説明

車両用電動ラッチ装置

【課題】車室内空間を構成するサイドドアの内面の意匠性を確保しつつ、降車時においてはサイドドアを内側から簡単に開けることができる車両用電動ラッチ装置を提供する。
【解決手段】ドア本体12の車室内側の側面を覆うように設けられてサイドドア11が閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装パネル13に対して可動部材21をサイドドア11の開閉方向へ回動可能に設けた。そしてこの可動部材21も内装パネル13と共に車室内の意匠の一部を構成するようにした。車両のサイドドア11を内側から開ける際には、サイドドア11が閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装部材として機能する可動部材21を押圧するだけでよい。即ち、可動部材21への押圧力がそのままサイドドア11を内側から開ける際の操作力としても作用することから、ユーザは可動部材21を押圧しつつそのままサイドドア11を押し開けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータの作動を通じて車両のサイドドアの施錠及び解錠を行う車両用電動ラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のサイドドアには、当該ドアを閉鎖状態に保つためのラッチ機構が搭載されている。このラッチ機構は、車体側に設けられるラッチ(掛け金)と当該ドア側に設けられてラッチにかみ合うストライカ(掛止軸)とを備えて構成され、これらのかみ合いを通じてサイドドアを閉鎖状態に保持する。サイドドアが施錠されている状態において、当該ドアのインサイドドアハンドルあるいはアウトサイドドアハンドルが操作されると、ラッチ開閉用のロッド又はケーブル等を通じて、ラッチとストライカとのかみ合いが解除されて、ドアを開けることが可能となる。
【0003】
一方、近年における車両の電子化に伴い、例えば特許文献1に示されるように、モータ等の電動アクチュエータの作動を通じてサイドドアを解錠する電動ラッチ装置も多く提案されている。この電動ラッチ装置は、インサイドドアハンドルあるいはアウトサイドドアハンドルの操作を、これらに設けられるスイッチ等を通じて検出し、この検出結果に基づき前記アクチュエータを作動させることによりラッチとストライカとのかみ合いを解除する。こうした電動ラッチ装置によれば、ドアハンドルとラッチとの間を機械的に連結するラッチ開閉用のロッド又はケーブル等を省略することもできる。
【特許文献1】特開2003−20844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、乗車時の快適性あるいは高級感等を確保する観点から、車両の室内には高い意匠性が要求されている。例えば、車室内の前部に設けられるインストルメントパネルとフロントドアの内装パネルとの面一化を図ることによりこれらが曲面でつながっているような一体感を持たせたり、内装パネルに木目調の内装部材を取り付けて加飾することにより高級感を持たせたりすることはよく行われている。このように、様々なかたちで車室内の空間演出が行われている実状にあって、サイドドアの内面の意匠性の確保は、ますます重要なものとなってきている。
【0005】
ところが、前述した機械式及び電動式のいずれのものであれ、サイドドアの内面(車室内側の側面)にはドアを解錠するべく操作されるインサイドドアハンドルを設ける必要がある。このため、サイドドアの内面において、例えば前記インサイドドアハンドルと内装パネルの境界部分等には凹凸が形成されやすく、これによりサイドドアの面一性、あるいは車室空間の一体感が損なわれるおそれがある。すなわち、インサイドドアハンドルは、車室内の意匠性を確保する上での阻害要因となっていた。
【0006】
また、近年では、車両を使用するに際して、ユーザの利便性を追求する傾向が依然としてあるところ、これはドアの開閉操作についても例外ではない。この点、前記従来のラッチ装置にあっては、機械式及び電動式のいずれのものであれ、サイドドアを内側から開ける際には、インサイドドアハンドルを操作した上で、当該ドアを押し開けるといったいわば二段階の操作を行う必要がある。こうした操作態様は、ユーザによっては煩わしく感じるおそれがある。
【0007】
このように、近年、サイドドアにおいて、特にその内側の意匠性、及び降車時のサイドドアの操作性の双方をいかにして両立させるかということが重要な課題となりつつあるところ、この課題を解決するための具体的な手段は何ら提案されていないのが実状である。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、車室内空間を構成するサイドドアの内面の意匠性を確保しつつ、降車時においてはサイドドアを内側から簡単に開けることができる車両用電動ドアラッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、車両の上下方向へ延びる所定の軸を中心として開閉する車両のサイドドアを閉鎖状態に施錠するドアラッチ機構と、前記サイドドアを内側から開けるというユーザの意思を検出しその検出信号を出力する検出手段と、前記検出手段から前記検出信号が入力されたときに電動アクチュエータの作動を通じて前記ドアラッチ機構の施錠状態を解除する制御手段と、を備えてなる車両用電動ラッチ装置において、前記サイドドアは、ドア本体と、当該ドア本体の車室内側の部分に取り付けられて当該サイドドアが閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装部材と、を備えるとともに、当該内装部材の少なくとも一部分は前記サイドドアの開閉方向へ変位する可動部材として構成し、前記検出手段は、前記ドア本体と前記内装部材の一部分である前記可動部材との間に配設するとともに、当該可動部材が前記サイドドアの開方向へ変位した際にはこれを、前記サイドドアを内側から開けるというユーザの意思として検出しその検出信号を出力することをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、車両のサイドドアを内側から開ける際には、当該サイドドアが閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装部材の少なくとも一部分である可動部材を押圧するだけでよい。すなわち、可動部材の押圧操作を通じて当該可動部材が前記サイドドアの開方向へ変位すると、これがサイドドアを内側から開けるというユーザの意思として検出手段により検出される。制御手段は、検出手段からの検出信号を受けて、電動アクチュエータを作動させることにより、サイドドアを閉鎖状態に施錠するドアラッチ機構の施錠状態を解除する。これにより、サイドドアを内側から開けることができるようになる。可動部材への押圧力がそのままサイドドアを内側から開ける際の操作力としても作用することから、ユーザは可動部材を押圧しつつそのままサイドドアを押し開けることができる。このように、降車時において、サイドドアを内側から簡単に開けることができる。また、可動部材は内装部材の少なくとも一部分を構成すること、及び検出手段はドア本体と可動部材との間に配設されて車室内に露出しないことから、サイドドアの内面の意匠性が損なわれることもない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用電動ラッチ装置において、前記内装部材は、前記ドア本体の車室内側の側面を覆うように設けられて前記サイドドアが閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装パネルであって、前記可動部材は前記内装パネルに別部材として取り付けられて前記サイドドアが閉鎖状態にあるときには前記内装パネルと共に車室内の意匠の一部分を構成する他の内装部材を利用して構成されてなることをその要旨とする。
【0012】
車両の仕様等に応じて、サイドドアの内側を覆う内装パネルに対して各種の内装部材を別部材として取り付けて加飾し、これにより車室内の意匠性にバリエーションを持たせることは従来よく行われている。こうした各種の独立した内装部材を利用して前記可動部材を構成することにより、当該他の内装部材に付加価値が生まれる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用電動ラッチ装置において、前記検出手段は、前記可動部材が前記サイドドアの開方向へ変位した際に当該可動部材を通じて押圧されることにより当該可動部材と同方向へ変位する操作部材を備え、当該操作部材に前記可動部材による押圧力が付与されている間だけオン状態が維持されるとともに、当該押圧力の付与が解除されたときには前記操作部材が原位置に自動復帰してオフ状態となる自動復帰型の押しボタンスイッチであって、前記可動部材への押圧力の付与が解除された際には、当該操作部材の前記原位置への復帰力を利用して前記可動部材を原位置に復帰させることをその要旨とする。
【0014】
本発明によれば、サイドドアを内側から開けるというユーザの意思を検出する検出手段として機能する押しボタンスイッチが、可動部材への押圧力の付与が解除された際に当該可動部材を原位置へ復帰させる手段として兼用される。このため、変位した可動部材を原位置へ復帰させる手段を別途設ける必要がなく、構成の簡素化が図られる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用電動ラッチ装置において、前記可動部材は、自身もその一部を構成する前記内装部材の自身以外の他の部分に内側から係合する係合部が形成されてなることをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、可動部材への押圧力の付与が解除された場合に当該可動部材が原位置へ復帰するとき、当該可動部材の一部分である係合部が内装部材の一部分に内側から係合することにより、当該可動部材が内装部材の表面を越えて車室内に突出することはない。このため、サイドドアの車室内側の側面の意匠性、ひいては車室内の意匠性を好適に確保することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の車両用電動ラッチ装置において、前記可動部材は、車両の前後方向へ延びるように形成し、その前端部において車両の上下方向へ延びる軸を中心として回動可能に支持するとともに、その後端部と前記ドア本体との間には前記検出手段が配設されてなることをその要旨とする。
【0018】
本発明によれば、可動部材を介して押しボタンスイッチの操作部材を好適に押圧することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車室内空間を構成するサイドドアの内面の意匠性を確保しつつ、降車時においてはサイドドアを内側から簡単に開けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を車両のサイドドアを閉鎖状態に保持する電動ラッチ装置に具体化した一実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
<サイドドア>
図1に示すように、車両のサイドドア11は、その前端側に設けられる図示しないヒンジ構造を介して、車両の上下方向へ延びる所定の軸Oを中心として開閉可能に設けられている。サイドドア11は、車体に支持されるドア本体12、及び当該ドア本体12の車室内側に設けられる内装パネル13を備えてなる。ドア本体12の上部に設けられた窓枠12aには、ウインドウガラス14が昇降可能に設けられている。そして内装パネル13は、ドア本体12の車室内側の側面において、窓枠12aよりも下部の領域を覆うように設けられるとともに、サイドドア11が閉鎖状態にあるときには車室内の意匠の一部分を構成する。内装パネル13の上下方向における中間部位に設けられた箱体状のアームレスト15の上面には、ウインドウガラス14を昇降させる際にユーザにより操作されるウインドウスイッチ15aが設けられている。そして、内装パネル13の上部には、サイドドア11の施錠状態と解錠状態とを電動アクチュエータの作動を通じて切り替える電動ラッチ装置16が設けられている。
【0021】
<電動ラッチ装置>
次に、電動ラッチ装置16について詳細に説明する。
図1に示されるように、電動ラッチ装置16は、内装パネル13の上部にその一部を構成するかたちで設けられる可動部材21を備えてなる。可動部材21は、車両の前後方向へ延びる半円柱状に形成されて、サイドドア11が閉鎖状態にあるときには内装パネル13と共に車室内の意匠の一部分を構成する内装部材として機能する。
【0022】
図2に示すように、可動部材21は、正確には内装パネル13の上部に形成された切欠部13aに配置された状態でドア本体12に支持されている。具体的には、可動部材21の前端部には、車両の上下方向へ延びる軸部材22が設けられており、当該可動部材21は、ドア本体12に対して軸部材22を中心として回動可能に支持されている。すなわち、可動部材21は、サイドドア11の開閉方向へ回動可能とされている。また、可動部材21はその後端側へ向かうにつれて車両の左右方向において徐々に肉薄となるように形成されるとともに、当該後端部には内装パネル13(正確には、切欠部13aの端縁)に内側から係合する係合部23が形成されている。
【0023】
さらに、可動部材21の後端部とドア本体12との間には、押しボタンスイッチ24が配設されている。具体的には、ドア本体12の車室内側の側面において、可動部材21に対応する部位には、車両の前後方向へ延びる凹部25が形成されている。そして当該凹部25の内底面において、可動部材21の後端部に対応する部位には、プリント基板26を介して前述した押しボタンスイッチ24が固定されている。この押しボタンスイッチ24は、操作部材32に押圧力(操作荷重)が付与されている間だけオン状態が維持されるとともに、当該押圧力の付与が解除されたときには操作部材32が原位置に自動復帰してオフ状態となる自動復帰型のものである。
【0024】
押しボタンスイッチ24は、プリント基板26に固定されて図示しない接点を内蔵するスイッチケース31と、当該スイッチケース31の可動部材21側の側面に対して車両の左右方向へ変位可能に設けられた操作部材32とを備えてなる。この操作部材32は、スイッチケース31に内蔵される図示しない付勢機構の付勢力により車室内側へ常時付勢されている。通常、この操作部材32は、その先端部が可動部材21の内面、すなわち車室内と反対側の側面に当接した状態に保持される。正確には、可動部材21は、操作部材32を介して車室内側へ常時付勢されているところ、当該可動部材21の車室内側への回動変位は、可動部材21の後端部に形成された係合部23が内装パネル13に内側から係合することにより規制される。
【0025】
可動部材21がユーザにより押圧されてサイドドア11の開方向へ変位した際には、操作部材32は可動部材21を通じて押圧されることにより前記付勢機構の付勢力に抗して当該可動部材21と同じ方向へ変位する。これにより、スイッチケース31内の接点は閉路されて押しボタンスイッチ24はオン状態となる。可動部材21による押圧力の付与が解除されたときには、操作部材32は、前記付勢機構の付勢力により車室内側へ変位して原位置に復帰する。これにより、スイッチケース31内の接点は開路されて押しボタンスイッチ24はオフ状態となる。また、可動部材21による押圧力の付与が解除されたときには、当該可動部材21は、前述したように車室内側へ変位する操作部材32により内側から押圧されることにより軸部材22を中心として車室内側へ変位する。そして、可動部材21は、その係合部23が内装パネル13に内側から係合する原位置まで復帰する。このように、可動部材21への押圧力の付与が解除された際には、前記付勢機構の付勢力に基づく操作部材32の原位置への復帰力を利用して、可動部材21を原位置に復帰させるようにしている。
【0026】
<電気的構成>
次に、電動ラッチ装置16の電気的な構成について説明する。
図3に示すように、電動ラッチ装置16は、当該装置を統括的に制御するマイクロコンピュータ41を備えてなる。このマイクロコンピュータ41には、前述した押しボタンスイッチ24及び車速センサ42が接続されている。また、マイクロコンピュータ41には、モータ駆動回路43を介して、ドアラッチ機構44を構成するラッチモータ45が接続されている。
【0027】
押しボタンスイッチ24は、前述したように、ユーザによる可動部材21の押圧操作を通じてオン状態となって、その旨示す検出信号をマイクロコンピュータ41へ出力する。すなわち、この押しボタンスイッチ24は、サイドドア11を内側から開けるというユーザの意思を検出しその検出信号を出力する検出手段として機能する。
【0028】
車速センサ42は、車両の走行速度(車速)を検出し、その検出信号をマイクロコンピュータ41へ出力する。
ドアラッチ機構44は、車体側に設けられる図示しないラッチ(掛け金)と、サイドドア11側に設けられて前記ラッチにかみ合う図示しないストライカ(掛止軸)とを備えて構成され、これらラッチとストライカとのかみ合いを通じてサイドドア11を閉鎖状態に保持する。ドアラッチ機構44は、ラッチモータ45の作動を通じて、ラッチとストライカとがかみ合う施錠状態と、ラッチとストライカとのかみ合いが解除される解錠状態との2つの状態のいずれかに切り替えられる。ドアラッチ機構44が施錠状態に切り替えられているときには、サイドドア11は閉鎖状態に保持される。ドアラッチ機構44が解錠状態に切り替えられているときには、サイドドア11は開けることが可能となる。
【0029】
マイクロコンピュータ41は、車速センサ42及び押しボタンスイッチ24からの検出信号に基づきドアラッチ機構44の作動を制御する。具体的には、マイクロコンピュータ41は、ドアラッチ機構44が施錠状態に保持されている状態で、押しボタンスイッチ24から検出信号が入力された場合には、まず車速センサ42からの検出信号(車速信号)に基づき車両が走行中であるか否かを判断する。そしてマイクロコンピュータ41は、車両が走行中でない、すなわち車両が停車状態である旨判断した場合には、モータ駆動回路43を通じてラッチモータ45を駆動制御することにより、ドアラッチ機構44を解錠状態に切り替える。
【0030】
<実施の形態の作用>
次に、前述のように構成した電動ラッチ装置16が搭載されたサイドドア11を内側から開ける際の操作態様について説明する。なお、サイドドア11は閉鎖状態に、またドアラッチ機構44は施錠状態に保持されている。また、車両は停車しているものとする。
【0031】
この状態において、ユーザにより可動部材21が押圧されると、当該可動部材21は軸部材22を中心として、サイドドア11の開方向へ回転する。これに伴い、押しボタンスイッチ24の操作部材32が前記付勢機構の付勢力に抗して押圧されることにより、当該押しボタンスイッチ24はオン状態となり、当該押しボタンスイッチ24はその旨示す検出信号をマイクロコンピュータ41へ出力する。マイクロコンピュータ41は、押しボタンスイッチ24からの検出信号を受けて、モータ駆動回路43を通じてラッチモータ45を駆動制御することにより、ドアラッチ機構44を施錠状態から解錠状態へ切り替える。これにより、サイドドア11を開けることが可能となる。可動部材21への押圧力はそのままサイドドア11を内側から開ける際の操作力として作用することから、ユーザは可動部材21を押圧しつつそのままサイドドア11を押し開けることができる。このように、降車時において、ユーザは可動部材21を押圧するだけで、サイドドア11を内側から簡単に開けることができる。
【0032】
なお、ユーザが降車してサイドドア11が閉じられた際には、これが図示しないドアカーテシスイッチにより検出される。マイクロコンピュータ41は、前記ドアカーテシスイッチからの検知結果に基づきサイドドア11が閉じられた旨検出した場合には、ラッチモータ45の駆動制御を通じてドアラッチ機構44を解錠状態から施錠状態へ切り替える。これにより、サイドドア11は閉鎖状態に保持される。
【0033】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車両のサイドドア11を内側から開ける際には、当該サイドドア11が閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装部材として機能する可動部材21を押圧するだけでよい。すなわち、可動部材21への押圧力がそのままサイドドア11を内側から開ける際の操作力としても作用することから、ユーザは可動部材21を押圧しつつそのままサイドドア11を押し開けることができる。このように、降車時において、サイドドア11を内側から簡単に開けることができる。また、可動部材21は車室内の意匠を構成する内装部材として機能すること、及び押しボタンスイッチ24はドア本体12と可動部材21との間に配設されて車室内に露出しないことから、サイドドア11の内面、すなわち車室内側の側面の意匠性が損なわれることもない。
【0034】
(2)可動部材21は、ドア本体12の車室内側の側面を覆うように設けられてサイドドア11が閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装パネル13に別部材として取り付けられて、サイドドア11が閉鎖状態にあるときに内装パネル13と共に車室内の意匠の一部分を構成する独立した内装部材を利用して構成されたものである。
【0035】
車両の仕様等に応じて、サイドドア11の内側を覆う内装パネル13に対して各種の内装部材を別部材として取り付けて加飾し、これにより車室内の意匠性にバリエーションを持たせることは従来よく行われている。こうした各種の独立した内装部材を利用して可動部材21を構成することにより、当該他の内装部材に付加価値が生まれる。本例では、可動部材21は、車室内の意匠を構成するに止まらず、ドアラッチ機構44の解錠操作を行うためにも使用される。なお、車両の仕様等によっては、前記独立した内装部材の適用がないものもあるところ、このような場合には、単に内装パネル13の一部を可動部材21として構成すればよい。
【0036】
(3)可動部材21への押圧力の付与が解除された際には、押しボタンスイッチ24を構成する操作部材32の原位置への復帰力を利用して、可動部材21を原位置に復帰させるようにした。すなわち、サイドドア11を内側から開けるというユーザの意思を検出する検出手段として機能する押しボタンスイッチ24は、可動部材21への押圧力の付与が解除された際に当該可動部材21を原位置へ復帰させる手段としても機能する。このため、変位した可動部材21を原位置へ復帰させる手段を別途設ける必要がなく、構成の簡素化が図られる。
【0037】
(4)可動部材21は、自身もその一部を構成する内装パネル13の自身以外の他の部分に内側から係合する係合部23が形成されてなる。このため、可動部材21への押圧力の付与が解除された場合に当該可動部材21が原位置へ復帰するとき、当該可動部材21の一部分である係合部23が内装パネル13の一部分に内側から係合することにより、当該可動部材21が内装パネル13の表面を越えて回動することはない。このため、サイドドア11の車室内側の側面の意匠性、ひいては車室内の意匠性を好適に確保することができる。
【0038】
(5)可動部材21は、車両の前後方向へ延びるように形成し、その前端部において車両の上下方向へ延びる軸部材22を中心として回動可能に支持するとともに、その後端部とドア本体12との間には押しボタンスイッチ24が配設されてなる。このため、可動部材21を介して押しボタンスイッチ24の操作部材32を好適に押圧することができる。
【0039】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・本実施の形態では、可動部材21には内装パネル13の一部分に係合する係合部23を設けるようにしたが、これを省略してもよい。
【0040】
・本実施の形態では、可動部材21を半円柱状に形成したが、例えば内装パネル13の車室内側の側面に対して面一となる平面あるいは曲面又はこれらの組み合わせた形状の意匠面を有する板状部材として形成してもよい。すなわち、可動部材21の形状は、要求される車室内の意匠に応じて適宜変更可能である。
【0041】
・本実施の形態では、ドアラッチ機構44の駆動源としてラッチモータ45を採用したが、例えばロータリソレノイドあるいはリニアソレノイド等の他の電動アクチュエータを採用してもよい。ちなみに、ロータリソレノイドは通電により回転する出力軸を有し、またリニアソレノイドは通電により直線運動を行う出力軸を有してなる。
【0042】
・本実施の形態では、可動部材21の全体を回動可能に設けたが、例えばサイドドア、正確には内装パネル13の上部の全長にわたって他の内装部材を別部材として設けるような場合には、当該他の内装部材の一部分(例えばその前端から後端に向かう所定範囲の部位)を本実施の形態の可動部材21に相当する構成として、当該他の内装部材に対して回動可能に設けるようにしてもよい。このようにしても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
・本実施の形態では、可動部材21をその前端部に設けられた軸部材22を中心として回動可能に設けたが、押圧力の付与される方向、すなわち押しボタンスイッチ24の操作部材32の変位方向と同方向へスライド変位するように構成してもよい。
【0044】
・本実施の形態では、機械的な押しボタンスイッチ24を通じて、サイドドア11を内側から開けるというユーザの意思を検出するようにしたが、当該意思を検出する手段として磁気センサを採用してもよい。磁気センサとしては、磁気抵抗素子からなる磁気抵抗効果センサ(MRセンサ)又はホール素子からなるホールセンサ等が使用可能である。この場合には、可動部材21の磁気センサに対向する部位には磁石を設ける。可動部材21の変位に伴い磁気センサに印可される磁界が変化するところ、磁気センサは当該磁界の変化に応じた検出信号を出力する。すなわち、磁気センサは、当該磁界の変化を、サイドドア11を内側から開けるというユーザの意思として検出する。
【0045】
・マイクロコンピュータ41は、ユーザにより所持される電子キーとの相互無線通信を通じてドアラッチ機構44の施錠あるいは解錠を行うようにしてもよい。すなわち、前記電子キー及び電動ラッチ装置16から、いわゆる電子キーシステムを構築することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】車両用ドアの内装を示す斜視図。
【図2】図1の1−1線断面図。
【図3】ドアラッチ装置の電気的な構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0047】
11…サイドドア、12…ドア本体、13…内装パネル(内装部材)、16…電動ラッチ装置、21…可動部材、22…軸部材、23…係合部、24…押しボタンスイッチ(検出手段)、32…押しボタンスイッチの操作部材、41…マイクロコンピュータ(制御手段)、44…ドアラッチ機構、45…ラッチモータ(電動アクチュエータ)、O…軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の上下方向へ延びる所定の軸を中心として開閉する車両のサイドドアを閉鎖状態に施錠するドアラッチ機構と、前記サイドドアを内側から開けるというユーザの意思を検出しその検出信号を出力する検出手段と、前記検出手段から前記検出信号が入力されたときに電動アクチュエータの作動を通じて前記ドアラッチ機構の施錠状態を解除する制御手段と、を備えてなる車両用電動ラッチ装置において、
前記サイドドアは、ドア本体と、当該ドア本体の車室内側の部分に取り付けられて当該サイドドアが閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装部材と、を備えるとともに、当該内装部材の少なくとも一部分は前記サイドドアの開閉方向へ変位する可動部材として構成し、
前記検出手段は、前記ドア本体と前記内装部材の一部分である前記可動部材との間に配設するとともに、当該可動部材が前記サイドドアの開方向へ変位した際にはこれを、前記サイドドアを内側から開けるというユーザの意思として検出しその検出信号を出力する車両用電動ラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電動ラッチ装置において、
前記内装部材は、前記ドア本体の車室内側の側面を覆うように設けられて前記サイドドアが閉鎖状態にあるときに車室内の意匠の一部分を構成する内装パネルであって、前記可動部材は前記内装パネルに別部材として取り付けられて前記サイドドアが閉鎖状態にあるときには前記内装パネルと共に車室内の意匠の一部分を構成する他の内装部材を利用して構成されてなる車両用電動ラッチ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用電動ラッチ装置において、
前記検出手段は、前記可動部材が前記サイドドアの開方向へ変位した際に当該可動部材を通じて押圧されることにより当該可動部材と同方向へ変位する操作部材を備え、当該操作部材に前記可動部材による押圧力が付与されている間だけオン状態が維持されるとともに、当該押圧力の付与が解除されたときには前記操作部材が原位置に自動復帰してオフ状態となる自動復帰型の押しボタンスイッチであって、前記可動部材への押圧力の付与が解除された際には、当該操作部材の前記原位置への復帰力を利用して前記可動部材を原位置に復帰させる車両用電動ラッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用電動ラッチ装置において、
前記可動部材は、自身もその一部を構成する前記内装部材の自身以外の他の部分に内側から係合する係合部が形成されてなる車両用電動ラッチ装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の車両用電動ラッチ装置において、
前記可動部材は、車両の前後方向へ延びるように形成し、その前端部において車両の上下方向へ延びる軸を中心として回動可能に支持するとともに、その後端部と前記ドア本体との間には前記検出手段が配設されてなる車両用電動ラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−228331(P2009−228331A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76149(P2008−76149)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】