説明

車体前部構造

【課題】本発明は、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを備えた車体前部構造において、より大きな前面衝突荷重が作用した場合でも、適切に荷重分散することができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】中間分岐フレーム部40は、前端部がサスペンションフレームを締結固定するサスフレーム取付けボルト61によって、フロントサイドフレーム1に連結され、中間部が車幅内方側に屈曲して車幅中央に形成されるトンネル部14まで延設され、その後部がトンネル部14の上端角部の下方位置(車室外方)に、この上端角部に沿って車体前後方向に延びるように設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右一対のフロントサイドフレームを備えた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車体前部構造において、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを設け、このフロントサイドフレームで前面衝突の際の衝撃を受けて、その荷重を適切に車体後方側部材(ルーフパネル等)に伝達することが知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1や特許文献2では、大きな前面衝突荷重をフロントサイドフレームで受けて、この衝突荷重をフロントピラーからルーフパネル側に分散伝達できるように、フロントサイドフレーム中間部とフロントピラー等とを、略上下方向延びる連結フレームで連結し、この連結フレームを介してフロントサイドフレームに作用する前面衝突荷重をフロントピラー側に分散伝達するものが提案されている。
【特許文献1】特開2003−182633号公報
【特許文献2】特開2006−21590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前面衝突時には、大きな衝突荷重がフロントサイドフレームに作用するため、できるだけ多くの車体後方側部材を利用して、フロントサイドフレームの衝突荷重を分散することが求められる。
【0005】
この点、前述の特許文献1及び特許文献2では、フロントサイドフレームに作用する荷重をフロントピラーに伝達する点が開示されているものの、その他の部材に衝突荷重を伝達する構造については何ら開示されておらず、さらに大きな衝突荷重を受けた場合には、適切な荷重分散ができないおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを備えた車体前部構造において、より大きな前面衝突荷重が作用した場合でも、適切に荷重分散することができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の車体前部構造は、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームの後方でエンジンルームと車室とを仕切るように設けたダッシュパネルとを備えた車体前部構造であって、前記ダッシュパネル及び車室のフロアパネルの車幅中央で、上方に隆起するように形成された車体前後方向に延びるトンネル部と、前記フロントサイドフレームに前端部が結合されて、途中で車幅内方側に屈曲し、後部が前記トンネル部の車室外側で該トンネル部の上端角部との間で閉断面を構成するように車体後方側に延びるセンター側フレーム部材とを備えたものである。
上記構成によれば、センター側フレーム部材によって、フロントサイドフレームとトンネル部が連結され、特にセンター側フレーム部材の後部ではトンネル部の上端角部との間で閉断面が構成されることになる。
このため、フロントサイドフレームに作用する大きな前面衝突荷重を、剛性部材であるトンネル部に確実に伝達することができ、トンネル部に対して荷重分散することができる。
なお、センター側フレーム部材は、できるだけトンネル部と共に車体後方側まで延びるように設置するのが望ましい。トンネル部全体にわたり荷重を分散できるからである。
【0008】
この発明の一実施態様においては、前記センター側フレーム部材の後端を、車幅方向に延びるクロスメンバーに結合したものである。
上記構成によれば、センター側フレーム部材の後端が、クロスメンバーに結合されることで、車幅方向に延びるクロスメンバーにも荷重を伝達することができる。
よって、車体後部の車体剛性部材であるクロスメンバーも利用して、確実に前面衝突荷重を支持できる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、前記センター側フレーム部材の前部を、二つの部材を結合して閉断面構造として構成し、該二つの部材のうち上側に位置する上側部材を前記ダッシュパネルに突き当て接合し、該上側部材が突き当て接合された部分に対応する車室内側に、前記トンネル部の上端角部に沿って車体後方側に延びる縦方向部材を接合したものである。
上記構成によれば、センター側フレーム部材の上側部材に対応するように、車室内側に、縦方向部材が位置することになる。
このため、車室内側の縦方向部材に対して、前面衝突荷重を伝達することができ、ダッシュパネルの強度に関係なく、縦方向部材を利用して荷重分散をすることができる。
よって、ダッシュパネルを補強することなく、より大きな衝突荷重を荷重分散することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、前記縦方向部材と前記センター側フレーム部材とを、前記トンネル部の上端角部を挟んで閉断面を構成するように対応して設けたものである。
上記構成によれば、トンネル部の上端角部を挟んで縦方向部材とセンター側フレーム部材とで閉断面を構成することになる。
このため、トンネル部の上端角部の形状等に関係なく、車体前後方向に延びる閉断面のフレーム体をトンネル部の上端角部に構成することができる。
よって、トンネル部の上端角部の強度等を考慮することなく、トンネル部に対して前面衝突荷重を伝達することができ、車体の衝突性能を高めることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、前記縦方向部材を、前記トンネル部の上端角部との間で閉断面を構成するように該上端角部との間に空間を有して設置したものである。
上記構成によれば、縦方向部材と上端角部との間にも、閉断面を構成することができ、また、縦方向部材にも前後方向に延びる稜線を複数形成することができる。
このため、トンネル部の上端角部の上下位置に前後方向に延びる二つの閉断面を構成できるため、さらにトンネル部の上端角部の剛性を高めることができる。また、縦方向部材も前後方向剛性を高めることができる。
よって、トンネル部の上端角部における衝突荷重の伝達性能を高めることができる。さらに、トンネル部前端のダッシュパネルとの結合部を大きな曲率の曲面で形成した場合でも、縦方向部材との干渉を防ぐことができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、前記センター側フレーム部材の前部の閉断面を構成する二つの部材のうち、一つの部材を、前部を平板体として、後部を途中から隆起して折曲形成したメンバー体として構成したものである。
上記構成によれば、センター側フレーム部材を構成する部材を、前部を平板体とすることで前後方向の荷重に対して変形しやすくでき、後部をメンバー体とすることで変形しにくくすることができる。
このため、前面衝突荷重を受けた際、センター側フレーム部材の前部では折れ曲りが生じやすくなり、衝撃吸収をおこなうことができ、センター側フレーム部材の後部では折れ曲りが生じにくくなり、荷重伝達性能を高めることができる。
よって、センター側フレーム部材を構成する部材が、一つの部材によって複数の機能を得ることができ、センター側フレーム部材の機能を高めることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記センター側フレーム部材に加えて、前記フロントサイドフレームとフロントピラーとを車幅外方側上方に延びて連結する上部フレーム部材と、該フロントサイドフレームとサイドシルとを車幅外方側下方に延びて連結する下部フレーム部材とを備えたものである。
上記構成によれば、センター側フレーム部材に加えて、さらに、上部フレーム部材と下部フレーム部材とにより、フロントサイドフレームに作用する衝突荷重を、車体後方の剛性部材である、フロントピラーとサイドシルに対して伝達することができる。
このため、大きな衝突荷重を、車体後方側の剛性部材であるフロントピラー、サイドシル、それとトンネル部の三部材に荷重分散することができる。
よって、フロントサイドフレーム位置を中心に放射状に広がる方向に位置する三部材を利用して、車体の前面衝突性能をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、フロントサイドフレームに作用する大きな前面衝突荷重を、剛性部材であるトンネル部に確実に伝達することができ、トンネル部に対して荷重分散することができる。
よって、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームを備えた車体前部構造において、より大きな前面衝突荷重が作用した場合でも、適切に荷重分散することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について、以下、図面に基づいて詳述する。
まず、図1〜図6により本発明の実施形態に係る車体前部構造の全体構造について説明する。図1は車体前部構造の全体斜視図である。図2は右側フロントサイドフレーム近傍を車幅内方側から見た側面図、図3は右側フロントサイドフレーム近傍を車幅外方側から見た側面図、図4は右側フロントサイドフレーム近傍の正面図、図5は右側フロントサイドフレーム近傍の平面図、図6は右側フロントサイドフレーム近傍の底面図である。なお、図3のボディサイドパネルはアウタパネルを取り除いた状態としている。
【0016】
図1に示すように、車体前部構造BFは、左右一対の車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム1,1と、そのフロントサイドフレーム1,1の前端部を車幅方向に延びて連結するバンパーフレーム2と、そのフロントサイドフレーム1,1の中間部外側側方で略上下方向に立設するサスタワー3,3と、そのサスタワー3,3の上端外側側方で車体前後方向に延びるエプロンレイン4,4と、フロントサイドフレーム1,1の後方で車幅方向且つ上下方向に広がってエンジンルームERと車室CBとを仕切るダッシュパネル5と、ダッシュパネル5の上端で車幅方向に延びるカウルボックス6と、そのカウルボックス6の側端に連結されて車室側壁をなすボディサイドパネル7と、ダッシュパネル5下端から車体後方に略水平方向に広がるフロアパネル8と、を備えている。
【0017】
また、フロントサイドフレーム1,1の下方には、前輪のフロントサスペンション装置(図示せず)を支持する略井型形状のサスペンションフレーム9を設置しており、ラバーマウント10,10等を介して、フロントサイドフレーム1及びフロアパネル8に締結固定している。
【0018】
さらに、前述のボディサイドパネル7は、カウルボックス6の連結位置より上方に位置するフロントピラー11と、カウルボックス6の連結位置より下方に位置して上下方向に延びるドアヒンジピラー12と、ドアヒンジピラー12下端から車体後方側に延びてフロアパネル8側方に位置するサイドシル13と、を備えている。
【0019】
前述のフロントサイドフレーム1,1は、図2に示すように、前部で車体前後方向に延びるメインフレーム部20と、後方側で三方に分岐する分岐フレーム部30,40,50とを備えている。
【0020】
このうち、分岐フレーム部は、上部分岐フレーム部30と、中間分岐フレーム部40と、下部分岐フレーム部50の、計三本で構成しており、図2に示すように、各後端部31,41,51を、車幅外方側上方に位置するフロントピラー11、車幅内方側に位置するトンネル部14、車幅外方側下方に位置するサイドシル13、にそれぞれ連結固定している。
【0021】
具体的には、図4に示すように、上部分岐フレーム部30が車幅外方側上方に湾曲してフロントピラー11の下部11aに連結されており、中間分岐フレーム部40が車幅内方側に湾曲してトンネル部14の前端上部角部14aに連結されており、さらに、下部分岐フレーム部50が車幅外方側下方に湾曲してサイドシル13の前端13aに連結されている。
【0022】
このように構成することにより、各分岐フレーム部30,40,50は、図4に示すように、正面視でメインフレーム部20の位置を中心として約120°間隔で放射状に延びることになり、車体前方から作用する衝突荷重を、略均等に車体後方側の各剛性部材(11,13,14)に伝達することができる。
【0023】
また、図5に示すように、この各分岐フレーム部30,40,50の分岐点Xは、ダッシュパネル5から所定量前方に離間した位置に設定しており、この分岐点Xからダッシュパネル5との間に所定の変形空間Sを形成している。
【0024】
すなわち、各分岐フレーム部30,40,50を、ちょうど「カメラの三脚」のように分岐させることで、ダッシュパネル5との間に変形空間Sを形成して、前面衝突の際に、この分岐点Xを車体後方に後退変形させることで、この各分岐フレーム部30,40,50でも衝突荷重を吸収させるようにしているのである。
【0025】
また、各分岐フレーム部30,40,50の形状を、図2、図3、図5及び図6に示すように、一旦後方側に延びた後、それぞれの連結方向に湾曲するように形成している。これにより、この湾曲位置で折れ曲り変形が生じ易くなっている。さらに、図4に示すように、各分岐フレーム部30,40,50の閉断面を構成する平板部分32,42,52を、湾曲位置の内方側に設定している。これにより、さらにこの湾曲位置で、各分岐フレーム部30,40,50を折れ曲りやすくしている。
【0026】
なお、上部分岐フレーム部30については、後部に丸形パイプ33を固定しており、この部位における変形をできるだけ抑えて、車体前方からの衝突荷重を確実にフロントピラー11に伝達できるように構成している。
【0027】
次に、本実施形態の特徴部分である中間分岐フレーム部40の構造について、図7〜図13でより詳細に説明する。図7は中間分岐フレーム部の分岐部分近傍を車幅内方側から見た上方斜視図、図8はその中間分岐フレーム部の分岐部分近傍を車幅内方側から見た下方傾斜図、図9は車室内方から前方に向ってダッシュパネルの車室側面(後方側面)を見た上方斜視図、図10は中間分岐フレームを構成するメンバー部材単品の組立説明図、図11は図9のA−A線矢視断面図、図12は車室内後方のトンネル部後端近傍を上方から見た平面図、図13は図12のB−B線矢視断面図である。
【0028】
この実施形態の中間分岐フレーム部40は、図7に示すように、前端部40aがサスペンションフレーム9を締結固定するサスフレーム取付けボルト61によって、フロントサイドフレーム1に連結され、中間部40bが車幅内方側に屈曲して車幅中央に形成されるトンネル部14まで延設され、その後部40cがトンネル部14の上端角部15(図9参照)の下方位置(車室外方)に、この上端角部15に沿って車体前後方向に延びるように設置されている。
【0029】
この中間分岐フレーム部40は、図10に示すように、ロアメンバー40Aとアッパーメンバー40Bの二つのメンバー部材を接合することによって構成している。
【0030】
具体的には、車幅外方側及び上方側に位置するアッパーメンバー40Bと、車幅内方側及び下方側に位置するロアメンバー40Aとを、矢印で示すように上下方向に重ね合わせて接合フランジ等で接合することで、閉断面を構成するフレーム部材として構成している。
【0031】
このうち、アッパーメンバー40Bは、前部を断面略ハット形状に形成して嵌込み部43としている。また、中間部を車幅内方側に屈曲させると共に嵌込み部43の突出量を徐々に小さくなるように形成している。そして、後部を断面逆L字形状に形成しメンバー部44として構成している。また、メンバー部44の後端に上方及び側方に折曲形成した接合フランジ45,45を設けている。
【0032】
一方、ロアメンバー40Aは、前部を平板部分42として構成し、中間部を車幅内方側に屈曲させると共に、その中央位置に車幅内方側に徐々に隆起する隆起部46を形成している。また、この隆起部46は、後部で徐々に大きくなり断面略階段状に形成したメンバー部47として構成している。そして、このメンバー部47は一旦下方に傾斜して、その下端から車体後方側に延びるように形成している。
【0033】
このアッパーメンバー40Bとロアメンバー40Aは、前側部分において上部と下部で縦方向に延びる接合フランジ48a、48bで接合されて(接合点×印)、中間位置から後側部分にかけて、上部の接合フランジ48aのみが横方向に倒れる横方向フランジ48cとなるように形成される。
【0034】
このように、上部の接合フランジ48aが途中で横方向に倒れる横方向フランジ48cとしているのは、ロアメンバー40Aの後部をトンネル部14下方に潜り込ませつつも、アッパーメンバー40Bにフロントサイドフレーム1に連結する嵌込み部43を形成しているからである。
【0035】
また、この中間分岐フレーム部40では、フレームの閉断面空間を主に構成するメンバー部材を、アッパーメンバー40Bから徐々にロアメンバー40Aとなるように形成している。これは、閉断面空間を構成するメンバー部材を急激に変化させると、この変化部分に応力集中するおそれがあるからである。
【0036】
さらに、ロアメンバー40Aでは、平板部分42から徐々に隆起する隆起部46を形成し、その後方のメンバー部47につながるように形成している。これは、中間分岐フレーム部40の前部では、折り曲げ変形しやすくして、後部では剛性を高めることで荷重伝達性能を高めるためである。
【0037】
このように、中間分岐フレーム部40は、異形のメンバー部材のアッパーメンバー40Bとロアメンバー40Aとを組合せて接合することで、フロントサイドフレーム1からトンネル部14に衝突荷重を伝達する伝達部材として機能している。
【0038】
この中間分岐フレーム部40のうち、ロアメンバー40Aは、図8に示すように、ダッシュパネル5位置よりも車体後方側に延びるように設置しており、トンネル部14の車室外方側(下方側)でトンネル部14に沿って前後方向に車体後方側に延びるように設置している。
【0039】
一方、アッパーメンバー40Bは、図7に示すように、後端の接合フランジ45,45をダッシュパネル5に突き当て接合することで、ダッシュパネル5より前側位置にのみ設置している。このため、ロアメンバー40Aは、ダッシュパネル5より後方位置では、トンネル部14との間で閉断面を構成している。
【0040】
図9に示すように、このアッパーメンバー40Bの突き当て接合位置に対応するダッシュパネル5の車室CB側位置には、車室側レインメンバー53を設けている。この車室側レインメンバー53は、断面略ハット状のメンバー体で構成しており、トンネル部14の上端角部15に沿って車体前後方向に延びるように設置している(図9では便宜上右側のみを開示)。
【0041】
この車室側レインメンバー53の前端には、ダッシュパネル5に突き当て接合する上部フランジ54と外部フランジ55に設けている。また、車幅内方側には、トンネル部14前端とダッシュパネル5の結合部分における大きな曲率の曲面部Rを避けるため、円弧状に形成した湾曲部56を設けている。
【0042】
この車室側レインメンバー53は、この上面部53aに複数の取付け穴57…を穿設している。この取付け穴57…は、例えば、エアバッグセンサー、電気ハーネス、インパネブラケット、チェンジレバー、センターコンソール、パーキングレバー、パーキングケーブル(全て図示せず)などを取付けるために穿設している。
【0043】
この車室側レインメンバー53は、図11に示すように、トンネル部14の上端角部15の上方(車室内方側)に位置するように設置され、上部接合フランジ53bをトンネル部14の上壁面14Aに、下部接合フランジ53cをトンネル部14の側壁面14Bに、それぞれ接合するように構成している。
【0044】
そして、上面部53aがトンネル部14の上壁面14Aより上方位置に突出するように、内側面部53dと外側面部53eを上方に延びるように設けている。このため、上面部53aの取付け穴57内側にウェルドナットNを設置することが可能となり、ボルト部材Mで所定の取付け部材(図示せず)を締結固定できるように構成している。
【0045】
また、トンネル部14の上端角部15の下方には、車室側レインメンバー53に対応するように、中間分岐フレーム部40のロアメンバー40Aを接合固定している。このロアメンバー40Aの上部接合フランジ40Abをトンネル部14の上壁面14Aに接合して、下部接合フランジ40Acをトンネル部14の側壁面14Bに接合することで、ロアメンバー40Aをトンネル部14の車室外方側に接合している。
【0046】
このように、車室側レインメンバー53とロアメンバー40Aをトンネル部14に接合することで、車室側レインメンバー53とトンネル部14で上部閉断面W1を構成し、トンネル部14とロアメンバー40Aとで下部閉断面W2を構成している。
【0047】
また、接合フランジの接合位置を一致させることで、車室側レインメンバー53とロアメンバー40Aによっても、見かけ上、上部閉断面W1と下部閉断面W2とを合算した大きな閉断面を有する一本のフレーム部材を構成していることと同様となる。本実施形態では、特に、トンネル部14の板厚t1よりも、車室側レインメンバー53の板厚t2やロアメンバー40Aの板厚t3を大きくしているため、この一本のフレーム部材化を顕著に達成することができる。
【0048】
このため、トンネル部14の上端角部15には、強固な閉断面部(W1,W2)が構成されることになり、トンネル部14の上端角部15の剛性を高めることができる。
【0049】
よって、トンネル部14において、フロントサイドフレーム1からの衝突荷重を適切に分散支持することができる。
【0050】
図12及び図13は、トンネル部14の後端部分の平面図と断面図である(図12では、便宜上、車室側レインメンバー53を取り外している)。これらの図に示すように、中間分岐フレーム部40(ロアメンバー40A)後端は、車幅方向に延びる後部クロスメンバー70に接合するように構成している。
【0051】
この後部クロスメンバー70は、トンネル部14後方でフロアパネル8を上方に隆起したフロアピックアップ部81の下方位置で、車幅方向に延びて左右のサイドシルを繋ぐように設置している。そして、この後部クロスメンバー70は、フロアパネル8下面に接合される断面略ハット形状のメンバー体で構成している。
【0052】
この後部クロスメンバー70の前側縦面70aに対して、ロアメンバー40Aの後端の後部フランジ49を接合することで、ロアメンバー40Aを後部クロスメンバー70に接合している。
【0053】
なお、図13に示すように、車室側レインメンバー53についても、その後端の接合フランジ58を、フロアピックアップ部81に接合することで、後部クロスメンバー70の閉断面W3に対して接合している。
【0054】
このように、この実施形態では、ロアメンバー40A及び車室側レインメンバー53を、後部クロスメンバー70等に接合することにより、フロントサイドフレーム1から作用する衝突荷重を、ロアメンバー40A、車室側レインメンバー53を介して、後部クロスメンバー70にも伝達している。
【0055】
このため、前面衝突荷重の荷重分散を、車体の後方部材(70)も利用してより効果的に行なうことができる。特に車幅方向に延びる後部クロスメンバー70で荷重を支持することで、大きな衝突荷重であっても、確実に支持することができる。
【0056】
また、この実施形態では、図12に示すように、ロアメンバー40Aの下部接合フランジ40Acに一致するように、中央クロスメンバー71の内側フランジ71aを接合している。
【0057】
このため、ロアメンバー40Aに作用する前面衝突荷重を、中央クロスメンバー70にも伝達することができ、より荷重分散を図ることができる。
【0058】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
この実施形態の車体前部構造は、ダッシュパネル5及び車室のフロアパネル8の車幅中央で、上方に隆起するように形成された車体前後方向に延びるトンネル部14と、フロントサイドフレーム1に前端部が結合されて、途中で車幅内方側に屈曲し、後部がトンネル部14の車室外側でそのトンネル部14の上端角部15との間で下部閉断面W2(図11参照)を構成するように車体後方側に延びる中間分岐フレーム部40(40A)とを備えている。
これにより、中間分岐フレーム部40で、フロントサイドフレーム1とトンネル部14が連結され、特に中間分岐フレーム部40の後部では、トンネル部14の上端角部15との間で下部閉断面W2を構成することになる。
このため、フロントサイドフレーム1に作用する大きな前面衝突荷重を、車体の剛性部材であるトンネル部14に確実に伝達することができ、トンネル部14に対して荷重分散することができる。
よって、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム1、1を備えた車体前部構造において、より大きな前面衝突荷重が作用した場合でも、適切に荷重分散することができる。
特に、本実施形態の場合には、トンネル部14の上端角部15に下部閉断面W2を構成して、この下部閉断面W2に荷重を伝達するように構成しているため、例えば、前面オフセット衝突の際に、オフセット荷重が入力された場合でも、従来の車体構造のように、トンネル部の上端角部の稜線自体が、開放断面となっていないため、傾斜して作用するオフセット荷重でも確実に支持できるといった効果が得られる。
【0059】
また、この実施形態では、中間分岐フレーム部40の後端を、車幅方向に延びる後部クロスメンバー70に結合している。
これにより、車幅方向に延びる後部クロスメンバー70にも衝突荷重を伝達することができる。
よって、車体後部の車体剛性部材である後部クロスメンバー70も利用して、確実に前面衝突荷重を支持できる。
【0060】
また、この実施形態では、中間分岐フレーム部40の前部を、アッパーメンバー40Bとロアメンバー40Aを結合して閉断面構造として構成し、このうちアッパーメンバー40Bをダッシュパネル5に突き当て接合し、アッパーメンバー40Bが突き当て接合された部分に対応する車室内側に、トンネル部14の上端角部15に沿って車体後方側に延びる車室側レインメンバー53を接合している。
これにより、中間分岐フレーム部40のアッパーメンバー40Bに対応して、車室内側に、車室側レインメンバー53が位置することになる。
このため、車室内側の車室側レインメンバー53に対して、前面衝突荷重を伝達することができ、ダッシュパネル5の強度に関係なく、車室側レインメンバー53を利用して荷重分散をすることができる。
よって、ダッシュパネル5を補強することなく、より大きな衝突荷重を荷重分散することができる。
【0061】
また、この実施形態では、車室側レインメンバー53と中間分岐フレーム部40とを、トンネル部14の上端角部15を挟んで、閉断面(上部閉断面W1と下部閉断面W2)を構成するように対応して設けている。
これにより、トンネル部14の上端角部15を挟んで車室側レインメンバー53と中間分岐フレーム部40との間で閉断面(W1、W2)を構成することになり、トンネル部14の上端角部15の形状等に関係なく、車体前後方向に延びるフレーム体を、トンネル部14の上端角部15に構成することができる。
よって、トンネル部14の上端角部15の強度を高めることで、確実に、トンネル部14に対して前面衝突荷重を伝達することができ、車体の衝突性能を高めることができる。
【0062】
また、この実施形態では、車室側レインメンバー53を、トンネル部14の上端角部15との間で上部閉断面W1を構成するように、その上端角部15との間に空間を有して設置している。
これにより、車室側レインメンバー53と上端角部15との間に、上部閉断面W1を構成することができ、また、車室側レインメンバー53にも、図11に示すように前後方向に延びる稜線53f…を複数形成することができる。
このため、トンネル部14の上端角部15の上下位置に、前後方向に延びる二つの閉断面(上部閉断面W1と下部閉断面W2)を構成できるため、さらにトンネル部14の上端角部15の剛性を高めることができる。また、車室側レインメンバー53も前後方向剛性を高めることができる。
よって、トンネル部14の上端角部15における衝突荷重の伝達性能を高めることができる。
また、車室側レインメンバー53の上面部53aが、高い位置に位置するため、トンネル部14前端とダッシュパネル5の結合部分の曲面部Rを避けて(図9参照)、車室側レインメンバー53を組付けることもできる。
【0063】
また、この実施形態では、中間分岐フレーム部40のロアメンバー40Aを、前部を平板部分42として、後部を途中から隆起して折曲形成したメンバー部47として構成している。
これにより、ロアメンバー40Aが、前部を平板体とすることで前後方向の荷重に対して変形しやすくなり、後部をメンバー体とすることで変形しになる。
このため、前面衝突荷重を受けた際、中間分岐フレーム部40の前部では折れ曲りが生じやすくなり、衝撃吸収をおこなうことができ、中間分岐フレーム部40の後部では折れ曲りが生じにくくなり、荷重伝達性能を高めることができる。
よって、中間分岐フレーム部40で、前述した分岐フレーム部の「カメラの三脚」による効果を得つつも、荷重伝達部材としての機能も得ることができる。
【0064】
また、この実施形態では、中間分岐フレーム部40に加えて、フロントサイドフレーム1とフロントピラー11とを車幅外方側上方に延びて連結する上部分岐フレーム部30と、フロントサイドフレーム1とサイドシル13とを車幅外方側下方に延びて連結する下部分岐フレーム部50とを備えている。
これにより、中間分岐フレーム部40に加えて、上部分岐フレーム部30と下部分岐フレーム部50とにより、フロントサイドフレーム1に作用する衝突荷重を車体後方の剛性部材である、フロントピラー11と、サイドシル13にも伝達することができる。
このため、大きな衝突荷重を、車体後方側の剛性部材であるフロントピラー11、サイドシル13、それとトンネル部14の三部材に荷重分散することができる。
よって、フロントサイドフレーム1の位置を中心に、放射状に広がる方向に位置する剛性部材の三部材(11,13,14)を利用して、車体の前面衝突性能をより高めることができる。
特に、本実施形態のように、トンネル部14の剛性を、中間分岐フレーム部40のロアメンバー40Aと車室側レインメンバー53とによって高めることによって、三部材(11,13,14)の剛性差がほとんどなくなるため、三部材に均等に荷重分散を行なうことができ、より確実に車体の前面衝突性能を高めることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、中間分岐フレーム部40をアッパーメンバー40Bとロアメンバー40Aの二つの部材で構成するもので説明したが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではなく、中間分岐フレーム部を一部材、又は三部材、四部材で構成するようにしてもよい。
【0066】
また、本発明では、車室側レインメンバー53についても、上部閉断面W1を構成せずに、単にトンネル部14の上端角部15を補強するプレート状部材であってもよい。さらに、車室側レインメンバー53をなくしてもよい。
【0067】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明のセンター側フレーム部材は、実施形態の中間分岐フレーム部40に対応し、
以下、同様に
クロスメンバーは、後部クロスメンバー70に対応し、
上側部材は、アッパーメンバー40Bに対応し、
縦方向部材は、車室側レインメンバー53に対応し、
上部フレーム部材は、上部分岐フレーム部30に対応し、
下部フレーム部材は、下部分岐フレーム部50に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる車体前部構造の実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態に係る車体前部構造の全体斜視図。
【図2】右側フロントサイドフレーム近傍を車幅内方側から見た側面図。
【図3】右側フロントサイドフレーム近傍を車幅外方側から見た側面図。
【図4】右側フロントサイドフレーム近傍の正面図。
【図5】右側フロントサイドフレーム近傍の平面図。
【図6】右側フロントサイドフレーム近傍の底面図。
【図7】中間分岐フレーム部の分岐部分近傍を車幅内方側から見た上方斜視図。
【図8】中間分岐フレーム部の分岐部分近傍を車幅内方側から見た下方傾斜図。
【図9】車室内方から前方に向ってダッシュパネルの車室側面(後方側面)を見た上方斜視図。
【図10】中間分岐フレームを構成するメンバー部材単品の組立説明図。
【図11】図9のA−A線矢視断面図。
【図12】車室内後方のトンネル部後端近傍を上方から見た平面図。
【図13】図12のB−B線矢視断面図。
【符号の説明】
【0069】
1…フロントサイドフレーム
11…フロントピラー
13…サイドシル
14…トンネル部
15…トンネル部の上端角部
30…上部分岐フレーム部
40…中間分岐フレーム部
40A…ロアメンバー
40B…アッパーメンバー
50…下部分岐フレーム部
53…車室側レインメンバー
70…後部クロスメンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、該フロントサイドフレームの後方でエンジンルームと車室とを仕切るように設けたダッシュパネルとを備えた車体前部構造であって、
前記ダッシュパネル及び車室のフロアパネルの車幅中央で、上方に隆起するように形成された車体前後方向に延びるトンネル部と、
前記フロントサイドフレームに前端部が結合されて、途中で車幅内方側に屈曲し、後部が前記トンネル部の車室外側で該トンネル部の上端角部との間で閉断面を構成するように車体後方側に延びるセンター側フレーム部材とを備えた
車体前部構造。
【請求項2】
前記センター側フレーム部材の後端を、車幅方向に延びるクロスメンバーに結合した
請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記センター側フレーム部材の前部を、二つの部材を結合して閉断面構造として構成し、
該二つの部材のうち上側に位置する上側部材を前記ダッシュパネルに突き当て接合し、
該上側部材が突き当て接合された部分に対応する車室内側に、前記トンネル部の上端角部に沿って車体後方側に延びる縦方向部材を接合した
請求項1又は2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記縦方向部材と前記センター側フレーム部材とを、前記トンネル部の上端角部を挟んで閉断面を構成するように対応して設けた
請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記縦方向部材を、前記トンネル部の上端角部との間で閉断面を構成するように該上端角部との間に空間を有して設置した
請求項3又は4記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記センター側フレーム部材の前部の閉断面を構成する二つの部材のうち、一つの部材を、前部を平板体として、後部を途中から隆起して折曲形成したメンバー体として構成した
請求項3〜5いずれか記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記センター側フレーム部材に加えて、
前記フロントサイドフレームとフロントピラーとを車幅外方側上方に延びて連結する上部フレーム部材と、
該フロントサイドフレームとサイドシルとを車幅外方側下方に延びて連結する下部フレーム部材とを備えた
請求項1〜6いずれか記載の車体前部構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−222185(P2008−222185A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67758(P2007−67758)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】