説明

車体パネル構造

【課題】パネル骨格部材の耐荷重を確保して、パネル本体の変形を抑制する。
【解決手段】本発明の車体パネル構造10は、互いに厚み方向に対向する一対の対向壁部32A,32Bを有し、繊維強化プラスチックにより構成されたパネル本体32と、一対の対向壁部32A,32Bの間に設けられ一対の対向壁部32A,32Bとそれぞれ接合された一対の接合壁部50A,50Bと、一対の接合壁部50A,50Bの端部同士を連結する一対の連結壁部50C,50Dと、を有する閉断面状に形成されたパネル骨格部材50と、パネル骨格部材50の外側に設けられて、パネル骨格部材50と対向壁部32Aとを連結する連結部材52,54と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体パネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体パネル構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1に記載の例では、車両前後方向に対向する一対の壁部を有するパネル本体の内部にパネル骨格部材が設けられている。このパネル骨格部材は、車両前後方向に対向する前壁及び後壁を有する閉断面状に形成されており、この前壁及び後壁は、上述のパネル本体における一対の壁部と接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−49894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、車両前面衝突に伴ってフロントサイドメンバからパネル本体に衝突荷重が入力された場合、パネル本体における車両前側の壁部とパネル骨格部材における前壁との間にせん断応力及び剥離応力が発生し、両者が剥離(特に、パネル本体における車両前側の壁部と、パネル骨格部材における前壁の端側の角部とが剥離)する虞がある。そして、この場合には、パネル骨格部材の耐荷重が低下し、パネル本体の変形が増大する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、パネル骨格部材の耐荷重を確保して、パネル本体の変形を抑制することができる車体パネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車体パネル構造は、互いに厚み方向に対向する一対の対向壁部を有し、繊維強化プラスチックにより構成されたパネル本体と、前記一対の対向壁部の間に設けられ前記一対の対向壁部とそれぞれ接合された一対の接合壁部と、前記一対の接合壁部の端部同士を連結する一対の連結壁部と、を有する閉断面状に形成されたパネル骨格部材と、前記パネル骨格部材の外側に設けられて、前記パネル骨格部材と前記対向壁部とを連結する連結部と、を備えている。
【0007】
この車体パネル構造によれば、パネル骨格部材の外側には、連結部が設けられており、パネル骨格部材と対向壁部とは、この連結部によって連結されている。従って、一対の対向壁部の対向方向の一方側からパネル本体に衝突荷重が入力された場合でも、対向壁部と接合壁部との剥離(特に、対向壁部と、接合壁部の端側の角部との剥離)を連結部によって抑制することができる。これにより、パネル骨格部材の耐荷重を確保でき、パネル本体の変形を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の車体パネル構造は、請求項1に記載の車体パネル構造において、前記連結部が、前記パネル骨格部材と別体に構成されると共に、前記連結壁部と前記対向壁部とを連結している構成とされている。
【0009】
この車体パネル構造によれば、連結部がパネル骨格部材と別体に構成されているので、例えば、この連結部をパネル骨格部材と異なる材質で形成したり、連結部やパネル骨格部材の成形性を向上させたりすることができる。
【0010】
また、連結部が、連結壁部と対向壁部とを連結しているので、対向壁部と接合壁部との剥離(特に、対向壁部と、接合壁部の端側の角部との剥離)をより一層効果的に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の車体パネル構造は、請求項1に記載の車体パネル構造において、前記連結部が、それぞれ前記パネル骨格部材に一体に形成された構成とされている。
【0012】
この車体パネル構造によれば、連結部がパネル骨格部材に一体に形成されているので、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上詳述したように、本発明によれば、パネル骨格部材の耐荷重を確保して、パネル本体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体パネル構造が適用されたダッシュパネルを備えた車体前部の構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示されるダッシュパネル及びその周辺部の構成を示す側面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車体パネル構造の変形例を示す図1に対応する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る車体パネル構造の変形例を示す図1に対応する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る車体パネル構造の変形例を示す図1に対応する図である。
【図6】比較例に係る車体パネル構造が適用されたダッシュパネルに衝突荷重が入力された状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
なお、各図における矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0017】
図1に示される車体前部構造20は、例えば、乗用自動車等の車両におけるものであり、左右一対のフロントサイドメンバ22を備えている。各フロントサイドメンバ22は、車両前後方向に延在されており、その後端部には、平面視で車両後側に向かうに従って車両幅方向に幅広になる台形状に形成されたフロントサイドメンバリヤ24が連結されている。
【0018】
このフロントサイドメンバリヤ24は、フロントサイドメンバ22の長手方向に作用する所定値以上の荷重によって圧縮変形(塑性変形)するように構成されており、その後端部は、フロントサイドメンバブラケット26を介して、ダッシュパネル30に結合されている。
【0019】
ダッシュパネル30は、車両幅方向及び車体上下方向に延在する正面視で略矩形板状に形成されたパネル本体32を有している。このパネル本体32の車両幅方向中央部には、下向きに開口する略コ字状に切り欠かれた切欠部34が形成されている。
【0020】
一方、パネル本体32に対する車両後側には、フロアパネル36が設けられている。このフロアパネル36の車両幅方向中央部には、車両前後方向に延在するフロアトンネル38が形成されており、このフロアパネル36におけるフロアトンネル38に対する車両幅方向両側は、平面状の一般パネル部40とされている。
【0021】
そして、フロアトンネル38の前端部は、切欠部34に全周に亘って接合されており、一般パネル部40の前端部は、パネル本体32における切欠部34に対する車両幅方向両側の下端部に接合されている。
【0022】
また、パネル本体32の車両幅方向外側の端部からは、車両後側に向けてピラー部42が延設されており、各ピラー部42の後端部には、車両上下方向に延びる柱状部材44が固定されている。このピラー部42及び柱状部材44は、フロントピラー46の一部(下部)を構成している。
【0023】
柱状部材44の下端部は、それぞれ車両前後方向に延在されたロッカ48の前端部と連続して形成されており、このロッカ48は、一般パネル部40の車両幅方向外側の端部に車両前後方向に亘って結合されている。
【0024】
また、上述のダッシュパネル30には、本発明の一実施形態に係る車体パネル構造10が適用されている。つまり、図2に示されるように、パネル本体32は、車両前後方向(互いの厚み方向)に対向する一対の対向壁部32A,32Bと、この一対の対向壁部32A,32Bにおける車両上下方向両側の端部同士を連結する一対の連結壁部32C,32Dとを有する中空状(閉断面状)に形成されている。
【0025】
このパネル本体32の内部(つまり、一対の対向壁部32A,32Bの間)には、パネル骨格部材50と、このパネル骨格部材50と別体に構成された一対の連結部としての連結部材52,54が設けられている。
【0026】
パネル骨格部材50は、車両幅方向に長手状に延在されており、車両前後方向に対向する一対の接合壁部50A,50Bと、車両上下方向に対向して一対の接合壁部50A,50Bの車両上下方向両側の端部同士を連結する一対の連結壁部50C,50Dとを有する閉断面状に形成されている。一対の接合壁部50A,50Bは、一対の対向壁部32A,32Bとそれぞれ接合されている。
【0027】
連結部材52,54は、パネル骨格部材50の外側(車両上下方向両側)に設けられている。連結部材52は、第一連結壁部52A及び第二連結壁部52Bを有する側面視にて略L字状に形成されており、同様に、連結部材54は、第一連結壁部54A及び第二連結壁部54Bを有する側面視にて略L字状に形成されている。また、第一連結壁部52A,54Aは、対向壁部32Aと接合されており、第二連結壁部52Bは、連結壁部50Cと接合され、第二連結壁部54Bは、連結壁部50Dと接合されている。
【0028】
さらに、このダッシュパネル30では、パネル本体32の内部と、パネル骨格部材50の内部とには、例えば、発泡ウレタンフォーム等からなる発泡材56が充填されている。
【0029】
なお、本実施形態において、フロントサイドメンバ22、フロントサイドメンバリヤ24、フロントサイドメンバブラケット26は、例えば、それぞれアルミニウム合金等の金属材によって構成されており、パネル本体32、フロアパネル36、柱状部材44、ロッカ48、パネル骨格部材50、一対の連結部材52,54は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)によって構成されている。
【0030】
また、上述のダッシュパネル30において、より具体的には、パネル本体32におけるパネル骨格部材50と重複する部分と、このパネル骨格部材50とは、図1に示される締結具58によってフロントサイドメンバブラケット26と結合されており、上述のパネル本体32におけるパネル骨格部材50から車両上下方向に外れた部分は、図1に示される締結具60によってフロントサイドメンバブラケット26と結合されている。
【0031】
さらに、上述のパネル本体32の車両下側は、例えば上述のロッカ48等により車両後側から支持されており、パネル本体32の車両上側は、例えば図示しないカウル等により車両後側から支持されている。
【0032】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
先ず、本発明の一実施形態の作用及び効果をより明確にするために、比較例について説明する。
【0034】
図6に示される比較例に係る車体パネル構造70は、上述の本発明の一実施形態に係る車体パネル構造10から連結部材52,54を省いた構成とされている。なお、この比較例に係る車体パネル構造70において、連結部材52,54を省いた以外の構成は、上述の本発明の一実施形態に係る車体パネル構造10と同一であり、この同一の構成については、便宜上、同一の符号を用いている。
【0035】
しかしながら、この比較例に係る車体パネル構造70では、車両前面衝突に伴ってフロントサイドメンバ22からパネル本体32に衝突荷重Fが入力された場合、車両前側の対向壁部32Aと接合壁部50Aとの間にせん断応力A及び剥離応力Bが発生し、両者が剥離(特に、対向壁部32Aと、接合壁部50Aの端側の角部51とが剥離)する虞がある。そして、この場合には、パネル骨格部材50の耐荷重が低下し、パネル本体32の変形が増大する虞がある。
【0036】
これに対し、本発明の一実施形態に係る車体パネル構造10によれば、図2に示されるように、パネル骨格部材50の外側(車両上下方向両側)には、連結部材52,54が設けられており、パネル骨格部材50と対向壁部32Aとは、この連結部材52,54によって連結されている。従って、車両前面衝突に伴ってフロントサイドメンバ22からパネル本体32に衝突荷重Fが入力された場合でも、対向壁部32Aと接合壁部50Aとの剥離(特に、対向壁部32Aと、接合壁部50Aの端側の角部51との剥離)を連結部材52,54によって抑制することができる。これにより、パネル骨格部材50の耐荷重を確保でき、パネル本体32の変形を抑制することができる。
【0037】
また、連結部材52,54が、連結壁部50C,50Dと対向壁部32Aとをそれぞれ連結しているので、対向壁部32Aと接合壁部50Aとの剥離をより一層効果的に抑制することができる。
【0038】
また、連結部材52,54がパネル骨格部材50とそれぞれ別体に構成されているので、例えば、連結部材52,54やパネル骨格部材50の成形性を向上させることができる。
【0039】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0040】
上記実施形態において、一対の連結部材52,54は、パネル本体32及びパネル骨格部材50と同じ炭素繊維強化プラスチックによって構成されていたが、パネル本体32及びパネル骨格部材50とは異なる材質で形成されていても良い。
【0041】
また、上記実施形態において、パネル骨格部材50と対向壁部32Aとは、一対の連結部材52,54によって連結されていたが、図3に示されるように、パネル骨格部材50に一体に形成されたフランジ状の連結部62,64によって連結されていても良い。
【0042】
このように構成されていても、対向壁部32Aと接合壁部50Aとの剥離を連結部62,64によって抑制することができる。また、連結部62,64がパネル骨格部材50に一体に形成されているので、部品点数を削減することができる。
【0043】
また、上記実施形態において、連結部材52,54は、接合壁部50Aの端側の角部51と接する構成とされていたが、例えば、図4に示されるように、接合壁部50Aの端側の角部51から離間されていても良い。
【0044】
また、上記実施形態において、連結部材52,54は、側面視にて略L字状に形成されていたが、図5に示されるように、一対の対向壁部32A,32Bと接合された一対の第一連結壁部52A,54Aと、連結壁部50C,50Dと接合された第二連結壁部52B,54Bとを有する側面視にて略コの字状に形成されていても良い。
【0045】
また、上記実施形態において、車体パネル構造10は、ダッシュパネル30に適用されていたが、その他の車体のパネル(例えば、フロアパネルなど)に適用されても良い。
【0046】
また、上記実施形態において、車体パネル構造10は、乗用自動車等の車両に適用されていたが、乗用自動車以外の車両に適用されても良く、また、車両以外の鉄道、船舶、航空機等の乗物に適用されても良い。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 車体パネル構造
20 車体前部構造
32 パネル本体
32A,32B 対向壁部
50 パネル骨格部材
50A,50B 接合壁部
50C,50D 連結壁部
52,54 連結部材(連結部)
62,64 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに厚み方向に対向する一対の対向壁部を有し、繊維強化プラスチックにより構成されたパネル本体と、
前記一対の対向壁部の間に設けられ前記一対の対向壁部とそれぞれ接合された一対の接合壁部と、前記一対の接合壁部の端部同士を連結する一対の連結壁部と、を有する閉断面状に形成されたパネル骨格部材と、
前記パネル骨格部材の外側に設けられて、前記パネル骨格部材と前記対向壁部とを連結する連結部と、
を備えた車体パネル構造。
【請求項2】
前記連結部は、前記パネル骨格部材と別体に構成されると共に、前記連結壁部と前記対向壁部とを連結している、
請求項1に記載の車体パネル構造。
【請求項3】
前記連結部は、それぞれ前記パネル骨格部材に一体に形成されている、
請求項1に記載の車体パネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−116216(P2011−116216A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274610(P2009−274610)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】