説明

車両用電源システム

【課題】操作が簡易化され、利便性が高い態様で電力供給状態の切替を可能とする車両用電源システムの提供。
【解決手段】本発明は、IG電源がオンしている状態若しくは車両動力源がオンしている状態であるON状態と、ON状態でなくアクセサリ電源がオンしている状態であるACC状態と、車両動力源及びアクセサリ電源がオフしているOFF状態との間で状態を遷移させるための操作スイッチを有する車両用電源システム1において、OFF状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からON状態に遷移することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両のエンジン始動操作には、機械式キーをキーシリンダーに差し込み、そのキーを回転してエンジンを始動するという方法が用いられてきたが、近年では、プッシュ式スイッチ(エンジンスイッチ)の押下操作または接触操作によってエンジンが始動するプッシュスタートシステムが採用され始めている。
【0003】
ところで、機械式キーでは1つのキーを左右、すなわち、エンジン始動側の方向と、エンジン停止側の方向の、2つの方向に回転させることが可能であるとともに、その回転角度によって、電力供給状態(OFF状態、ACC状態など)を自由に切り替えることができる。それに対してプッシュスタートシステムでは、エンジンスイッチを押すという1方向の操作しかできず、かつ、押す回数によって電力供給状態を順次遷移させる。また、シフトポジションやブレーキペダルを踏む/踏まないといった情報によって、遷移先の電力供給状態が決定される場合が一般的である(特許文献1の図4参照)。
【特許文献1】特開2006−77592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的なプッシュスタートシステムでは、上述の特許文献1の図4にも記載されているように、ON状態(エンジン始動状態又はIG−ON状態)でシフトレバーがPレンジ以外の位置にあるときはエンジンスイッチが押されても、盗難防止要件からOFF状態とならずにACC状態となる。従って、かかるACC状態となった場合、OFF状態としたいユーザは、シフトレバーをPレンジにしてから、エンジンスイッチを押してON状態に戻し、改めてエンジンスイッチを押す必要がある(即ち、シフトレバーをPレンジにしてから、エンジンスイッチを2回押す必要がある)。かかる操作は、ユーザにとっては分かりにくいものであり、利便性面で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、操作が簡易化され、利便性が高い態様で電力供給状態の切替を可能とする車両用電源システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明は、IG電源がオンしている状態若しくは車両動力源がオンしている状態であるON状態と、ON状態でなくアクセサリ電源がオンしている状態であるACC状態と、車両動力源及びアクセサリ電源がオフしているOFF状態との間で状態を遷移させるための操作スイッチを有する車両用電源システムにおいて、
ON状態から遷移したACC状態と、OFF状態から遷移したACC状態とで、ACC状態から次の状態に遷移するための条件を異なるようにしたことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に係る車両用電源システムにおいて、
ON状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からOFF状態に遷移する一方、OFF状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からON状態に遷移することを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1又は2の発明に係る車両用電源システムにおいて、
ON状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からOFF状態に遷移する一方、ON状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置以外にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からON状態に遷移することを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第1の発明に係る車両用電源システムにおいて、
ON状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ON状態からOFF状態に遷移する一方、ON状態において、シフトレバーがパーキング位置以外にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ON状態からACC状態に遷移し、該遷移後のACC状態においてシフトレバーがパーキング位置に変更された場合には、操作スイッチの操作を待たずにACC状態からOFF状態に遷移することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、第5の発明は、IG電源がオンしている状態若しくは車両動力源がオンしている状態であるON状態と、ON状態でなくアクセサリ電源がオンしている状態であるACC状態と、車両動力源及びアクセサリ電源がオフしているOFF状態の間で状態を遷移させるための操作スイッチを有し、ON状態において、シフトレバーがパーキング位置以外にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ON状態からACC状態に遷移する車両用電源システムにおいて、
ON状態から遷移したACC状態において所定の操作が検出された場合に、OFF状態へと遷移することを特徴とする。
【0011】
第6の発明は、第5の発明に係る車両用電源システムにおいて、
前記所定の操作は、シフトレバーのパーキング位置への変更操作及び操作スイッチの操作、又は、シフトレバーのパーキング位置への変更操作のみであることを特徴とする。
【0012】
第7の発明は、第1から6のうちのいずれかの発明に係る車両用電源システムを構成するスイッチユニットであって、前記操作スイッチと、前記遷移を実現する制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作が簡易化され、利便性が高い態様で電力供給状態の切替を可能とする車両用電源システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0015】
図1は、本発明による車両用電源システム1の一実施例のシステム構成を示すブロック図である。図2(a)は、プッシュ式スイッチ3(以下、「エンジンスイッチ3」という)の一例を示す図であり、図2(b)は、図2(a)に示すエンジンスイッチ3の断面図である。
【0016】
車両用電源システム1は、車両の運転席前方に配設されたエンジンスイッチ3を備えている。エンジンスイッチ3は、ユーザにより押下操作される円筒状の操作部3aと、押下操作された操作部3aが当接するスイッチ部3bと、を有している。操作部3aは、その押下操作方向に摺動自在に支持され、内蔵するスプリング3cによって、押下操作方向と反対方向に付勢されている。スイッチ部3bは自己復帰型のスイッチが用いられている。ユーザが操作部3aを押下操作することで、操作部3aがスイッチ部3bを押下げ、スイッチ部3bがオン状態となる。一方、操作部3aは押下操作後、スプリング3cの付勢により元の位置に戻り、スイッチ部3bがオフ状態になる。尚、エンジンスイッチ3の操作態様は、通常の操作と、例えば3秒以上押し続ける長押し操作のような特別な操作とを含んでよいが、以下では、エンジンスイッチ3の操作に関る各種表現(押す、操作する等)は、長押し操作のような特別な操作でない通常の操作を意味する。
【0017】
エンジンスイッチ3のスイッチ部3bには、車両電源を制御する電源ECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)5が接続されている。エンジンスイッチ3の操作部3aが押下操作されると、スイッチ部3bがオン状態になり、エンジンスイッチ3から電源ECU5にオン信号が所定の微小時間だけ出力され、その後スイッチ部3bはオフ状態となり、エンジンスイッチ3から電源ECU5にオフ信号が出力される。即ち、ユーザがエンジンスイッチ3を1回操作する毎に、オン信号が電源ECU5に供給される。
【0018】
電源ECU5には、ブレーキスイッチ7が接続されている。ブレーキスイッチ7は、ブレーキペダルが踏込まれたときにオン状態となり、ブレーキペダルが踏込まれていないときにオフ状態となる。ブレーキスイッチ7は、例えばブレーキペダル近傍に配設されたタッチ式スイッチが用いられている。ブレーキスイッチ7はブレーキペダルが踏込まれ、オン状態にされると、電源ECU5にオン信号を出力する。一方、ブレーキスイッチ7はブレーキペダルの踏込みが解除され、オフ状態にされると、電源ECU5にオフ信号を出力する。なお、電源ECU5は、マスタシリンダ圧センサ、踏力センサやストップランプスイッチからの信号に基づいて、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを判別してもよい。
【0019】
電源ECU5には、シフトレバーの位置を検出するシフトポジションセンサ17が接続されている。電源ECU5は、シフトポジションセンサ17からの信号に基づいて、シフトレバーの位置がPレンジ,Nレンジ若しくはそれ以外(例えばDレンジ)であるかを判断する。
【0020】
電源ECU5には電源リレー回路9が接続されている。電源リレー回路9は、電源ECU5からの制御信号に基づいて、内部のACCリレー10、IGリレー11等リレースイッチをオン状態又はオフ状態に切替える。例えば、電源リレー回路9のACCリレー10を介して、バッテリ19とアクセサリ機器13とが接続される。アクセサリ機器13は、ACC状態で作動すべき車両の電子機器であり、例えば、オーディオ装置、照明装置(ルームランプ等)、空調装置等を含んでよい。なお、バッテリ19は、例えば充電可能な12Vの鉛バッテリであってよい。電源ECU5は電源リレー回路9に制御信号を送信して、ACCリレー10をオン状態にすることで、バッテリ19からアクセサリ機器13に電力が供給されるように制御する。この結果、アクセサリ電源がオンとなる。一方、電源ECU5は電源リレー回路9に制御信号を送信して、ACCリレー10をオフ状態にすることで、バッテリ19からアクセサリ機器13への電力の供給を停止するよう制御する。この結果、アクセサリ電源がオフとなる。
【0021】
また、バッテリ19には、電源リレー回路9を介して、アクセサリ機器13以外の他の車両の電子機器15が接続される。電子機器15は、例えばエンジンやブレーキ、トランスミッション等のような車両の走行に関連する装置(ECU、アクチュエータ、センサを含む)を含んでよい。以下、電子機器15を、「走行系機器15」ともいう。尚、電子機器15は、シートヒーターのような快適性に関る装置や、レーダーなどの他の装置を含んでよい。電源ECU5は電源リレー回路9に制御信号を送信して、IGリレー11をオン状態にすることで、バッテリ19から走行系機器15に電力が供給されるように制御する。この結果、IG電源がオンとなる。一方、電源ECU5は電源リレー回路9に制御信号を送信して、IGリレー11をオフ状態にすることで、バッテリ19から走行系機器15への電力の供給を停止するよう制御する。この結果、IG電源がオフとなる。
【0022】
電源ECU5は、エンジンスイッチ3からオン信号が供給されると、そのときの電源供給状態と、そのときのブレーキペダルの操作状態及びシフトポジション等に応じて、一定の規則に従って電源供給状態を変化させる。尚、ブレーキペダルの操作状態及びシフトポジションは、ブレーキスイッチ7及びシフトポジションセンサ17からの情報から判断されてよい。
【0023】
本例では、電源ECU5は、OFF状態、ACC状態、IG−ON状態及びエンジン始動状態の間で電源供給状態を遷移させる。OFF状態とは、IGリレー11及びACCリレー10が共にオフ状態である状態をいう。ACC状態とは、ACCリレー10がオン状態であるが、IGリレー11がオフ状態である状態をいう。IG−ON状態とは、IGリレー11及びACCリレー10が共にオン状態であるが、エンジンは始動していない状態をいう。これらの3つの状態は、上述のIGリレー11及びACCリレー10を制御することにより実現される。エンジン始動状態とは、IGリレー11及びACCリレー10が共にオン状態であり、且つ、エンジンが始動している状態をいう。尚、エンジン始動状態とは、エンジンが動作しているエンジン動作状態を含む。電源ECU5は、エンジンスタートリレー(図示せず)をオンにしてスターター(図示せず)を作動させることにより、エンジン始動状態を実現してよい。尚、IG−ON状態とエンジン始動状態とは、エンジンが作動しているか否かの相違があるだけで、電源供給状態は実質的に同じであってよい。
【0024】
ここで、電源供給状態の遷移態様の従来例を示す図3を参照するに、図3では、ブレーキペダルの操作状態及びシフトポジション等に応じた、OFF状態、ACC状態、IG−ON状態及びエンジン始動状態の間の状態遷移態様が示されている。尚、図3において、黒矢印は、車両停止時のみ許容される遷移態様を示す。
【0025】
図3に示す従来例では、例えばシフトポジションをPレンジにして、かつ、ブレーキペダルを踏まないでエンジンスイッチを押したとき、OFF状態、ACC状態、IG−ON状態が順次切り替わる(a1〜a3)。エンジンを始動するためには、安全の為に、ブレーキペダルを踏みながらスイッチを押す必要がある(a5〜a7)。また、Pレンジにしている場合は、ブレーキペダルを踏んでも踏まなくても、エンジンスイッチを押すだけでエンジン停止ができる(a4、a8)。一方、シフトポジションをNレンジにして、かつ、ブレーキペダルを踏まないでエンジンスイッチを押した場合は、IG−ON状態からOFF状態にならず、ACC状態になる(a11)。同様にして、エンジンを停止しようとしても、OFF状態にならない(a12、a16)。また、シフトポジションをP及びNレンジ以外にした(ギアが入っている)場合は、エンジンを始動できない(a21、a22)ようにされている。尚、シフトポジションがPレンジ以外の際、エンジンスイッチ操作でOFF状態とせずにACC状態に止めている理由は、盗難防止法規に準拠させる必要があるからである。
【0026】
ところで、エンジンスイッチを用いるプッシュスタート車では、ある電源供給状態でのスイッチ操作時のユーザの意思がIG−ON状態へ遷移させたいのかOFF状態へ遷移させたいのか判断不能であるため、実現する基本電源遷移ルートは、OFF状態、ACC状態、IG−ON状態、(エンジン始動状態)、OFF状態という順番のサイクリック遷移を取らざるを得ない。そのため、従来では、図3に示すように、一旦ACC状態となってしまうと、そこからエンジンスイッチの1操作でOFF状態へ遷移させる逆方向の遷移ルートが無いことに起因して、わざわざIG−ON状態(又はエンジン始動状態)を経由してOFF状態へ遷移させる必要があった。従って、例えばIG−ON状態からOFF状態に遷移させたい状況下で、ユーザが、シフトポジションをPレンジに入れるのを忘れて、エンジンスイッチを押した場合、盗難防止法規の関係でACC状態となるが、当該ACC状態からOFF状態に遷移させるのには、シフトポジションをPレンジに入れ、エンジンスイッチを2回押す必要がある。これは一般的なユーザには気付きにくい遷移であり、必ずしも利便性が高いとはいえない。
【0027】
そこで、本実施例は、以下で詳説する如く、IG−ON状態からACC状態となった場合でも、簡易な操作で、IG−ON状態を経由することなくOFF状態へ遷移させることを可能とし、利便性を向上させる。以下、この特徴的な構成について詳説する。
【0028】
図4は、電源ECU5により実現される電源遷移態様の要部の一例を示す状態遷移図である。図4では、ブレーキペダルが踏まれていない状況下でのエンジンスイッチ3の1操作(1回のオン信号)により実現される遷移を矢印で示している。また、図4において、上記の図3と同様の遷移については同一の参照符号が付されている。
【0029】
本実施例では、図4に示すように、ACC状態は、OFF状態からACC状態に遷移した場合と、IG−ON状態からACC状態に遷移した場合とで、物理的には同じ電源供給状態であるが、制御上異なる状態として取り扱われる。ここでは、OFF状態から遷移したACC状態を「ACC1」といい、IG−ON状態から遷移したACC状態を「ACC2」という。例えば、電源ECU5は、エンジンスイッチ3の操作に伴ってIG−ON状態若しくはOFF状態からACC状態への遷移が実現された場合には、ACC状態への遷移直前の状態(IG−ON状態若しくはOFF状態)に応じたフラグをセットして、現在のACC状態がACC1及びACC2のいずれであるかを把握できるようにしてよい。
【0030】
図4に示す例では、ACC2において、シフトポジションをPレンジにせずに、エンジンスイッチ3を押すと、ACC1におけるエンジンスイッチ3の操作時と同様(a10,a18)、IG−ON状態に遷移する(b1)。他方、ACC2において、シフトポジションをPレンジにして、エンジンスイッチ3を押すと、ACC1におけるエンジンスイッチ3の操作時(a1)とは逆に、OFF状態に遷移する(b2)。より具体的には、電源ECU5は、現在のACC状態がACC2である状況下で、エンジンスイッチ3からオン信号が1回供給された場合に、現在のシフトポジションがPレンジ以外であるときには、IGリレー11をオン状態にすることで、IG−ON状態に遷移させる。他方、電源ECU5は、現在のACC状態がACC2である状況下で、エンジンスイッチ3からオン信号が1回供給された場合に、現在のシフトポジションがPレンジであるときには、ACCリレー10をオフ状態にすることで、OFF状態に遷移させる。
【0031】
従って、図4に示す例によれば、IG−ON状態からOFF状態に遷移させたい状況下で、ユーザが、シフトポジションをPレンジに入れるのを忘れて、エンジンスイッチを押した場合、盗難防止法規の関係でACC状態となるが、当該ACC状態からOFF状態に遷移させるのには、シフトポジションをPレンジにしてから、エンジンスイッチ3を1回押すだけでよくなる。この操作は、やり直しに近い操作であるので一般的なユーザも気付き易く、しかもエンジンスイッチ3の操作回数も1回だけであるので、利便性が向上する。
【0032】
図5は、図4に示した電源遷移態様の要部を含む全体を示す図である。図5において、上記の図3及び図4と同様の遷移については同一の参照符号が付されている。尚、図5において、点線の囲み内に記載するように、遷移a1,a5等と同一のハッチングの矢印で示される遷移は、キー照合OK時のみ遷移可能である。例えばユーザの保持するスマートキーとの無線通信で得られるIDコードが正規のIDコードに合致することを前提として許容される遷移である。
【0033】
図4に示す例では、遷移b2は、ブレーキペダルが踏まれていない状況下での所定操作(シフトポジションのPレンジへの変更及びエンジンスイッチ3の押し操作)により実現される遷移であるが、ブレーキペダルが踏まれている状況下で同所定操作が行われた場合にも遷移b2が実現されてもよい(図5のb2’参照)。或いは、ACC2において、シフトポジションがPレンジに変更され、且つ、エンジンスイッチ3が操作された場合であって、ブレーキペダルが踏まれている場合には、エンジン始動状態への遷移を実現することとしてもよい(図5のa6参照)。
【0034】
また、図4に示す例では、IG−ON状態から遷移したACC状態を“ACC2”としているが、エンジン始動状態から遷移したACC状態(図5のa12,a16,a20,a23参照)についてもACC2としてもよい。即ち、エンジン始動状態から遷移したACC状態において、シフトポジションをPレンジにして、エンジンスイッチ3を押すと、OFF状態に遷移するようにしてもよい(図5の※参照)。
【0035】
図6は、電源ECU5により実現される電源遷移態様の要部のその他の一例を示す状態遷移図である。図6では、上記の図4と同様、ブレーキペダルが踏まれていない状況下でのエンジンスイッチ3の1操作(1回のオン信号)により実現される遷移を矢印で示している。また、図6において、上記の図3及び図4と同様の遷移については同一の参照符号が付されている。
【0036】
図6に示す例は、上記の図4に示す例に対して、ACC2からOFF状態への遷移ルートが存在する点で共通するが、ACC2からOFF状態への遷移が、より簡易な操作で実現される点が異なる。具体的には、図6に示す例では、ACC2において、シフトポジションをPレンジにすると、エンジンスイッチ3の操作無しで、OFF状態に遷移する(B2)。即ち、電源ECU5は、現在のACC状態がACC2である状況下で、シフトポジションがPレンジに変更された場合には、ACCリレー10をオフ状態にすることで、OFF状態に遷移させる。この際、電源ECU5は、好ましくは、シフトポジションがPレンジに変更された時点から所定時間ΔT(例えば5秒)経過後に、OFF状態に遷移させる。これは、シフトポジションがPレンジに変更されると同時にOFF状態に遷移させるとユーザに違和感を与える可能性があるからである。また、電源ECU5は、好ましくは、OFF状態に遷移させるまでの待機期間(=所定時間ΔT)中、例えば「まもなく全ての電源が切れます」といったような、OFF状態に遷移させる旨の通知(予告)を行う。この通知は、車室内のスピーカー及び/又はディスプレイを用いて、音声及び/又は映像により実現されてもよい。
【0037】
図6に示す例によれば、IG−ON状態からOFF状態に遷移させたい状況下で、ユーザが、シフトポジションをPレンジに入れるのを忘れて、エンジンスイッチを押した場合、盗難防止法規の関係でACC状態となるが、当該ACC状態からOFF状態に遷移させるのには、シフトポジションをPレンジに変更するだけでよくなる。この操作は、やり直しに近い操作であるので一般的なユーザも気付き易く、しかもエンジンスイッチ3の操作も不要であるので、利便性が向上する。
【0038】
尚、図6に示す例では、遷移B2は、ブレーキペダルが踏まれていない状況下での所定操作(シフトポジションのPレンジへの変更)により実現される遷移であるが、ブレーキペダルが踏まれている状況下で同所定操作が行われた場合にも遷移B2が実現されてもよい。
【0039】
また、図6に示す例では、IG−ON状態から遷移したACC状態を“ACC2”としているが、エンジン始動状態から遷移したACC状態についてもACC2としてもよい。即ち、エンジン始動状態から遷移したACC状態において、シフトポジションをPレンジに変更すると、所定時間ΔT経過後に、OFF状態に遷移するようにしてもよい。
【0040】
また、図6に示す例において、上記の所定時間ΔT中に、ユーザにより所定の操作が行われた場合には、OFF状態への遷移をキャンセルすることとしてもよい。即ち、上記の所定時間ΔT中に、ユーザにより所定の操作が行われた場合には、ACC2を維持することとしてもよいし、当該所定の操作に応じてIG−ON状態若しくはエンジン始動状態に遷移することとしてもよい。例えば、上記の所定時間ΔT中における上記の通知(OFF状態に遷移させる旨の通知)後に、エンジンスイッチ3が押された場合には、ブレーキペダルが踏まれていないときはIG−ON状態に遷移し、ブレーキペダルが踏まれているときはエンジン始動状態に遷移することとしてもよい。この場合、OFF状態に遷移させることがキャンセルされた旨の通知が実行されてもよい。また、上記の所定時間ΔT中における上記の通知(OFF状態に遷移させる旨の通知)後に、シフトポジションがPレンジ以外に変更された場合には、OFF状態への遷移をキャンセルしてACC2を維持することとしてもよい。この場合も、OFF状態に遷移させることがキャンセルされた旨の通知が実行されてもよい。
【0041】
尚、上述の実施例においては、IG−ON状態又はエンジン始動状態が、添付の特許請求の範囲における「ON状態」に対応する。
【0042】
また、上述した実施例において、ACC2からOFF状態への遷移(b2,B2)は、シフトポジションがPレンジにあるときの遷移であることから、当然ながら車両停止時のみ許容される遷移である。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0044】
例えば、上述した実施例において、電源ECU5は、例えば、エンジンECUやスマートECUのような既存のECUに組み込まれてもよいし、既存のECUとは別の新たなECUとして具現化されてもよい。また、電源ECU5の機能は、複数のECUにより協働して実現されてもよい。
【0045】
また、上述した実施例では、電源ECU5の配置位置について言及していないが、電源ECU5は、エンジンスイッチ3とは別の場所に搭載されてもよいし、エンジンスイッチ3と一体となるスイッチユニットとして具現化されてもよい。
【0046】
また、上述した実施例は、エンジンを車両走行の動力源とする車両に関するものであるが、エンジンに加えて電気モータを車両走行の動力源とするハイブリッド車両に対しても同様に適用可能である。また、本発明は、電気モータのみを車両走行の動力源とする電気自動車にも適用可能である。電気自動車の場合には、上述の実施例におけるエンジン始動状態を無くし、OFF状態、ACC状態及びIG−ON状態の間で状態遷移させればよい。尚、IG−ON状態では、電気モータはアクセルペダルの踏み込み時に作動される。即ち、電気自動車の場合には、電気モータがオンしているIG−ON状態(電気モータが作動可能なREADY状態を含む。)が、添付の特許請求の範囲における「ON状態」に対応する。また、電気自動車の場合には、エンジンスイッチは例えば“電源スイッチ”又は“モータスイッチ”のような別の適切な名称であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による車両用電源システム1の一実施例のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、エンジンスイッチ3の一例を示す図であり、図2(b)は図2(a)に示すエンジンスイッチ3の断面図である。
【図3】電源供給状態の遷移態様の従来例を示す図である。
【図4】図4に示した電源遷移態様の要部を含む全体を示す図である。
【図5】本実施例による電源供給状態の遷移態様の一例を示す図である。
【図6】電源ECU5により実現される電源遷移態様の要部のその他の一例を示す状態遷移図である。
【符号の説明】
【0048】
1 車両用電源システム
3 エンジンスイッチ
3a 操作部
3b スイッチ部
3c スプリング
5 電源ECU
7 ブレーキスイッチ
9 電源リレー回路
10 ACCリレー
11 IGリレー
13 アクセサリ機器
15 走行系機器
17 シフトポジションセンサ
19 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IG電源がオンしている状態若しくは車両動力源がオンしている状態であるON状態と、ON状態でなくアクセサリ電源がオンしている状態であるACC状態と、車両動力源及びアクセサリ電源がオフしているOFF状態との間で状態を遷移させるための操作スイッチを有する車両用電源システムにおいて、
ON状態から遷移したACC状態と、OFF状態から遷移したACC状態とで、ACC状態から次の状態に遷移するための条件を異なるようにしたことを特徴とする、車両用電源システム。
【請求項2】
ON状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からOFF状態に遷移する一方、OFF状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からON状態に遷移する、請求項1に記載の車両用電源システム。
【請求項3】
ON状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からOFF状態に遷移する一方、ON状態から遷移したACC状態において、シフトレバーがパーキング位置以外にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ACC状態からON状態に遷移する、請求項1又は2に記載の車両用電源システム。
【請求項4】
ON状態において、シフトレバーがパーキング位置にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ON状態からOFF状態に遷移する一方、ON状態において、シフトレバーがパーキング位置以外にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ON状態からACC状態に遷移し、該遷移後のACC状態においてシフトレバーがパーキング位置に変更された場合には、操作スイッチの操作を待たずにACC状態からOFF状態に遷移する、請求項1に記載の車両用電源システム。
【請求項5】
IG電源がオンしている状態若しくは車両動力源がオンしている状態であるON状態と、ON状態でなくアクセサリ電源がオンしている状態であるACC状態と、車両動力源及びアクセサリ電源がオフしているOFF状態の間で状態を遷移させるための操作スイッチを有し、ON状態において、シフトレバーがパーキング位置以外にある状況下で操作スイッチが操作された場合には、ON状態からACC状態に遷移する車両用電源システムにおいて、
ON状態から遷移したACC状態において所定の操作が検出された場合に、OFF状態へと遷移することを特徴とする、車両用電源システム。
【請求項6】
前記所定の操作は、シフトレバーのパーキング位置への変更操作及び操作スイッチの操作、又は、シフトレバーのパーキング位置への変更操作のみである、車両用電源システム。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の車両用電源システムを構成するスイッチユニットであって、前記操作スイッチと、前記遷移を実現する制御装置とを備える、スイッチユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−101843(P2009−101843A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275283(P2007−275283)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】