行われたとき前記ゼット車速を前記制限速度に切り換え、前記ダウンスイッチに対するドライバの操作が行われたとき前記セット車速を維持し、
前記セット車速よりも低い前記制限速度が認識された前記スタンバイモードの実行中に、前記アップシフトスイッチに対するドライバの操作が行われたとき前記セット車速を維持し、戦記ダウンスイッチに対するドライバの操作が行われたとき前記セット車速を前記制限速度に切り換えることを特徴とする請求項2記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
前記車速切換手段は、前記スタンバイモードの実行中に、前記アップスイッチ及び前記ダウンスイッチに対するドライバの操作が行われなかったとき前記セット車速を維持することを特徴とする請求項4記載の車両用運転支援装置。
【請求項6】
前記車速切換手段は、前記スタンバイモードの実行中に、前記制限速度認識手段において新たな制限速度が認識されたとき、当該スタンバイモードの実行時間を延長することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車両用運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206594(P2012−206594A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73351(P2011−73351)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】