説明

車両用電源システムおよび車両

【課題】 車両搭載用として適し、小型化が図られた車両用電源システムおよびそれを搭載する車両を提供する。
【解決手段】 車両用電源システム140は、二次電池であるバッテリBと、二次電池の電圧を第1の接続ノードに受け第2の接続ノードから二次電池の端子間電圧を昇圧した電圧を出力する昇圧コンバータ12と、昇圧コンバータ12によって昇圧された電圧の車両負荷に対する接続および非接続の切替を行なうシステムメインリレーSMRP,SMPGと、二次電池、昇圧コンバータ12およびシステムメインリレーSMRP,SMPGを収容する筐体とを備える。好ましくは、車両用電源システム140は、昇圧コンバータ12の第2の接続ノードに一方端が接続されるキャパシタ23をさらに備え、筐体は、キャパシタをさらに収容する。好ましくは、キャパシタ23は、直列接続される複数の電気二重層コンデンサを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用電源システムおよびそれを備える車両に関し、特に高圧直流電源を含む車両用電源システムおよびそれを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した自動車としてハイブリッド自動車、電気自動車および燃料電池自動車が大きな注目を浴びている。
【0003】
ハイブリッド自動車は、従来のエンジンに加えて直流電源とインバータとインバータによって駆動されるモータとを動力源とする自動車である。つまり、エンジンを駆動することにより動力を得るとともに、直流電源からの直流電圧をインバータによって交流電圧に変換し、その変換した交流電圧によりモータを回転することによって動力を得るものである。このような自動車においては、直流電源を供給する電源システムを小型化するために、複数の部品を1つの筐体に収めることが行なわれている。
【0004】
一方、特開2002−78230号公報(特許文献1)は、コンパクトで携帯に便利な携帯電源装置を開示している。この携帯電源装置は、太陽電池を備えた携帯用ハイブリッド電源システムにおいて、二次電池と電気二重層コンデンサとDC−DCコンバータとを一体化することにより小型化を図るものである。
【特許文献1】特開2002−78230号公報
【特許文献2】特開2003−164075号公報
【特許文献3】特開2005−79080号公報
【特許文献4】特開2005−62908号公報
【特許文献5】特開平10−224987号公報
【特許文献6】特開2003−143713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2002−78230号公報(特許文献1)に開示された技術は、低電圧の携帯用ハイブリッド電源であるので、高電圧を利用する車両の電源電源システムの小型化を図るにはさらなる改善の余地がある。
【0006】
車両用の電源装置においては、衝突時の安全を考慮すると、電源部分を1つの筐体に収めておくワンパック化は重要である。すなわち高圧電力貯蔵装置は、高圧部はワンパック化して衝突時には正負の高圧ケーブルがリレーで高圧部と切り離される構成としておく必要がある。
【0007】
この発明の目的は、車両搭載用として適し、小型化が図られた車両用電源システムおよびそれを搭載する車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、要約すると、車両用電源システムであって、二次電池と、二次電池の電圧を第1の接続ノードに受け第2の接続ノードから二次電池の端子間電圧を昇圧した電圧を出力する電圧変換器と、電圧変換器によって昇圧された電圧の車両負荷に対する接続および非接続の切替を行なう接続部と、二次電池、電圧変換器および接続部を収容する筐体とを備える。
【0009】
好ましくは、車両用電源システムは、電圧変換器の第2の接続ノードに一方端が接続されるキャパシタをさらに備える。筐体は、キャパシタをさらに収容する。
【0010】
好ましくは、キャパシタは、直列接続される複数の電気二重層コンデンサを含む。
好ましくは、電圧変換器は、第1の接続ノードから第2の接続ノードに至る経路上において直列に接続されるリアクトルおよびスイッチング素子を含む。
【0011】
好ましくは、車両用電源システムは、二次電池の端子間に接続される平滑コンデンサをさらに備える。筐体は、平滑コンデンサをさらに収容する。
【0012】
好ましくは、車両用電源システムは、筐体に設けられ、車両負荷に電力供給するための第1の導電線が接続される第1の端子と、筐体に設けられ、第1のパワーケーブルの帰線である第2の導電線が接続される第2の端子とをさらに備える。接続部は、電圧変換器の第2のノードを第1の端子に接続する第1のリレー回路と、電圧変換器の接地ノードを第2の端子に接続する第2のリレー回路とを含む。
【0013】
この発明の他の局面に従うと、車両であって、上記いずれかの車両用電源システムと、車両用電源システムから電力供給を受ける車両負荷と、車両用電源システムと車両負荷とを接続する電力ケーブルとを備える。
【0014】
好ましくは、車両用電源システムは、運転席の前方空間および後方空間のいずれか一方に配置され、車両用負荷は、前方空間および後方空間のいずれか他方に配置され、電力ケーブルは、前方空間と後方空間の間に延在する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型で、かつ部品点数が削減された車両用電源システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
ハイブリッド自動車は、エンジンを停止した状態でモータのみによって走行するEV走行を行なう場合がある。EV走行時において急加速して追越しを行なう際には、バッテリは車輪駆動用モータを高速回転させるために出力パワーを増加させる必要があり、かつさらにそれでも加速が不足する場合にはエンジンを始動させてエンジントルクを車輪の回転トルクとしてさらに追加する場合がある。
【0018】
図1は、キャパシタを車両に搭載することを検討した検討例を示す回路図である。
図1を参照して、車両100は、電池ユニット40と、パワーコントロールユニット20と、エンジン4と、モータジェネレータM1,M2と、動力分配機構3と、車輪2と、制御装置30とを含む。
【0019】
動力分配機構3は、エンジン4とモータジェネレータM1,M2に結合されてこれらの間で動力を分配する機構である。たとえば動力分配機構としてはサンギヤ、プラネタリキャリヤ、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。この3つの回転軸がエンジン4、モータジェネレータM1,M2の各回転軸にそれぞれ接続される。なおモータジェネレータM2の回転軸は車輪2に図示しない減速ギヤや作動ギヤによって結合されている。また動力分配機構3の内部にモータジェネレータM2の回転軸に対する減速機をさらに組み込んでもよい。
【0020】
電池ユニット40には端子41,42が設けられている。またパワーコントロールユニット20には端子43,44が設けられている。車両100は、さらに、端子41と端子43とを結ぶパワーケーブル6と、端子42と端子44とを結ぶパワーケーブル8とを含む。
【0021】
電池ユニット40は、バッテリBと、バッテリBの負極と端子42との間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、バッテリBの正極と端子41との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、システムメインリレーSMR2と、バッテリBの正極と端子41との間に直列に接続される、システムメインリレーSMR1および制限抵抗Rとを含む。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、制御装置30から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0022】
電池ユニット40は、さらに、バッテリBの端子間の電圧VBを測定する電圧センサ10と、バッテリBに流れる電流IBを検知する電流センサ11とを含む。
【0023】
バッテリBとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の二次電池や燃料電池などを用いることができる。
【0024】
パワーコントロールユニット20は、端子43,44間に接続される平滑用コンデンサC1と、平滑用コンデンサC1の両端間の電圧VLを検知して制御装置30に対して出力する電圧センサ21と、平滑用コンデンサC1の端子間電圧を昇圧する昇圧コンバータ12と、昇圧コンバータ12によって昇圧された電圧を平滑化する平滑用コンデンサC2と、平滑用コンデンサC2の端子間電圧VHを検知して制御装置30に出力する電圧センサ13と、昇圧コンバータ12から与えられる直流電圧を三相交流に変換してモータジェネレータM1に出力するインバータ14とを含む。
【0025】
昇圧コンバータ12は、一方端が端子43に接続されるリアクトルL1と、電圧VHを出力する昇圧コンバータ12の出力端子間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを含む。
【0026】
リアクトルL1の他方端はIGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続される。ダイオードD1のカソードはIGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードはIGBT素子Q1のエミッタと接続される。ダイオードD2のカソードはIGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードはIGBT素子Q2のエミッタと接続される。
【0027】
インバータ14は、昇圧コンバータ12から昇圧された電圧を受けてたとえばエンジン4を始動させるためにモータジェネレータM1を駆動する。また、インバータ14は、エンジン4から伝達される動力によってモータジェネレータM1で発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき昇圧コンバータ12は、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0028】
インバータ14は、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とを含む。U相アーム15,V相アーム16,およびW相アーム17は、昇圧コンバータ12の出力ライン間に並列に接続される。
【0029】
U相アーム15は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはIGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはIGBT素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはIGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはIGBT素子Q4のエミッタと接続される。
【0030】
V相アーム16は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはIGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはIGBT素子Q5のエミッタと接続される。ダイオードD6のカソードはIGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはIGBT素子Q6のエミッタと接続される。
【0031】
W相アーム17は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードはIGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードはIGBT素子Q7のエミッタと接続される。ダイオードD8のカソードはIGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードはIGBT素子Q8のエミッタと接続される。
【0032】
各相アームの中間点は、モータジェネレータM1の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータM1は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中点に共に接続されている。そして、U相コイルの他方端がIGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端がIGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端がIGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続される。
【0033】
電流センサ24は、モータジェネレータM1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置30へ出力する。
【0034】
パワーコントロールユニット20は、さらに、昇圧コンバータ12に対してインバータ14と並列的に接続されるインバータ22と、昇圧コンバータ12の正負の出力ノードにそれぞれ接続されるシステムメインリレーSMR4,SMR5と、昇圧コンバータ12による昇圧後の電力を蓄積するキャパシタ23とを含む。
【0035】
インバータ22は車輪2を駆動するモータジェネレータM2に対して昇圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。またインバータ22は、回生制動に伴い、モータジェネレータM2において発電された電力を昇圧コンバータ12に戻す。このとき昇圧コンバータ12は降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。インバータ22の内部の構成は、図示しないがインバータ14と同様であり、詳細な説明は繰返さない。
【0036】
制御装置30は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。そして制御装置30は、昇圧コンバータ12に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU,高圧指示を行なう制御信号PWDおよび動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
【0037】
さらに、制御装置30は、インバータ14に対して昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータM1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータM1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
【0038】
同様に制御装置30は、インバータ22に対して直流電圧をモータジェネレータM2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータM2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。
【0039】
キャパシタ23は、平滑用コンデンサC2よりも容量が大きい蓄電装置であり、たとえば直列接続される複数の電気二重層コンデンサを含む。なお、電気二重層コンデンサはエネルギ密度が高いが、1セル当たりの耐圧が2.5〜2.7V程度であるので、昇圧コンバータ12が出力する500V程度の電圧に用いるためには各セルに電圧を分担させるために複数の電気二重層コンデンサのセルを直列に接続して用いる必要がある。
【0040】
従来は、昇圧コンバータ12の出力電圧のリップルを平滑化するのに十分な程度の容量、たとえば数千μFの平滑用コンデンサC2のみを搭載していたが、これと並列に容量が、たとえば0.5〜2.0F程度のキャパシタ23をさらに搭載する。
【0041】
これにより、たとえばEV走行時において追越しをするために急加速を行なおうとした場合に、モータジェネレータM2が車輪2を回転させるパワーを増加しつつ、さらにこれと並行してキャパシタ23で補填されるパワーでモータジェネレータM1を回転させてエンジン4を始動し、エンジン4によって発生されるパワーをさらに加速パワーに加えることが可能となる。つまりキャパシタ23は瞬時におけるパワー出力がバッテリBに比べると大きいので、キャパシタ23によってバッテリBの電力を補うことにより加速応答性をさらに改善することができる。
【0042】
図2は、図1で説明した車両100の各ユニットの搭載位置を説明するための図である。
【0043】
図2を参照して、電池ユニット40は、運転席の後部の空間たとえば後部座席の下またはトランクルームの中などに配置される。
【0044】
これに対し、パワーコントロールユニット20、エンジン4、モータジェネレータM1,M2は運転席の前部の空間、たとえばエンジンルーム内に配置される。そして車両後部に配置された電池ユニット40と車両前部に配置されたパワーコントロールユニット20とはパワーケーブル6,8によって接続される。
【0045】
電池ユニット40は、図2に示すように安全のために外部に高圧部が露出しないように1つの筐体中に収められており、その端子出口付近には図1に示すようにシステムメインリレーが設けられ、衝突などの事故発生時にはシステムメインリレーが非導通状態となることにより、高圧電圧がパワーケーブルと遮断され外部に出力されないように構成されている。
【0046】
しかし図1に示したような構成では、バッテリBと平滑用コンデンサC1,C2およびキャパシタ23がパワーケーブル6,8を介して接続されており、離れた配置となっているのでシステムメインリレーを接続する際には所定のシーケンスで接続する必要がある。これはキャパシタ23や平滑用コンデンサC1,C2を充電するための過大な突入電流によって接続時に発生するスパークによってリレーの溶着などが起こるのを防ぐためである。
【0047】
図3は、図1の車両100における電源投入時のシステムメインリレーの制御シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【0048】
図3を参照して、まずステップS1において運転者から起動指示が与えられ起動信号IGONが活性化される。するとステップS2において車両の補機バッテリ(たとえば12V)の低圧系の電源電圧が制御装置30をはじめとする低圧系の負荷回路に供給される。
【0049】
そしてステップS3において制御装置30はシステムメインリレーSMR1およびSMR3をオフ状態からオン状態に変化させる。これにより図1の制限抵抗Rを経由して平滑用コンデンサC1,C2に対して充電が行なわれる。このとき予めシステムメインリレーSMR4,SMR5を接続しておいてキャパシタ23に対する充電も行なってもよい。
【0050】
そして平滑用コンデンサC1および平滑用コンデンサC2の電圧がそれぞれバッテリ電圧とほぼ等しくなる時間が経過した後にステップS4においてシステムメインリレーSMR2がオフ状態からオン状態に変更される。このようにすることによりシステムメインリレーSMR2の接続する電位差および電流が許容範囲内に収まるのでシステムメインリレーSMR2が溶着することを防ぐことができる。
【0051】
ステップS4が終了するとステップS5においてシステムメインリレーSMR1をオン状態からオフ状態に変更する。そしてステップS6において、昇圧コンバータ12が駆動可能でインバータ14および22の運転が可能となるReady 0N状態に車両状態が移行する。
【0052】
図4は、図1の車両100において実行される車両停止時のシステムメインリレーの制御を説明するためのフローチャートである。
【0053】
図1、図4を参照して、まずステップS11において、たとえばイグニッションキーがオフ状態に変更されるまたはスタートスイッチがオフ状態に変更されるような運転者の指示により図1の起動信号IGONが非活性化される。
【0054】
ステップS11において起動信号IGONが非活性化されるとステップS12に進み制御装置30は昇圧コンバータ12に対して昇圧動作を停止させる。そしてステップS13に進む。
【0055】
ステップS13においては、制御装置30は平滑用コンデンサC2の端子間電圧VHが所定のしきい値電圧Vthより小さいか否かを判断する。VH<Vthが成立しない場合にはステップS14において制御装置30はインバータ14または22にディスチャージ動作を行なわせる。
【0056】
ディスチャージ動作とは、モータジェネレータM1またはM2においてロータに回転力を発生させないようにq軸電流を流さずd軸電流のみを流すように制御を行ない、平滑用コンデンサC2およびキャパシタ23に蓄積されていた電荷を熱として消費させる動作である。また、ディスチャージ動作において蓄積電荷を熱として消費させるのではなく、バッテリBへ電荷を移動させることで消費させても良い。ディスチャージ動作が行なわれることにより蓄積電荷が消費され、これによって電圧VHは低下する。ステップS13が終了すると再びステップS12においてVH<Vthが成立するか否かが判断される。
【0057】
一方、ステップS13においてVH<Vthが成立した場合にはステップS15に進む。ステップS15においては、制御装置30はシステムメインリレーSMR2およびSMR4をオン状態からオフ状態に変更する。そしてステップS16に処理が進み制御装置30はシステムメインリレーSMR3およびSMR5をオン状態からオフ状態に変更する。ステップS16の処理が終了するとステップS17において低圧系の電源が供給されているたとえば制御装置30のような低圧系負荷に対して電源の供給が停止され、さらにステップS18において車両は停止状態となり、次の運転者からの起動信号を待つ待機状態となる。
【0058】
以上図1〜図4で説明した検討例においては、キャパシタ23を用いることによってEV走行時の加速応答性は改善される。しかしながら、システムメインリレーの数が増加し、部品点数が増加するとともに制御装置30の制御も複雑になってしまう。
【0059】
図5は、本発明の実施の形態に係る車両200の構成を示した回路図である。
図5を参照して、車両200は、直流電源を供給するための直流電源システム140と、直流電源システム140から直流電圧を受けて三相交流に変換するインバータユニット120と、インバータユニット120によって駆動されるモータジェネレータM1,M2と、エンジン4と、動力分配機構3と、車輪2と、制御装置130とを含む。
【0060】
モータジェネレータM1,M2と、エンジン4と、動力分配機構3と、車輪2の関係については、図1で説明した検討例と同様であるので説明は繰返さない。
【0061】
直流電源システム140には端子141,142が設けられている。またインバータユニット120には端子143,144が設けられている。車両200は、さらに、端子141と端子143とを結ぶパワーケーブル106と、端子142と端子144とを結ぶパワーケーブル108とを含む。
【0062】
直流電源システム140は、バッテリBと、バッテリBの端子間に接続される平滑用コンデンサC1と、バッテリBの出力電圧を昇圧する昇圧コンバータ12と、昇圧コンバータ12の出力端子間に接続されるキャパシタ23と、昇圧コンバータ12の正側出力端子と端子141との間に接続されるシステムメインリレーSMRPと、昇圧コンバータ12の負側出力端子と端子142との間に接続されるシステムメインリレーSMRGとを含む。
【0063】
直流電源システム140は、さらに、バッテリBの端子間電圧VBを検知する電圧センサ10と、バッテリBに流れる電流IBを検知する電流センサ11と、キャパシタ23の端子間の電圧VHを検知する電圧センサ13とを含む。制御装置130は、各センサで検知された電圧VB,VHおよび電流IBを測定値として取込む。
【0064】
インバータユニット120は、昇圧コンバータ12で昇圧された電圧を三相交流に変換してモータジェネレータM1に供給するインバータ14と、昇圧コンバータ12で昇圧された電圧を三相交流に変換してモータジェネレータM2に出力するインバータ22とを含む。
【0065】
なお、インバータ14および22の構成については図1で説明したものと同様であるのでその説明は繰返さない。
【0066】
制御装置130は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。そして制御装置130は、昇圧コンバータ12に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU,高圧指示を行なう制御信号PWDおよび動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
【0067】
さらに、制御装置130は、インバータ14に対して、昇圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータM1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータM1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
【0068】
同様に制御装置130は、インバータ22に対して、直流電圧をモータジェネレータM2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータM2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。
【0069】
次に、昇圧コンバータ12の動作について簡単に説明する。昇圧コンバータ12は、並行運転時にはバッテリBからの電力をインバータ14および22に供給する昇圧回路として動作する。逆に、回生運転時には、昇圧コンバータ12は、バッテリBにモータジェネレータM1またはM2で発電された電力を回生する降圧回路としても動作する。
【0070】
図6は、図5で説明した車両200の各ユニットの車両内配置を説明するための図である。
【0071】
図6を参照して、直流電源システム140は、運転席の後部の空間たとえば後部座席の下またはトランクルームの中などに配置される。
【0072】
これに対し、インバータユニット120、エンジン4、モータジェネレータM1,M2は運転席の前部の空間、たとえばエンジンルーム内に配置される。そして車両後部に配置された直流電源システム140と車両前部に配置されたインバータユニット120とはパワーケーブル106,108によって接続される。
【0073】
直流電源システム140は、図6に示すように安全のために外部に高圧部が露出しないように1つの筐体中に収められており、その端子出口付近には図5に示すようにシステムメインリレーSMRP,SMRGが設けられ、衝突などの事故発生時にはシステムメインリレーSMRP,SMRGがともに非導通状態となることにより、高圧電圧がパワーケーブル106,108と遮断され外部に出力されないように構成されている。
【0074】
図7は、車両起動時における車両200で実行されるシステムメインリレーの制御を説明するためのフローチャートである。
【0075】
図7を参照して、まずステップS21において運転者によってたとえばイグニッションキーまたはスタートスイッチが操作されることにより起動信号IGONが活性化される。これに応じてステップS22において、高圧バッテリBとは別の低圧(たとえば12V)の補機バッテリから低圧系電源負荷に対して電源の供給が開始される。
【0076】
そしてステップS23において制御装置130は接地側のシステムメインリレーSMRGを非導通状態から導通状態に変化させる。そしてステップS24に処理が進み制御装置130は、さらに高電圧側のシステムメインリレーSMRPを非導通状態から導通状態に変化させる。これによりインバータ14および22には電源が供給されステップS25においてインバータ14,22および昇圧コンバータ12が動作可能なReady ON状態となり、次の操作を待つこととなる。
【0077】
図1の平滑用コンデンサC2をキャパシタ23で兼用してシステムメインリレーのバッテリB側に取込んでいるので、始動時にシステムメインリレーを接続したときにキャパシタ充電のための突入電流が流れることがなくなる。このため図1のシステムメインリレーSMR1および制限抵抗Rが不要となり構成が簡単になるとともに、図3に示した場合と比べて制御も図7に示すように簡単となる。
【0078】
図8は、車両停止時のリレーの制御を説明するためのフローチャートである。
図5、図8を参照して、まずステップS31において運転者がイグニッションキーまたはスタートスイッチを制御することにより起動信号IGONが非活性化され、続いてステップS32において制御装置130は、昇圧コンバータ12の昇圧動作を停止させる。
【0079】
続いてステップS33において制御装置130は高圧側のシステムメインリレーSMRPを導通状態から非導通状態に変化させる。さらにステップS34において制御装置130は接地側のシステムメインリレーSMRGを導通状態から非導通状態に変化させる。その後ステップS35において低圧系負荷に対する電源の供給が停止され、ステップS36において車両は停止状態となり、運転者からの次の起動指示の入力を待つ待機状態となる。
【0080】
図4で説明した検討例における車両停止時の制御と比べるとキャパシタ23に蓄積された電荷を車両停止ごとに放電させることが不要であるので制御が簡単となる。
【0081】
また起動および停止を頻繁に繰返すような使い方をした場合には特にキャパシタ23に蓄積された電荷分の電力が強制的なディスチャージにより損失として熱に変わることがないので車両の燃費も向上させることができる。
【0082】
なお、停止状態が長時間続くと、キャパシタ23の自己放電はバッテリBの自己放電よりも大きい場合が一般的であるのでキャパシタ23の端子間の電圧は次第に低下していくが、バッテリBの電圧以下に低下するとリアクトルL1およびダイオードD1を介してバッテリBから電流が供給され充電が行なわれるので、キャパシタ23の電圧はバッテリBの電圧とほぼ等しい状態で定常状態となる。
【0083】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、直流電源システムを昇圧コンバータやキャパシタを取込んで筐体に収める1パックとしたので、システムメインリレーの個数を減らし、制限抵抗を無くすことができる。また、これに伴い制御装置における制御も簡単なものでよくなり、制御装置の負荷も少なくなる。
【0084】
また、平滑コンデンサよりも大容量のキャパシタを昇圧コンバータの出力部分に設けたので、急加速時の応答性がよくなる。
【0085】
さらに、筐体内に収容したキャパシタや平滑コンデンサを車両停止ごとに放電させないので燃費も向上する。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】キャパシタを車両に搭載することを検討した検討例を示す回路図である。
【図2】図1で説明した車両100の各ユニットの搭載位置を説明するための図である。
【図3】図1の車両100における電源投入時のシステムメインリレーの制御シーケンスを説明するためのフローチャートである。
【図4】図1の車両100において実行される車両停止時のシステムメインリレーの制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両200の構成を示した回路図である。
【図6】図5で説明した車両200の各ユニットの車両内配置を説明するための図である。
【図7】車両起動時における車両200で実行されるシステムメインリレーの制御を説明するためのフローチャートである。
【図8】車両停止時のリレーの制御を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
2 車輪、3 動力分配機構、4 エンジン、6,8,106,108 パワーケーブル、10,13,21 電圧センサ、11,24 電流センサ、12 昇圧コンバータ、14,22 インバータ、15 U相アーム、16 V相アーム、17 W相アーム、20 パワーコントロールユニット、22 インバータ、23 キャパシタ、30,130 制御装置、40 電池ユニット、41,42,43,44,141,142,143,144 端子、100,200 車両、120 インバータユニット、140 直流電源システム、B バッテリ、C1,C2 平滑用コンデンサ、D1〜D8 ダイオード、L1 リアクトル、M1,M2 モータジェネレータ、Q1〜Q8 IGBT素子、R 制限抵抗、SMR1〜SMR5,SMRP,SMRG システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池の電圧を第1の接続ノードに受け第2の接続ノードから前記二次電池の端子間電圧を昇圧した電圧を出力する電圧変換器と、
前記電圧変換器によって昇圧された電圧の車両負荷に対する接続および非接続の切替を行なう接続部と、
前記二次電池、前記電圧変換器および前記接続部を収容する筐体とを備える、車両用電源システム。
【請求項2】
前記電圧変換器の前記第2の接続ノードに一方端が接続されるキャパシタをさらに備え、
前記筐体は、前記キャパシタをさらに収容する、請求項1に記載の車両用電源システム。
【請求項3】
前記キャパシタは、
直列接続される複数の電気二重層コンデンサを含む、請求項2に記載の車両用電源システム。
【請求項4】
前記電圧変換器は、
前記第1の接続ノードから前記第2の接続ノードに至る経路上において直列に接続されるリアクトルおよびスイッチング素子を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用電源システム。
【請求項5】
前記二次電池の端子間に接続される平滑コンデンサをさらに備え、
前記筐体は、前記平滑コンデンサをさらに収容する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用電源システム。
【請求項6】
前記筐体に設けられ、前記車両負荷に電力供給するための第1の導電線が接続される第1の端子と、
前記筐体に設けられ、前記第1のパワーケーブルの帰線である第2の導電線が接続される第2の端子とをさらに備え、
前記接続部は、
前記電圧変換器の第2のノードを前記第1の端子に接続する第1のリレー回路と、
前記電圧変換器の接地ノードを前記第2の端子に接続する第2のリレー回路とを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用電源システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用電源システムと、
前記車両用電源システムから電力供給を受ける車両負荷と、
前記車両用電源システムと前記車両負荷とを接続する電力ケーブルとを備える、車両。
【請求項8】
前記車両用電源システムは、運転席の前方空間および後方空間のいずれか一方に配置され、
前記車両用負荷は、前記前方空間および前記後方空間のいずれか他方に配置され、
前記電力ケーブルは、前記前方空間と前記後方空間の間に延在する、請求項7に記載の車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−345606(P2006−345606A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167214(P2005−167214)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】