車体前部構造
【課題】オフセット衝突した場合に衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左右のホイールハウスアッパーメンバーの前垂下部32,33が垂下され、左右のフロントサイドフレームの下方にフロントサブフレーム18が設けられ、フロントサブフレーム18の車体前方側に荷重支え手段24が設けられている。荷重支え手段24は、左右のパイプフレーム57,103を備え、各パイプフレーム57,103がフロントサブフレーム18の左右の前端部18c,18dから車体前方に向けてそれぞれ延出され、左右の前垂下部32,33にフレーム前端部57a,103aがそれぞれ連結されている。
【解決手段】車体前部構造10は、左右のホイールハウスアッパーメンバーの前垂下部32,33が垂下され、左右のフロントサイドフレームの下方にフロントサブフレーム18が設けられ、フロントサブフレーム18の車体前方側に荷重支え手段24が設けられている。荷重支え手段24は、左右のパイプフレーム57,103を備え、各パイプフレーム57,103がフロントサブフレーム18の左右の前端部18c,18dから車体前方に向けてそれぞれ延出され、左右の前垂下部32,33にフレーム前端部57a,103aがそれぞれ連結されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの外側にホイールハウスアッパーメンバーが設けられるとともに、フロントサイドフレームの下方にフロントサブフレームが設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、フロントサイドフレームの車体外側にホイールハウスアッパーメンバーが設けられ、このホイールハウスアッパーメンバーの前端部から下方に向けて鉛直部(以下、「前垂下部」という)が延出されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−40142号公報
【0003】
特許文献1の車体前部構造によれば、ホイールハウスアッパーメンバーの前端部に前垂下部を設けることで、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に、前垂下部を相手車両に当てて衝撃を吸収することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体前部構造は、ホイールハウスアッパーメンバーの前端部から下方に向けて前垂下部が延出されているだけであり、前垂下部の剛性を確保することが難しい。
このため、オフセット衝突により前垂下部を相手車両に当てた場合に、衝撃荷重を前垂下部で良好に吸収可能な技術の実用化が望まれていた。
【0005】
本発明は、オフセット衝突した場合に衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向いて左右のフロントサイドフレームが設けられ、前記左右のフロントサイドフレームの外側に左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられ、前記左右のホイールハウスアッパーメンバーの前垂下部が前記左右のフロントサイドフレームの下方までそれぞれ垂下され、前記左右のフロントサイドフレーム間に設けられた動力源の後方で、かつ前記左右のフロントサイドフレームの下方にフロントサブフレームが設けられた車体前部構造において、前記フロントサブフレームの左右の端部から車体前方に向けてそれぞれ延出され、前記左右の前垂下部にそれぞれ前端部が連結された左右のパイプフレームを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記左右のパイプフレームにパネル部材が架け渡され、前記パネル部材が板材で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、フロントサブフレームの左右の端部から左右のパイプフレームを車体前方に向けてそれぞれ延出し、左右のパイプフレームの前端部を左右の前垂下部にそれぞれ連結した。
よって、左前垂下部は左パイプフレームを介してフロントサブフレームの左端部に連結されている。
【0009】
これにより、例えば、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合に、左前垂下部を相手車両に当て、左前垂下部および左パイプフレームを好適に変形させて衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0010】
また、相手車両が右側にずれてオフセット衝突した場合にも、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合と同様に、右前垂下部や右パイプフレームで衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、左右のパイプフレームにパネル部材を架け渡し、パネル部材が板材で形成されている。
これにより、例えば、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合に、左前垂下部および左パイプフレームを変形させるとともに、パネル部材の左側寄りの部位にせん断応力を発生させることができ、衝撃荷重を一層良好に吸収することができる。
【0012】
また、相手車両が右側にずれてオフセット衝突した場合にも、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合と同様に、パネル部材の右側寄りの部位にせん断応力を発生させて衝撃荷重を一層良好に吸収することができる。
【0013】
さらに、パネル部材を比較的軽量な板材で形成することで軽量化を図ることができる。
これにより、パネル部材を小型車に適用しても、小型車の重量を好適に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0015】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図、図2は本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側部にそれぞれ設けられた左右のフロントサイドフレーム11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aに設けられたフロントバルクヘッド13と、左右のフロントサイドフレーム11,12の外側にそれぞれ設けられた左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15とを備えている。
【0016】
この車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15およびフロントバルクヘッド13でエンジンルーム16の骨格が形成され、エンジンルーム16に動力源17が設けられている。
【0017】
さらに、車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12の下方で、かつエンジンルーム16の後方にフロントサブフレーム18が設けられ、フロントバルクヘッド13の左下端部13aから車体幅方向外側に延出された左下延出部21と、フロントバルクヘッド13の右下端部13bから車体幅方向外側に延出された右下延出部22と、左右の下延出部21,22およびフロントサブフレーム18間に介装された荷重支え手段24とを備える。
【0018】
左フロントサイドフレーム11は、車体前部方向を向いて車体前部の左側に配置されたフレーム部材である。
右フロントサイドフレーム12は、左フロントサイドフレーム11と左右対称の部材であり、車体前部方向を向いて車体前部の右側に配置されたフレーム部材である。
【0019】
フロントバルクヘッド13は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられた左脚部26と、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた右脚部27と、左右の脚部26,27の上端部に架け渡された上横梁部28と、左右の脚部26,27の下端部に架け渡された下横梁部29とを備えている。
【0020】
下横梁部29の左端部(左下端部)13aから左下延出部21が車体幅方向外側に延出されている。下横梁部29の右端部(右下端部)13bから右下延出部22が車体幅方向外側に延出されている。
下横梁部29および左右の下延出部21,22で下ビーム34が形成されている。
【0021】
左ホイールハウスアッパーメンバー14は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、左フロントピラー31から車両前下方向に向かって延び、左フロントサイドフレーム11の下方まで左前垂下部(前垂下部)32が垂下されている。
左前垂下部32は、下端部32aが左下延出部21の左端部21aに上方から当接された状態でボルト35(図3も参照)で取り付けられている。
【0022】
また、左前垂下部32は、上部32bが左フロントサイドフレーム11の前端部11aに左連結部材36で連結されている。
この左前垂下部32は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに対して車体幅方向外側に距離Lだけ離れた位置に設けられ、かつ、下端部32aが前端部11aに対して距離Hだけ下側まで延出されている。
【0023】
右ホイールハウスアッパーメンバー15は、左ホイールハウスアッパーメンバー14と左右対称の部材であり、右フロントサイドフレーム12の外側に設けられ、右フロントピラー(図示せず)から車両前下方向に向かって延び、右フロントサイドフレーム12の下方まで右前垂下部(前垂下部)33が垂下されている。
右前垂下部33は、下端部33aが右下延出部22の右端部22aに上方から当接された状態でボルト37(図3参照)で取り付けられている。
【0024】
また、右前垂下部33は、上部33bが右フロントサイドフレーム12の前端部12aに右連結部材38で連結されている。
この右前垂下部33は、左前垂下部32と同様に、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに対して車体幅方向外側に距離Lだけ離れた位置に設けられ、かつ、下端部33aが前端部12aに対して距離Hだけ下側まで延出されている。
【0025】
図2に示す動力源17は、例えば、エンジンとトランスミッションとが一体に形成され、左右のフロントサイドフレーム11,12間に横向きに配置されたエンジン/トランスミッションユニットである。
動力源17の後方で、かつ左右のフロントサイドフレーム11,12の下方にフロントサブフレーム18が設けられている。
【0026】
図3は本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームおよび荷重支え手段を示す斜視図、図4は図2の4矢視図である。
フロントサブフレーム18は、平面視で略矩形状に形成され、左前取付部41および左後取付部42が左フロントサイドフレーム11(図1参照)に取り付けられるとともに、右前取付部43および右後取付部44が右フロントサイドフレーム12(図1参照)に取り付けられている。
フロントサブフレーム18を、動力源17の後方で、かつ左右のフロントサイドフレーム11,12の下方に設けることで、フロントサブフレーム18をコンパクトに形成し、小型車に対応させて軽量化を図ることができる。
【0027】
左前取付部41および左後取付部42は、フロントサブフレーム18の左端部18aに備えられている。右前取付部43および右後取付部44は、フロントサブフレーム18の右端部18bに設けられている。
これにより、フロントサブフレーム18が、左右のフロントサイドフレーム11,12に固定されている。
【0028】
このフロントサブフレーム18は、左端部18aに左フロントサスペンション用の左ロアアーム44が設けられ、右端部18bに右フロントサスペンション用の右ロアアーム45が設けられている。
左右のロアアーム44,45にはそれぞれハブを介して左右の前輪(図示せず)が設けられている。
【0029】
荷重支え手段24は、フロントサブフレーム18および下ビーム34(下横梁部29および左右の下延出部21,22)間に介装されている。
この荷重支え手段24は、フロントサブフレーム18の左前端部18cおよび左下延出部21を連結する左パイプフレームユニット51と、フロントサブフレーム18の右前端部18dおよび右下延出部22を連結する右パイプフレームユニット52と、左右のパイプフレームユニット51,52に架け渡されたパネル部材53とを備える。
【0030】
図5は本発明に係るフロントサブフレームおよび荷重支え手段を示す分解斜視図である。
左パイプフレームユニット51は、フロントサブフレーム18の左前端部18cに取り付けられた左後部ブラケット55と、左下延出部21に取り付けられた左前部ブラケット56と、左前部ブラケット56にフレーム前端部(前端部)57aが取り付けられるとともに左後部ブラケット55にフレーム後端部57bが取り付けられた左パイプフレーム57とを備える。
【0031】
左後部ブラケット55は、内外の側部61,62および基部63で平面視略コ字状に形成されている。
この左後部ブラケット55は、内外の側部61,62にそれぞれ取付孔64…が形成され、内側部61に取付孔64,64と同軸上にナット65,65(図4も参照)が溶接され、基部63に取付孔66が形成されている。
【0032】
この左後部ブラケット55は、フロントサブフレーム18の左前端部18cに基部63がボルト67で取り付けられている。
すなわち、フロントサブフレーム18の左前端部18cに基部63を当接した状態で、基部63の取付孔66にボルト67が差し込まれ、差し込んだボルト67がフロントサブフレーム18の支持孔68,68および左ロアアーム44の貫通孔69に差し込まれ、ナット71(図2参照)にねじ結合されている。
【0033】
これにより、フロントサブフレーム18の左前端部18cに左後部ブラケット55がボルト67で取り付けられている。
さらに、このボルト67で、フロントサブフレーム18の左前端部18cに左ロアアーム44が上下方向に回動自在に取り付けられている。
【0034】
また、左後部ブラケット55は、左パイプフレーム57のフレーム後端部57bにボルト72,72で取り付けられている。
すなわち、内外の側部61,62間に左パイプフレーム57のフレーム後端部57bを配置した状態で、内外の側部61,62の取付孔64,64およびフレーム後端部57bの取付孔73,73にボルト72,72が差し込まれ、ナット65,65にねじ結合されている。
【0035】
図6は本発明に係る荷重支え手段を示す分解斜視図である。
左前部ブラケット56は、略扇状に形成された底部76と、底部76の内辺から上向きに折り曲げられた内折曲片77と、底部76の外辺から上向きに折り曲げられた外折曲片78とを備える。
この左前部ブラケット56は、底部76および内外の折曲片77,78の基部片で左パイプフレーム57のフレーム前端部57aを覆う略コ字状の基部56aが形成され、基部56aがフレーム前端部57aに溶接で設けられている。
【0036】
底部76は、基部56aの前側に、左下延出部21の底部21b(図4参照)に当接可能な略矩形状の底部当接位76aを備えている。底部当接位76aには取付孔81,81が形成されている。
【0037】
内折曲片77は、左下延出部21の後壁部21c(図7参照)に当接可能な内当接部位77aを備えている。
外折曲片78は、左下延出部21の後壁部21c(図7参照)に当接可能な外当接部位78aを備えている。
この左前部ブラケット56は、左下延出部21にボルト82,82で取り付けられている。
【0038】
図7は図2の7部拡大図、図8は本発明に係る荷重支え手段を左下延出部に取り付けた状態を示す断面図である。
左前部ブラケット56は、底部76の底部当接位76aが左下延出部21の底部21bに当接され、内折曲片77の内当接部位77aが左下延出部21の後壁部21cに当接されるとともに外折曲片78の外当接部位78aが左下延出部21の後壁部21cに当接されている。
【0039】
この状態で、図8に示すように、底部当接位76aの取付孔81,81および底部21bの取付孔84,84にボルト82,82が差し込まれ、ナット85,85にねじ結合されている。
これにより、左前部ブラケット56が左下延出部21にボルト82,82で取り付けられている。
【0040】
ここで、左前部ブラケット56の近傍には、左ホイールハウスアッパーメンバー14の左前垂下部32が取り付けられている。
具体的には、左前垂下部32の下端部32aが左下延出部21の左端部21aに上方から当接された状態で左端部21aの取付孔39にボルト35が下方から差し込まれる。
【0041】
差し込まれたボルト35がナット48(図8参照)にねじ結合されている。ナット48は、図8に示すように、下端部32aに溶接されている。
これにより、左前垂下部32は、左下延出部21の左端部21aを介して左前部ブラケット56に連結されている。
【0042】
図5、図6に戻って、左パイプフレーム57は、内外の側壁部91,92および上下の壁部93,94(下壁部94は図9参照)で断面略矩形枠状に形成された中空部材である。
左パイプフレーム57は、フレーム後端部57bが車体前後方向に直線状に延出され、残りの部位(フレーム本体部57cおよびフレーム前端部57a)がフレーム後端部57bからフレーム前端部57aまで車体前方でかつ車体幅方向外側に向けて角度θ傾斜させた状態で延出されている。
【0043】
フレーム後端部57bは、左後部ブラケット55の内外の側部61,62間に配置可能に形成され、内外の側壁部91,92に取付孔96…が同軸上に形成されている。
このフレーム後端部57bは、内外の側部61,62間に配置された状態で、内外の側部61,62の取付孔64…およびフレーム後端部57bの取付孔73…に差し込んだボルト72,72をナット65,65にねじ結合することで、左後部ブラケット55に取り付けられている。
【0044】
フレーム前端部57aは、左前部ブラケット56に溶接で設けられている。
フレーム本体部57cは、内外の側壁部91,92に同軸上に取付孔96…(内側壁部91の取付孔96…は図9参照)が形成されている。取付孔96…は、車体前後方向に所定間隔をおいて配置されている。
内側壁部91の取付孔96…と同軸上にナット97…(図9参照)が配置され、内側壁部91に溶接されている。
【0045】
左パイプフレーム57は、フレーム後端部57bが左後部ブラケット55を介してフロントサブフレーム18の左前端部18cに連結され、フレーム前端部57aが左前部ブラケット56を介して左下延出部21に連結されている。
すなわち、左パイプフレーム57は、フロントサブフレーム18の左前端部18cから左下延出部21まで車体前方に向けて延出されている。
【0046】
右パイプフレームユニット52は、フロントサブフレーム18の右前端部18dに取り付けられた右後部ブラケット101と、右下延出部22に取り付けられた右前部ブラケット102と、右前部ブラケット102にフレーム前端部(前端部)103aが取り付けられるとともに右後部ブラケット101にフレーム後端部103bが取り付けられた右パイプフレーム103とを備える。
【0047】
右後部ブラケット101は、左後部ブラケット55と左右対称の部材であり、各構成部材に左後部ブラケット55と同じ符号を付して説明を省略する。
右前部ブラケット102は、左前部ブラケット56と左右対称の部材であり、各構成部材に左前部ブラケット56と同じ符号を付して説明を省略する。
右パイプフレーム103は、左パイプフレーム57と左右対称の部材であり、各構成部材に左パイプフレーム57と同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
左右のパイプフレームユニット51,52(具体的には、左右のパイプフレーム57,103)にはパネル部材53が架け渡されている。
パネル部材53は、一例として、鋼材やカーボン材で形成された平板が所定形状に折り曲げられたものである。
このパネル部材53は、平面視略台形状に平板で平坦に形成された(板状の面が形成された)パネル平坦部105と、パネル平坦部105の左辺から上方に折り曲げられた左折曲片106と、パネル平坦部105の右辺から上方に折り曲げられた右折曲片107と、パネル平坦部105の上面105aに設けられた補強部111を備える。
【0049】
左折曲片106は、車体前後方向に所定間隔をおいて左取付孔112…が形成されている。
右折曲片107は、車体前後方向に所定間隔をおいて右取付孔113…が形成されている。
【0050】
補強部111は、断面ハット状の第1補強部111および断面ハット状の第2補強部111が略直交するように設けられている。
すなわち、第1補強部111は、車体前後方向を向いてパネル平坦部105の上面105aに配置され、両縁部が上面105aにスポット溶接されている。
第2補強部111は、車体幅方向を向いてパネル平坦部105の上面105aに配置され、両縁部が上面105aにスポット溶接されている。
【0051】
図9は図5の9−9線断面図である。
パネル部材53は、左折曲片106が左パイプフレーム57にボルト117…で取り付けられ、右折曲片107が右パイプフレーム103にボルト118で取り付けられている。
具体的には、左折曲片106を左パイプフレーム57の外壁部92に当接した状態で、左取付孔112…、内外の側壁部91,92の取付孔96…にボルト117…が差し込まれ、ナット97…にねじ結合されている。
【0052】
同様に、右折曲片107を右パイプフレーム103の外壁部92に当接した状態で、右取付孔113…、内外の側壁部91,92の取付孔96…にボルト118…が差し込まれ、ナット97…にねじ結合されている。
【0053】
以上説明したように、荷重支え手段24を中空状の左右のパイプフレーム57,103や板状のパネル部材53などの比較的軽量な部材で形成することで、荷重支え手段24の軽量化を図ることができる。
これにより、荷重支え手段24を小型車に適用しても、小型車の重量を好適に抑えることができる。
【0054】
また、車体前部構造10は、図2に示すように、フロントサブフレーム18および下ビーム34(下横梁部29および左右の下延出部21,22)間に荷重支え手段24が介装されている。
よって、車体前部構造10の剛性を一層高めることができる。さらに、車体前部から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右のフロントサイドフレーム11,12に伝わる衝撃荷重を荷重支え手段24に分散させることができる。
【0055】
これにより、左右のフロントサイドフレーム11,12の剛性を抑えることが可能になり、軽量化を図ることができる。
さらに、左右のフロントサイドフレーム11,12の軽量化を図ることで、車体の重心位置を下げることが可能になる。
【0056】
さらに、荷重支え手段24は、パネル部材53が鋼材やカーボン材で形成されているので、パネル部材53でエンジンルーム16の下側を覆うことができる。
これにより、エンジンルーム16に設けられた動力源17などを保護することができる。
【0057】
加えて、パネル部材53でエンジンルーム16の下側を覆うことで、動力源17の下廻りの空気抵抗を良好に抑えることができる。
【0058】
つぎに、車体前部構造10に相手車両121がオフセット衝突した場合を図10、図11に基づいて説明する。
図10(a),(b)は本発明に係る荷重支え手段の左パイプフレームでオフセット衝突による衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
(a)において、左ホイールハウスアッパーメンバー14の左前垂下部32は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに対して車体幅方向外側に距離Lだけ離れた状態で、前端部11aに対して距離H((b)参照)だけ下側まで垂下されている。
【0059】
よって、例えば、相手車両121が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両121に左前垂下部32を確実に当てることができる。
さらに、相手車両121の高さが異なった場合でも、相手車両121に左前垂下部32を確実に当てることができる。
【0060】
(b)において、左ホイールハウスアッパーメンバー14の左前垂下部32は、左下延出部21の左端部21aを介して荷重支え手段24の左前部ブラケット56に連結されている。
この左前垂下部32は、下端部32aが荷重支え手段24(左前部ブラケット56、左パイプフレーム57および左後部ブラケット55)を介してフロントサブフレーム18の左前端部18cに連結されている。
これにより、左前垂下部32を相手車両121に当てた場合に、左前垂下部32および左パイプフレーム57を好適に変形させて衝撃荷重F((a)も参照)を良好に吸収することができる。
【0061】
また、相手車両121が右側にずれてオフセット衝突した場合にも、相手車両121が左側にずれてオフセット衝突した場合と同様に、右前垂下部33や右パイプフレーム103で衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0062】
図11(a),(b)は本発明に係る荷重支え手段のパネル部材でオフセット衝突による衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
(a)において、左右のパイプフレーム57,103にパネル部材53を架け渡し、パネル部材53は平板で平坦に形成されている(板状の面が形成されている)。
これにより、例えば、相手車両121が左側にずれてオフセット衝突した場合に、左前垂下部32および左パイプフレーム57を変形させるとともに、パネル部材53の左側寄りの部位53aに衝撃荷重Fの一部を作用させることができる。
【0063】
(b)において、左側寄りの部位53aに衝撃荷重Fの一部を作用させることで、左側寄りの部位53aのうち、非変形を維持しようとする部位53bとの境界123近傍にせん断力F1を矢印の如く発生させることができる。
加えて、非変形を維持しようとする部位53bに引張力F2を矢印の如く発生させることができる。
そして、パネル部材53に発生したせん断力F1や引張力F2を利用してパネル部材53を変形させることで、衝撃荷重Fを一層良好に吸収することができる。
【0064】
また、相手車両121が右側にずれてオフセット衝突した場合にも、相手車両121が左側にずれてオフセット衝突した場合と同様に、パネル部材53の右側寄りの部位や非変形を維持しようとする部位に引張力を発生させて衝撃荷重を一層良好に吸収することができる。
【0065】
このように、車体前部構造10に荷重支え手段24を備えることで、小型車の重量を好適に抑えることができ、かつ、車体剛性や衝撃荷重の吸収性を一層高めることができるという効果が得られる。
【0066】
なお、前記実施の形態では、パネル部材53のパネル平坦部105を平板で平坦に形成した例について説明したが、これに限らないで、パネル平坦部105に波状形状(凹凸形状)を車体前後方向に向けて形成することも可能である。
さらに、パネル部材53に波状形状(凹凸形状)を車体幅方向に向けて形成することも可能である。
【0067】
また、前記実施の形態では、左右のパイプフレーム57,103を角度θ傾斜させた状態で車体前方に向けて延出させた例について説明したが、これに限らないで、例えば、左右のパイプフレーム57,103を傾斜させずに車体前方に向けて延出させることも可能である。
【0068】
さらに、前記実施の形態では、左右のパイプフレーム57,103として断面略矩形枠状に形成された中空部材を用いた例について説明したが、これに限らないで、例えば断面略円形枠状に形成された中空部材を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の車体前部構造は、フロントサイドフレームの外側にホイールハウスアッパーメンバーが設けられ、フロントサイドフレームの下方にフロントサブフレームが設けられた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームおよび荷重支え手段を示す斜視図である。
【図4】図2の4矢視図である。
【図5】本発明に係るフロントサブフレームおよび荷重支え手段を示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係る荷重支え手段を示す分解斜視図である。
【図7】図2の7部拡大図である。
【図8】本発明に係る荷重支え手段を左下延出部に取り付けた状態を示す断面図である。
【図9】図5の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係る荷重支え手段の左パイプフレームでオフセット衝突による衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
【図11】本発明に係る荷重支え手段のパネル部材でオフセット衝突による衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
10…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム、11a…左フロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム、12a…右フロントサイドフレームの前端部、14…左ホイールハウスアッパーメンバー、15…右ホイールハウスアッパーメンバー、17…動力源、18…フロントサブフレーム、18a…フロントサブフレームの左端部、18b…フロントサブフレームの右端部、18c…フロントサブフレームの左前端部、18d…フロントサブフレームの右前端部、24…荷重支え手段、32…左前垂下部(前垂下部)、33…右前垂下部(前垂下部)、51…左パイプフレームユニット、52…右パイプフレームユニット、53…パネル部材、57…左パイプフレーム、57a…左パイプフレームのフレーム前端部(前端部)、103…右パイプフレーム、103a…右パイプフレームのフレーム前端部(前端部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの外側にホイールハウスアッパーメンバーが設けられるとともに、フロントサイドフレームの下方にフロントサブフレームが設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、フロントサイドフレームの車体外側にホイールハウスアッパーメンバーが設けられ、このホイールハウスアッパーメンバーの前端部から下方に向けて鉛直部(以下、「前垂下部」という)が延出されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−40142号公報
【0003】
特許文献1の車体前部構造によれば、ホイールハウスアッパーメンバーの前端部に前垂下部を設けることで、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に、前垂下部を相手車両に当てて衝撃を吸収することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体前部構造は、ホイールハウスアッパーメンバーの前端部から下方に向けて前垂下部が延出されているだけであり、前垂下部の剛性を確保することが難しい。
このため、オフセット衝突により前垂下部を相手車両に当てた場合に、衝撃荷重を前垂下部で良好に吸収可能な技術の実用化が望まれていた。
【0005】
本発明は、オフセット衝突した場合に衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向いて左右のフロントサイドフレームが設けられ、前記左右のフロントサイドフレームの外側に左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられ、前記左右のホイールハウスアッパーメンバーの前垂下部が前記左右のフロントサイドフレームの下方までそれぞれ垂下され、前記左右のフロントサイドフレーム間に設けられた動力源の後方で、かつ前記左右のフロントサイドフレームの下方にフロントサブフレームが設けられた車体前部構造において、前記フロントサブフレームの左右の端部から車体前方に向けてそれぞれ延出され、前記左右の前垂下部にそれぞれ前端部が連結された左右のパイプフレームを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記左右のパイプフレームにパネル部材が架け渡され、前記パネル部材が板材で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、フロントサブフレームの左右の端部から左右のパイプフレームを車体前方に向けてそれぞれ延出し、左右のパイプフレームの前端部を左右の前垂下部にそれぞれ連結した。
よって、左前垂下部は左パイプフレームを介してフロントサブフレームの左端部に連結されている。
【0009】
これにより、例えば、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合に、左前垂下部を相手車両に当て、左前垂下部および左パイプフレームを好適に変形させて衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0010】
また、相手車両が右側にずれてオフセット衝突した場合にも、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合と同様に、右前垂下部や右パイプフレームで衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、左右のパイプフレームにパネル部材を架け渡し、パネル部材が板材で形成されている。
これにより、例えば、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合に、左前垂下部および左パイプフレームを変形させるとともに、パネル部材の左側寄りの部位にせん断応力を発生させることができ、衝撃荷重を一層良好に吸収することができる。
【0012】
また、相手車両が右側にずれてオフセット衝突した場合にも、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合と同様に、パネル部材の右側寄りの部位にせん断応力を発生させて衝撃荷重を一層良好に吸収することができる。
【0013】
さらに、パネル部材を比較的軽量な板材で形成することで軽量化を図ることができる。
これにより、パネル部材を小型車に適用しても、小型車の重量を好適に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0015】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図、図2は本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側部にそれぞれ設けられた左右のフロントサイドフレーム11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12の前端部11a,12aに設けられたフロントバルクヘッド13と、左右のフロントサイドフレーム11,12の外側にそれぞれ設けられた左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15とを備えている。
【0016】
この車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のホイールハウスアッパーメンバー14,15およびフロントバルクヘッド13でエンジンルーム16の骨格が形成され、エンジンルーム16に動力源17が設けられている。
【0017】
さらに、車体前部構造10は、左右のフロントサイドフレーム11,12の下方で、かつエンジンルーム16の後方にフロントサブフレーム18が設けられ、フロントバルクヘッド13の左下端部13aから車体幅方向外側に延出された左下延出部21と、フロントバルクヘッド13の右下端部13bから車体幅方向外側に延出された右下延出部22と、左右の下延出部21,22およびフロントサブフレーム18間に介装された荷重支え手段24とを備える。
【0018】
左フロントサイドフレーム11は、車体前部方向を向いて車体前部の左側に配置されたフレーム部材である。
右フロントサイドフレーム12は、左フロントサイドフレーム11と左右対称の部材であり、車体前部方向を向いて車体前部の右側に配置されたフレーム部材である。
【0019】
フロントバルクヘッド13は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられた左脚部26と、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた右脚部27と、左右の脚部26,27の上端部に架け渡された上横梁部28と、左右の脚部26,27の下端部に架け渡された下横梁部29とを備えている。
【0020】
下横梁部29の左端部(左下端部)13aから左下延出部21が車体幅方向外側に延出されている。下横梁部29の右端部(右下端部)13bから右下延出部22が車体幅方向外側に延出されている。
下横梁部29および左右の下延出部21,22で下ビーム34が形成されている。
【0021】
左ホイールハウスアッパーメンバー14は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、左フロントピラー31から車両前下方向に向かって延び、左フロントサイドフレーム11の下方まで左前垂下部(前垂下部)32が垂下されている。
左前垂下部32は、下端部32aが左下延出部21の左端部21aに上方から当接された状態でボルト35(図3も参照)で取り付けられている。
【0022】
また、左前垂下部32は、上部32bが左フロントサイドフレーム11の前端部11aに左連結部材36で連結されている。
この左前垂下部32は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに対して車体幅方向外側に距離Lだけ離れた位置に設けられ、かつ、下端部32aが前端部11aに対して距離Hだけ下側まで延出されている。
【0023】
右ホイールハウスアッパーメンバー15は、左ホイールハウスアッパーメンバー14と左右対称の部材であり、右フロントサイドフレーム12の外側に設けられ、右フロントピラー(図示せず)から車両前下方向に向かって延び、右フロントサイドフレーム12の下方まで右前垂下部(前垂下部)33が垂下されている。
右前垂下部33は、下端部33aが右下延出部22の右端部22aに上方から当接された状態でボルト37(図3参照)で取り付けられている。
【0024】
また、右前垂下部33は、上部33bが右フロントサイドフレーム12の前端部12aに右連結部材38で連結されている。
この右前垂下部33は、左前垂下部32と同様に、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに対して車体幅方向外側に距離Lだけ離れた位置に設けられ、かつ、下端部33aが前端部12aに対して距離Hだけ下側まで延出されている。
【0025】
図2に示す動力源17は、例えば、エンジンとトランスミッションとが一体に形成され、左右のフロントサイドフレーム11,12間に横向きに配置されたエンジン/トランスミッションユニットである。
動力源17の後方で、かつ左右のフロントサイドフレーム11,12の下方にフロントサブフレーム18が設けられている。
【0026】
図3は本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームおよび荷重支え手段を示す斜視図、図4は図2の4矢視図である。
フロントサブフレーム18は、平面視で略矩形状に形成され、左前取付部41および左後取付部42が左フロントサイドフレーム11(図1参照)に取り付けられるとともに、右前取付部43および右後取付部44が右フロントサイドフレーム12(図1参照)に取り付けられている。
フロントサブフレーム18を、動力源17の後方で、かつ左右のフロントサイドフレーム11,12の下方に設けることで、フロントサブフレーム18をコンパクトに形成し、小型車に対応させて軽量化を図ることができる。
【0027】
左前取付部41および左後取付部42は、フロントサブフレーム18の左端部18aに備えられている。右前取付部43および右後取付部44は、フロントサブフレーム18の右端部18bに設けられている。
これにより、フロントサブフレーム18が、左右のフロントサイドフレーム11,12に固定されている。
【0028】
このフロントサブフレーム18は、左端部18aに左フロントサスペンション用の左ロアアーム44が設けられ、右端部18bに右フロントサスペンション用の右ロアアーム45が設けられている。
左右のロアアーム44,45にはそれぞれハブを介して左右の前輪(図示せず)が設けられている。
【0029】
荷重支え手段24は、フロントサブフレーム18および下ビーム34(下横梁部29および左右の下延出部21,22)間に介装されている。
この荷重支え手段24は、フロントサブフレーム18の左前端部18cおよび左下延出部21を連結する左パイプフレームユニット51と、フロントサブフレーム18の右前端部18dおよび右下延出部22を連結する右パイプフレームユニット52と、左右のパイプフレームユニット51,52に架け渡されたパネル部材53とを備える。
【0030】
図5は本発明に係るフロントサブフレームおよび荷重支え手段を示す分解斜視図である。
左パイプフレームユニット51は、フロントサブフレーム18の左前端部18cに取り付けられた左後部ブラケット55と、左下延出部21に取り付けられた左前部ブラケット56と、左前部ブラケット56にフレーム前端部(前端部)57aが取り付けられるとともに左後部ブラケット55にフレーム後端部57bが取り付けられた左パイプフレーム57とを備える。
【0031】
左後部ブラケット55は、内外の側部61,62および基部63で平面視略コ字状に形成されている。
この左後部ブラケット55は、内外の側部61,62にそれぞれ取付孔64…が形成され、内側部61に取付孔64,64と同軸上にナット65,65(図4も参照)が溶接され、基部63に取付孔66が形成されている。
【0032】
この左後部ブラケット55は、フロントサブフレーム18の左前端部18cに基部63がボルト67で取り付けられている。
すなわち、フロントサブフレーム18の左前端部18cに基部63を当接した状態で、基部63の取付孔66にボルト67が差し込まれ、差し込んだボルト67がフロントサブフレーム18の支持孔68,68および左ロアアーム44の貫通孔69に差し込まれ、ナット71(図2参照)にねじ結合されている。
【0033】
これにより、フロントサブフレーム18の左前端部18cに左後部ブラケット55がボルト67で取り付けられている。
さらに、このボルト67で、フロントサブフレーム18の左前端部18cに左ロアアーム44が上下方向に回動自在に取り付けられている。
【0034】
また、左後部ブラケット55は、左パイプフレーム57のフレーム後端部57bにボルト72,72で取り付けられている。
すなわち、内外の側部61,62間に左パイプフレーム57のフレーム後端部57bを配置した状態で、内外の側部61,62の取付孔64,64およびフレーム後端部57bの取付孔73,73にボルト72,72が差し込まれ、ナット65,65にねじ結合されている。
【0035】
図6は本発明に係る荷重支え手段を示す分解斜視図である。
左前部ブラケット56は、略扇状に形成された底部76と、底部76の内辺から上向きに折り曲げられた内折曲片77と、底部76の外辺から上向きに折り曲げられた外折曲片78とを備える。
この左前部ブラケット56は、底部76および内外の折曲片77,78の基部片で左パイプフレーム57のフレーム前端部57aを覆う略コ字状の基部56aが形成され、基部56aがフレーム前端部57aに溶接で設けられている。
【0036】
底部76は、基部56aの前側に、左下延出部21の底部21b(図4参照)に当接可能な略矩形状の底部当接位76aを備えている。底部当接位76aには取付孔81,81が形成されている。
【0037】
内折曲片77は、左下延出部21の後壁部21c(図7参照)に当接可能な内当接部位77aを備えている。
外折曲片78は、左下延出部21の後壁部21c(図7参照)に当接可能な外当接部位78aを備えている。
この左前部ブラケット56は、左下延出部21にボルト82,82で取り付けられている。
【0038】
図7は図2の7部拡大図、図8は本発明に係る荷重支え手段を左下延出部に取り付けた状態を示す断面図である。
左前部ブラケット56は、底部76の底部当接位76aが左下延出部21の底部21bに当接され、内折曲片77の内当接部位77aが左下延出部21の後壁部21cに当接されるとともに外折曲片78の外当接部位78aが左下延出部21の後壁部21cに当接されている。
【0039】
この状態で、図8に示すように、底部当接位76aの取付孔81,81および底部21bの取付孔84,84にボルト82,82が差し込まれ、ナット85,85にねじ結合されている。
これにより、左前部ブラケット56が左下延出部21にボルト82,82で取り付けられている。
【0040】
ここで、左前部ブラケット56の近傍には、左ホイールハウスアッパーメンバー14の左前垂下部32が取り付けられている。
具体的には、左前垂下部32の下端部32aが左下延出部21の左端部21aに上方から当接された状態で左端部21aの取付孔39にボルト35が下方から差し込まれる。
【0041】
差し込まれたボルト35がナット48(図8参照)にねじ結合されている。ナット48は、図8に示すように、下端部32aに溶接されている。
これにより、左前垂下部32は、左下延出部21の左端部21aを介して左前部ブラケット56に連結されている。
【0042】
図5、図6に戻って、左パイプフレーム57は、内外の側壁部91,92および上下の壁部93,94(下壁部94は図9参照)で断面略矩形枠状に形成された中空部材である。
左パイプフレーム57は、フレーム後端部57bが車体前後方向に直線状に延出され、残りの部位(フレーム本体部57cおよびフレーム前端部57a)がフレーム後端部57bからフレーム前端部57aまで車体前方でかつ車体幅方向外側に向けて角度θ傾斜させた状態で延出されている。
【0043】
フレーム後端部57bは、左後部ブラケット55の内外の側部61,62間に配置可能に形成され、内外の側壁部91,92に取付孔96…が同軸上に形成されている。
このフレーム後端部57bは、内外の側部61,62間に配置された状態で、内外の側部61,62の取付孔64…およびフレーム後端部57bの取付孔73…に差し込んだボルト72,72をナット65,65にねじ結合することで、左後部ブラケット55に取り付けられている。
【0044】
フレーム前端部57aは、左前部ブラケット56に溶接で設けられている。
フレーム本体部57cは、内外の側壁部91,92に同軸上に取付孔96…(内側壁部91の取付孔96…は図9参照)が形成されている。取付孔96…は、車体前後方向に所定間隔をおいて配置されている。
内側壁部91の取付孔96…と同軸上にナット97…(図9参照)が配置され、内側壁部91に溶接されている。
【0045】
左パイプフレーム57は、フレーム後端部57bが左後部ブラケット55を介してフロントサブフレーム18の左前端部18cに連結され、フレーム前端部57aが左前部ブラケット56を介して左下延出部21に連結されている。
すなわち、左パイプフレーム57は、フロントサブフレーム18の左前端部18cから左下延出部21まで車体前方に向けて延出されている。
【0046】
右パイプフレームユニット52は、フロントサブフレーム18の右前端部18dに取り付けられた右後部ブラケット101と、右下延出部22に取り付けられた右前部ブラケット102と、右前部ブラケット102にフレーム前端部(前端部)103aが取り付けられるとともに右後部ブラケット101にフレーム後端部103bが取り付けられた右パイプフレーム103とを備える。
【0047】
右後部ブラケット101は、左後部ブラケット55と左右対称の部材であり、各構成部材に左後部ブラケット55と同じ符号を付して説明を省略する。
右前部ブラケット102は、左前部ブラケット56と左右対称の部材であり、各構成部材に左前部ブラケット56と同じ符号を付して説明を省略する。
右パイプフレーム103は、左パイプフレーム57と左右対称の部材であり、各構成部材に左パイプフレーム57と同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
左右のパイプフレームユニット51,52(具体的には、左右のパイプフレーム57,103)にはパネル部材53が架け渡されている。
パネル部材53は、一例として、鋼材やカーボン材で形成された平板が所定形状に折り曲げられたものである。
このパネル部材53は、平面視略台形状に平板で平坦に形成された(板状の面が形成された)パネル平坦部105と、パネル平坦部105の左辺から上方に折り曲げられた左折曲片106と、パネル平坦部105の右辺から上方に折り曲げられた右折曲片107と、パネル平坦部105の上面105aに設けられた補強部111を備える。
【0049】
左折曲片106は、車体前後方向に所定間隔をおいて左取付孔112…が形成されている。
右折曲片107は、車体前後方向に所定間隔をおいて右取付孔113…が形成されている。
【0050】
補強部111は、断面ハット状の第1補強部111および断面ハット状の第2補強部111が略直交するように設けられている。
すなわち、第1補強部111は、車体前後方向を向いてパネル平坦部105の上面105aに配置され、両縁部が上面105aにスポット溶接されている。
第2補強部111は、車体幅方向を向いてパネル平坦部105の上面105aに配置され、両縁部が上面105aにスポット溶接されている。
【0051】
図9は図5の9−9線断面図である。
パネル部材53は、左折曲片106が左パイプフレーム57にボルト117…で取り付けられ、右折曲片107が右パイプフレーム103にボルト118で取り付けられている。
具体的には、左折曲片106を左パイプフレーム57の外壁部92に当接した状態で、左取付孔112…、内外の側壁部91,92の取付孔96…にボルト117…が差し込まれ、ナット97…にねじ結合されている。
【0052】
同様に、右折曲片107を右パイプフレーム103の外壁部92に当接した状態で、右取付孔113…、内外の側壁部91,92の取付孔96…にボルト118…が差し込まれ、ナット97…にねじ結合されている。
【0053】
以上説明したように、荷重支え手段24を中空状の左右のパイプフレーム57,103や板状のパネル部材53などの比較的軽量な部材で形成することで、荷重支え手段24の軽量化を図ることができる。
これにより、荷重支え手段24を小型車に適用しても、小型車の重量を好適に抑えることができる。
【0054】
また、車体前部構造10は、図2に示すように、フロントサブフレーム18および下ビーム34(下横梁部29および左右の下延出部21,22)間に荷重支え手段24が介装されている。
よって、車体前部構造10の剛性を一層高めることができる。さらに、車体前部から後方に向けて衝撃荷重が作用した場合に、左右のフロントサイドフレーム11,12に伝わる衝撃荷重を荷重支え手段24に分散させることができる。
【0055】
これにより、左右のフロントサイドフレーム11,12の剛性を抑えることが可能になり、軽量化を図ることができる。
さらに、左右のフロントサイドフレーム11,12の軽量化を図ることで、車体の重心位置を下げることが可能になる。
【0056】
さらに、荷重支え手段24は、パネル部材53が鋼材やカーボン材で形成されているので、パネル部材53でエンジンルーム16の下側を覆うことができる。
これにより、エンジンルーム16に設けられた動力源17などを保護することができる。
【0057】
加えて、パネル部材53でエンジンルーム16の下側を覆うことで、動力源17の下廻りの空気抵抗を良好に抑えることができる。
【0058】
つぎに、車体前部構造10に相手車両121がオフセット衝突した場合を図10、図11に基づいて説明する。
図10(a),(b)は本発明に係る荷重支え手段の左パイプフレームでオフセット衝突による衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
(a)において、左ホイールハウスアッパーメンバー14の左前垂下部32は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに対して車体幅方向外側に距離Lだけ離れた状態で、前端部11aに対して距離H((b)参照)だけ下側まで垂下されている。
【0059】
よって、例えば、相手車両121が左側にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両121に左前垂下部32を確実に当てることができる。
さらに、相手車両121の高さが異なった場合でも、相手車両121に左前垂下部32を確実に当てることができる。
【0060】
(b)において、左ホイールハウスアッパーメンバー14の左前垂下部32は、左下延出部21の左端部21aを介して荷重支え手段24の左前部ブラケット56に連結されている。
この左前垂下部32は、下端部32aが荷重支え手段24(左前部ブラケット56、左パイプフレーム57および左後部ブラケット55)を介してフロントサブフレーム18の左前端部18cに連結されている。
これにより、左前垂下部32を相手車両121に当てた場合に、左前垂下部32および左パイプフレーム57を好適に変形させて衝撃荷重F((a)も参照)を良好に吸収することができる。
【0061】
また、相手車両121が右側にずれてオフセット衝突した場合にも、相手車両121が左側にずれてオフセット衝突した場合と同様に、右前垂下部33や右パイプフレーム103で衝撃荷重を良好に吸収することができる。
【0062】
図11(a),(b)は本発明に係る荷重支え手段のパネル部材でオフセット衝突による衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
(a)において、左右のパイプフレーム57,103にパネル部材53を架け渡し、パネル部材53は平板で平坦に形成されている(板状の面が形成されている)。
これにより、例えば、相手車両121が左側にずれてオフセット衝突した場合に、左前垂下部32および左パイプフレーム57を変形させるとともに、パネル部材53の左側寄りの部位53aに衝撃荷重Fの一部を作用させることができる。
【0063】
(b)において、左側寄りの部位53aに衝撃荷重Fの一部を作用させることで、左側寄りの部位53aのうち、非変形を維持しようとする部位53bとの境界123近傍にせん断力F1を矢印の如く発生させることができる。
加えて、非変形を維持しようとする部位53bに引張力F2を矢印の如く発生させることができる。
そして、パネル部材53に発生したせん断力F1や引張力F2を利用してパネル部材53を変形させることで、衝撃荷重Fを一層良好に吸収することができる。
【0064】
また、相手車両121が右側にずれてオフセット衝突した場合にも、相手車両121が左側にずれてオフセット衝突した場合と同様に、パネル部材53の右側寄りの部位や非変形を維持しようとする部位に引張力を発生させて衝撃荷重を一層良好に吸収することができる。
【0065】
このように、車体前部構造10に荷重支え手段24を備えることで、小型車の重量を好適に抑えることができ、かつ、車体剛性や衝撃荷重の吸収性を一層高めることができるという効果が得られる。
【0066】
なお、前記実施の形態では、パネル部材53のパネル平坦部105を平板で平坦に形成した例について説明したが、これに限らないで、パネル平坦部105に波状形状(凹凸形状)を車体前後方向に向けて形成することも可能である。
さらに、パネル部材53に波状形状(凹凸形状)を車体幅方向に向けて形成することも可能である。
【0067】
また、前記実施の形態では、左右のパイプフレーム57,103を角度θ傾斜させた状態で車体前方に向けて延出させた例について説明したが、これに限らないで、例えば、左右のパイプフレーム57,103を傾斜させずに車体前方に向けて延出させることも可能である。
【0068】
さらに、前記実施の形態では、左右のパイプフレーム57,103として断面略矩形枠状に形成された中空部材を用いた例について説明したが、これに限らないで、例えば断面略円形枠状に形成された中空部材を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の車体前部構造は、フロントサイドフレームの外側にホイールハウスアッパーメンバーが設けられ、フロントサイドフレームの下方にフロントサブフレームが設けられた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造のフロントサブフレームおよび荷重支え手段を示す斜視図である。
【図4】図2の4矢視図である。
【図5】本発明に係るフロントサブフレームおよび荷重支え手段を示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係る荷重支え手段を示す分解斜視図である。
【図7】図2の7部拡大図である。
【図8】本発明に係る荷重支え手段を左下延出部に取り付けた状態を示す断面図である。
【図9】図5の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係る荷重支え手段の左パイプフレームでオフセット衝突による衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
【図11】本発明に係る荷重支え手段のパネル部材でオフセット衝突による衝撃荷重を吸収する例を説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
10…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム、11a…左フロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム、12a…右フロントサイドフレームの前端部、14…左ホイールハウスアッパーメンバー、15…右ホイールハウスアッパーメンバー、17…動力源、18…フロントサブフレーム、18a…フロントサブフレームの左端部、18b…フロントサブフレームの右端部、18c…フロントサブフレームの左前端部、18d…フロントサブフレームの右前端部、24…荷重支え手段、32…左前垂下部(前垂下部)、33…右前垂下部(前垂下部)、51…左パイプフレームユニット、52…右パイプフレームユニット、53…パネル部材、57…左パイプフレーム、57a…左パイプフレームのフレーム前端部(前端部)、103…右パイプフレーム、103a…右パイプフレームのフレーム前端部(前端部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に向いて左右のフロントサイドフレームが設けられ、前記左右のフロントサイドフレームの外側に左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられ、前記左右のホイールハウスアッパーメンバーの前垂下部が前記左右のフロントサイドフレームの下方までそれぞれ垂下され、前記左右のフロントサイドフレーム間に設けられた動力源の後方で、かつ前記左右のフロントサイドフレームの下方にフロントサブフレームが設けられた車体前部構造において、
前記フロントサブフレームの左右の端部から車体前方に向けてそれぞれ延出され、前記左右の前垂下部にそれぞれ前端部が連結された左右のパイプフレームを備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記左右のパイプフレームにパネル部材が架け渡され、前記パネル部材が板材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項1】
車体前後方向に向いて左右のフロントサイドフレームが設けられ、前記左右のフロントサイドフレームの外側に左右のホイールハウスアッパーメンバーがそれぞれ設けられ、前記左右のホイールハウスアッパーメンバーの前垂下部が前記左右のフロントサイドフレームの下方までそれぞれ垂下され、前記左右のフロントサイドフレーム間に設けられた動力源の後方で、かつ前記左右のフロントサイドフレームの下方にフロントサブフレームが設けられた車体前部構造において、
前記フロントサブフレームの左右の端部から車体前方に向けてそれぞれ延出され、前記左右の前垂下部にそれぞれ前端部が連結された左右のパイプフレームを備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記左右のパイプフレームにパネル部材が架け渡され、前記パネル部材が板材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−101952(P2009−101952A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277451(P2007−277451)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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