説明

車両評価試験システムおよび車両評価試験方法

【課題】高精度、短時間、低コストで車両評価試験を実現する車両評価試験システム、車両評価試験方法を提供する。
【解決手段】押圧によるアクセルペダル120の変位量に基づき、アクセル制御信号を出力するアクセル制御信号発生手段120と、アクセル制御信号と代替可能な擬似アクセル制御信号を出力する擬似アクセル制御信号発生手段100と、擬似アクセル制御信号およびアクセル制御信号のいずれかを選択するアクセル制御信号選択手段110と、アクセル制御信号選択手段が選択した擬似アクセル制御信号およびアクセル制御信号のいずれかに基づき車両のエンジンを制御するエンジン制御手段130と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両評価試験システムおよび車両評価試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両評価試験においては、操作ロッドと駆動機構からなる試験装置を車両の運転席シートの下方に固定して設置し、駆動機構が操作ロッドを車両前後方向に変位させることで操作ロッドの先端でアクセルペダルを自動的に押圧し、アクセル制御をしていた。
【0003】
しかし、このような試験装置を用いると、ドライバーの足元空間に試験装置のモータやアクチュエータ、操作ロッドが配置され、操作ロッドが車両前後方向に変位するため、ドライバーの足元空間が減少し、ドライバーの運転操作のための余裕が無くなる。そのため、ドライバー特性が変化し、車両評価試験に支障を生じる可能性がある。また、装置のアクチュエータノイズにより、車内騒音データまたは音振データの取得に支障が生じる可能性がある。さらに、コストが比較的高いという問題がある。
【0004】
一方、スロットルバイワイヤ方式のアクセル制御を行う車両において、アクセルペダルからのアクセル制御信号と、コンソールまたはドライバーの手元のアクセルレバーからのアクセル制御信号と、のいずれかを選択してアクセル制御を行うアクセル制御装置が公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−129898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような手動によるアクセル制御装置を用いた場合、精度良い走行パターンの再現が比較的難しく、高精度かつ短時間で車両評価試験を行うことが困難である。
【0006】
また、アクセル制御を自動化するために、前記アクセル制御装置にアクチュエータを取り付けてアクセルレバーを駆動すると、装置の大型化およびアクチュエータノイズの発生により、高精度かつ低コストで車両評価試験を行うことが困難となる。
【0007】
さらに、アクチュエータには通常モータを用いるが、モータによる制御では、立ち上がり応答が遅いため、高精度な車両評価試験の実現が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両評価試験システムは、アクセル制御信号発生手段と、擬似アクセル制御信号発生手段と、アクセル制御信号選択手段と、エンジン制御手段と、を有する。アクセル制御信号発生手段は、押圧によるアクセルペダルの変位量に基づき、アクセル制御信号を出力する。擬似アクセル制御信号発生手段は、アクセル制御信号と代替可能な擬似アクセル制御信号を出力する。アクセル制御信号選択手段は、擬似アクセル制御信号およびアクセル制御信号のいずれかを選択する。エンジン制御手段は、アクセル制御信号選択手段が選択した擬似アクセル制御信号およびアクセル制御信号のいずれかに基づき車両のエンジンを制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両評価試験システムによれば、通常のアクセル制御信号と、車両評価に用いアクセル制御信号と代替可能な擬似アクセル制御信号とを切替可能とし、車両評価試験におけるアクセル制御を擬似アクセル制御信号による自動制御とすることで、車両評価試験を、高精度、短時間、低コストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る車両評価試験システムおよび車両評価試験方法の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る車両評価システムを示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る車両評価システム10は、コンピュータ100(タイマ101を含む)、制御ボックス110、アクセルペダル120、ECM(Engine Controll Module)130、車両速度検出器140、車両位置検出器150、操作ボックス160、ブレーキペダル170、ペダル押圧検出器171、ウォッチドックタイマ回路113、手元スイッチ114、エンジン180を有する。コンピュータ100、アクセルペダル120、ECM130、車両速度検出器140、車両位置検出器150、操作ボックス160、ペダル押圧検出器171、ウォッチドックタイマ回路113、手元スイッチ114、は制御ボックス110と、一方向または双方向に通信可能にする。当該通信は、電気的な有線接続によってもよいがこれに限定されない。すなわち、例えば、無線によってもよい。
【0013】
コンピュータ100は、制御ボックス110と情報の送受信を行う。コンピュータ100は、アクセルペダル120が送信するアクセル制御信号と電気的インタフェースを整合させることで代替可能とした擬似アクセル制御信号を、制御ボックス110へ送信する。制御ボックス110は、車両速度検出器140から受信した車両の速度情報、車両位置検出器150から受信した、走行路上に定めたポイントに対する車両の相対位置情報を、コンピュータ100へ送信する。
【0014】
コンピュータ100は、一般的なパーソナルコンピュータを使用することができる。従って、コンピュータ100は、制御装置、演算装置、記憶装置、入出力装置を含む。本実施形態においては、コンピュータ100は、時間計測機能を有するタイマ101をも含む。ただし、タイマ101は、外部装置のものを用いてもよい。
【0015】
制御ボックス110には、コンピュータ100、アクセルペダル120、ECM130、車両速度検出器140、車両位置検出器150、操作ボックス160、ペダル押圧検出器171、ウォッチドックタイマ回路113、手元スイッチ114、を接続する。制御ボックス110は、これらの要素間の通信インタフェースとして機能する。
【0016】
制御ボックス110は、切替スイッチ111および安全回路112を有する。
【0017】
切替スイッチ111は、後述する選択信号に基づき、コンピュータ100から受信する擬似アクセル制御信号と、アクセルペダル120から受信するアクセル制御信号と、のいずれかをスイッチの切り替えにより選択し、選択した方の信号をECM130に送信する。すなわち、コンピュータ100からの擬似アクセル制御信号を選択する場合は、コンピュータ100とECM130との間の通信路を接続し、かつ、アクセルペダル120の出力とECM130との間の通信路を遮断するようにスイッチを切り替える。逆に、アクセルペダル120からのアクセル制御信号を選択する場合は、アクセルペダル120の出力とECM130との間の通信路を接続し、コンピュータ100とECM130との間の通信路を遮断するようにスイッチを切り替える。
【0018】
選択信号は、コンピュータ100、操作ボックス160、および、安全回路112のいずれから送信される。切替スイッチ111は、電気信号によりON/OFF制御可能なリレーにより構成することができる。
【0019】
本実施形態においては、アクセルペダル120が発生する通常のアクセル制御信号と電気的に整合させた擬似アクセル制御信号をコンピュータ100に発生させる。アクセルペダル120が発生するアクセル制御信号とコンピュータ100が発生する擬似アクセル制御信号を電気的に整合させることで、いずれの信号によってもECM130を介してエンジン180を制御することが可能となる。すなわち、アクセル制御信号と擬似アクセル制御信号とを切替可能とすることができる。アクセル制御信号と擬似アクセル制御信号とを切替可能にするのは、擬似アクセル制御信号によって車両が制御されている最中であっても、ドライバーの安全面から、異常発生時には速やかにアクセルペダル120による通常のアクセル制御に戻す必要があるからである。車両の制御を、コンピュータによる制御およびアクセルペダルによる制御のいずれかに任意に切り替えることができるため、ドライバーの安全を確保するとともに、試験終了後の車両の移動を簡単に可能とし、使い勝手のよさを実現することができる。
【0020】
コンピュータ100が発生する擬似アクセル制御信号は、車両評価試験におけるアクセル制御信号として使用する。擬似アクセル制御信号を発生させるプログラムは、あらかじめコンピュータ100に記憶させておくことにより、車両評価試験におけるアクセル制御を自動化することができる。これにより、車両評価試験を複数回実施した場合の、アクセル制御の再現性を向上させることができるとともに、車両評価試験時間を短縮することができる。
【0021】
本実施形態によれば、大型の装置を用いる必要がないので、車両評価試験を低コストで実現することができる。また、車両評価試験を、高精度、短時間、低コストで実現することができる。また、複雑なリンク機構を持たないため、システムの車両への取り付けが容易であり、足下空間に余裕ができるため、ドライバー特性が変化することがなく、車両評価試験に支障を生じることがない。また、アクチュエータ方式を使用しないため、ノイズ源を無くし、車内騒音の測定を安定に行うことができる。また、自動化した電気指令によるアクセル制御を行うことにより、安定した精度を保つアクセル制御を可能とし、様々な過酷な車両評価試験に容易に適用することができる。また、電気指令によるアクセル制御信号の立ち上がり応答遅れは、モータ制御と比較して相当小さいため、高精度な車両評価試験を実現することができる。また、アクチュエータ・サーボモータを使用した複雑なハード構成ではないため、低コストで車両評価試験を実現することができる。
【0022】
安全回路112は、異常発生時に、強制的に、切替スイッチ111にアクセルペダル120からのアクセル制御信号を選択させる機能を有する。すなわち、安全回路112は、異常発生時において、車両のエンジン制御を安全側とするために、コンピュータ100からの擬似制御信号による制御からアクセルペダル120による通常の手動制御に切り替える。
【0023】
異常の第一形態としては、例えば、コンピュータ100が送信する擬似アクセル制御信号の異常がある。擬似アクセル制御信号の異常とは、例えば、擬似アクセル制御信号が送信されない状態や、当該信号自体が異常な状態が考えられる。このような異常は、例えば、ウォッチドックタイマ回路113によりコンピュータ100の出力パルスを監視することで検出することができる。
【0024】
異常の第二形態としては、例えば、車両を運転するドライバーの異常がある。ドライバーの異常は、例えば、ドライバーの手元にドライバー手元スイッチ114を設け、ドライバーがドライバー手元スイッチ114を押していないことにより検出することができる。
【0025】
異常の第三形態としては、例えば、車両走行路上の異常がある。走行路上の異常とは、例えば、走行路上に障害物を発見した場合が考えられる。このような異常は、例えば、ドライバーがブレーキペダル170を踏んだことを検出することで検出することができる。
【0026】
本実施形態によれば、コンピュータが送信する擬似アクセル制御信号に異常が生じた場合でも、コンピュータの出力パルスの監視を行うことで異常を検出し、コンピュータによる車両の制御を無効とするため、試験中のドライバーの安全を確保することができる。また、コンピュータが送信する擬似アクセル制御信号の異常、ドラーバーが手元スイッチを押していないことによる異常、ドライバーがブレーキペダルを踏んだことによる異常、のいずれかの異常を検出したときは、車両の制御をコンピュータからアクセルペダルに切り替えるため、ドライバーの安全を確保することができる。
【0027】
アクセルペダル120は、通常のスロットルバイワイヤ方式のアクセル制御を行う車両に実装されているものをいう。アクセルペダル120は、ペダル変位量に対応したアクセル制御信号を出力する。ただし、アクセルペダルとは別に、アクセルペダルのペダル変位量に対応したアクセル制御信号を出力する装置を用いてもよい。
【0028】
ECM130は、車両エンジン制御用のマイクロコンピュータモジュールである。通常、車両に実装されており、エンジン180を制御する。本実施形態では、アクセルペダル120とECM130との間を制御ボックス110の切替スイッチ111を介して接続する。これにより、ECM130には、切替スイッチ111による選択により、コンピュータ100からの擬似アクセル制御信号およびアクセルペダル120からのアクセル制御信号のいずれか一方が入力される。すなわち、ECM130は、制御ボックス110から受信した擬似アクセル制御信号およびアクセル制御信号のいずれかに基づきエンジン180を制御する。
【0029】
車両速度検出器140は、車両の速度を検出し、制御ボックス110を介してコンピュータ100に車両の速度の情報を送信する。車両速度検出器140は、光学式車速計、車両のCANデータ、車輪速センサ、GPS出力、車両の位置計測から速度を演算するものとして構成してもよい。
【0030】
コンピュータ100は、車両速度検出器140から受信した車両の速度の情報を擬似アクセル制御信号にフィードバックして、車両の速度を調整する。これにより、システム内でクローズドループのフィードバックを構成するため、高精度な車両評価試験を実現することができる。また、車両評価試験のデータばらつきを人の操作と比較して低減することができる。さらに、車両評価試験のデータばらつきを低減することで、実験回数を減らすことができる。
【0031】
車両位置検出器150は、走行路上に設けた複数のポイントと車両との相対位置(以下、「車両の相対位置」と称する)を検出し、制御ボックス110を介してコンピュータ100に車両の相対位置の情報を送信する。車両位置検出器150は、GPSの位置情報や光電センサ、車速情報から車両の相対位置を演算するものとして構成してもよい。
【0032】
操作ボックス160は、制御ボックス110と接続することで、切替スイッチ111の切り替えを手動で行うことを可能とする。これにより、切替スイッチ111の切り替えは、コンピュータ100、安全回路112、および、操作ボックス160のいずれかからの選択信号により可能となる。
【0033】
操作ボックス160へは、制御ボックス110から様々な情報を送信する。制御ボックス110から操作ボックス160へ送信する情報としては、例えば、切替スイッチ111の切替位置の情報、異常発生の情報、車両の速度の情報、車両の相対位置の情報が考えられる。
【0034】
ブレーキペダル170は通常の車両に実装されているものである。本実施形態においては、ブレーキペダル170のペダル部分にブレーキペダルの押圧を検出するペダル押圧検出器171を設ける。これにより、ドライバーがブレーキペダルを踏んだ(押圧した)ことを検出することができる。すなわち、ドライバーがブレーキペダルを踏んだことで、前述した、異常の第三形態を検出することができる。なお、ペダル押圧検出器171を用いずに、ブレーキペダル170の出力信号をモニタすることでブレーキペダルの押圧を検出してもよい。
【0035】
ペダル押圧検出器171は、ブレーキペダル170が踏まれたとき、異常検出信号を、制御ボックス110を介してコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、異常検出信号を受信すると、制御ボックス110に選択信号を送信し、切替スイッチ111をアクセルペダル側に切り替えさせる。すなわち、切替スイッチ111にアクセルペダル120からのアクセル制御信号を強制的に選択させる。なお、操作ボックス160の操作、または、安全回路112により、切替スイッチ111にアクセルペダルからのアクセル制御信号を強制的に選択させることもできる。
【0036】
ウォッチドックタイマ回路113は、前述したように、コンピュータ100の出力パルスを受信し、これを監視することで前述した異常の第一形態を検出する。異常の第一形態としては、前述したように、擬似アクセル制御信号が送信されない場合や、当該信号自体が異常な場合が考えられる。これらの異常は、コンピュータ100の異常でソフトがフリーズしたことや、ケーブルの断線や半勘合によって擬似アクセル制御信号が異常になったことが原因で起こりうる。
【0037】
ウォッチドックタイマ回路113は、異常発生を検出したとき、異常検出信号を、制御ボックス110を介してコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、異常検出信号を受信すると、制御ボックス110に選択信号を送信し、切替スイッチ111をアクセルペダル側に切り替えさせる。すなわち、切替スイッチ111にアクセルペダルからのアクセル制御信号を強制的に選択させる。なお、操作ボックス160の操作、または、安全回路112により、切替スイッチ111にアクセルペダルからのアクセル制御信号を強制的に選択させることもできる。
【0038】
手元スイッチ114は、前述したように、ドライバーの手元に設けられる。すなわち、例えば、手元スイッチ114は、車両のハンドルに設けてもよい。これにより、ドライバーが手元スイッチ114を押さない、もしくは、押せない状態を検出することができる。
【0039】
手元スイッチ114は、手元スイッチ114が押されていないときは、異常検出信号を、制御ボックス110を介してコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、異常検出信号を受信すると、制御ボックス110に選択信号を送信し、切替スイッチ111をアクセルペダル側に切り替えさせる。すなわち、切替スイッチ111にアクセルペダルからのアクセル制御信号を強制的に選択させる。なお、操作ボックス160の操作、または、安全回路112により、切替スイッチ111にアクセルペダルからのアクセル制御信号を強制的に選択させることもできる。
【0040】
本実施形態におけるコンピュータ100は本願発明の擬似アクセル制御信号発生手段に相当し、タイマは時間計測手段に相当する。アクセルペダル120はアクセル制御信号発生手段に相当する。制御ボックス110および切替スイッチ111はアクセル制御信号選択手段に相当し、ECM130はエンジン制御手段に相当する。車両速度検出器150は車両速度検出手段に相当し、車両位置検出器150は車両位置検出手段に相当する。ウォッチドックタイマ回路113は第一異常検出手段に相当し、手元スイッチ114は第二異常検出手段に相当し、ペダル押圧検出器171は第三異常検出手段に相当し、安全回路112は強制アクセル制御信号選択手段に相当する。
【0041】
以上、本発明の実施形態に係る車両評価試験システムについて詳細に説明したが、本実施形態は以下の効果を奏する。
・通常のアクセル制御信号と車両評価に用いる擬似アクセル制御信号とを切替可能とし、車両評価試験におけるアクセル制御を擬似アクセル制御信号による自動制御とすることで、車両評価試験を、高精度、短時間、低コストで実現することができる。
・複雑なリンク機構を持たないため、システムの車両への取り付けが容易であり、足下空間に余裕ができるため、ドライバー特性が変化することがなく、車両評価試験に支障を生じることがない。
・アクチュエータ方式を使用しないことでノイズ源を無くし、車内騒音の測定を安定に行うことができる。
・車両の速度を検出し、これに基づいてアクセル制御をするため、システム内でクローズドループのフィードバックを構成し、高精度な車両評価試験を実現することができる。
・自動化した電気指令によるアクセル制御を行うことにより、安定した精度を保つアクセル制御を可能とし、様々な過酷な車両評価試験に容易に適用することができる。
・電気指令によるアクセル制御信号の立ち上がり応答遅れは、モータ制御と比較して相当小さいため、高精度な車両評価試験を実現することができる。
・アクチュエータ・サーボモータを使用した複雑なハード構成ではないため、低コストで車両評価試験を実現することができる。
・車両の速度をフィードバックした電気指令による自動化したアクセル制御を行うことにより、車両評価試験のデータばらつきを人の操作と比較して低減することができる。
・車両評価試験のデータばらつきを低減することで、実験回数を減らすことができる。
・コンピュータが送信する擬似アクセル制御信号に異常が生じた場合でも、コンピュータの出力パルスの監視を行うことで異常を検出し、コンピュータによる車両の制御を無効とするため、試験中のドライバーの安全を確保することができる。
・コンピュータが送信する擬似アクセル制御信号の異常、ドラーバーが手元スイッチを押していないことによる異常、ドライバーがブレーキペダルを踏んだことによる異常、のいずれかの異常を検出したときは、車両の制御をコンピュータからアクセルペダルに切り替えるため、ドライバーの安全を確保することができる。
・車両の制御を、コンピュータによる制御およびアクセルペダルによる制御のいずれかに任意に切り替えることができるため、試験終了後の車両の移動を簡単に可能とし、使い勝手のよさを実現することができる。
【0042】
図2は、本発明の第1実施形態に係る車両評価試験方法のフローチャートを示す図である。本実施形態に係る車両評価試験方法は、目標地点(後述する第2ポイント)を目標速度で車両を通過させる方法に関するものである。以下、ステップ番号を明示してステップごとに本実施形態について詳細に説明する。
【0043】
[S200]
擬似アクセル制御信号を選択する。
【0044】
本実施形態に係る車両評価試験方法は、前述した本発明の実施形態に係る車両評価試験システムを使用して実施する。
【0045】
車両評価試験においては、擬似アクセル制御信号によるアクセル制御で車両を制御する。そのため、本ステップにおいては、コンピュータ100から選択信号を制御ボックス110に送信し、切替スイッチ111に擬似アクセル制御信号を選択させる。本ステップおよび以下のステップ、すなわち、S210の予備試験、S220の実試験、S230の試験終了は、プログラムにより自動的に行う。プログラムはあらかじめコンピュータ100に記憶させておく。
【0046】
なお、走行路上の試験開始地点まで車両を移動させる必要性等を考慮し、車両の運転席にはドライバーが搭乗する。
【0047】
[S210]
予備試験を行う。
【0048】
実際に車両評価を行う本試験(S220)の前に、本試験における擬似アクセル制御信号による自動アクセル制御に必要なパラメータを取得するために予備試験を行う。
【0049】
図3は、予備試験S210のサブルーチンを示す図である。以下、予備試験S210のサブルーチンをステップことに説明する。
【0050】
[S310]
車両の等速走行を開始する。
【0051】
車両は、コンピュータ100からの擬似アクセル制御信号により、第一速度に達するまで加速し、第一速度に達した後は、第一速度で等速走行させる。ここで、第一速度は、例えば20km/hであってもよいが、これに限定されない。
【0052】
[S320]
車両が第1ポイントに到達したかどうか判断する。
【0053】
図4は、本実施形態に係る車両評価試験方法に使用する車両の走行路を模式的に示す図である。
【0054】
走行路上には、あらかじめ、第1〜第3ポイントを定める。第2ポイントは、車両を目標速度で通過させるべき目標地点である。車両評価試験が騒音試験である場合は、第2ポイントにおいて車両の走行路と直交する直線上の特定の地点において、地上1.2mに騒音試験用のマイクを設置する。
【0055】
本ステップにおいては、車両位置検出器150からの車両の相対位置の情報に基づき、コンピュータ100が、車両が第1ポイントに到達したかどうか、すなわち、第1ポイントと車両との相対位置が一致したかどうかを判断する。
【0056】
コンピュータ100が、車両が第1ポイントに到達したと判断したときは、次ステップS330に移行し、直ちにスロットル全開にして車両を加速する。
【0057】
[S330]
車両を全開加速する。
【0058】
前ステップS320で、車両が第1ポイントに到達したと判断したとき、直ちに、コンピュータ100の擬似アクセル制御信号で、車両をスロットル全開にして加速する。
【0059】
スロットル全開とした車両の加速は、次ステップS340で車両の速度が目標速度に達したことを検知するまで行う。
【0060】
[S340]
車両が目標速度に到達したかどうかを判断する。
【0061】
車両の速度は、車両速度検出器140が検出する。車両速度検出器140は、車両の速度の情報を、制御ボックス110を介してコンピュータ100に送信する。コンピュータ100が車両の速度が目標速度に到達したと判断したとき、次ステップS350に移行し、直ちに、車両に目標速度での等速走行を開始させるとともに、タイマ101に時間の計測を開始させる。目標速度は、50km/hであってもよいがこれに限定されない。
【0062】
[S350]
車両を目標速度で等速走行させ、オフセット時間の計測を開始する。
【0063】
コンピュータ100は、車両が目標速度に達したと判断したとき、直ちに、スロットル全開による加速を止め、車両を目標速度で等速走行させるとともに、タイマ101に時間の計測を開始させる。タイマ101に時間の計測を開始させるのは、オフセット時間を計測するためである。オフセット時間は、本試験における擬似アクセル制御信号による自動アクセル制御に必要なパラメータである。
【0064】
[S360]
車両が第2ポイントに到達したかどうかを判断する。
【0065】
コンピュータ100は、車両を目標速度で等速走行させたまま、車両位置検出器150から受信した車両の相対位置の情報に基づき車両が第2ポイントに到達したかどうか判断する。
【0066】
車両が第2ポイントに到達したと判断したときは、次ステップS370に移行し、タイマ101に時間の計測を終了させる。ここで、タイマ101により時間の計測を開始してから終了するまでの間の時間は、車両が目標速度で等速走行した時間であり、この時間がオフセット時間である。
【0067】
[S370]
オフセット時間の計測を終了する。
【0068】
上述したように、コンピュータ100が、車両が第2ポイントに到達したと判断したときは、直ちに、タイマ101に時間の計測を終了させ、オフセット時間の計測を終了する。コンピュータ100は計測させたオフセット時間を記憶する。
【0069】
[S380]
車両が第3ポイントに到達したかどうかを判断する。
【0070】
コンピュータ100は、車両に目標速度での等速走行を維持させたまま、車両位置検出器150から受信した車両の相対位置の情報に基づき車両が第3ポイントに到達したかどうかを判断する。
【0071】
車両が第3ポイントに到達したと判断したときは、次ステップS390に移行し、車両の減速を開始する。
【0072】
[S390]
車両を減速する。
【0073】
前ステップS380で、車両が第3ポイントに到達したことを検知したときは、コンピュータ100は、擬似アクセル制御信号により、エンジン180のスロットルを全閉とし、車両を減速させる。
【0074】
以上、予備試験のサブルーチンフローチャートは終了し、図2のメインフローチャートに戻って、ステップS220の実試験を実施する。
【0075】
図5は実試験のサブルーチンフローチャートを示す図である。以下、ステップ番号を明示して、ステップ番号ごとに実試験のサブルーチンフローチャートについて説明する。
【0076】
[S500]
車両の等速走行を開始する。
【0077】
車両は、コンピュータ100からの擬似アクセル制御信号により、第一速度に達するまで加速し、第一速度に達した後は加速を止め、第一速度で等速走行させる。ここで、第一速度は、予備試験における第一速度と同じ速度である。
【0078】
実試験に使用する車両の走行路は予備試験と同じ走行路とする。なお、実試験における車両の走行開始地点は、予備試験における走行開始地点と異なってもよいが、同じであることが望ましい。
【0079】
[S510]
車両が第1ポイントに到達したかどうかを判断する。
【0080】
コンピュータ100は、車両位置検出器150からの車両の相対位置の情報に基づき、車両が第1ポイントに到達したかどうかを判断する。
【0081】
コンピュータ100が、車両が第1ポイントに到達したと判断したときは、次ステップS520に移行し、第1ポイントからオフセット距離だけ車両を第一速度で等速走行させる。ここで、オフセット距離とは、オフセット時間に第二速度を乗じて得た距離である。
【0082】
[S520]
車両がオフセット距離を走行したかどうかを判断する。
【0083】
コンピュータ100は、予備試験において記憶したオフセット時間に第二速度を乗じることでオフセット距離をあらかじめ算出しておき、第1ポイントからオフセット距離を車両が走行したと判断するまで車両を第一速度で等速走行させる。車両がオフセット距離を走行したかどうかは、車両位置検出器150から制御ボックス110を介して送信される車両の相対位置の情報と算出したオフセット距離に基づいて判断する。図4のA−A’線は第1ポイントからオフセット距離離れた地点を示している。
【0084】
車両が第1ポイントからオフセット距離を走行したと判断したときは、ステップS530に移行し、直ちにスロットル全開にして車両を加速する。
【0085】
[S530]
車両を全開加速する。
【0086】
前ステップS520で、第1ポイントからオフセット距離を走行したと判断したとき、直ちに、コンピュータ100の擬似アクセル制御信号で、車両をスロットル全開にして加速する。
【0087】
[S540]
車両を第2ポイントに到達させる。
【0088】
コンピュータ100は、ステップS520で、第1ポイントからオフセット距離を走行したと判断したとき、直ちに、前ステップS530で、車両をスロットル全開にして加速する。そして、車両をスロットル全開にして加速させた状態で第2ポイントに到達させる。これにより、車両は第2ポイントにおいて目標速度に達する。
【0089】
ステップS500〜S530を実施することで、車両が第2ポイントにおいて目標速度に達する理由は、次のとおりである。すなわち、第1ポイントと第2ポイントとの間の距離は、予備試験で、車両を加速させた距離(図4では、A−A’線とP−P’線間の距離がこれに相当する)と目標速度で第2ポイントまで等速走行させた距離(すなわち、オフセット距離であり、図4では、第1ポイントとA−A’線間の距離がこれに相当する)との和に相当する。そうすると、車両を加速してから車両が目標速度に達するまでの距離は予備試験も実試験も同じであるから、本試験においては、あらかじめ第1ポイントからオフセット距離を走行させた後車両を加速する。このようにすることで、目標地点である第2ポイントにおいて車両を目標速度で到達させることができる。
【0090】
[S550]
車両が第3ポイントに到達したかどうかを判断する。
【0091】
コンピュータ100は、車両に目標速度での等速走行を維持させたまま、車両位置検出器150から受信した車両の相対位置の情報に基づき車両が第3ポイントに到達したかどうかを判断する。車両に目標速度で等速走行させる距離は、図4のP−P’線とB−B’線間の距離である。
【0092】
車両が第3ポイントに到達したと判断したときは、次ステップS560に移行し、車両の減速を開始する。
【0093】
[S560]
車両を減速する。
【0094】
前ステップS550で、車両が第3ポイントに到達したことを検知したときは、コンピュータ100は、擬似アクセル制御信号により、エンジン180のスロットルを全閉とし、車両を減速させる。
【0095】
以上で予備試験のサブルーチンフローチャートは終了し、図2のメインフローチャートに戻って、ステップS230で車両評価試験を終了させるかどうかを判断する。
【0096】
[S230]
車両評価試験を終了させるかどうかを判断する。
【0097】
車両評価試験においては、実試験を複数回実施するのが通常であるため、さらに実試験をする必要がある場合は、ステップS220に戻って実試験を行う。
【0098】
所定回数の実試験が終了し、さらに実試験を行う必要がない場合は、車両評価試験を終了する。
【0099】
図6は、本実施形態において、車両を低速走行させた状態から全開加速にしたとき車両のアクセル開度、スロットル開度、エンジントルクの測定結果のばらつきを示す図である。
【0100】
図6のAは、人(通常のアクセル制御信号)による場合のばらつきを示し、Bは本実施形態(擬似アクセル制御信号)による場合のばらつきを示す。図6を参照すると、本実施形態によれば、車両評価試験のデータばらつきを人の操作と比較して33〜90%低減することができたことが判る。すなわち、本実施形態を実施した結果、車速精度向上による車両評価試験のデータの精度向上、データのばらつき低減、試験回数および試験時間の低減による試験の効率化を実現できた。
【0101】
本実施形態に係る車両評価試験方法は、上述した本発明の実施形態に係る車両評価試験システムを使用して行う。ただし、本実施形態は他のシステム(装置等)によっても実施することができ、また、人によって実施することもできる。
【0102】
以上、本発明の第1実施形態に係る車両評価試験方法について詳細に説明したが、本実施形態は以下の効果を奏する。
・車速精度向上による車両評価試験のデータの精度向上、データのばらつき低減、試験回数および試験時間の低減による試験の効率化を実現できる。
・通常のアクセル制御信号と車両評価に用いる擬似アクセル制御信号とを切替可能とし、車両評価試験におけるアクセル制御を擬似アクセル制御信号による自動制御とすることで、車両評価試験を、高精度、短時間、低コストで実現することができる。
・アクチュエータ方式を使用しないことでノイズ源を無くし、車内騒音の測定を安定に行うことができる。
・車両の速度を検出し、これに基づいてアクセル制御をするため、システム内でクローズドループのフィードバックを構成し、高精度な車両評価試験を実現することができる。
・自動化した電気指令によるアクセル制御を行うことにより、安定した精度を保つアクセル制御を可能とし、様々な過酷な車両評価試験に容易に適用することができる。
・電気指令によるアクセル制御信号の立ち上がり応答遅れは、モータ制御と比較して相当小さいため、高精度な車両評価試験を実現することができる。
・アクチュエータ・サーボモータを使用した複雑なハード構成ではないため、低コストで車両評価試験を実現することができる。
・車両の速度をフィードバックした電気指令による自動化したアクセル制御を行うことにより、車両評価試験のデータばらつきを人の操作と比較して低減することができる。
【0103】
図7は、本発明の第2実施形態に係る車両評価試験方法のフローチャートを示す図である。本実施形態に係る車両評価試験方法は、異常時においても、車両評価試験を安全側に導く車両評価試験方法に関する。以下、ステップ番号を明示して、ステップごとに本実施形態について詳細に説明する。
【0104】
[S700]
キャリブレーションを実施する。
【0105】
第一のキャリブレーションにおいては、アクセルペダル120の出力電圧であるアクセル制御信号の仕様に、コンピュータ100の出力電圧である擬似アクセル制御信号の仕様を整合させる。アクセルペダル120のペダル変位量に対応したアクセル制御信号とコンピュータ100の擬似アクセル制御信号仕様を整合させることで、通常のアクセル制御信号と車両評価に用いる擬似アクセル制御信号とは相互に代替性を有する。これにより、アクセル制御信号と擬似アクセル制御信号とは相互に切り替えることが可能になる。
【0106】
第二のキャリブレーションにおいては、コンピュータ100が認識する車両の速度と、車両速度検出器140から制御ボックスを介してコンピュータ100に入力される車両の速度の情報に対応した電圧と、を整合させる。これにより、コンピュータ100が認識する車両の速度と、実際の車両の速度とを相互に整合させることができる。
【0107】
第三のキャリブレーションにおいては、コンピュータ100が認識する車両の相対位置と、車両位置検出器150から制御ボックスを介してコンピュータ100に入力される車両の相対位置の情報に対応した電圧と、を整合させる。これにより、コンピュータ100が認識する車両の相対位置と、実際の車両の相対位置とを整合させることができる。
【0108】
[S710]
試験モードを設定する。
【0109】
車両評価試験としては、例えば、車外騒音試験、車内騒音試験がある。本ステップにおいては、車両評価試験としてどの試験を行うかを設定する。試験モードの設定は、コンピュータ100の入出力装置への入力、または、操作ボックス160への入力により行ってもよい。コンピュータ100は、設定された試験モードに対応したプログラムに基づき擬似アクセル制御信号を発生および送信して、エンジン180を制御する。
【0110】
次ステップS720では、擬似アクセル制御信号を選択することでアクセルペダル120による車両の制御が無効となる。従って、本ステップ中に、走行路上の試験開始地点まで車両を移動させておく。本実施形態においては、走行路上の試験開始地点まで車両を移動させる必要があるため、車両の運転席にはドライバーが搭乗する。ただし、例えば、外部からの車両制御により車両を移動させる場合は、車両にドライバーが搭乗しなくてもよい。
【0111】
本実施形態によれば、車両の制御を、コンピュータによる制御およびアクセルペダルによる制御のいずれかに任意に切り替えるため、試験終了後の車両の移動を簡単に可能とし、使い勝手のよさを実現することができる。
【0112】
[S720]
擬似アクセル制御信号を選択する。
【0113】
本実施形態に係る車両評価試験方法においては、前述した第1実施形態と同様に、擬似アクセル制御信号によるアクセル制御で車両を制御する。そのため、本ステップにおいては、コンピュータ100から選択信号を制御ボックス110に送信し、切替スイッチ111に擬似アクセル制御信号を選択させる。選択信号は、操作ボックス160から手動で入力してもよい。
【0114】
[S730]
異常がないかどうか確認する。
【0115】
ここで、異常とは、上述したように、コンピュータ100が送信する擬似アクセル制御信号の異常、ドラーバーが手元スイッチを押していないことによる異常、ドライバーがブレーキペダルを踏んだことによる異常である。安全回路112は、異常を検出したときに、強制的に、切替スイッチ111にアクセルペダル120からのアクセル制御信号を選択させる。
【0116】
コンピュータ100は、例えば、安全回路112から異常の有無の情報を受信することで異常を確認することができる。異常を確認したときは、ステップS700に戻り、キャリブレーションの実施から本実施形態を再度開始する。
【0117】
本実施形態によれば、コンピュータが送信する擬似アクセル制御信号に異常が生じた場合でも、コンピュータの出力パルスの監視を行うことで異常を検出し、コンピュータによる車両の制御を無効とするため、試験中のドライバーの安全を確保することができる。また、コンピュータが送信する擬似アクセル制御信号の異常、ドラーバーが手元スイッチを押していないことによる異常、ドライバーがブレーキペダルを踏んだことによる異常、のいずれかの異常を検出したときは、車両の制御をコンピュータからアクセルペダルに切り替えるため、ドライバーの安全を確保することができる。
【0118】
[S740]
アクセルペダル操作が無効で、コンピュータ操作が有効であるかどうかを確認する。
【0119】
ステップS700〜S730まで正常に実施されたときは、ステップS720において擬似アクセル制御信号が選択された状態が維持されていることとなる。このため、本ステップでは、アクセルペダル操作が無効で、コンピュータ操作が有効であるかどうかを確認する。
【0120】
アクセルペダル操作が無効で、コンピュータ操作が有効であるかどうかは、例えば、安全回路112が有する異常の有無の情報を操作ボックス160に受信させ、操作ボックス160の表示部に表示させることで間接的に確認することができる。また、アクセルペダル120を踏むことにより、アクセルペダル操作が無効でコンピュータ操作が有効であることを直接的に確認してもよい。アクセルペダル操作が無効で、コンピュータ操作が有効となっていない場合は、ステップS700に戻り、キャリブレーションの実施から本実施形態を再度開始する。
【0121】
[S750]
車両評価試験を開始する。
【0122】
本ステップは第1実施形態におけるステップS210〜S220において説明した、予備試験および実試験からなる車両評価試験を開始するものであり、試験の内容は同様であるため説明は省略する。
【0123】
[S760]
試験モードパターン動作を実施する。
【0124】
本実施形態においては、試験モードパターン動作として、車両の速度のフィードバック制御を行う。コンピュータ100は、車両速度検出器140から制御ボックス110を介して車両の速度の情報を受信しつつ、受信した車両の速度が所望の速度と一致するように擬似アクセル制御信号を調整する。これにより、車両の速度の精度を向上させることができるため、試験データの精度向上、実験回数の削減を実現することができる。
【0125】
[S770]
車両評価試験を終了させるかどうかを判断する。
【0126】
引き続き、同じ車両で他の車両評価試験を行う場合は、ステップS710に戻って、再度、当該他の車両評価試験の試験モードの設定を行う。
【0127】
実試験が終了し、さらに実試験を行う必要がない場合は、車両評価試験を終了する。
【0128】
本実施形態に係る車両評価試験方法は、上述した本発明の実施形態に係る車両評価試験システムを使用して行う。ただし、本実施形態は他のシステム(装置等)によっても実施することができ、また、人によって実施することもできる。
【0129】
以上、本発明の第2実施形態に係る車両評価試験方法について詳細に説明したが、本実施形態は第1実施形態に加え、以下の効果を奏する。
・コンピュータが送信する擬似アクセル制御信号に異常が生じた場合でも、コンピュータの出力パルスの監視を行うことで異常を検出し、コンピュータによる車両の制御を無効とするため、試験中のドライバーの安全を確保することができる。
・コンピュータが送信する擬似アクセル制御信号の異常、ドラーバーが手元スイッチを押していないことによる異常、ドライバーがブレーキペダルを踏んだことによる異常、のいずれかの異常を検出したときは、車両の制御をコンピュータからアクセルペダルに切り替えるため、ドライバーの安全を確保することができる。
・車両の制御を、コンピュータによる制御およびアクセルペダルによる制御のいずれかに任意に切り替えることができるため、試験終了後の車両の移動を簡単に可能とし、使い勝手のよさを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施形態に係る車両評価システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る車両評価試験方法のフローチャートを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車両評価試験方法の予備試験のサブルーチンを示す図である。
【図4】本発明の第1本実施形態に係る車両評価試験方法に使用する車両の走行路を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る車両評価試験方法の実試験のサブルーチンフローチャートを示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態において、車両を低速走行させた状態から全開加速にしたとき車両のアクセル開度、スロットル開度、エンジントルクの測定結果のばらつきを示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る車両評価試験方法のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0131】
10 車両評価試験システム、
100 コンピュータ(擬似アクセル制御信号発生手段)、
101 タイマ(時間計測手段)、
110 制御ボックス(アクセル制御信号選択手段)、
111 切替スイッチ(アクセル制御信号選択手段)、
112 安全回路(強制アクセル制御信号選択手段)、
113 ウォッチドックタイマ回路(第一異常検出手段)、
114 手元スイッチ(第二異常検出手段)、
120 アクセルペダル(アクセル制御信号発生手段)、
130 ECM(エンジン制御手段)、
140 車両速度検出器(車両速度検出手段)、
150 車両位置検出器(車両位置検出手段)、
160 操作ボックス、
170 ブレーキペダル(第三異常検出手段)、
171 ペダル押圧検出器(第三異常検出手段)、
180 エンジン、
400 車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧によるアクセルペダルの変位量に基づき、アクセル制御信号を出力するアクセル制御信号発生手段と、
前記アクセル制御信号と代替可能な擬似アクセル制御信号を出力する擬似アクセル制御信号発生手段と、
前記擬似アクセル制御信号および前記アクセル制御信号のいずれかを選択するアクセル制御信号選択手段と、
前記アクセル制御信号選択手段が選択した前記擬似アクセル制御信号および前記アクセル制御信号のいずれかに基づき車両のエンジンを制御するエンジン制御手段と、
を有することを特徴とする車両評価試験システム。
【請求項2】
車両の速度を検出する車両速度検出手段と、
前記車両が走行する走行路上の複数のポイントと前記車両との相対位置を検出する車両位置検出手段と、
時間を計測する時間計測手段と、をさらに有し、
前記擬似アクセル制御信号発生手段は、
前記車両を第一速度で等速走行させ、前記車両位置検出手段が検出した前記走行路上の第1ポイントと前記車両との相対位置が一致したとき、前記車両のエンジンのスロットルを全開にして前記車両を加速させる信号と、
前記加速により前記車両速度検出手段が検出した前記車両の速度が第二速度に達したときから、前記車両位置検出手段が検出した前記第2ポイントと前記車両との相対位置が一致するまでの前記時間計測手段が計測したオフセット時間を、前記第二速度のまま前記車両に等速走行させる信号と、
前記車両を前記第一速度で等速走行させ、前記車両位置検出手段が検出した前記第1ポイントと前記車両との相対位置が一致したときから、前記オフセット時間と前記第二速度とを乗じて得たオフセット距離を、前記第一速度のまま前記車両に等速走行させる信号と、
前記第一速度のまま前記車両に等速走行させた後、前記車両のエンジンのスロットルを全開にして前記車両を加速させる信号と、
を出力することを特徴とする請求項1に記載の車両評価試験システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両評価システムを用いた試験方法であって、
前記アクセル制御信号選択手段が前記擬似アクセル制御信号を選択する段階と、
前記擬似アクセル制御信号により、車両を第一速度で等速走行させた状態で、走行路上の第1ポイントと前記車両の位置が一致したとき、前記車両のエンジンのスロットルを全開にし、前記車両の速度が第二速度に達するまで前記車両を加速させる段階と、
前記車両の速度が前記第二速度に達したときから前記車両を前記第二速度のまま等速走行させ、前記第二速度に達したときから前記走行路上の第2ポイントと前記車両との相対位置が一致するまでの前記時間計測手段が計測したオフセット時間を記憶する段階と、
前記車両を前記第一速度で等速走行させ、前記第1ポイントと前記車両との相対位置が一致したときから、前記オフセット時間と前記第二速度とを乗じて得たオフセット距離を、前記第一速度のまま前記車両に等速走行させる段階と、
前記第一速度のまま前記車両に等速走行させた後、前記車両のエンジンのスロットルを全開にして前記車両を加速する段階と、
を有することを特徴とする車両評価試験方法。
【請求項4】
前記擬似アクセル制御信号の異常を検出し異常検出信号を出力する第一異常検出手段と、
ドライバーの手元に設けられた手元スイッチを有し、前記手元スイッチを押していないことで異常を検出し異常検出信号を出力する第二異常検出手段と、
ドライバーがブレーキペダルを踏んだことで、異常を検出し異常検出信号を出力する第三異常検出手段と、
前記第一異常検出手段、前記第二異常検出手段、前記第三異常検出手段、のいずれかが異常検出信号を発信したとき、前記アクセル制御信号選択手段に前記アクセル制御信号を選択させる強制アクセル制御信号選択手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の車両評価試験システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両評価システムを用いた試験方法であって、
前記アクセル制御信号選択手段が前記擬似アクセル制御信号を選択する段階と、
前記第一異常検出手段、前記第二異常検出手段、前記第三異常検出手段、のいずれかが異常を検出したとき、前記アクセル制御信号選択手段に前記アクセル制御信号を選択させる段階と、
前記擬似アクセル制御信号により、車両を第一速度で等速走行させた状態で、走行路上の第1ポイントと前記車両の位置が一致したとき、前記車両のエンジンのスロットルを全開にして前記車両の速度が第二速度に達するまで前記車両を加速する段階と、
前記車両の速度が前記第二速度に達したときから前記車両を前記第二速度のまま等速走行させ、前記第二速度に達したときから前記走行路上の第2ポイントと前記車両との相対位置が一致するまでの、前記時間計測手段が計測したオフセット時間を記憶する段階と、
前記車両を前記第一速度で等速走行させ、前記第1ポイントと前記車両との相対位置が一致したときから、前記オフセット時間と前記第二速度とを乗じて得たオフセット距離を、前記第一速度のまま前記車両に等速走行させる段階と、
前記第一速度のまま前記車両に等速走行させた後、前記車両のエンジンのスロットルを全開にして前記車両を加速する段階と、
を有することを特徴とする車両評価試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−156623(P2010−156623A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335486(P2008−335486)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】