説明

車体シール構造

【課題】上開閉体及び下開閉体を備える車体開口部でのシール性を高める。
【解決手段】リアバンパ3の車幅方向中央部分3aを分割して下方に開放するリアゲート5を設定する。バックドア及びリアゲート5が開閉する車体開口部11の周縁全周には、メインウエザストリップ13を取り付ける。リアゲート5の上端縁には、バックドアを閉じたときにバックドアの下端縁が接触するゲートウエザストリップ15を取り付ける。ゲートウエザストリップ15は車幅方向中央の、メインウエザストリップ13とほぼ同形状の押出成形部17と、押出成形部17の車幅方向両端に位置する型成形部19とを備える。型成形部19は、リアゲート5を閉じたときにメインウエザストリップ13に接触し、この接触部より外側に、上下方向に伸びる縦リブ19fを備え、縦リブ19fと反対側の車体後方側面の下部には、車幅方向に延びる横リブ19eを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上開閉体の下部に、上開閉体より先に閉じる構造の下開閉体を備えた車体シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の上開閉体及び下開閉体を備えた車体シール構造として、下記特許文献1に記載されたものがある。これは自動車用バックドアに関するものであって、ドア開口部に設けたメインウエザストリップと、上ドアの下端縁に設けたドアウエザストリップとを備えている。
【0003】
そして、この自動車用バックドアは、下ドアを閉じた後、上ドアを閉じる構造であり、上ドアを閉じたときに、そのドアウエザストリップの車幅方向両端が、下ドアの上端及びメインウエザストリップに弾接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−276608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の車体シール構造では、上ドアを閉じたときに、車幅方向両端のドアウエザストリップがドア開口部のメインウエザストリップに弾接する構造、すなわちシール材同士が弾接する構造としているので、例えば洗車時などでの高い水圧が掛かると、これらシール材相互間の合わせ部から車室内へ水が浸入する恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、上開閉体及び下開閉体を備える車体開口部でのシール性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上開閉体用開口と下開閉体用開口とからなる車体開口部の周縁に沿ってメインウエザストリップを設け、下開閉体の上端縁に設けた開閉体ウエザストリップは、下開閉体の閉状態で、メインウエザストリップに接触する端末シール部を車幅方向端部に備え、この端末シール部は、メインウエザストリップ側であって該メインウエザストリップの延設方向に対し交差する方向に延びる第1のリブと、メインウエザストリップと反対側であって上開閉体の下端縁との接触部より下部側に位置して第1のリブと交差する方向に延びる第2のリブとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開閉体ウエザストリップの車幅方向端部に設けた端末シール部とメインウエザストリップとの接触部への車幅方向外側からの水の浸入を第1のリブにより抑制する一方、上開閉体の下端縁と端末シール部との接触部への下方からの水の浸入を第2のリブにより抑制することができ、もって上開閉体及び下開閉体を備える車体開口部でのシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示す、リアゲートを閉じかつバックドアを開いた状態でのリアゲート周辺の斜視図である。
【図2】図1のリアゲートを開いた状態での車両後方から見た斜視図である。
【図3】図1のリアゲートを設定した自動車の車両後方から見た斜視図である。
【図4】図1のリアゲートに設定してあるドアウエザストリップの押出成形部の断面図である。
【図5】図1のリアゲートに設定してあるドアウエザストリップの型成形部の車両後方側から見た斜視図である。
【図6】図5の裏面側から見たドアウエザストリップの型成形部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図3に示す自動車の車体後部には、上開閉体としてのバックドア1を、上端部に設けてある図示しないドアヒンジを介して上下方向に開閉可能に設定してある。バックドア1の下部にはリアバンパ3を設定してあり、このリアバンパ3の車幅方向中央部分3aは、車幅方向両側部分3bに対して分割してある。この分割した車幅方向中央部分3aは、図1,図2に示すように、下開閉体としてのリアゲート5としてあり、このリアゲート5は、下端部に設けてある図示しないゲートヒンジを介して上下方向に開閉可能に設定してある。
【0012】
なお、バックドア1はリアゲート5を閉じた状態で開閉する構造としてあり、特にここでは、図2のように、バックドア1を開き、さらにリアゲート5を開いた状態で、車室内フロアの後端に一端を載置し他端を地面に載置する図示しないスロープを利用して車椅子を乗降させることができる。
【0013】
上記したバックドア1は上開閉体用開口としてのバックドア用開口7を開閉可能であり、リアゲート5は下開閉体用開口としてのゲート用開口9を開閉可能であり、ゲート用開口9は、その上部のバックドア用開口7に連続していて、これらバックドア用開口7とゲート用開口9とで車体開口部11を構成している。
【0014】
すなわち、下開閉体用開口であるゲート用開口9は、上開閉体用開口であるバックドア用開口7の下辺部に対し下方に凹部を形成するように車幅方向の少なくとも一方に上下方向に延びる縦縁9a(図2)を備えていることになる。
【0015】
車体開口部11には、その周縁に沿って全周にわたりシール材となるメインウエザストリップ13を設けている。メインウエザストリップ13は、自動車にて一般的に使用しているものであり、特に図示しないが、車体開口部11の周縁のフランジに嵌合する断面ほぼU字形状の取付基部と、バックドア1及びリアゲート5を閉じたときに、これらが接触してシールする中空シール部とを備え、全体を押し出し成形により形成してある。
【0016】
すなわち、メインウエザストリップ13に対し、バックドア1の上端縁1aと、車幅方向両端縁1b,1cと、リアゲート5の設定部位を除く左右両側の下端縁1d,1eとがそれぞれ接触する。また、リアゲート5は、車幅方向両端縁5a,5bと下端縁5cとがそれぞれメインウエザストリップ13に接触する。
【0017】
そして、本実施形態では、リアゲート5の上端縁5dに、リアゲート5を閉じた状態でバックドア1の閉時に、リアゲート5の設定部位に対応するバックドア1の下端縁1fが接触する開閉体ウエザストリップとしてのゲートウエザストリップ15を設定している。
【0018】
ゲートウエザストリップ15は、車幅方向中央に位置する押出成形部17と、押出成形部17の車幅方向両端に一体成形される端末シール部としての型成形部19とを備えている。押出成形部17は、前記したメインウエザストリップ13とほぼ同様な図4に示す断面形状を呈している。
【0019】
すなわち、押出成形部17は、リアゲート5の上端縁5dの図示しないフランジに嵌合する断面ほぼU字形状の取付基部17aと、リアゲート5を閉じた状態でバックドア1を閉じたときに、バックドア1の下端縁1fが接触してシールする中空シール部17bとを備えている。
【0020】
一方、ゲートウエザストリップ15の型成形部19は、図5にその単体で示すように、図4に示した押出成形部17の取付基部17a及び中空シール部17bと同様の取付基部19a及び中空シール部19bを備えている。これら取付基部19a及び中空シール部19bは、押出成形部17と型成形部19とを一体成形したときに、取付基部17a及び中空シール部17bに対してそれぞれ車幅方向に連続した形状となり、中空シール部19bには閉時のバックドア1の下端縁1fが接触する。
【0021】
また、ゲートウエザストリップ15の型成形部19は、図6に示すように、取付基部19a及び中空シール部19bが車幅方向内側の面に連続する側壁部19cと、側壁部19cに対して車幅方向外側に向けて屈曲し、車体前後方向に対向する面を有する本体部19dとを備えている。側壁部19cには、図6に示すように、車幅方向に貫通する取付孔19c1を設けてあり、この取付孔19c1に図示しないクリップを挿入してリアゲート5の車幅方向端部に設けてある段部側面5e(図2)の図示しない嵌合孔に嵌合することで、型成形部19をリアゲート5に固定する。
【0022】
すなわち、この固定状態では、図1に示すようにリアゲート15の閉時に、型成形部19の側壁部19cが、リアゲート5の段部側面5eとゲート用開口9の縦縁9a(メインウエザストリップ13)との間に位置し、本体部19dはメインウエザストリップ13の上記縦縁9aに対応する部位の上端角部9a1周辺を覆う状態となる。
【0023】
上記した型成形部19の本体部19dは、図5に示すように、中空シール部19bの車幅方向外側の端部19b1が、本体部19dの表面に対し、なだらかに連続するように該表面からの突出高さを低く形成してある。これにより、押出成形部17の中空シール部17bから、型成形部19の中空シール部19b及び、中空シール部19bに対して押出成形部17と反対側の表面19d1に対し、閉時のバックドア1の下端縁1fが接触する。
【0024】
すなわち、リアゲート5を閉じた状態でバックドア1を閉じたときには、バックドア1の左右両側の下端縁1d,1eが、リアバンパ3の車幅方向両側部分3bに対応するメインウエザストリップ13の部位13aに接触し、バックドア1の車幅方向中央の下端縁1fが、ゲートウエザストリップ15における、押出成形部17の中空シール部17bと、型成形部19の中空シール部19b及び表面19d1とに接触する。
【0025】
そして、本実施形態では、ゲートウエザストリップ15における型成形部19の本体部19dの表面に、中空シール部19b及び表面19d1の下方に位置する第2のリブとしての横リブ19eを設けている。この横リブ19eは、車幅方向の延びるよう形成しつつ下面が凹曲面となるよう湾曲し、かつ上下方向の厚さを、車幅方向外側端部が厚く、車幅方向内側に向けて徐々に薄くしてあり、バックドア1の閉時にその下端縁1fが接触する。
【0026】
なお、上記した横リブ19eが接触する部位のバックドア1の下端縁1fは、中空シール部19b及び表面19d1が接触する部位のバックドア1の下端縁1fに対し、より先端側(図3中下部側)である。
【0027】
また、本実施形態では、ゲートウエザストリップ15における型成形部19の本体部19dの裏面、すなわちメインウエザストリップ13側の面には、図6に示すように車幅方向外側端部に位置する第1のリブとしての縦リブ19fを設けている。この縦リブ19fは、ゲート用開口9の縦縁9aに対応する位置のメインウエザストリップ13より車幅方向外側に位置して車幅方向に対し交差する上下方向に延びるよう形成してある。換言すれば、縦リブ19fは、前記図1に示してあるリアバンパ3の車幅方向両側部分3bに対応するメインウエザストリップ13の部位13aの延設方向に対し交差する方向に延びるよう形成してある。
【0028】
したがって、メインウエザストリップ13より外側に位置する縦リブ19fは、リアゲート5を閉じたときにメインウエザストリップ13には弾接せずに、メインウエザストリップ13より外側の車体本体側の表面に対して弾接することになる。
【0029】
次に、作用を説明する。バックドア1及びリアゲート5を共に開放した図2に示す状態から、図1に示すようにリアゲート5を閉じる。リアゲート5を閉じた状態では、ゲートウエザストリップ15における型成形部19の本体部19dがメインウエザストリップ13に弾接してシールする。
【0030】
このとき、このシール部の外側に、本体部19dの裏面に形成してある縦リブ19fが位置してその先端が車体本体側の表面に弾接してシールする。つまり、縦リブ19fによってメインウエザストリップ13の外側を二重シールすることになる。
【0031】
また、上記リアゲート5を閉じた状態では、リアゲート5の車幅方向両端縁5a,5bと下端縁5cとがそれぞれメインウエザストリップ13に接触してシールしている。
【0032】
次に、上記リアゲート5を閉じた状態で、図3に示すようにバックドア1を閉じる。バックドア1を閉じた状態では、リアゲート5の設定部位を除く車体開口部11の周縁にメインウエザストリップ13が弾接してシールする。
【0033】
一方、リアゲート5の設定部位に対応するバックドア1の下端縁1fには、ゲートウエザストリップ15における、押出成形部17の中空シール部17bと、型成形部19の中空シール部19b及び表面19d1とが弾接してシールする。このとき、さらに中空シール部19b及び表面19d1の下方に位置する横リブ19eもバックドア1の下端縁1fに弾接してシールする。つまり、横リブ19eによって中空シール部19b及び表面19d1の下方側を二重シールすることになる。
【0034】
このように本実施形態では、バックドア1及びリアゲート5を共に閉じた状態では、型成形部19の縦リブ19fによってメインウエザストリップ13の外側を二重シールしている。このため、例えば洗車時に高い水圧の水が、リアゲート5の車幅方向両端とリアバンパ3の車幅方向両側部分3bとの境界部分Aに掛かったとしても、縦リブ19fが、押出成形部17の本体部19dとメインウエザストリップ13との互いの弾接部への水の浸入を抑制し、車室内への水の浸入を抑えることができる。
【0035】
さらに、バックドア1及びリアゲート5を共に閉じた状態では、横リブ19eによって中空シール部19b及び表面19d1の下方側を二重シールしている。このため、例えば洗車時にて高い水圧の水が、図1の境界部分Aに掛かったとしても、横リブ19eが、押出成形部17の本体部19dの中空シール部19b及び表面19d1と、バックドア1の下端縁1fとの互いの接触部への水の浸入を抑制し、車室内への水の浸入を抑えることができる。
【0036】
この際横リブ19eは、下面が凹曲面となるよう湾曲しているので、下方から浸入してくる水を、図5中の矢印Bで示すように、車幅方向外側の端部から車幅方向中央側に向けて案内するようにして下方に落下させるので、車室内への水の浸入をより確実に抑えることができる。
【0037】
また、本実施形態では、ゲート用開口9は、バックドア用開口7の下辺部に対し下方に凹部を形成するように車幅方向の少なくとも一方に上下方向に延びる縦縁9aを備え、この縦縁9aの上端角部9a1に対応するメインウエザストリップ13に型成形部19が接触し、型成形部19の縦リブ19fは、縦縁9aに対応する位置のメインウエザストリップ13の車幅方向外側に位置している。
【0038】
このため、バックドア用開口7の下部にリアゲート用開口9を設けてリアゲート5を開閉可能に設定した車両において、リアゲート5の車幅方向両端と車体本体側との隙間から車室内への水の浸入を抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態では、バックドア1の下部に設定してあるリアバンパ3の車幅方向中央部分3aを、下部を支点として上下方向に開閉可能とするリアゲート15としている。このため、バックドア1を開放するとともにリアゲート15を開放した状態で、車体フロアの後端に一端を載置し他端を地面に載置した図示しないスロープを利用して車椅子を乗降させる車両に対し、リアゲート5の車幅方向両端とリアバンパ3の車幅方向両側部分3bとの隙間から車室内への水の浸入を抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態では、ゲートウエザストリップ15における型成形部19の本体部19dの裏面に縦リブ19fを設けることで、型成形部19全体の剛性を高めることができる。
【0041】
なお、上記した実施形態では、上開閉体がバックドア1で、下開閉体がリアゲート5の場合を示したが、下開閉体がリアバンパとバックドアとの間に設定される下部バックドアであってもよい。また、上開閉体及び下開閉体を車体後部ではなく、車体側部に設けた場合であっても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 バックドア(上開閉体)
1f バックドアのリアゲート設定部に対応する下端縁(上開閉体の下端縁)
3 リアバンパ
5 リアゲート(下開閉体)
5d リアゲートの上端縁(下開閉体の上端縁)
7 バックドア用開口(上開閉体用開口)
9 ゲート用開口(下開閉体用開口)
9a ゲート用開口の縦縁
9a1 縦縁の上端角部
11 車体開口部
13 メインウエザストリップ
15 ゲートウエザストリップ(開閉体ウエザストリップ)
19 ゲートウエザストリップの端末シール部(型成形部)
19e 横リブ(第2のリブ)
19f 縦リブ(第1のリブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の上開閉体用開口を開閉可能な上開閉体の下部に、前記上開閉体用開口に連続する下開閉体用開口を開閉可能な下開閉体を設け、前記上開閉体用開口と下開閉体用開口とからなる車体開口部の周縁に沿ってメインウエザストリップを設けるとともに、前記下開閉体の上端縁に、該下開閉体を閉じた状態で前記上開閉体の閉時に該上開閉体の下端縁が接触する開閉体ウエザストリップを設け、この開閉体ウエザストリップは、前記下開閉体の閉状態で、前記メインウエザストリップに接触する端末シール部を車幅方向端部に備え、この端末シール部は、前記メインウエザストリップ側であって該メインウエザストリップの延設方向に対し交差する方向に延びる第1のリブと、前記メインウエザストリップと反対側であって前記上開閉体の下端縁との接触部より下部側に位置して前記第1のリブと交差する方向に延びる第2のリブとを備えていることを特徴とする車体シール構造。
【請求項2】
前記下開閉体用開口は、前記上開閉体用開口の下辺部に対し下方に凹部を形成するように車幅方向の少なくとも一方に上下方向に延びる縦縁を備え、この縦縁の上端角部に対応する前記メインウエザストリップに前記端末シール部が接触し、前記第1のリブは、前記縦縁に対応する前記メインウエザストリップの車幅方向外側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の車体シール構造。
【請求項3】
前記第2のリブは、下部側が凹曲面となるよう湾曲していることを特徴とする請求項1または2に記載の車体シール構造。
【請求項4】
前記上開閉体は、車体後部に設定したバックドアであり、前記下開閉体は、前記バックドアの下部に設定してあるリアバンパの車幅方向中央部分を、下端部を支点として上下方向に開閉可能とするリアゲートであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車体シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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