説明

車体側部構造

【課題】車体前部から入力された荷重を、ドアヒンジとサイドドアを通して車体後部に効率良く伝達することのできる車体側部構造を提供する。
【解決手段】フロントピラー6の側面に取り付けられるドアヒンジ16に、車体取付け部30から荷重伝達ブロック22の後部に回り込んで荷重伝達ブロック22から荷重を直接受ける荷重受け部26を設ける。サイドドア2の内部に、ドアビーム17よりも車幅方向内側で、かつ、ドアヒンジ16の車体取付け部30と車体前後方向で重なる位置に、車体前後方向に延出する第2のビーム部材36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドア開口部の前縁のフロンピラーにサイドドアが回動可能に取り付けられる車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体側部のドア開口部の前縁にはフロントピラーが設けられ、そのフロントピラーにドアヒンジを介してサイドドアが回動自在に取り付けられている。
ところで、車両の側面衝突(以下、「側突」と呼ぶ。)の対策技術として、サイドドアの内部に車体前後方向に延出するドアビームが設けられ、車体側方からの入力荷重をサイドドア内のドアビームによって受け止めるものがある。
【0003】
この種の車体側部構造として、側突対策のためのドアビームを、前面衝突時等に車体前部から入力される衝撃荷重(以下、「前突荷重」と呼ぶ。)を車体後部にスムーズに伝達するために利用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この車体側部構造は、フロントピラーの前面側に前突荷重を後方に伝達するための荷重伝達部材(補強材)が設置され、フロントピラーの側面(車外側に臨む側面)の前記荷重伝達部材の近傍にドアヒンジが取り付けられるとともに、そのドアヒンジの回動片にサイドドア側のドアビームの前端部が結合されている。
この車体側部構造では、車体前部に前突荷重が入力されると、その荷重が荷重伝達部材を介してフロントピラーに伝達され、さらにその荷重がサイドシルやルーフサイドレール等の車体骨格部材に伝達されると同時に、ドアヒンジとドアビームを介して車体後部に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−206244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の車体側部構造は、荷重伝達部材がフロントピラーの前面側に設置されるのに対し、ドアヒンジの車体取付け部がフロントピラーの側面に取り付けられ、さらに、サイドドアのドアビームがドアヒンジの車体取付け部の車幅方向外側にオフセットして配置されているため、荷重伝達部材に入力された前突荷重を、ドアヒンジを通してドアビームに効率良く伝達する(分散させる)ことが難しい。
【0006】
特に、ドアビームは側突荷重を早期に受け止める必要上、できる限りサイドドアの車幅方向外側位置に配置しなければならない。このため、サイドドアのドアビームは、ドアヒンジの車体取付け部に対して車幅方向外側にオフセットせざるを得ず、前突荷重の入力時にドアビームに荷重を効率良く伝達することが難しくなる。このため、サイドシル等の車体骨格部材をその分補強しなければならず、車体の軽量化の観点からこの点の改善が望まれている。
【0007】
また、この従来の車体側部構造では、ドアヒンジの車体取付け部とドアビームが車幅方向にオフセットして配置されることから、前突荷重の入力時に、ドアヒンジのヒンジ軸の周囲に屈曲や潰れ等の変形を生じることが懸念される。このヒンジ軸の周囲の変形はドア開閉性を確保するうえで望ましくない。
【0008】
そこでこの発明は、車体前部から入力された前突荷重を、ドアヒンジとサイドドアを通して車体後部に効率良く伝達することのできる車体側部構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、車体のドア開口部(例えば、後述の実施形態におけるドア開口部4)に設置されるサイドドア(例えば、後述の実施形態におけるサイドドア2)の内部に、車体前後方向に延出して車体側方からの入力荷重を受け止めるドアビーム(例えば、後述の実施形態におけるドアビーム17)が設けられ、前記ドア開口部の前縁のフロントピラー(例えば、後述の実施形態におけるフロントピラー6)の前方に、車体前部からの入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材(例えば、後述の実施形態における荷重伝達ブロック22)が設けられ、前記サイドドアのドアビームの前端部がドアヒンジ(例えば、後述の実施形態におけるドアヒンジ16)を介して前記フロントピラーに回動自在に取り付けられている車体側部構造において、前記フロントピラーに取り付けられるドアヒンジの車体取付け部(例えば、後述の実施形態における車体取付け部30)に対し、前記ドアビームが車幅方向外側にオフセットして配置されているものにおいて、前記ドアヒンジには、前記車体取付け部から前記荷重伝達部材の後部に回り込んで前記荷重伝達部材から荷重を直接受ける荷重受け部(例えば、後述の実施形態における荷重受け部26)が設けられ、前記サイドドアの内部には、前記ドアビームよりも車幅方向内側で、かつ、前記ドアヒンジの車体取付け部と車体前後方向で重なる位置に、車体前後方向に延出する第2のビーム部材(例えば、後述の実施形態における第2のビーム部材36)が設けられていることを特徴とする。
これにより、車体前部から荷重伝達部材に入力された前突荷重はドアヒンジの荷重受け部を通してドアヒンジに直接伝達され、サイドドアのドアビームと第2のビーム部材を通して車体後部に伝達される。このとき、第2のビーム部材はドアヒンジの車体取付け部と車体前後方向で重なる位置に設けられているため、車体取付け部に入力された荷重はサイドドア内の第2のビーム部材を通して効率良く車体後部に伝達される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記第2のビーム部材の座屈耐荷重が前記ドアビームの座屈耐荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする。
これにより、車体前部からドアヒンジに入力された前突荷重は第2のビーム部材側により多く伝達され易くなる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車体側部構造において、前記荷重伝達部材は、前記ドアヒンジの荷重受け部の前方側で同荷重受け部に当接する基部(例えば、後述の実施形態における基部27)と、この基部から車幅方向内側に延出して前記フロントピラーの前面に当接する内側延長部(例えば、後述の実施形態における内側延長部28)と、を備えていることを特徴とする。
これにより、車体前部から荷重伝達部材に入力された前突荷重は、荷重伝達部材の基部を通してドアヒンジに伝達されるとともに、内側延長部を通してフロントピラーにも直接伝達されるようになる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車体側部構造において、前記荷重伝達部材は、前記ドアヒンジの車体取付け部と車体前後方向で重なる位置に、車体前後方向の崩壊荷重が同荷重伝達部材上の他の部位に比較して大きい高荷重受け部(例えば、後述の実施形態における高荷重受け部25)を備えていることを特徴とする。
これにより、車体前部から荷重伝達部材に入力された前突荷重の多くは、高荷重受け部からドアヒンジの車体取付け部を通して第2のビーム部材に直線的に伝達され易くなる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体側部構造において、前記フロントピラーのピラーアウタパネル(例えば、後述の実施形態におけるピラーアウタパネル6A)の裏側にはスティフナ(例えば、後述の実施形態におけるスティフナ29)が設けられ、前記ドアヒンジの車体取付け部は、前記ピラーアウタパネルと前記スティフナとに締結固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、車体前部から荷重伝達部材に入力された前突荷重が、荷重伝達部材の後部に回り込む荷重受け部を通してドアヒンジに直接伝達され、その伝達荷重がドアヒンジからサイドドアの第2のビーム部材に直線的に伝達される構造とされているため、車体前部から入力された前突荷重を、ドアヒンジとサイドドア内の第2のビーム部材を通して車体後部に効率良く伝達することができる。したがって、この発明によれば、前突荷重の入力時に、サイドシル等の車体骨格部材に分担される伝達荷重を低減できることから、車体骨格部材の過大な補強を無くし車両の軽量化を図ることができる。
また、この発明によれば、荷重伝達部材からドアヒンジの車体取付け部に入力された前突荷重を、車体取付け部と車体前後方向で重なる位置に設けられた第2のビーム部材で主に受け止めることができるため、ドアヒンジのヒンジ軸の周囲の屈曲や潰れ等の変形を有効に防止することができる。したがって、サイドドアのドア開閉性を確保することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、第2のビーム部材の座屈耐荷重がドアビームの座屈耐荷重よりも大きく設定され、車体前部から入力される前突荷重を、ドアヒンジの車体取付け部の後部の第2のビーム部材側でより多く分担できる構造とされているため、ドアヒンジのヒンジ軸の周囲の屈曲や潰れ等の変形をより有効に防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、車体前部から荷重伝達部材に入力された前突荷重を、基部側でドアヒンジの荷重受け部に伝達し、内側延長部でフロントピラーに伝達することができるため、ドアヒンジへの過度な荷重集中を無くしてドアヒンジの変形を有効に防止することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、車体前部から荷重伝達部材に入力された前突荷重の多くを、荷重伝達部材の高荷重受け部とドアヒンジの車体取付け部を通して第2のビーム部材に直線的に伝達することができるため、ドアヒンジのヒンジ軸回りの変形をより有効に防止することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、ドアヒンジの車体取付け部が、フロントピラーのピラーアウタパネルとスティフナとに締結固定されるため、ドアヒンジに入力される荷重をフロントピラーによって確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態の車両の側面図である。
【図2】この発明の一実施形態の車両の荷重伝達ブロックとドアヒンジとドアビームの組み付け状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態の車両の荷重伝達ブロックとドアヒンジの組み付け状態を示す分解斜視図である。
【図4】この発明の一実施形態の車両の図1のA−A断面に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面において、矢印FrとRrは、それぞれ車両1の前方と後方を指し、矢印RとLは、それぞれ車両1の左側方と右側方を指すものとする。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、「前」と「後」は車体に対しての前後を意味するものとする。また、以下では、車両1の左側の側部の構造について説明するが、車両1の右側の側部も同様の構造とされている。
【0021】
図1は、この実施形態の車体側部構造を採用した車両1の一部の部品を取り去った左側面を示す図である。
車両1は、4ドアのセダン型車両であり、車体の側部には前後のサイドドア2,3が取付けられるドア開口部4,5が設けられている。前部側のドア開口部4の前縁にはフロントピラー6が配置され、後部側のドア開口部5の後縁にはリヤピラー7が配置されており、前後のドア開口部4,5の間にはセンターピラー8が配置されている。また、フロントピラー6,センターピラー8,リヤピラー7の各上端部と下端部は、車体前後方向に延出するルーフサイドレール9とサイドシル10によって連結されている。
【0022】
フロントピラー6の前方側には、ルーフサイドレール9の前部に連続するように、フロントサイドフレーム11が前方に延出している。フロントサイドフレーム11の下方に、前輪Wfを配置するためのホイールハウス12が設けられている。また、リヤピラー7の後部下方には、後輪Wrを配置するためのホイールハウス13が設けられている。
【0023】
前後の各サイドドア2,3は、ドア本体2A,3Aにそれぞれドアガラス14が昇降自在に支持され、各ドア本体2A,3Aの前端部が後述するドアヒンジ15,16を介してフロントピラー6とセンターピラー8にそれぞれ回動自在に取り付けられている。また、前後の各サイドドア2,3のドア本体2A,3Aの内部には、車体前後方向に延出して側突荷重を受け止めるドアビーム17,18が設置されている。各ドアビーム17,18はドア本体2A,3Aの高さ方向の中央位置よりも下方に偏倚し、かつ、ドア本体2A,3Aの厚み方向の中央位置よりも車幅方向外側に偏倚した位置に配置されている。この実施形態の場合、各ドアビーム17,18の前後の端部にブラケット20,21が一体に取り付けられ、各端部がブラケット20,21を介してドア本体2A,3Aの前後の端面に結合されている。
【0024】
また、フロントピラー6の下方側の前部には、車体前部からの前突荷重の入力時に、前輪Wfの後方移動を規制するように前輪Wfのタイヤ面に後方側から当接する荷重伝達ブロック22(荷重伝達部材)が設けられている。
図2〜図4は、荷重伝達ブロック22と、フロントピラー6の下方側のドアヒンジ16を含む車体側部の構成部材の詳細を示す図である。
これらの図に示すように、荷重伝達ブロック22は、車体前後方向に延出する複数の筒状断面が並列に配置されたハニカム構造の樹脂ブロック22aと、この樹脂ブロック22aを保持する金属製、若しくは、硬質樹脂製のリテーナ22bを備えた構造とされている。
【0025】
リテーナ22bは、樹脂ブロック22aの後部面を支持する平板状のベース部23と、ベース部23の車幅方向外側の上下端に設けられた枢支連結片24とを備えている。
樹脂ブロック22aはリテーナ22bの前面に重合状態で取り付けられているが、樹脂ブロック22aの車体前後方向の厚みは車幅方向の中央領域が、その左右の領域に比較して厚く形成されている。この最も厚みのある中央領域は、車幅方向の他の部位に比較して崩壊荷重の大きい高荷重受け部25とされている。リテーナ22bの後面は、図4に示すように、車幅方向外側の略半分の領域が後述するドアヒンジ16の荷重受け部26に当接し、車幅方向内側の略半分の領域がフロントピラー6の前面に当接する。この実施形態の場合、樹脂ブロック22aを含む荷重伝達ブロック22の車幅方向外側の略半分の領域は、ドアヒンジ16の荷重受け部26の前方側で同荷重受け部26の前面に当接する基部27を構成し、荷重伝達ブロック22の車幅方向内側の略半分の領域は、基部27から車幅方向内側に延出してフロントピラー6の前面に当接する内側延長部28を構成している。
【0026】
また、図4に示すように、フロントピラー6は、断面略コ字状のピラーアウタパネル6Aの車幅方向内側にピラーインナパネル6Bが接合されて閉断面構造とされているが、ピラーアウタパネル6Aの裏面のうちの、上下のドアヒンジ15,16が取り付けられる部位には、断面略コ字状のスティフナ29が接合されて部分的に補強されている。
【0027】
下部側のドアヒンジ16は、フロントピラー6(ピラーアウタパネル6A)の車外側の側面に重合状態で取り付けられる車体取付け部30の前端部に略L字状に屈曲して車幅方向外側に延出する前記の荷重受け部26が設けられている。この荷重受け部26の前面には前述した荷重伝達ブロック22(リテーナ22b)の基部27が重合される。また、車体取付け部30の後端部には、車幅方向外側に略L字状に屈曲して先端部にヒンジ軸32が支持される軸支部33が設けられている。軸支持部33には、ヒンジ軸32を介して略水平方向に回動可能に回動片34が連結されている。この回動片34は、サイドドア2(ドア本体2A)の前端面とドアビーム17のブラケット20の重合固定部にボルト35によって締結固定されている。
なお、ドアヒンジ16の車体取付け部30は、図4に示すように、ピラーアウタパネル6Aとスティフナ29の重合固定部にボルト31によって締結固定されている。また、ドアヒンジ16の荷重受け部26から車体取付け部30、軸支持部33にかけては車体前後方向及び幅方向の強度を持たせるために断面略コ字状に形成されている。
【0028】
また、上部側のドアヒンジ15は、ここでは詳細な図示は省略するが、ほぼ下部側のドアヒンジ15から荷重受け部26を取り去ったものと同様の構造とされ、車体取付け部がフンロントピラー6の側面に取り付けられるとともに、回動片がサイドドア2の前端面に取り付けられている。
【0029】
ここで、サイドドア2内に配置されるドアビーム17は、側突時に早期に荷重を受け止めるために、できる限りサイドドア2内の車幅方向外側に偏倚した位置に配置されている。このため、ドアビーム17は、ドアヒンジ16の車体取付け部30に対し、車幅方向外側に所定量Lだけオフセットしている(図4参照)。
図4に示すように、サイドドア2の内部には、さらに、ドアビーム17と平行に車体前後方向に延出する第2のビーム部材36が配置されている。この第2のビーム部材36は、ドアヒンジ16の車体取付け部30と車体前後方向で重なり、かつ、ドアビーム17と同一高さとなる位置に配置されている。第2のビーム部材36の前端部はブラケット37を介してサイドドア2の前端面に結合されている。第2のビーム部材36の後端部は、図示は省略されているが、ドアビーム17と同様にサイドドア2の後端部にブラケットを介して結合されている。
また、第2のビーム部材36は、肉厚や直径の差によってドアビーム17に比較して座屈耐荷重が大きくなるように設定されている。
【0030】
また、図3に詳細に示すように、荷重伝達ブロック22のリテーナ22bの車外側端部に延設された各枢支連結片24はピン38とカラー39を介してドアヒンジ16の荷重受け部26の車幅方向外側の端部に回動可能に連結されている。
【0031】
また、センターピラー8に取り付けられる上下のドアヒンジ15,16は、フロントピラー6側の上下のドアヒンジ15,16と同様の構造とされている。センターピラー8に取り付けられる下側のドアヒンジ16は、前後のサイドドア2,3のドアビーム17,18間に配置され、車体取付け部30がセンターピラー8の車外側の側面に結合されるとともに、荷重受け部26が前部側のサイドドア2の後端面のドアビーム17の延長上位置に臨むように配置されている。また、このドアヒンジ16の回動片34は、後部側のサイドドア3の前端面とドアビーム18(ブラケット20)の重合固定部に固定されている。
なお、後部側のサイドドア3の内部には、図3に示すように、前部側のサイドドア2と同様の第2のビーム部材136を設けるようにしても良い。この場合、第2のビーム部材136は、センターピラー8に取り付けられるドアヒンジ16の車体取付け部30に対して車体前後方向で重なるように配置される。
【0032】
以上の構成において、車両1の側面に側突荷重が入力された場合には、サイドドア2,3内のドアビーム17,18が前後のピラー間(フロントピラー6とセンターピラー8、センターピラー8とリヤピラー7)に跨るようにして荷重を支持し、各サイドドア2,3の車幅方向内側方向への変形を抑制する。
【0033】
一方、車体前部から前突荷重が入力され、前輪Wfの位置が後方に移動して前輪Wfのタイヤ面がその後方の荷重伝達ブロック22に当接すると、図2〜図4中の矢印F1で示すように、荷重伝達ブロック22には車体後方側に向かう荷重F1が作用する。
【0034】
荷重伝達ブロック22に入力された荷重F1は、同ブロック22の基部27を介してその一部がドアヒンジ16の荷重受け部26に直接伝達され、残余の荷重が同ブロック22の内側延長部28を介してフロントピラー6に直接伝達される。
【0035】
ドアヒンジ16の荷重受け部26に入力された荷重はドアヒンジ16の車体取付け部30に伝達され、フロントピラー6の変形とそれに伴うドアヒンジ16の後方変位によって、ドアヒンジ16の車体取付け部30がサイドドア2の前端面の第2のビーム部材36との結合部に当接する。これにより、ドアヒンジ16の車体取付け部30に入力された荷重が直線的に第2のビーム部材36に伝達されるとともに、ドアヒンジ16の軸支持部33と回動片34を通してサイドドア2内のドアビーム17に伝達される。そして、第2のビーム部材36とドアビーム17に入力された荷重は、サイドドア2の後端側でセンターピラー8とドアヒンジ16を介して後部側のサイドドア3に伝達される。後部側のサイドドア3では、前部側のサイドドア2と同様にドアヒンジ16を介して主に第2のビーム部材36とドアビーム17に荷重が伝達され、これらの後端部でその荷重がさらにリヤピラー7へと伝達される。
【0036】
また、荷重伝達ブロック22の内側延長部28を介してフロントピラー6に入力された荷重はその上下のルーフサイドレール9とサイドシル10に伝達され、ルーフサイドレール9とサイドシル10に分散されてリヤピラー7に伝達される。
【0037】
この車両1の車体側部構造は、フロントピラー6に取り付けられる下部側のドアヒンジ16に荷重伝達ブロック22の基部27の後面に回り込んで当接する荷重受け部26が設けられるとともに、前部側のサイドドア2の内部に、ドアヒンジ16の車体取付け部30と車体前後方向で重なるように第2のビーム部材36が設けられているため、車体前部から荷重伝達ブロック22に入力された前突荷重を、ドアヒンジ16と第2のビーム部材36を通して車体後部に効率良く伝達することができる。
したがって、この車体側部構造を採用した場合には、サイドシル10やルーフサイドレール9等の車体骨格部材の荷重分担を軽減できるため、これらの車体骨格部材の過剰な補強が不要になり、その分車両の軽量化を図ることが可能になる。
【0038】
また、この車体側部構造においては、荷重伝達ブロック22から下部側のドアヒンジ16に入力された荷重を、ドアヒンジ16の車体取付け部30と車体前後方向で重なる位置に設けられた第2のビーム部材36で主に受け止めることができるため、ドアヒンジ16の軸支持部33と回動片34の間に車体前後方向に大きなせん断方向の荷重が入力されにくくなる。このため、ドアヒンジ16のヒンジ軸32の周囲に屈曲や潰れ等の変形が生じにくくなり、サイドドア2のドア開閉性を確保することが可能になる。
【0039】
さらに、この車体側部構造では、サイドドア2内に配置される第2のビーム部材36の座屈耐荷重がドアビーム17の座屈耐荷重よりも大きく設定されているため、車体前部からドアヒンジ16に荷重が入力されたときに、第2のビーム部材36側でより多く荷重を分担することができる。このため、ドアヒンジ16の軸支持部33と回動片34の間に作用する車体前後方向のせん断荷重をより小さくし、ドアヒンジ16のヒンジ軸32の周囲の屈曲や潰れ等の変形を有効に防止することができる。
【0040】
また、この実施形態の車体側部構造の場合、荷重伝達ブロック22に、ドアヒンジ16の荷重受け部26の前面に当接する基部27と、基部27から車幅方向内側に延出してフロントピラー6の前面に当接する内側延長部28が設けられているため、車体前部から入力された荷重を、基部側でビアヒンジ16の荷重受け部26に直接伝達するとともに、内側延長部28でフロントピラー6にも直接伝達することができる。このため、車体前部から前突荷重が入力されるときにドアヒンジ16側に荷重が集中することがなくなり、ドアヒンジ16の過度な変形を有効に防止することが可能になる。
【0041】
さらに、この実施形態の場合、荷重伝達ブロック22のうちの、ドアヒンジ16の車体取付け部30と車体前後方向で重なる位置に、車体前後方向の崩壊荷重が他の部位に比較して大きい高荷重受け部25が設けられているため、車体前部から荷重伝達ブロック22に入力された荷重の多くを、高荷重受け部30とドアヒンジ16の車体取付け部30を通して第2のビーム部材36に直線的に伝達することができる。このため、ドアヒンジ16のヒンジ軸32回りの変形をさらに有効に防止することができる。
【0042】
また、この実施形態の車体側部構造においては、ドアヒンジ16の車体取付け部30が、フロントピラー6のピラーアウタパネル6Aとスティフナ29とに締結固定されるため、ドアヒンジ16に入力される前突荷重をフロントピラー6によって確実に支持することができる。
【0043】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
2…サイドドア
4…ドア開口部
6…フロントピラー
6A…ピラーアウタパネル
16…ドアヒンジ
17…ドアビーム
22…荷重伝達ブロック(荷重伝達部材)
25…高荷重受け部
26…荷重受け部
27…基部
28…内側延長部
29…スティフナ
30…車体取付け部
31…荷重受け部
36…第2のビーム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のドア開口部に設置されるサイドドアの内部に、車体前後方向に延出して車体側方からの入力荷重を受け止めるドアビームが設けられ、
前記ドア開口部の前縁のフロントピラーの前方に、車体前部からの入力荷重を後方に伝達する荷重伝達部材が設けられ、
前記サイドドアのドアビームの前端部がドアヒンジを介して前記フロントピラーに回動自在に取り付けられている車体側部構造において、
前記フロントピラーに取り付けられるドアヒンジの車体取付け部に対し、前記ドアビームが車幅方向外側にオフセットして配置されているものにおいて、
前記ドアヒンジには、前記車体取付け部から前記荷重伝達部材の後部に回り込んで前記荷重伝達部材から荷重を直接受ける荷重受け部が設けられ、
前記サイドドアの内部には、前記ドアビームよりも車幅方向内側で、かつ、前記ドアヒンジの車体取付け部と車体前後方向で重なる位置に、車体前後方向に延出する第2のビーム部材が設けられていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記第2のビーム部材の座屈耐荷重が前記ドアビームの座屈耐荷重よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記荷重伝達部材は、前記ドアヒンジの荷重受け部の前方側で同荷重受け部に当接する基部と、この基部から車幅方向内側に延出して前記フロントピラーの前面に当接する内側延長部と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記荷重伝達部材は、前記ドアヒンジの車体取付け部と車体前後方向で重なる位置に、車体前後方向の崩壊荷重が同荷重伝達部材上の他の部位に比較して大きい高荷重受け部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記フロントピラーのピラーアウタパネルの裏側にはスティフナが設けられ、前記ドアヒンジの車体取付け部は、前記ピラーアウタパネルと前記スティフナとに締結固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−219030(P2011−219030A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92377(P2010−92377)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】