説明

車両盗難判定装置

【課題】 誤検出を防止する車両盗難判定装置を実現する。
【解決手段】 傾斜センサ11、高さセンサ12及びタイヤ圧センサ13は、駐車された車両30の挙動状態を検出し、それを角度信号θ、高さ信号H及び圧力信号Pとして送出する。この各センサ信号をセンサ信号取得部21により取得し、最初に取得した各センサ信号を初期値設定部22により初期値θi、Hi、Piとして設定する。次に、比較部23により、各初期値θi、Hi、Pi及び今回取得した角度信号θ1、高さ信号H1及び圧力信号P1をそれぞれ比較する。この比較結果に基づき、判定部24により車両が盗難されたか否かを判定する。これにより、フェリー上での揺れなど、例えば傾斜センサ11のみを備えている場合に盗難されたと誤検出するような車両30の挙動状態と、盗難に伴う車両30の挙動状態とを区別して検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に設けられる車両盗難判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両盗難判定装置として、駐車中の車両の異常な傾斜を傾斜センサにて検出したときに、GPS(Global Positioning system)などにより検出した自車位置情報を異常信号とともに所定の受信先に送信する車両盗難判定装置が知られている。
例えば、下記特許文献1では、第三者がレッカーなどを使用して車両を無断で運び出す際に前輪を持ち上げると、駐車中にもかかわらず車両の傾きが大きく変化するため、傾斜センサにより当該車両の盗難を検出することができる旨が、開示されている。
【特許文献1】特開平9−240432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の車両盗難判定装置では、例えば、車両を駐車した立体駐車場の駐車パレットが上下に移動する場合やフェリーで車両を輸送する際にフェリーが揺れた場合など、車両が無事に駐車されているにもかかわらず車両に傾斜が生じる場合には、傾斜センサが車両の異常な傾斜として検出してしまうおそれがあった。つまり、盗難に起因する傾斜の変化と盗難以外の事象に起因する傾斜とを区別することができず、車両が盗難されたものと誤検出するおそれがあるという問題があった。
【0004】
そこで、この発明は、誤検出を防止する車両盗難判定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両盗難判定装置は、駐車された車両の挙動状態を検出し、それをセンサ信号として送出可能な2種類以上のセンサを備え、車両に設けられる車両盗難判定装置であって、前記2種類以上のセンサから送出された各センサ信号を取得するセンサ信号取得手段と、前記車両を駐車した後に前記センサ信号取得手段により最初に取得した各センサ信号を初期値として設定する初期値設定手段と、前記初期値設定手段により設定された各初期値及び今回前記センサ信号取得手段により取得した前記各センサ信号を比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果に基づき、車両が盗難されたか否かを判定する判定手段と、を有する、という技術的手段を用いる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両盗難判定装置において、前記判定手段は、前記各初期値と前記各センサ信号との差がいずれも所定のしきい値を超えた場合に、車両が盗難されたと判定する、という技術的手段を用いる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両盗難判定装置において、前記2種類以上のセンサとして、車両の傾斜を検出し、その傾斜に基づく角度信号を送出することが可能な傾斜センサと、車両のサスペンションを構成するショックアブソーバのピストンロッド及びスプリングの少なくとも一方のストローク量を検出し、そのストローク量に基づき前記車両の車体と前記車両のタイヤとの距離に応じた高さ信号を送出することが可能な高さセンサと、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両盗難判定装置において、前記2種類以上のセンサとして、車両の傾斜を検出し、その傾斜に基づく角度信号を送出することが可能な傾斜センサと、前記タイヤに個別に設けられ、タイヤの空気圧を検出し、その空気圧に基づく圧力信号を送出することが可能なタイヤ圧センサと、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項5に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両盗難判定装置において、前記2種類以上のセンサとして、車両のサスペンションを構成するショックアブソーバのピストンロッド及びスプリングの少なくとも一方のストローク量を検出し、そのストローク量に基づき前記車両の車体と前記車両のタイヤとの距離に応じた高さ信号を送出することが可能な高さセンサと、前記タイヤに個別に設けられ、タイヤの空気圧を検出し、その空気圧に基づく圧力信号を送出することが可能なタイヤ圧センサと、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項6に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両盗難判定装置において、前記2種類以上のセンサとして、車両の傾斜を検出し、その傾斜に基づく角度信号を送出することが可能な傾斜センサと、車両のサスペンションを構成するショックアブソーバのピストンロッド及びスプリングの少なくとも一方のストローク量を検出し、そのストローク量に基づき前記車両の車体と前記車両のタイヤとの距離に応じた高さ信号を送出することが可能な高さセンサと、前記タイヤに個別に設けられ、タイヤの空気圧を検出し、その空気圧に基づく圧力信号を送出することが可能なタイヤ圧センサと、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項7に記載の発明では、請求項3、請求項4または請求項6に記載の車両盗難判定装置において、前記傾斜センサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の対角線の交点近傍のセンターコンソール内部に設けられている、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項8に記載の発明では、請求項3、請求項5または請求項6に記載の車両盗難判定装置において、前記高さセンサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の前後方向、左右方向及び対角方向のいずれかの位置にある2以上の前記サスペンションに対してそれぞれ設けられている、という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項9に記載の発明では、請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両盗難判定装置において、前記タイヤ圧センサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の前後方向、左右方向及び対角方向のいずれかの位置にある2以上の前記タイヤに対して設けられている、という技術的手段を用いる。
【0014】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の車両盗難判定装置において、前記2種類以上のセンサは、駐車された車両の挙動状態を検出し、それをセンサ信号として送出するための所定期間のみ作動する、という技術的手段を用いる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、車両盗難判定装置に備えられた2種類以上のセンサが、駐車された車両の挙動状態を検出し、それをセンサ信号として送出する。ここで、「駐車」とは、運転手が車両のエンジンを停止させて車両から離れた状態で、車両を継続的にとめておくことをいう。また、「駐車された車両の挙動状態」とは、車両の傾斜や高さなどの車両の姿勢変化を伴う車両の状態のことをいい、車両の状態変化によるタイヤの空気圧変動を含める概念である。この送出された各センサ信号をセンサ信号取得手段により取得し、最初に取得した各センサ信号を初期値設定手段により初期値として設定する。次に、比較手段により、初期値設定手段により設定された各初期値及び今回センサ信号取得手段により取得した各センサ信号を比較する。そして、この比較結果に基づき、判定手段により車両が盗難されたか否かを判定する。
例えば、傾斜センサのみを備えている場合には、第3段落に記載のように盗難されたものと誤検出するような車両の挙動状態の変化を盗難に伴う車両の挙動状態の変化とを区別して検出することができない。一方、請求項1に記載の発明によれば、駐車された車両の挙動状態を、2種類以上のセンサにより検出することができるので、盗難に伴う車両の挙動状態の変化を区別して検出することができる。
つまり、誤検出を防止する車両盗難判定装置を実現することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、各初期値と各センサ信号との差がいずれも所定のしきい値を超えた場合に、車両が盗難されたと判定手段により判定することができる。
したがって、各初期値と各センサ信号との差及びしきい値の比較により判定するため、容易かつ確実に車両の盗難を判定できる。また、しきい値を適正化することにより容易に判定精度を向上させることができる。
【0017】
請求項3ないし請求項6に記載の発明によれば、車両盗難判定装置が備えた2種類以上のセンサは、車両の傾斜を検出し、その傾斜に基づく角度信号を送出することが可能な傾斜センサと、車両のサスペンションを構成するショックアブソーバのピストンロッド及びスプリングの少なくとも一方のストローク量を検出し、そのストローク量に基づき前記車両の車体と前記車両のタイヤとの距離に応じた高さ信号を送出することが可能な高さセンサと、前記タイヤに個別に設けられ、タイヤの空気圧を検出し、その空気圧に基づく圧力信号を送出することが可能なタイヤ圧センサと、の中から選択される。
上記各センサは、車両の傾斜に伴う挙動状態の変化を検出して、それをセンサ信号として送出可能であるため、上記各センサから2種類以上のセンサの信号を組み合わせることにより、車両の傾斜状態をより詳細に検出することができる。このため、盗難に起因する車両の傾斜の変化とそれ以外の事象に起因する車両の傾斜の変化とを区別することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、傾斜センサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の対角線の交点近傍に設けられているため、車両の前後方向及び幅方向の傾斜をバランスよく検出することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、高さセンサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の前後方向、左右方向及び対角方向のいずれかの位置にある2以上のサスペンションに対して設けられているため、複数の方向に対して車両の傾斜に伴う車体とタイヤとの距離の変化を検出することができる。
また、高さセンサは2個以上設けられるため、1つの高さセンサが故障しても、残りの高さセンサがセンサ信号を送出することができる冗長構成になるので、車両盗難判定装置の信頼性が向上する。
特に、高さセンサが、4輪車両におけるタイヤ配置上の対角方向にある2以上のサスペンションに対して設けられている場合には、車両の前後左右全方向の傾斜の変化に対応した車体と車両との距離の変化を検出可能となるので、車両の姿勢をより正確に検出でき、車両盗難判定装置の精度を向上させることができる。更に、高さセンサを最低2個設ければ、車両の前後左右全方向の挙動状態の変化に対応して車体とタイヤとの距離の変化を検出することができるので、設ける高さセンサの数を少なくすることができる。
【0020】
請求項9に記載の発明によれば、タイヤ圧センサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の前後方向、左右方向及び対角方向のいずれかの位置にある2以上のタイヤに対して設けられているため、複数の方向に対して車両の傾斜に伴うタイヤ圧の変化、例えば、車両の前方が持ち上げられて、前上がりに傾斜した場合に、前輪にかかる車体重量が減少するため、タイヤ圧が低下する挙動を検出することができる。
また、タイヤ圧センサは2個以上設けられるため、1つのタイヤ圧センサが故障しても、残りのタイヤ圧センサがセンサ信号を送出することができる冗長構成になるので、車両盗難判定装置の信頼性が向上する。
特に、タイヤ圧センサが、4輪車両におけるタイヤ配置上の対角方向にある2以上のタイヤに対して設けられている場合には、車両の前後左右全方向の傾斜の変化に対応したタイヤ圧の変化を検出可能となるので、車両の姿勢をより正確に検出することができる。これにより、車両盗難判定装置の精度を向上させることができる。更に、タイヤ圧センサを最低2個設ければ、車両の前後左右全方向の挙動状態の変化に対応してタイヤ圧の変化を検出することができるので、設けるタイヤ圧センサの数を少なくすることができる。
【0021】
請求項10に記載の発明によれば、前記2種類以上のセンサは、駐車された車両の挙動状態を検出し、それをセンサ信号として送出するための所定期間のみ作動するため、センサを作動させるための電力消費を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明に係る車両盗難判定装置の実施形態について、図を参照して説明する。図1は、車両盗難判定装置の構成を示すブロック図である。図2は、傾斜センサ、高さセンサ及びタイヤ圧センサの配置を示す説明図である。図3は、サスペンションを構成するスプリング及びショックアブソーバのピストンロッドの説明図である。図4は、車両盗難判定装置による車両盗難判定処理を示すフローチャートである。図5は、レッカーで前方を持ち上げられた車両の説明図である。図6は、立体駐車場において駐車したパレットとともに傾斜した車両の説明図である。
【0023】
(車両盗難判定装置の構成)
図1に示すように、この実施形態の車両盗難判定装置1は、後述する傾斜センサ11、高さセンサ12及びタイヤ圧センサ13と、これらセンサから送出されたデータを処理する制御部20と、を備えている。
制御部20は、図示しないCPUを中心にROM、RAM等のメモリ装置や各種の入出力インタフェース等を備えた制御装置で、入力ポートには傾斜センサ11、高さセンサ12及びタイヤ圧センサ13が電気的に接続されている。
制御部20は、これらの各センサ(傾斜センサ11、高さセンサ12、タイヤ圧センサ13)から送出された各センサ信号を取得するセンサ信号取得部21と、車両30(図2)を駐車した後にセンサ信号取得部21により最初に取得した各センサ信号を初期値として設定する初期値設定部22と、初期値設定部22により設定された各初期値及び今回センサ信号取得部21により取得した各センサ信号を比較する比較部23と、比較部23における比較結果に基づき、車両30が盗難されたか否かを判定する判定部24と、判定部24における判定結果に基づき、車両30のホーンを鳴らしたり、携帯電話などに盗難の情報を通報するなどの警報を発する警報部25を備えている。
【0024】
(傾斜センサ、高さセンサ及びタイヤ圧センサ)
次に、傾斜センサ11、高さセンサ12及びタイヤ圧センサ13について説明する。図2は、車両を上から見たときの傾斜センサ11、高さセンサ12及びタイヤ圧センサ13の配置を示す説明図であり、矢印F、B、L、Rの向きがそれぞれ車両30の上下左右方向に相当する。
傾斜センサ11は、車両30に生じた加速度の変化により、車両30の傾斜を検出し、その傾斜に基づく角度信号θを送出することが可能なセンサであり、タイヤ32の配置上の対角方向C1及びC2の交点近傍に備えられた図示しないセンターコンソールの内部に設けられている(図5)。このため、車両の前後方向及び幅方向の傾斜をバランスよく検出することができる。
【0025】
高さセンサ12は、図3に示すように車両30のサスペンション33を構成するショックアブソーバ33aに設けられているピストンロッド33b及びスプリング33cの少なくとも一方のストローク量に基づいた車高を検出するセンサで、例えば図示しないレーザ変位計などにより当該ストローク量を検出し、そのストローク量に基づいて、車両30の車体31とタイヤ32の距離に応じた高さ信号Hを送出可能に構成されている。この高さセンサ12は、図2に示すように、各サスペンション33に対してそれぞれ設けられている。
なお、高さセンサ12は、車体31とタイヤ32の接地面Gとの離隔距離を検出するセンサでもよい。
【0026】
タイヤ圧センサ13は、タイヤ32の例えばホイールなどに個別に設けられ、タイヤ32の空気圧を検出し、その空気圧に基づく圧力信号Pを送出することが可能なセンサである。タイヤ圧センサ13は、各タイヤ32に対してそれぞれ設けられている。
高さセンサ12とタイヤ圧センサ13とを上記のようにサスペンション33ごと、タイヤ32ごとにそれぞれ配置することにより、車両30の前後左右全方向の傾斜の変化に対応したセンサ信号の変化を検出することができるので、車両30の姿勢をより正確に検出でき、車両盗難判定装置1の検出精度を向上することができる。更に、1つのセンサが故障しても、残りのセンサがセンサ信号を送出することができる冗長構成となるので、車両盗難判定装置1の信頼性を向上させることができる。
【0027】
(車両盗難判定動作装置による車両盗難判定処理)
次に、車両盗難判定装置による車両盗難判定処理について図4を用いて説明する。この車両盗難判定処理は、図1に示す制御部20において実行されるもので、例えば、車両30のイグニッションスイッチがオフされてから所定の時間間隔で行われる。
まず、制御部20では、ステップS1により車両30を駐車後(イグニッションスイッチがオフ後)に、最初に傾斜センサ11より送出された角度信号θの初期値θi、最初に高さセンサ12より送出された高さ信号Hの初期値Hi及び最初にタイヤ圧センサ13より送出された圧力信号Pの初期値Piが、センサ信号取得部21(図1)において取得されているか否かを判断する。
このステップS1により、角度信号θ、高さ信号H及び圧力信号Pのそれぞれの初期値θi、Hi、Piが取得されていないと判断すると(S1:No)、ステップS2に処理を移行して、当該ステップS2によって、最初に傾斜センサ11より送出された角度信号θ、最初に高さセンサ12より送出された高さ信号H及び最初にタイヤ圧センサ13より送出された圧力信号Pを取得し、これらを初期値θi、Hi、Piに設定する。このステップS2は、初期値設定部22により行われるもので、この処理が実行された場合には、本車両盗難判定処理は終了する。
【0028】
一方、ステップS1により角度信号θ、高さ信号H及び圧力信号Pの初期値θi、Hi、Piが取得されていると判定すると(S1:Yes)、続くステップS3により今回の角度信号θ1、高さ信号H1及び圧力信号P1を取得する。
次に、ステップS4によって、ステップS3により取得された角度信号θ1、高さ信号H1及び圧力信号P1と、ステップS2により取得された各初期値θi、Hi、Piとの比較を行う。このステップS4は、比較部23により行われるもので、当該比較は、角度信号θ1、高さ信号H1及び圧力信号P1とそれぞれの初期値θi、Hi、Piとの差分値Δθ、ΔH、ΔPをそれぞれ算出することにより行う。高さ信号H、圧力信号Pについては、例えば、4つのセンサそれぞれについて求められた差のうち、最も大きい値をΔH,ΔPとし、以下の判断に用いる。
【0029】
続いて、ステップS5、S6、S7において、差分値Δθ、ΔH、ΔPがあらかじめ設定されたしきい値を超えているかどうかを判断する。以下のS5、S6、S7は、判定部24により行われる。
まず、ステップS5により角度信号θの差分値Δθがしきい値θsを超えているか(Δθ>θs)否かを判断する。角度信号θの差分値Δθがしきい値θsを超えていると判断すると(S5:Yes)、続いて、ステップS6により高さ信号Hの差分値ΔHがしきい値Hsを超えているか(ΔH>Hs)否かを判断する。高さ信号Hの差分値ΔHがしきい値Hsを超えていると判断すると(S6:Yes)、続いて、ステップS7により圧力信号Pの差分値ΔPがしきい値Psを超えているか(ΔP>Ps)否かを判断する。圧力信号Pの差分値ΔPがしきい値Psを超えていると判断すると(S7:Yes)、角度信号θ、高さ信号H、圧力信号Pのいずれにおいてもしきい値θs、Hs、Psを超えていたことになるので、車両30が盗難されたと判定される。この場合、続くステップS8により警報を発し、本車両盗難判定処理を終了する。このステップS8は、警報部25により行われる。
【0030】
これに対し、角度信号θの差分値Δθ、高さ信号Hの差分値ΔH及び圧力信号Pの差分値ΔPのいずれか1つでもしきい値θs、Hs、Psを超えていない場合(S5:No、S6:No、または、S7:No)には、車両30が盗難されていないと判定されるので、警報を発せずに本車両盗難判定処理を終了する。
【0031】
なお、S5〜S7では、3つのセンサから送出されるセンサ信号(角度信号θ、高さ信号H、圧力信号P)のすべてがしきい値θs、Hs、Psを超えている場合に、車両30が盗難されていないと判定したが、3つのセンサのうち2つのセンサ信号がしきい値を超えた場合に、車両30が盗難されていないと判定してもよい。
【0032】
次に、レッカーなどにより車両30の前後一方を懸垂して無断で運び出される場合と、立体駐車場に駐車した車両30がパレット50とともに傾斜した場合と、を例にとり、車両盗難判定処理について説明する。
図5に示すように、レッカーなどにより車両30の前方Fを図5中に示す白矢印方向に懸垂して無断で運び出す場合には、車両30はタイヤ32の接地面Gに対して前上がりに傾斜する。これに伴って、前輪32aからは車重が抜けるため、タイヤ圧センサ13により検出される前輪32aの圧力信号P1は、駐車時の初期値Piから大きく低下する。
更に、サスペンション33から車体重量が減少し、宙に浮いた前輪32aの重量により重力方向に引っ張られるため(図5に示す黒矢印方向)、高さセンサ12により検出される高さ信号H1は、初期値Hiから大きく変化する。
したがって、判定部24により処理されるS5〜S7は、すべてYESとなるので、車両30が盗難されたと判定される。
なお、車両30の後方Bを懸垂して無断で運び出す場合にも同様となる。
【0033】
一方、図6に示すように、立体駐車場に駐車した車両30がパレット50とともに水平面G1に対して傾斜した場合に、上述のレッカーなどにより車両30の前方Fを懸垂した場合と同じだけ車両30が前上がりに傾斜したとする。ここで、レッカーなどにより車両30の前方を懸垂した場合と異なり、前輪32aには車重が負荷されたままであるので、高さ信号H1及び圧力信号P1はほとんど変動しない。したがって、判定部24により処理されるS5〜S7は、S5のみがYESとなるので、車両30が盗難されていないと判定される。
つまり、駐車された車両30に盗難以外の事象に起因する傾斜が生じた場合に、車両盗難判定装置1が傾斜センサ11しか備えていない場合には両事象の区別をすることができないが、本実施形態では、車両30の傾斜に伴う挙動状態の変化を検出しうるセンサのセンサ信号を組み合わせることにより、車両30の傾斜状態をより詳細に検出することができる。このため、盗難に起因する車両30の傾斜の変化とそれ以外の事象に起因する車両30の傾斜の変化とを区別することができ、車両30の盗難を誤検出するおそれがない。
【0034】
[実施形態の効果]
(1)上述のように、本実施形態の発明によれば、駐車された車両30の挙動状態を、傾斜センサ11、高さセンサ12及びタイヤ圧センサ13により検出することができるので、例えば傾斜センサ11のみを備えている場合に、盗難されたものと誤検出するような車両30の挙動状態の変化と、盗難に伴う車両30の挙動状態の変化とを区別して検出することができる。
つまり、誤検出を防止する車両盗難判定装置1を実現することができる。
【0035】
(2)判定部24による各センサ信号の差分値Δθ、H、Pと各初期値θi、Hi、Piとの差及びしきい値θs、Hs、Psの比較により車両30の盗難を判定するため、容易かつ確実に車両30の盗難を判定できる。また、しきい値θs、Hs、Psを適正化することにより容易に判定精度を向上させることができる。
【0036】
〈その他の実施形態〉
(1)車両盗難判定装置1が備えるセンサは、傾斜センサ11、高さセンサ12及びタイヤ圧センサ13の中から選ばれた2種類のセンサでもよい。例えば、図1に示した構成から、タイヤ圧センサ13を除いて、傾斜センサ11と高さセンサ12との2種類のセンサを備えている構成としてもよい。この場合、図4に示した車両盗難判定処理から、タイヤ圧センサ13に関する処理を省略する。具体的には、S2及びS3の処理において圧力信号を取得せず、S6の処理後にS7の処理を行うことなく、S8の処理に移行する。
この構成を用いた場合、図5に示すように、レッカーなどにより車両30の前方を懸垂して無断で運び出す場合には、サスペンション33から車体重量が減少し、宙に浮いた前輪32aの重量により重力方向に引っ張られるため、高さセンサ12により検出される高さ信号H1は、駐車時の初期値Hiから大きく変化する。一方、図6に示すように、立体駐車場に駐車した車両30がパレット50とともに前上がりに傾斜した場合には、車両30は前上がりに傾斜するが、高さ信号H1の変動はほとんどない。したがって、高さセンサ12の高さ信号Hが異なるため、両事象の区別をすることができる。
【0037】
(2)車両盗難判定装置1が備えるセンサは、図1に示した構成から、高さセンサ12を除いて、傾斜センサ11とタイヤ圧センサ13との2種類のセンサを備えている構成としてもよい。この場合、図4に示した車両盗難判定処理から、高さセンサ12に関する処理を省略する。具体的には、S2及びS3の処理において高さ信号を取得せず、S5の処理後にS6の処理を行うことなく、S7の処理に移行する。
この構成を用いた場合、図5に示すように、レッカーなどにより車両30の前方を懸垂して無断で運び出す場合には、車両30は前上がりに傾斜し、タイヤ圧センサ13により検出される前輪32aの圧力信号P1は、駐車時の初期値Piから大きく低下する。一方、図6に示すように、立体駐車場に駐車した車両30がパレット50とともに前上がりに傾斜した場合には、車両30は前上がりに傾斜するが、圧力信号P1の変動はほとんどない。したがって、タイヤ圧センサ13の圧力信号Pが異なるため、両事象の区別をすることができる。
【0038】
(3)車両盗難判定装置1が備えるセンサは、図1に示した構成から、傾斜センサ11を除いて、高さセンサ12とタイヤ圧センサ13との2種類のセンサを備えている構成としてもよい。この場合、図4に示した車両盗難判定処理から、傾斜センサ11に関する処理を省略する。具体的には、S2及びS3の処理において角度信号を取得せず、S4の処理後にS5の処理を行うことなく、S6の処理に移行する。
この構成を用いた場合、図5に示すように、レッカーなどにより車両30の前方を懸垂して無断で運び出す場合には、車両30は前上がりに傾斜し、タイヤ圧センサ13により検出される前輪32aの圧力信号P1は、駐車時の初期値Piから大きく低下する。また、サスペンション33から車体重量が減少し、宙に浮いた前輪32aの重量により重力方向に引っ張られるため、高さセンサ12により検出される高さ信号H1は、駐車時の初期値Hiから大きく変化する。一方、図6に示すように、立体駐車場に駐車した車両30がパレット50とともに前上がりに傾斜した場合には、車両30は前上がりに傾斜するが、圧力信号P1及び高さ信号H1の変動はほとんどない。したがって、タイヤ圧センサ13の圧力信号P及び高さセンサ12の高さ信号Hが異なるため、両事象の区別をすることができる。
【0039】
(4)また、図7に示すように、高さセンサ12は、タイヤ32の配置上の前後(F、B)方向、左右(L、R)方向及び対角(C1、C2)方向のいずれかの位置にある2以上のサスペンション33に対してそれぞれ設けてもよい。また、タイヤ圧センサ13は、タイヤ32の配置上の前後(F、B)方向、左右(L、R)方向及び対角(C1、C2)方向のいずれかの位置にある2以上のタイヤ32に対して設けてもよい。
例えば、高さセンサ12は、右前方及び左後方に備えられているサスペンション33、つまり、タイヤ32配置上の対角方向の位置にあるサスペンション33に対してそれぞれ設ける。また、タイヤ圧センサ13は、左前方及び右後方に備えられているタイヤ32に対してそれぞれ設ける。
つまり、高さセンサ12とタイヤ圧センサ13とは、タイヤ32の配置上の異なる対角方向に設け、4つのタイヤ32全てに対応する位置に、高さセンサ12、あるいは、タイヤ圧センサ13を設ける。
この構成を使用した場合でも、高さセンサ12、または、タイヤ圧センサ13を設置した箇所から送出されたセンサ信号がしきい値Hs、Psを超えなければ、盗難されたと判断しないため、車両30が盗難されていないにもかかわらず、盗難されたと判断する誤検出を防ぐことができる。また、高さセンサ12、または、タイヤ圧センサ13は、それぞれ2個以上設けられるため、1つのセンサが故障しても、残りのセンサがセンサ信号を送出することができる。
更に、車両30の前後左右全方向の傾斜の変化に対応した高さ信号H及び圧力信号Pの変化を検出することができ、車両盗難判定装置1の精度を向上することができる。また、高さセンサ12は、最低2個設ければ、車両の前後左右全方向の挙動状態の変化に対応して車体31とタイヤ32との距離の変化を検出することができるので、高さセンサ12を設ける数を少なくすることができる。同様に、タイヤ圧センサ13を最低2個設ければ車両の前後左右全方向の挙動状態の変化に対応してタイヤ圧の変化を検出することができるので、タイヤ圧センサ13を設ける数を少なくすることができる。
【0040】
(5)傾斜センサ11、高さセンサ12及びタイヤ圧センサ13は、駐車された車両の挙動状態を検出し、それをセンサ信号として送出するための所定期間のみ作動するように、間欠的に作動させてもよい。例えば、各センサを、S1の処理の後に作動させ、S2及びS3の処理の後に停止させてもよい。この構成を使用すると、センサを作動させるための電力消費を低減させることができる。
【0041】
[各請求項と実施形態との対応関係]
センサ信号取得部21が請求項1に記載のセンサ信号取得手段に、初期値設定部22が初期値設定手段に、比較部23が比較手段に、判定部24が判定手段にそれぞれ対応する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】車両盗難判定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】傾斜センサ、高さセンサ及びタイヤ圧センサの配置を示す説明図である。
【図3】サスペンションを構成するスプリング及びショックアブソーバのピストンロッドの説明図である。
【図4】車両盗難判定装置による車両盗難判定処理を示すフローチャートである。
【図5】レッカーで前方を持ち上げられた車両の説明図である。
【図6】立体駐車場において駐車したパレットとともに傾斜した車両の説明図である。
【図7】高さセンサ及びタイヤ圧センサの配置の変更例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 車両盗難判定装置
11 傾斜センサ
12 高さセンサ
13 タイヤ圧センサ
21 センサ信号取得部(センサ信号取得手段)
22 初期値設定部(初期値設定手段)
23 比較部(比較手段)
24 判定部(判定手段)
30 車両
31 車体
32 タイヤ
33 サスペンション
33a ショックアブソーバ
33b ピストンロッド
33c スプリング
θ 角度信号
H 高さ信号
P 圧力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車された車両の挙動状態を検出し、それをセンサ信号として送出可能な2種類以上のセンサを備え、車両に設けられる車両盗難判定装置であって、
前記2種類以上のセンサから送出された各センサ信号を取得するセンサ信号取得手段と、
前記車両を駐車した後に前記センサ信号取得手段により最初に取得した各センサ信号を初期値として設定する初期値設定手段と、
前記初期値設定手段により設定された各初期値及び今回前記センサ信号取得手段により取得した前記各センサ信号を比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき、車両が盗難されたか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする車両盗難判定装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記各初期値と前記各センサ信号との差がいずれも所定のしきい値を超えた場合に、車両が盗難されたと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両盗難判定装置。
【請求項3】
前記2種類以上のセンサとして、
車両の傾斜を検出し、その傾斜に基づく角度信号を送出することが可能な傾斜センサと、
車両のサスペンションを構成するショックアブソーバのピストンロッド及びスプリングの少なくとも一方のストローク量を検出し、そのストローク量に基づき前記車両の車体と前記車両のタイヤとの距離に応じた高さ信号を送出することが可能な高さセンサと、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両盗難判定装置。
【請求項4】
前記2種類以上のセンサとして、
車両の傾斜を検出し、その傾斜に基づく角度信号を送出することが可能な傾斜センサと、
前記タイヤに個別に設けられ、タイヤの空気圧を検出し、その空気圧に基づく圧力信号を送出することが可能なタイヤ圧センサと、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両盗難判定装置。
【請求項5】
前記2種類以上のセンサとして、
車両のサスペンションを構成するショックアブソーバのピストンロッド及びスプリングの少なくとも一方のストローク量を検出し、そのストローク量に基づき前記車両の車体と前記車両のタイヤとの距離に応じた高さ信号を送出することが可能な高さセンサと、
前記タイヤに個別に設けられ、タイヤの空気圧を検出し、その空気圧に基づく圧力信号を送出することが可能なタイヤ圧センサと、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両盗難判定装置。
【請求項6】
前記2種類以上のセンサとして、
車両の傾斜を検出し、その傾斜に基づく角度信号を送出することが可能な傾斜センサと、
車両のサスペンションを構成するショックアブソーバのピストンロッド及びスプリングの少なくとも一方のストローク量を検出し、そのストローク量に基づき前記車両の車体と前記車両のタイヤとの距離に応じた高さ信号を送出することが可能な高さセンサと、
前記タイヤに個別に設けられ、タイヤの空気圧を検出し、その空気圧に基づく圧力信号を送出することが可能なタイヤ圧センサと、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両盗難判定装置。
【請求項7】
前記傾斜センサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の対角線の交点近傍に設けられていることを特徴とする請求項3、請求項4または請求項6に記載の車両盗難判定装置。
【請求項8】
前記高さセンサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の前後方向、左右方向及び対角方向のいずれかの位置にある2以上の前記サスペンションに対してそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3、請求項5または請求項6に記載の車両盗難判定装置。
【請求項9】
前記タイヤ圧センサは、4輪車両におけるタイヤ配置上の前後方向、左右方向及び対角方向のいずれかの位置にある2以上の前記タイヤに対して設けられていることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両盗難判定装置。
【請求項10】
前記2種類以上のセンサは、駐車された車両の挙動状態を検出し、それをセンサ信号として送出するための所定期間のみ作動することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の車両盗難判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−131098(P2007−131098A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324882(P2005−324882)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】