説明

車体のフェンダー

本発明は、自動車(20)のフード(10)に近接して連結される車体のフェンダー(1)であって、フード(10)が閉鎖位置にあるときに、フード(10)の対応する側方の縁(11)とフェンダー(1)の上部(4)との間に存在する間隔(3)に対向して伸びる内側の縁(2)を有する、車体のフェンダーに関する。本発明の車体のフェンダーは、内側の縁(2)が、固有の剛性がフェンダー(1)の他の部分よりも低い、少なくとも1つの変形領域を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体のフェンダーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体は、一般に、車台を形成するリジッドな構造に連結される複数の別々の部品から構成される。これらの部品の中で、特に自動車の前輪を覆って取り囲むための2つの前フェンダーに着目する。
自動車の前フェンダーは、その機能のために、通常、エンジンのフードの両側の側面に設けられる。美観上の目的で、フードの横の端は、一般に、対応するフェンダーの上部に対して概ね連続するように配置される。勿論、フードを横軸の周りに回動させて、エンジンコンパートメントの中へアクセスできるように、フードの横の端は、前フェンダーに固定されることはない。その結果、フードの横の各端と対応するフェンダーの上部との間に、無視できない空間が存在する。
実際には、主として美観上、特に感覚的な質の理由から、エンジンのフードとフェンダーの間に存在する間隔は、外部からエンジンコンパートメントの内部が見えないような間隔にすることが特に有利であることは明らかである。また、フードを閉めたときに、フェンダーの上部を、フェンダーの上の内側の各端が、問題の間隔に対向して伸びる大きさに合致させるように形成することがこの分野で知られている。フードの横の各端と対応するフェンダーの上部との間に存在する空間は、このようにして内側から有利に塞がれる。
【0003】
しかしながら、このような車体のフェンダーは、歩行者と自動車の前方衝突の際における、歩行者の保護に関する新しい規格に合致しないという問題がある。この規格は、被害者の身体の障害のリスクを回避するために、エンジンのフードが衝突時の衝撃の緩和を可能にするように、上下方向に変形することが必要であるとしている。
【0004】
実際、このようなフードは、衝突の際に衝撃を吸収するために、垂直方向に降下するように下準備される。このフードは、実際に、フェンダーの上部の間を、その側方の縁がフェンダーの内側の縁と接触するようになるまで漸進的に沈み込む。しかし、内側の縁は、フェンダーと一体の部分をなすので、構造的な剛性を有し、フードの側方の縁から圧力を受けても側方へ引っ込むことはない。従って、フードはフェンダーの内側の縁に支持されるようになり、フェンダーとそれらの支持部材に固有の剛性が作用するようになるという有害な結果が生じる。そこで、フードの上下方向の移動は急激に妨げられ、その結果、衝撃緩和容量、従ってこのような装置の有効性が非常に限られたものとみなされるということになる。
【0005】
この問題を解決するために、各フェンダーの上部を、変形可能な支持部材の上に固定することが考えられた。しかしながら、変形する部材の剛性を小さくしても、装置の抵抗は大きいままであることが明らかとなった。また、用いられた原理は、実際にはフェンダーの無視できない変形をもたらした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の対象によって解決するべき技術的課題は、自動車のフードに近接して連結される車体のフェンダーであって、上記フェンダーは、上記フードが閉鎖位置にあるときに、上記フードの対応する側方の縁と上記フェンダーの上部との間に存在する間隔に対向して伸びる内側の縁を有する車体のフェンダーにおいて、特に上記フードに充分な垂直方向の移動量を保証することによって、従来技術の問題を回避することを可能にする車体のフェンダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
提起された問題の本発明による解決策は、内側の縁が、固有の剛性がフェンダーの他の部分よりも低い、少なくとも1つの変形領域を有することからなる。
【発明の効果】
【0008】
このように定義された本発明は、フードの降下に際に、フェンダーの他の部分に対して、内側の縁が優先的に変形することを可能にするという利点を有する。従って、内側の縁は、フードの対応する側方の縁が充分な圧力を作用させる際に、有利に引込む。従って、フードの降下は、内側の縁を超えて続行することができ、その結果、フードの垂直方向の移動量と、その結果の衝撃吸収容量は、最適であるとみなされることができる。
【0009】
フードの垂直方向の移動が、フェンダーの剛性と関係なく実行されることは特に有利である。内側の縁は、自動車の受動的な安全性に貢献される車体の幾つかの部材と同様に、このために計画された正確な変形領域を構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、以下の説明によって明らかとなる特長にも関し、個別または技術的に可能なあらゆる組み合わせに従って考察されるべきである。
添付図面を参照する、非限定的な例として示されるこの説明によって、本発明が実施可能なように、よりよく理解されるであろう。これらの図において:
図1は、本発明に合致する車体のフェンダーの、図式的な、内側から見た斜視図である。
図2は、図1の円で囲んだ部分を詳細に示す。
図3は、衝突の瞬間における、自動車の前側方を、部分的かつ図式的に示し、この自動車は、図1に示すものと同一のフェンダーを有している。
図4は、フードが、垂直方向の降下の第1過程にある場合を示す、図3に類似の図である。
図5は、フードが、垂直方向の降下の第2過程にある場合を示す、図3に類似の図である。
図6は、フードが、垂直方向の降下の第3過程にある場合を示す、図3に類似の図である。
【0011】
これらの図において、簡明化のために、同一の部品には同一の符号を付け、また、本発明の理解のために不可欠な部品のみを、縮尺は無視して図式的に示した。
【0012】
図1〜6は、自動車20のフード10に近接して配置される、車体のフェンダー1を表す。フェンダー1は内側の縁2を有する。内側の縁2は、フード10が閉鎖位置にあるとき(図3)に、フード10の対応する側方の縁11とフェンダー1の上部4との間に存在する間隔3に対向して伸びるように形成されている。
【0013】
本発明の目的に従って、内側の縁2は、固有の剛性がフェンダー1の他の部分よりも低い、少なくとも1つの変形領域を有する。
【0014】
特に有利には、少なくとも1つの変形領域は、内側の縁2とフェンダー1の本体とを連結する領域の高さに配置される。従って、内側の縁2は、内側の縁2とフェンダー1の本体とを連結する部分を概ね通る軸の周りに、下に向かって回動するように形成される。この結果、内側の縁2は、略全体が引っ込むようになる。
【0015】
本発明の特徴によれば、各変形領域は、内側の縁2の概ね全長に亘って伸びる。この特徴は、内側の縁2が、その全長に亘って均一に連続して側方に変形することを可能にする。
【0016】
本発明の他の1つの特徴によれば、各変形領域は、内側の縁2の概ね全幅に亘って伸びる。この特徴は、内側の縁2に、考慮対象の変形領域の全幅に亘って変形する能力を付与する。
【0017】
上述の2つの特徴を組み合わせることによって、全表面がフェンダー1の他の部分よりも低い固有の剛性を有する内側の縁2を有利に設けることも可能である。
【0018】
勿論、内側の縁2に、フェンダー1の他の部分よりも低い固有の剛性を付与するために、従来から知られているあらゆる技術を、本発明の枠内において使用することができる。
【0019】
このようにして、本発明の第1の実施の形態によれば、変形領域は、フェンダー1の他の部分よりも薄い厚さを有する。
【0020】
しかしながら、本発明の第2の実施の形態によれば、変形領域は、固有の剛性が、フェンダー1の他の部分を構成する材料の合成よりも低い材料によって構成することも可能である。
【0021】
最後に、本発明の第3の実施の形態によれば、変形領域は、その他に、少なくとも1つの破壊の端緒部分を有することができる。
【0022】
図3は、衝突の前の、特にフェンダー1に対するフード10の配置を表す。この図においては、衝突は、フード10の近くの打痕が付けられた部材30によって示されている。フード10の側方の縁11は、フェンダー1の上部4に対して、概ね連続して位置決めされている。内側の縁2は、フード10の側方の縁11とフェンダー1の上部4との間に存在する間隔3の下を伸びている。従って、内側の縁2は、外部からエンジンコンパートメントの内部を全く見えないようにする大きさにされている。
【0023】
図4に示すように、実際の衝突の瞬間に、衝撃を吸収するためにフード10は垂直方向に降下を開始する。従って、フード10はフェンダー1の上部4の間に漸進的に入り込み始める。
【0024】
図5に示すように、各側方の縁11が対応する内側の縁2と接触するようなると、内側の縁2は、フード10の通過を可能にするように充分に引込む迄、下に向けて回動するようになる。内側の縁2は、固有の剛性がフェンダー1の他の部分よりも低いので、フェンダー1の他の部分に対して優先的に有利に変形する。
【0025】
フード10の降下は、図6に示すように続行する。フード10の垂直方向の移動量と、その結果の衝撃吸収容量は、このようにして最適化される。
【0026】
勿論、本発明は、上述のような、車体の少なくとも1つのフェンダー1を有する自動車20にも関する。自動車20の概念は、ここでは、エンジンの形式に関係なく、また車両の大きさや重量に関係なく、エンジンを有するあらゆる車両、すなわちエンジンによって自身を前進させることが可能なあらゆる走行装置に関するものである。従って、自動車は、例えば、乗用車、トラック、バスを意味してもよい。

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(20)のフード(10)に近接して連結される車体のフェンダー(1)であって、上記フェンダー(1)は、上記フード(10)が閉鎖位置にあるときに、上記フード(10)の対応する側方の縁(11)と上記フェンダー(1)の上部(4)との間に存在する間隔(3)に対向して伸びる内側の縁(2)を有する車体のフェンダーにおいて、上記内側の縁(2)は、固有の剛性が上記フェンダー(1)の他の部分よりも低い、少なくとも1つの変形領域を有することを特徴とする、車体のフェンダー。
【請求項2】
少なくとも1つの上記変形領域は、上記内側の縁(2)と上記フェンダー(1)の本体とを連結する領域の高さに配置されることを特徴とする、請求項1に記載の車体のフェンダー。
【請求項3】
各上記変形領域は、上記内側の縁(2)の概ね全長に亘って伸びることを特徴とする、請求項1または2に記載の車体のフェンダー。
【請求項4】
各上記変形領域は、上記内側の縁(2)の概ね全幅に亘って伸びることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の車体のフェンダー。
【請求項5】
上記内側の縁(2)の全体が、上記フェンダー(1)の他の部分よりも低い固有の剛性を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の車体のフェンダー。
【請求項6】
少なくとも1つの上記変形領域は、上記フェンダー(1)の他の部分よりも薄い厚さを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の車体のフェンダー。
【請求項7】
少なくとも1つの上記変形領域は、固有の剛性が、上記フェンダー(1)の他の部分を構成する材料よりも低い材料から構成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の車体のフェンダー。
【請求項8】
少なくとも1つの上記変形領域は、少なくとも1つの破壊の端緒部分を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の車体のフェンダー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の車体のフェンダーを、少なくとも1つ有することを特徴とする自動車。

【公表番号】特表2006−512248(P2006−512248A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564295(P2004−564295)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003873
【国際公開番号】WO2004/060726
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】