説明

車両電源システム

【課題】ステアリング操作やサスペンション動作から得られた回生エネルギーを有効利用することができ、かつ、失陥時における電源バックアップを効果的に行うことができる、車両電源システムを提供する。
【解決手段】高圧電源11から供給される高電圧(288V)が流れる高電圧供給ラインAと中間電圧(42V)が流れる中間電圧供給ラインBとの間に挿入されるDC−DCコンバータ22、及び低圧電源12から供給される低電圧(12V)が流れる低電圧供給ラインCと中間電圧が流れる中間電圧供給ラインBとの間に挿入されるDC−DCコンバータ23の両方を、双方向DC−DCコンバータで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両電源システムに関し、より特定的には、複数の電源系統を使用するハイブリッドシステムを搭載した車両の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を用いた動力発生機構と電気モータを用いた動力発生機構とを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載した車両が、急速に普及している。このようなハイブリッドシステムにおいては、車両を駆動する十分な動力を発生させるために、電気モータに高電圧(例えば288V)を供給する必要がある。この電気モータ等に高電圧を供給する高圧電源には、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。
【0003】
また、このハイブリッドシステムを搭載した車両においても、内燃機関による動力だけを使用していた車両に搭載されているランプ類、オーディオ類、及び電子制御ブレーキ装置等の、いわゆる補機と呼ばれる設備/機器に供給する低電圧(例えば12V)が必要である。この補機に低電圧を供給する低圧電源には、鉛蓄電池等の二次電池が用いられる。
【0004】
さらには、このハイブリッドシステムを搭載した車両には、ステアリングの回転操作を補助する装置、すなわち電動パワーステアリング装置(EPS)に用いられる電動モータや、車両の走行に伴う振動を抑制する装置、すなわちサスペンション制御装置に用いられる電動モータに供給する中間電圧(例えば42V)が必要である。一般に、この中間電圧は、高圧電源が供給する高電圧をDC−DCコンバータを用いて降圧することで生成される。
【0005】
このような高電圧、中間電圧、及び低電圧の3種類を供給する従来の車両電源システム101及び102の一例を、図3及び図4に示す。図3は、中間電圧を供給する装置として、電動パワーステアリング装置131(図中では「ステアリング−ECU」と表記)だけを備えた構成を表した図である。図4は、中間電圧を供給する装置として、電動パワーステアリング装置131に加えて、車両の横滑りを防止するアクスタ装置132(図中では「アクスタ−ECU」と表記)及びサスペンション装置133(図中では「サスペンション−ECU」と表記)を備えた構成を表した図である。
【0006】
この図3及び図4に示す従来の車両電源システム101及び102は、高電圧288Vを供給する高圧電源111、低電圧12Vを供給する低圧電源112、及び電子制御ブレーキ装置134専用のバックアップ電源であるバックアップキャパシタ135の3つの電源と、高電圧を降圧して補機に供給する低電圧を生成する補機用DC−DCコンバータ121、高電圧を降圧して電動パワーステアリング装置131及びアクスタ装置132に供給する中間電圧42Vを生成するメインDC−DCコンバータ122、高電圧を降圧してサスペンション装置133に供給する中間電圧を生成するメインDC−DCコンバータ124、及び失陥時に低電圧を昇圧して中間電圧を生成するサブDC−DCコンバータ123の4つのコンバータとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−176704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では、ブレーキ操作だけでなく、ステアリング操作やサスペンション動作からも回生エネルギーを得ることができる。しかしながら、図3に示した上記従来の車両電源システム101では、DC−DCコンバータ122〜124は、降圧又は昇圧のどちらか一方向の変換しかできないため、ステアリング操作やサスペンション動作から得られた回生エネルギーを、抵抗素子を含むダイナミックブレーキ回路125及び126を介して熱消費させており、回生エネルギーを有効に利用していない。このため、電源システムからの発熱量の増加及び車両の燃費悪化が課題となる。
【0009】
また、上記従来の車両電源システム101では、ステアリング系、サスペンション系、及びブレーキ系の各システムにそれぞれ専用のDC−DCコンバータ122〜124を設けているため、車両電源システム101の大型化、高コスト化、及び発熱量の増加が課題となる。
【0010】
これらの課題を解決するためには、ステアリング操作やサスペンション動作から得られた回生エネルギーを有効利用する仕組みを新たに構築する必要がある。このような仕組みを構築するために利用できるものとして、例えば特許文献1に開示されている双方向DC−DCコンバータが存在する。この双方向DC−DCコンバータは、1つで降圧と昇圧とが可能な回路であるため、回生エネルギーの伝搬経路や電源失陥時のバックアップ経路等を考慮した双方向DC−DCコンバータの使用方法を考案することができれば、上記課題を解決できるものと考えられる。
【0011】
それ故に、本発明の目的は、ハイブリッドシステムを搭載した車両において、双方向DC−DCコンバータを使用して、ステアリング操作やサスペンション動作から得られた回生エネルギーを有効利用することができ、かつ、失陥時における電源バックアップを効果的に行うことができる、車両電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の電源系統を使用する車両に用いられる車両電源システムに向けられている。そして、上記目的を達成するために、本発明の車両電源システムは、第1の装置に高電圧を供給する高圧電源と、第2の装置に低電圧を供給する低圧電源と、高電圧を降圧して第3の装置に供給する中間電圧を生成し、この第3の装置で発生した余剰電圧を昇圧して高圧電源に蓄電する高電圧を生成するメイン双方向DC−DCコンバータと、低電圧を昇圧して中間電圧を生成し、第3の装置で発生した余剰電圧を降圧して低圧電源に蓄電する低電圧を生成するサブ双方向DC−DCコンバータとを備える。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の車両電源システムによれば、第3の装置で発生した余剰電圧(回生エネルギー)を高圧電源及び/又は低圧電源に蓄電して有効に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両電源システム1の概略構成を示す図
【図2】本発明の第2の実施形態に係る車両電源システム2の概略構成を示す図
【図3】従来の車両電源システム101の構成例を示す図
【図4】従来の車両電源システム102の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、複数の電源系統を使用するハイブリッドシステムを搭載した車両に用いられる、本発明の第1の実施形態に係る車両電源システム1の概略構成を示す図である。図1に示す第1の実施形態に係る車両電源システム1は、高圧電源11と、低圧電源12と、補機用DC−DCコンバータ21と、メイン双方向DC−DCコンバータ22と、サブ双方向DC−DCコンバータ23と、ダイナミックブレーキ回路25と、キャパシタ27とを備える。
【0016】
この第1の実施形態に係る車両電源システム1は、背景技術で述べた従来の車両電源システム101の構成(図3)に対応しており、中間電圧を供給する装置(請求項では第3の装置)として、電動パワーステアリング装置31(ステアリング−ECU)だけを備えた構成を表した図である。
【0017】
まず、車両電源システム1に用いられる各構成の概要を説明する。
高圧電源11は、高電圧供給ラインAに接続され、ハイブリッドシステムの電気モータ等の装置(図示せず、請求項では第1の装置)に高電圧(この実施例では288V)を供給する電源である。この高圧電源11には、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。
低圧電源12は、低電圧供給ラインCに接続され、補機に低電圧(この実施例では12V)を供給する電源である。この低圧電源12には、鉛蓄電池等の二次電池が用いられる。なお、本実施例では、電子制御ブレーキ装置(図中では「ブレーキ−ECU」と表記)34を補機(請求項では第2の装置)の一例として説明する。
【0018】
補機用DC−DCコンバータ21は、高電圧供給ラインAに印加された高電圧を降圧して低電圧を生成する。この生成された低電圧は、低電圧供給ラインCを通じて低圧電源12に蓄電される。
メイン双方向DC−DCコンバータ22は、高圧電源11の高電圧を降圧して中間電圧(この実施例では42V)を生成する。この生成された中間電圧は、電動パワーステアリング装置31に供給される。また、メイン双方向DC−DCコンバータ22は、中間電圧供給ラインBに発生した回生電力から得られる余剰電圧を昇圧して、高電圧を生成する。この生成された高電圧は、高電圧供給ラインAを通じて高圧電源11に蓄電される。
サブ双方向DC−DCコンバータ23は、低圧電源12の低電圧を昇圧して中間電圧を生成する。この生成された中間電圧は、中間電圧供給ラインBのバックアップ電源として用いられる。また、サブ双方向DC−DCコンバータ23は、中間電圧供給ラインBに発生した回生電力から得られる余剰電圧を降圧して、低電圧を生成する。この生成された低電圧は、低電圧供給ラインCを通じて低圧電源12に蓄電される。
【0019】
次に、車両電源システム1で行われる各種処理を説明する。
(1)エネルギー回生処理
電動パワーステアリング装置31の動作に基づいて生じた回生エネルギー(回生電力)は、中間電圧供給ラインBに接続されているキャパシタ27への充電によって余剰電圧として表れる。この余剰電圧が発生した場合、車両電源システム1は、まず高圧電源11が蓄電可能な状態であるか否かを判断する。
【0020】
高圧電源11が蓄電可能な状態であると判断された場合、余剰電圧は、メイン双方向DC−DCコンバータ22に与えられる。そして、余剰電圧は、メイン双方向DC−DCコンバータ22によって高電圧まで昇圧され、高電圧供給ラインAを通じて高圧電源11に蓄電される(図1に示す点線矢印(i))。
一方、高圧電源11が蓄電可能な状態でない、すなわち満充電状態であると判断された場合、又は蓄電を行っていた高圧電源11が満充電状態に至ったと判断された場合、余剰電圧は、サブ双方向DC−DCコンバータ23に与えられる。ここで、車両電源システム1は、低圧電源12が蓄電可能な状態であるか否かを次に判断する。
【0021】
低圧電源12が蓄電可能な状態であると判断された場合、余剰電圧は、サブ双方向DC−DCコンバータ23によって低電圧まで降圧され、低電圧供給ラインCを通じて低圧電源12に蓄電される(図1に示す点線矢印(ii))。
一方、低圧電源12が蓄電可能な状態でない、すなわち満充電状態であると判断された場合、又は蓄電を行っていた低圧電源12が満充電状態に至ったと判断された場合、車両電源システム1は、余剰電圧をこれ以上は再利用できないとして、抵抗素子を含むダイナミックブレーキ回路25に余剰電圧を与え、従来技術と同様に余剰電圧を熱に変換して放出(廃棄)する。
【0022】
このように、本発明の車両電源システム1では、高電圧供給ラインAと中間電圧供給ラインBとの間に挿入されるDC−DCコンバータ22及び低電圧供給ラインCと中間電圧供給ラインBとの間に挿入されるDC−DCコンバータ23の両方を、双方向DC−DCコンバータで構成する。
この構成により、電動パワーステアリング装置31の動作によって生じた回生エネルギーを従来技術のように単純に廃棄するのではなく、高圧電源11及び低圧電源12が満充電状態になるまで蓄電して有効に再利用することができる。
【0023】
なお、上述したエネルギー回生方法では、まず初めに高圧電源11を蓄電して次に低圧電源12を蓄電するという蓄電順を説明した。しかし、この蓄電順は一例であり、まず初めに低圧電源12を蓄電して次に高圧電源11を蓄電してもよいし、高圧電源11と低圧電源12とを同時に蓄電してもよい。また、高圧電源11だけに蓄電してもよいし、低圧電源12だけに蓄電してもよい。
【0024】
(2)失陥時の電源バックアップ処理
何らかの原因で高圧電源11が失陥して、高電圧だけではなく、メイン双方向DC−DCコンバータ22を介して生成される中間電圧が低下するような場合があり得る。このような場合、車両電源システム1は、サブ双方向DC−DCコンバータ23によって低圧電源12の低電圧を昇圧して中間電圧を生成し、中間電圧供給ラインBに供給する(図1に示す点線矢印(iii))。
これにより、高圧電源11からの電圧供給が不調となっても、中間電圧供給ラインBに供給する中間電圧を低圧電源12からバックアップ供給することができる。なお、この電源バックアップ手法は、従来技術でも採用されている。
【0025】
一方、何らかの原因で低圧電源12が失陥して、低電圧が低下するような場合があり得る。このような場合、車両電源システム1は、サブ双方向DC−DCコンバータ23によって中間電圧供給ラインBの中間電圧を降圧して低電圧を生成し、電子制御ブレーキ装置34に供給する(図1に示す点線矢印(iv))。
これにより、低圧電源12から電子制御ブレーキ装置34へ直接電圧供給することが不調となっても、中間電圧供給ラインBから電子制御ブレーキ装置34へ間接的に低電圧をバックアップ供給することができる。なお、中間電圧は高電圧から生成されるため、高電圧供給ラインAから電子制御ブレーキ装置34へ間接的に低電圧をバックアップ供給するという広義な解釈ができる。この電源バックアップ手法は、本発明独自の特徴的な技術である。
【0026】
このように、本発明の車両電源システム1では、低電圧供給ラインCと中間電圧供給ラインBとの間に挿入されるサブDC−DCコンバータ23を双方向DC−DCコンバータで構成することにより、従来技術でも行っていた低電圧→中間電圧の電源バックアップに加えて、中間電圧(高電圧)→低電圧の電源バックアップも行うことができる。従って、図3に示した従来の車両電源システム101では必要であった電子制御ブレーキ装置134専用のバックアップキャパシタ135が不要となる。
【0027】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る車両電源システム1によれば、双方向DC−DCコンバータを適切に設けることで、中間電圧供給ラインBに生じた回生エネルギーに基づく余剰電圧を、高圧電源11及び/又は低圧電源12に蓄電して有効に再利用する。これにより、回生エネルギーの再利用によって車両の燃費向上が期待できる。
また、本車両電源システム2によれば、低電圧をバックアップ供給する経路を構築することで、失陥時の電源確保のために従来構成では必須であったバックアップキャパシタを削減する。これにより、低電圧バックアップによる電源システムの低コスト化及び省スペース化が図れる。
【0028】
<第2の実施形態>
図2は、複数の電源系統を使用するハイブリッドシステムを搭載した車両に用いられる、本発明の第2の実施形態に係る車両電源システム2の概略構成を示す図である。この車両電源システム2は、背景技術で述べた従来の車両電源システム102の構成(図4)に対応しており、中間電圧を供給する装置としてサスペンション装置33(サスペンション−ECU)をさらに加えた構成である。車両電源システム2は、上述した第1の実施形態に係る車両電源システム1と比べて、スイッチ28をさらに備える。なお、車両電源システム2において車両電源システム1と同じ構成には、同一の参照符号を付してその説明を一部省略する。
以下、車両電源システム1と異なる部分を中心に、車両電源システム2を説明する。
【0029】
高圧電源11、低圧電源12、補機用DC−DCコンバータ21、メイン双方向DC−DCコンバータ22、サブ双方向DC−DCコンバータ23、ダイナミックブレーキ回路25、及びキャパシタ27の各構成は、上記第1の実施形態で説明したとおりである。
スイッチ28は、サスペンション装置33と中間電圧供給ラインBとの間に設けられる。このスイッチ28は、メイン双方向DC−DCコンバータ22で生成された中間電圧をサスペンション装置33に供給する場合には導通状態となり、サスペンション装置33で発生した回生エネルギー(回生電力)を利用する場合には、状況に応じて導通状態と非導通状態とを選択的に切り換える。
【0030】
(1)エネルギー回生処理
電動パワーステアリング装置31の動作に基づいて回生エネルギー(回生電力)が生じた場合、この回生エネルギーは、中間電圧供給ラインBに接続されているキャパシタ27への充電によって余剰電圧として表れる。
一方、サスペンション装置33の動作に基づいて回生エネルギーが生じた場合、サスペンション装置33の状態に応じて、この回生エネルギーを中間電圧供給ラインBに出力すべきか否かが判断される。この判断は、例えば次のようにして行われる。
【0031】
一般的に、サスペンション制御機構は、車両の四輪それぞれに独立して設けられ、各車輪の制御が別個独立して行われる。このため、ある車輪に関しては「力行」状態であって中間電圧の供給が必要であるが、別の車輪に関しては「回生」状態であって余剰電圧が発生しているといったことも十分にあり得る。このような力行状態と回生状態とが混在している状況でスイッチ28を導通状態にしてしまうと、高圧電源11からの高電圧の給電と高圧電源11及び/又は低圧電源12への余剰電圧の蓄電とが並行して行われる現象が生じ、高圧電源11及び/又は低圧電源12に無駄な蓄給電(充放電)を行わせることになる。
【0032】
そこで、車両電源システム2では、回生状態にあるサスペンション装置33で生じた回生エネルギーを、中間電圧供給ラインBへ出力することなくサスペンション装置33内で環流させて、力行状態にあるサスペンション装置33で再利用(消費)することを行う(図2に示す点線矢印(v))。この動作に際しては、車両電源システム2が、サスペンション装置33のそれぞれの力行状態/回生状態を確認した上で、発生した回生エネルギーを環流させるべきか中間電圧供給ラインBへ出力すべきかを判断し、この判断に応じてスイッチ28の導通/非道通を切り換える。
なお、力行状態にあるサスペンション装置33に回生エネルギーを効率的に環流供給するために、回生状態にあるサスペンション装置33から回生エネルギーを出力するタイミングを制御してもよい。
【0033】
サスペンション装置33で発生した回生エネルギーを中間電圧供給ラインBへ出力すべきと判断された場合は、中間電圧供給ラインBに接続されているキャパシタ27への充電によって余剰電圧に変換される。この変換された余剰電圧は、上記第1の実施形態で説明したように、高圧電源11及び/又は低圧電源12に蓄電されるか、ダイナミックブレーキ回路25を介して熱放出される。
【0034】
(2)失陥時の電源バックアップ処理
何らかの原因で高圧電源11及び/又は低圧電源12が失陥した場合の処理は、上記第1の実施形態で説明したとおりである。
【0035】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る車両電源システム2によれば、双方向DC−DCコンバータを適切に設けることで、中間電圧供給ラインBに生じた回生エネルギーに基づく余剰電圧を、高圧電源11及び/又は低圧電源12に蓄電して有効に再利用する。これにより、回生エネルギーの再利用によって車両の燃費向上が期待できる。
また、本車両電源システム2によれば、低電圧をバックアップ供給する経路を構築することで、失陥時の電源確保のために従来構成では必須であったバックアップキャパシタを削減する。これにより、低電圧バックアップによる電源システムの低コスト化及び省スペース化が図れる。
さらに、本車両電源システム2によれば、スイッチ28を設けて、回生エネルギーを中間電圧供給ラインBに出力することなく環流させることで、回生エネルギーを装置内で消費することができる。これにより、高圧電源11及び/又は低圧電源12に無駄な蓄給電(充放電)を行わせなくてすむ。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の車両電源システムは、複数の電源系統を使用するハイブリッドシステムを搭載した車両等に利用可能であり、特に回生エネルギーを有効利用し、かつ、失陥時における電源バックアップを効果的に行いたい場合等に有用である。
【符号の説明】
【0037】
1、2、101、102 車両電源システム
11、111 高圧電源
12、112 低圧電源
21、121 補機用DC−DCコンバータ
22 メイン双方向DC−DCコンバータ
23 サブ双方向DC−DCコンバータ
25、125、126 ダイナミックブレーキ回路
27 キャパシタ
31、131 電動パワーステアリング装置(ステアリング−ECU)
33、133 サスペンション装置(サスペンション−ECU)
34、134 電子制御ブレーキ装置(ブレーキ−ECU)
122、124 メインDC−DCコンバータ
123 サブDC−DCコンバータ
132 アクスタ装置(アクスタ−ECU)
135 バックアップキャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源系統を使用する車両に用いられる車両電源システムであって、
第1の装置に高電圧を供給する高圧電源と、
第2の装置に低電圧を供給する低圧電源と、
前記高電圧を降圧して第3の装置に供給する中間電圧を生成し、当該第3の装置で発生した余剰電圧を昇圧して前記高圧電源に蓄電する高電圧を生成するメイン双方向DC−DCコンバータと、
前記低電圧を昇圧して前記中間電圧を生成し、前記第3の装置で発生した前記余剰電圧を降圧して前記低圧電源に蓄電する低電圧を生成するサブ双方向DC−DCコンバータとを備える、車両電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−115031(P2012−115031A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261480(P2010−261480)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】