説明

車体フロア構造

【課題】後壁部の大型化や重量の増大を抑制しながら、幅広トンネル部分の振動を軽減することができる車体フロア構造を提供する。
【解決手段】トンネル部4が設けられたフロントフロアパネル5と、フロントフロアパネルの下側に、トンネル部を挟む両側に固定されたサイドメンバ2と、フロントフロアパネルの車体後方側で立ち上がる後壁部6と、後壁部の上方側に連続するリアフロアパネル7とを有し、トンネル部の車体後方側に形成された幅広トンネル部分8の外周部が後壁部に結合され、後壁部を補強する補強板17が、幅広トンネル部分の上方側を跨ぐ車体横幅方向両側に亘って後壁部に接合され、サイドメンバが後壁部の車体後方側壁面に延設され、補強板が後壁部とサイドメンバの延設部分18との重なり箇所に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体横幅方向中央に車体前後方向に沿うトンネル部が設けられたフロントフロアパネルと、前記フロントフロアパネルの下側であって、前記トンネル部を挟む両側に車体前後方向に沿わせて固定されたサイドメンバと、前記フロントフロアパネルの車体後方側で上方側に向けて立ち上がる後壁部と、前記後壁部の上方側に連続するリアフロアパネルとを有し、前記トンネル部の車体後方側にトンネル幅が車体後方側ほど広い幅広トンネル部分が形成され、前記幅広トンネル部分を前記リアフロアパネルの下側で前記後壁部の後方側に向けて開口するように配置して、その外周部が前記後壁部に結合されている車体フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記車体フロア構造は、トンネル部の車体後方側にトンネル幅が車体後方側ほど広い幅広トンネル部分が形成され、その幅広トンネル部分をリアフロアパネルの下側で後壁部の後方側に向けて開口するように配置して、その外周部が後壁部に結合されている。
このため、トンネル部の内側に配設した排気管を、トンネル部の出口側(車体後方側)で後壁部に沿った車体幅方向に屈曲させて配設するにあたって、排気管を幅広トンネル部分において排気の通過抵抗が少ない大きな曲率半径で屈曲させながら、当該排気管を後壁部に近接させてコンパクトに配設することができる。
従来の車体フロア構造では、後壁部の形状や厚さなどの寸法を適宜設定することにより、当該後壁部に必要な剛性を確保できるように構成してある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−257435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車体フロア構造は、幅広トンネル部分をリアフロアパネルの下側で後壁部の後方側に向けて開口するように配置して、その外周部が後壁部に結合されているので、車体サスペンションなどの振動が後壁部に伝わって、当該後壁部が上下方向に撓み振動すると、その振動に同調して幅広トンネル部分の側壁がトンネル幅方向に振動し易く、その振動音が車室内に籠もって静粛性を低下させる問題がある。
この問題を解決するためには、後壁部の剛性を高めて、当該後壁部の撓み振動を抑制することが望ましい。
しかしながら、従来の車体フロア構造では、後壁部の形状や厚さなどの寸法を適宜設定することにより、当該後壁部に必要な剛性を確保してあるために、後壁部の剛性を高めると、後壁部が大型化したり重量が増大するおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、後壁部の大型化や重量の増大を抑制しながら、幅広トンネル部分の振動を効果的に軽減することができる車体フロア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、車体横幅方向中央に車体前後方向に沿うトンネル部が設けられたフロントフロアパネルと、前記フロントフロアパネルの下側であって、前記トンネル部を挟む両側に車体前後方向に沿わせて固定されたサイドメンバと、前記フロントフロアパネルの車体後方側で上方側に向けて立ち上がる後壁部と、前記後壁部の上方側に連続するリアフロアパネルとを有し、前記トンネル部の車体後方側にトンネル幅が車体後方側ほど広い幅広トンネル部分が形成され、前記幅広トンネル部分を前記リアフロアパネルの下側で前記後壁部の後方側に向けて開口するように配置して、その外周部が前記後壁部に結合されている車体フロア構造であって、前記後壁部を補強する補強板が、前記幅広トンネル部分の上方側を跨ぐ車体横幅方向両側に亘って、前記後壁部に接合され、前記サイドメンバの夫々が前記後壁部の車体後方側壁面に延設され、前記補強板が、前記後壁部と前記サイドメンバの延設部分との重なり箇所に接合されている点にある。
【0006】
本構成の車体フロア構造は、後壁部を補強する補強板が、幅広トンネル部分の上方側を跨ぐ車体横幅方向両側に亘って、後壁部に接合されている。
このため、後壁部の形状や厚さなどの寸法によらずに、後壁部のうちの幅広トンネル部分の振動を軽減し易い部分、つまり、後壁部における幅広トンネル部分の上方側を跨ぐ車体横幅方向両側に亘る部分の剛性を効率良く高めることができる。
また、サイドメンバの夫々が後壁部の車体後方側壁面に延設され、補強板が、後壁部とサイドメンバの延設部分との重なり箇所に接合されているので、トンネル部を挟む両側に車体前後方向に沿わせて固定されたサイドメンバどうしの車体横幅方向での相対変位を抑制して、これらのサイドメンバの間に配設された幅広トンネル部分の変形を抑制し易いとともに、補強板と後壁部とサイドメンバの延設部分とを一体に接合し易い。
したがって、本構成の車体フロア構造であれば、後壁部の大型化や重量の増大を抑制しながら、後壁部の剛性を高めると共に幅広トンネル部分の変形を抑制して、幅広トンネル部分の振動を効果的に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車体フロア構造を上方側から見た斜視図である。
【図2】車体フロア構造のトンネル部後端側における平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線矢視断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図2におけるV−V線矢視断面図である。
【図6】図2におけるVI−VI線矢視断面図(中央縦断面図)である。
【図7】図2におけるVII−VII線矢視断面図である。
【図8】図2におけるVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】図2におけるIX−IX線矢視断面図である。
【図10】図2におけるX−X線矢視断面図である。
【図11】排気管支持部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明による自動車の車体フロア構造を示す。
車体フロア構造は、車室下部を構成する板金製の車体フロアAと、車体フロアAを支持する板金製の車体フレームBとを有する。
【0009】
車体フレームBは、車体幅方向中央に対して略左右対称に設けられ、車体外側部において車体前後方向に延設された左右一対のサイドシル1と、サイドシル1の車体幅方向内側に車体前後方向に延設された左右一対のサイドメンバ2と、左右のサイドメンバ2の後端側及び左右のサイドシル1に結合されたクロスメンバ3とを備えている。
【0010】
車体フロアAは、車体幅方向中央に対して略左右対称に設けられ、車体横幅方向中央に車体前後方向に沿うトンネル部4が設けられたフロントフロアパネル5と、フロントフロアパネル5の車体後方側で上方側に向けて立ち上がる後壁部6と、後壁部6の上方側に連続するリアフロアパネル7とを有している。
【0011】
トンネル部4は、プレス加工でフロントフロアパネル5に一体に形成され、車体幅方向で互いに対向する左右一対の側板部4aと、側板部4aどうしを一体に結合する天板部4bとを備えている。
【0012】
トンネル部4の車体後方側にトンネル幅が車体後方側ほど広い幅広トンネル部分8が形成されている。
幅広トンネル部分8は、リアフロアパネル7の下側で後壁部6の後方側に向けて開口するように配置して、その外周部が後壁部6に結合されている。
【0013】
クロスメンバ3は、後壁部6と、後壁部6の車体前方側に間隔を隔てて設けた前壁部9とで構成され、図4〜図10に示すように、前壁部9の下端側をフロントフロアパネル5と後壁部6とにスポット溶接で結合すると共に、前壁部9の上端側をリアフロアパネル7にスポット溶接で結合して、前壁部9と後壁部6との間に車体横幅方向に沿う中空部10を備えた閉断面形状に形成されている。
【0014】
前壁部9の上端側には、図7に示すようにリアシート(図示せず)のシートレッグ11がボルト・ナット12aで固定されている。
後壁部6には、図2,図3,図7に示すように燃料タンク13を支持するタンク支持部14と、図2,図3,図11に示すようにエンジン(図示せず)の排気管15に接続してある消音器15aを支持する排気管支持部16とが設けられている。
【0015】
サイドメンバ2の夫々は、図3に示すように横断面形状がスポット溶接用のフランジ2aを左右に備えた上向きコの字状に形成され、フロントフロアパネル5の下側であって、トンネル部4を挟む両側に車体前後方向に沿わせてスポット溶接で固定され、図4,図9に示すように、車体前後方向に沿った前後向き部分と、この前後向き部分の後端部から後壁部6の車体後方側壁面に沿って斜め後方上方に延設された延設部分18とを備えて構成されている。
【0016】
後壁部6の車体前方側壁面には、当該後壁部6を補強する補強板17が、幅広トンネル部分8の上方側を左右に跨ぐ車体横幅方向両側に亘って、後壁部6の上部にスポット溶接で接合されている。
このため、後壁部6の剛性を大きくすることができ、その結果、車体サスペンション (図示せず)や排気管15の振動がトンネル部4に伝わり難くなり、トンネル部4の振動が軽減されて振動音が車室内に籠もり難い。
尚、図中の×印はスポット溶接箇所を示している。
【0017】
補強板17の下部(補強板17の左右両側部の下側の角部)は、図2,図3,図5,図8,図10に示すように、後壁部6とサイドメンバ2の延設部分18におけるフランジ2aとの重なり箇所の上部(上端部)において、後壁部6とフランジ2aとに一体になるようにスポット溶接で互いに接合されている。
【0018】
タンク支持部14は、図7に示すように、後壁部6の補強板17との重なり部分に燃料タンク13のフランジ13aを樹脂リベット12bで固定するように構成して、タンク支持部14を別途補強することなくサイドメンバ2と一体化してある。
このため、タンク支持部14の剛性を高めながら、タンク支持部14の部品点数を削減することができる。
【0019】
排気管支持部16は、図11に示すように、後壁部6の補強板17との重なり部分に支持アーム16aを固定して、この支持アーム16aに、防振ゴム16bを介して、消音器15aに固定された取付けアーム15bを支持してある。
このため、排気管支持部16の固有振動数が高くなり、排気管15の振動に起因する籠もり音を軽減することができる。
【0020】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による車体フロア構造は、補強板が後壁部の車体後方側壁面に接合されていてもよい。
2.本発明による車体フロア構造は、フロントフロアパネルと後壁部とリアフロアパネルとトンネル部とが一体にプレス加工で形成されていても、これらが各別にプレス加工で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0021】
2 サイドメンバ
4 トンネル部
5 フロントフロアパネル
6 後壁部
7 リアフロアパネル
8 幅広トンネル部分
17 補強板
18 延設部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体横幅方向中央に車体前後方向に沿うトンネル部が設けられたフロントフロアパネルと、
前記フロントフロアパネルの下側であって、前記トンネル部を挟む両側に車体前後方向に沿わせて固定されたサイドメンバと、
前記フロントフロアパネルの車体後方側で上方側に向けて立ち上がる後壁部と、
前記後壁部の上方側に連続するリアフロアパネルとを有し、
前記トンネル部の車体後方側にトンネル幅が車体後方側ほど広い幅広トンネル部分が形成され、
前記幅広トンネル部分を前記リアフロアパネルの下側で前記後壁部の後方側に向けて開口するように配置して、その外周部が前記後壁部に結合されている車体フロア構造であって、
前記後壁部を補強する補強板が、前記幅広トンネル部分の上方側を跨ぐ車体横幅方向両側に亘って、前記後壁部に接合され、
前記サイドメンバの夫々が前記後壁部の車体後方側壁面に延設され、
前記補強板が、前記後壁部と前記サイドメンバの延設部分との重なり箇所に接合されている車体フロア構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−46009(P2012−46009A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188517(P2010−188517)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】