説明

車両用防幻装置

【課題】対向車両のヘッドランプの照射光等により運転者が幻惑されるのを、簡易な構造によって防止すると共に、運転者の前方視界を十分に確保すること。
【解決手段】車両のフロントウインドシールドに取り付けられ、第1のモータによって回動されるワイパーアーム本体部を備えたワイパー装置に附設される、車両用防幻装置であって、前記ワイパーアーム本体部の回動軸よりも先端側の箇所を回動軸として、第2のモータにより回動されるサブアームと、前記サブアームに取り付けられた遮光手段と、少なくとも前記第2のモータの回転角を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする、車両用防幻装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントウインドシールドに取り付けられ、対向車両のヘッドランプ等により運転者が幻惑されるのを防止する車両用防幻装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向車両のヘッドランプの照射光等によって運転者が幻惑されるのを防止するための装置について研究が進められている。
【0003】
特許文献1には、印加電圧に応じて透過率が変化するフィルム状の液晶シートを挟持した調光ガラスをフロントガラスに取り付け、太陽光や対向車のヘッドランプの照射光等を遮光するために、液晶シートの透過率を部分的に変更するように制御する車両用遮光装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−076396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の装置では、広範囲に亘って液晶シートを配置しなければならず、また、通常時における光透過性を確保するためのコストが増大するという問題が生じる。
【0006】
すなわち、対向車両のヘッドランプ位置は、自車両と対向車両の位置関係に応じて変化するものであり、多様な方向から入射するヘッドランプの照射光に対応しようとすると、かなりの広範囲に亘って液晶シートを配置しなければならない。そして、部分的に液晶シートの透過率を変化させるための回路構造が必要であり、コストを更に増大させることになる。
【0007】
また、防幻機能を発揮する必要がない場面(昼間等)においては、液晶シートの光透過性を確保するのが、安全上、及び法規上求められている。ところが、液晶シートのような遮光手段においては、低温時に光透過性が低下するという性質を有する場合があり、光透過性を確保するためには、液晶シート上にITO薄膜によるヒーター機能を追加したり、冗長系の安全装置を周辺回路として追加したりする必要がある。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、対向車両のヘッドランプの照射光等により運転者が幻惑されるのを、簡易な構造によって防止すると共に、運転者の前方視界を十分に確保することが可能な車両用防幻装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
車両のフロントウインドシールドに取り付けられ、第1のモータによって回動されるワイパーアーム本体部を備えたワイパー装置に附設される、車両用防幻装置であって、
前記ワイパーアーム本体部の回動軸よりも先端側の箇所を回動軸として、第2のモータにより回動されるサブアームと、
前記サブアームに取り付けられた遮光手段と、
少なくとも前記第2のモータの回転角を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする、
車両用防幻装置である。
【0010】
この本発明の第1の態様によれば、対向車両のヘッドランプの照射光等により運転者が幻惑されるのを、簡易な構造によって防止すると共に、運転者の前方視界を十分に確保することができる。
【0011】
本発明の第1の態様において、
車両前方を撮像する撮像手段と、
該撮像手段の撮像画像に基づき車両前方から入射する所定強度以上の入射光の入射方向を算出する画像解析手段と、を備え、
前記制御手段は、前記画像解析手段により算出された所定強度以上の入射光の入射方向に基づいて前記第2のモータの回転角を決定する手段であるものとすると、好適である。
【0012】
本発明の第2の態様は、
フロントウインドシールドにおける運転者側のピラー近傍の所定領域に取り付けられ、光透過性を変更可能な遮光手段と、
運転者の顔面を撮像可能な撮像手段と、を備え、
前記撮像手段により撮像された運転者の顔面部分の輝度が高い場合に、前記遮光手段の光透過性を低下させるように、前記遮光手段を制御する制御手段と、
を備える車両用防幻装置である。
【0013】
この本発明の第2の態様によれば、対向車両のヘッドランプの照射光等により運転者が幻惑されるのを、簡易な構造によって防止すると共に、運転者の前方視界を十分に確保することができる。
【0014】
本発明の第2の態様において、
ヘッドレストにおける車両側面側の位置に形成された突出部を備え、
前記所定領域は、運転者が通常の頭位置から前記突出部に接する位置まで頭を移動させた幻惑回避用の頭位置から見て、対向車両が存在しうる領域を略カバーする領域であるものとすると、好適である。
【0015】
本発明の第3の態様は、
フロントウインドシールドにおける運転者側のピラー近傍の所定領域に取り付けられた遮光手段と、
ヘッドレストにおける車両側面側の位置に形成された突出部と、
を備える車両用防幻装置であって、
前記所定領域は、運転者が通常の頭位置から前記突出部に接する位置まで頭を移動させた幻惑回避用の頭位置から見て、対向車両が存在しうる領域を略カバーする領域であることを特徴とする、
車両用防幻装置である。
【0016】
この本発明の第3の態様によれば、対向車両のヘッドランプの照射光等により運転者が幻惑されるのを、簡易な構造によって防止すると共に、運転者の前方視界を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対向車両のヘッドランプの照射光等により運転者が幻惑されるのを、簡易な構造によって防止すると共に、運転者の前方視界を十分に確保することが可能な車両用防幻装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例に係るワイパー装置1の構成部材を示す図である。
【図2】ワイパー装置1における制御系構成要素を示す図である。
【図3】ワイパー通常作動時におけるワイパーアーム本体部2とサブアーム5の位置関係を示す図である。
【図4】車両と入射光の位置関係を示す図である。
【図5】対向車両との車間距離が異なる場面におけるワイパー装置1の状態を示す図である。
【図6】対向車両との車間距離が異なる場面におけるワイパー装置1の状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る車両用防幻装置100の主要な構成部材を示す図である。
【図8】車両用防幻装置100における制御系構成要素を示す図である。
【図9】ヘッドレストに突出部106が形成された様子を示す外観図である。
【図10】突出部106が形成されたヘッドレストと運転者の頭部を側面から見た図である。
【図11】突出部106が形成されたヘッドレストと運転者の頭部を車両の天井から見た図である。
【図12】運転者が通常の頭位置で運転している場合と、幻惑回避用頭位置で運転している場合の、対向車両の見える位置と液晶フィルム101の関係を示す図である。
【図13】本装置の設計段階において、液晶フィルム101が取り付けられる所定領域を決定するための要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0020】
<第1実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施例に係る車両用防幻装置について説明する。本実施例に係る車両用防幻装置は、車両のフロントウインドシールドに取り付けられたワイパー装置に附設される装置である。以下の実施例では、車両用防幻装置を含むワイパー装置1として説明する。
【0021】
(構成部材)
図1は、本発明の第1実施例に係るワイパー装置1の構成部材を示す図である。ワイパー装置1は、主要な構成として、ワイパーアーム本体部2と、ブレード3と、主モータ4と、サブアーム5と、副モータ6と、遮光板7と、制御装置10と、を備える。
【0022】
ワイパーアーム本体部2は、アームヘッド、リテーナ、アームピース等の部材を有しており、車両のフロントウインドシールドの前方面に沿って回動可能に支持されている。ワイパーアーム本体部2は、一定の力でフロントウインドシールドに押しつけられるように図示しない構造体によって付勢されており、これが回動することによって、ブレード3がフロントウインドシールド上の雨粒を除去する。
【0023】
ワイパーアーム本体部2は、主モータ4の出力軸を回動軸2Aとして回動するように駆動される。なお、図1では、主モータ4の回転軸がワイパーアーム本体部2の回動軸2Aと一致するかのように記載したが、主モータ4の回転駆動力がギア機構等を介してワイパーアーム本体部2に伝達されるような構成であってもよい。
【0024】
サブアーム5は、ワイパーアーム本体部2の回動軸2Aよりも先端側の箇所を回動軸5Aとし、車両のフロントウインドシールドの前方面に沿って回動可能に支持されている。そして、副モータ6によって回動軸2Aを中心に回動するように駆動される。なお、図1では、副モータ6の回転軸がサブアーム5の回動軸5Aと一致するかのように記載したが、副モータ6の回転駆動力がギア機構等を介してサブアーム5に伝達されるような構成であってもよい。
【0025】
サブアーム5には、遮光板7が取り付けられている。遮光板7は、例えばフロントウインドシールドに比して光透過性の低い部材(スモークガラス等)で形成された板状又はフィルム状の部材である。また、これに限らず、光透過性を任意に変更可能な液晶部材等が用いられても構わない。
【0026】
(制御系)
図2は、ワイパー装置1における制御系構成要素を示す図である。制御装置10には、コンビネーションスイッチ20、車載カメラ21、及びレインセンサ22が接続される。
【0027】
コンビネーションスイッチ20は、車両のステアリングホイール脇に取り付けられ、運転者によって操作される多機能スイッチであり、運転者の操作に応じて、ワイパーの作動指示や方向指示器の作動指示、ロービームとハイビームの切り替え指示等を、制御装置10その他の機器に出力する。
【0028】
車載カメラ21は、例えば、ウインドシールド中央上部に配設されたCCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を利用したカメラであり、車両前方を撮像領域とし、数[ms]毎に繰り返し撮像を行なう。車載カメラ21の撮像画像は、例えばNTSC(National Television Standards Committee)等のインターレース方式によって生成される画像信号として、定期的に(例えば、撮像フレーム毎に)制御装置10に送信される。
【0029】
レインセンサ22は、フロントウインドシールド等に取り付けられ、雨滴量を検出して制御装置10に出力する。
【0030】
制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピュータであり、その他、HDD(Hard Disc Drive)やDVD−R(Digital Versatile Disk-Recordable)ドライブ、CD−R(Compact Disc-Recordable)ドライブ、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の記憶装置やI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。記憶装置には、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。また、制御装置10は、係るプログラムをCPUが実行することにより機能する主要な機能ブロックとして、ワイパー通常作動時制御部11と、防幻機能作動時制御部12と、画像解析部13と、を備える。なお、これらの機能は、本実施例のように一体の制御装置によって実現されるのではなく、別体の複数の制御装置によって実現されてもよい。
【0031】
ワイパー通常作動時制御部11は、コンビネーションスイッチ20からのスイッチ位置信号(OFF、INT、LO、HI、AUTO等)がOFFでない場合に機能し、スイッチ位置信号の種類に応じた頻度でワイパーアーム本体部2が反復的に回動するように、主モータ4を駆動する。なお、スイッチ位置信号がAUTOである場合は、レインセンサ22から入力される信号に応じた頻度でワイパーアーム本体部2が反復的に回動するように、主モータ4を駆動する。ワイパー通常作動時制御部11が機能している間は、副モータ6の回転角は、サブアーム5が運転者から見てワイパーアーム本体部2に重畳する位置となるように固定される。この結果、サブアーム5及び遮光板7はワイパーアーム本体部2と一体に回動することになり、運転者の視界を妨げるのを抑制することができる。この結果、運転者の前方視界を十分に確保することができる。
【0032】
このような制御を行うのは、ワイパー通常作動時、すなわち雨天時にはフロントウインドシールド上の雨粒によって入射光が拡散するため、後述する防幻機能を発揮する効果が薄いためである。図3は、ワイパー通常作動時におけるワイパーアーム本体部2とサブアーム5の位置関係を示す図である。
【0033】
一方、防幻機能作動時制御部12は、コンビネーションスイッチ20からのスイッチ位置信号がOFFである場合に機能し、対向車両のヘッドランプの照射光等によって運転者が幻惑されるのを遮光板7が抑制するように、副モータ6(及び必要な場合は主モータ4)を駆動する。
【0034】
画像解析部13は、防幻機能作動時制御部12の機能を補助するために、車載カメラ21の撮像画像に基づき、車両前方から入射する所定強度以上の入射光の入射方向θを算出する。具体的には、例えば、車載カメラ21の撮像画像における輝度が閾値以上の高輝度画素を抽出し、所定面積内に所定数以上の高輝度画素が含まれる領域を探索して、係る領域の中心点を、所定強度以上の入射光の光源であると推定する。そして、予めROM等に格納された、光源の画像上の位置と入射方向とが対応づけられたマップを用いて、所定強度以上の入射光の入射方向θを算出する。図4は、車両と入射光の位置関係を示す図である。なお、図中φは、車載カメラ21の水平視野角である。
【0035】
そして、防幻機能作動時制御部12は、画像解析部13が算出した所定強度以上の入射光の入射方向θに基づいて、光源と運転者の頭位置を結ぶ光の経路上に遮光板7が位置するように、副モータ6(及び必要な場合は主モータ4)の回転角を決定する。係る回転角決定のための演算は、適切な関数を用いてもよいし、予め入射方向θと副モータ6及び主モータ4の回転角とが対応付けられたマップをROM等に格納しておき、これを用いてもよい。
【0036】
図5及び図6は、対向車両との車間距離が異なる場面におけるワイパー装置1の状態を示す図である。図5に示した場面の方が対向車両との車間距離が小さく、従ってサブアーム5及び遮光板7が下側に位置している。
【0037】
以上説明した本実施例の車両用防幻装置によれば、サブアーム5、副モータ6、遮光板7といった簡易な構成によって、車両前方からの強い光により運転者が幻惑されるのを防止することができる。また、不要な時にはサブアーム5がワイパーアーム本体部2と一体に移動するようにワイパーアーム本体部2の背後(又は手前側)に格納することができるため、運転者の前方視界を妨げるのを抑制することができる。
【0038】
すなわち、対向車両のヘッドランプの照射光等により運転者が幻惑されるのを、簡易な構造によって防止すると共に、運転者の前方視界を十分に確保することができる。
【0039】
また、車載カメラ21の撮像画像を解析した入射光の入射方向θを算出し、これに基づいて動的に遮光板7の位置を変化させるため、遮光板7のサイズを余り大きくしないように構成することができる。これによって、装置のコスト増を抑制すると共に、運転者の前方視界を更に十分に確保することができる。
【0040】
<第2実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第2実施例に係る車両用防幻装置について説明する。
【0041】
(構成部材)
図7は、本発明の第2実施例に係る車両用防幻装置100の主要な構成部材を示す図である。車両用防幻装置100は、主要な構成として、液晶フィルム101と、車載カメラ102と、制御装置103と、を備える。
【0042】
液晶フィルム101は、電圧印加によって光透過性を変更可能なフィルム状の部材である。液晶フィルム101は、その全域に亘って一様に光透過性を変更するものであってもよいし、ブロック状に分割された各部分のそれぞれが任意に光透過性を変更可能なものであってもよい。
【0043】
また、液晶フィルム101は、車両が走行する車線を運転者が視認するための領域Aを避けるように、フロントウインドシールドにおける運転者側のピラー104近傍の所定領域に取り付けられる。
【0044】
車載カメラ102は、例えばステアリングボス部に埋め込まれたCCDやCMOS等の撮像素子を利用したカメラであり、運転者の頭部顔面を撮像可能となるように光軸等が設定されている。車載カメラ102は、数[ms]毎に繰り返し撮像を行ない、車載カメラ101の撮像画像は、例えばNTSC等のインターレース方式によって生成される画像信号として、定期的に(例えば、撮像フレーム毎に)制御装置103に送信される。
【0045】
制御装置103は、例えば、第1実施例における制御装置10と同様のハードウエア構成を有するマイクロコンピュータである。制御装置103は、運転者の頭部顔面を撮像した撮像画像の輝度が基準よりも高い場合に、液晶フィルム101の光透過性を低下させるように液晶フィルム101を制御する。
【0046】
液晶フィルム101が部分的に光透過性を変更可能なものであれば、撮像画像における輝度が高い部分の位置に基づいて、部分的に液晶フィルム101の光透過性を低下させる。
【0047】
この場合、後述する運転者の幻惑回避用頭位置、液晶フィルム101、突出部106の位置関係に基づいて、液晶フィルム101の光透過性を低下させる部分を決定する。
【0048】
更にこの場合、部分的に液晶フィルム101の光透過性を低下させた結果、撮像画像における輝度が低下した部分と、実際に運転者の目が撮像された部分にズレが生じている場合は、このズレを解消するように、液晶フィルム101の光透過性を低下させる部分を修正すると、好適である。
【0049】
図8は、車両用防幻装置100における制御系構成要素を示す図である。車載カメラ102や制御装置103は、システムスイッチ105のスイッチ操作によって作動する。
【0050】
これによって、運転者が対向車両のヘッドランプの照射光等によって幻惑されるのを防止することができる。また、液晶フィルム101は、車両が走行する車線を運転者が視認するための領域Aを避けるように取り付けられるため、環境等によって液晶フィルム101の光透過性が低下した場合であっても、運転者の前方視界を十分に確保することができる。
【0051】
更に、車両用防幻装置100は、運転者が、対向車両のヘッドランプ等が眩しいと感じたときに、通常の頭位置から車両側面側(右ハンドル車両であれば右側、左ハンドル車両であれば左側)の幻惑回避用頭位置に頭を移動させることにより、両目を防幻することができるようにしている。車両用防幻装置100は、このための構成要素として、ヘッドレスト107における車両側面側(右ハンドル車両であれば右側、左ハンドル車両であれば左側)の位置に形成された突出部106を備える。図9は、ヘッドレスト107に突出部106が形成された様子を示す外観図である。また、図10は、突出部106が形成されたヘッドレスト107と運転者の頭部を側面から見た図である。また、図11は、突出部106が形成されたヘッドレスト107と運転者の頭部を車両の天井から見た図である。図11に示すように、運転者が、対向車両のヘッドランプ等が眩しいと感じたときに幻惑回避用頭位置に頭を移動させると、突出部106に頭が接することになる。
【0052】
そして、図12は、運転者が通常の頭位置で運転している場合と、幻惑回避用頭位置で運転している場合の、対向車両の見える位置と液晶フィルム101の関係を示す図である。図示するように、液晶フィルム101が取り付けられる所定領域は、運転者が幻惑回避用の頭位置で運転している場合に、対向車両が存在しうる領域を略カバーする領域である。なお、図12において距離Lは、運転者が通常、対向車両のヘッドランプを眩しいと感じる距離であり、実験等によって得ることができる。
【0053】
このような関係で液晶フィルム101及び突出部106が形成されていることにより、運転者は、通常の運転時には液晶フィルム101の存在しない領域を介して前方を十分に視認することができ、対向車両のヘッドランプ等が眩しいと感じた時には頭を幻惑回避用の頭位置に移動させて運転を行うことができる。
【0054】
図13は、本装置の設計段階において、液晶フィルム101が取り付けられる所定領域を決定するための要素を示す図である。図中、液晶フィルム101の横幅lは、図12に示した距離Lに基づいて決定される。また、B点及びC点の位置も、実験等により得られる、運転者が眩しいと感じる対向車両の位置等に基づいて決定される。
【0055】
以上説明した本実施例の車両用防幻装置100によれば、対向車両のヘッドランプの照射光等により運転者が幻惑されるのを、簡易な構造によって防止すると共に、運転者の前方視界を十分に確保することができる。
【0056】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0057】
例えば、第1実施例の車両用防幻装置は、車載カメラ21を備えないものとしてよい。この場合、制御装置10は、防幻機能作動時において、運転者の通常の頭位置と対向車両が存在しうる位置とを結ぶ位置に遮光板7が位置するように、副モータ6及び主モータ4の回転角を決定する。
【0058】
第2実施例の車両用防幻装置100は、車載カメラ102を備えないものとしてもよい。この場合、液晶フィルム101に代えて、単なるスモークガラス等の遮光手段が所定領域に取り付けられているものとしてよい。すなわち、運転者は、対向車両のヘッドランプ等が眩しいと感じた場合には、突出部106に頭を接することにより、車両のピラー近傍に取り付けられた遮光手段を介して対向車両の存在する領域を視認することができる。もとより、遮光手段は、車両が走行する車線を運転者が視認するための領域Aを避けるように取り付けられるため、通常の運転時における前方視界を十分に確保することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 ワイパー装置
2 ワイパーアーム本体部
2A、5A 回動軸
3 ブレード
4 主モータ
5 サブアーム
6 副モータ
7 遮光板
10 制御装置
11 ワイパー通常作動時制御部
12 防幻機能作動時制御部
13 画像解析部
20 コンビネーションスイッチ
21 車載カメラ
22 レインセンサ
100 車両用防幻装置
101 液晶フィルム
102 車載カメラ
103 制御装置
104 ピラー
105 システムスイッチ
106 突出部
107 ヘッドレスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントウインドシールドに取り付けられ、第1のモータによって回動されるワイパーアーム本体部を備えたワイパー装置に附設される、車両用防幻装置であって、
前記ワイパーアーム本体部の回動軸よりも先端側の箇所を回動軸として、第2のモータにより回動されるサブアームと、
前記サブアームに取り付けられた遮光手段と、
少なくとも前記第2のモータの回転角を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする、
車両用防幻装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用防幻装置であって、
車両前方を撮像する撮像手段と、
該撮像手段の撮像画像に基づき車両前方から入射する所定強度以上の入射光の入射方向を算出する画像解析手段と、を備え、
前記制御手段は、前記画像解析手段により算出された所定強度以上の入射光の入射方向に基づいて前記第2のモータの回転角を決定する手段である、
車両用防幻装置。
【請求項3】
フロントウインドシールドにおける運転者側のピラー近傍の所定領域に取り付けられ、光透過性を変更可能な遮光手段と、
運転者の顔面を撮像可能な撮像手段と、を備え、
前記撮像手段により撮像された運転者の顔面部分の輝度が高い場合に、前記遮光手段の光透過性を低下させるように、前記遮光手段を制御する制御手段と、
を備える車両用防幻装置。
【請求項4】
ヘッドレストにおける車両側面側の位置に形成された突出部を備え、
前記所定領域は、運転者が通常の頭位置から前記突出部に接する位置まで頭を移動させた幻惑回避用の頭位置から見て、対向車両が存在しうる領域を略カバーする領域である、
請求項3に記載の車両用防幻装置。
【請求項5】
フロントウインドシールドにおける運転者側のピラー近傍の所定領域に取り付けられた遮光手段と、
ヘッドレストにおける車両側面側の位置に形成された突出部と、
を備える車両用防幻装置であって、
前記所定領域は、運転者が通常の頭位置から前記突出部に接する位置まで頭を移動させた幻惑回避用の頭位置から見て、対向車両が存在しうる領域を略カバーする領域であることを特徴とする、
車両用防幻装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156976(P2011−156976A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20626(P2010−20626)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】